IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電動車両 図1
  • 特許-電動車両 図2
  • 特許-電動車両 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B60L15/20 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019054351
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020156260
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健治
(72)【発明者】
【氏名】服部 剛幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲一郎
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-166995(JP,A)
【文献】特表2013-520152(JP,A)
【文献】特開平09-172704(JP,A)
【文献】特開2018-113746(JP,A)
【文献】特開2018-023223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電動機と、
ドライバが複数のシフト位置の中から一つを選択するためのシフトレバーと、
前記電動機に指示するトルク値が規定されたトルクマップを各々の前記シフト位置に対応する仮想ギア段ごとに有し、前記シフトレバーで選択された前記シフト位置に対応する前記仮想ギア段の前記トルクマップを用いて前記トルク値を決めるマニュアル制御を実施する制御装置と、
前記ドライバによる前記シフトレバーの操作を無効にするための無効手段と、を備え
前記制御装置は、前記無効手段で前記操作が無効にされていない場合に前記マニュアル制御を実施し、前記無効手段で前記操作が無効にされている場合には、前記シフト位置によらず前記トルク値を決めるオートマチック制御を実施するとともに、
前記制御装置は、前記ドライバの要求トルクを算出するとともに、前記マニュアル制御の実施中の前記要求トルクが、使用中の前記トルクマップの規定から外れていることを含む自動切替条件が成立した場合に、前記マニュアル制御に代えて前記オートマチック制御を実施する
ことを特徴とする、電動車両。
【請求項2】
走行用の電動機と、
ドライバが複数のシフト位置の中から一つを選択するためのシフトレバーと、
前記電動機に指示するトルク値が規定されたトルクマップを各々の前記シフト位置に対応する仮想ギア段ごとに有し、前記シフトレバーで選択された前記シフト位置に対応する前記仮想ギア段の前記トルクマップを用いて前記トルク値を決めるマニュアル制御を実施する制御装置と、
前記ドライバが踏み込み操作可能なクラッチペダルと、を備え
前記制御装置は、前記マニュアル制御において、前記クラッチペダルが踏み込まれている場合に、使用する前記トルクマップの切替を許可する
ことを特徴とする、電動車両。
【請求項3】
前記ドライバが踏み込み操作可能なクラッチペダルを備え、
前記制御装置は、前記マニュアル制御において、前記クラッチペダルが踏み込まれている場合に、使用する前記トルクマップの切替を許可する
ことを特徴とする、請求項に記載の電動車両。
【請求項4】
前記ドライバによる前記シフトレバーの操作を無効にするための無効手段を備え、
前記制御装置は、前記無効手段で前記操作が無効にされていない場合に前記マニュアル制御を実施し、前記無効手段で前記操作が無効にされている場合には、前記シフト位置によらず前記トルク値を決めるオートマチック制御を実施する
ことを特徴とする、請求項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記トルクマップには、車速及びアクセル開度と前記トルク値との関係が規定され、
前記仮想ギア段が低い前記トルクマップほど、前記アクセル開度に対する前記トルク値が大きい
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ドライバによる操作に応じて前記トルクマップを描き変える変更手段を有する
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の電動機を備えた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載の電動機を回転させることで走行する電動車両(電気自動車,ハイブリッド車)が普及している。一般に、電動車両は、低速走行時であっても高いトルクを出力できるため、エンジン車に搭載されるような多段変速機が不要である。一方で、モータ効率を向上させるために無段変速機を搭載した電気自動車も存在する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-315207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、手動の多段変速機を搭載した車両(マニュアル車)では、ドライバによるクラッチペダル及びシフトレバーの操作に応じてギア比(変速比)が変更される。このような変速時の操作は、ドライバにとって運転の楽しみとなる場合がある。これに対し、手動の多段変速機が設けられない電動車両では、上述したような変速時の操作が不要であるため、ドライバが運転に面白みを感じにくいという課題がある。なお、特許文献1に記載されるような無段変速機付きの電気自動車でも、変速比は自動で変更されるため、ドライバが運転を楽しめない虞がある。
【0005】
本件の電動車両は、このような課題に鑑み案出されたもので、マニュアル車を運転しているような感覚をドライバに与えることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する電動車両は、走行用の電動機と、ドライバが複数のシフト位置の中から一つを選択するためのシフトレバーと、前記電動機に指示するトルク値が規定されたトルクマップを各々の前記シフト位置に対応する仮想ギア段ごとに有し、前記シフトレバーで選択された前記シフト位置に対応する前記仮想ギア段の前記トルクマップを用いて前記トルク値を決めるマニュアル制御を実施する制御装置と、前記ドライバによる前記シフトレバーの操作を無効にするための無効手段と、を備えている。
また、前記制御装置は、前記無効手段で前記操作が無効にされていない場合に前記マニュアル制御を実施し、前記無効手段で前記操作が無効にされている場合には、前記シフト位置によらず前記トルク値を決めるオートマチック制御を実施する。さらに、前記制御装置は、前記ドライバの要求トルクを算出するとともに、前記マニュアル制御の実施中の前記要求トルクが、使用中の前記トルクマップの規定から外れていることを含む自動切替条件が成立した場合に、前記マニュアル制御に代えて前記オートマチック制御を実施する。
(2)ここで開示するもう一つの電動車両は、走行用の電動機と、ドライバが複数のシフト位置の中から一つを選択するためのシフトレバーと、前記電動機に指示するトルク値が規定されたトルクマップを各々の前記シフト位置に対応する仮想ギア段ごとに有し、前記シフトレバーで選択された前記シフト位置に対応する前記仮想ギア段の前記トルクマップを用いて前記トルク値を決めるマニュアル制御を実施する制御装置と、前記ドライバが踏み込み操作可能なクラッチペダルと、を備えている。さらに、前記制御装置は、前記マニュアル制御において、前記クラッチペダルが踏み込まれている場合に、使用する前記トルクマップの切替を許可する。
【0007】
(3)上記の(1)において、前記電動車両は、前記ドライバが踏み込み操作可能なクラッチペダルを備え、前記制御装置は、前記マニュアル制御において、前記クラッチペダルが踏み込まれている場合に、使用する前記トルクマップの切替を許可することが好ましい。
上記の(2)において、前記電動車両は、前記ドライバによる前記シフトレバーの操作を無効にするための無効手段を備え、前記制御装置は、前記無効手段で前記操作が無効にされていない場合に前記マニュアル制御を実施し、前記無効手段で前記操作が無効にされている場合には、前記シフト位置によらず前記トルク値を決めるオートマチック制御を実施することが好ましい。
【0009】
(5)上記の(1)~(4)のいずれかにおいて、前記トルクマップには、車速及びアクセル開度と前記トルク値との関係が規定されていることが好ましい。この場合、前記仮想ギア段が低い前記トルクマップほど、前記アクセル開度に対する前記トルク値が大きいことが好ましい。
上記の(1)~(5)のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記ドライバによる操作に応じて前記トルクマップを描き変える変更手段を有することが好ましい
【発明の効果】
【0010】
開示の電動車両によれば、電動機へ指示するトルク値を決める際に使用されるトルクマップが、ドライバによりシフトレバーで選択されたシフト位置に応じて切り替えられるため、あたかもマニュアル車を運転しているような感覚をドライバに与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る電動車両の構成を例示したブロック図である。
図2図1の電動車両の制御装置に記憶されたトルクマップの一例であり、(a)~(e)はマニュアル制御用であり、(f)はオートマチック制御用である。
図3図1の電動車両の制御装置で実施される制御内容を例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としての電動車両について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.装置構成]
図1に示すように、本実施形態の電動車両10は、走行用のモータ(電動機)1を備え、図示しない車載バッテリの電力でモータ1を回転させることにより走行する電気自動車である。電動車両10は、機械的な手動変速機は搭載していないものの、仮想的なギア段(以下、「仮想ギア段」という)を変更するための装置として、シフトレバー2及びクラッチペダル3を備えている。
【0014】
本実施形態では、電動車両10の走行モードとして、MTモードとATモードとの二つが設けられている場合を例示する。MTモードは、電動車両10の出力特性が、あたかもマニュアル車のようにドライバによるシフトレバー2及びクラッチペダル3の操作に応じて変更される走行モードである。一方、ATモードは、電動車両10の出力特性が、オートマチック車のように自動的に(シフトレバー2及びクラッチペダル3の操作によらず)変更される走行モードである。
【0015】
シフトレバー2及びクラッチペダル3はいずれも、一般的なマニュアル車に設けられるものと同様の形状を有するとともに同様に配置される。シフトレバー2は、電動車両10の運転席(図示略)の近傍に設けられ、MTモードにおいて、ドライバが仮想ギア段に対応する複数のシフト位置SPの中から一つを選択するための装置である。本実施形態では、シフト位置SPとして、1速レンジから5速レンジまでの前進用の五つのレンジと、後退用のR(リバース)レンジとの六つの位置が設けられている。ドライバがシフトレバー2で選択したシフト位置SPは、シフトレバー2に設けられたシフトセンサ2Aで検出され、後述する走行制御ECU(制御装置)20に伝達される。
【0016】
クラッチペダル3は、電動車両10のドライバが踏み込み操作可能な装置である。クラッチペダル3は、一般的なマニュアル車に設けられるものと同様に、シフトレバー2の操作に合わせてドライバにより踏み込み操作される。なお、一般的なクラッチペダルは、手動変速機の断接機構(クラッチ)を開放させるための装置であるが、本実施形態のクラッチペダル3は、MTモードにおける運転感覚を本物のマニュアル車の運転感覚により近づけるためのものである。クラッチペダル3の踏み込み操作の有無は、クラッチペダル3に設けられたクラッチセンサ3Aで検出され、走行制御ECU20に伝達される。
【0017】
本実施形態の電動車両10には、ドライバが上記のMTモードとATモードとを切り替えるための切替スイッチ(無効手段)4と、ATモードの選択中にシフトレバー2に代えて用いられるセレクタ5とが設けられている。本実施形態の切替スイッチ4はオンオフスイッチであり、MTモードが選択されるオン状態と、ATモードが選択されるオフ状態とに切替可能に構成される。切替スイッチ4がオン状態である場合は、シフトレバー2の操作が有効とされる。反対に、切替スイッチ4がオフ状態である場合は、シフトレバー2の操作が無効とされる。したがって、切替スイッチ4は、ドライバによるシフトレバー2の操作を無効にするための構成ともいえる。切替スイッチ4は、電動車両10のドライバが操作可能な位置(例えばインストルメントパネルやステアリングホイール)に設けられる。切替スイッチ4のオンオフ状態は、走行制御ECU20に伝達されるとともに、走行制御ECU20によって制御される。
【0018】
セレクタ5は、ATモードにおいて、ドライバが複数の操作位置OPの中から一つを選択するための装置である。本実施形態では、セレクタ5で選択される操作位置OPとして、P(パーキング)レンジと、D(ドライブ)レンジと、N(ニュートラル)レンジと、Rレンジとの四つの位置が設けられている。ドライバがセレクタ5で選択した操作位置OPは、セレクタ5に設けられたセレクタセンサ5Aで検出され、走行制御ECU20に伝達される。また、本実施形態のセレクタ5は、その操作位置OPが走行制御ECU20によって制御される。
【0019】
電動車両10には、アクセルペダル6の開度(アクセル開度)APSを検出するアクセル開度センサ6Aと、車速Vを検出する車速センサ7とが設けられる。アクセル開度センサ6A及び車速センサ7で検出された各情報は、走行制御ECU20に伝達される。
【0020】
電動車両10の室内(例えばインストルメントパネル)には、ドライバが操作可能なタッチパネル8が設けられる。タッチパネル8は、ドライバが情報を入力する入力装置としての機能と、ドライバに向けて情報を表示する表示装置としての機能とを併せもつ。本実施形態のタッチパネル8は、後述するモータ1のトルクマップ41~45をドライバが描き変えるために用いられる。タッチパネル8に入力された情報は、走行制御ECU20に伝達される。また、タッチパネル8に表示される内容は、走行制御ECU20で制御される。
【0021】
走行制御ECU20は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置であり、電動車両10に搭載される各種装置を統合制御する。本実施形態の走行制御ECU20は、モータ1に指示するトルク値Ti(以下、「指示トルクTi」という)を決めるトルク制御を実施する。
【0022】
また、本実施形態の電動車両10には、走行制御ECU20の下位ECUとして、モータECU30が搭載されている。モータECU30は、走行制御ECU20から伝達された指示トルクTiに基づいて図示しないインバータを制御することで、インバータと接続されたモータ1を制御する。なお、電動車両10には、走行制御ECU20の下位ECUとして、モータECU30のほかにもバッテリECUや空調ECUやブレーキECU等(いずれも図示略)が設けられる。
【0023】
[2.制御構成]
本実施形態では、上述したトルク制御について詳述する。トルク制御は、電動車両10が後退中でない(電動車両10が前進中または停止中である)場合に実施される。電動車両10が後退中であるか否かは、例えばシフトセンサ2A及びセレクタセンサ5Aからの情報に基づいて判定可能である。なお、トルク制御は、電動車両10が前進状態または停止状態から後退し始めた場合や、電動車両10の電源がオフ(IG_OFF)状態となった場合に終了する。
【0024】
トルク制御では、図2(a)~(f)に例示するような、モータ1に指示するトルク値Tiが規定された複数のトルクマップ41~46が用いられる。各トルクマップ41~46には、アクセル開度APS及び車速Vと指示トルクTiとの関係が規定されている。具体的には、各トルクマップ41~46の縦軸は指示トルクTi,横軸は車速Vである。縦軸の指示トルクTiが正の値ではモータ1が力行状態となり、指示トルクTiが負の値ではモータ1が回生状態となる。トルクマップ41~46中の太実線は、車速Vに対する指示トルクTiの最大値及び最小値を示す。
【0025】
トルクマップ41~45には、指示トルクTiが正の範囲において、アクセル開度APSごとに、車速Vに対する指示トルクTiの値が設定されている。図2(a)~(e)には、アクセル開度APSが20[%]の場合の指示トルクTiを太破線で示し、アクセル開度APSが100[%]の場合の指示トルクTi(最大値)を太実線で示す。トルク制御では、電動車両10の走行モードやシフト位置SP等に応じてトルクマップ41~46の中から一つが選択され、選択されたトルクマップ41~46に対し、アクセル開度センサ6Aで検出されたアクセル開度APSと、車速センサ7で検出された車速Vとが適用されることで、指示トルクTiが決定される。
【0026】
本実施形態のトルク制御には、MT制御(マニュアル制御)とAT制御(オートマチック制御)との二種類の制御が含まれている。MT制御は、電動車両10の走行モードがMTモードである場合に実施される制御であり、AT制御は、電動車両10の走行モードがATモードである場合に実施される制御である。
【0027】
MT制御では、図2(a)~(e)に例示する五つのトルクマップ41~45が用いられる。これらのトルクマップ41~45は、上述した前進用の五つのシフト位置SPに対応する仮想ギア段ごとに設けられたマップである。詳細には、図2(a)の第一マップ41が1速レンジ(1速段)に対応し、図2(b)の第二マップ42が2速レンジ(2速段)に対応し、図2(c)の第三マップ43が3速レンジ(3速段)に対応し、図2(d)の第四マップ44が4速レンジ(4速段)に対応し、図2(e)の第五マップ45が5速レンジ(5速段)に対応する。これらのトルクマップ41~45は、互いに異なるように作成される。また、本実施形態のトルクマップ41~45は、ドライバによるタッチパネル8への操作に応じて描き変え可能に構成されている。なお、トルクマップ41~45は、ドライバにより描き変えられた場合も互いに異なるように規定される。
【0028】
MT制御では、これらのトルクマップ41~45の中から、シフトセンサ2Aで検出されたシフト位置SPに対応する仮想ギア段のマップが選択され、選択されたトルクマップを用いて指示トルクTiが決定される。このように、MT制御では、ドライバがシフトレバー2で選択したシフト位置SPに応じて、指示トルクTiを決定する際に用いられるトルクマップが切り替えられる。
【0029】
ただし、本実施形態のMT制御では、クラッチペダル3が踏み込まれていることを条件として、使用するトルクマップの切替が許可される。例えば、MT制御で第一マップ41の使用中に、ドライバがシフトレバー2を操作してシフト位置SPを1速レンジから2速レンジに変更した場合、このシフトレバー2の操作と共にクラッチペダル3の踏み込み操作があることを条件として、使用するトルクマップが第二マップ42へと切り替えられる。したがって、本実施形態のMT制御では、一般的なマニュアル車と同様に、クラッチペダル3が踏み込まれている場合に限りシフトレバー2の操作に応じた出力特性の変更が許可される。
【0030】
一方、AT制御では、図2(f)に例示するAT用のトルクマップ46(以下、「ATマップ46」という)のみが用いられる。すなわち、AT制御では、指示トルクTiを決定する際に用いられるトルクマップがATマップ46に固定される。したがって、AT制御では、仮に、シフトレバー2が操作されたとしても、シフトレバー2で選択されたシフト位置SPによらず、ATマップ46を用いて指示トルクTiが決定される。
【0031】
MTモードとATモードとは、基本的には切替スイッチ4のオンオフ状態に応じて切り替えられる。ただし、本実施形態では、下記の自動切替条件が成立した場合に、MTモードが自動的に(ドライバによる切替スイッチ4の操作によらず)ATモードに切り替えられる。言い換えると、下記の自動切替条件が成立した場合は、MT制御に代えてAT制御が自動的に実施される。自動切替条件は、ドライバがシフトレバー2で選択しているシフト位置SPと、ドライバが電動車両10に要求している要求トルクTdとの適合性を判断するための条件である。シフト位置SPと要求トルクTdとが適合しない場合には、モータ1の作動状態がドライバの要求トルクTdに適合するよう自動的に制御される。
【0032】
=自動切替条件=
条件1: MT制御の実施中の要求トルクTdが、使用中のトルクマップの規定外
条件2: 条件1が所定時間X以上継続して成立
【0033】
本実施形態の自動切替条件は、上記の条件1,2が共に成立した場合に成立する。要求トルクTdは、例えば、アクセル開度センサ6Aで検出されたアクセル開度APSと、車速センサ7で検出された車速Vとに基づいて算出され、アクセル開度APSが大きいほど大きな値とされる。なお、電動車両10の前後加速度や横加速度,ステアリング角度や車体の傾きといったパラメータを考慮して、より正確な要求トルクTdが算出される構成にしてもよい。
【0034】
条件1は、ドライバの要求トルクTdが使用中のトルクマップの規定から外れているとき(すなわち、要求トルクTdが車速Vに対する指示トルクTiの最大値を超えているとき)に成立する。例えば図2(a)に点Pで示すように、MT制御で第一マップ41の使用中に、その時点での車速Vに対応する要求トルクTdが、第一マップ41で規定された指示トルクTiの最大値を超えている場合に、条件1が成立する。
【0035】
条件2は、条件1の成立状態が所定時間X以上継続するときに成立する。所定時間Xは、MTモードを自動的にATモードへと切り替える猶予時間に相当し、例えば30秒から1分程度の長さに予め設定される。例えば、電動車両10の走行モードがMTモードであることをドライバが忘れており、シフトレバー2を操作しないままアクセルペダル6を踏み込み続けて加速しようとした場合に、条件2が成立する。
【0036】
図1に示すように、本実施形態の走行制御ECU20は、上述したトルク制御を実施するための要素として、記憶部21,変更部22,モード設定部23及びトルク決定部24を有する。これらの要素21~24は、走行制御ECU20で実行されるプログラムの一部の機能を示すものであり、ソフトウェアで実現されるものとする。ただし、これらの要素21~24の各機能の一部又は全部をハードウェア(電子回路)で実現してもよく、あるいはソフトウェアとハードウェアとを併用して実現してもよい。
【0037】
記憶部21は、上述したトルクマップ41~46のそれぞれを記憶している。ここで、各トルクマップ41~46について詳述する。図2(a)~(f)に示すように、各トルクマップ41~46には、アクセル開度APSが0[%]よりも大きい場合(モータ1の力行時)の指示トルクTiが正の値として規定され、アクセル開度APSが0[%]である場合(モータ1の回生時)の指示トルクTiが負の値として規定されている。なお、各トルクマップ41~46に規定された回生時の指示トルクTi(<0)は、ブレーキペダルが踏み込まれていない場合の値である。
【0038】
図2(a)~(e)に太実線で示すように、MT制御用の五つのトルクマップ41~45を比較すると、シフト位置SPに対応する仮想ギア段が低い(低速側の)トルクマップほど、力行時の指示トルクTi(>0)の最大値が大きく、かつ、回生時の指示トルクTi(<0)の最小値が小さく(回生トルクの最大値が大きく)規定されている。また、これらのトルクマップ41~45では、仮想ギア段が低いトルクマップほど、力行時の指示トルクTiの最大値を発揮する車速Vの範囲が低速側に規定され、回生時の指示トルクTiの最小値(回生トルクの最大値)を発揮する車速Vが高速側まで拡大されている。
【0039】
さらに図2(a)~(e)に太破線で示すように、トルクマップ41~45では、仮想ギア段が低いトルクマップほど、アクセル開度APSに対する指示トルクTiが大きく規定されている。例えば、図2(e)の第五マップ45では、アクセル開度APSが100[%]である場合(太実線)に対して20[%]である場合(太破線)の指示トルクTiが約20[%]の大きさに規定されているのに対し、第五マップ45よりも仮想ギア段が低い図2(a)の第一マップ41では、アクセル開度APSが100[%]である場合(太実線)に対して20[%]である場合(太破線)の指示トルクTiが約50[%]の大きさに規定されている。このように、本実施形態では、仮想ギア段が低いほど、アクセル開度APSが小さくても大きな指示トルクTiが出力されるように、各トルクマップ41~45が作成されている。
【0040】
なお、図2(a)~(e)には、アクセル開度APSが20[%]及び100[%]である各場合の指示トルクTiを示すが、各トルクマップ41~45には、アクセル開度APSが他の値である場合の指示トルクTiも規定されている。各トルクマップ41~45に規定された指示トルクTiは、同一の車速Vに対しては、アクセル開度APSが大きいほど大きくなり、アクセル開度APSが100[%]である場合に最大となる。
【0041】
変更部22(変更手段)は、ドライバによるタッチパネル8への操作に応じてMT制御用のトルクマップ41~45を描き変えるものである。変更部22は、例えば、タッチパネル8に現状のトルクマップ41~45を表示させるとともに、この表示に対するドライバの操作に応じて、各トルクマップ41~45に規定される指示トルクTiの最大値及び最小値や、指示トルクTiの最大値及び最小値を発揮する車速Vの範囲等を変更する。変更部22で変更されたトルクマップ41~45は、記憶部21に記憶されている変更前のトルクマップ41~45に代えて記憶される。言い換えると、変更部22がトルクマップ41~45を変更した場合には、記憶部21に記憶されたトルクマップ41~45が、変更後のトルクマップ41~45に更新(上書き)される。
【0042】
モード設定部23は、電動車両10の走行モードを設定する。モード設定部23は、基本的には、切替スイッチ4がオン状態である場合にMTモードを設定し、切替スイッチ4がオフ状態である場合にATモードを設定する。ただし、本実施形態のモード設定部23は、MTモードの設定中に上述した自動切替条件が成立した場合には、MTモードに代えてATモードを設定するとともに、切替スイッチ4をオン状態からオフ状態に切り替える。すなわち、モード設定部23が、ドライバの要求トルクTdを算出するとともに、上述した自動切替条件の成否判定を行う。
【0043】
トルク決定部24は、モード設定部23で設定された走行モードに応じてMT制御またはAT制御を実施する。具体的には、トルク決定部24は、モード設定部23でMTモードが設定されている(切替スイッチ4がオン状態であって、シフトレバー2の操作が無効にされていない)場合にMT制御を実施する。また、トルク決定部24は、モード設定部23でATモードが設定されている(切替スイッチ4がオフ状態であって、シフトレバー2の操作が無効にされている)場合にAT制御を実施する。トルク決定部24で決定された指示トルクTiは、モータECU30に伝達される。
【0044】
トルク決定部24は、MT制御では、記憶部21に記憶された五つのトルクマップ41~45の中から、ドライバがシフトレバー2で選択したシフト位置SPに対応する一つを選択する。そして、トルク決定部24は、選択したトルクマップに対し、アクセル開度センサ6A及び車速センサ7から伝達されたアクセル開度APS及び車速Vを適用することで、指示トルクTiを決定する。
【0045】
本実施形態のトルク決定部24は、MT制御においてクラッチペダル3が踏み込まれている場合に、使用するトルクマップの切替を許可する。より具体的には、トルク決定部24は、MT制御の実施中にドライバがシフトレバー2を操作することでシフト位置SPを変更し、かつ、クラッチペダル3を踏み込んだ場合に、使用するトルクマップをシフト位置SPの変更に応じて切り替え、それ以外の場合は使用するトルクマップを切り替えない。したがって、仮にMT制御の実施中にシフトレバー2が操作されることでシフト位置SPが変更されたとしても、クラッチペダル3が踏み込まれていない場合には、使用中のトルクマップが切り替えられずに維持される。
【0046】
本実施形態のトルク決定部24は、AT制御では、電動車両10が前進中(0<V)である場合にセレクタ5の操作位置OPをDレンジに制御する。これにより、例えばMT制御中に上述した自動切替条件が成立し、MT制御に代えてAT制御が実施される際に、セレクタ5の操作位置OPがDレンジ以外であったとしても、セレクタ5の操作位置OPが強制的にDレンジに変更される。このため、電動車両10の前進状態が適切に維持される。
【0047】
また、本実施形態のトルク決定部24は、AT制御では、セレクタ5の操作位置OPがDレンジである場合に、記憶部21に記憶されたATマップ46に対してアクセル開度センサ6A及び車速センサ7から伝達されたアクセル開度APS及び車速Vを適用することで指示トルクTiを決定する。なお、トルク決定部24は、AT制御においてセレクタ5の操作位置OPがDレンジ以外であり、かつ電動車両10が停止中(V=0)である場合には、そのときのセレクタ5の操作位置OPに対応する指示トルクTiをモータECU30に伝達する。
【0048】
[3.フローチャート]
図3は、上述したトルク制御の内容を例示したフローチャートである。図3のフローチャートは、電動車両10が後退中でない場合に、走行制御ECU20において所定の演算周期で繰り返し実行される。なお、変更部22によるトルクマップ41~45の変更は、図3のフローチャートとは別に実行されるものとし、変更部22でトルクマップ41~45が変更された場合には、上述したように記憶部21に記憶されているトルクマップ41~45が更新されるものとする。
【0049】
図3のフローチャートで使用されるフラグFは、MT制御において、使用するトルクマップの切替が許可されているか否かを表す変数であり、トルクマップの切替が許可されている場合に1となり、それ以外の場合に0となる。図3のフローチャートの開始時点では、フラグFが1であるものとする。また、フラグFは、MT制御で初めてトルクマップを選択する時点では1となるように、ATモードが設定されるたびに1に設定される(後述するステップS14)。
【0050】
図3に示すように、トルク制御では、まず各種センサ2A,3A,5A,6A,7で検出された情報と切替スイッチ4のオンオフ状態の情報とが取得される(ステップS1)。次いで、モード設定部23により、切替スイッチ4がオン状態であるか否かが判定され(ステップS2)、切替スイッチ4がオン状態である場合はMTモードが設定され(ステップS3)、切替スイッチ4がオフ状態である場合はATモードが設定される(ステップS13)。
【0051】
ステップS3でMTモードが設定された場合は、MT制御が実施される。MT制御では、例えばトルク決定部24により、フラグFが1であるか否かが判定される(ステップS4)。このフローチャートの開始時点ではF=1であるため、初回はステップS5に進み、トルク決定部24により、記憶部21に記憶されたトルクマップ41~45の中から、シフトセンサ2Aで検出されたシフト位置SPに対応する仮想ギア段のマップが選択される。そして、選択中のトルクマップを用いて指示トルクTiが決定され、この指示トルクTiがモータECU30に伝達される(ステップS6)。
【0052】
続いて、モード設定部23により、要求トルクTdが算出されると共に条件1の成否(使用中のトルクマップの規定から要求トルクTdが外れているか否か)が判定される(ステップS7)。条件1が成立しない場合は、例えばトルク決定部24により、クラッチセンサ3Aで検出された情報に基づき、クラッチペダル3が踏み込まれているか否かが判定される(ステップS8)。クラッチペダル3が踏み込まれている場合はフラグFが1に設定され(ステップS9)、このフローチャートをリターンする。一方、クラッチペダル3が踏み込まれていない場合はフラグFが0に設定され(ステップS10)、このフローチャートをリターンする。
【0053】
次の演算周期において、切替スイッチ4がオン状態のままであればステップS2からステップS3に進み、再びMTモードが設定される。この演算周期でもF=1である場合は、ステップS4から再びステップS5に進むため、シフトセンサ2Aで検出されたシフト位置SPに対応する仮想ギア段のトルクマップが選択される。したがって、今回の演算周期でドライバがシフトレバー2を操作していれば(前回の演算周期からシフト位置SPが変更されていれば)、ドライバによるシフトレバー2への操作に応じて、使用するトルクマップが切り替えられる(ステップS5)。
【0054】
一方、今回の演算周期でF=0である場合は、ステップS4からステップS5をスキップしてステップS6に進む。したがって、この場合は、たとえ今回の演算周期でドライバがシフトレバー2を操作していたとしても、使用するトルクマップが切り替えられず、前回の演算周期で選択(使用)したトルクマップが再び使用されて指示トルクTiが決定される。
【0055】
また、ステップS7で条件1が成立した場合は、モード設定部23により条件2の成否(条件1が所定時間X以上継続して成立しているか否か)が判定される(ステップS11)。ここで条件2が成立しない場合はステップS8に進み、クラッチペダル3の踏み込み操作の有無に応じてフラグFが設定され(ステップS9,S10)、このフローチャートをリターンする。一方、フローチャートのリターンを続けることで、ステップS11において所定時間Xが経過したと判定された場合は、自動切替条件が成立するため、モード設定部23により切替スイッチ4がオフ状態に切り替えられ(ステップS12)、ステップS13に進む。
【0056】
ステップS13でATモードが設定された場合は、AT制御が実施される。AT制御では、まずフラグFが1に設定され(ステップS14)、次いでトルク決定部24により電動車両10が前進中(0<V)であるか否かが判定される(ステップS15)。電動車両10が前進中であれば、トルク決定部24によりセレクタ5の操作位置OPがDレンジに制御され(ステップS16)、ステップS18に進む。一方、電動車両10が停止中(V=0)であれば、ステップS15からステップS17に進み、セレクタセンサ5Aで検出された操作位置OPがDレンジであるか否かが判定される。ここでセレクタ5の操作位置OPがDレンジであれば、ステップS18に進む。
【0057】
ステップS18では、トルク決定部24によりATマップ46が選択される。そして、ATマップ46を用いて指示トルクTiが決定され、この指示トルクTiがモータECU30に伝達されて(ステップS19)、このフローチャートをリターンする。なお、ステップS17の判定でNOルートに進んだ(V=0かつセレクタセンサ5Aで検出された操作位置OPがDレンジ以外であった)場合は、そのときのセレクタ5の操作位置OPに対応する指示トルクTiが決定され、この指示トルクTiがモータECU30に伝達されて(ステップS20)、このフローチャートをリターンする。
【0058】
[4.効果]
(1)上述した電動車両10では、走行制御ECU20が、各シフト位置SPの仮想ギア段ごとにトルクマップ41~45を有し、シフトレバー2で選択されたシフト位置SPに対応する仮想ギア段のトルクマップ41~45を用いて指示トルクTiを決定するMT制御を実施する。このため、指示トルクTiを決める際に使用されるトルクマップが、ドライバによりシフトレバー2で選択されたシフト位置SPに応じて切り替えられる。
【0059】
したがって、上述した電動車両10によれば、MT制御の実施中、ドライバはマニュアル車における変速時と同様に、シフトレバー2を操作することで電動車両10の出力特性を手動で変更できる。よって、電動車両10によれば、あたかもマニュアル車を運転しているような感覚をドライバに与えることができる。これにより、電動車両10のドライバは、マニュアル車を運転する場合と同様の楽しさを得ることができる。
【0060】
(2)上述したトルクマップ41~45には、車速V及びアクセル開度APSと指示トルクTiとの関係が規定されており、シフト位置SPに対応する仮想ギア段が低いトルクマップほど、アクセル開度APSに対する指示トルクTiが大きく規定されている。このように、仮想ギア段が低いほど、アクセル開度APSが小さくても大きな指示トルクTiが出力されるようにトルクマップ41~45を作成することで、ドライバが選択したシフト位置SP(仮想ギア段)が低速側であるほど、アクセルペダル6の踏み込み操作に対するトルク上昇のレスポンスを高めることができる。よって、ドライバに良好な発進感覚を与えることができる。
【0061】
(3)上述した走行制御ECU20は、切替スイッチ4でシフトレバー2の操作が無効にされていない場合にMT制御を実施し、切替スイッチ4でシフトレバー2の操作が無効にされている場合には、シフトレバー2のシフト位置SPによらず指示トルクTiを決めるAT制御を実施する。このように切替スイッチ4の操作状態に応じてMT制御とAT制御とを切り替える構成とすることで、ドライバが、切替スイッチ4を操作することにより、マニュアル車のような運転感覚を所望のタイミングで得ることができる。
【0062】
(4)上述した走行制御ECU20は、MT制御の実施中の要求トルクTdが、使用中のトルクマップの規定から外れていること(条件1)を含む自動切替条件が成立した場合に、MT制御に代えてAT制御を実施する。このように、シフトレバー2で選択されたシフト位置SPと実際の運転状態(要求トルクTd)とが適合しない場合にはMT制御を自動的にAT制御へと切り替えることで、例えばドライバがシフトレバー2の操作を忘れていたとしても、ドライバの要求により適合した走行状態を実現できる。
【0063】
(5)上述した走行制御ECU20には、ドライバによる操作に応じてトルクマップ41~45を描き変える変更部22が設けられるため、ドライバは、例えば上述したタッチパネル8を操作することにより、トルクマップ41~45を自身の好みに合わせて変更できる。よって、MT制御においてドライバの好みにより適合した走行状態を実現できる。
【0064】
(6)上述した走行制御ECU20は、MT制御において、クラッチペダル3が踏み込まれている場合に、使用するトルクマップの切替を許可するため、よりマニュアル車に近い運転感覚をドライバに与えることができる。
【0065】
[5.その他]
MT制御で用いられるトルクマップ41~45は、図2(a)~(e)に例示したものに限定されない。ドライバがトルクマップ41~45を描き変える場合の具体的な操作内容も特に限定されない。例えば、トルクマップ41~45は、上述したタッチパネル8に代えて、インストルメントパネルやステアリングホイール等に設けられたボタンに対するドライバの操作に応じて描き変えられてもよい。また、各トルクマップ41~45として複数のパターンを予め用意しておき、これらのパターンの中から所望のパターンをドライバに選択させることで、トルクマップ41~45を描き変えるようにしてもよい。なお、上述したトルクマップ41~46に適用される車速Vは、車速センサ7で検出された値(センサ値)に限らず、モータ1の制御で用いられるモータ回転数(制御値)であってもよい。
【0066】
シフトレバー2で選択されるシフト位置SPも、上述した六つの位置に限定されない。例えば、前進用のシフト位置SPとして6速レンジ(6速段)や7速レンジ(7速段)が追加されてもよいし、Nレンジが設けられてもよい。あるいは、前進用のシフト位置SPの個数を4つ以下に減らしてもよい。この場合、MT制御で用いるトルクマップの個数も減少するため、MT制御の構成を簡素化できる。なお、AT制御で用いられるATマップ46及びセレクタ5で選択される操作位置OPも、上述したものに限定されない。
【0067】
MT制御を自動的にAT制御へと切り替えるための自動切替条件には、少なくとも上述した条件1が含まれていればよく、上述した条件2に代えて(あるいは加えて)他の条件が規定されてもよい。また、MT制御を自動的にAT制御へと切り替える構成自体を省略してもよい。この場合、走行制御ECU20は、切替スイッチ4のオンオフ状態に応じてMT制御とAT制御とを切り替えればよい。なお、走行制御ECU20の制御構成からAT制御を省略してもよい。この場合、切替スイッチ4が不要になるとともに、走行制御ECU20の制御構成を簡素化できる。
【0068】
上述したクラッチペダル3は省略されてもよい。クラッチペダル3が省略される場合、走行制御ECU20は、MT制御で使用するトルクマップをシフトレバー2の操作のみに応じて選択(切替)してもよい。
【0069】
電動車両10は、モータ1に加えてエンジンを搭載したハイブリッド車であってもよい。この場合、上述したMT制御は、電動車両10がモータ1のみで走行する走行モード(具体的には、EVモード,シリーズモード)で実施されればよい。
【符号の説明】
【0070】
1 モータ(電動機)
2 シフトレバー
3 クラッチペダル
4 切替スイッチ(無効手段)
10 電動車両
20 走行制御ECU(制御装置)
22 変更部(変更手段)
41 第一マップ(トルクマップ)
42 第二マップ(トルクマップ)
43 第三マップ(トルクマップ)
44 第四マップ(トルクマップ)
45 第五マップ(トルクマップ)
APS アクセル開度
SP シフト位置
Td 要求トルク
Ti 指示トルク(トルク値)
V 車速
X 所定時間
図1
図2
図3