(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20230808BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20230808BHJP
G01R 31/08 20200101ALI20230808BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20230808BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20230808BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B60L53/14
G01R31/08
H02H7/00 L
H02H7/18
H02J7/00 P
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2019041667
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】葛原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 憲司
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174468(JP,A)
【文献】特開2016-101033(JP,A)
【文献】特開2016-161478(JP,A)
【文献】特開2013-207961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 53/14
G01R 31/08
H02H 7/00
H02H 7/18
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたインレットを介して外部電源から電力が供給されるバッテリと、
前記バッテリへの電力授受を遮断又は接続する第1コンタクタと、
前記第1コンタクタが接続されている際に荷電されるコンデンサと、
前記外部電源から前記バッテリへの充電が実施される際に前記バッテリと前記インレットとを接続する回路を接続する第2コンタクタと、
前記インレットに印加される電圧を検出する電圧センサと、
前記電圧センサの故障診断を実行する故障診断部と、を備える車両であって、
前記故障診断部は、
前記外部電源から前記インレットへ電力が供給されていない場合であって、前記第1コンタク
タが遮断された状態で前記コンデンサの電圧がしきい値以下である場合に、前記第2コンタクタ
が溶着していたとしても前記電圧センサが第1所定値以上の電圧を第1期間以上継続した際に、前記電圧センサに第1の故障が発生したと判定する第1判定動作を実行
し、
前記故障診断部は、
前記外部電源から前記インレットへ電力が供給されている場合であって、前記第1コンタクタ及び第2コンタクタが接続された場合に、前記電圧センサが第2所定値未満の電圧を第2期間以上継続した際に、前記電圧センサに第2の故障が発生したと判定する第2判定動作を実行し、
前記第1期間は前記第2期間よりも短い時間であり、
前記第1判定動作は、前記電圧センサが前記第1所定値以上の電圧を検出する状態が前記第1期間以上継続することを少なくとも2回検出した際に、前記電圧センサに第1の故障が発生したと判定する、
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記車両を起動させる起動スイッチを備え、
前記第1判定動作は、前記起動スイッチがオフされたことにより前記第1コンタクタが遮断された際に実行される、
ことを特徴とする請求項
1記載の車両。
【請求項3】
前記第1判定動作は、前記起動スイッチがオンされた際に前記第1コンタクタを遮断した状態で実行される、
ことを特徴とする請求項
2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外部充電装置から供給される電力により充電されるバッテリを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリから供給される電力によって駆動される電気モータが搭載された車両として、外部に設けられた外部充電装置から供給される電力によりバッテリが充電されるものがある。
また、外部充電装置として、例えば100Vから200V程度の商用電源(AC)、あるいは、300V程度の高圧の直流電圧を出力する急速充電装置が用いられている。
上記車両は、外部充電装置の充電コネクタが接続可能に構成された充電インレットと、バッテリへの電力授受を遮断又は接続する第1コンタクタ(メインコンタクタ)と、外部電源からバッテリへの充電が実施される際にバッテリとインレットとを接続する回路を接続する第2コンタクタなどを備えている。
また、このような車両は、充電インレット、すなわち第2コンタクタに印加される電圧を検出する電圧センサを設け、電圧センサで検出された電圧に基づいて第2コンタクタに溶着が発生したか否かを判定する溶着判定部を設けている。
そして、溶着判定部により第2コンタクタに溶着が発生したと判定された場合には、充電インレットにバッテリの出力電圧が印加されないように、第1コンタクタをオフにしてバッテリの出力電圧を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、電圧センサが故障した場合には以下のような問題が生じる。
バッテリの出力電圧が充電インレットに印加されていないにもかかわらず電圧センサが電圧を検出する故障が発生すると、充電インレットに電圧が印加されていると錯覚してしまい、不必要に第1コンタクタを開操作することになる。このような場合には、バッテリの電圧が遮断されてしまい、車両が起動できなくなるという問題が発生する。
また、車両起動後で、第1コンタクタが閉状態及び第2コンタクタが開状態となっている際に電圧センサの診断を実施することも可能であるが、この場合に、たとえば、第2コンタクタが溶着しているような状況下では、バッテリの電圧がインレットに印加されるため電圧センサの故障診断を正確に実施することができないという問題が発生する。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、仮に第2コンタクタが溶着していたとしても、電圧センサの故障を正確に診断する上で有利な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車両に設けられたインレットを介して外部電源から電力が供給されるバッテリと、前記バッテリへの電力授受を遮断又は接続する第1コンタクタと、前記第1コンタクタが接続されている際に荷電されるコンデンサと、前記外部電源から前記バッテリへの充電が実施される際に前記バッテリと前記インレットとを接続する回路を接続する第2コンタクタと、前記インレットに印加される電圧を検出する電圧センサと、前記電圧センサの故障診断を実行する故障診断部と、を備える車両であって、前記故障診断部は、前記外部電源から前記インレットへ電力が供給されていない場合であって、前記第1コンタクタが遮断された状態で前記コンデンサの電圧がしきい値以下である場合に、前記第2コンタクタが溶着していたとしても前記電圧センサが第1所定値以上の電圧を第1期間以上継続した際に、前記電圧センサに第1の故障が発生したと判定する第1判定動作を実行し、前記故障診断部は、前記外部電源から前記インレットへ電力が供給されている場合であって、前記第1コンタクタ及び第2コンタクタが接続された場合に、前記電圧センサが第2所定値未満の電圧を第2期間以上継続した際に、前記電圧センサに第2の故障が発生したと判定する第2判定動作を実行し、前記第1期間は前記第2期間よりも短い時間であり、前記第1判定動作は、前記電圧センサが前記第1所定値以上の電圧を検出する状態が前記第1期間以上継続することを少なくとも2回検出した際に、前記電圧センサに第1の故障が発生したと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例え、第2コンタクタが溶着していたとしても、インレットに電圧が確実に印加されていない状態で、電圧センサの故障診断を実施することができるので、誤検知することなく電圧センサの故障を正確に診断する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施の形態に係る車両のシステム構成図である。
【
図3】車両起動(レディオン)時における故障診断処理のフローチャートである。
【
図4】車両充電時における故障診断処理のフローチャートである。
【
図5】車両停止(レディオフ)時における故障診断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態では、車両が電気モータにより駆動輪を駆動して車両を走行させる電気自動車である場合について説明するが、本発明は、プラグインハイブリッド車にも無論適用される。
図1に示すように、車両10は、バッテリ12と、バッテリ制御ユニット(以下BCUという)14と、インバータ16と、モータジェネレータ(電気モータ)18と、インバータ16を制御するモータ制御ユニット(以下MCUという)20と、車両10全体を制御する電子制御ユニット(以下ECUという)22と、バッテリ12の充電などを行なう周辺回路24と、充電インレット(インレット)26とを含んで構成されており、モータジェネレータ18により駆動輪28Aを駆動して走行する。なお、図中符号28Bは従動輪を示す。
【0009】
バッテリ12は、リチウムイオン電池などの二次電池(電池セル)を複数備えた電池モジュールを複数備えて構成されている。
また、バッテリ12には、電池セルの充放電状態(SOC)や温度などを監視し、電池セルのバランシング放電を行なうセル制御ユニット(不図示)が設けられている。
【0010】
BCU14は、セル制御ユニットの出力信号に基づき、バッテリ12の温度及び充放電状態等を監視・制御するように構成されている。
インバータ16は、モータジェネレータ18の回転を制御するために、たとえば3相の駆動電力をモータジェネレータ18に供給し、モータジェネレータ18の回転出力は、車両10の駆動輪28Aに伝達され、車両10が駆動される。また、車両10の減速時にあっては、モータジェネレータ18は発電機として動作(回生動作)し、このモータジェネレータ18からの3相交流電力はインバータ16で直流に変換されバッテリ12に蓄電される。
【0011】
MCU20は、インバータ16を制御して、モータジェネレータの回転駆動および回生動作を制御する。すなわち、このモータ制御ユニット20は、電子制御ユニットECU22からのトルク指令や回生指令の制御信号に基づき、インバータ16を制御してモータジェネレータ18に3相交流電力を供給して、モータジェネレータ18の回転出力を制御する。また回生時にも、インバータ16の動作を制御して、モータジェネレータ18からの3相交流電力を直流に変換してバッテリ12を充電する。
【0012】
BCU14、MCU20、ECU22は、CANを介して相互通信を行っている。BCU14によるバッテリ12の制御、およびMCU20によるインバータ16の制御は、このCANを介してECU22から送信される制御信号に基づいて行われる。
また、MCU20、BCU14、ECU22は、CPUを含むマイクロコンピュータで構成されている。
なお、ECU22については後述する。
【0013】
バッテリ12は、上記のようにモータジェネレータ18からの回生電力によって充電されるだけでなく、外部充電装置(外部電源)30から充電インレット26を介して供給される電力を用いて充電することができる。
ここで、外部充電装置30について説明すると、本実施の形態では、外部充電装置30が、100Vあるいは200Vの商用電力(交流)を例えば300Vの直流電力に変換して出力する電力変換部34(
図2参照)を備える急速充電装置である場合について説明するが、外部充電装置30の充電電圧は限定されるものではない。
図2に示すように、外部充電装置30は、電力変換部34に加えて制御ユニット32と、充電ケーブル36と、充電ケーブル36の先端に設けられた充電コネクタ(充電ガン)38とを備えている。
制御ユニット32は、電力変換部34の制御を行なうと共に車両10のECU22との間でCANを用いた相互通信を行なうものである。
充電コネクタ38は、充電ケーブル36を介して電力変換部34および制御ユニット32に接続されると共に、車両10の充電インレット26に着脱可能に結合されるものである。
充電コネクタ38は、充電ケーブル36の正極側給電ライン3602に接続された正極端子3802と、充電ケーブル36の負極側給電ライン3604に接続された負極端子3804と、充電ケーブル36の信号ライン3606に接続された信号端子3806とを備えている。
【0014】
図2に示すように、充電インレット26は、後述する正極側充電電力ラインPLCに接続される正極端子2602と、後述する負極側充電電力ラインNLCに接続される負極端子2604と、後述する信号ラインSLに接続される信号端子2606とを備えている。
充電インレット26に充電コネクタ38が接続されると、充電インレット26の正極端子2602、負極端子2604、信号端子2606に充電コネクタ38の正極端子3802、負極端子3804、信号端子3806がそれぞれ接続され、外部充電装置30からのバッテリ12への充電電圧の印加が可能となり、また、外部充電装置30とECU22との間での通信が可能となる。
周辺回路24は、正極側電力ラインPL、負極側電力ラインNL、メインコンタクタ(第1コンタクタ)40、正極側充電電力ラインPLC、負極側充電電力ラインNLC、信号ラインSL、充電コンタクタ(第2コンタクタ)42、平滑コンデンサ(コンデンサ)44、放電抵抗46、放電スイッチ48、第1電圧センサ50、第2電圧センサ52、電流センサ54、警告灯56、ECU22などを含んで構成されており、本実施の形態では、第2電圧センサ52が特許請求の範囲の電圧センサに相当している。
【0015】
正極側電力ラインPLはバッテリ12の正極端子とインバータ16の正極端子とを接続し、負極側電力ラインNLはバッテリ12の負極端子とインバータ16の正極端子とを接続している。
メインコンタクタ40は、バッテリ12への電力授受を遮断又は接続するコンタクタであり、正極側メインコンタクタ40Pと負極側メインコンタクタ40Nとで構成されている。
正極側メインコンタクタ40Pは正極側電力ラインPLに設けられ、負極側メインコンタクタ40Nは負極側電力ラインNLに設けられている。
正極側メインコンタクタ40P、負極側メインコンタクタ40Nの開閉はECU22によって制御される。
【0016】
正極側充電電力ラインPLCの一端は、バッテリ12とインバータ16との間で正極側電力ラインPLに接続され、他端は充電インレット26の正極端子2602に接続されている。
負極側充電電力ラインNLCの一端は、バッテリ12とインバータ16との間で負極側電力ラインNLに接続され、他端は充電インレット26の負極端子2604に接続されている。
信号ラインSLの一端はECU22に接続され、他端は充電インレット26の信号端子2606に接続されている。
充電コンタクタ42は、外部電源30からバッテリ12への充電が実施される際にバッテリ12と充電インレット26とを接続する回路を接続するコンタクタであって、正極側充電コンタクタ42Pと負極側充電コンタクタ42Nとで構成されている。
正極側充電コンタクタ42Pは、正極側充電電力ラインPLCに接続され、負極側充電コンタクタ42Nは、負極側充電電力ラインNLCに接続されている。
正極側充電コンタクタ42P、負極側充電コンタクタ42Nの開閉はECU22によって制御される。
なお、正極側充電コンタクタ42P、負極側充電コンタクタ42Nの開閉をECU22とは別に設けた他の制御ECUで制御してもよい。
【0017】
平滑コンデンサ44は、正極側電力ラインPLおよび負極側電力ラインNLに重畳されるインバータ16およびモータジェネレータ18で発生するノイズを低減するものであり、インバータ16の入力端子に並列接続されている。したがって、平滑コンデンサ44はメインコンタクタ40が接続されている際にバッテリ12により荷電される。
直列に接続された放電抵抗46および放電スイッチ48は、平滑コンデンサ44に対して並列に接続され、放電スイッチ48を閉成することにより平滑コンデンサ44の電荷を放電抵抗46を介して放電するものである。
放電スイッチ48の開閉はECU22により制御される。
平滑コンデンサ44の放電は、車両10の走行が停止した状態で、メインコンタクタ40が遮断されてバッテリ12からインバータ16への直流電力の供給が停止したのち行われる。
【0018】
第1電圧センサ50は、平滑コンデンサ44の端子間電圧V1を測定し、測定結果をECU22に供給するものである。
第2電圧センサ52は、充電コンタクタ42と充電インレット26との間に設けられ、充電インレット26の正極端子2602と負極端子2604間の電圧V2、すなわち正極側充電電力ラインPLCと負極側充電電力ラインNLCの間の電圧V2を測定し、測定結果をECU22に供給するものである。即ち、第2電圧センサ52は、充電インレット26にどの程度の電圧が印加されているかを検出することができる。
本実施の形態では、第2電圧センサ52は、電圧V2が予め設定された高しきい値VH以上となったときにH出力となり、高しきい値VH未満のときにL出力となる2値の測定結果を出力するものとして説明する。なお、第2電圧センサ52は、電圧V2の測定値を測定結果としてECU22に供給するものであっても良い。
なお、高しきい値VHは、外部充電装置30から供給される300V以下であり、例えば100V程度の値に設定されている。
第2電圧センサ52の測定結果は、後述するECU22が実行する正極側充電コンタクタ42Pおよび負極側充電コンタクタ42Nの溶着判定処理に使用される。
また、第2電圧センサ52が故障して正常な測定結果を出力できなくなると、ECU22が溶着判定処理を正しく行なうことができない。
電流センサ54は、正極側電力ラインPLと正極側充電電力ラインPLCとの接合点をP1とすると、接合点P1と正極側充電コンタクタ42Pとの間の正極側充電電力ラインPLCに設けられ、正極側充電電力ラインPLCを流れる電流、すなわち外部充電装置30からバッテリ12に供給される充電電流ICを測定し、測定結果をECU22に供給するものである。
【0019】
警告灯56は、例えばインストルメントパネルなどのように運転者が視認可能な適宜箇所に設けられている。
警告灯56は、第2電圧センサ52の故障を警告するために点灯されるものであり、警告灯の制御56はECU22によってなされる。
【0020】
ECU22は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
ECU22は、CPUが制御プログラムを実行することにより、車両10全体の制御を行なうことに加え、正極側メインコンタクタ40P、負極側メインコンタクタ40N、正極側充電コンタクタ42P、負極側充電コンタクタ42N、放電スイッチ48の開閉制御を行なう。
また、ECU22は、第2電圧センサ52の測定結果に基づいて、正極側充電コンタクタ42Pおよび負極側充電コンタクタ42Nの溶着判定処理を行なう溶着判定部として機能するが、溶着判定部による溶着判定処理として従来公知の様々な手法が採用可能であり、その説明は省略する。
また、ECU22は、第1電圧センサ50、第2電圧センサ52、電流センサ54の測定結果に基づいて、第2電圧センサ52の故障を診断する故障診断部を構成する。
本実施の形態では、故障診断部がECU22で構成されている場合について説明するが、故障診断部を構成するECUを別途設けてもよく、あるいは、故障診断部をBCU14やMCU20で構成するなど任意である。
【0021】
次に、ECU22(故障診断部)による第2電圧センサ52の故障診断処理について具体的に説明する。
なお、本明細書では、車両10の起動(レディオン)、停止(レディオフ)を以下のように規定する。
車両10の起動(レディオン)とは、車両10の停止中に車両10のパワースイッチ58(イグニッションスイッチ)がオン操作され、車両10のシステム、すなわち、BCU14、MCU20、ECU22などの起動状態を経て車両10が走行可能状態となることをいう。なお、パワースイッチ58あるいはイグニッションスイッチは特許請求の範囲の起動スイッチに相当する。
また、車両10の停止(レディオフ)とは車両10の停止中にパワースイッチ58がオフ操作されBCU14、MCU20、ECU22などの停止状態を経て車両10が走行終了状態(走行不能状態)となることをいう。
また、充電インレット26に充電コネクタ38が接続された状態で車両10がレディオンとなることは禁止されており、したがって、バッテリ12に対する充電動作は、必ず車両10のレディオフ状態でなされることになる。
【0022】
まず、
図3を参照して車両10の起動時に実行される第2電圧センサ52の故障診断処理を説明し、次いで、
図4を参照して車両10の充電時に実行される第2電圧センサ52の故障診断処理を説明する。ここで、
図3及び
図5は第2電圧センサ52のオン故障、すなわち、実際には電圧が印加されていないにも係わらず、第2電圧センサ52での検出値が所定値(第1所定値)以上を検出する場合の故障診断(第1判定動作)であり、
図4は第2電圧センサ52のオフ故障、すなわち、実際には電圧が印加されているにも係わらず、第2電圧センサ52での検出値が所定値(第2所定値)未満を検出する場合の故障診断(第2判定動作)である。なお、本実施の形態では、第1所定値と第2所定値が同じ高しきい値VHである場合について説明したが、例えば第1所定値を第2所定値よりも大きな値とするなど第1所定値と第2所定値とを異なる値で設定するなど任意である。
図3に示すように、車両10が停止状態で充電がなされていない状態から車両10が起動された場合に以下の診断処理が実行される。
車両10が停止状態で、メインコンタクタ40および充電コンタクタ42は何れも開成されている。
したがって、充電コンタクタ42には、バッテリ12の電圧も外部充電装置30からの電圧、すなわち、充電開始前になされる絶縁や漏電のチェックのためのチェック用電圧や充電電圧も印加されておらず、かつ、平滑コンデンサ44の電圧V1は0Vとなっている。これは、車両10の停止(レディオフ)に伴い放電スイッチ48が閉成され放電抵抗46を介して平滑コンデンサ44の電荷が放電されているためである。
【0023】
ここで、パワースイッチ58をオン操作すると、車両10が起動され、ECU22を含む車両10のシステムが起動される(ステップS10)。この際に、通常であればメインコンタクタ40がパワースイッチ58のオン操作とほとんど同時に接続されるが、第2電圧センサ52の故障診断を実施する場合には故障診断が終了するまで、メインコンタクタ40の接続を禁止する。即ち、その間は車両10を走行できないこととなるため、短い時間で故障診断を終了することが要求される。
ECU22は、第1電圧センサ50により測定された平滑コンデンサ44の電圧V1が低しきい値VL以下であるか否かを判定する(ステップS12)。
なお、低しきい値VLは第1電圧センサ50の測定誤差を含む値であり、例えば、1Vから3V程度と、外部充電装置30から供給されるチェック用電圧(300V前後)や充電電圧(300V)に対して十分に低い値に設定されている。また、低しきい値VLは高しきい値VH(例えば100V)よりも十分に低い値である。
ステップS12が肯定であれば、充電インレット26に対してチェック用電圧や充電電圧が印加されていないと判定される(ステップS14)。
【0024】
ここで、ECU22は、第2電圧センサ52からの測定結果を監視しており、測定結果がH出力の状態、すなわち、電圧V2が高しきい値VH(第1所定値)以上を検出したことを示す状態が第1時間(第1期間)T1(例えば500ms)継続することを少なくとも2回検出したか否かを判定する(ステップS16:第1判定動作)。ここで説明した2回とは、パワースイッチ58がオン操作されたことにより、第1判定動作を少なくとも2回実施した結果がオン故障していることを表している。すなわち、1回目の判定ではオン故障とは断定せずに、次回のパワースイッチ58オン操作の際の診断結果が再度、故障と判定された場合に第2電圧センサの故障と判定する。
また、1回目の判定としてパワースイッチ58がオン操作された際の診断による結果を記憶し、2回目の判定を
図5で後述するパワースイッチ58がオフ操作された際の診断の結果に基づいて判断してもよい。
ステップS16が肯定ならば、チェック用電圧や充電電圧が印加されていないにも拘わらず第2電圧センサ52が高しきい値VH以上の電圧を検出した状態であるので、第2電圧センサ52が故障(第1の故障:オン故障)していることになる。
すなわち、仮に充電コンタクタ42が溶着していても、第2電圧センサ52が故障(第1の故障:オン故障)していることが検出できる。
したがって、ECU22は、警告灯56を点灯させ、第2電圧センサ52が故障(オン故障)していることをユーザに報知する(ステップS18)。
なお、警告灯56を点灯させたのちは、第2電圧センサ52がオン故障しているものの、車両10の走行が許容される条件が成立した場合は、車両を修理するために限定的な移動行動(リンプホーム)を行なうようにすればよい。この際には、第1コンタク40を接続させて、リンプホームモードでの走行を許可する。
【0025】
また、ステップS16が否定ならば、第2電圧センサ52が正常であると判定し、車両10の起動動作を続け、メインコンタクタ40を閉成し(ステップS20)、車両10を走行可能状態とする(ステップS22)。
なお、ステップS12が否定であれば、例えば、メインコンタクタ40の溶着などの故障により平滑コンデンサ44にバッテリ12からの電圧が印加されていることが想定されるため、別の故障診断フラグを立てて終了する。(ステップS24)。
【0026】
なお、車両10の起動に際しては、車両10のシステム(BCU14、MCU20、ECU22)の初期化処理と、第2電圧センサ52の故障診断処理とが競合される。この際に、第2電圧センサ52の故障診断処理が終了するまでは、メインコンタクタ40を接続できないため、故障診断が終了するまで車両を走行させることができない。
そのため、起動に要する時間を最小限にするため、第1時間T1(第1期間)はなるべく短時間とすることが好ましい。
また、ステップS16の判定処理では、第1時間T1継続することが1回検出されたならば故障と判定してもよいが、本実施の形態では、ステップS16の判定処理で第1時間T1(例えば500ms)継続することが2回検出されたか否かで故障を判定(確定)するようにしたので、第1時間T1を短時間としつつ第2電圧センサ52の故障診断を確実に行なう上で有利となる。
【0027】
次に、
図4を参照して充電時における第2電圧センサ52の故障診断処理について説明する。
車両10が充電されている場合、充電動作に関係しないシステムは停止しているが、充電にまつわる制御を行なうECU22やBCU14は起動している。
また、充電時は、充電コネクタ38が充電インレット26に結合され、充電コネクタ38から充電インレット26を介して充電コンタクタ42に充電電圧が供給され、また、充電コンタクタ42は閉成されている。
ECU22は、電流センサ54で検出される充電電流ICの測定結果、および、ECU22自身が把握している充電コンタクタ42の開閉状態に基づいてバッテリ12への充電状態であるか否かを把握しており、充電状態である場合に、以下の故障診断処理を実行する。
なお、故障診断処理は、充電動作の開始時に実行しても、充電動作中に実行してもよく、また、故障診断処理は充電動作中に1度のみ実行しても、複数回実行してもよい。
【0028】
ECU22は、第2電圧センサ52の測定結果がL出力の状態、すなわち、電圧V2が高しきい値VH(第2所定値)未満である状態が第2時間(第2期間)T2(例えば10s)以上継続したか否かを判定する(ステップS30:第2判定動作)。
ステップS30が肯定ならば、外部充電装置30の充電電圧が印加されているにも拘わらず第2電圧センサ52が充電電圧を検出していないので、第2電圧センサ52が故障(第2の故障:オフ故障)していることになる。
したがって、ECU22は、第1の故障が検出された場合と同様に、警告灯56を点灯させ、ユーザに第2電圧センサ52の故障を報知する(ステップS32)。
なお、警告灯56を点灯させたのちは、第2電圧センサ52がオフ故障しているものの、車両10の走行が許容される条件が成立した場合は、車両を修理するために限定的な移動行動(リンプホーム)を行なうようにすればよい。
【0029】
また、ステップS30が否定ならば、第2電圧センサ52が正常であるため、充電動作を実行する(ステップS34)。
通常、充電は少なくとも数十分単位あるいは数時間単位で実行されるものであるため、十分な時間をかけて第2電圧センサ52の故障診断処理を行なうことができる。
すなわち、車両10の起動時と比較して、充電時の第2電圧センサ52の故障診断処理は時間的な制約が少ないため、第2時間T2を例えば10sとすることができ、第2電圧センサ52の故障診断処理を確実に行なう上で有利となる。
【0030】
図5は、第2電圧センサ52の故障診断処理の変形例を示すフローチャートである。
この場合、故障診断処理は、車両10が起動(レイディオン)から停止(レディオフ)状態に切り換えられた際に実行される。
【0031】
まず、車両10の走行が停止し、かつ、車両10のシステムが起動されているものとする。
このとき、メインコンタクタ40は閉成され、充電コンタクタ42は開成されている。
したがって、平滑コンデンサ44の電圧V1はバッテリ12の出力電圧と同じ値となっている。
ここで、パワースイッチ58をオフ操作すると、車両10のシステムの停止処理が実行されるが、この時点でECU22はまだ停止しない(ステップS50)。
ECU22は、メインコンタクタ40を開成させ(ステップS52)、放電スイッチ48をオンさせ平滑コンデンサ44の電荷を放電させる(ステップS54)。
ECU22は、第1電圧センサ50により測定された平滑コンデンサ44の電圧V1が低しきい値VL以下であるか否かを判定する(ステップS56)。
ステップS56が肯定であれば、充電インレット26に対して充電電圧が印加されていない(充電されていない)と判定される(ステップS58)。
ここで、ECU22は、第2電圧センサ52からの測定結果を監視しており、測定結果がH出力の状態、すなわち、電圧V2が高しきい値VH以上を検出したことを示す状態が第1時間T1(例えば500ms)継続することを少なくとも2回検出したか否かを判定する(ステップS60:第1判定動作)。ここで説明した2回とは、パワースイッチ58がオフ操作されたことにより、第1判定動作を少なくとも2回実施した結果がオン故障していることを表している。すなわち、1回目の判定ではオン故障とは断定せずに、次回のパワースイッチ58のオフ操作の際の診断結果が再度、故障と判定された場合に第2電圧センサ52の故障と判定する。
また、1回目の判定としてパワースイッチ58がオフ操作された際の診断による結果を記憶し、2回目の判定を
図3で説明したパワースイッチ58がオン操作された際の診断の結果に基づいて判断してもよい。
ステップS60が肯定ならば、充電電圧が印加されていないにも拘わらず第2電圧センサ52が高しきい値VH以上の電圧を検出した状態であるので、第2電圧センサ52が故障(第1の故障:オン故障)していることになる。
すなわち、仮に充電コンタクタ42が溶着していても、第2電圧センサ52が故障(第1の故障:オン故障)していることが検出できる。
したがって、ECU22は、警告灯56を点灯させ、ユーザに第2電圧センサ52の故障を報知する(ステップS62)。
この場合も、
図3の処理と同様に、第2電圧センサ52がオン故障しているものの、車両10の走行が許容される条件が成立した場合は、車両10を修理するために限定的な移動行動(リンプホーム)を行なうようにすればよい。
また、ステップS60が否定ならば、第2電圧センサ52が正常であるため、車両10のシステムの停止処理を続け、やがてECU22が停止される(ステップS64)。
【0032】
この変形例では、第1判定動作は、パワースイッチ58がオフされたことによりメインコンタクタ40が遮断された際に実行されるようにした。
したがって、パワースイッチ58のオフ操作時であれば、その後に車両10を走行させることがないため、第1判定動作をパワースイッチ58のオン操作時に行なう場合に比較して、時間を余裕をもって診断処理を行なうことができ有利となる。
一方、この変形例では、パワースイッチ58をオフとした後、第2電圧センサ52の故障診断を行なうために必要な時間だけ、ECU22を立ち上げておく必要があり、その分だけECU22の消費電力を要する。
また、平滑コンデンサ44の電荷を放電するための時間が多少必要となるため、第2電圧センサ52の故障診断に要する時間が
図3の場合と比較して長くなる。
したがって、この変形例のように車両10の停止時に第2電圧センサ52の故障診断処理を行なうこともできるが、車両10の起動時に第2電圧センサ52の故障診断処理を行なう方が、ECU22の電力消費を抑制し、第2電圧センサ52の故障診断処理に要する時間を短縮する上で有利となる。
【0033】
以上説明したように本実施の形態によれば、ECU22(故障診断部)は、充電コンタクタ42に電圧(チェック用電圧や充電電圧)が印加されておらず、かつ、メインコンタクタ40が開放された状態で平滑コンデンサ44の電圧V1が低しきい値VL以下である場合に、第2電圧センサ52が電圧(チェック用電圧や充電電圧)を検出する状態が第1時間T1以上継続したときに、第2電圧センサ52に第1の故障(オン故障)が発生したと判定する第1判定動作を実行するようにした。
すなわち、外部充電装置30から充電インレット26へ電力が供給されていない場合であって、メインコンタクタ40が遮断された状態でコンデンサ電圧V1が低しきい値VL以下である場合に、例え、第2コンタクタ42が溶着していたとしても、充電インレット26に印加される電圧は確実に高しきい値VH(第1所定値)未満となることから、仮に充電コンタクタ42が溶着していても、第2電圧センサ52の第1の故障を誤検知するおそれがなく、第2電圧センサ52の故障を正確に診断する上で有利となる。
【0034】
また、バッテリ12の出力電圧が充電インレット26に印加されているにも拘わらず第2電圧センサ52が電圧を検出しない第2の故障(オフ故障)すると、溶着判定部の誤判定によりバッテリ12の出力電圧を遮断できず、充電インレット26にバッテリ12の出力電圧が印加された状態となってしまうおそれがある。
そこで、本実施の形態では、ECU22は、外部充電装置30から充電インレット26へ電力が供給されている場合であって、メインコンタクタ40及び充電コンタクタ42が接続された場合に、第2電圧センサ52が高しきい値VH(第2所定値)未満の電圧を第2期間T2以上継続した際に、第2電圧センサ52に第2の故障(オフ故障)が発生したと判定する第2判定動作を実行するようにした。
したがって、第2電圧センサ52の第2の故障(オフ故障)を正確に診断しすることができると共に、第2電圧センサ52の第1の故障(オン故障)と第2の故障(オフ故障)の双方を正確に診断する上で有利となる。
【0035】
また、本実施の形態では、第1時間(第1期間)T1は第2時間(第2期間)T2よりも短い時間であり、第1判定動作は、第2電圧センサ52が第1所定値(高しきい値VH)以上の電圧を検出する状態が第1時間(第1期間)T1以上継続することを少なくとも2回検出した際に、第2電圧センサ52に第2の故障が発生したと判定するようにした。
したがって、第2電圧センサ52の第1の故障(オン故障)の診断処理を短時間に正確に行なえ、かつ、第2電圧センサ52の第2の故障(オフ故障)の診断処理を十分な時間をとって行えるため、第2電圧センサ52の故障診断を正確に行なう上で有利となる。
【0036】
また、本実施の形態では、第1判定動作は、パワースイッチ58がオンされた際にメインコンタクタ40を遮断した状態で実行される。
したがって、変形例のようにパワースイッチ58のオフ操作時に第1判定動作を行なうことに引き続き、パワースイッチ58のオン操作時にも第1判定動作を行なうようにすれば、第2電圧センサ52の第1の故障(オン故障)が発生したことを早期に判定でき、第2電圧センサ52の第1の故障の診断処理を短時間で行なう上で有利となる。
【符号の説明】
【0037】
10 車両
12 バッテリ
22 ECU(診断処理部)
26 充電インレット(インレット)
40 メインコンタクタ(第1コンタクタ)
42 充電コンタクタ(第2コンタクタ)
44 平滑コンデンサ(コンデンサ)
52 第2電圧センサ(電圧センサ)
58 パワースイッチ(起動スイッチ)