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  • 特許-制御装置及びモジュール間通信方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】制御装置及びモジュール間通信方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
G05B19/05 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019089104
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020184270
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝典
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-062254(JP,A)
【文献】特開2007-310719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモジュールを所定の並び方向に沿って配置してなる制御装置であって、
前記複数のモジュールは、親局モジュールと、前記親局モジュールに対して着脱可能な複数の子局モジュールとからなり、
前記親局モジュールと前記複数の子局モジュールとの間で通信を行う主回線と、
前記並び方向に隣り合う二つの前記モジュールの間で通信を行う複数の副回線とを備え、
前記複数の副回線を用いた通信により前記複数の子局モジュールのそれぞれの局番を設定した後、当該設定された局番を用いて前記主回線による通信を行
前記複数の子局モジュールのそれぞれは、前記複数のモジュールのうち前記並び方向に沿って前記親局モジュール側に隣り合う一側のモジュールから当該モジュールの局番の情報を受信して自局番を設定すると共に、設定した自局番の情報を前記親局モジュールとは反対側に隣り合う他側のモジュールに送信し、
前記複数の子局モジュールのうち前記親局モジュールから最も離れた位置に配置された子局モジュールは、前記他側のモジュールとの通信ができないことにより自局が終端局であると判定し、前記複数の子局モジュールの局番の設定が完了したことを前記複数の副回線を介した通信により前記親局モジュールに通知する、
制御装置。
【請求項2】
前記局番は、前記複数の子局モジュールのうち前記親局モジュールと隣り合う子局モジュールから前記並び方向に沿って順次設定される、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記親局モジュールと前記複数の子局モジュールとは、前記主回線の一対の差動信号線を伝搬する差動信号により通信を行い、
前記複数の子局モジュールのうち前記終端局にあたる子局モジュールは、前記一対の差動信号線の間に終端抵抗を接続する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
親局モジュール及び複数の子局モジュールを含む複数のモジュール間で通信を行うモジュール間通信方法であって、
前記親局モジュールと前記複数の子局モジュールとの間で通信を行う主回線と、
前記複数のモジュール間で一対一の通信を行う複数の副回線とを備え、
前記複数の副回線を用いた通信により前記複数の子局モジュールのそれぞれの局番を設定した後、当該設定された局番を用いて前記主回線による通信を行
前記複数の子局モジュールのそれぞれは、前記複数のモジュールの並び方向に沿って前記親局モジュール側に隣り合う一側のモジュールから当該モジュールの局番の情報を受信して自局番を設定すると共に、設定した自局番の情報を前記親局モジュールとは反対側に隣り合う他側のモジュールに送信し、
前記複数の子局モジュールのうち前記親局モジュールから最も離れた位置に配置された子局モジュールは、前記他側のモジュールとの通信ができないことにより自局が終端局であると判定し、前記複数の子局モジュールの局番の設定が完了したことを前記複数の副回線を介した通信により前記親局モジュールに通知する、
モジュール間通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局モジュール及び複数の子局モジュールを有する制御装置、及び複数のモジュール間で通信を行うモジュール間通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば複数のモジュールを組み合わせてなる制御装置では、複数のモジュールのうち一つのモジュールを親局とし、他のモジュールを子局として通信を行うマスター・スレーブ通信によりモジュール間の情報交換がなされる。特許文献1には、工作機械等を制御するプログラマブルコントローラが複数のモジュールを有し、複数のモジュールのそれぞれに設けられた局番スイッチによって各モジュールに局番を設定し、この局番を用いてモジュール間の通信を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-123688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような局番の設定方法では、作業者等のユーザーが局番スイッチの設定を行うための工数が嵩むと共に、局番スイッチの設定ミスが発生するとモジュール間の通信が行えなくなる。そこで、本発明は、局番を自動設定可能な制御装置及びモジュール間通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するため、複数のモジュールを所定の並び方向に沿って配置してなる制御装置であって、前記複数のモジュールは、親局モジュールと、前記親局モジュールに対して着脱可能な複数の子局モジュールとからなり、前記親局モジュールと前記複数の子局モジュールとの間で通信を行う主回線と、前記並び方向に隣り合う二つの前記モジュールの間で通信を行う複数の副回線とを備え、前記複数の副回線を用いた通信により前記複数の子局モジュールのそれぞれの局番を設定した後、当該設定された局番を用いて前記主回線による通信を行前記複数の子局モジュールのそれぞれは、前記複数のモジュールのうち前記並び方向に沿って前記親局モジュール側に隣り合う一側のモジュールから当該モジュールの局番の情報を受信して自局番を設定すると共に、設定した自局番の情報を前記親局モジュールとは反対側に隣り合う他側のモジュールに送信し、前記複数の子局モジュールのうち前記親局モジュールから最も離れた位置に配置された子局モジュールは、前記他側のモジュールとの通信ができないことにより自局が終端局であると判定し、前記複数の子局モジュールの局番の設定が完了したことを前記複数の副回線を介した通信により前記親局モジュールに通知する、制御装置を提供する。
【0006】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、親局モジュール及び複数の子局モジュールを含む複数のモジュール間で通信を行うモジュール間通信方法であって、前記親局モジュールと前記複数の子局モジュールとの間で通信を行う主回線と、前記複数のモジュール間で一対一の通信を行う複数の副回線とを備え、前記複数の副回線を用いた通信により前記複数の子局モジュールのそれぞれの局番を設定した後、当該設定された局番を用いて前記主回線による通信を行前記複数の子局モジュールのそれぞれは、前記複数のモジュールの並び方向に沿って前記親局モジュール側に隣り合う一側のモジュールから当該モジュールの局番の情報を受信して自局番を設定すると共に、設定した自局番の情報を前記親局モジュールとは反対側に隣り合う他側のモジュールに送信し、前記複数の子局モジュールのうち前記親局モジュールから最も離れた位置に配置された子局モジュールは、前記他側のモジュールとの通信ができないことにより自局が終端局であると判定し、前記複数の子局モジュールの局番の設定が完了したことを前記複数の副回線を介した通信により前記親局モジュールに通知する、モジュール間通信方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による制御装置及びモジュール間通信方法によれば、複数のモジュールへの局番の設定を自動設定することができ、工数削減と設定ミスの発生防止を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る制御装置としてのプログラマブルコントローラを示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図2】プログラマブルコントローラの分解斜視図である。
図3】(a)は、モジュール間通信のための親局モジュール及び第1乃至第4の子局モジュールの構成をバックボード内の配線と共に示した回路図である。(b)は、(a)の一部を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図3を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る制御装置としてのプログラマブルコントローラを示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。図2は、プログラマブルコントローラの分解斜視図である。
【0011】
このプログラマブルコントローラ1は、設定されたシーケンスプログラムに基づいて工作機械等の設備を制御する制御装置であり、制御対象の設備の各部に取り付けられた各種センサの信号を入力すると共に、設備を動作させる複数のアクチュエータを動作させる。
【0012】
プログラマブルコントローラ1は、それぞれが個別の機能を有する動作単位である複数のモジュール10~14と、複数のモジュール10~14に動作電源を供給する電源ユニット15と、複数のモジュール10~14及び電源ユニット15を連結する連結部材としての複数のバックボード16とを有して構成されている。電源ユニット15は、例えば100Vの交流電圧が入力される端子台150を有し、入力された交流電圧を直流電圧に変換して後述する背面側コネクタ20から出力する。
【0013】
複数のモジュール10~14は、複数のバックボード16を介して通信を行う。複数のモジュール10~14のうち、モジュール10は通信の親局であり、モジュール11~14は子局である。以下、モジュール10を親局モジュール10といい、モジュール11~14を第1乃至第4の子局モジュール11~14という。また、親局モジュール10及び第1乃至第4の子局モジュール11~14を総称して、モジュールMという場合がある。
【0014】
親局モジュール10は、電源ユニット15と隣り合って配置されている。第1乃至第4の子局モジュール11~14は、親局モジュール10に対して着脱可能であり、所定の並び方向に沿って配置されている。本実施の形態では、この並び方向が、親局モジュール10に対して電源ユニット15とは反対側に向かって離間する方向である。
【0015】
図1(a)に示すように、プログラマブルコントローラ1を正面から見た場合、親局モジュール10の右隣に第1の子局モジュール11が配置され、第1の子局モジュール11のさらに右側に第2の子局モジュール12が配置されている。第3の子局モジュール13は、第2の子局モジュール12の右側に配置され、第4の子局モジュール14は、第3の子局モジュール13の右側に配置されている。
【0016】
本実施の形態では、親局モジュール10がシーケンスプログラムを実行することにより制御対象の設備を制御するCPU機能を有している。親局モジュール10には、シーケンスプログラムを編集する編集装置や、プログラマブルコントローラ1の動作状態をモニタするモニタ装置等を接続するためのコネクタ101が設けられている。
【0017】
第1及び第2の子局モジュール11,12のそれぞれは、電気的に接地されるコモン端子111,121及び複数の入力端子112,122が設けられた端子台113,123を有している。複数の入力端子112,122には、それぞれ各種センサの信号線が接続される。第1及び第2の子局モジュール11,12は、複数の入力端子112,122における信号のオンオフ状態を親局モジュール10に送信する。
【0018】
第3及び第4の子局モジュール13,14のそれぞれは、電気的に接地されるコモン端子131,141及び複数の出力端子132,142が設けられた端子台133,143を有している。複数の出力端子132,142には、それぞれアクチュエータが接続される。第3及び第4の子局モジュール13,14は、アクチュエータを動作させるための電流を通電させる導通状態と遮断する遮断状態とを切り替え可能な出力機能を有しており、親局モジュール10から送信される信号を受信して、複数の出力端子132,142のそれぞれについて導通状態と遮断状態とを切り替える。
【0019】
なお、第1乃至第4の子局モジュール11~14の機能は、上記に例示したものに限らず、様々な機能を有するものを適宜用いることができる。また、子局モジュールの数についても特に制限はない。
【0020】
電源ユニット15と親局モジュール10、親局モジュール1と第1の子局モジュール11、第1の子局モジュール11と第2の子局モジュール12、第2の子局モジュール12と第3の子局モジュール13、及び第3の子局モジュール13と第4の子局モジュール14は、それぞれバックボード16によって接続されている。バックボード16は、図2に示すように、平板状のベース部160と、ベース部160から突出した第1及び第2のコネクタ161,162とを有している。
【0021】
ベース部160には、図略のプリント基板が収容されており、このプリント基板に形成された配線パターンによって第1のコネクタ161の端子と第2のコネクタ162の端子とが接続されている。なお、図2では、第1乃至第4の子局モジュール11~14の端子台113,123,133,143や、親局モジュール10のコネクタ101等の図示を省略している。
【0022】
図1(b)では、バックボード16の一部を破断し、破断した部分のベース部160の輪郭を仮想線(二点鎖線)で示している。図1(b)に示すように、電源ユニット15の背面側には、背面側コネクタ20が設けられている。この背面側コネクタ20には、電源ユニット15と親局モジュール10とを接続するバックボード16の第1のコネクタ161が嵌合する。電源ユニット15は、動作電源を背面側コネクタ20から複数のバックボード16を介して複数のモジュール10~14に供給する。
【0023】
親局モジュール10及び第1乃至第4の子局モジュール11~14のそれぞれの背面側には、第1及び第2の背面側コネクタ21,22が設けられている。図1(b)では、このうち第4の子局モジュール14に設けられた第1及び第2の背面側コネクタ21,22を図示している。バックボード16は、上記の並び方向に隣り合う一対のモジュールMのうち、電源ユニット15側にあたる一方のモジュールMの第1の背面側コネクタ21に第1のコネクタ161が嵌合され、他方のモジュールMの第2の背面側コネクタ22に第2のコネクタ162が嵌合される。
【0024】
次に、図3を参照し、親局モジュール10と第1乃至第4の子局モジュール11~14との間のモジュール間通信方法、及びモジュール間通信のための構成について説明する。図3(a)は、モジュール間通信のための親局モジュール10及び第1乃至第4の子局モジュール11~14の構成をバックボード16内の配線と共に示した回路図である。図3(b)は、図3(a)の一部を拡大して示す拡大図である。以下、説明の便宜上、モジュール間通信における親局モジュール10側を上流側といい、第4の子局モジュール14側を下流側という。
【0025】
プログラマブルコントローラ1は、親局モジュール10と第1乃至第4の子局モジュール11~14との間で通信を行う主回線3と、上記の並び方向に隣り合う二つのモジュールMの間で一対一の通信を行う複数の副回線4とを備えている。そして、複数の副回線4を用いた通信によって親局モジュール10及び第1乃至第4の子局モジュール11~14のそれぞれの局番を設定した後に、当該設定された局番を用いて主回線3による通信を行う。
【0026】
本実施の形態では、主回線3を用いた通信として、RS485の通信プロトコルに則った4線式全二重マルチドロップ方式の通信を行う。主回線3は、親局モジュール10から第1乃至第4の子局モジュール11~14への送信のための送信回線3Sとして一対の差動信号線31,32を有し、親局モジュール10が第1乃至第4の子局モジュール11~14から信号を受信するための受信回線3Rとして一対の差動信号線33,34を有している。
【0027】
これらの差動信号線31~34には、複数のバックボード16が介在しており、始端局にあたる親局モジュール10から第1乃至第3の子局モジュール11~13を経て、終端局にあたる第4の子局モジュール14に至る。より具体的には、親局モジュール10ならびに第1乃至第4の子局モジュール11~14のそれぞれにモジュール側の分線31a,32a,33a,及び34aが設けられており、複数のバックボード16のそれぞれにバックボード側の分線31b,32b,33b,及び34bが設けられている。そして、モジュール側の分線31a,32a,33a,及び34a、ならびにバックボード側31b,32b,33b,及び34bが第1及び第2のコネクタ161,162によって相互に接続されることにより、差動信号線31~34が形成されている。
【0028】
この主回線3の構成により、例えば親局モジュール10と第4の子局モジュール14との間で通信を行う場合には、第1乃至第3の子局モジュール11~13の処理部110,120,130による中継処理を要することなく、親局モジュール10と第4の子局モジュール14との間で直接的に送受信を行うことができる。これにより、通信の高速化が図られる。
【0029】
複数の副回線4のそれぞれは、上流側のモジュールMから下流側のモジュールMに信号を送信するための下り側の信号線41、及び下流側のモジュールMから上流側のモジュールMに信号を送信するための上り側の信号線42からなる。複数の副回線4には、それぞれバックボード16が介在している。
【0030】
親局モジュール10は、シーケンスプログラムの実行等のCPU機能としての処理を行う処理部100と、通信回路5とを有している。通信回路5は、送信回線3Sへの信号送出のための差動トランシーバ51と、受信回線3Rの信号を受信する差動レシーバ52と、送信回線3Sの一対の差動信号線31,32の間に接続された第1の終端抵抗531と、受信回線3Rの一対の差動信号線33,34の間に接続された第2の終端抵抗532と、下り側の信号線41への信号送出のためのドライバ54と、上り側の信号線42の信号を受信するレシーバ55とを有している。
【0031】
第1及び第2の子局モジュール11,12は、複数の入力端子112,122に入力された信号のオンオフ状態を判定して親局モジュール10に送信する処理を行う処理部110,120をそれぞれ有している。第3及び第4の子局モジュール13,14は、親局モジュール10から送信される信号に基づいて複数の出力端子132,142とコモン端子131,141との導通状態と遮断状態とを切り替える出力機能の処理を行う処理部130,140をそれぞれ有している。また、第1乃至第4の子局モジュール11~14は、それぞれ通信回路6を有している。
【0032】
図3(b)には、一例として第1の子局モジュール11の通信回路6を示している。なお、第2乃至第4の子局モジュール12~14の通信回路6も同様に構成されている。
【0033】
通信回路6は、受信回線3Rへの信号送出のための差動トランシーバ61と、送信回線3Sの信号を受信する差動レシーバ62と、第1及び第2の終端抵抗631,632と、第1の終端抵抗631と直列に接続された第1のスイッチング素子633と、第2の終端抵抗632と直列に接続された第2のスイッチング素子634と、副回線4による上流側のモジュールMとの通信のためのドライバ64と及びレシーバ65と、副回線4による下流側のモジュールMとの通信のためのドライバ66と及びレシーバ67とを有している。
【0034】
第1のスイッチング素子633は、第1の終端抵抗631が送信回線3Sの差動信号線31,32の間に接続された接続状態と、この接続が遮断された遮断状態とを切り替え可能である。第2のスイッチング素子634は、第2の終端抵抗632が受信回線3Rの差動信号線33,34の間に接続された接続状態と、この接続が遮断された遮断状態とを切り替え可能である。第1及び第2のスイッチング素子633,634は、例えばFETスイッチであるが、接続状態と遮断状態とを電気的に切り替え可能なものであればよく、例えばリレーを用いてもよい。
【0035】
親局モジュール10と第1乃至第4の子局モジュール11~14とは、送信回線3Sの一対の差動信号線31,32、及び受信回線3Rの一対の差動信号線33,34を伝搬する差動信号により通信を行う。一対の差動信号線31,32ならびに一対の差動信号線33,34によって伝送されるフレームは、ヘッダに送信元及び送信先の局番の情報が含まれる。次に、主回線3を用いた通信のための局番の設定について説明する。
【0036】
本実施の形態では、作業者等のユーザーが手作業によって局番の設定を行うことなく、親局モジュール10及び第1乃至第4の子局モジュール11~14を複数のバックボード16により連結した後のセットアップ時に、これら各モジュールMの局番が自動設定される。具体的には、親局モジュール10の局番を0(ゼロ)とし、親局モジュール10と隣り合う第1の子局モジュール11から上記の並び方向に沿って局番が順次加算されて設定される。すなわち、第1の子局モジュール11の局番が1、第2の子局モジュール12の局番が2、第3の子局モジュール13の局番が3、第4の子局モジュール14の局番が4として設定される。
【0037】
この局番の設定にあたり、親局モジュール10は、副回線4を介して第1の子局モジュール11に自局(親局モジュール10)の局番(自局番)が0であることの情報を送信する。この情報を受信した第1の子局モジュール11は、受信した局番(0)に1を加算した局番(1)を自局番として設定すると共に、副回線4を介して一つ下流側の第2の子局モジュール12に自局番が1であることの情報を送信する。このように、第1乃至第4の子局モジュール11~14のそれぞれは、上流側に隣り合うモジュールMから当該モジュールMの局番の情報を受信して自局番を設定すると共に、設定した自局番の情報を下流側に隣り合うモジュールMに送信する。
【0038】
これにより、親局モジュール10及び第1乃至第4の子局モジュール11~14にそれぞれ異なる局番が自動設定される。また、親局モジュール10から最も離れた位置に配置された第4の子局モジュール14は、その下流側に隣り合う他のモジュールが存在しないので、ドライバ66によって自局番の情報を送信しても相手からの返信がない。これにより、第4の子局モジュール14は、自局が終端局であると判定する。そして、第4の子局モジュール14は、第1乃至第4の子局モジュール11~14の全ての局番の設定が完了したことを副回線4を介して上流側にあたる第3の子局モジュール13に通知する。
【0039】
この通知は、第3の子局モジュール13、第2の子局モジュール12、及び第1の子局モジュール11にそれぞれ副回線4を介して順次転送される。そして、親局モジュール10が第1の子局モジュール11から副回線4を介してこの通知を受信する。当該通知を受けた親局モジュール10は、主回線3を用いた第1乃至第4の子局モジュール11~14との通信を開始する。第1乃至第4の子局モジュール11~14は、設定した自局番を不揮発性メモリに記憶する。
【0040】
上記の手順による局番の自動設定は、プログラマブルコントローラ1のセットアップ時に一回のみ行ってもよいが、例えば電源投入時におけるプログラマブルコントローラ1の起動時に上記と同様の手順による局番の自動設定を再度行ってもよい。そして、この再設定時において設定された局番が不揮発性メモリに記憶された局番と異なる場合には、例えば保守作業時に各モジュールMの接続順序が入れ替わった等の異常が発生しているおそれがあるため、警告音や表示によって警報を発して作業者等に注意を促し、異常状態の解除がなされるまで親局モジュール10がシーケンスプログラムを実行しない。
【0041】
第4の子局モジュール14は、自局が終端局であると判定したとき、第1及び第2のスイッチング素子633,634を接続状態とする。第1の終端抵抗631は、一端が差動信号線31に接続されており、第1のスイッチング素子633は、第1の終端抵抗631の他端と差動信号線32との間に接続されている。そして、第1のスイッチング素子633が接続状態となることにより、送信回線3Sにおける一対の差動信号線31,32の間に第1の終端抵抗631が接続される。
【0042】
同様に、第2の終端抵抗632は、一端が差動信号線33に接続されており、第2のスイッチング素子634は、第2の終端抵抗632の他端と差動信号線34との間に接続されている。そして、第2のスイッチング素子634が接続状態となることにより、受信回線3Rにおける一対の差動信号線33,34の間に第2の終端抵抗632が接続される。これにより、差動信号線31~34における電圧のアンダーシュートやオーバーシュートが抑制され、安定した通信が可能となる。なお、自局が終端局であると判定されなかったモジュールM(上記の例では第1乃至第3の子局モジュール11~13)は、第1及び第2のスイッチング素子633,634を遮断状態とする。
【0043】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、プログラマブルコントローラ1における複数のモジュールMの局番の設定を自動で行うことができる。これにより、作業者の工数削減と局番の設定ミスの発生を防ぐことが可能となる。また、終端局にあたる第4の子局モジュール14では、送信回線3Sにおける一対の差動信号線31,32の間に第1の終端抵抗631が自動的に接続され、受信回線3Rにおける一対の差動信号線33,34の間に第2の終端抵抗632が自動的に接続されるので、さらに作業者の工数削減を行うことができると共に、終端抵抗の接続作業をし忘れたり、あるいは終端抵抗の接続作業時に作業ミスが発生したりすること等による通信の不安定化をも防ぐことが可能となる。
【0044】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0045】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、プログラマブルコントローラ1に本発明を適用した場合について説明したが、プログラマブルコントローラ以外の各種の制御装置に本発明を適用することも可能である。
【0046】
また、上記実施の形態では、主回線3を用いた通信として、4線式全二重マルチドロップ方式の通信を行う場合について説明したが、通信方式としてはこれに限らず、例えば2線式半二重マルチドロップ方式であってもよい。また、主回線3を用いた通信の規格としては、RS485に限らず、他のシリアル通信の規格であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…プログラマブルコントローラ(制御装置) 3…主回線
4…副回線 10…親局モジュール
11~14…第1乃至第4の子局モジュール 31~34…差動信号線
631…第1の終端抵抗 632…第2の終端抵抗
M…モジュール(親局モジュール10及び子局モジュール11~14の総称)
図1
図2
図3