(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/12 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A42B3/12
(21)【出願番号】P 2019171612
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-02-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成30年9月28日、平成30年DICヘルメット研修会で開示 ・平成30年10月17日、緑十字展パシフィコ横浜に展示 ・平成30年10月17日、ウェブサイト、http://www.dic-plas.co.jp/products/helmet/index.htmlに掲載 ・平成31年4月26日、五心産業株式などに配布 ・令和1年6月10日、ケルビン株式会社などに販売
(73)【特許権者】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 準
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭31-005630(JP,B1)
【文献】特開2015-021203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽体とハンモックの間に、帽体の内側にあるアーチ状の衝撃吸収体であって、アーチ状の長手方向の両端は、帽体への取付部(1)であり、帽体の頭頂を中心として曲面での直径10cmの円の円内範囲以外の帽体への衝撃点(A)を考え、衝撃点(A)と頭頂を含む第1垂直面(P)と、頭頂を含み第1垂直面(P)に直角に交わる第2垂直面(Q)と、高さ方向の中央にある第1水平面(R)で、帽体を8分割したとき、帽体の取付部(1)が、第2垂直面(Q)で切断された衝撃点(A)を含まない帽体部分であって、第1水平面(R)より下部であって、第1垂直面(P)の左右にあり、アーチ状の長手方向の中央部(2)が、衝撃点(A)における法線の帽体内曲面の交点の近傍に配置される第1の衝撃吸収体が、存在
し、
帽体とハンモックの間に、
前記第2垂直面(Q)に対して
前記第1の衝撃吸収体と対称に位置する衝撃吸収体
である第2の衝撃吸収
体が、存在
し、
帽体とハンモックの間に、
前記第1の衝撃吸収体と前記第2の衝撃吸収体
とを帽体の頭入口の円周の円周方向に時計周りで90度回転させた衝撃吸収体
である第4の衝撃吸収
体が、存在するヘルメット
。
【請求項2】
帽体とハンモックの間に、帽体の内側にあるアーチ状の衝撃吸収体であって、アーチ状の長手方向の両端は、帽体への取付部(1)であり、帽体の頭頂を中心として曲面での直径10cmの円の円内範囲以外の帽体への衝撃点(A)を考え、衝撃点(A)と頭頂を含む第1垂直面(P)と、頭頂を含み第1垂直面(P)に直角に交わる第2垂直面(Q)と、高さ方向の中央にある第1水平面(R)で、帽体を8分割したとき、帽体の取付部(1)が、第2垂直面(Q)で切断された衝撃点(A)を含まない帽体部分であって、第1水平面(R)より下部であって、第1垂直面(P)の左右にあり、アーチ状の長手方向の中央部(2)が、衝撃点(A)における法線の帽体内曲面の交点の近傍に配置される第1の衝撃吸収体が、存在
し、
ハンモックの帽体への係止部の帽体の取り付け位置と衝撃吸収体の帽体への取付部の帽体の取り付け位置が少なくとも1か所同じであ
る
ヘルメット
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットの帽体内部に設けられている特定の衝撃吸収体を有するヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、産業用ヘルメットの帽体の内面には、ハンモックが取り付けられている。ハンモックは、通常、頭頂部から放射線状に下に延びる脚部を備え、各脚部の下端部は、帽体の下縁側内面に着脱自在に連結されている。そうすることで、人頭を帽体内部の定位置に安定させるとともに、頭頂付近の垂直方向の衝撃を緩和する役目を果たしている。
【0003】
また、頭頂付近以外の衝撃も緩和するため、衝撃吸収ライナが取付けられている。衝撃吸収ライナは、通常、発泡スチロール等により形成されており、帽体の内面を殆ど覆っている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、帽体と着装体との間にこのようなライナが設けられていると、帽体と人頭との間の空隙が僅かとなることから、ヘルメット内部の通気性が悪く、衝撃吸収ライナにより放熱も阻害される。このため、ヘルメット内部に熱こもりや蒸れが生じて着用時の快適性が損なわれる不都合がある。
そこで、発泡スチロール等による帽体の内面を殆ど覆うライナを取り除き、ハンモックに工夫をこらすことで、衝撃を吸収する構造が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-221948号公報
【文献】特開2015-25226号公報
【文献】特開2017-133124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、頭頂付近以外の衝撃を吸収することができ、ヘルメット内部に熱こもりや蒸れが改善された衝撃吸収体を有するヘルメットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
(1)帽体とハンモックの間に、帽体の内側にあるアーチ状の衝撃吸収体であって、アーチ状の長手方向の両端は、帽体への取付部1であり、帽体の頭頂を中心として曲面での直径10cmの円の円内範囲以外の帽体への衝撃点Aを考え、衝撃点Aと頭頂を含む第1垂直面Pと、頭頂を含み第1垂直面Pに直角に交わる第2垂直面Qと、高さ方向の中央にある第1水平面Rで、帽体を8分割したとき、帽体の取付部1が、第2垂直面Qで切断された衝撃点Aを含まない帽体部分であって、第1水平面Rより下部であって、第1垂直面Pの左右にあり、アーチ状の長手方向の中央部2が、衝撃点Aにおける法線の帽体内曲面の交点の近傍に配置される第1の衝撃吸収体が、存在するヘルメット、
(2)帽体とハンモックの間に、(1)に記載の第2垂直面Qに対して(1)に記載の第1の衝撃吸収体と対称に位置する衝撃吸収体を第2の衝撃吸収体としたとき、(1)に記載の第1の衝撃吸収体と第2の衝撃吸収体を有する第3の衝撃吸収体が、存在するヘルメット、
(3)帽体とハンモックの間に、(2)に記載の第3の衝撃吸収体を帽体の頭入口の円周の円周方向に時計周りで90度回転させた衝撃吸収体を第4の衝撃吸収体としたとき、(2)に記載の第3の衝撃吸収体と第4の衝撃吸収体を有する第5の衝撃吸収体、が存在するヘルメット、
(4)ハンモックの帽体への係止部の帽体の取り付け位置と衝撃吸収体の帽体への取付部の帽体の取り付け位置が少なくとも1か所同じである(1)~(3)のいずれか1つに記載のヘルメットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヘルメットであれば、頭頂付近以外の衝撃に対して衝撃を吸収することができ、ヘルメット内部に熱こもりや蒸れが改善される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明に使用される第1の例の衝撃吸収体の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に使用される第2の例の衝撃吸収体の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明のヘルメットを下方から見た図である。
【
図4】
図4は、
図3のヘルメットに衝撃吸収体とハンモックを取り付けるための、ハンモックの帽体への係止部と衝撃吸収体の帽体への取付部を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に使用されるアーチ状の衝撃吸収体は、斜め方向あるいは横方向の衝撃を目的としたものであるからほぼ垂直方向の衝撃となる帽体の頭頂付近の衝撃、即ち、帽体の頭頂を中心として曲面での直径10cmの円の円内の帽体への衝撃は考慮していない。それらの衝撃は、従来のハンモック、即ち、頭頂部から放射線状に下に延びる脚部を備え、各脚部の下端部は、帽体の下縁側内面に着脱自在に連結される構造のハンモックで衝撃吸収が緩和可能だからである。
【0011】
アーチ状の長手方向の中央部2は、衝撃点Aにおける法線の帽体内曲面の交点の近傍に配置される。中央部2は、幅方向に所定の幅を持つが、衝撃点Aにおける法線の帽体内曲面の交点との距離を考える場合は、中央部2と交点との最短距離を考える。この距離は、ヘルメットの形状にもよるが、通常4から5センチメートルである。それぐらいであれば、衝撃でへこみが生じた場合でもへこみが人頭にとどくことがないからである。
【0012】
先の(1)に記載のように、アーチ状の衝撃吸収体の取付部1、中央部2を配置することにより、衝撃点Aに衝撃が加わったとき、帽体が衝撃方向に動こうとするが、それにともないアーチ状の衝撃吸収体は、一対の取付部1の間にこの移動を阻止しようとする張力が働き、衝撃を吸収することになる。
【0013】
本発明に使用されるアーチ状の衝撃吸収体は、従来のハンモック4、即ち、頭頂部から放射線状に下の延びる脚部を備え、各脚部の下端部は、帽体3の下縁側内面にハンモック4の係止部41により着脱自在に連結される構造のハンモック4と併用される。
本発明に使用されるアーチ状の衝撃吸収体の取付部1とハンモック4の係止部41の3帽体への取り付け位置は、別別であってもいいが、同じ場所であるほうがよい。帽体3への取り付けのためにある帽体の突起部3の数を少なくできるからである。突起部3の数は、通常4~8である。取り付け位置が同じとは、取り付けが帽体の同じ取付箇所(例えば、突起3)が使用され、行われることをいう。
【0014】
衝撃吸収体、ハンモックの材質は、ポリエチレン、ポリプロピンなどの弾性力のある樹脂、繊維、皮等の張力を有する素材が好ましい。
樹脂など用いる場合は、アーチ状の帯部分に複数の貫通孔を設けることで軽くすることもできる。
以下、実施例1、実施例2では、本発明に使用される衝撃吸収体を図面を参照しながら、説明し、実施例3で本発明のヘルメットを説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に使用される第1の例の衝撃吸収体の斜視図である。一点鎖線がヘルメットの帽体であり、長破線が衝撃点Aにおける法線である。本実施例では、衝撃点Aは、帽体正面で、帽体左右方向の中央、帽体の高さ方向で下から3/4の位置を想定している。従って、衝撃点Aと帽体の頭頂を含む第1垂直面Pは、帽体の正面を左右方向の中央で帽体を二分する垂直面となる。また、第2垂直面Qは、帽体の正面を前としたとき、前後方向の中央で帽体を二分する。第1水平面Rは、帽体の高さ方向の中央で帽体を二分する。面P、Q、Rは、破線で示してある。
【0016】
衝撃吸収体はアーチ状をしており、帽体への取付部1は、アーチ状の両端部にある。本実施例では、帽体の突起部分に取り付けるため、取付のための開口がある。
取付部1は、帽体の後ろ下部の左右に位置する。そして、アーチ状の中央部2と衝撃点Aにおける法線と帽体内曲面の交点との最短距離は、4センチメートルである。
【実施例2】
【0017】
実施例1では、帯状の衝撃吸収体の安定が悪く、安定させるためには、一対の取付部1の間で、少なくとも、もう一点、帽体、あるいはハンモック等に支持されるほうがいい。しかし、帯状の衝撃吸収体を2つ組み合わせることで、アーチ状の衝撃吸収体を安定させることが可能である。
図2は、その例で、本発明に使用される第2の例の衝撃吸収体の斜視図である。衝撃点Aの位置は、実施例1と同じである。衝撃点Bの位置は、衝撃点Aと第2垂直面に対して、対称な位置にある。従って、この衝撃点Bに対するアーチ状の衝撃体の取付部1は、帽体の前側の下部の左右に位置する。また、アーチ状の長手方向の中央部2は、衝撃点Bにおける法線と帽体内曲面の交点との最短距離は、4センチメートルである。
【0018】
衝撃点Aに対応する衝撃吸収体を第1の衝撃吸収体、衝撃点Bに対応する衝撃吸収体を第2の衝撃吸収体としたとき、第1の衝撃吸収体と第2の衝撃吸収体の交差している面は、例えば、接着剤で連結されている。このように、することにより、前斜めと後ろ斜めの衝撃を吸収することができ、かつ衝撃体も帽体への取付部1が4点あり、安定した構造とすることができる。
【0019】
実施例2の衝撃吸収体を第3の衝撃吸収体としたとき、第3の衝撃吸収体を帽体の頭入口の円周の円周方向に時計周りで90度回転させた衝撃吸収体を第4の衝撃吸収体とし、第3の衝撃吸収体と第4の衝撃吸収体をあわせた第5の衝撃吸収体を考えることもできる。第5の衝撃吸収体の構造であれば、前後の衝撃吸収にくわえ、側面からの衝撃も吸収することができる。
【実施例3】
【0020】
図3は、本発明のヘルメットの一例を下方から見た図である。帽体3とハンモック4の間に本発明に使用される特定の衝撃吸収体5が存在している。本例では、この特定の衝撃吸収体5は、実施例2の第1の衝撃吸収体と第2の衝撃吸収体が一体成型して作られ、アーチ状の部分に複数の貫通孔が設けられた第3の衝撃吸収体に相当する。
帽体3は、金属や合成樹脂などの硬質材で形成されている。
ハンモック4は、帽体3の下縁内面にある一対の突起部31に着脱自在に係止する係止部41を有して放射状に配設された複数本の脚部42と、各脚部42を頭頂で互いに連結する連結部43を有している。
本例では、帽体3の一対の突起部31が4つあり、それぞれに衝撃吸収体5の4つ取付部1にある、一対の突起部31に対応するように設けられた一対の取付孔11が通され、れ、次いで、ハンモック4の4つの係止部41が、一対の突起部31の間に差し込まれている。
図4は、
図3の帽体3に衝撃吸収体5とハンモック4を取り付けるための、ハンモック4の帽体3への係止部41と衝撃吸収体5の帽体3への取付部1を示したものである。
【符号の説明】
【0021】
1 取付部
11 取付孔
2 中央部
A 帽体における衝撃点
B 衝撃点Aと第2垂直面に対して対象の位置にある衝撃点
P 衝撃点Aと頭頂を含む第1垂直面
Q 頭頂を含み第1垂直面に直角に交わる第2垂直面
R 帽体の高さ方向の中央にある水平面
3 帽体
31 突起部
4 ハンモック
41 係止部
42 脚部
43 連結部
5 衝撃吸収体