(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】限界探知距離計測器及び限界探知距離計測方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/00 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
G01V3/00 A
(21)【出願番号】P 2019149762
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 慶
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-228351(JP,A)
【文献】特開平05-142358(JP,A)
【文献】特開2008-249520(JP,A)
【文献】仏像彫刻のお勉強(番外2)『トースカン用の定規スタンドの製作』,[Online]とんぼナックのBLOG通信,2011年12月31日,URL:http://tombonak.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/2--b78e.html,2023年4月27日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K23/00-23/12
B43L 1/00-12/02
15/00-27/04
G01B 3/00- 3/08
3/11- 3/56
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を探知可能なセンサ部を有する携帯型の金属探知機が金属製の試料を探知することができる限界
探知距離を計測するための限界探知距離計測器であって、
前記試料と、
前記試料が第一面に配置される非金属製の支持部と、
目盛りが前記試料の側を向くように前記支持部の第一面に長手方向一端が固定され
、前記試料に対する前記金属探知機の限界探知距離を計測する非金属製の物差しと、
を備える限界探知距離計測器。
【請求項2】
非金属製の支持部と、前記支持部の第一面に長手方向一端が固定された非金属製の物差しと、を備えた限界探知距離計測器を用いて
、金属を探知可能なセンサ部を有する携帯型の金属探知機
が金属製の試料を探知することができる限界探知距離を計測する限界探知距離計測方法であって、
前記センサ部と前記試料とのうち一方を前記支持部の第一面に配置する工程と、
他方を前記一方に対し、前記物差しの長手方向に沿って移動させることによって、前記金属探知機の限界探知距離を前記物差しで計測する工程と、
を含む限界探知距離計測方法。
【請求項3】
前記センサ部がリング状に設けられ、前記一方が試料であり、前記他方がセンサ部であり、前記物差しの長手方向に沿って移動させるに際して前記物差しを前記センサ部の内側に配置する請求項2に記載の限界探知距離計測方法。
【請求項4】
前記支持部の第一面に長手方向一端が固定された非金属製の第一ロッドと、
前記第一ロッドの長手方向に沿って移動可能に設けられ、前記支持部の第一面に対して平行に設けられた非金属製の第二ロッドと、を更に備え、
前記試料は前記第二ロッドに取り付けられる請求項1に記載の限界探知距離計測器。
【請求項5】
前記第一ロッドが前記物差しを兼ねる請求項4に記載の限界探知距離計測器。
【請求項6】
前記試料が前記第二ロッドの長手方向に沿って移動可能に設けられている請求項4又は5に記載の限界探知距離計測器。
【請求項7】
非金属製の支持部と、前記支持部の第一面に長手方向一端が固定された非金属製の物差しと、前記支持部の第一面に長手方向一端が固定された非金属製の第一ロッドと、前記第一ロッドの長手方向に沿って移動可能に設けられ、前記支持部の第一面に対して平行に設けられ、金属製の試料が取り付けられる非金属製の第二ロッドと、を備えた限界探知距離計測器を用いて
、金属を探知可能なセンサ部を有する携帯型の金属探知機
が前記試料を探知することができる限界探知距離を計測する限界探知距離計測方法であって、
前記センサ部を前記支持部の第一面に配置する工程と、
前記試料とともに前記第二ロッドを前記第一ロッドの長手方向に沿って移動させることによって、前記金属探知機の限界探知距離を前記物差しで計測する工程と、
を含む限界探知距離計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属探知機の限界探知距離を計測するための限界探知距離計測器及びそれを用いた限界探知距離計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電所、空港、店舗、駅、工場及びオフィス等の施設に爆発物及び刃物等の危険物を持ち込まれることを未然に防ぐために、携帯型の金属探知機を用いて身体或いは手荷物の検査を実施することが行われている。また、金属探知機は手荷物検査以外にも様々な用途がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-225579号公報
【文献】特開2005-102803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属探知機の性能を定量的に計測することによって、金属探知機の性能が仕様値を満たしているかの検査する必要がある。しかし、その検査方法が確立されていない上、その検査のための装置も開発されていない。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、金属探知機の性能としての限界探知距離を定量的に計測できる限界探知距離計測器及び限界探知距離計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、金属を探知可能なセンサ部を有する携帯型の金属探知機が金属製の試料を探知することができる限界探知距離を計測するための限界探知距離計測器は、前記試料と、前記試料が第一面に配置される非金属製の支持部と、前記支持部の第一面に長手方向一端が固定され、前記試料に対する前記金属探知機の限界探知距離を計測する非金属製の物差しと、を備える。
前記限界探知距離計測器を用いて前記金属探知機の限界探知距離を計測する限界探知距離計測方法は、前記センサ部と前記試料とのうち一方を前記支持部の第一面に配置する工程と、他方を前記一方に対し、前記物差しの長手方向に沿って移動させることによって、前記金属探知機の限界探知距離を前記物差しで計測する工程と、を含む。
【0007】
以上によれば、金属探知機によって金属を探知できる限界の距離を物差しで定量的に計測することができる。また、支持部及び物差しが非金属製であるため、金属探知機が台及び物差しに反応せず、金属探知機の限界探知距離を正確に計測することができる。
【0008】
好ましくは、前記限界探知距離計測器は、前記支持部の第一面に長手方向一端が固定された非金属製の第一ロッドと、前記第一ロッドの長手方向に沿って移動可能に設けられ、前記支持部の第一面に対して平行に設けられた非金属製の第二ロッドと、を更に備え、前記試料は前記第二ロッドに取り付けられる。
前記限界探知距離計測器を用いて前記金属探知機の限界探知距離を計測する限界探知距離計測方法は、前記センサ部を前記支持部の第一面に配置する工程と、前記試料とともに前記第二ロッドを前記第一ロッドの長手方向に沿って移動させることによって、前記金属探知機の限界探知距離を前記物差しで計測する工程と、を含む。
【0009】
以上によれば、金属探知機の限界探知距離を物差しで定量的に計測することができる。また、第一ロッド及び第二ロッドが非金属製であるため、金属探知機が第一ロッド及び第二ロッドにも反応せず、金属探知機の限界探知距離を正確に計測することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、金属探知機の限界探知距離を定量的に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の限界探知距離計測器の斜視図である。
【
図2】第2実施形態の限界探知距離計測器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されている。本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
<<<第1の実施の形態>>>
図1は、限界探知距離計測器10の斜視図である。この限界探知距離計測器10は、携帯型の金属探知機50が金属を探知できる限界の距離(以下、限界探知距離という。)を計測するために用いられる。以下の説明において、非金属とは、金属探知機50によって探知できない材料のことをいい、例えば樹脂又はセラミックのことをいう。樹脂としては、例えば透明なアクリル樹脂が挙げられるが、他の種類の樹脂であってもよい。
【0014】
限界探知距離計測器10は、支持台11、ノブ12、置き皿13及び物差し14を備える。
支持台11,ノブ12、置き皿13及び物差し14は非金属製である。
支持台11は、中空を有した直方体箱状に設けられている。支持台11の対向側面11bには、ノブ12がそれぞれ設けられており、ノブ12を掴んで限界探知距離計測器10を持ち運びすることができる。
支持台11の上面11aの中央には、非金属製の置き皿13が設けられている。置き皿13は支持台11に固定されていてもよいし、支持台11に対して着脱可能であってもよい。置き皿13には、金属製の試料15が置かれる。
支持台11の上面11aは第一面である。支持台11の上面11aには、物差し14の下端が固定されている。物差し14が支持台11の上面11aに対して垂直に立てられた状態に設けられている。そのため、物差し14の長手方向が上下方向となっている。物差し14には、支持台11の上面11a又は置き皿13の上面からの距離を表す目盛り14aが付されている。ここで、物差し14の長手方向とは、目盛り14aの配列方向をいう。
【0015】
続いて、限界探知距離計測器10を用いて金属探知機50の限界探知距離を計測する方法について説明する。この金属探知機50は、棒状のハンドル51と、ハンドル51の先端に設けられたセンサ部52とを有するものである。センサ部52にはコイル等が内蔵されて、センサ部52が金属を探知可能である。本実施形態では、センサ部52がリング状に設けられている。但し、センサ部52はリング状以外の形状に設けられていてもよい。
支持台11を床、テーブル等の載置面に載置して、金属製の試料15を置き皿13上に載置する。試料15及び置き皿13はこれらの下から支持台11によって支持される。なお、置き皿13を設けずに、試料15を支持台11の上面11aに直接載置してもよい。
次に、金属探知機50の電源をオンにして、金属探知機50のセンサ部52を試料15の上方、特に真上に位置させる。この際、リング状のセンサ部52の内側に物差し14を通してもよい。
そして、センサ部52を物差し14の長手方向に沿って上下に移動させて、金属探知機50の限界探知距離を物差し14によって計測する。例えば、物差し14の目盛り14aを目視しながらセンサ部52を試料15に下方へ徐々に近づけて(この際、金属探知機50によって試料15が探知されていない。)、金属探知機50によって試料15を探知できるようになった距離を物差し14によって計測する。或いは、物差し14の目盛り14aを目視しながらセンサ部52を試料15から上方へ徐々に離して(この際、金属探知機50によって試料15が探知されている。)、金属探知機50によって金属を探知できなくなった距離を物差し14によって計測する。
【0016】
以上の限界探知距離計測器10を用いれば、金属探知機50の探知性能を定量的に確認することができる。
また、限界探知距離計測器10の支持台11、ノブ12、置き皿13及び物差し14が非金属製であるため、金属探知機50が支持台11、ノブ12、置き皿13及び物差し14に反応しない。
また、試料15が支持台11によって載置面から離れているため、金属探知機50が試料15には反応するが、載置面やその下にある金属には反応しない。
また、限界探知距離計測器10の構造がシンプルであり、限界探知距離計測器10を低コストで提供することができる。
また、試料15を置き皿13に載置することによって、物差し14に対する試料15の相対的な位置が決まる。そして、リング状のセンサ部52の内側に物差し14を通すと、センサ部52を試料15の真上に位置させることができるとともに、センサ部52を物差し14の長手方向に沿って移動させやすい。そのため、金属探知機50の限界探知距離を正確に測定することができる。
【0017】
なお、金属探知機50のセンサ部52を支持台11の上面11aに載置して、試料15をセンサ部52の上方において上下に移動させて、限界探知距離を物差し14によって計測してもよい。
【0018】
<<<第2の実施の形態>>>
図2は限界探知距離計測器20の斜視図である。
限界探知距離計測器20は支持台21、ノブ22、一対の昇降ガイドロッド24、一対の昇降体26、水平ガイドロッド27及び試料25を備える。
支持台21、ノブ22、昇降ガイドロッド24、昇降体26及び水平ガイドロッド27は非金属製であり、試料25が金属製である。
支持台21は第1実施形態における支持台11と同様のものであり、ノブ22は第1実施形態におけるノブ12と同様のものであって、支持台21の側面21bに設けられている。
【0019】
支持台21の上面21aは第一面である。支持台21の上面21aには、非金属製の昇降ガイドロッド24の下端が固定されている。昇降ガイドロッド24が支持台21の上面21aに対して垂直に立てた状態に設けられており、これら昇降ガイドロッド24が互いに平行に設けられている。そのため、昇降ガイドロッド24の長手方向が上下方向となっている。一方又は両方の昇降ガイドロッド24には、支持台21の上面21aからの距離を表す目盛り24aが付されており、昇降ガイドロッド24が物差しとしても機能する。
昇降ガイドロッド24には、移動体としての昇降体26が摺動可能に取り付けられており、昇降体26が昇降ガイドロッド24によって上下方向に案内される。昇降体26が昇降体26、水平ガイドロッド27及び試料25の重量によって落下しないように、昇降ガイドロッド24と昇降体26との間の隙間にゴム等の抵抗部が設けられていてもよい。
水平ガイドロッド27の両端が昇降体26にそれぞれ連結されて、水平ガイドロッド27が昇降体26間に架設されている。そのため、水平ガイドロッド27の長手方向が水平方向となっている。水平ガイドロッド27は支持台21の上面21aに対して平行である。水平ガイドロッド27には試料25が摺動可能に取り付けられており、試料25が水平ガイドロッド27によって水平方向に案内される。
【0020】
続いて、限界探知距離計測器20を用いて金属探知機50の限界探知距離を計測する方法について説明する。
支持台21を床、テーブル等の載置面に載置して、金属探知機50のセンサ部52を支持台21の上面に載置する。この際、センサ部52の載置位置を2本の昇降ガイドロッド24の間とする。
次に、試料25を水平ガイドロッド27に沿って水平方向に移動させて、試料25を金属探知機50のセンサ部52の上方、特に真上に位置させる。
次に、金属探知機50の電源をオンにする。
そして、昇降体26、水平ガイドロッド27及び試料25を昇降ガイドロッド24の長手方向に沿って上下に移動させて、限界探知距離を昇降ガイドロッド24によって計測する。例えば、昇降ガイドロッド24の目盛り24aを目視しながら試料25をセンサ部52に下方へ徐々に近づけて(この際、金属探知機50によって試料15が探知されていない。)、金属探知機50によって試料25を探知できるようになった距離を昇降ガイドロッド24によって計測する。或いは、昇降ガイドロッド24の目盛り24aを目視しながら試料25をセンサ部52から上方へ徐々に離して(この際、金属探知機50によって試料15が探知されている。)、金属探知機50によって試料25を探知できなくなった距離を昇降ガイドロッド24によって計測する。
【0021】
以上の限界探知距離計測器20を用いれば、金属探知機50の探知性能を定量的に確認することができる。
また、限界探知距離計測器20の支持台21、ノブ22、昇降ガイドロッド24、昇降体26及び水平ガイドロッド27は非金属製であるため、金属探知機50が支持台21、ノブ22、昇降ガイドロッド24、昇降体26及び水平ガイドロッド27に反応しない。
また、試料25が支持台21によって載置面から離れているため、金属探知機50が載置面やその下にある金属には反応しない。
また、限界探知距離計測器20の構造がシンプルであり、限界探知距離計測器20を低コストで提供することができる。
また、昇降ガイドロッド24が物差しを兼ねているため、限界探知距離計測器20の部品点数の削減を図ることができる。
また、水平ガイドロッド27が両持ち梁状である。つまり水平ガイドロッド27の両端が昇降ガイドロッド24によって案内される。よって、水平ガイドロッド27が安定し、金属探知機50の限界探知距離を正確に測定することができる。
また、試料25が水平ガイドロッド27によって案内されるので、センサ部52の形状、大きさ、位置等に応じて試料25をセンサ部52の真上に配置することができる。そのため、金属探知機50の限界探知距離を正確に測定することができる。
【0022】
なお、限界探知距離計測器20を以下のように変更してもよい。以下に挙げる変更例を組み合わせて適用してもよい。
【0023】
上記実施形態では、2本の昇降ガイドロッド24が設けられ、水平ガイドロッド27の両端がそれぞれ昇降ガイドロッド24の長手方向に移動可能に設けられている。それに対して、1本の昇降ガイドロッド24が設けられ、水平ガイドロッド27の一端が昇降ガイドロッド24の長手方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0024】
上記実施形態では、昇降ガイドロッド24が物差しを兼ねている。それに対して、昇降ガイドロッド24とは別に物差しが支持台21の上面21aに対して垂直に立てられた状態に設けられてもよい。この場合、物差しが昇降ガイドロッド24の近くに配置されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0025】
10,20…限界探知距離計測器
11,21…支持台(支持部)
11a、21a…上面(第一面)
14…物差し
15…試料
24…昇降ガイドロッド(物差し、第一ロッド)
25…試料
27…水平ガイドロッド(第二ロッド)