(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】点灯装置、照明器具、点灯装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H05B 45/355 20200101AFI20230808BHJP
H05B 45/375 20200101ALI20230808BHJP
H05B 45/385 20200101ALI20230808BHJP
【FI】
H05B45/355
H05B45/375
H05B45/385
(21)【出願番号】P 2019072116
(22)【出願日】2019-04-04
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 岳秋
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/145735(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/235199(WO,A1)
【文献】特開2013-080640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子とインダクタによりエネルギの充放電を行い、直流電圧を生成する直流電源回路と、
前記スイッチング素子の駆動を制御する制御部と、
前記インダクタと磁気的に結合された検出巻線と、を備え、
前記制御部は、前記スイッチング素子のあるスイッチング周期における、前記スイッチング素子がオフしてから、前記検出巻線に振動電圧が発生するまでのオフ期間に、予め定められた調整期間を加えた合計期間を、前記スイッチング周期の後のスイッチング周期において前記スイッチング素子をオフする期間と
し、
前記調整期間は、前記オフ期間の終了後、前記振動電圧がボトム付近に到達するまでの時間であることを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記スイッチング周期の度に前記オフ期間を測定し、前記オフ期間は、前記オフ期間が測定されたスイッチング周期の直後のスイッチング周期において使用されることを特徴とする請求項1に記載の点灯装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記合計期間を、前記オフ期間が測定されたスイッチング周期の後の連続する2回以上のスイッチング周期において、前記スイッチング素子をオフする期間として使用することを特徴とする請求項1に記載の点灯装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数のスイッチング周期のうち、前記オフ期間を測定するスイッチング周期と、前記オフ期間を測定しないスイッチング周期を定めることを特徴とする請求項3に記載の点灯装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記直流電源回路に電源投入した直後の予め定められた期間は、前記スイッチング素子のスイッチング周期で得られたオフ期間をそのスイッチング周期のオフ期間を決めるために用い、前記予め定められた期間が経過すると前記合計期間を用いた制御に移行することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項6】
前記直流電源回路は光源の点灯に用いられ、前記制御部は、前記光源の調光時には、前記スイッチング素子がオフしてから、前記検出巻線に発生する振動電圧の振動が2周期以上となるまでの期間を、前記オフ期間として測定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記光源の調光時には、前記光源の調光率が低いほど、前記オフ期間の終期とする前記振動電圧の振動回数を増加させることを特徴とする請求項6に記載の点灯装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記光源の全光時には、前記スイッチング素子がオフしてから、前記検出巻線に発生する振動電圧の振動が1周期目となるまでの期間を、前記オフ期間として測定することを特徴とする請求項6又は7に記載の点灯装置。
【請求項9】
前記スイッチング素子はワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項10】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項9に記載の点灯装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の点灯装置と、前記点灯装置が点灯させる光源と、を備えたことを特徴とする照明器具。
【請求項12】
制御部によって駆動制御されるスイッチング素子とインダクタとによりエネルギの充放電を行い直流電圧を生成することと、
前記スイッチング素子のあるスイッチング周期において、前記スイッチング素子がオフしてから、前記インダクタと磁気的に結合された検出巻線に振動電圧が発生するまでのオフ期間を測定することと、
前記スイッチング周期の後のスイッチング周期において、前記スイッチング素子をオフする期間として、前記オフ期間に予め定められた調整期間を加えた合計期間を用いることと、を備え
、
前記調整期間は、前記オフ期間の終了後、前記振動電圧がボトム付近に到達するまでの時間である点灯装置の制御方法。
【請求項13】
制御部によって駆動制御されるスイッチング素子とインダクタとによりエネルギの充放電を行い直流電圧を生成することと、
前記スイッチング素子のあるスイッチング周期において、前記スイッチング素子がオフしてから、前記インダクタと磁気的に結合された検出巻線に振動電圧が発生するまでのオフ期間を測定することと、
前記スイッチング周期の後のスイッチング周期において、前記スイッチング素子をオフする期間として、前記オフ期間に予め定められた調整期間を加えた合計期間を用いることと、を備え、
前記合計期間を用いたことで、前記スイッチング素子をオンするタイミングと前記スイッチング素子のソースドレイン間電圧が最小になるタイミングが一致することを特徴とす
る点灯装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯装置、照明器具、及び点灯装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発光ダイオード(LED)などの発光素子を点灯させるための各種の光源点灯装置が知られている。この種の光源点灯装置は商用交流電源を整流、平滑して直流電圧を生成するAC-DC変換回路と、得られた直流電圧からLEDに適した電流を供給するDC-DCコンバータを備える。多くの照明器具においては高力率を要求される。そのため、特許文献1に示すような、昇圧チョッパ形の力率改善回路がAC-DC変換回路として用いられている。
【0003】
昇圧チョッパ形の力率改善回路は、スイッチング素子がオンすると、スイッチング素子を介してインダクタに電流が流れ、エネルギを充電する。この時、インダクタ電流は直線的に増加する。次にスイッチング素子がオフすると、インダクタに蓄えられたエネルギを負荷側に放電し、インダクタ電流は直線的に減少する。そしてインダクタ電流がゼロまで低下すると、これを検出して次のスイッチングを開始する、所謂臨界モードで動作する。これにより各スイッチング周期における、インダクタ電流のピーク値が正弦波状となるようにスイッチング素子のオン時間を制御し、力率を改善するものである。
【0004】
ところで、このような光源点灯装置には、従来、シリコン(Si)半導体を用いた、例えばMOSFETなどのスイッチング素子が用いられてきたが、ガリウムナイトライド(GaN)又はシリコンカーバイド(SiC)などのワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子が注目されている。これより高速なスイッチング動作が可能となり、例えば高周波駆動を行うことで、光源点灯装置の小型化が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
臨界モードで動作する力率改善回路では、インダクタ電流がゼロまで低下すると、スイッチング素子のドレイン-ソース間の電圧が、インダクタのインダクタンス成分とスイッチング素子の寄生容量成分による共振周波数で振動する。スイッチング素子を駆動制御する制御部は、ドレイン-ソース間の振動電圧が一番低くなるボトム点に到達したタイミングでスイッチング素子をオンすることにより、ゼロ電圧スイッチングに近い状態となり、スイッチング損失を低減できる。ここで、制御部は例えばマイコン等で構成され、インダクタのゼロ電流を検出してから、次のスイッチングを開始するまでに、マイコンの処理時間を必要とするため、若干の遅れ時間を有する。この遅れ時間がドレイン-ソース間の共振電圧の周期に対して十分短い場合は、ドレイン-ソース間の共振電圧のボトム付近でターンオンすることが可能となる。
【0007】
しかしながら、例えばワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子で高周波駆動を行う場合、インダクタのインダクタンスが小さくなり、スイッチング素子の寄生容量も小さいので、スイッチング素子のドレイン-ソース間に発生する振動電圧の共振周期も短くなる。したがって、インダクタのゼロ電流を検出してから次のスイッチングを開始するまでの制御部の遅れ時間の影響が無視できなくなり、ドレイン-ソース間の振動電圧がボトムを過ぎてからターンオンしてしまい、スイッチング損失が増加するという課題がある。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ドレイン-ソース間に発生する振動電圧のボトム電圧付近でスイッチング素子をターンオンし、スイッチング損失を低減する点灯装置、照明器具、及び点灯装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る点灯装置は、スイッチング素子とインダクタによりエネルギの充放電を行い、直流電圧を生成する直流電源回路と、該スイッチング素子の駆動を制御する制御部と、該インダクタと磁気的に結合された検出巻線と、を備え、該制御部は、該スイッチング素子のあるスイッチング周期における、該スイッチング素子がオフしてから、該検出巻線に振動電圧が発生するまでのオフ期間に、予め定められた調整期間を加えた合計期間を、該スイッチング周期の後のスイッチング周期において該スイッチング素子をオフする期間とすることを特徴とし、該調整期間は、該オフ期間の終了後、該振動電圧がボトム付近に到達するまでの時間である。
【0010】
本開示に係る点灯装置の制御方法は、制御部によって駆動制御されるスイッチング素子とインダクタとによりエネルギの充放電を行い直流電圧を生成することと、該スイッチング素子のあるスイッチング周期において、該スイッチング素子がオフしてから、該インダクタと磁気的に結合された検出巻線に振動電圧が発生するまでのオフ期間を測定することと、該スイッチング周期の後のスイッチング周期において、該スイッチング素子をオフする期間として、該オフ期間に予め定められた調整期間を加えた合計期間を用いることと、を備え、該調整期間は、該オフ期間の終了後、該振動電圧がボトム付近に到達するまでの時間である。
本開示に係る点灯装置の制御方法は、制御部によって駆動制御されるスイッチング素子とインダクタとによりエネルギの充放電を行い直流電圧を生成することと、該スイッチング素子のあるスイッチング周期において、該スイッチング素子がオフしてから、該インダクタと磁気的に結合された検出巻線に振動電圧が発生するまでのオフ期間を測定することと、該スイッチング周期の後のスイッチング周期において、該スイッチング素子をオフする期間として、該オフ期間に予め定められた調整期間を加えた合計期間を用いることと、を備え、該合計期間を用いたことで、該スイッチング素子をオンするタイミングと該スイッチング素子のソースドレイン間電圧が最小になるタイミングが一致する。
【0011】
本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スイッチング素子をターンオフしてから、インダクタ電流がゼロ又はゼロ付近となるまでの期間をカウントし、このカウント値は、次のスイッチング周期におけるスイッチング素子をオンするタイミングを決定する要素として使用する。これにより、制御部の遅れ時間の影響を受けず、ドレイン-ソース間電圧の振動電圧がボトム付近でスイッチング素子をオンすることができる。このことは、例えばワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子のスイッチング損失の低減を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1にかかる点灯装置の回路構成図である。
【
図2】実施の形態1にかかる点灯装置の動作波形図である。
【
図3】実施の形態2にかかる点灯装置の回路構成図である。
【
図4】実施の形態2にかかる点灯装置の動作波形図である。
【
図5】実施の形態3における照明器具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態に係る点灯装置、照明器具、及び点灯装置の制御方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる点灯装置100の回路構成図である。点灯装置100は、交流電源1から電力の供給を受けて光源9を点灯させるものである。光源9としては例えばLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。点灯装置100は、力率改善回路2、DC-DCコンバータ3、力率改善回路の制御部4、DC-DCコンバータの制御部5を備えている。力率改善回路2は整流回路DBを含む。整流回路DBは交流電源を全波整流する。この全波整流電圧は、力率改善回路2の動作中は平滑されず、交流電源1の2倍の周波数を含むリプル電圧となる。
【0016】
力率改善回路2は昇圧チョッパ型であり、フィルタコンデンサC1、インダクタL1、スイッチング素子SW1、ダイオードD1及び平滑コンデンサC2を備えている。スイッチング素子SW1は、例えばGaNなどのワイドバンドギャップ半導体で形成される。力率改善回路2は、DC-DCコンバータ3を介して光源9に直流電流を供給するために、スイッチング素子SW1とインダクタL1でエネルギの充放電を行い、所望の直流電圧に変換する。インダクタL1には検出巻線L2が磁気的に結合されている。また、力率改善回路2は出力電圧を検出する出力電圧検出抵抗R1を備えている。力率改善回路2の出力には、光源9に電流を供給するためのDC-DCコンバータ3が接続されている。
【0017】
力率改善回路2は制御部4の制御を受けて動作する。具体的には、制御部4がスイッチング素子SW1の駆動を制御する。力率改善回路2は、整流回路DBが全波整流した電圧を昇圧して直流平滑する。さらに、力率改善回路2は、制御部4の制御により入力電流波形が正弦波状で且つ交流電源1の電圧と同位相となるように動作し、力率改善を行う。
【0018】
制御部4は、電圧比較部4a、ゼロ電流検出部4b、時間計測部4c、駆動信号生成部4d及びゲート駆動部4eを備えている。制御部4は少なくとも一部をマイクロコンピュータで構成し得る。制御部4は、力率改善回路2の出力電圧が予め設定された電圧値となり、且つ入力電流波形が交流電源1の電圧とほぼ同位相で正弦波となるように、スイッチング素子SW1を制御する。
【0019】
電圧比較部4aは、出力電圧検出抵抗R1に発生する出力電圧信号と、力率改善回路2の目標出力電圧に相当する目標信号E1とを比較し、両者の差に応じた信号を出力する。駆動信号生成部4dは、電圧比較部4aの出力信号を受けて、スイッチング素子SW1のスイッチング1周期におけるオン時間を決定し、スイッチング素子SW1の駆動信号を生成する。駆動信号は例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0020】
ゲート駆動部4eは、スイッチング素子SW1のゲート端子に接続され、駆動信号生成部4dから出力されたゲート信号の電圧をスイッチング素子SW1の駆動に適した電圧に増幅してスイッチング素子SW1のゲート端子に出力する。ゲート駆動部4eは、例えば、駆動信号生成部4dから出力された5Vのゲート信号を、スイッチング素子SW1の駆動に適した10Vに増幅する。スイッチング素子SW1は、ゲート駆動部4eから出力されたゲート駆動信号によりオンオフ動作を行う。なお、スイッチング素子SW1のゲート端子に例えばゲート抵抗等を接続してもよい。
【0021】
ゼロ電流検出部4bは、検出巻線L2に発生する電圧を受けて、インダクタL1に流れる電流がゼロになるタイミングを検出し、ゼロ電流検出信号を時間計測部4cに出力する。時間計測部4cは、駆動信号生成部4dからスイッチング素子SW1がターンオフしたタイミングでターンオフ信号を受け取り、ターンオフしたタイミングからゼロ電流検出信号を受け取るまでの時間(以後、オフ期間と呼ぶことがある)を計測し、オフ期間を駆動信号生成部4dに出力する。駆動信号生成部4dは時間計測部4cより受け取ったオフ期間を基に、次のスイッチング周期における、スイッチング素子SW1のターンオンタイミングを決定する。
【0022】
DC-DCコンバータ3は制御部5により駆動及び制御される。DC-DCコンバータ3は、光源9に流れる電流が目標電流値となるように定電流フィードバック制御される。なお、DC-DCコンバータ3は、例えば降圧チョッパ回路又はフライバックコンバータなどの既知の回路で構成され得る。
【0023】
次に、実施の形態1にかかる点灯装置100の動作を説明する。点灯装置100に交流電源1が印加されると、整流回路DBは入力された交流電圧を全波整流し、整流された電圧がフィルタコンデンサC1の両端に印加される。フィルタコンデンサC1は、スイッチングリプルを除去する目的で設けられたものであり、ここでは交流電源1の周波数成分を平滑するためのものではない。したがって力率改善回路2の動作中は、フィルタコンデンサC1の両端電圧は、交流電源周波数の2倍周波数で正弦波状に脈動する全波整流電圧となる。
【0024】
定常動作状態における力率改善回路2の動作を説明する。まず、ゲート駆動部4eから出力される信号により、スイッチング素子SW1がオンしている状態とする。スイッチング素子SW1がオンすると、全波整流電圧はインダクタL1に印加され、インダクタL1、スイッチング素子SW1の経路で電流が流れ、インダクタL1にエネルギが蓄えられる。このとき、インダクタL1の電流は、
図2の最上段に示されるように、直線的に増加していく。
【0025】
駆動信号生成部4dにより設定されたスイッチング素子のオン時間が経過すると、駆動信号生成部4dはオフ信号を出力しスイッチング素子SW1をオフする。スイッチング素子SW1がオフするとインダクタL1に蓄えられたエネルギが放出され、インダクタL1、ダイオードD1、平滑コンデンサC2の順に電流が流れる。これにより、平滑コンデンサC2を充電する。このようにエネルギを伝達して、DC-DCコンバータ3は、平滑コンデンサC2に充電された電圧を入力として、光源9に電流を供給する。
【0026】
図2は、実施の形態1にかかる点灯装置100の動作を示す波形図である。
図2の波形図を用いて、制御部4の動作を説明する。
【0027】
(期間t0~t1)
ここでは、力率改善回路2の動作が定常動作状態で、ゲート駆動部4eによってスイッチング素子SW1がオンするタイミングから説明する。スイッチング素子SW1がオンしたとき、スイッチング素子SW1にはインダクタL1からの電流が流れる。インダクタL1の電流は増加していくため、スイッチング素子SW1に流れる電流も増加していく。このとき、インダクタL1には
図1の矢印の方向に電圧VL1が印加されるため、検出巻線L2には矢印の方向に電圧VL2が発生し、ゼロ電流検出部4bには検出巻線L2から負電圧が入力される。
【0028】
(時刻t1)
所定時間が経過し、時刻t1になると、ゲート駆動部4eはスイッチング素子SW1をオフし、スイッチング素子SW1の電流を遮断する。スイッチング素子SW1のオン時間は電圧比較部4aの比較結果によって決定する。すなわち、目標信号E1に対して、出力電圧検出信号が小さければオン時間は長くなる方向に制御され、目標信号E1に対して、出力電圧検出信号が大きければオン時間は短くなる方向に制御される。
【0029】
(期間t1~t2)
スイッチング素子SW1がオフすると、時間計測部4cはこれを受けてカウントを開始し、スイッチング素子SW1がオフしたタイミングからの時間を計測する。スイッチング素子SW1がオフすると、インダクタL1に蓄えられたエネルギは、ダイオードD1を介して、平滑コンデンサC2に放出される。このとき、インダクタL1に発生する電圧は、スイッチング素子SW1がオンの時とは逆向きの電圧となる。すなわち
図1中の矢印とは逆方向の電圧が発生する。これにより検出巻線L2に発生する電圧VL2も、
図1中の矢印とは逆方向となり、ゼロ電流検出部4bには正電圧が入力される。スイッチング素子SW1がオフになると、インダクタL1がエネルギを放出するため、ダイオードD1を介して平滑コンデンサC2に流れる電流は減少していく。
【0030】
(期間t2~t3)
インダクタL1がエネルギを放出し終えると、インダクタL1の電流がゼロになる。インダクタL1の電流がゼロになると、インダクタL1とスイッチング素子等の寄生容量に起因する共振現象が発生する。そのため、
図2に示すように、検出巻線L2の電圧VL2は急速に低下する。
【0031】
(時刻t3~t4)
ゼロ電流検出部4bは検出巻線L2の電圧VL2が低下し、予めプログラム等で設定した閾値電圧を下回るとこれを検出してゼロ電流検出信号Szを時間計測部4cへ出力する。時間計測部4cはゼロ電流検出信号Szを受けると、スイッチング素子SW1がターンオフしてからゼロ電流検出信号Szが出力されるまでの時間をオフ期間として駆動信号生成部4dに送り、駆動信号生成部4dはこれを記憶する。ここで測定されたオフ期間は
図2において「オフ期間T2」と記載された期間である。「オフ期間T2」は、時間計測部4cが、時刻t1からt3までの期間を計測して得られた期間である。
【0032】
(時刻t4)
一方で、駆動信号生成部4dは、図示しない時刻t0以前における1つ前のスイッチング周期において時間計測部4cが計測したオフ期間を用いてスイッチング素子SW1をオンするタイミングを決定する。1つ前のスイッチング周期で得られたオフ期間は
図2において「オフ期間T1」と記載されている。時刻t1からの時間計測部4cのカウント値が、1つ前のスイッチング周期において計測したオフ期間である「オフ期間T1」に、予め定められた調整期間ΔTを加えた合計時間に到達した時点で、スイッチング素子SW1が再びオンする。
図2における時刻t4は、時刻t1から計測して、「オフ期間T1」と「調整期間ΔT」の合計時間に到達した時点である。
【0033】
ここで、予め定められた調整期間ΔTとは、検出巻線L2の電圧VL2がゼロ電流検出部4bの閾値電圧に到達してから、スイッチング素子のドレイン-ソース間の共振現象に伴う振動電圧がボトム付近に到達するまでの時間であり、
図2では時刻t3~t4間に相当する。両端電圧Vsdの振動電圧がボトム付近でスイッチング素子SW1をオンするように予めマイコン等に調整期間ΔTを記憶しておくことができる。これにより、スイッチング素子SW1の両端電圧Vsdが低い状態でスイッチング素子SW1をターンオンできるため、ゼロ電圧スイッチングに近い動作となり、スイッチング損失を低減できる。
【0034】
時刻t4にてスイッチング素子SW1がオンすると、再び、時刻t0の条件に戻り、同様の動作を繰り返す。時刻t1から時刻t3の期間において時間計測部4cでカウントした時間である「オフ期間T2」は次の時刻t8におけるターンオンのタイミングを決定する要素となる。具体的には、時刻t5から、オフ期間T2と調整期間ΔTの合計期間が経過した時点で、スイッチング素子SW1が再びオンする。時刻t5から時刻t7までの期間は時間計測部4cによってオフ期間T3として計測される。しかしながら、時刻t5に達した時点で、オフ期間T2と調整期間ΔTの合計期間は確定しているので、時刻t8にてスイッチング素子SW1をターンオンするために演算処理は必要ない。
【0035】
このように、1つ前のスイッチング周期における、スイッチング素子SW1がターンオフしてからインダクタ電流がゼロになるまでの時間であるオフ期間を、次のスイッチング周期におけるターンオンタイミングの決定に用いるので、ゼロ電流検出信号を受けてからスイッチング素子をターンオンする場合と比較して、検出遅れがなくスイッチング素子をターンオンすることができる。なお、オフ期間の終期はインダクタ電流がゼロになる時点又はインダクタ電流がゼロに十分近い値となった時点とすることができる。
【0036】
従来では、ゼロ電流検出信号を受けてから、ターンオンするまでに制御部4での処理時間を要し、ドレイン-ソース間の振動電圧がボトムを過ぎてからスイッチング素子をターンオンしてしまう可能性があった。これに対し本実施形態では、予め1つ前のスイッチング周期において、ゼロ電流検出タイミングが判明しているため、次のスイッチング周期にてそのタイミングを使用することにより、スイッチング素子の振動電圧のボトム付近で遅れなくスイッチング素子をターンオンすることができる。
【0037】
因みに、交流電源1は商用周波数50Hzまたは60Hzの交流電圧なので、力率改善回路2に印加される電圧の瞬時値は交流電源の位相角によって異なる。例えば交流電源1の位相角が0°、すなわちゼロクロス時点の場合、交流電源1の瞬時電圧値はゼロなので、位相角が90°までは時間経過とともに位相角が進むと電源電圧は上昇していく。この場合、各スイッチング周期におけるオン時間が一定と仮定すると、インダクタ電流のピーク値は電源電圧の瞬時値に比例する。すなわち、交流電源1の瞬時電圧が上昇するほど、インダクタ電流のピーク値も上昇する。従って、スイッチング素子SW1がオフし、インダクタ電流がエネルギを放出してゼロになるまでの時間、すなわちオフ期間は増加する。よって、厳密には1つ前のスイッチング周期で測定したオフ期間に対して、次のスイッチング周期におけるオフ期間は若干長くなる。この場合、オフ時間が経過した時点で、直ちにスイッチング素子SW1をオンすると、インダクタL1電流がゼロに到達していないため、その次のスイッチング周期で使用するためのオフ期間が計測できない。
【0038】
しかしながら、交流電源1の周波数は50Hzまたは60Hzであり、これに対して、スイッチング素子SW1のスイッチング周波数は一般的に数十kHzから数百kHzであるため、隣り合うスイッチング周期での交流電源1の位相による変動はほぼ無視できるレベルである。すなわち、隣り合うスイッチング周期における交流電源1の電圧はほぼ同一とみなすことができる。更に、スイッチング素子の両端に発生する振動電圧(Vsd)のボトム付近でオンするように調整期間ΔTを有するので、実質的にインダクタL1電流がゼロに到達する前にスイッチング素子SW1がオンしてしまうことはなく、オフ期間を問題なく測定することができる。
【0039】
また、例えば調光動作等により光源9の明るさを絞った状態、すなわち消費電力が小さい状態から、光源9を明るくなる方向に設定して消費電力が増えた場合もスイッチング素子のオン時間が増加するため、オフ期間も増加する。しかし、オン時間の変動幅は、隣り合うスイッチング周期においては、ほぼ無視できるほど小さく、スイッチング素子SW1の振動電圧がボトム付近でオンするための調整期間ΔTも有するので、インダクタL1電流がゼロになる前にスイッチング素子SW1がオンすることはない。よって、確実に次のスイッチングのためのオフ期間を計測することができる。
【0040】
なお、交流電源1の瞬時電圧値が位相角90°から180°の、時間経過とともに電圧値が低下する範囲、又は光源9が明るい状態から調光動作により消費電力を小さくする方向では、オフ期間は1つ前のスイッチング周期と比較して、原理的には短くなる。しかし、上述のとおり、実使用上はその時間差は無視できるレベルであり、スイッチング素子のオンタイミングがずれることによる影響はない。
【0041】
以上のように、臨界モードで動作する力率改善回路において、インダクタ電流がゼロになってからスイッチング素子SW1をオンするタイミングを、1つ前のスイッチング周期におけるオフ期間を用いて決めるので、検出遅れが発生しない。これにより、スイッチング素子SW1に印加される電圧が低い状態でスイッチング素子SW1をオンできるので、ゼロ電圧スイッチングに近い動作が可能となり、スイッチング損失を抑制できる。したがって、より高効率な点灯装置を提供することができる。
【0042】
また、スイッチング素子SW1として炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体を用いて、シリコンなどを材料とするスイッチング素子を用いた場合より高周波で駆動することとしてもよい。この場合でも、実施の形態1に係る点灯装置ではあるスイッチング周期においてスイッチング素子をオフすべき期間は、そのスイッチング周期が始まる前に確定しているので、処理速度が高速でない安価なマイコンが使用でき低コスト化ができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、1つ前のスイッチング周期におけるオフ期間を用いて次のスイッチング周期におけるスイッチング素子SW1のオンタイミングを決定した。具体的には、制御部4は、スイッチング周期の度にオフ期間を測定し、測定したオフ期間は、オフ期間が測定されたスイッチング周期の直後のスイッチング周期において使用される。しかしながら、1つ前のスイッチング周期におけるオフ期間を、その直後のスイッチング周期で用いることは必須ではない。スイッチング素子のオンタイミングのずれに影響がない範囲であれば、例えば2つ前のスイッチング周期におけるオフ期間を用いてもよい。言い換えると、測定したオフ期間を、次のスイッチング周期におけるオンタイミングのみならず、更にその次のスイッチング周期のオンタイミングの決定に用いるなど、連続する複数周期に渡って用いてもよい。一例によれば、制御部4は、上述の合計期間を、オフ期間が測定されたスイッチング周期の後の連続する2回以上のスイッチング周期において、スイッチング素子をオフする期間として使用することができる。これにより、全てのスイッチング周期においてオフ期間を測定する必要がなくなるので、マイコンの処理負荷を軽減することができる。例えば、制御部4は、複数のスイッチング周期のうち、オフ期間を測定するスイッチング周期と、オフ期間を測定しないスイッチング周期を定めることができる。
【0044】
したがって、制御部4は、スイッチング素子のあるスイッチング周期における「オフ期間」に、予め定められた「調整期間」を加えた「合計期間」を、そのスイッチング周期の後のスイッチング周期においてスイッチング素子をオフする期間とすることができる。
【0045】
本実施の形態では、力率改善回路2を臨界モードで駆動する例について説明したが、これに限定するものではない。スイッチング素子とインダクタによりエネルギの充放電を行い、直流電圧を生成する様々な直流電源回路において、上述した本実施形態の動作を採用し得る。例えば、DC-DCコンバータ3を臨界モードで駆動する際にも上述の動作を適用することができる。
【0046】
本実施の形態においては定常状態の動作についてのみ説明したが、例えば交流電源1を投入した起動直後で1つ前のスイッチング周期におけるオフ期間が存在しない場合と、起動直後における過渡的な状態でオフ期間が正確に測定できない場合が想定される。これらの起動直後においては通常の臨界モード動作としてゼロ電流検出信号を受けてスイッチング素子SW1をターンオンし、動作が安定してオフ期間が測定可能となった段階で、本実施の形態で述べた動作に切り替えてもよい。「動作が安定してオフ期間が測定可能となった段階」というのは、例えば検出巻線L2の電圧VL2の波形が安定した段階のことをいう。
【0047】
このような起動直後の事情を考慮し、制御部4は、直流電源回路に電源投入した直後の予め定められた期間はスイッチング素子のスイッチング周期で得られたオフ期間をそのスイッチング周期のオフ期間を決めるために用い、予め定められた期間が経過すると前述の合計期間を用いた制御に移行し得る。
【0048】
以下の実施の形態に係る点灯装置、照明器具、点灯装置の制御方法については、実施の形態1との相違点を中心に説明する。実施の形態1において説明した変形は以下の実施の形態に係る点灯装置、照明器具、点灯装置の制御方法にも応用し得る。
【0049】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る点灯装置110の回路構成図である。実施の形態1と同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。本実施の形態ではDC-DCコンバータ3の構成及び調光時における動作について述べる。本実施形態では、直流電源回路を構成するDC-DCコンバータ3は光源の点灯に用いられる。
【0050】
DC-DCコンバータ3は例えば降圧チョッパ型であり、インダクタL3、例えばGaNなどのワイドバンドギャップ半導体で構成されるスイッチング素子SW2、ダイオードD2及び平滑コンデンサC3を備えている。DC-DCコンバータ3は力率改善回路2から直流電圧を受けて、スイッチング素子SW2とインダクタL3でエネルギの充放電を行い、光源9の点灯に適した直流電圧及び直流電流を出力する。これにより光源9は点灯する。インダクタL3には検出巻線L4が磁気的に結合されている。また、DC-DCコンバータ3は、出力電流を検出する出力電流検出抵抗R2を備えている。
【0051】
DC-DCコンバータ3の制御部5は、電流比較部5a、ゼロ電流検出部5b、時間計測部5c、駆動信号生成部5d及びゲート駆動部5eを備えている。制御部5は少なくとも一部をマイクロコンピュータで構成してもよい。また、制御部4と制御部5を共通のマイクロコンピュータとしてもよい。制御部5は、DC-DCコンバータ3の出力電流、すなわち光源9に流れる電流が予め定められた電流値となるように、スイッチング素子SW2を制御する。予め定められた電流値は、例えば、室内の壁面に取り付けられた調光器又はリモコン等で設定する明るさの設定値で決まる。すなわち、調光器又はリモコン等から出力される調光信号を制御部5が受けて、それに対応した電流値となるようにスイッチング素子SW2を制御する。
【0052】
ゲート駆動部5eは駆動信号生成部5dから出力されたゲート信号を受けて、スイッチング素子SW2のオンオフ動作を行う。ゼロ電流検出部5bは、検出巻線L4に発生する電圧を受けて、インダクタL3に流れる電流がゼロ又はゼロに近い値となるタイミングを検出し、時間計測部5cに出力する。駆動信号生成部5dは時間計測部5cから受け取ったオフ期間を基に、次のスイッチング周期におけるスイッチング素子SW2のターンオンタイミングを決定する。
【0053】
次に、
図4の動作波形を用いて、外部から入力される調光信号により光源9の明るさを絞った調光状態、すなわち点灯装置110の消費電力が全光時より小さい軽負荷で動作する場合について説明する。
【0054】
(期間t0~t1)
ここでは、DC-DCコンバータ3の動作が定常動作状態で、ゲート駆動部5eによってスイッチング素子SW2がターンオンするタイミングから説明する。スイッチング素子SW2がオンすると、インダクタL3に電流が流れ、電流が直線的に増加していく。このとき、インダクタL3には
図3の矢印の方向に電圧VL3が印加され、検出巻線L4には矢印の方向に電圧VL4が発生し、ゼロ電流検出部5bには負電圧が入力される。
【0055】
(時刻t1)
予め定められた時間が経過すると、ゲート駆動部5eはスイッチング素子SW2をオフし、スイッチング素子SW2の電流を遮断する。スイッチング素子SW2のオン時間は電流比較部5aの比較結果によって決定する。すなわち、目標電流値信号E2と比較して、出力電流検出抵抗R2の発生電圧が小さければオン時間は長くなる方向に制御され、出力電流検出抵抗R2の発生電圧が大きければオン時間は短くなる方向に制御される。
【0056】
(期間t1~t2)
スイッチング素子SW2がオフすると、時間計測部5cはカウントを開始し、スイッチング素子SW2がオフしたタイミングからの時間を計測する。スイッチング素子SW2がオフすると、インダクタL3に蓄えられたエネルギは、ダイオードD2を介して、平滑コンデンサC3に放出される。このとき、インダクタL3に発生する電圧は、スイッチング素子SW2オン時とは逆向きの電圧となる。すなわち、
図3に示す矢印とは逆方向の電圧が発生する。これにより検出巻線L4に発生する電圧も、
図3に示す矢印とは逆方向となり、ゼロ電流検出部5bには正電圧が入力される。インダクタL3がエネルギを放出するため、ダイオードD2を介して平滑コンデンサC2に流入する電流は減少していく。
【0057】
(時刻t2~t3)
インダクタL3がエネルギを放出し終えると、インダクタL3電流がゼロになり、共振現象を伴う振動電圧がインダクタL3に発生する。これに伴って検出巻線L4の電圧は急速に低下する。ゼロ電流検出部5bは、検出巻線L4の立下り電圧が、予めプログラム等で設定した閾値電圧を下回るとこれを1回目の立下りとしてカウントする。
図4において1回目の立ち下がりのカウントのタイミングはXで示されている。その後、駆動信号生成部5dはこのままスイッチング素子SW2をオフ状態に維持する。すると、スイッチング素子SW2の両端電圧Vsdは共振動作を継続するため、再び電圧の上昇と下降を繰り返す振動電圧が生じる。本実施の形態においては、ゼロ電流検出部5bは振動電圧の2回目の立下りを検出すると、時間計測部5cに対しゼロ電流検出信号Szを出力する。
図4において2回目の立ち下がりのカウントのタイミングはYで示されている。時間計測部5cはゼロ電流検出信号Szを受けると、ここまでの経過時間をオフ期間として駆動信号生成部5dに送り、駆動信号生成部5dはこれを記憶する。このように計測されたオフ期間は、
図4のオフ期間Tbである。
【0058】
(時刻t3~t4)
駆動信号生成部5dは、スイッチング素子SW2のターンオフ後の経過時間が、時刻t0以前の1つ前のスイッチング周期においてオフ期間Tbの測定と同じ測定方法で時間計測部5cが計測したオフ時間に、予め定められた調整期間を加えた合計時間に到達すると、スイッチング素子SW2を再びオンする。
図4では、時刻t1からの経過時間が、時刻t0より前に測定されたオフ期間であるオフ期間Taと調整期間Δtの合計時間となると、スイッチング素子SW2をオンすることが示されている。すなわち、スイッチング素子SW2の両端の共振電圧の立下りが2回目を経過した後の、スイッチング素子SW2の両端電圧が低い状態においてスイッチング素子SW2をターンオンする。これにより、スイッチング素子SW2に印加する電圧が低い状態でスイッチング素子をスイッチングできるため、スイッチング損失を低減できる。
【0059】
(時刻t4~t5)
スイッチング素子SW2がオンすると再び時刻t0の条件に戻り、同様の動作を繰り返す。時刻t1から時刻t3の期間において時間計測部5cでカウントしたオフ期間Tbは、次の時刻t8におけるターンオンのタイミングを決定する要素となる。具体的には、オフ期間Tbに調整期間Δtを加えた合計時間に到達した時点である時刻t8において、スイッチング素子SW2が再びオンする。時刻t5から時刻t7までの期間にはオフ期間Tcが測定され、そのオフ期間Tcが、次のスイッチング周期におけるオフ期間として利用される。
【0060】
以上のように、調光点灯時は、インダクタL3のゼロ電流がゼロになっても直ちにスイッチング素子SW2をオンせずに、スイッチング素子SW2の両端電圧Vsdの振動電圧の立下りが予め定められた回数経過するまで、ターンオンを遅延する。ここで、振動電圧の極性を反転させたり、振動電圧の信号を反転させて処理したりすることがあることを考慮すると、振動電圧の立下りの検出は、振動電圧の立ち上がりの検出に置きかえ得る。
【0061】
制御部5は、光源の調光時には、スイッチング素子SW2がオフしてから、検出巻線L4に発生する振動電圧の振動が2周期以上となるまでの期間を、オフ期間として測定する。そして、そのオフ期間を、次回以降のスイッチング周期におけるスイッチング素子SW2のオフ期間として用いる。こうすることで、スイッチング素子SW2のターンオンが遅延するので、スイッチング周波数の上昇が抑制される。例えば、調光時においてスイッチング素子SW2の振動電圧の立下りが1回目のタイミングでターンオンする臨界モードで動作させると、軽負荷のため、オン時間が短く、且つインダクタL3のエネルギを放出する期間すなわち時刻t1からt2までの期間も非常に短くなる。これにより、全光時と比較して著しく駆動周波数が上昇し、スイッチング損失が増加してしまう。
【0062】
これに対し本実施の形態では、スイッチング素子SW2の振動電圧の立下りをカウントし、そのカウントが予め定められた回数に達するまでの時間をオフ期間として計測し、そのオフ期間に応じて次のスイッチング周期におけるスイッチング素子SW2のオンタイミングを決める。これは、スイッチング素子SW2のオフ状態を維持し、スイッチング周波数の上昇を抑えることに貢献する。よって、スイッチング損失を低減することができる。また、1つ前のスイッチング周期にてオフ期間を計測して、その次のスイッチング周期にてそのオフ期間を基にオンタイミングを決定するのでマイコンの演算に伴う時間遅れがなく、スイッチング素子に印加される振動電圧のボトム付近でスイッチングすることが可能となり、スイッチング損失を抑制できる。
【0063】
また、点灯中に調光動作等により光源の明るさを変更しても、隣り合うスイッチング周期においては、スイッチング素子SW2のオン時間変動は無視できるほど微小であるため、スイッチング素子SW2のオンタイミングが振動電圧のボトム付近から大幅にずれることはない。例えば、調光器により光源の明るさが暗い状態から明るい状態に変化し、1つ前のスイッチング周期のオン時間と比較して今回のスイッチング周期のオン時間が増加しても、オン時間の増加量はわずかである。さらに、予め定めた調整期間Δtを経過してからスイッチング素子SW2をターンオンするため、そのスイッチング周期において、振動電圧が予め定められた回数だけ立ち下がる前にスイッチング素子がオンしてしまうことはない。
【0064】
なお、ここでは、調光時の動作について説明したが、全光時は振動電圧の立下り回数が1回の臨界モードで動作させてもよい。その場合、制御部5は、光源の全光時には、スイッチング素子SW2がオフしてから検出巻線L4に発生する振動電圧の振動が1周期目となるまでの期間を、オフ期間として測定する。別の例では、全光時においても振動電圧の複数回の立下りを検知する不連続モードで動作させてもよい。また、調光率に応じて、オフ期間を定義する振動電圧の立下り回数を変更してもよい。この場合、光源の消費電力が小さくなるほど検出する立下り回数を増加させてもよい。例えば、制御部5は、光源の調光時には、光源の調光率が低いほど、オフ期間の終期とする振動電圧の振動回数を増加させることができる。これにより、駆動周波数の上昇を抑制できる。
【0065】
また、本実施形態では軽負荷時の動作の説明として、DC-DCコンバータ3を例に説明したが、本実施形態で説明した動作は、スイッチング素子とインダクタによりエネルギの充放電を行い直流電圧を生成する様々な直流電源回路において実現し得る。例えば、力率改善回路2においても同様の動作を実現することができる。例えば、力率改善回路2の軽負荷時は不連続モードとして、振動電圧の立下りが予め定められた回数に達するまでの時間をオフ期間として計測して、次のスイッチング周期にてそのオフ期間を基にオンタイミングを決定することで、駆動周波数の上昇抑制を実現でき、且つスイッチング素子に印加される振動電圧のボトム付近でスイッチング素子をスイッチングすることによるスイッチング損失の抑制ができる。
【0066】
実施の形態1、2のどちらにおいても、計測するオフ期間の終期は「検出巻線に振動電圧が発生する」任意の時点とすることができる。実施の形態1、2のどちらにおいても、合計期間を用いたことで、スイッチング素子をオンするタイミングとスイッチング素子のソースドレイン間電圧が最小になるタイミングが一致し得る。しかしながら、スイッチング素子をオンするタイミングとスイッチング素子のソースドレイン間電圧が最小になるタイミングが概ね一致すれば多少のずれがあってもスイッチング損失が抑制され得る。
【0067】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3に係る照明器具200の断面図である。照明器具200は、照明器具本体40、コネクタ41、光源基板42、及び点灯装置43を備えている。照明器具本体40は、点灯装置43などを取り付けるための筺体である。コネクタ41は、商用電源などの交流電源から電力の供給を受けるための接続部である。光源基板42は、LED又は有機ELなどの光源42aを実装した基板である。
【0068】
点灯装置43の回路構成は、上述した点灯装置のいずれかと同じ回路構成である。点灯装置43は、コネクタ41と配線44を介して交流電源からの電力供給を受ける。点灯装置43は、入力した電力を変換し、変換された電力を配線45を介して光源基板42に供給する。点灯装置43から供給された電力により、光源基板42に実装された光源42aが点灯する。
【0069】
これにより、実施の形態1、2のいずれかにかかる点灯装置の利点を備えた照明器具200が提供される。照明器具200によれば、実施の形態1、2で述べた点灯装置のいずれか1つを備えることで、例えば炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子を用いて高周波スイッチングを行っても、スイッチング素子に印加される振動電圧のボトム付近でスイッチングが可能となるため、スイッチング損失を低減することができる。
【0070】
なお、ここまでに説明した変形例は、その変形例が記載された実施の形態以外の実施の形態にも応用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 交流電源、 2 力率改善回路、 3 DC-DCコンバータ、 4,5 制御部、 9 光源、 100,110 点灯装置、 200 照明器具