(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】車両用ドア制御装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/63 20150101AFI20230808BHJP
E05B 81/56 20140101ALI20230808BHJP
E05B 81/66 20140101ALI20230808BHJP
E05B 81/70 20140101ALI20230808BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20230808BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
E05F15/63
E05B81/56
E05B81/66
E05B81/70
B60J5/10 H
B60J5/00 N
(21)【出願番号】P 2019124556
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】真崎 世文
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良
(72)【発明者】
【氏名】飯川 大志
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036602(JP,A)
【文献】特開2013-151823(JP,A)
【文献】特開2017-036599(JP,A)
【文献】特開2002-250163(JP,A)
【文献】特開2019-094718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
E05B 1/00 - 85/28
B60J 5/10
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部が形成される車体と、前記ドア開口部を閉じる閉位置及び前記ドア開口部を開く開位置の間で変位するドアと、前記車体及び前記ドアの一方に設けられるストライカと、前記車体及び前記ドアの他方に設けられるとともに前記ストライカに係合することで前記ドアを前記閉位置に拘束するドアロック機構と、前記ドアの閉作動要求に基づいて前記ドアを閉作動させるドア駆動部と、前記ドアロック機構を駆動するドアロック駆動部と、を備える車両に適用される車両用ドア制御装置であって、
前記ドアロック機構は、前記ストライカに係合するフルラッチ位置及び前記ストライカとの係合を解除するアンラッチ位置の間で回動するラッチと、前記ラッチを前記フルラッチ位置に拘束するポールと、を有し、
前記ドアロック駆動部は、前記ポールによる前記ラッチの拘束を解除して、前記ラッチを前記フルラッチ位置から前記アンラッチ位置に向けてアンラッチ作動させるものであり、
前記ドアが前記開位置に位置し且つ前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置する状況下において、前記閉作動要求が入力される場合には前記ドアの閉作動を許可する一方、
前記ドアが前記開位置に位置し且つ前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置しない状況下において、前記閉作動要求が入力される場合には前記ドアの閉作動を制限する
ものであって、
前記ドアが前記開位置に位置し且つ前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置しない状況下において、前記閉作動要求が入力される場合には、前記ラッチを前記アンラッチ作動させる
車両用ドア制御装置。
【請求項2】
前記ドアが前記開位置に位置し且つ前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置しない状況下において、前記閉作動要求が入力される場合には報知部に警告を報知させる
請求項1に記載の車両用ドア制御装置。
【請求項3】
前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置しない状況下とは、前記ラッチが前記フルラッチ位置に位置する状況及び前記ラッチがハーフラッチ位置に位置する状況を含む
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ストライカを有する車体と、ストライカに係合するラッチ機構を有するバックドアと、バックドアを開閉駆動するドア駆動ユニットと、ラッチ機構を駆動するドアロック駆動ユニットと、ドアロック駆動ユニットとドア駆動ユニットとを制御する制御装置と、を備える車両が開示されている。
【0003】
ラッチ機構は、ストライカに係脱するラッチを有し、ラッチがストライカに係合するフルラッチ状態及びラッチがストライカに係合しないアンラッチ状態に切り替わる。ラッチ機構がフルラッチ状態になると、バックドアが全閉位置に拘束され、ラッチ機構がアンラッチ状態になると、バックドアの拘束が解除される。
【0004】
そして、制御装置は、ユーザからのバックドアの閉作動要求がある場合、ドア駆動ユニットにより、バックドアを閉作動させた後、ドアロック駆動ユニットにより、ラッチ機構をフルラッチ状態に移行させる。一方、制御装置は、ユーザからのバックドアの開作動要求がある場合、ドアロック駆動ユニットにより、ラッチ機構をアンラッチ状態に移行させた後、ドア駆動ユニットにより、バックドアを開作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような車両において、バックドアが全開位置に位置するとき、バックドアのラッチ機構はユーザの手の届く位置に配置される。このため、ユーザが、ラッチにロープなどの異物を引っ掛けるなどの特殊な操作を行うと、バックドアが全閉位置に位置していないにも関わらず、ラッチ機構がフルラッチ状態となる場合がある。
【0007】
本発明の目的は、ドアが開位置に位置する状況下において、ユーザがラッチに対して特殊な操作を行う場合であっても、ドアの閉作動を適切に制御できる車両用ドア制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用ドア制御装置は、ドア開口部が形成される車体と、前記ドア開口部を閉じる閉位置及び前記ドア開口部を開く開位置の間で変位するドアと、前記車体及び前記ドアの一方に設けられるストライカと、前記車体及び前記ドアの他方に設けられるとともに前記ストライカに係合することで前記ドアを前記閉位置に拘束するドアロック機構と、前記ドアの閉作動要求に基づいて前記ドアを閉作動させるドア駆動部と、前記ドアロック機構を駆動するドアロック駆動部と、を備える車両に適用される車両用ドア制御装置であって、前記ドアロック機構は、前記ストライカに係合するフルラッチ位置及び前記ストライカとの係合を解除するアンラッチ位置の間で回動するラッチと、前記ラッチを前記フルラッチ位置に拘束するポールと、を有し、前記ドアロック駆動部は、前記ポールによる前記ラッチの拘束を解除して、前記ラッチを前記フルラッチ位置から前記アンラッチ位置に向けてアンラッチ作動させるものであり、前記ドアが前記開位置に位置し且つ前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置する状況下において、前記閉作動要求が入力される場合には前記ドアの閉作動を許可する一方、前記ドアが前記開位置に位置し且つ前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置しない状況下において、前記閉作動要求が入力される場合には前記ドアの閉作動を制限する。
【0009】
上記構成の車両用ドア制御装置は、ドアが開位置に位置し且つラッチがアンラッチ位置に位置しない状況下において、閉作動要求が入力される場合にはドアの閉作動を制限する。このため、車両用ドア制御装置は、フルラッチ位置に位置するラッチがストライカに接触したり、ラッチをフルラッチ位置に位置させるためにラッチに引っ掛けた異物がストライカに接触したりすることを抑制できる。こうして、車両用ドア制御装置は、ドアが開位置に位置する状況下において、ユーザがラッチに対して異物を引っ掛けるなどの特殊な操作を行う場合であっても、ドアの閉作動を適切に制御できる。
【0010】
上記車両用ドア制御装置は、前記ドアが前記開位置に位置し且つ前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置しない状況下において、前記閉作動要求が入力される場合には報知部に警告を報知させることが好ましい。
【0011】
車両にとって、ドアが開位置に位置し且つラッチがフルラッチ位置に位置する状況は、好ましい状況ではない。この点、車両用ドア制御装置は、上記状況下において、閉作動要求が入力される場合には報知部に警告を報知させる。このため、車両用ドア制御装置は、ラッチにロープなどの異物を引っ掛けるなどの特殊な操作を行ったことについて、ユーザに警告を与えることができる。
【0012】
上記車両用ドア制御装置は、前記ドアが前記開位置に位置し且つ前記ラッチが前記アンラッチ位置に位置しない状況下において、前記閉作動要求が入力される場合には、前記ラッチを前記アンラッチ作動させることが好ましい。
【0013】
上記構成の車両用ドア制御装置は、ドアが開位置に位置し且つラッチがアンラッチ位置に位置しない状況下において、ユーザの開閉スイッチなどの操作に基づく初回の閉作動要求が入力される場合に、ラッチをアンラッチ作動させる。この場合、ドアが開位置に位置し且つラッチがアンラッチ位置に位置する状況となる。このため、車両用ドア制御装置は、ユーザの開閉スイッチなどの操作に基づく閉作動要求が再度入力される場合に、バックドアを閉作動させる。このため、車両用ドア制御装置は、ドアが閉作動しない事態を回避できる点で、ユーザの利便性が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
上記の車両用ドア制御装置は、ドアが開位置に位置する状況下において、ユーザがラッチに対して特殊な操作を行う場合であっても、ドアの閉作動を適切に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る車両後部の概略構成を示す側面図。
【
図2】ドアロック機構とドアロック駆動部との正面図。
【
図3】ドアロック機構とドアロック駆動部との側面図。
【
図4】ドアロック機構とドアロック駆動部との正面図。
【
図5】ドアロック機構とドアロック駆動部との側面図。
【
図6】ドア制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車両用ドア制御装置(以下、「ドア制御装置」とも言う。)を備える車両の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両10は、後部にドア開口部21が形成される車体20と、ドア開口部21を開閉するバックドア30と、車体20とバックドア30との間に配置されるガススプリング40と、バックドア30を駆動するドア駆動部50と、を備える。また、車両10は、車体20にバックドア30を拘束するドアロック装置60と、ドアロック装置60を駆動するドアロック駆動部70と、ユーザに警告を報知する報知部80と、ドア駆動部50とドアロック駆動部70と報知部80とを制御するドア制御装置90と、を備える。
【0017】
車体20において、ドア開口部21は、略矩形状をなし、車両後方に開口する。ドア開口部21は、ユーザが車両10の荷室から荷物を取り出したり、ユーザが車両10の荷室に荷物を積み込んだりするための開口部である。車体20は、ドア開口部21の下端部に配置されるストライカ22を有する。
【0018】
バックドア30は、ドア開口部21に対応する形状をなす。バックドア30は、ドア開口部21の上部に回動可能に支持される。バックドア30は、車両幅方向に延びる回動軸線回りに回動することで、ドア開口部21を開放する「開位置」及びドア開口部21を閉塞する「閉位置」の間で変位する。バックドア30は、バックドア30を開閉作動させる際にユーザが操作する操作スイッチ31と、バックドア30が閉位置に位置しているか否かを検出する閉スイッチ32と、を有する。
【0019】
ガススプリング40は、例えば、筒状のシリンダと、棒状のピストンロッドと、シリンダとピストンロッドとの間に封入された高圧ガスと、を含んで構成される。ガススプリング40の第1端は車体20に連結され、ガススプリング40の第2端はバックドア30に連結される。ガススプリング40は、バックドア30の開度に関わらず、バックドア30を開方向に常時付勢する。
【0020】
図1に示すように、ドア駆動部50は、モータ51と、モータ51の動力が伝達される第1アーム52及び第2アーム53と、モータ51から第1アーム52に対する動力の伝達状況を切り替えるクラッチ54と、を有する。第1アーム52の基端はクラッチ54を介してモータ51の出力軸に連結され、第1アーム52の先端は第2アーム53の基端に相対回転可能に連結される。第2アーム53の先端はバックドア30に相対回転可能に連結される。こうして、本実施形態では、バックドア30とドア駆動部50の第1アーム52及び第2アーム53とで、てこクランク機構が構成される。つまり、
図1において、第1アーム52が時計回りに回転する場合、バックドア30が閉作動し、第1アーム52が反時計回りに回転する場合、バックドア30が開作動する。
【0021】
次に、ドアロック装置60について説明する。
図2及び
図3に示すように、ドアロック装置60は、ストライカ22に係合するラッチ61と、ラッチ61に係合するポール62と、ラッチ61を回動可能に支持するラッチ支持軸63と、ポール62を回動可能に支持するポール支持軸64と、を備える。また、ドアロック装置60は、ラッチ61を付勢するラッチ付勢ばね65と、ポール62を付勢するポール付勢ばね66と、ポール62とともに回動するリフトレバー67と、を備える。また、
図1に示すように、ドアロック装置60は、ラッチ61の位置を検出するハーフラッチスイッチ68及びフルラッチスイッチ69を有する。
【0022】
図2に示すように、ラッチ61は、ラッチ61の回動方向に並ぶように設けられる第1係合部611、第2係合部612、第3係合部613及び第4係合部614を有する。第1係合部611、第2係合部612及び第3係合部613は、ラッチ支持軸63の軸線と交差する方向に延びる。ラッチ61には、第1係合部611及び第2係合部612の間に係合凹部615が形成される。そして、ラッチ61は、ラッチ付勢ばね65により、
図2における時計回りに付勢される。このとき、ラッチ61は、第4係合部614が不図示のラッチストッパに接触することで、
図2に示す「アンラッチ位置」に配置される。
【0023】
ポール62は、ポール支持軸64の軸線と交差する方向に延びる。ポール62は、ポール支持軸64を介してリフトレバー67と連結される。また、ポール62は、ポール付勢ばね66により、
図2における反時計回りに付勢される。
図2に示すように、ラッチ61がアンラッチ位置に位置する状態では、ポール62がラッチ61の第2係合部612に接触する。
【0024】
次に、ドアロック装置60の作用について説明する。
バックドア30が開位置に位置する場合には、
図2に示すように、ラッチ61がアンラッチ位置に位置し、ポール62は、ラッチ61の第2係合部612に接触する。また、バックドア30の回動軌跡に対して、ラッチ61の係合凹部615の開口がストライカ22を向く。
【0025】
続いて、バックドア30が閉位置付近まで閉作動すると、ラッチ61の係合凹部615にストライカ22が進入する。すると、ストライカ22が係合凹部615の内面を押すことで、ラッチ61がラッチ付勢ばね65を弾性変形させつつ、第1回動方向R11に回動する。そして、ポール62がラッチ61の第2係合部612に係合し、ラッチ61の第2回動方向R12の回動が制限される。以降の説明では、ラッチ61が第2回動方向R12に回動不能となるように、ポール62がラッチ61の第2係合部612に係合するときのラッチ61の位置を「ハーフラッチ位置」という。ラッチ61がハーフラッチ位置に位置するとき、バックドア30はいわゆる半ドアとなる。
【0026】
バックドア30が閉位置まで閉作動すると、
図4に示すように、ラッチ61の係合凹部615にストライカ22がさらに進入する。すると、ストライカ22が係合凹部615の内面を押すことで、ラッチ61がラッチ付勢ばね65に弾性変形させつつ、第1回動方向R11にさらに回動する。そして、ポール62がラッチ61の第1係合部611に係合し、ラッチ61の第2回動方向R12の回動を制限される。以降の説明では、ラッチ61が第2回動方向R12に回動不能となるように、ポール62がラッチ61の第1係合部611に係合するときのラッチ61の位置を「フルラッチ位置」という。
【0027】
その一方で、
図4に示すように、ラッチ61がフルラッチ位置に位置するときに、ポール62が第1係合部611から離れる方向に回動すると、ラッチ61が、ラッチ付勢ばね65の復元力により第2回動方向R12にする。つまり、ラッチ61がフルラッチ位置からアンラッチ位置に向かって回動することで、ラッチ61の係合凹部615にストライカ22が拘束されなくなる。
【0028】
同様に、ラッチ61がハーフラッチ位置に位置するときに、ポール62が第2係合部612から離れる方向に回動すると、ラッチ61が、ラッチ付勢ばね65の復元力により第2回動方向R12に回動する。つまり、ラッチ61がハーフラッチ位置からアンラッチ位置に向かって回動することで、ラッチ61の係合凹部615にストライカ22が拘束されなくなる。
【0029】
以降の説明では、ラッチ61がフルラッチ位置又はハーフラッチ位置からアンラッチ位置に向かって回動することを「アンラッチ作動」ともいう。
ハーフラッチスイッチ68は、ラッチ61がハーフラッチ位置に位置するか否かを検出する。フルラッチスイッチ69は、ラッチ61がフルラッチ位置に位置するか否かを検出する。
【0030】
次に、ドアロック駆動部70について説明する。
図3に示すように、ドアロック駆動部70は、バックドア30に固定されるブラケット71と、ブラケット71に回動可能に支持されるピニオン72と、ピニオン72を駆動するモータ73と、ピニオン72に駆動されるアクティブレバー74と、を備える。また、ドアロック駆動部70は、アクティブレバー74に駆動されるパッシブレバー75と、アクティブレバー74に駆動されるベルクランク76と、ベルクランク76に駆動されるオープンレバー77と、を有する。
【0031】
ブラケット71は、アクティブレバー74とパッシブレバー75とを回動可能に支持する第1支持軸781と、ベルクランク76を回動可能に支持する第2支持軸782と、オープンレバー77を回動可能に支持する第3支持軸783と、を有する。第1支持軸781、第2支持軸782及び第3支持軸783は、ラッチ61の回動軸線と交差する方向に延びる。
【0032】
アクティブレバー74は、ピニオン72と噛み合うギヤ741と、第1支持軸781の軸線に沿って延びるアクティブレバーピン742と、を有する。アクティブレバー74は、ドアロック装置60を駆動する必要のない場合、
図3に示す「初期位置」に配置される。
【0033】
パッシブレバー75は、アクティブレバー74とは個別に回動可能に第1支持軸781に支持される。パッシブレバー75は、先端部751がラッチ61に向かって延び、基端部752がアクティブレバーピン742の動作範囲に位置する。パッシブレバー75は、
図3において、反時計回りに付勢される。つまり、パッシブレバー75は、先端部751がラッチ61から遠ざかるように付勢される。
【0034】
ベルクランク76は、第1端761がオープンレバー77に向かって延び、第2端762がアクティブレバーピン742の動作範囲に位置する。ベルクランク76は、
図3において、時計回りに付勢される。つまり、ベルクランク76は、第1端761がアクティブレバー74から遠ざかるように付勢される。
【0035】
オープンレバー77は、第1端771がリフトレバー67に向かって延び、第2端772がベルクランク76の第1端761の動作範囲に位置し、第3端773が第1端771及び第2端772と異なる方向に延びる。オープンレバー77は、
図3において、反時計回りに付勢される。つまり、オープンレバー77は、第1端771がリフトレバー67から遠ざかるように付勢される。
【0036】
次に、ドアロック駆動部70の作用について説明する。
パッシブレバー75は、ラッチ61がハーフラッチ位置に位置するときに、第1作動方向R21に回動するアクティブレバー74の動力をラッチ61に伝達することで、ラッチ61をフルラッチ位置まで回動させる。
【0037】
詳しくは、
図3に示すように、アクティブレバー74が第1作動方向R21に回動すると、パッシブレバー75の基端部752がアクティブレバー74のアクティブレバーピン742に押される。続いて、
図3に一点鎖線矢印で示すように、パッシブレバー75の先端部751がラッチ61の第3係合部613に接近するようにパッシブレバー75が回動する。すると、パッシブレバー75の先端部751がハーフラッチ位置に位置するラッチ61の第3係合部613を押し、ラッチ61がフルラッチ位置に向かって回動する。アクティブレバー74は、ラッチ61をフルラッチ位置まで回動させるのに必要な量だけパッシブレバー75を回動させると、初期位置に向かって復動する。このとき、パッシブレバー75は、アクティブレバー74から動力が伝達されなくなることで、
図3に示す位置に復帰する。
【0038】
一方、ベルクランク76とオープンレバー77とは、ラッチ61がフルラッチ位置又はハーフラッチ位置にあるときに、第2作動方向R22に回動するアクティブレバー74の動力をポール62に伝達することで、ラッチ61をアンラッチ位置まで回動させる。
【0039】
詳しくは、
図5に示すように、アクティブレバー74が第2作動方向R22に回動すると、ベルクランク76の第2端762がアクティブレバー74のアクティブレバーピン742に押される。続いて、
図5に一点鎖線矢印で示すようにベルクランク76が回動し、ベルクランク76の第1端761がオープンレバー77の第2端772を押す。さらに、
図5に一点鎖線で示すようにオープンレバー77が回動し、オープンレバー77の第1端771がリフトレバー67を押す。その結果、リフトレバー67とともにポール62が回動する。
【0040】
ここで、ラッチ61がフルラッチ位置に位置する場合には、ポール62がラッチ61の第1係合部611に係合しなくなるように回動し、ラッチ61がハーフラッチ位置に位置する場合には、ポール62がラッチ61の第2係合部612に係合しなくなるように回動する。その結果、ラッチ61が第2回動方向R12に回動可能となり、ラッチ61がラッチ付勢ばね65の復元力によりアンラッチ位置に向かって回動する。つまり、ラッチ61がアンラッチ作動する。
【0041】
アクティブレバー74は、ポール62をラッチ61に係合させなくするのに必要な量だけリフトレバー67を回動させると、初期位置に向かって復動する。このとき、ベルクランク76とオープンレバー77とは、アクティブレバー74から動力が伝達されなくなることで、
図4に示す位置に復帰する。
【0042】
図1に示すように、ドア制御装置90は、操作スイッチ31から入力される信号、電子キーなどの携帯機100から入力される信号、閉スイッチ32から入力される信号、ハーフラッチスイッチ68から入力される信号及びフルラッチスイッチ69から入力される信号に基づいて、ドア駆動部50及びドアロック駆動部70を制御する。
【0043】
詳しくは、ドア制御装置90は、操作スイッチ31から入力される信号及び携帯機100から入力される信号に基づいて、ユーザからバックドア30の開作動要求及び閉作動要求の有無を判定する。また、ドア制御装置90は、閉スイッチ32から入力される信号に基づいて、バックドア30が閉位置に位置しているか否かを判定する。さらに、ドア制御装置90は、ハーフラッチスイッチ68から入力される信号及びフルラッチスイッチ69から入力される信号に基づいて、ラッチ61の位置を判定する。
【0044】
そして、ドア制御装置90は、バックドア30が閉位置に位置する状況下において、操作スイッチ31及び携帯機100からバックドア30を開作動させるための開作動要求が入力される場合、ドアロック駆動部70により、ラッチ61をアンラッチ位置まで回動させる。続いて、ラッチ61がアンラッチ位置まで回動した後に、ドア制御装置90は、ドア駆動部50により、バックドア30を開位置に向かって開作動させる。ここで、開位置は、バックドア30の仕様に基づいて決定される位置でもよいし、ユーザが任意に設定したメモリー位置でもよい。
【0045】
一方、ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置する状況下において、操作スイッチ31及び携帯機100からバックドア30を閉作動させるための閉作動要求が入力される場合、ドア駆動部50により、バックドア30を閉位置に向かって閉作動させる。続いて、バックドア30の閉作動に伴いラッチ61がハーフラッチ位置まで回動した後に、ドア制御装置90は、ドアロック駆動部70により、ラッチ61をハーフラッチ位置からフルラッチ位置まで回動させる。
【0046】
ところで、バックドア30が開位置に位置するとき、バックドア30のドアロック機構はユーザの手の届く位置に配置される。このため、ユーザが、ラッチ61にロープなどの異物を引っ掛けるなどの特殊な操作を行うと、バックドア30が閉位置に位置していないにも関わらず、ラッチ61がハーフラッチ位置又はフルラッチ位置まで回動する場合がある。この場合、バックドア30が閉作動されると、ハーフラッチ位置又はフルラッチ位置に位置するラッチ61、すなわち、係合凹部615がストライカ22を向いていないラッチ61がストライカ22に接触するおそれがある。あるいは、ラッチ61に引っ掛けた異物がストライカ22との間に挟み込まれたりするおそれがある。
【0047】
そこで、本実施形態のドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がアンラッチ位置に位置する状況下において、バックドア30の閉作動要求が入力される場合にはバックドア30の閉作動を許可する。
【0048】
一方、ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がアンラッチ位置に位置しない状況下において、バックドア30の閉作動要求が入力される場合にはバックドア30の閉作動を制限する。ラッチ61がアンラッチ位置に位置しない状況下とは、ラッチ61がフルラッチ位置に位置する状況及びラッチ61がハーフラッチ位置に位置する状況の両方の状況を含む。
【0049】
また、ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がアンラッチ位置に位置しない状況下において、バックドア30の閉作動要求が入力される場合には、ユーザに向けてラッチ61に異物が取り付いている旨の警告を報知部80に報知させる。なお、報知部80は、音、光及び振動などにより、警告を報知すればよい。さらに、同状況下において、バックドア30の閉作動要求が入力される場合には、ドア制御装置90は、ラッチ61をアンラッチ作動させる。
【0050】
次に、
図6に示すフローチャートを参照し、ユーザからバックドア30の閉作動要求が入力される場合に、ドア制御装置90が実行する処理ルーチンについて説明する。
図6に示すように、ドア制御装置90は、ユーザからバックドア30の閉作動要求が入力される場合、閉スイッチ32から入力される信号に基づいて、バックドア30が開位置に位置しているか否かを判定する(ステップS11)。バックドア30が閉位置に位置している場合(ステップS11:NO)、ドア制御装置90は、本処理を一旦終了する。
【0051】
一方、バックドア30が開位置に位置している場合(ステップS11:YES)、ドア制御装置90は、ハーフラッチスイッチ68及びフルラッチスイッチ69から入力される信号に基づいて、ラッチ61がアンラッチ位置に位置しているか否かを判定する(ステップS12)。ラッチ61がアンラッチ位置に位置している場合(ステップS12:YES)、ドア制御装置90は、バックドア30を閉作動させる(ステップS13)。その後、ドア制御装置90は、本処理を一旦終了する。
【0052】
一方、ラッチ61がハーフラッチ位置又はフルラッチ位置に位置している場合(ステップS12:NO)、すなわち、ユーザがドアロック装置60に対して特殊な操作を行っている場合、ドア制御装置90は、ユーザに向けて、ラッチ61に異物が取り付いている旨の警告を報知部80に報知させる(ステップS14)。その後、ドア制御装置90は、ラッチ61をアンラッチ位置にアンラッチ作動させ(ステップS15)、本処理を一旦終了する。
【0053】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がアンラッチ位置に位置しない状況下において、閉作動要求が入力される場合にはバックドア30の閉作動を制限する。このため、ドア制御装置90は、フルラッチ位置又はハーフラッチ位置に位置するラッチ61がストライカ22に接触することを抑制できる。また、ドア制御装置90は、ラッチ61をフルラッチ位置又はハーフラッチ位置に位置させるためにラッチ61に引っ掛けた異物がストライカ22に接触することを抑制できる。また、ドア制御装置90は、ラッチ61から異物を取り除こうとしているユーザが操作スイッチ31などを操作することにより閉作動するバックドア30がユーザに接触することを抑制できる。こうして、ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置する状況下において、ユーザがラッチ61をフルラッチ位置又はハーフラッチ位置に回動させるような特殊な操作を行う場合であっても、バックドア30の閉作動を適切に制御できる。
【0054】
(2)車両10にとって、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がアンラッチ位置に位置しない状況は好ましい状況ではない。この点、ドア制御装置90は、上記状況下において、閉作動要求が入力される場合には報知部80に警告を報知させる。このため、ドア制御装置90は、ラッチ61に異物を引っ掛けるなどの特殊な操作を行ったことについて、ユーザに警告を与えることができる。つまり、ドア制御装置90は、一度、ラッチ61に異物を引っ掛けるなどの特殊な操作を行ったユーザが、再び同様の特殊な操作を行わないようにできる。
【0055】
(3)ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がアンラッチ位置に位置しない状況下において、ユーザの操作スイッチ31などの操作に基づく初回の閉作動要求が入力される場合に、ラッチ61をアンラッチ作動させる。この場合、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がアンラッチ位置に位置する状況となる。このため、ドア制御装置90は、ユーザの操作スイッチ31などの操作に基づく閉作動要求が再度入力される場合に、バックドア30を閉作動させる。こうして、ドア制御装置90は、バックドア30が閉作動しない事態を回避できる点で、ユーザの利便性が低下することを抑制できる。
【0056】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上述したように、バックドア30が開位置に位置するときに、ユーザがラッチ61をフルラッチ位置に変位させる特殊な操作は、車両10にとって想定外且つ望ましくない操作であるといえる。このため、ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がフルラッチ位置に位置する状況下において、閉作動要求が入力される場合には、ラッチ61をアンラッチ作動させるのに必要な時間を長くとってもよい。この場合には、ドア制御装置90は、ユーザに不便さを与えることで、ユーザが特殊な操作をしないように促すことができる。
【0057】
・ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がフルラッチ位置に位置する状況下において、閉作動要求が入力される場合には、ラッチ61をアンラッチ作動させずに、警告を報知するのみでもよい。
【0058】
・ドア制御装置90は、バックドア30が開位置に位置し且つラッチ61がフルラッチ位置に位置する状況下において、閉作動要求が入力される場合には、警告を報知させずに、ラッチ61をアンラッチ作動させるのみでもよい。
【0059】
・ドア制御装置90は、ドアの一例としてのスライドドア及びスイングドアの開閉作動の制御に適用してもよい。
・車体20がドアロック装置60を有するとともに、バックドア30がストライカ22を有してもよい。
【0060】
・ドア駆動部50は、いわゆる送りねじ機構を用いて伸縮可能に構成されたアクチュエータとしてもよい。この構成のドア駆動部は、第1端が車体20に連結され、第2端がバックドア30に連結される。そして、この構成のドア駆動部は、伸長することによりバックドア30を開作動し、収縮することによりバックドアを閉作動する。
【0061】
・ドア制御装置90は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0062】
10…車両、20…車体、21…ドア開口部、22…ストライカ、30…バックドア(ドアの一例)、31…操作スイッチ、32…閉スイッチ、40…ガススプリング、50…ドア駆動部、51…モータ、52…第1アーム、53…第2アーム、54…クラッチ、60…ドアロック装置、61…ラッチ、611…第1係合部、612…第2係合部、613…第3係合部、614…第4係合部、615…係合凹部、62…ポール、63…ラッチ支持軸、64…ポール支持軸、65…ラッチ付勢ばね、66…ポール付勢ばね、67…リフトレバー、68…ハーフラッチスイッチ、69…フルラッチスイッチ、70…ドアロック駆動部、71…ブラケット、72…ピニオン、73…モータ、74…アクティブレバー、741…ギヤ、742…アクティブレバーピン、75…パッシブレバー、751…先端部、752…基端部、76…ベルクランク、761…第1端、762…第2端、77…オープンレバー、771…第1端、772…第2端、773…第3端、781…第1支持軸、782…第2支持軸、783…第3支持軸、80…報知部、90…ドア制御装置(車両用ドア制御装置)、100…携帯機、R11…第1回動方向、R12…第2回動方向、R21…第1作動方向、R22…第2作動方向。