(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20230808BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 300B
(21)【出願番号】P 2019139402
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 将行
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-067706(JP,A)
【文献】特開2003-054220(JP,A)
【文献】特開2002-211210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接触するトレッドを備え、
前記トレッドが周方向に延びる少なくとも3本の陸部を備え、一の陸部とこの一の陸部の隣に位置する他の陸部との間が周方向溝であり、
前記陸部が周方向に並ぶ多数のブロックを備え、一のブロックとこの一のブロックの隣に位置する他のブロックとの間が横溝であり、
前記周方向溝が、前記周方向溝の底面から突出する多数の突起を備え、
これら突起が、第一突起と、前記第一突起のボリュームよりも小さなボリュームを有する第二突起とを含み、
前記第一突起が前記第二突起よりも高く、
前記周方向溝において、前記第一突起と、前記第二突起とが交互に配置され、
前記横溝が前記周方向溝と連結し、前記横溝と前記周方向溝との連結位置に前記第一突起が位置し、
前記連結位置に前記第二突起が位置せず、
軸方向において、前記横溝の口が全体として前記第一突起と重複する、重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記周方向溝が、ジグザグに延びるジグザグ周方向溝である、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ジグザグ周方向溝の折れ曲がりの外側において、前記横溝が前記ジグザグ周方向溝と連結する、請求項2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第一突起が、前記ジグザグ周方向溝の折れ曲がりの向きと同じ向きに折れ曲がる、請求項3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第一突起が前記第二突起よりも長い、請求項1から
4のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドの外面から前記第一突起までの深さが前記横溝の深さよりも浅い、請求項1から
5のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記周方向溝が、ジグザグに延びるジグザグ周方向溝であり、
前記横溝の両端が、前記ジグザグ周方向溝の折れ曲がりの外側において、前記ジグザグ周方向溝と連結する、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス等の車両に装着される重荷重用空気入りタイヤのトレッドには、濡れた路面での走行が考慮され、周方向に延びる周方向溝が刻まれる。周方向溝は、トレッドに陸部を構成する。
【0003】
走行状態において、周方向溝内の空気が気柱共鳴を起こすと、気柱共鳴音が生じる。周方向溝は、気柱共鳴音に基づくロードノイズの発生要因ともなりうる。タイヤの静粛性の向上を図るために、気柱共鳴音の発生を抑える技術について様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、周方向溝の容積を減らせば、気柱共鳴音の低減を図ることができる。しかし小さな容積で構成した周方向溝は、タイヤのウェット性能を低下させる。
【0006】
陸部を周方向に並ぶブロックに区分する横溝は、ウェット性能の向上に貢献する。しかし、横溝から周方向溝に空気が流れ込むことで、気柱共鳴音が増幅される。
【0007】
ウェット性能と静粛性とをバランスよく整えるのは難しい。ウェット性能の低下を抑えながら、静粛性の向上を図ることができる技術の確立が求められている。
【0008】
路面には、石が散在している。このため、タイヤに設けられた溝に石が噛み込むことがある。特に、ウェット性能の向上のために周方向溝に連結する横溝を設けたタイヤにおいては、この横溝と周方向溝とが連結する位置に石が噛み込みやすい。周方向溝の容積を減らせば、石の噛み込みが抑えられる。しかしこの場合、ウェット性能が低下してしまう。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ウェット性能の低下を抑えながら、静粛性の向上を図った、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。本発明はまた、ウェット性能の低下を抑えながら、耐石噛み性能の向上を図った、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、路面と接触するトレッドを備える。このトレッドは周方向に延びる少なくとも3本の陸部を備え、一の陸部とこの一の陸部の隣に位置する他の陸部との間は周方向溝である。前記陸部は周方向に並ぶ多数のブロックを備え、一のブロックとこの一のブロックの隣に位置する他のブロックとの間は横溝である。前記周方向溝は前記周方向溝の底面から突出する多数の突起を備え、これら突起は、第一突起と、前記第一突起のボリュームよりも小さなボリュームを有する第二突起とを含む。前記横溝は前記周方向溝と連結し、前記横溝と前記周方向溝との連結位置に前記第一突起が位置する。軸方向において、前記横溝の口は全体として前記第一突起と重複する。
【0011】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記周方向溝はジグザグに延びるジグザグ周方向溝である。
【0012】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ジグザグ周方向溝の折れ曲がりの外側において、前記横溝は前記ジグザグ周方向溝と連結する。
【0013】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記第一突起は、前記ジグザグ周方向溝の折れ曲がりの向きと同じ向きに折れ曲がる。
【0014】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記第一突起は前記第二突起よりも高い。
【0015】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記第一突起は前記第二突起よりも長い。
【0016】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記周方向溝において、前記第一突起と、前記第二突起とは交互に配置される。
【0017】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記トレッドの外面から前記第一突起までの深さは前記横溝の深さよりも浅い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の重荷重用空気入りタイヤでは、ウェット性能の低下を抑えながら、静粛性の向上が図られる。また本発明の重荷重用空気入りタイヤでは、ウェット性能の低下を抑えながら、耐石噛み性能の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤのトレッドの一部が示された展開図である。
【
図2】
図2は、トレッドに刻まれた溝の断面が示された断面図である。
【
図3】
図3は、周方向溝に設けられた突起が示された平面図である。
【
図4】
図4は、突起の断面が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0021】
本発明においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0022】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0023】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0024】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0025】
図1には、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部が示される。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。
【0026】
図1において、上下方向がタイヤ2の周方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向である。この
図1の紙面に対して垂直な方向がタイヤ2の径方向である。この
図1において、一点鎖線CLはこのタイヤ2の赤道面を表す。
【0027】
このタイヤ2は、路面と接触するトレッド4を備える。トレッド4は、その外面、すなわちトレッド面6において路面と接触する。トレッド4は、架橋ゴムからなる。
【0028】
図示されないが、このタイヤ2は、トレッド4以外に、サイドウォール、ビード、カーカス、ベルトといった構成部材を備える。詳述しないが、トレッドパターンを除いて、このタイヤ2の構成部材の仕様は、重荷重用空気入りタイヤにおいて一般的に用いられる構成部材の仕様と同等である。
【0029】
図1において、符号PEはトレッド面6の端である。なお、タイヤ2において、外観上、トレッド面6の端PEが識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面6の端PEとして定められる。
【0030】
図1において、両矢印TWはトレッド面6の幅である。このトレッド面6の幅TW(以下、トレッド面幅TW)は、トレッド面6に沿って計測される、一方のトレッド面6の端PEから他方のトレッド面6の端PEまでの距離で表される。
【0031】
このタイヤ2では、トレッド4は周方向に延びる少なくとも3本の陸部8を備える。これら陸部8は、周方向に延びる。これら陸部8は、軸方向に並列する。
図1に示されたトレッド4は、5本の陸部8を備える。
【0032】
5本の陸部8のうち、軸方向において内側に位置する陸部8、すなわち赤道面上に位置する陸部8がセンター陸部8cである。軸方向において最も外側に位置する陸部8、すなわち、トレッド面6の端PEを含む陸部8がショルダー陸部8sである。さらにセンター陸部8cとショルダー陸部8sとの間に位置する陸部8がミドル陸部8mである。このトレッド4は、センター陸部8cと、一対のミドル陸部8mと、一対のショルダー陸部8sとを備える。なお、トレッド4に構成された陸部8のうち、軸方向において内側に位置する陸部が赤道面上でなく、赤道面の近くに位置する場合には、この赤道面の近くに位置する陸部がセンター陸部とされる。
【0033】
このタイヤ2では、一の陸部8とこの一の陸部8の隣に位置する他の陸部8との間は溝10である。この溝10は、周方向に連続して延びる。この溝10は、周方向溝12と称される。このトレッド4は、周方向に延びる少なくとも3本の陸部8を備え、一の陸部8とこの一の陸部8の隣に位置する陸部8との間は周方向溝12である。
図1に示されたトレッド4には、4本の周方向溝12が刻まれる。これら周方向溝12は、軸方向に並列する。周方向溝12は、トレッド4と路面との間に存在する水膜を案内する。この周方向溝12は、ウェット性能に貢献する。
【0034】
4本の周方向溝12のうち、軸方向において内側に位置する周方向溝12、すなわち赤道面に近い周方向溝12がセンター周方向溝12cである。軸方向において最も外側に位置する周方向溝12、すなわち、トレッド面6の端PEに近い周方向溝12がショルダー周方向溝12sである。このトレッド4には、一対のセンター周方向溝12cと、一対のショルダー周方向溝12sとが刻まれる。なお、トレッド4に刻まれた周方向溝12に、赤道面上に位置する周方向溝が含まれる場合には、赤道面上に位置する周方向溝がセンター周方向溝とされる。さらにセンター周方向溝12cとショルダー周方向溝12sとの間に周方向溝が存在する場合には、この周方向溝がミドル周方向溝とされる。
【0035】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、周方向溝12の幅はトレッド面幅TWの2~10%程度が好ましい。周方向溝12の深さは、10~25mmが好ましい。
【0036】
このタイヤ2では、トレッド4に構成された陸部8のうち、少なくとも1本の陸部8は周方向に並ぶ多数のブロック14を備える。
【0037】
図1に示されるように、このタイヤ2では、トレッド4を構成する全ての陸部8がそれぞれ、多数のブロック14を備える。センター陸部8cのみに多数のブロック14が構成されてもよく、ミドル陸部8mのみに多数のブロック14が構成されてもよく、ショルダー陸部8sのみに多数のブロック14が構成されてもよい。センター陸部8c及びミドル陸部8mにのみ多数のブロック14が構成されてもよく、センター陸部8c及びショルダー陸部8sにのみ多数のブロック14が構成されてもよく、ミドル陸部8m及びショルダー陸部8sにのみ多数のブロック14が構成されてもよい。ブロック14が構成される陸部8は、タイヤ2の仕様等が考慮され適宜決められる。
【0038】
このタイヤ2は、トレッド4の柔軟性確保の観点から、陸部8にサイプ16を設けることができる。
図1に示されるように、このタイヤ2では、センター陸部8c及びミドル陸部8mに構成されたブロック14にサイプ16が設けられる。
【0039】
このタイヤ2では、一のブロック14とこの一のブロック14の隣に位置する他のブロック14との間は溝10である。この溝10は、略軸方向に延びる。この溝10は、横溝18と称される。
図1に示されるように、このトレッド4には、多数の横溝18が刻まれる。それぞれの横溝18は周方向溝12と連結する。この横溝18は、トレッド4と路面との間に存在する水膜の案内に貢献する。このタイヤ2では、ウェット性能の向上が図られる。さらにこの横溝18は、軸方向のエッジ成分として機能し、濡れた路面でのトラクション性能の向上に貢献する。
【0040】
図1に示されるように、このタイヤ2は横溝18にサイプ20を設けることができる。このサイプ20は、トレッド4の柔軟性確保に貢献する。
【0041】
横溝18と周方向溝12との連結位置においては、周方向溝12の壁に横溝18の口が設けられる。この
図1において、符号M1は横溝18の一方の壁と周方向溝12の壁との境界である。符号M2は、横溝18の他方の壁と周方向溝12の壁との境界である。この境界M1と境界M2との間の部分が、周方向溝12の壁に設けられた横溝18の口に相当する。
【0042】
トレッド4に刻まれた横溝18のうち、一の周方向溝12とこの一の周方向溝12の隣に位置する他の周方向溝12とを架け渡す横溝18は第一横溝22である。トレッド4に刻まれた横溝18は第一横溝22を含む。このタイヤ2では、センター陸部8c及びミドル陸部8mに刻まれる横溝18が第一横溝22である。特に、センター陸部8cに刻まれる第一横溝22が第一センター横溝22cと称され、ミドル陸部8mに刻まれる第一横溝22が第一ミドル横溝22mと称される。第一センター横溝22cは、一方のセンター周方向溝12caと他方のセンター周方向溝12cbとを架け渡す。第一ミドル横溝22mは、センター周方向溝12cとショルダー周方向溝12sとを架け渡す。
【0043】
トレッド4に刻まれた横溝18のうち、トレッド面6の端PEの部分、すなわち、トレッド4の端部と周方向溝12とを架け渡す横溝18は第二横溝24である。トレッド4に刻まれた横溝18は第二横溝24を含む。このタイヤ2では、ショルダー陸部8sに刻まれる横溝18が第二横溝24である。この第二横溝24は、トレッド4の端部とショルダー周方向溝12sとを架け渡す。
【0044】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、横溝18の幅は周方向溝12の幅の70~130%程度が好ましい。横溝18の深さは、10~25mmが好ましい。
【0045】
図1に示されるように、このタイヤ2では、周方向溝12は多数の突起26を備える。これら突起26は、周方向溝12に沿って間隔をあけて配置される。
図2(a)及び(b)に示されるように、突起26は周方向溝12の底面から外向きに突出する。突起26は、溝10の幅方向中心に位置する。
【0046】
このタイヤ2では、トレッド4に刻まれた全ての周方向溝12に突起26が設けられる。センター周方向溝12cのみに突起26が設けられてもよく、ショルダー周方向溝12sのみに突起26が設けられてもよい。なお、このタイヤ2の横溝18には突起26は設けられない。
【0047】
このタイヤ2では、周方向溝12に設けられる突起26は、第一突起28と、第二突起30とを含む。大きなボリュームを有する突起26が第一突起28であり、小さなボリュームを有する突起26が第二突起30である。第二突起30は、第一突起28のボリュームよりも小さなボリュームを有する。
【0048】
図1に示されるように、第一突起28は、横溝18と周方向溝12との連結位置に位置する。この
図1において、符号B1は第一突起28の一方の端であり、符号B2は第一突起28の他方の端である。周方向において、第一突起28の端B1とその端B2との間に、横溝18の口が位置する。言い換えれば、軸方向において、横溝18の口が全体として第一突起28と重複する。
【0049】
このタイヤ2では、周方向溝12に設けられた突起26が、この周方向溝12の容積を低減させるとともに、この周方向溝12内を通り抜ける空気の障害物として機能する。この突起26は、気柱共鳴音の低減に貢献する。この突起26は、周方向溝12に入り込もうとする石の障害物としても機能する。このため、このタイヤ2では、周方向溝12に石が噛み込みにくい。
【0050】
前述したように、周方向溝12内に設けられる突起26は、大きなボリュームを有する第一突起28と、小さなボリュームを有する第二突起30とを含む。ボリューム、すなわちサイズが異なる突起26が設けられるので、周方向溝12内を通り抜ける空気に乱流が生じる。乱流の発生は、気柱共鳴音の低減に貢献する。大きなボリュームを有する第一突起28と、小さなボリュームを有する第二突起30とが設けられているので、第一突起28の部分に石が噛み込んだとしても、その後の走行で石が動き、第二突起30の部分からこの石が排出される。このタイヤ2では、周方向溝12内に石が滞留しにくい。
【0051】
前述したように、横溝18は周方向溝12と連結し、横溝18と周方向溝12との連結位置に第一突起28が位置する。そして、軸方向において、横溝18の口が全体として第一突起28と重複する。この第一突起28が横溝18から周方向溝12への空気の流れ込みを遮るので、空気の流れ込みによる気柱共鳴音の増幅が抑えられる。連結位置に配置された第一突起28は、気柱共鳴音の低減に貢献する。このタイヤ2では、横溝18と周方向溝12との連結位置に大きなボリュームを有する第一突起28が位置するので、この連結位置での、石の噛み込みが抑えられる。
【0052】
このタイヤ2では、周方向溝12に設けた突起26により、気柱共鳴音が低減される。このタイヤ2では、静粛性の向上が図られる。この突起26により、周方向溝12への石の噛み込みが抑えられるので、このタイヤ2では、耐石噛み性能の向上が図られる。
【0053】
このタイヤ2では、周方向溝12に多数の突起26が設けられるが、突起26の全てが大きなボリュームを有する第一突起28で構成されるのではなく、この突起26には第一突起28のボリュームよりも小さなボリュームを有する第二突起30が含まれる。この第二突起30は、周方向溝12の容積確保に貢献する。周方向溝12の容積が適切に維持されるので、このタイヤ2では、ウェット性能の低下が抑えられる。このタイヤ2では、ウェット性能の低下を抑えながら、静粛性の向上が図られる。またこのタイヤ2では、ウェット性能の低下を抑えながら、耐石噛み性能の向上が図られる。
【0054】
図1に示されるように、このタイヤ2の周方向溝12はジグザグに延びるジグザグ周方向溝である。このタイヤ2では、センター周方向溝12cは周方向にジグザグ状に連続して延びる。ショルダー周方向溝12sは、周方向にジグザグ状に連続して延びる。
【0055】
周方向溝12は、軸方向において、一方側に凸なジグザグ頂点32aと、他方側に凸なジグザグ頂点32bとを有する。この周方向溝12では、ジグザグ頂点32aとジグザグ頂点32bとは周方向に交互に配置される。この周方向溝12は、ジグザグに屈曲しながら、周方向に連続して延在する。
【0056】
周方向溝12は、周方向に連続して延在するので、濡れた路面において、トレッド4と路面との間に存在する水膜を周方向に円滑に案内できる。この周方向溝12は、ジグザグに屈曲しているので、軸方向のエッジ成分として機能し、濡れた路面でのトラクション性能の向上に貢献できる。この観点から、このタイヤ2では、周方向溝12はジグザグに延びるジグザグ周方向溝であるのが好ましい。
【0057】
図1に示されるように、第一センター横溝22cは一方のセンター周方向溝12caのジグザグ頂点32bと他方のセンター周方向溝12cbのジグザグ頂点32aとを架け渡す。一方の第一ミドル横溝22maは、一方のセンター周方向溝12caのジグザグ頂点32aと一方のショルダー周方向溝12saのジグザグ頂点32bとを架け渡す。他方の第一ミドル横溝22mbは、他方のセンター周方向溝12cbのジグザグ頂点32bと他方のショルダー周方向溝12sbのジグザグ頂点32aとを架け渡す。
【0058】
一方の第二横溝24aは一方のトレッド4の端部と一方のショルダー周方向溝12saのジグザグ頂点32aとを架け渡す。他方の第二横溝24bは他方のトレッド4の端部と他方のショルダー周方向溝12sbのジグザグ頂点32bとを架け渡す。
【0059】
このタイヤ2では、横溝18は、周方向溝12のジグザグ頂点32においてこの周方向溝12と連結する。周方向溝12のジグザグ頂点32は、周方向溝12、すなわちジグザグ周方向溝の折れ曲がりにおける外側の縁に構成される。横溝18は、ジグザグ周方向溝の折れ曲がりの外側においてこのジグザグ周方向溝と連結する。
【0060】
このタイヤ2では、第一横溝22は、左右の周方向溝12間の距離が短い部分に配置される。この第一横溝22は、その長さが短くなるように構成される。第二横溝24は、ショルダー陸部8sの幅が狭い部分に配置される。この第二横溝24は、その長さが短くなるように構成される。このタイヤ2では、横溝18はその長さが短くなるように構成される。短い横溝18は、接地面積の確保に貢献する。このタイヤ2では、良好なグリップ性能が維持される。この観点から、このタイヤ2では、周方向溝12がジグザグ周方向溝である場合、ジグザグ周方向溝の折れ曲がりの外側において、横溝18はジグザグ周方向溝と連結するのが好ましい。
【0061】
前述したように、このタイヤ2では、横溝18と周方向溝12との連結位置に第一突起28が位置する。
図1に示されるように、この第一突起28は、周方向溝12、すなわちジグザグ周方向溝の折れ曲がりの向きと同じ向きに折れ曲がる。このタイヤ2では、第一突起28が横溝18から周方向溝12への空気の流れ込みを遮るとともに、流れ込んだ空気の流れを円滑に2つの流れに分ける。この第一突起28は、流れ込んだ空気による衝撃を緩和するとともに、周方向溝12内を通り抜ける空気に乱流を効果的に発生させる。このタイヤ2では、気柱共鳴音の増幅が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、第一突起28がジグザグ周方向溝の折れ曲がりの向きと同じ向きに折れ曲がるので、第一突起28と周方向溝12の壁との間に形成される空間の大きさに偏りが生じることが抑えられる。このタイヤ2では、横溝18と周方向溝12との連結位置において石が噛み込むことが効果的に抑えられる。この観点から、周方向溝12がジグザグ周方向溝である場合、第一突起28は、ジグザグ周方向溝の折れ曲がりの向きと同じ向きに折れ曲がるのが好ましい。
【0062】
図2(a)は、周方向溝12のうち第二突起30が設けられている部分の断面を示す。
図2(b)は、周方向溝12のうち第一突起28が設けられている部分の断面を示す。
図2(c)は、横溝18の断面を示す。
図2に示された断面は、溝10の延在方向に対して垂直な面に沿った断面である。
【0063】
図2(a)及び(b)において、両矢印D1は周方向溝12の深さである。この深さD1はトレッド面6から周方向溝12の底までの長さにより表される。
図2(a)において、両矢印Hsは第二突起30の高さである。この高さHsは、周方向溝12の底から第二突起30の頂面までの長さにより表される。
図2(b)において、両矢印Hbは第一突起28の高さである。この高さHbは、周方向溝12の底から第一突起28の頂面までの長さにより表される。両矢印D2は、トレッド面6から第一突起28までの深さである。この深さD2は、トレッド面6から第一突起28の頂面までの長さにより表される。
図2(c)において、両矢印D3は横溝18の深さである。この深さD3は、トレッド面6から横溝18の底までの長さにより表される。このタイヤでは、深さD2と高さHbとの和は深さD1に等しい。
【0064】
前述したように、このタイヤ2では、第一突起28は大きなボリュームを有し、第二突起30は小さなボリュームを有する。特に、このタイヤ2では、第一突起28は第二突起30よりも高い。周方向溝12に設けられる突起26が、高い高さHbを有する第一突起28と、低い高さHsを有する第二突起30とを含むので、周方向溝12内を通り抜ける空気に乱流が効果的に生じる。乱流の発生は、気柱共鳴音の低減に貢献する。高い高さHbを有する第一突起28と、低い高さHsを有する第二突起30とが設けられるので、第一突起28の部分に石が噛み込んだとしても、その後の走行で石が動き、第二突起30の部分からこの石が排出される。このタイヤ2では、周方向溝12内に石が滞留しにくい。この観点から、第一突起28は第二突起30よりも高いのが好ましい。
【0065】
このタイヤ2では、第二突起30の高さHsに対する第一突起28の高さHbの比は2以上が好ましい。これにより、第一突起28と第二突起30との高低差が、周方向溝12内を通り抜ける空気に乱流を生じさせることに効果的に貢献する。このタイヤ2では、気柱共鳴音の低減が図られる。第一突起28と第二突起30との高低差は、周方向溝12内での石の滞留を効果的に抑える。このタイヤ2では、耐石噛み性能の向上が図られる。この観点から、この比は3以上がより好ましい。
【0066】
図2(b)に示されるように、このタイヤ2では、第一突起28の頂面はトレッド面6よりも内側に位置する。これにより、第一突起28による周方向溝12の容積確保への影響が抑えられる。このタイヤ2では、ウェット性能の低下が抑えられる。この観点から、周方向溝12の深さD1に対する第一突起28の高さHbの比は0.40以下が好ましく、0.35以下がより好ましい。第一突起28が気柱共鳴音の低減と石噛みの抑制とに効果的に貢献できる観点から、この比は0.25以上が好ましく、0.30以上がより好ましい。
【0067】
このタイヤ2では、第一突起28の深さD2は横溝18の深さD3よりも浅いのが好ましい。これにより、第一突起28が横溝18から周方向溝12への空気の流れ込みを効果的に遮るので、空気の流れ込みによる気柱共鳴音の増幅が効果的に抑えられる。そして、この第一突起28が石の噛み込みを効果的に抑制する。この観点から、横溝18の深さD3と第一突起28の深さD2との差は1.5mm以上がより好ましい。特に、横溝18の深さD3と第一突起28の深さD2との差が1.5mm以上あって、周方向溝12の深さD1に対する第一突起28の深さD2の比が0.60以上0.80以下の範囲にある場合に、好ましくはこの比が0.61以上0.76以下の範囲にある場合に、この第一突起28が空気の流れ込みによる気柱共鳴音の増幅抑制に効果的に貢献するとともに石の噛み込みを効果的に抑制する。
【0068】
図1において、両矢印Lbは第一突起28の長さである。この長さLbは、第一突起28の一方の端B1から他方の端B2までの周方向距離により表される。両矢印Lsは、第二突起30の長さである。この長さLsは、第二突起30の一方の端S1から他方の端S2までの周方向距離により表される。
【0069】
前述したように、このタイヤ2では、第一突起28は大きなボリュームを有し、第二突起30は小さなボリュームを有する。特に、このタイヤ2では、第一突起28は第二突起30よりも長い。周方向溝12に設けられる突起26が、長い長さLbを有する第一突起28と、短い長さLsを有する第二突起30とを含むので、周方向溝12内を通り抜ける空気に乱流が効果的に生じる。乱流の発生は、気柱共鳴音の低減に貢献する。長い第一突起28と短い第二突起30とが設けられることにより、周方向溝12内での石の滞留が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、周方向溝12への石の噛み込みが抑制される。この観点から、第一突起28は第二突起30よりも長いのが好ましい。
【0070】
このタイヤ2では、第二突起30の長さLsに対する第一突起28の長さLbの比は3以上が好ましい。これにより、第一突起28と第二突起30との長さの差が、周方向溝12内を通り抜ける空気に乱流を生じさせることに効果的に貢献する。このタイヤ2では、気柱共鳴音の低減が図られる。長さが異なる突起26を設けることは、周方向溝12への石の噛み込みを抑制する。この観点から、この比は4以上が好ましい。周方向溝12の容積を確保でき、ウェット性能の低下が抑えられる観点から、この比は6以下が好ましい。
【0071】
図1において、両矢印SPは突起26の間隔である。この
図1においては、この間隔SPは、第一突起28の他方の端B2から第二突起30の一方の端S1までの周方向距離により表されている。両矢印W1は、突起26の幅である。両矢印W2は、周方向溝12の幅である。両矢印W3は、横溝18の幅である。
【0072】
このタイヤ2では、周方向溝12を通り抜ける空気に乱流を効果的に発生させることができるとともに、周方向溝12への石の噛み込みが抑制される観点から、第二突起30の長さLsに対する突起26の間隔SPの比は2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。周方向溝12の容積を確保でき、ウェット性能の低下が抑えられる観点から、この比は0.5以上が好ましい。
【0073】
このタイヤ2では、周方向溝12を通り抜ける空気に乱流を効果的に発生させることができるとともに、周方向溝12への石の噛み込みが抑制される観点から、周方向溝12の幅W2に対する突起26の幅W1の比は0.2以上が好ましく、0.25以上がより好ましい。周方向溝12の容積を確保でき、ウェット性能の低下が抑えられる観点から、この比は0.4以下が好ましく、0.33以下がより好ましい。
【0074】
前述したように、このタイヤ2では、横溝18から周方向溝12への空気の流れ込みは第一突起28によって遮られる。また、横溝18と周方向溝12との連結位置において石が噛み込むことも、この第一突起28によって抑えられる。空気の流れ込みに対する遮蔽効果が効果的に発揮され、連結位置における石の噛み込みが効果的に抑えられる観点から、第一突起28の長さLbは横溝18の幅W3よりも大きいのが好ましい。具体的には、第一突起28の長さLbと横溝18の幅W3との差は2mm以上が好ましく、8mm以下が好ましい。
【0075】
図1に示されるように、周方向溝12において、第一突起28と第二突起30とは交互に配置される。第一突起28と第二突起30とが交互に配置された周方向溝12では、周方向溝12を通り抜ける空気に乱流が効果的に発生する。このタイヤ2では、周方向溝12への石の噛み込みが効果的に抑制される。この観点から、このタイヤ2では、周方向溝12において、第一突起28と、第二突起30とは交互に配置されるのが好ましい。
【0076】
図3には、周方向溝12に設けられた突起26の頂面が示される。突起26は、4つの角34を備える。それぞれの角34は、周方向溝12の底面から外向きに延びる。このタイヤ2では、
図3に示されるように、突起26の角34を丸めることができる。この場合、角34が丸いので、第一突起28と第二突起30との間に石が挟まりにくい。このタイヤ2では、周方向溝12への石の噛み込みが効果的に抑えられる。この観点から、突起の角34は丸められるのが好ましい。
【0077】
図3において、矢印Rは丸めとされた角34の輪郭を表す円弧の半径である。このタイヤ2では、周方向溝12への石の噛み込みが効果的に抑えられる観点から、この円弧の半径Rは1mm以上が好ましく、5mm以下が好ましい。なお、この角34の輪郭は、突起26の頂面の形状に基づいて特定される。この角34の輪郭は、このタイヤ2の外面を形づくるモールドのキャビティ面(図示されず)によっても特定することができる。
【0078】
図4には、突起26の断面が示される。この断面は、周方向溝12の延在方向に対して垂直な面に沿った断面である。
図4(a)には第二突起30の断面が示され、
図4(b)には第一突起28の断面が示される。この
図4において、実線BLは、突起26の縁36を通り、この突起26の高さ方向に延びる直線である。この高さ方向は、この突起26の高さを規定する線分の向きによって特定される。
【0079】
このタイヤ2では、突起26は周方向溝12の壁38と対向する側面40を有する。
図4に示されるように、このタイヤ2では、突起26の側面40が突起26の高さ方向に対して傾斜するように、この突起26が構成されてもよい。この場合、側面40が傾斜しているので、この側面40と周方向溝12の壁38との間に石が挟まれても、この石の排出が促される。この観点から、このタイヤ2では、突起26の側面40は突起26の高さ方向に対して傾斜しているのが好ましい。
【0080】
図4において、符号θは、突起26の側面40が突起26の高さ方向に対してなす角度、すなわち、側面40の傾斜角度を表す。このタイヤ2では、周方向溝12への石の噛み込みが効果的に抑えられる観点から、この側面40の傾斜角度θは3°以上が好ましく、15°以下が好ましい。
【0081】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ウェット性能の低下を抑えながら、静粛性の向上を図った、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。また、別の観点においては、本発明によれば、ウェット性能の低下を抑えながら、耐石噛み性能の向上を図った、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。
【0082】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
[実験1]
[実施例1]
図1に示された構成のトレッドを備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=275/80R22.5)を得た。
【0085】
この実施例1では、周方向溝に設けられた突起は、大きな第一突起と、小さな第二突起とを含み、横溝と周方向溝との連結位置に第一突起が配置された。このことが、下記の表1の「第一突起の位置」の欄に「Y」で表されている。
【0086】
この実施例1では、
図1に示される通り、軸方向において、横溝の口は全体として第一突起と重複した。第一突起の長さLbと浅溝の幅W3との差(Lb-W3)は、6.0mmに設定された。浅溝の幅W3は、10.0mmであった。
【0087】
この実施例1では、周方向溝において、第一突起と第二突起とは交互に配置された。このことが、下記の表1の「突起の配列」の欄に「Y」で表されている。
【0088】
この実施例1では、第二の突起の高さHsに対する第一突起の高さHbの比(Hb/Hs)は、3.00であった。周方向溝の深さD1に対する第一突起の高さHbの比(Hb/D1)は、0.36であった。周方向溝の深さD1は16.5mmであり、第二突起の高さHsは2.0mmであった。
【0089】
この実施例1では、第二の突起の長さLsに対する第一突起の長さLbの比(Lb/Ls)は、4.00であった。第二の突起の長さLsに対する突起の間隔SPの比(SP/Ls)は、1.00であった。
【0090】
この実施例1では、周方向溝の幅W2に対する突起の幅W1の比(W1/W2)は、0.25であった。周方向溝の幅W2は、8.0mmであった。横溝の深さD3と、トレッドの外面、すなわちトレッド面から第一突起までの深さD2との差(D3-D2)は2.5mmであった。横溝の深さD3は、13.0mmであった。
【0091】
[比較例1]
周方向溝に突起を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。この比較例1は、従来のタイヤである。
【0092】
[比較例2及び3]
周方向溝の深さD1及び横溝の深さD3を変えた他は比較例1と同様にして、比較例2及び3のタイヤを得た。比較例2では、周方向溝の深さD1及び横溝の深さD3がそれぞれ10.0mmに設定された。比較例3では、周方向溝の深さD1及び横溝の深さD3がそれぞれ20.0mmに設定された。
【0093】
[実施例2及び3]
第一突起の高さHb及び深さD2を変えて比(Hb/Hs)、比(Hb/D1)及び差(D3-D2)を下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2及び3のタイヤを得た。
【0094】
[比較例4]
第一突起の長さLb及び突起の間隔SPを変えて比(Lb/Ls)、比(SP/Ls)及び比差(Lb-W3)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例4のタイヤを得た。この比較例4では、第一突起の長さLbが横溝の幅W3よりも小さいため、軸方向において、第一突起で横溝の口全体を覆うことはできなかった。
【0095】
[比較例5]
横溝と周方向溝との連結位置に第二突起を配置した他は実施例1と同様にして、比較例5のタイヤを得た。連結位置に第二突起を配置したことが、下記の表2の「第一突起の位置」の欄に「N」で表されている。この比較例5では、第二突起の長さLsが横溝の幅W3よりも小さいため、軸方向において、第二突起で横溝の口全体を覆うことはできなかった。
【0096】
[実施例4]
第一突起の高さHb、長さLb、幅W1及び深さD2、並びに突起の間隔SPを変えて、比(Hb/Hs)、比(Lb/Ls)、比(Hb/D1)、比(SP/Ls)、比(W1/W2)、差(Lb-W3)及び差(D3-D2)を下記の表2に示された通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
【0097】
[実施例5]
第一突起の高さHb、長さLb、幅W1及び深さD2、横溝の深さD3並びに突起の間隔SPを変えて、比(Hb/Hs)、比(Lb/Ls)、比(Hb/D1)、比(SP/Ls)、比(W1/W2)、差(Lb-W3)及び差(D3-D2)を下記の表2に示された通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5のタイヤを得た。横溝の深さD3は、14.5mmであった。
【0098】
[実施例6]
周方向溝において、2つの第一突起の間に2つの第二突起を配置させるとともに、第一突起の長さLbと間隔SPを変えて、比(Lb/Ls)、比(SP/Ls)及び差(Lb-W3)を下記の表2に示される通りとした他実施例1と同様にして、実施例6のタイヤを得た。2つの第一突起の間に2つの第二突起を配置させたことが、この表2の「突起の配列」の欄に「N」で表されている。
【0099】
[車外騒音レベル]
試作タイヤをリム(サイズ=22.5×7.50)に組み込み、タイヤの内部に空気を充填した。タイヤの内圧が900kPaに調整された。このタイヤをトラックの前輪に装着した。タイヤに33.8kNの荷重が付与されるように、トラックの荷台に荷物が積載された。このトラックを、直線状のアスファルト路面において通過速度50km/hで50m、エンジンを切った状態で惰行走行させるとともに、コースの中間点において走行中心線から側方に7.5m、かつ路面から1.2mの位置に設置した定置マイクロフォンにより通過騒音の最大レベルdB(A)を測定し、比較例1の測定結果との差を求めた。この結果が、下記の表1及び2の車外騒音レベルの欄に示されている。数値が小さいほど、車外騒音レベルは低く、静粛性に優れる。なお、比較例1を基準としたことが、表1において「BM」で表されている。
【0100】
[ウェット性能]
試作タイヤをリム(サイズ=22.5×7.50)に組み込み、タイヤの内部に空気を充填した。タイヤの内圧が900kPaに調整された。このタイヤを、前述の車外騒音レベルの評価で使用したトラックの前輪に装着した。トラックを無積載状態とし、速度を段階的に増加させながら、水深5mmかつ長さ20mの水たまりが設けられた半径100mのアスファルト路面に進入させ、前輪の横加速度(横G)を計測し、速度50km/hから80km/hの平均横Gを得た。この結果が、指数で、下記の表1及び2のWET性能の欄に示されている。数値が大きいほどウェット性能に優れる。90以上であることが合格基準である。
【0101】
【0102】
【0103】
表1及び2に示されるように、実施例では、ウェット性能の低下が抑えながら、静粛性の向上が図られていることが確認される。実施例では、比較例に比して評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【0104】
[実験2]
[実施例7]
図1に示された構成のトレッドを備え、下記の表3に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=295/80R22.5)を得た。
【0105】
この実施例7では、周方向溝に設けられた突起は、大きな第一突起と、小さな第二突起とを含み、横溝と周方向溝との連結位置に第一突起が配置された。このことが、下記の表3の「第一突起の位置」の欄に「Y」で表されている。
【0106】
この実施例7では、
図1に示される通り、軸方向において、横溝の口は全体として第一突起と重複した。第一突起の長さLbと浅溝の幅W3との差(Lb-W3)は、8.0mmに設定された。浅溝の幅W3は、10.0mmであった。
【0107】
この実施例7では、周方向溝において、第一突起と第二突起とは交互に配置された。このことが、下記の表3の「突起の配列」の欄に「Y」で表されている。
【0108】
この実施例7では、第二の突起の高さHsに対する第一突起の高さHbの比(Hb/Hs)は、3.00であった。周方向溝の深さD1に対する第一突起の高さHbの比(Hb/D1)は、0.35であった。周方向溝の深さD1は17.2mmであり、第二突起の高さHsは2.0mmであった。
【0109】
この実施例7では、第二の突起の長さLsに対する第一突起の長さLbの比(Lb/Ls)は、3.00であった。第二の突起の長さLsに対する突起の間隔SPの比(SP/Ls)は、0.67であった。
【0110】
この実施例7では、周方向溝の幅W2に対する突起の幅W1の比(W1/W2)は、0.29であった。周方向溝の幅W2は、7.0mmであった。横溝の深さD3と、トレッドの外面、すなわちトレッド面から第一突起までの深さD2との差(D3-D2)は2.3mmであった。横溝の深さD3は、13.5mmであった。
【0111】
この実施例7では、
図3に示されるように、突起の角が丸められた。丸めとされた角の輪郭を表す円弧の半径Rは1.0mmであった。
【0112】
この実施例7では、
図4に示されるように、突起の側面が突起の高さ方向に対して傾斜するように、この突起が構成された。この側面の傾斜角度θは3.0°であった。
【0113】
[実施例8]
第一突起の高さHb及び深さD2を変えて比(Hb/Hs)、比(Hb/D1)及び差(D3-D2)を下記の表3に示される通りとした他は実施例7と同様にして、実施例8のタイヤを得た。
【0114】
[比較例6]
周方向溝に突起を設けなかった他は実施例7と同様にして、比較例6のタイヤを得た。この比較例6は、従来のタイヤである。
【0115】
[実施例9]
突起の角を丸めとせず、側面の傾斜角度θを下記の表3の通りとした他は実施例7と同様にして、実施例9のタイヤを得た。
【0116】
[耐石噛み性能]
試作タイヤをリム(サイズ=22.5×8.25)に組み込み、タイヤの内部に空気を充填した。タイヤの内圧が900kPaに調整された。このタイヤを、トラックの全輪に装着した。タイヤに作用する荷重が35.79kNになるように、積載量を調整した。砂利道において、このタイヤを5km走行させた後、溝に残っている石の数を計数した。この結果が、指数で、下記の表3の石噛みレベルの欄に示されている。数値が小さいほど石噛みが少なく耐石噛み性能に優れる。
【0117】
[ウェット性能]
リムサイズを22.5×8.25とした他は実験1と同様にして、ウェット性能を評価した。この結果が、指数で、下記の表3のWET性能の欄に示されている。数値が大きいほどウェット性能に優れる。90以上であることが合格基準である。
【0118】
【0119】
表3に示されるように、実施例では、ウェット性能の低下が抑えながら、耐石噛み性能の向上が図られていることが確認される。実施例では、比較例に比して評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上説明されたウェット性能の低下を抑えながら、静粛性の向上を図るための技術、そしてウェット性能の低下を抑えながら、耐石噛み性能の向上を図るための技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0121】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・トレッド面
8、8c、8m、8s・・・陸部
10・・・溝
12、12c、12ca、12cb、12s、12sa、12sb・・・周方向溝
18・・・横溝
22、22c、22m、22ma、22mb・・・第一横溝
24、24a、24b・・・第二横溝
26・・・突起
28・・・第一突起
30・・・第二突起
32、32a、32b・・・ジグザグ頂点
34・・・突起26の角
40・・・突起26の側面