(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】脱酸素剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20230808BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20230808BHJP
A23L 3/3436 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01D53/14 311
A23L3/3436
(21)【出願番号】P 2019081675
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 絵美子
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104845(JP,A)
【文献】特開2011-092921(JP,A)
【文献】特開昭60-087850(JP,A)
【文献】特開昭60-094137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B01D 53/14-53/18
A23L 3/00-3/3598
B65D 67/00-79/02,81/18-81/30,81/38,85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の担持体および該担持体に担持された酸素吸収組成物を含む造粒物と、
前記造粒物の表面に付着している親水性無機微粒子と、
を主材とする複合粒子を含む脱酸素剤であって、
前記酸素吸収組成物が、酸素吸収物質を含む液剤、アルカリ性化合物、遷移金属化合物
およびキレート剤を含有
し、
前記キレート剤が、リンゴ酸またはクエン酸・1水和物または1-ヒドロキシエタン-1,1-ビス(ホスホン酸)を含むことを特徴とする、脱酸素剤。
【請求項2】
前記キレート剤の割合が、前記アルカリ性化合物の分子1個に対して0.1~1個である、請求項1に記載の脱酸素剤。
【請求項3】
前記親水性無機微粒子の量が、前記造粒物の質量100質量部に対して1.0~15質
量部である、請求項1または2に記載の脱酸素剤。
【請求項4】
前記複合粒子の質量が、前記複合粒子1個当たり0.3~10.0mgである、請求項1~3のいずれか一項に記載の脱酸素剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の脱酸素剤と、該脱酸素剤を収容した通気性包材と
、を備える、脱酸素剤包装体。
【請求項6】
請求項5に記載の脱酸素剤包装体と、該脱酸素剤包装体が封入された食品包装容器と、
を備える、食品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱酸素剤に関する。本発明はまた、脱酸素剤を含む脱酸素剤包装体および食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の長期保存のために、食品包装容器内に脱酸素剤が封入されることがある。
この方法は、ガスバリア性の密封袋または密封容器内の被保存物品に脱酸素剤を同封し、密封系内の酸素を脱酸素剤に吸収させ、保存雰囲気を実質的に無酸素状態に保つことにより、酸化による品質劣化、細菌や微生物の増殖等を抑える方法である。
【0003】
現在よく用いられている脱酸素剤には、大きく2つの種類があり、鉄を主剤とする無機系の脱酸素剤とアスコルビン酸系の酸素吸収物質を主剤とする有機系の脱酸素剤がある。それぞれ、用途や対象食品に応じて使い分けされるが、近年商品を金属探知機にかける必要が高まっていることから、金属探知機にかけることが可能な有機系脱酸素剤の需要が増えてきている。
【0004】
しかし有機系の脱酸素剤には、鉄系の脱酸素剤に比べて酸素吸収速度が遅いという欠点がある。また、脱酸素剤は小袋への充填包装を行う為、充填時に粉立ちが発生せず、かさ密度が高い粉粒体特性である事が求められている。上記のような事情から、微粉末状の脱酸素剤組成物を造粒することにより、 粉末飛散を防ぎ、かさ密度を向上させる方法がとられる。しかし、造粒すると微粉体が圧縮されることで反応表面積が減少する為、粉体の状態と比較し、酸素吸収速度は非常に遅くなるという問題が発生する。
【0005】
食品の保存性向上を目的とする脱酸素剤に使用において、早い場合で24時間~48時間で生育するカビの発生を抑えるためには、24時間以内に酸素濃度を0.1%未満まで低下させておくことが望ましい。従って、有機系脱酸素剤においては、如何に酸素吸収速度を高めるかということが課題の1つであった。
【0006】
そこで、有機系脱酸素剤においてその酸素吸収速度を高めるため、酸素吸収物質の酸化反応を促進する反応触媒を加えたり、最適pHにするためのアルカリ性化合物を加えたりと鋭意工夫がなされてきたが、そのひとつとして、多孔質の担持体に担持された酸素吸収組成物の造粒物の表面に親水性無機微粒子を備える複合粒子が提案されている(特許文献1)。しかしながら発明者らが、特許文献1に記載されている構成の脱酸素剤を用いて、酸素吸収速度を評価してみた所、十分な酸素吸収性能が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、酸素吸収性能をより向上した脱酸素剤造粒物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明は、および
多孔質の担持体および該担持体に担持された酸素吸収組成物を含む造粒物と、
前記造粒物の表面に付着している親水性無機微粒子と、
を主材とする複合粒子を含む脱酸素剤であって、
前記酸素吸収組成物が、酸素吸収物質を含む液剤、アルカリ性化合物、遷移金属化合物およびキレート剤を含有する脱酸素剤である。
【0010】
また本発明の請求項2に係る発明は、
前記キレート剤が、リンゴ酸またはクエン酸または1-ヒドロキシエタン-1,1-ビス(ホスホン酸)を含む、請求項1に記載の脱酸素剤である。
【0011】
また本発明の請求項3に係る発明は、
前記キレート剤の割合が、前記アルカリ性化合物の分子1個に対して0.1~1個である、請求項1または2に記載の脱酸素剤である。
【0012】
また本発明の請求項4に係る発明は、
前記親水性無機微粒子の量が、前記造粒物の質量100質量部に対して1.0~15質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の脱酸素剤である。
【0013】
また本発明の請求項5に係る発明は、
前記複合粒子の質量が、前記複合粒子1個当たり0.3~10.0mgである、請求項1~4のいずれか一項に記載の脱酸素剤である。
【0014】
また本発明の請求項6に係る発明は、
請求項1~5のいずれか一項に記載の脱酸素剤と、該脱酸素剤を収容した通気性包材と、を備える、脱酸素剤包装体である。
【0015】
また本発明の請求項7に係る発明は、
請求項6に記載の脱酸素剤包装体と、該脱酸素剤包装体が封入された食品包装容器と、を備える、食品包装体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来よりも酸素吸収性能を向上した脱酸素剤造粒物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の一実施形態に係る脱酸素剤は、多孔質の担持体および該担持体に担持された酸素吸収組成物を含む造粒物と、該造粒物の表面に付着している親水性無機微粒子とから主として構成される複合粒子を複数含む粉粒体である。ここで「粉粒体」は多数の微粒子から構成され、全体として流動性を維持している集合体を意味する。全体として微粒子同士が互いに固着して単一の固形錠剤を形成したもの自体は粉粒体に含まれない。また、「造粒物」とはそれ自体が粒体として形成された粒体物を意味する。本実施形態に係る脱酸素剤に含まれる複合粒子の数は、例えば、脱酸素剤1g当たり、10個以上10000個以下であってもよい。
【0019】
脱酸素剤の粉粒体を構成する個々の複合粒子の質量は、複合粒子1個当たり0.3mg以上、または0.5mg以上であってもよく、10.0mg以下、または7.0mg以下であってもよい。複合粒子がこのように微小であると、より高い酸素吸収能力が得られる傾向がある。
【0020】
担持体は、酸素吸収組成物を担持できる多孔質粒子であればよい。通常、担持体に酸素吸収組成物が含浸することで、酸素吸収物質が担持体に担持される。担持体は、例えば、活性炭、ゼオライト粒子、ベントナイト粒子、活性アルミナ粒子、活性白土、ケイ酸カルシウム粒子、および珪藻土から選ばれる。
【0021】
酸素吸収組成物は、酸素吸収物質を含む液剤、アルカリ性化合物、遷移金属化合物に加えて凝集遅延剤としてキレート剤を含有する。
このような酸素吸収組成物とすることによって十分な酸素吸収速度が得られる。
この点について、以下詳細に説明する。
【0022】
酸素吸収物質を含む液剤は、常温(5~35℃)で液状の酸素吸収物質であってもよいし、液状または固体の酸素吸収物質を含む溶液であってもよい。酸素吸収物質は、酸素吸収組成物の主剤であり、酸素を吸収する物質である。有機系酸素吸収物質は、一般的には、それ自身が酸化することによって酸素を消費し、酸素を吸収する化合物である。
【0023】
本実施形態では、常温で液状、または溶媒へ溶解した状態の酸素吸収物質を用いることができる。このような酸素吸収物質は、例えば、グリセリン、1,2-グリコール、および糖アルコールからなる群から選ばれる1種以上の化合物である。1,2-グリコールの具体例としては、エチレングリコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。糖アルコールの具体例としては、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、アドニトール、マンニトール、およびソルビトールが挙げられる。液剤が酸素吸収物質の溶液であるとき、酸素吸収物質が溶解する溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノールおよび第3級アミルアルコール等の低級脂肪族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコールおよびトリメチレングリコール等のグリコールが挙げられる。酸素吸収物質はこれらを単独でも、複数組み合わせても用いることができる。
【0024】
酸素吸収物質の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常80~200質量部であり、100~180質量部であってもよい。酸素吸収物質の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0025】
酸素吸収物質は、酸素を吸収する反応に水を必要とする場合がある。このため、酸素吸収物質自身が常温で液体であっても、必要に応じて水を液剤に添加することができる。必要に応じて添加される水の量は、酸素吸収物質100質量部に対して、通常0~80質量部であり、20~60質量部であってもよい。水の量は、担持体100質量部に対して、通常0~90質量部であり、20~70質量部であってもよい。
【0026】
アルカリ性化合物は、水に溶解したときにアルカリ性の水溶液を形成する化合物である。酸素吸収物質が水酸基を持つ場合、水酸基をアルカリ性化合物がイオン化させることで、酸素吸収反応が活性化される。酸素吸収組成物の状態では、アルカリ性化合物の一部が酸素吸収物質を含む液剤に溶解していることが多い。アルカリ性化合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、第三リン酸塩、または第二リン酸塩であってもよい。アルカリ性化合物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化ラジウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、および第二リン酸カリウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
【0027】
アルカリ性化合物の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常90~300質量部であり、150~250質量部であってもよい。アルカリ性化合物の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0028】
遷移金属化合物は、遷移金属元素を含む化合物であり、酸素吸収物質の酸素吸収反応を促進するために添加される。遷移金属化合物は、酸素吸収組成物の状態では、酸素吸収物質を含む液剤に溶解していることが多い。遷移金属元素の具体例としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、およびマンガンが挙げられる。遷移金属化合物は、例えば、遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、酸化物、水酸化物、またはキレート化合物であってもよい。遷移金属化合物は、遷移金属元素を含む複塩であってもよい。遷移金属化合物は、塩化銅(I)、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、水酸化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、および塩化ニッケルからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
【0029】
遷移金属化合物の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常10~70質量部であり、30~50質量部であってもよい。遷移金属化合物の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0030】
本実施形態では凝集遅延剤としてキレート剤を含有することが必須となる。なぜなら、酸素吸収組成物を構成する各成分を混合するにあたり、混合機の壁面に酸素吸収組成物中のアルカリ性化合物が固着して凝集するという問題が生じる。混合機壁面への固着を防止するため、アルカリ性化合物の凝集遅延剤としてキレート剤を添加することにより円滑に混合が行われる。
【0031】
キレート剤として、ヒドロキシカルボン酸すなわちオキシカルボン酸の代表的な例の1子構造として、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、60%1-ヒドロキシエタン-1,1-ビス(ホスホン酸)溶液および酒石酸が挙げられる。これらは2-ヒドロキシカルボン酸の分子構造を有しており、そして凝集遅延効果を持つことが確認されている。
また、キレート剤の割合はアルカリ性化合物の分子1個に対して0.1~1個が好ましい。0.1個未満の場合は十分な凝集遅延効果が得られず、1個以上になると酸素吸収性能が低下する。
【0032】
酸素吸収組成物は、造粒物が容易に形成できるように、バインダーを更に含有していてもよい。バインダーの具体例としては、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ゼラチンおよびセルロースが挙げられる。バインダーの量は、担持体の質量100質量部に対して、通常0~30質量部であり、10~20質量部であってもよい。
【0033】
無機微粒子が付着する前の造粒物の粒径(最大幅)は、特に制限されないが、例えば0.3~8.0mm、または0.3mm以上5mm未満であってもよい。
【0034】
担持体および酸素吸収組成物から構成される造粒物は、担持体と、酸素吸収組成物を構成する成分とを含む混合物を造粒することにより、得ることができる。酸素吸収組成物を構成する各成分は、一括して混合してもよいし、別々に混合してもよい。混合するための混合機は、特に限定されるものではなく、例えば、円筒型、V型等の容器回転型混合機であってもよいし、リボン型、水平スクリュー型、バドル型、遊星運動型等の容器固定型混合機であってもよい。造粒は、例えば所定の開孔を有するスクリーンを用いた押出し造粒法によって行うことができる。
【0035】
親水性無機微粒子は、親水性の無機物質を主成分として含む非水溶性の粒子である。親
水性無機微粒子は、その全体質量を基準として、通常、50質量%以上の親水性の無機物質を含む。親水性の無機物質としては、例えば、親水性二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム、およびケイ酸アルミニウムが挙げられる。
【0036】
親水性無機微粒子の平均粒径に特に制限はなく、微粒子の一般的な定義である0.1~100μm以下であればよい。造粒物の表面には、通常、微細な凹凸が形成されており、小さい粒径の無機微粒子は、造粒物表面の凹部に入り込み易い。このことが結果的に造粒物の表面積を大幅に増加させることになり、酸素吸収能力向上に寄与すると考えられる。
【0037】
以上例示した平均粒径を有する親水性無機微粒子は、通常の方法によって製造することが可能であり、市販品の中から適宜選択して入手することもできる。
【0038】
造粒物の表面に付着している親水性無機微粒子の量(付着量)は、造粒物の質量100質量部に対して、1質量部以上が好ましい。親水性無機微粒子の量がこれらの範囲内にあると、脱酸素剤の適切な酸素吸収能力が得られ易い。造粒物の表面に付着している親水性無機微粒子の量の上限は、特に制限されないが、表面への付着性、コストの観点から、15質量部以下が好ましい。なお、造粒物に付着していない単独の親水性無機微粒子が、脱酸素剤の粒子と混在していることがあり得るが、単独の親水性無機微粒子の量は上記付着量に含まれない。
【0039】
造粒物の表面に親水性無機微粒子を付着させる方法に特に制限はないが、担持体および酸素吸収組成物を含む複数の造粒物を含む造粒物粉粒体と複数の親水性無機微粒子とを混ぜ合わせることにより得ることができる。例えば、造粒物と、親水性無機微粒子とを混合し、得られた混合物を振とうすることにより、造粒物に親水性無機微粒子を付着させることができる。
【0040】
上記のような粉粒体同士を混ぜ合わせる方法により造粒物に付着した親水性無機微粒子は、比較的薄い層を形成しており、この点で、本実施形態の脱酸素剤の形態は、例えば打錠成形によって得られた外郭部を有する錠剤とは一般に異なる。具体的には、造粒物の表面に付着している親水性無機微粒子は、厚み1mm以下、または0.7mm以下の層を形成し得る。親水性無機微粒子の層が薄いことは、複合粒子の表面をエネルギー分散型X線分析(EDX分析)によって元素分析したときに、造粒物を構成する材料(酸素吸収物質、アルカリ性化合物または遷移金属化合物)に含まれる元素が検出されることから、確認することもできる。一般に、本実施形態に係る脱酸素剤の場合、造粒物を構成する材料に含まれる少なくとも1種の元素が、0.05原子数%以上、または0.1原子数%以上の濃度で検出されることが多い。一方、造粒物を内包するある程度の厚さの外郭部が打錠成形によって形成されている場合、造粒物を構成する材料の元素がEDX分析によって実質的に検出されることはない。
【0041】
一実施形態に係る脱酸素包装体は、上記の実施形態に係る脱酸素剤と、この脱酸素剤を収容した通気性包材とから主として構成され得る。通気性包材は、当該技術分野で通常用いられるものから適宜選択することができる。通気性包材の具体例としては、有孔プラスチックフィルム、不織布、マイクロポーラスフィルム、紙またはこれらの組み合わせからなる基材よって形成された袋体が挙げられる。この脱酸素剤包装体は、例えば、各種の食品包装容器の中に収容して、食品の鮮度維持等の目的で使用することができる。
【0042】
一実施形態に係る食品包装体は、上記脱酸素剤包装体と、この脱酸素剤包装体が封入された食品包装容器とを備える。食品包装容器は、食品包装の分野で通常用いられるものから適宜選択することができ、密封可能な容器が好適である。食品包装容器としては、袋体、深絞り包装体、トレイ包装体、ストレッチ包装体等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
1.酸素吸収組成物
表1に示す原料を密封状態で均一に混合して、活性炭と、活性炭に担持された脱酸素剤、アルカリ化合物、遷移金属塩およびバインダーを含む酸素吸収組成物とを含有する混合物を得た。表1は、各原料の配合量を質量部で示す。
【0045】
【0046】
(実施例1~3)
キレート剤としてリンゴ酸またはクエン酸・1水和物または60%1-ヒドロキシエタン-1,1-ビス(ホスホン酸)溶液を水酸化カルシウム分子1個に対して0.1~1個添加した。
【0047】
(比較例1)
混合物にキレート剤を添加せず、そのまま脱酸素剤として用いた。
【0048】
(比較例2~3)
キレート剤としてグルコン酸ナトリウムまたはクエン酸3ナトリウム・2水和物を水酸化カルシウム分子1個に対して0.1~1個添加した。
【0049】
2.固着性の評価
得られた混合物を乳鉢で1分間混錬し、乳鉢壁面への混合物の付着を観察した。乳鉢壁面への混合物の付着が全くない○(良)、指でなぞると落ちる程度△(可)、指でなぞると落ちない×(不可)とし、固着性を評価した。
【0050】
3.造粒物
得られた混合物をスクリーン孔径1.0mmφ、開孔率22.6%のスクリーンを設けた押出し造粒機により造粒し、顆粒状の造粒物からなる造粒物粉粒体を得た。表1は、各原料の配合量を質量部で示す。
【0051】
4.無機微粒子
以下の無機微粒子を準備した。
・サイロページ720(親水性二酸化ケイ素(SiO2)粒子、富士シリシア化学製)
【0052】
5.脱酸素剤
無機微粒子2gおよび20gの造粒物を酸素バリア性の袋に入れ、袋をヒートシールした。袋をラボシェイカーSR-1(アズワン製)に固定して、振とうを行った。振とう速度90rpm、振とう時間を15秒で固定した。その結果、無機微粒子によって造粒物が被覆された複合粒子を含む粉粒体である脱酸素剤を得た。袋を開け、内部の空気を追い出すように再びヒートシールして、脱酸素剤を保管した。
【0053】
6.酸素吸収能力
脱酸素剤3.0gを、有孔包材によって形成された袋(縦60mm、横60mm)に収納し、脱酸素剤包装体を作製した。有効包材として、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/紙/ポリエチレンから構成される積層材料を用いた。脱酸素剤包装体を、ショ糖44%水溶液を浸した脱脂綿(水分活性0.95)とともに、ガスバリア性の袋の中に入れた。袋を密封し、その中に空気500mLを注入してから、袋を25℃の雰囲気に静
置した。15時間後、および24時間後の袋内の酸素濃度を測定した。酸素吸収能力の評価は、24時間後の酸素濃度が0.1%以下で○(良)、5%未満で△(可)、5%以上で×(不可)とした。
【0054】
7.結果
表2に、固着性と酸素吸収能力の評価結果を示す。実施例1~3において、キレート剤の割合が水酸化カルシウムの分子1個に対して0.1~1個である脱酸素剤は、固着が防止され、かつ優れた酸素吸収能力を示すことが確認された。
【0055】