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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】駆動装置および配管の接続構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20230808BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20230808BHJP
   F16L 13/10 20060101ALI20230808BHJP
   B60K 11/02 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
H02K5/20 ZHV
H02K9/19 A
H02K9/19 B
F16L13/10
B60K11/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019075819
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020174480
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】中松 修平
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祥平
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003214(WO,A1)
【文献】特開平11-030377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 9/19
F16L 13/10
B60K 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸を回転させる駆動装置であって、
モータと、
流体が流れる流路を有し、前記モータを内部に収容するハウジングと、
前記流路に接続される配管と、
前記配管と前記流路とを接続する接続部と、
を備え、
前記接続部は、前記配管が接続される筒状のコネクタと、所定方向に延び前記流路の接続口と前記コネクタとを接続する筒状の接続部材と、を備え、
前記接続部材は、筒部と、前記筒部の外周面から外方に張り出したフランジ部と、を有し、
前記筒部の所定方向の一方の端部は、前記接続口の内部に配置され、
前記筒部の前記所定方向の他方の端部は、前記コネクタの内部に配置され、
前記フランジ部は、前記コネクタの前記所定方向の一方の端面および前記ハウジングの前記接続口が設けられた所定方向の他方の端面に、それぞれ接触し、
前記コネクタの内周面のうち前記所定方向の一方の端部と前記筒部の外周面との間には、接着剤を収容する第1接着剤収容部が設けられ、
前記接続口の内縁部と前記筒部の外周面との間には、接着剤を収容する第2接着剤収容部が設けられ、
前記第1接着剤収容部のうち前記所定方向の一方側の端部および前記第2接着剤収容部のうち前記所定方向の他方側の端部は、前記フランジ部によって、それぞれ塞がれる、駆動装置。
【請求項2】
前記接続部材の構成材料の弾性率は、前記ハウジングの構成材料の弾性率および前記コネクタの構成材料の弾性率よりも高い、請求項に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ハウジングの構成材料および前記コネクタの構成材料は、アルミニウムを含む、請求項に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記流路を有し、インバータを収容するインバータ筐体を含み、
前記接続部は、前記配管と前記インバータ筐体とを接続し、
前記流体は、前記インバータを冷却する冷却水である、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
複数の前記接続部を有し、
前記ハウジングは、前記流路を有し、前記モータを収容するモータハウジングを含み、
前記配管は、前記インバータ筐体の前記流路に接続される第1配管と、前記モータハウジングの前記流路に接続される第2配管と、を含み、
前記複数の接続部は、
前記第1配管と前記インバータ筐体とを接続する第1接続部と、
前記第2配管と前記モータハウジングとを接続する第2接続部と、を有する、
請求項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、
前記モータに接続される減速装置と、
前記減速装置に接続され、前記車軸を作動軸周りに回転させる差動装置と、をさらに備え、
前記減速装置および前記差動装置は前記ハウジングの内部に収容される、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置および配管の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却液を用いて所定のハウジングの内部を冷却する機構を備えた駆動装置が知られる。例えば特許文献1には、水冷オイルクーラーと、電動オイルポンプと、水冷オイルクーラーと電動オイルポンプとを接続するATF流路と、を有する冷却回路を備えたハイブリッド車両用のモータジェネレータが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-118683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の駆動装置は、ハウジングと冷却液用配管とを接続する接続部を備える。従来の接続部においては、冷却液用配管の先端に取付金具が設けられ、ハウジングの接続口に取付金具が接続される。しかし、従来の接続部では、種々の取付金具が用いられる場合があり、取付金具によっては、冷却液用配管をハウジングに安定して固定できないおそれがあった。その結果、接続部における冷却液のシール性が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、配管をハウジングに安定して固定しやすい接続構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の他の一つの態様は、配管をハウジングに安定して固定しやすい配管の接続構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両の車軸を回転させる駆動装置であって、モータと、流体が流れる流路を有し、前記モータを内部に収容するハウジングと、前記流路に接続される配管と、前記配管と前記流路とを接続する接続部と、を備える。前記接続部は、前記配管が接続される筒状のコネクタと、所定方向に延び前記流路の接続口と前記コネクタとを接続する筒状の接続部材と、を備える。前記接続部材は、筒部と、前記筒部の外周面から外方に張り出したフランジ部と、を有し、前記筒部の所定方向の一方の端部前記接続口の内部に配置され、前記筒部の前記所定方向の他方の端部前記コネクタの内部に配置される。前記フランジ部は、前記コネクタの前記所定方向の一方の端面および前記ハウジングの前記接続口が設けられた所定方向の他方の端面にそれぞれ接触する。前記コネクタの内周面のうち前記所定方向の一方の端部と前記筒部の外周面との間には、接着剤を収容する第1接着剤収容部が設けられ、前記接続口の内縁部と前記筒部の外周面との間には、接着剤を収容する第2接着剤収容部が設けられ、前記第1接着剤収容部のうち前記所定方向の一方側の端部および前記第2接着剤収容部のうち前記所定方向の他方側の端部は、前記フランジ部によって、それぞれ塞がれる。
【0007】
本発明の配管の接続構造の一つの態様は、ハウジングの内部に導入する流体を流通させる配管と、前記配管と前記ハウジングとを接続する接続部と、を備える。前記接続部は、前記配管が接続される筒状のコネクタと、前記ハウジングの接続口と前記コネクタとを接続する筒状の接続部材と、を備える。前記接続部材の軸方向の一方の端部が前記接続口の内部に配置され、前記接続部材の前記軸方向の他方の端部が前記コネクタの内部に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、配管をハウジングに安定して固定しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の駆動装置を模式的に示す概略構成図である。
図2図2は、接続部を構成するコネクタの斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、図1に示す本実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、駆動装置が搭載される車両の前後方向である。本実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。本実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0011】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。なお、図1は、駆動装置の模式図であるため、各構成要素の位置関係が実際の位置関係とは異なる場合がある。
【0012】
図1に示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。本実施形態において軸方向は、所定方向に相当し、所定方向の一方は、左側に相当し、所定方向の他方は、右側に相当する。
【0013】
図1に示す本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0014】
図1に示すように、駆動装置1は、モータ2と、減速装置4と、差動装置5と、インバータユニット8と、ハウジング6と、を備える。ハウジング6は、内部にモータ2を収容するモータハウジング81と、内部に減速装置4および差動装置5を収容するギヤハウジング82と、内部にインバータ8aを収容するインバータ筐体83と、を有する。ギヤハウジング82は、モータハウジング81の左側に位置する。
【0015】
本実施形態において、モータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、ベアリング26,27と、を備える。ロータ20は、水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転する。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。ロータ20のトルクは、減速装置4に伝達される。
【0016】
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
【0017】
シャフト21は、ハウジング6のモータハウジング81とギヤハウジング82とに跨って延びる。シャフト21の左側の端部は、ギヤハウジング82の内部に突出する。シャフト21の左側の端部には、減速装置4の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
【0018】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。より詳細には、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、モータハウジング81の内周面に固定される。図示は省略するが、ステータコア32は、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。
【0019】
コイルアセンブリ33は、ステータコア32に装着される。コイルアセンブリ33は、複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティースにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周にわたって等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
【0020】
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうち、ステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうち、ステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。本実施形態において、コイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
【0021】
ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング26は、シャフト21のうち、ロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータハウジング81のうち、ロータ20およびステータ30の右側を覆う壁部に保持される。
【0022】
ベアリング27は、ロータ20のうち、ステータコア32よりも左側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態において、ベアリング27は、シャフト21のうち、ロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、後述する隔壁61cに保持される。
【0023】
減速装置4は、モータ2に接続される。より詳細には、減速装置4は、シャフト21の左側の端部に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
【0024】
第1のギヤ41は、シャフト21の左側の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、中間軸J2に沿って延びる。本実施形態において、中間軸J2は、モータ軸J1と平行である。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。
【0025】
第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。第2のギヤ42の外径は、第3のギヤ43の外径よりも大きい。
【0026】
モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。より詳細には、モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において、減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0027】
差動装置5は、減速装置4に接続される。これにより、差動装置5は、減速装置4を介してモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達する。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、車軸55を差動軸J3回りに回転させる。これにより、駆動装置1は、車両の車軸55を回転させる。
【0028】
差動軸J3は、モータ軸J1と平行である。すなわち、差動軸J3の軸方向は、モータ軸J1の軸方向と同じ方向である。
【0029】
差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、差動軸J3回りに回転する。リングギヤ51は、第3のギヤ43と噛み合う。これにより、リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。
【0030】
ハウジング6は、モータハウジング81と、ギヤハウジング82と、インバータ筐体83と、から構成される。ハウジング6は、モータハウジング81の内部とギヤハウジング82の内部とを軸方向に区画する隔壁61cを有する。隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。モータハウジング81の内部とギヤハウジング82の内部とは、隔壁開口68を介して互いに繋がる。
【0031】
ハウジング6の内部には、オイルOが収容される。より詳細には、モータハウジング81の内部およびギヤハウジング82の内部には、オイルOが収容される。ギヤハウジング82の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPの油面Sは、リングギヤ51の下側の端部よりも上側に位置する。これにより、リングギヤ51の下側の端部は、ギヤハウジング82内のオイルOに浸漬される。オイル溜りPの油面Sは、差動軸J3および車軸55よりも下側に位置する。
【0032】
オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータハウジング81の内部に送られる。モータハウジング81の内部に送られたオイルOは、モータハウジング81の内部における下部領域に溜まる。モータハウジング81の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を介してギヤハウジング82に移動し、オイル溜りPに戻る。
【0033】
本明細書において、「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態において、モータハウジング81の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータハウジング81の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータハウジング81の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤハウジング82に移動していてもよい。なお、後述する油路90によってモータハウジング81の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータハウジング81の内部に残っていてもよい。
【0034】
本明細書において、「リングギヤ51の下側の端部がギヤハウジング82内のオイルOに浸漬される」とは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、リングギヤ51の下側の端部がギヤハウジング82内のオイルOに浸漬されればよく、モータ2が駆動している最中またはモータ2が停止している間の一部において、リングギヤ51の下側の端部がギヤハウジング82内のオイルに浸漬されなくてもよい。例えばオイル溜りPのオイルOが後述する油路90によってモータハウジング81の内部に送られた結果として、オイル溜りPの油面Sが下がり、一時的にリングギヤ51の下側の端部がオイルOに浸漬しない状態となってもよい。
【0035】
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0036】
インバータユニット8は、インバータ8aと、インバータ筐体83と、を有する。インバータ8aは、モータ2に電力を供給する。インバータ筐体83は、図示しないラジエータで冷却された冷却水(流体)が流れる流路38を有する。本実施形態において流路38は、インバータ筐体83のうち下側の壁部に設けられる。本実施形態においては、流路38を流れる冷却水によってインバータ8aが冷却される。本実施形態においては、流路38を流れる流体として水が用いられるが、水以外の流体が用いられてもよい。
【0037】
駆動装置1には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータハウジング81の内部とギヤハウジング82の内部とに跨って設けられる。
【0038】
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
【0039】
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤハウジング82内に設けられる。
【0040】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面が高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
【0041】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、シャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
【0042】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い、遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0043】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータハウジング81内の下部領域に溜る。モータハウジング81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤハウジング82に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
【0044】
第2の油路92において、オイルOは、オイル溜りPからステータ30の上側まで引き上げられてステータ30に供給される。すなわち、第2の油路92は、オイルOをステータ30の上側からステータ30に供給する。第2の油路92には、オイルポンプ96と、クーラー97と、第2のリザーバ10と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、を有する。
【0045】
第1の流路92a、第2の流路92bおよび第3の流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第1の流路92aは、オイル溜りPとオイルポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、オイルポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。第3の流路92cは、クーラー97から上側に延びる。第3の流路92cは、モータハウジング81の壁部に設けられる。図示は省略するが、第3の流路92cは、ステータ30の上側においてモータハウジング81の内部に開口する供給口を有する。当該供給口は、モータハウジング81の内部にオイルOを供給する。
【0046】
オイルポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。オイルポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92cおよび第2のリザーバ10を介して、オイルOをモータ2に供給する。
【0047】
クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97には、第1の流路92aおよび第2の流路92bが接続される。第1の流路92aおよび第2の流路92bは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。
【0048】
駆動装置1には、図示しないラジエータで冷却され、クーラー97およびインバータユニット8内のインバータ8aを冷却する冷却水を循環させる冷却水循環流路94が設けられる。冷却水循環流路94は、図示しないラジエータとインバータ筐体83とを接続する冷却水用配管98(第1配管)と、インバータ筐体83の流路38と、インバータ筐体83とモータハウジング81とを接続する冷却水用配管95と、モータハウジング81およびクーラー97の流路44と、モータハウジング81と図示しないラジエータとを接続する冷却水用配管99(第2配管)と、を有する。冷却水用配管98と流路38とは、第1接続部35を介して接続される。流路44と冷却水用配管99とは、第2接続部34を介して接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、流路44を通過する冷却水(流体)との間で熱交換されて冷却される。
【0049】
第2のリザーバ10は、第2の油路92の一部を構成する。第2のリザーバ10は、モータハウジング81の内部に位置する。第2のリザーバ10は、ステータ30の上側に位置する。第2のリザーバ10は、ステータ30によって下側から支持され、モータ2に設けられる。第2のリザーバ10は、例えば、樹脂材料から構成される。
【0050】
本実施形態において、第2のリザーバ10は、上側に開口する樋状である。第2のリザーバ10は、オイルOを貯留する。本実施形態において、第2のリザーバ10は、第3の流路92cを介してモータハウジング81内に供給されたオイルOを貯留する。第2のリザーバ10は、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する供給口10aを有する。これにより、第2のリザーバ10に貯留されたオイルOをステータ30に供給できる。
【0051】
第2のリザーバ10からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータハウジング81内の下部領域に溜る。モータハウジング81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤハウジング82に移動する。以上のように、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
【0052】
以下、第1接続部35の構成について説明する。なお、第2接続部34は、第1接続部35と同様の構成を有するため、第1接続部35を例に挙げて説明する。
図2は、第1接続部35を構成するコネクタ36の斜視図である。
図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
図3に示すように、第1接続部35は、円筒状のコネクタ36と、円筒状の接続部材37と、を備える。コネクタ36には、冷却水用配管98が接続される。接続部材37は、流路38に設けられた接続口38hとコネクタ36とを接続する。
【0053】
図2に示すように、接続口38hは、インバータ筐体83の一つの側面83cの下部に設けられた端面38dに設けられる。図3に示すように、接続口38hは、インバータ筐体83の外部に向けて開口し、インバータ筐体83の流路と外部とを繋ぐ。接続口38hは、接続口38hが設けられたインバータ筐体83の側面83cの法線方向に沿って延びる中心軸J5を有する。接続口38hの中心軸J5に沿って視た接続口38hの形状は、円形である。
【0054】
図2に示すように、コネクタ36は、貫通孔36hを有する筒状のコネクタ本体36tを有する。コネクタ本体36tの外周面に沿って、周方向に延びる溝部36vが設けられている。コネクタ本体36tに、一つの溝部36vが設けられていてもよいし、複数の溝部36vが設けられていてもよい。図3に示す冷却水用配管98の端部に、コネクタ36と接続される図示しない取付金具が設けられる。冷却水用配管98の取付金具の一部がコネクタ36の溝部36vに嵌まることによって、冷却水用配管98はコネクタ36に固定される。
【0055】
図3に示すように、接続部材37は、軸方向に延びる筒状である。接続部材37は、円筒状の筒部47と、筒部47の外周面から外方に張り出したフランジ部48と、を有する。筒部47は、中心軸J5を中心軸とする円筒状である。筒部47の軸方向の一方の端部47aは、接続口38hの内部に配置される。筒部47の軸方向の他方の端部47bは、コネクタ36の内部に配置される。以下、筒部47の一方の端部47aを第1端部47aと呼び、筒部47の他方の端部47bを第2端部47bと呼ぶ。
【0056】
コネクタ36は、中心軸J5を中心軸とする円筒状である。コネクタ36は、軸方向の一方の端面36aと、内周面36bと、を有する。フランジ部48は、コネクタ36の端面36aとインバータ筐体83の接続口38hが設けられた端面38dとの間に位置する。
【0057】
コネクタ36の内周面36bと接続部材37の外周面37cとの間に、接着剤49が設けられる。外周面37cは、筒部47のうちコネクタ36の内部に配置される部分の外周面である。コネクタ36の端面36aと内周面36bとのなす角部には、平面状の面取り加工が施される。以下、端面36aと内周面36bとが交わる角部を斜めに除去した部分を面取り部39と呼ぶ。また、コネクタ36の端面36aとフランジ部48とは、互いに接している。これにより、コネクタ36と筒部47とフランジ部48とによって閉じられた空間が形成される。この閉じられた空間を第1接着剤収容部R1と呼ぶ。第1接着剤収容部R1は、筒部47の外周面に沿って環状に連続した断面形状が三角形状の空間である。第1接着剤収容部R1は、コネクタ36の内周面36bのうち軸方向の一方の端部と筒部47の外周面との間に設けられる。第1接着剤収容部R1のうち軸方向の一方の端部は、フランジ部48によって塞がれる。
【0058】
第1接着剤収容部R1に、コネクタ36の内周面36bと接続部材37の外周面37cとの間に設けられた接着剤49が収容される。なお、コネクタ36の端面36aと内周面36bとのなす角部に、曲面状の面取り加工が施されていてもよい。また、接着剤49は、第1接着剤収容部R1の全体に収容されていてもよいし、第1接着剤収容部R1の一部に収容されていてもよい。または、第1接着剤収容部R1に、接着剤49が収容されていなくてもよい。
【0059】
流路38のうち接続部材37が配置された部分の内周面38eと接続部材37の外周面37fとの間に、接着剤49が設けられる。外周面37fは、筒部47のうち流路38の内部に配置される部分の外周面である。インバータ筐体83の端面38dと内周面38eとのなす角部には、平面状の面取り加工が施される。端面38dと内周面38eとが交わる角部を斜めに除去した部分を面取り部40と呼ぶ。また、インバータ筐体83の端面38dとフランジ部48とは、互いに接している。これにより、インバータ筐体83と筒部47とフランジ部48とによって閉じられた空間が形成される。この閉じられた空間を第2接着剤収容部R2と呼ぶ。第2接着剤収容部R2は、筒部47の外周面に沿って環状に連続した断面形状が三角形状の空間である。第2接着剤収容部R2は、接続口38hの内縁部と筒部47の外周面との間に設けられる。第2接着剤収容部R2のうち軸方向の他方の端部は、フランジ部48によって塞がれる。
【0060】
第2接着剤収容部R2に、流路38の内周面38eと接続部材37の外周面37fとの間に設けられた接着剤49が収容される。なお、インバータ筐体83の端面38dと内周面38eとのなす角部に、曲面状の面取り加工が施されていてもよい。また、接着剤49は、第2接着剤収容部R2の全体に収容されていてもよいし、第2接着剤収容部R2の一部に収容されていてもよい。または、第2接着剤収容部R2に、接着剤49が収容されていなくてもよい。
【0061】
インバータ筐体83およびコネクタ36は、例えばアルミニウム単体、アルミニウム合金等のアルミニウムを含む材料で構成される。なお、インバータ筐体83の構成材料およびコネクタ36の構成材料は、アルミニウムを含む材料に限定されない。インバータ筐体83の構成材料とコネクタ36の構成材料とは、互いに異なっていてもよい。接続部材37は、例えばステンレス等の鉄を含む材料で構成される。なお、接続部材37の構成材料は、鉄を含む材料に限定されない。また、接続部材37の構成材料の弾性率は、インバータ筐体83の構成材料の弾性率およびコネクタ36の構成材料の弾性率よりも大きいことが望ましい。
【0062】
冷却水用配管98をインバータ筐体83に接続する際には、例えば以下の手順が採られる。なお、以下に示す接続手順は一例であって、この接続手順に限定されない。
【0063】
最初に、接続作業を行う作業者等は、コネクタ36に接続部材37を取り付ける。なお、本明細書において「作業者等」とは、各作業を行う作業者および装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、装置のみによって行われてもよいし、作業者と装置とによって行われてもよい。
【0064】
まず、作業者等は、接続部材37の外周面37cに接着剤49を塗布する。
次に、作業者等は、接続部材37のうち、接着剤49を塗布した外周面37cの側をコネクタ36の内部に圧入する。このとき、接続部材37の外周面37cがコネクタ36の内周面36bに擦れながら、接続部材37が第2端部47bの側からコネクタ36の内部に順次挿入される。これに伴い、接着剤49の余剰部分が接続部材37の第2端部47bの側からフランジ部48の側に移動する。作業者等は、接続部材37を、コネクタ36の端面36aがフランジ部48に接する位置までコネクタ36の内部に圧入する。これにより、コネクタ36に接続部材37が固定される。
【0065】
本実施形態によれば、少なくともコネクタ36の内周面36bと接続部材37の外周面37cとの間に接着剤49が設けられる。そのため、単に圧入のみを用いてコネクタと接続部材とを接続した構成に比べて、コネクタ36と接続部材37との間の機械的強度およびシール性を高められる。
【0066】
また、本実施形態によれば、コネクタ36の内周面のうち軸方向の一方の端部と筒部47の外周面との間に第1接着剤収容部R1が設けられる。そのため、接着剤49の余剰部分は、接続部材37の第2端部47bの側からフランジ部48の側に移動した後に第1接着剤収容部R1内に収容される。すなわち、第1接着剤収容部R1は、余剰の接着剤49を収容する領域として機能する。これにより、接着剤49の余剰部分がコネクタ36の端面36aとフランジ部48との隙間を伝って外部にはみ出すおそれが少なくなる。その結果、駆動装置1の組み立て工程において、コネクタ36と接続部材37との界面の外側にはみ出した接着剤49を拭き取る作業が不要になる。
【0067】
コネクタ36の端面36aと内周面36bとのなす角部に設けられる面取り部を一般的な面取り部よりも大きくし、コネクタ36と接続部材37とで囲まれた環状の第1接着剤収容部R1の容積を接続部材37の外周面37cに塗布する接着剤49の体積よりも大きくすることが望ましい。これにより、接着剤49の余剰部分がコネクタ36の端面36aとフランジ部48との隙間を伝って外部にはみ出すおそれをより少なくできる。
【0068】
次に、作業者等は、接続部材37が取り付けられたコネクタ36をインバータ筐体83に取り付ける。
まず、作業者等は、接続部材37の外周面37fに接着剤49を塗布する。
次に、作業者等は、接続部材37のうち、接着剤49を塗布した外周面37fの側を接続口38hから流路38の内部に圧入する。このとき、接続部材37の外周面37fが流路38の内周面38eに擦れながら、接続部材37が第1端部47aの側から流路38の内部に順次挿入される。これに伴い、接着剤49の余剰部分が接続部材37の第1端部47aの側からフランジ部48の側に移動する。接続部材37を、接続口38hが設けられた端面38dがフランジ部48に接する位置まで接続口38hの内部に圧入する。これにより、接続部材37がインバータ筐体83に固定され、接続部材37を介してコネクタ36がインバータ筐体83に固定される。
【0069】
本実施形態によれば、少なくとも流路38の内周面38eと接続部材37の外周面37fとの間に接着剤49が設けられる。そのため、単に圧入のみを用いて接続口38hと接続部材37とを接続した構成に比べて、接続口38hと接続部材37との間の機械的強度およびシール性を高められる。
【0070】
また、本実施形態によれば、接続口38hの内縁部と筒部47の外周面との間に第2接着剤収容部R2が設けられる。接着剤49の余剰部分は、接続部材37の第1端部47aの側からフランジ部48の側に移動した後に第2接着剤収容部R2内に収容される。そのため、接着剤49の余剰部分が、接続口38hが設けられた端面38dとフランジ部48との隙間を伝って外部にはみ出すおそれが少なくなる。その結果、駆動装置1の組み立て工程において、コネクタ36と接続部材37との界面の外側にはみ出した接着剤49を拭き取る作業が不要になる。
【0071】
接続口38hが設けられた端面38dと内周面38eとのなす角部に設けられる面取り部を一般的な面取り部よりも大きくし、インバータ筐体83と接続部材37とで囲まれた第2接着剤収容部R2の容積を接続部材37の外周面37fに塗布する接着剤49の体積よりも大きくすることが望ましい。これにより、接着剤49の余剰部分が端面38dとフランジ部48との隙間を伝って外部にはみ出すおそれをより少なくできる。
【0072】
なお、作業者等は、上記の手順とは逆に、接続部材37をインバータ筐体83に接続した後、インバータ筐体83に接続された接続部材37にコネクタ36を接続してもよい。
【0073】
次に、作業者等は、冷却水用配管98の取付金具をコネクタ36の溝部36vに嵌めることによって、冷却水用配管98をコネクタ36に接続する。
以上の手順により、冷却水用配管98は、インバータ筐体83に接続される。
【0074】
本実施形態によれば、冷却水用配管98とインバータ筐体83との第1接続部35は、コネクタ36と接続部材37とを備え、接続部材37の第1端部47aが接続口38hの内部に配置され、接続部材37の第2端部47bがコネクタ36の内部に配置される。すなわち、コネクタ36は、接続部材37を介してインバータ筐体83の接続口38hに接続される。そのため、冷却水用配管98に対応してコネクタ36の形状および材質等が変わったとしても、コネクタ36に適応した接続部材37を選択することができる。これにより、冷却水用配管98をインバータ筐体83に安定して固定でき、第1接続部35のシール性を確保できる。
【0075】
この種の接続部においては、一方の部材の一部を他方の部材の内部に圧入する方法が好適に用いられる。ところが、本実施形態のように、コネクタ36とインバータ筐体83との双方がアルミニウムを含む材料で構成される場合、アルミニウムの弾性率が他の多くの金属の弾性率に比べて低いため、コネクタ36の一部をインバータ筐体83の接続口38hに直接圧入することが難しい。これに対して、本実施形態のように、接続部材37の構成材料としてアルミニウムよりも弾性率が高い鉄等の構成材料を用いることにより、接続部材37の第1端部47a側を接続口38hに圧入し、接続部材37の第2端部47b側をコネクタ36に圧入することが可能となる。これにより、簡易な構造で機械的強度およびシール性を有する第1接続部35を実現できる。
【0076】
本実施形態によれば、接続部材37はフランジ部48を有する。そのため、所定の治具を用いてフランジ部48に荷重を加えることにより、接続部材37をコネクタ36およびインバータ筐体83の接続口38hに圧入することが容易である。また、接続部材37をコネクタ36の端面36aがフランジ部48に接するとともに接続口38hが設けられた端面38dに接する位置まで圧入することにより、接続部材37のコネクタ36への圧入部分の長さと流路38への圧入部分の長さとの双方を管理できる。すなわち、接続部材37がフランジ部48を有することにより、接続部材37のコネクタ36および流路38への圧入部分の長さの製造ばらつきを抑えられる。これにより、第1接続部35の機械的強度およびシール性を確保できる。
【0077】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。
例えば、インバータユニット筐体とモータハウジングまたはギヤハウジングとは、単一の部材であってもよい。また、接続部材は、フランジ部を有していなくてもよい。また、コネクタの第内周面と接続部材の外周面との間に接着剤が設けられていなくてもよい。すなわち、コネクタと接続部材とは、接着剤により固定されていなくてもよい。ハウジングに設けられた流路の内周面と接続部材の外周面との間に接着剤が設けられていなくてもよい。すなわち、ハウジングと接続部材とは、接着剤により固定されていなくてもよい。上記実施形態の接続部は、第1接着剤収容部および第2接着剤収容部を有していたが、第1接着剤収容部および第2接着剤収容部の一方のみを有していてもよい。
【0078】
その他、駆動装置を構成する構成要素の形状、数、配置、および構成材料等に関しては、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【0079】
上記実施形態では、冷却水用配管とインバータユニット筐体との接続部に本発明を適用した例を示したが、冷却水用配管とハウジングの他の部分との接続部に本発明を適用してもよい。上記実施形態では、駆動装置に本発明を適用した例を示したが、他の装置における流体用配管の接続構造に本発明を適用してもよい。本明細書で説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0080】
1…駆動装置、2…モータ、4…減速装置、5…差動装置、6…ハウジング、34…第2接続部、35…第1接続部、36…コネクタ、36a…端面、36b…内周面、37…接続部材、37c…外周面、37f…外周面、47a…第1端部(一方の端部)、47b…第2端部(他方の端部)、38…流路、38h…接続口、38e…内周面、48…フランジ部、49…接着剤、98…冷却水用配管(配管、第1配管)、99…冷却水用配管(配管、第2配管)、R1…第1接着剤収容部、R2…第2接着剤収容部
図1
図2
図3