(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/26 20180101AFI20230808BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20230808BHJP
F21W 102/19 20180101ALN20230808BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230808BHJP
【FI】
F21S41/26
F21S41/143
F21W102:19
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019108404
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 泰宏
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026836(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03178698(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0075875(US,A1)
【文献】特開2015-201296(JP,A)
【文献】特開2018-192837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/26
F21S 41/143
F21W 102/19
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光を投影して複数の明暗境界線を有する照射パターンを形成する投影レンズと、を備え、
前記投影レンズは、前記明暗境界線の少なくとも一部に光を集めて強調
し、
前記投影レンズは、前記光源からの光に対して、前記明暗境界線の内側に集光させるとともに、前記照射パターンの他の箇所では拡散させ、
前記投影レンズの出射面は、凸面とされるとともに、光軸を通り上下方向に延びる上下方向線の周辺と光軸を通り幅方向に延びる幅方向線の周辺とが他の箇所に対して凹んでいることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記投影レンズ
の入射面は、幅方向に直交する断面において凸面とされているとともに、上下方向に直交する断面において凹面とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記投影レンズは、上下方向で上側レンズ部と下側レンズ部とから形成され、
前記上側レンズ部は、前記照射パターンにおいて遠い箇所となる遠方側パターン部を形成し、
前記下側レンズ部は、前記照射パターンにおいて近い箇所となる近方側パターン部を形成し、
前記投影レンズは、前記遠方側パターン部の手前端部と、前記近方側パターン部の奥端部と、を重ねることで、周辺よりも高い光量のライン部を前記照射パターンに形成することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記投影レンズ
は、入射面および出射面以外の少なくとも一部に拡散部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
光源と、
前記光源から出射された光を投影して複数の明暗境界線を有する照射パターンを形成する投影レンズと、を備え、
前記投影レンズは、前記明暗境界線の少なくとも一部に光を集めて強調し、
前記投影レンズの入射面は、幅方向に直交する断面において凸面とされているとともに、上下方向に直交する断面において凹面とされていることを特徴とす
る車両用灯具。
【請求項6】
光源と、
前記光源から出射された光を投影して複数の明暗境界線を有する照射パターンを形成する投影レンズと、を備え、
前記投影レンズは、前記明暗境界線の少なくとも一部に光を集めて強調し、
前記投影レンズは、上下方向で上側レンズ部と下側レンズ部とから形成され、
前記上側レンズ部は、前記照射パターンにおいて遠い箇所となる遠方側パターン部を形成し、
前記下側レンズ部は、前記照射パターンにおいて近い箇所となる近方側パターン部を形成し、
前記投影レンズは、前記遠方側パターン部の手前端部と、前記近方側パターン部の奥端部と、を重ねることで、周辺よりも高い光量のライン部を前記照射パターンに形成することを特徴とす
る車両用灯具。
【請求項7】
光源と、
前記光源から出射された光を投影して複数の明暗境界線を有する照射パターンを形成する投影レンズと、を備え、
前記投影レンズは、前記明暗境界線の少なくとも一部に光を集めて強調し、
前記投影レンズは、入射面および出射面以外の少なくとも一部に拡散部が設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、車両の周辺を照らすものが考えられている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
この車両用灯具は、車両の周辺の路面に照射パターンを投影することで、車両の周辺に照射パターンを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術は、単に車両の周辺の路面に照射パターンを投影しているのみなので、光源の光量を高めなければ照射パターンの形状の認識が困難となってしまう。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、光源の光量の増大を招くことなく、照射パターンの形状の認識を容易にできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両用灯具は、光源と、前記光源から出射された光を投影して複数の明暗境界線を有する照射パターンを形成する投影レンズと、を備え、前記投影レンズは、前記明暗境界線の少なくとも一部に光を集めて強調することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車両用灯具によれば、光源の光量の増大を招くことなく、照射パターンの形状の認識を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る車両用灯具が車両に搭載されて照射パターンを形成した様子を示す説明図である。
【
図2】実施例1の車両用灯具の構成を示す説明図である。
【
図3】投影レンズの光学的な設定の調整の様子を示す説明図であり、スクリーン上での光源の複数の配光像と照射パターンとの関係を示している。
【
図4】投影レンズの出射面の形状を示す説明図である。
【
図5】投影レンズの入射面の形状を示す説明図である。を有する拡散配光パターンを形成するのに好適な形状をしている。
【
図6】車両用灯具で形成した照射パターンの一例としての使用例を示す説明図である。
【
図7】車両用灯具が車両に搭載されて照射パターンを形成した様子の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10の実施例1について図面を参照しつつ説明する。なお、
図1では、車両用灯具10が設けられている様子の把握を容易とするために、車両1に対する車両用灯具10の大きさを誇張して示しており、必ずしも実際の様子とは一致するものではない。
【実施例1】
【0011】
本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る実施例1の車両用灯具10を、
図1から
図7を用いて説明する。実施例1の車両用灯具10は、
図1に示すように、自動車等の車両1の灯具として用いられるもので、車両1に設けられる前照灯とは別に、車両1の周辺の路面2に照射パターンPiを形成する。ここで、車両1の周辺とは、車両1に設けられる前照灯により照射される前照灯領域よりも車両1に近い近接領域を必ず含むものであり、部分的に前照灯領域を含む場合もある。車両用灯具10は、実施例1では、車両の前部の左右両側の灯室に配置されている。その灯室は、ランプハウジングの開放された前端がアウターレンズで覆われて形成されている。車両用灯具10は、光軸Laが路面2に対して傾斜した状態で設けられる。これは、灯室が路面2よりも高い位置に設けられていることによる。以下の説明では、
図2に示すように、車両用灯具10において、光を照射する方向となる光軸Laが伸びる方向を光軸方向(図面ではZとする)とし、光軸方向を水平面に沿う状態とした際の鉛直方向を上下方向(図面ではYとする)とし、光軸方向および上下方向に直交する方向(水平方向)を幅方向(図面ではXとする)とする。
【0012】
車両用灯具10は、光源部11と投影レンズ12とが組み付けられており、ダイレクトプロジェクションタイプの路面投影ユニットを構成する。車両用灯具10は、光源部11と投影レンズ12とが組み付けられた状態で、適宜筐体に収容されて車両1に設けられる。
【0013】
光源部11は、光源21が基板22に実装されている。光源21は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成され、出射光軸が光軸Laと一致されて設けられる。光源21は、実施例1では、光軸Laを中心とするランバーシアン分布で、アンバー色の単色光(縦軸を光量とし横軸を波長としたグラフにおいてピークが1つとされたもの)を出射する。光源21は、発光部(単色光を出射する領域)が光軸方向から見て矩形状とされている。なお、光源21は、出射する光における、色(波長帯域)や、分布の態様や、色の数(上記したグラフでのピークの数)等は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0014】
基板22は、点灯制御回路からの電力を適宜供給して光源21を点灯させる。基板22は、板状に形成されており、光軸方向から見て四角形状とされている。基板22では、4隅に取付穴22aが設けられている。
【0015】
この基板22は、実施例1ではアルミニウムを用いており、実装された光源21で発生する熱を外部に逃がすヒートシンク部材としても機能する。なお、基板22では、適宜複数の放熱フィンを設けてもよい。また、光源部11は、基板22に別の放熱部材を宛がう構成としてもよい。この光源部11の光源21から出射された光は、投影レンズ12により路面2に投影される。
【0016】
その投影レンズ12は、光軸方向で見て四角形状の凸レンズとされたレンズ本体部23と、両側に設けられた取付部24と、を備える。なお、この四角形状とは、4つの角部(球面等に面取りされたものも含む)を有するものであれば、矩形状でもよく各辺が湾曲していてもよい。レンズ本体部23は、光源21からの光を成形しつつ投影することで投影対象(実施例1では路面2)に照射パターンPiを形成するもので、入射面25および出射面26を自由曲面としている。レンズ本体部23(投影レンズ12)における光学的な設定については後述する。投影レンズ12は、光軸方向に延びるレンズ軸を有する。そのレンズ軸は、レンズ本体部23における光学的な中心となる軸線である。
【0017】
取付部24は、レンズ本体部23における幅方向の両側部で対を為して設けられており、それぞれ光軸方向の後側(光源部11側)に突出している。各取付部24は、上下方向の端部に取付突起27が設けられている。各取付突起27は、光軸方向の後側に突出する円柱形状とされ、基板22の取付穴22aに嵌め入れることが可能とされている。取付部24は、各取付突起27を対応する取付穴22aに嵌め入れることで、レンズ本体部23のレンズ軸が光源部11の光源21の光軸La上に一致させる。
【0018】
投影レンズ12は、左右方向の端面に拡散部28を設けている。その左右方向の端面は、レンズ本体部23における両側面23aと、各取付部24における外側面24aと、を有する。拡散部28は、投影レンズ12内に導かれて両側面23aや外側面24aから出射される光を拡散させるもので、例えば各側面(23a、24a)にシボ加工やブラスト加工等が施されることで形成される。
【0019】
次に、レンズ本体部23(投影レンズ12)の光学的な設定について、
図3から
図5を用いて説明する。
図3は、光軸Laに直交させて配置したスクリーン上に形成した照射パターンPiを示しており、路面2上に投影された場合とは異なる形状とされている。また、
図5は、投影レンズ12において、レンズ本体部23のみであって、取付部24を省略した状態で示している。以下では、光軸Laに直交する方向を径方向とする。レンズ本体部23は、
図3に示すように、投影対象に形成する照射パターンPiの輪郭線(形状)を投影レンズ12と同様の四角形状としている。換言すると、照射パターンPiは、4つの明暗境界線Bで囲まれて形成されている。その明暗境界線Bは、個別に示す際には、上下方向の上側を上側境界線B1とし、上下方向の下側を下側境界線B2とし、幅方向の右側を右側境界線B3とし、幅方向の左側を左側境界線B4とする。照射パターンPiは、路面2上に投影されると、光軸Laが路面2に対して傾斜しているので、
図1に示すように略台形状となる。
【0020】
レンズ本体部23は、光軸方向と幅方向とを含む横断面すなわち上下方向に直交する横断面において、光源21からの光を径方向で光軸Laの近傍を通る光束を発散させるとともに、径方向で光軸Laから離れた位置を通る光束を平行とさせる。すなわち、レンズ本体部23は、ランバーシアン分布とされて光量が高い光軸Laの近傍では光を拡散させるとともに、光軸Laの近傍から外側へ向かうほど光を集めるものとしている。このため、レンズ本体部23は、横断面すなわち幅方向において、光源21からの光を、略等しい光量分布となるように略均等に分散させるとともに、投影により形成する照射パターンPiの明暗境界線Bにおいて幅方向に位置する右側境界線B3および左側境界線B4に光を集めて、両境界線B3、B4を強調する。
【0021】
また、レンズ本体部23は、
図4に示すように、光軸Laを中心として上下方向で上側レンズ部31と下側レンズ部32とから形成されている。レンズ本体部23は、上側レンズ部31が照射パターンPiにおける遠方側パターン部Pf(
図3参照)を形成し、下側レンズ部32が照射パターンPiにおける近方側パターン部Pn(
図3参照)を形成する。遠方側パターン部Pfは、照射パターンPiにおいて、車両用灯具10(車両1)から離れた側、すなわち遠い箇所となる。近方側パターン部Pnは、照射パターンPiにおいて、車両用灯具10(車両1)に接近された側、すなわち近い箇所となる。レンズ本体部23は、上側レンズ部31が形成する遠方側パターン部Pfの手前端部(近方側パターン部Pn側の端部)と、下側レンズ部32が形成する近方側パターン部Pnの奥端部(遠方側パターン部Pf側の端部)と、を重ねて投影するものとしており、その重複箇所で周辺よりも高い光量(明るい)のライン部Lpを形成する。
【0022】
上側レンズ部31は、光軸方向と上下方向とを含む縦断面すなわち幅方向に直交する縦断面において、光源21からの光を径方向で光軸Laの近傍を通る光束を発散させるとともに、径方向で光軸Laから離れた位置を通る光束を平行とさせる。すなわち、上側レンズ部31は、ランバーシアン分布とされて光量が高い光軸Laの近傍では光を拡散させるとともに、光軸Laの近傍から外側へ向かうほど光を集めるものとしている。このため、上側レンズ部31は、縦断面すなわち上下方向の上側において、光源21からの光を、略等しい光量分布となるように略均等に分散させるとともに、投影により形成する遠方側パターン部Pfの明暗境界線Bにおいて上下方向の上側に位置する上側境界線B1に光を集めて、その上側境界線B1を強調する。
【0023】
下側レンズ部32は、上記の縦断面において、光源21からの光を径方向で光軸Laの近傍を通る光束を発散させるとともに、径方向で光軸Laから離れた位置を通る光束を平行とさせる。すなわち、下側レンズ部32は、ランバーシアン分布とされて光量が高い光軸Laの近傍では光を拡散させるとともに、光軸Laの近傍から外側へ向かうほど光を集めるものとしている。このため、下側レンズ部32は、縦断面すなわち上下方向の下側において、光源21からの光を、略等しい光量分布となるように略均等に分散させるとともに、投影により形成する近方側パターン部Pnの明暗境界線Bにおいて上下方向の下側に位置する下側境界線B2に光を集めて、その下側境界線B2を強調する。
【0024】
このように、照射パターンPiは、遠方側パターン部Pfおよび近方側パターン部Pnで形成される。その照射パターンPiは、
図3に示すように、スクリーン上において、光源21の複数の配光像Liが適宜重ねられて明暗境界線Bを形成する。ここで、各配光像Liは、光源21が投影されることで基本的に四角形状とされているが、レンズ本体部23における光学設定に応じて、形成される位置や形状が変化する。そして、レンズ本体部23は、上記のように光学的に設定されていることで、基本的に上記した分布で照射パターンPiを形成するが、上記の基本的な設定のみでは各配光像Li(その外縁)が適切に整列しないことがあり、明暗境界線Bを明確にはできなくなることがある。このため、レンズ本体部23は、照射パターンPiにおいて外縁を形作る各配光像Liを適切に整列させるように、光学的に設定される。ここで、レンズ本体部23は、スクリーン上において、主に出射面26の形状を調整することで各配光像Liの形成される位置を調整することができ、主に入射面25の形状を調整することで各配光像Liの形状を調整することができる。
【0025】
出射面26は、スクリーン上において、照射パターンPiの外縁を形作る各配光像Liを適切に整列させて、その各配光像Liの外縁の並びで線(明暗境界線B)を形成するように、対応する箇所の曲率(面形状)を調整する。すなわち、上側境界線B1よりも上側にずれた配光像Liに関しては下側に、下側境界線B2よりも下側にずれた配光像Liに関しては上側に、右側境界線B3よりも右側にずれた配光像Liに関しては左側に、左側境界線B4よりも左側にずれた配光像Liに関しては右側に、それぞれ変位させるように出射面26の対応する箇所の曲率を調整する。
図3では、上側境界線B1よりも上側にずれた左端の配光像Liを下側に変位させる様子と、下側境界線B2よりも下側にずれた右端の配光像Liを上側に変位させる様子と、を二点鎖線で示している。
【0026】
出射面26は、上記の設定により、
図4に示す形状とされる。この
図4では、色が濃くなるほど曲率が大きくなって相対的に突出していることを示し、色が薄くなるほど曲率が小さくなって相対的に凹んでいることを示す。ここで、光軸Laを通り幅方向に延びる直線を幅方向線L1とし、光軸Laを通り上下方向に延びる直線を上下方向線L2とする。出射面26は、幅方向線L1の周辺および上下方向線L2の周辺を相対的に凹ませるとともに、幅方向線L1をx軸としかつ上下方向線L2をy軸とした際の第1象限から第4象限に相当する箇所を相対的に突出させている。出射面26は、このような形状とされることで、各配光像Liの外縁の並びで線を形成しつつ総ての配光像Liを適切に配置させて、照射パターンPiを形成することができる。これにより、レンズ本体部23は、上記の基本的な光量分布とすることで強調した明暗境界線Bを、より明確なものにできる。これは、各配光像Liの外縁の並びで線を形成しているため、この線よりも内側には各配光像Liが配置されるとともに外側には配光像Liが配置されていないので、この線が明確な明暗境界線Bとなることによる。
【0027】
また、入射面25は、スクリーン上において、各配光像Liにおける歪みが少なくなるように面形状を調整する。ここで、入射面25は、上記の横断面における形状と、上記の縦断面における形状と、を個別に設定している。
【0028】
入射面25は、
図5に示すように、横断面において凹面、すなわち光源21とは反対側(光軸方向の前側)へ向けて突出する湾曲面としている。これは、入射面25を平面とすると凹面としたときと比較して各配光像Liにおける歪みが大きくなり、入射面25を凸面とすると各配光像Liにおける歪みがさらに大きくなることによる。
【0029】
また、入射面25は、縦断面において凸面、すなわち光源21側(光軸方向の後側)へ向けて突出する湾曲面としている。これは、入射面25を平面とすると凸面としたときと比較して各配光像Liにおける歪みが大きくなり、入射面25を凹面とすると各配光像Liにおける歪みがさらに大きくなることによる。
【0030】
このように、入射面25は、横断面すなわち幅方向と、縦断面すなわち上下方向と、で曲率半径の異なるトロイダル面(トロイダルレンズ)とされている。なお、入射面25は、縦断面において凸面としつつ横断面において凹面とするものであれば、それぞれの曲率半径(曲率)は適宜設定すればよい。入射面25は、このような形状とされることで、各配光像Liの歪みを抑制することができ、その各配光像Liを用いて照射パターンPiを形成することができる。これにより、レンズ本体部23は、照射パターンPiをより所望の形状にできる。これは、各配光像Liの歪みが小さい方が、歪みの大きい各配光像Liを用いることと比較して、上記のように各配光像Liの外縁の並びで線を形成しつつ設定した明暗境界線Bの隅まで配光像Liを適切に配置し易くなることによる。
【0031】
この車両用灯具10は、
図2を参照して以下のように組み付けられる。先ず、基板22に対して位置決めされた状態で、光源21が基板22に実装されて光源部11が組み付けられる。その後、投影レンズ12における両取付部24の各取付突起27を、光源部11の基板22の対応する取付穴22aに嵌め入れて、両取付部24を基板22に固定する。これにより、光源部11の光源21の光軸La上に投影レンズ12のレンズ本体部23のレンズ軸が一致されつつ所定の間隔とされて、光源部11と投影レンズ12とが取り付けられて、車両用灯具10が組み付けられる。
【0032】
この車両用灯具10は、光軸Laが車両1の側方に向けられつつ車両1の周辺の路面2に対して傾斜された状態で灯室に設けられる(
図1参照)。車両用灯具10は、点灯制御回路からの電力を基板22から光源21に供給することで、光源21を適宜点灯および消灯することができる。光源21からの光は、
図1に示すように、投影レンズ12により光が制御されつつ投影されることで、遠方側パターン部Pfの手前端部と近方側パターン部Pnの奥端部とが重ねられて、ライン部Lpを有する照射パターンPiを路面2上に形成する。その照射パターンPiは、光軸Laが路面2に対して傾斜されていることに起因して、車両1から遠ざかるに連れて拡がる台形状とされている。照射パターンPiは、車両1の前端近傍における左右の側方の路面2を部分的に光らせることができる。この照射パターンPiは、実施例1では一例としてターンランプと連動して形成され、車両1が右左折することを周辺に知らせることができる。
【0033】
次に、この車両用灯具10の作用について、
図6を用いて説明する。なお、
図6では、理解を容易とするために、二輪車3の運転手を省略して示している。車両用灯具10は、ターンランプと連動されており、左右いずれかのターンランプが点灯されると、その点灯された側に設けられたものの光源21が点灯されて、照射パターンPiを路面2上に形成する。例えば、
図6では、道路を直進している車両1が、左折しようとしている場面を示している。車両1では、左側のターンランプが点滅されることで、左前に設けられた車両用灯具10が照射パターンPiを路面2上に形成する。すると、車両1の後方を走行する二輪車3の運転手は、車両1のターンランプを視認できない場合であっても、路面2上に形成された照射パターンPiを視認することができ、車両1が左折し得ることを把握できる。
【0034】
また、車両1は、左右の車両用灯具10がターンランプと連動されているので、両ターンランプがハザードランプとして点灯された場合には、左右の2つの車両用灯具10が同時に照射パターンPiを路面2上に形成することとなる(
図1参照)。このため、車両用灯具10は、左右のターンランプのみを点滅させている場合と比較して、車両1の周辺にいる者に対して、ハザードランプとして点灯されていることをより確実に認識させることができる。
【0035】
さらに、車両用灯具10は、投影レンズ12が光学的に上記した設定とされているので、光を集めることで輪郭となる4つの明暗境界線Bを鮮明とした照射パターンPiを形成できる。このため、車両用灯具10は、光源21の光量を高めなくても、照射パターンPiの形状を認識することを可能として、形成した照射パターンPiにより周辺の者に対して運転手の何らかの意図(実施例1では右左折等)を伝えることができる。
【0036】
ここで、先行技術文献に記載の従来の車両用灯具は、単に車両の周辺の路面に照射パターンを投影しているのみであり、照射パターンの輪郭(明暗境界線)を強調していない。このため、従来の車両用灯具は、照射パターンとしてぼんやりと光る領域を形成することとなり、照射パターンの形状を認識することが困難である。このような照射パターンは、車両からの光で形成されたものであるのか、車両とは別からの光であるのか、の判別を困難としてしまい、周辺の者に運転手の何らかの意図を伝えることが困難となってしまう。加えて、照射パターンは、運転手の何らかの意図を形状で表すことも考えられるが、形状の認識が困難であると、やはり意図を伝えることが困難となる。そこで、従来の車両用灯具は、照射パターンの形状の認識を可能とするために光源の光量を高めることが考えられるが、全体構成の大型化や消費電力量の増加やそれに伴う放熱部材の追加等を招いてしまう。
【0037】
これに対して、本願発明の車両用灯具10は、投影レンズ12が光源21からの光を照射パターンPiの各明暗境界線Bに光を集めて強調することで、照射パターンPiの各明暗境界線Bを鮮明としている(
図1参照)。この車両用灯具10は、従来の車両用灯具と略等しい明るさで照射パターンPiを形成した場合であっても、従来の車両用灯具が形成する照射パターンよりも適切に、照射パターンPi(その形状)を認識させることができる。このため、車両用灯具10は、従来の車両用灯具と比較して、光源21の光量を高めることなく、照射パターンPi(その形状)を認識させることができる。そして、車両用灯具10は、意図した形状の照射パターンPiを周辺の者に認識させることができるので、周辺の者に対して運転手の何らかの意図(実施例1では右左折等)を適切に伝えることができる。
【0038】
特に、実施例1の車両用灯具10は、光源21を単色光としているので、投影レンズ12における色収差の影響を大幅に抑制することができる。このため、車両用灯具10は、各明暗境界線Bがより鮮明な照射パターンPiの形成できる。
【0039】
加えて、実施例1の車両用灯具10は、照射パターンPiにおいて、上側レンズ部31が形成する遠方側パターン部Pfの手前端部と、下側レンズ部32が形成する近方側パターン部Pnの奥端部と、を重ねることで、周辺よりも高い光量(明るい)のライン部Lpを形成している。ここで、上記の従来の車両用灯具は、照射パターンと形成する光源に加えてライン部を形成する光源を設けることで、照射パターンにライン部を形成している。このため、車両用灯具10は、従来の車両用灯具とは異なり新たな光源を用いることなく、光源部11と投影レンズ12とからなる簡単な構成で、照射パターンPiにライン部Lpを形成することができ、照射パターンPiをより認識し易くできる。
【0040】
実施例1の車両用灯具10は、投影レンズ12における左右方向の端面となる、レンズ本体部23の両側面23aと、各取付部24の外側面24aと、に拡散部28を設けている。このため、車両用灯具10は、投影レンズ12内に導かれた光源21からの光が、レンズ本体部23の両側面23aや各取付部24の外側面24aから出射された場合であっても、その光を拡散部28により拡散することができる。これにより、車両用灯具10は、両側面23aや両外側面24aから出射された光が、照射パターンPiやその周辺の意図しない箇所を照らす漏れ光となることを防止できる。このため、車両用灯具10は、漏れ光により各明暗境界線Bがボケることを抑制でき、各明暗境界線Bをより適切に強調でき、適切に照射パターンPiを形成することができる。
【0041】
実施例1の車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0042】
車両用灯具10は、光源21と、その光源21から出射された光を投影して複数の明暗境界線Bを有する照射パターンPiを形成する投影レンズ12と、を備え、投影レンズ12が、明暗境界線Bの少なくとも一部に光を集めて強調している。このため、車両用灯具10は、照射パターンPiにおける明暗境界線Bの少なくとも一部を鮮明なものにできるので、照射パターンPiの形状の認識を容易なものにできる。そして、車両用灯具10は、光源21の光量の増大を招くことなく、光源部11と投影レンズ12とにより照射パターンPiの形状の認識を容易なものとしているので、従来の車両用灯具と比較して簡易な構成にできる。
【0043】
また、車両用灯具10は、投影レンズ12が、光源21からの光に対して明暗境界線Bの内側に集光させるとともに、照射パターンPiの他の箇所では拡散させている。このため、車両用灯具10は、投影レンズ12により光源21からの光を制御して照射パターンPi(その形状)を形成することを容易なものとすることができ、より適切に照射パターンPiを形成できる。
【0044】
さらに、車両用灯具10は、投影レンズ12の出射面26を、凸面とするとともに光軸Laを通る幅方向線L1の周辺と光軸Laを通る上下方向線L2の周辺とを他の箇所に対して凹ませている。このため、車両用灯具10は、照射パターンPiを形成する各配光像Liを、強調した明暗境界線Bの内側に位置させることができ、その明暗境界線Bをより明確にできる。
【0045】
車両用灯具10は、投影レンズ12の入射面25を、幅方向に直交する断面において凸面とされているとともに、上下方向に直交する断面において凹面としている。このため、車両用灯具10は、照射パターンPiを形成する各配光像Liにおける歪みを効果的に抑制することができ、より適切に照射パターンPiを形成できる。
【0046】
車両用灯具10は、投影レンズ12が上下方向で上側レンズ部31と下側レンズ部32とから形成され、上側レンズ部31が照射パターンPiにおいて遠い箇所となる遠方側パターン部Pfを形成し、下側レンズ部32が照射パターンPiにおいて近い箇所となる近方側パターン部Pnを形成する。そして、車両用灯具10は、遠方側パターン部Pfの手前端部と、近方側パターン部Pnの奥端部と、を重ねることで、照射パターンPiにおいて周辺よりも高い光量のライン部Lpを形成している。このため、車両用灯具10は、光源部11と投影レンズ12とからなる簡易な構成で、照射パターンPiにライン部Lpを形成することができる。
【0047】
車両用灯具10は、投影レンズ12において、入射面25および出射面26以外の少なくとも一部に拡散部28を設けている。このため、車両用灯具10は、漏れ光により強調した明暗境界線Bがボケることを抑制でき、明暗境界線Bをより適切に強調でき、適切に照射パターンPiを形成することができる。
【0048】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例1の車両用灯具10は、光源21の光量の増大を招くことなく、照射パターンPiの形状の認識を容易にできる。
【0049】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0050】
なお、実施例1では、照射パターンPiを4つの明暗境界線Bを有する四角形状としている。しかしながら、照射パターンPiは、車両1の周辺の路面2に形成されて、周辺の者に対して運転手の何らかの意図を知らせるものであって複数の角部(球面等に面取りされたものも含む)および複数の明暗境界線Bを有する多角形状とされていれば、その角部の数や形状は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0051】
また、実施例1では、投影レンズ12が、四角形状の照射パターンPiにおける4つの明暗境界線Bすなわち全ての辺に光を集めて強調している。しかしながら、投影レンズ12は、照射パターンPiの各明暗境界線Bの少なくとも一部に光を集めて強調すれば、強調する明暗境界線Bの範囲は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。この場合、例えば、実施例1のように四角形状の照射パターンPiにおいて、車両1から最も離れた一辺(1つの明暗境界線B)のみを強調しないものとすることで、
図7に示すように、照射パターンPiの形状の認識を容易としつつ車両1から離れる方向へと向かう様子を示すことができる。
【0052】
さらに、実施例1では、投影レンズ12において、レンズ本体部23の両側面23aと、各取付部24の外側面24aと、に拡散部28を設けている。しかしながら、拡散部28は、投影レンズ12における入射面25および出射面26以外の箇所であって、投影レンズ12内に導かれた光源21からの光が漏れ光となる箇所であれば、両側面23aや両外側面24a以外であっても適宜設ければよく、実施例1の構成に限定されない。
【0053】
実施例1では、投影レンズ12が、遠方側パターン部Pfの手前端部と近方側パターン部Pnの奥端部とを重ねて投影することで、ライン部Lpを有する照射パターンPiを形成している。しかしながら、投影レンズ12は、光源21から出射された光を投影して複数の明暗境界線Bを有する多角形状の照射パターンPiを形成するものであれば、ライン部Lpを形成しなくてもよく、他の形状のライン部Lpを形成してもよく、実施例1の構成に限定されない。ライン部Lpは、遠方側パターン部Pfの手前端部の形状と近方側パターン部Pnの奥端部の形状とを調整することで、設ける位置や形状を設定することができ、例えば、湾曲する線や屈曲する線とすることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 車両用灯具 12 投影レンズ 21 光源 25 入射面 26 出射面 31 上側レンズ部 32 下側レンズ部 L1 幅方向線 L2 上下方向線 La 光軸 Lp ライン部 B 明暗境界線 Pf 遠方側パターン部 Pn 近方側パターン部 Pi 照射パターン