(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】記録制御装置、記録制御方法、および記録制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20230808BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230808BHJP
H04N 5/77 20060101ALI20230808BHJP
H04N 5/92 20060101ALI20230808BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
H04N7/18 J
H04N7/18 U
H04N5/77
H04N5/92 010
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2019175085
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 純一
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117518(JP,A)
【文献】特開2010-079825(JP,A)
【文献】特開2011-248684(JP,A)
【文献】特開2019-040364(JP,A)
【文献】特開2017-138694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0007323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00- 5/12
G08G 1/00
H04N 5/77, 5/92,
7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲を撮影した映像データを取得する映像取得部と、
前記映像データを所定領域に記録させるとともに前記映像データの少なくとも一部を保存対象として設定し得る記録制御部と、
予め定められたイベントの発生を検出するイベント検出部と、
を備え、
前記イベント検出部は、前記映像データの保存契機として定められた保存契機イベントの発生と、前記保存契機イベントとは異なるイベントであってその検出タイミングを記録すべき対象として定められた非保存契機イベントの発生を前記イベントとして検出し、
前記記録制御部は、
前記イベント検出部が前記非保存契機イベントを検出した場合、前記非保存契機イベントの検出タイミングを記録し、
前記非保存契機イベントが検出されてから前記非保存契機イベントと対応して定められた
第1の待機期間内に前記イベント検出部が前記保存契機イベントを検出した場合、前記非保存契機イベントの検出タイミン
グと前記保存契機イベントの検出タイミングの
双方を含む
期間の連続的な映像データを
上書き禁止の対象として設定
し、
前記非保存契機イベントが検出されてから前記非保存契機イベントと対応して定められた待機期間であって前記第1の待機期間より長い第2の待機期間内に前記イベント検出部が前記保存契機イベントを検出した場合、前記非保存契機イベントの検出タイミングの映像を含む映像データと前記保存契機イベントの検出タイミングの映像を含む映像データとを関連づけた形でそれぞれ前記保存対象として設定することを特徴とする記録制御装置。
【請求項2】
前記イベント検出部は、前記非保存契機イベントとして、複数種類のイベントの発生を検出し得るとともに、前記非保存契機イベントの種類ごとに個別の待機期間が定められることを特徴とする請求項
1に記載の記録制御装置。
【請求項3】
車両の周囲を撮影した映像データを取得する映像取得部と、
前記映像データを所定領域に記録させるとともに前記映像データの少なくとも一部を保存対象として設定し得る記録制御部と、
予め定められたイベントの発生を検出するイベント検出部と、
を備え、
前記イベント検出部は、前記映像データの保存契機として定められた保存契機イベントの発生と、前記保存契機イベントとは異なるイベントであってその検出タイミングを記録すべき対象として定められた非保存契機イベントの発生を前記イベントとして検出し、
前記記録制御部は、
前記イベント検出部が前記非保存契機イベントを検出した場合、前記非保存契機イベントの検出タイミングを記録し、
前記非保存契機イベントが検出されてから前記非保存契機イベントと対応して定められた待機期間内に前記イベント検出部が前記保存契機イベントを検出した場合、前記非保存契機イベントの検出タイミングの映像と前記保存契機イベントの検出タイミングの映像とを含む映像データを前記保存対象として設定し、
前記イベント検出部は、前記非保存契機イベントとして、複数種類のイベントの発生を検出し得るとともに、前記非保存契機イベントの種類ごとに個別の待機期間が定められることを特徴とする記録制御装置。
【請求項4】
コンピュータが、
車両の周囲を撮影した映像データを取得する過程と、
前記映像データを所定領域に記録させる過程と、
前記映像データの保存契機として予め定められた保存契機イベントの発生を検出した場合、前記保存契機イベントの検出タイミングを含む映像データを保存対象として設定する過程と、
前記保存契機イベントとは異なるイベントであってその検出タイミングを記録すべき対象として定められた非保存契機イベントの発生を前記イベントとして検出した場合、前記非保存契機イベントが検出されてから前記非保存契機イベントと対応して定められた
第1の待機期間内に前記保存契機イベントが検出された場合に、前記非保存契機イベントの検出タイミングと前記保存契機イベントの検出タイミング
の双方を含む
期間の連続的な映像データを
上書き禁止の対象として設定する過程と、
前記保存契機イベントとは異なるイベントであってその検出タイミングを記録すべき対象として定められた非保存契機イベントの発生を前記イベントとして検出した場合、前記非保存契機イベントが検出されてから前記非保存契機イベントと対応して定められた待機期間であって前記第1の待機期間より長い第2の待機期間内に前記保存契機イベントが検出された場合に、前記非保存契機イベントの検出タイミングの映像を含む映像データと前記保存契機イベントの検出タイミングの映像を含む映像データとを関連づけた形でそれぞれ前記保存対象として設定する過程と、
を備えることを特徴とする記録制御方法。
【請求項5】
車両の周囲を撮影した映像データを取得する機能と、
前記映像データを所定領域に記録させるとともに前記映像データの少なくとも一部を保存対象として設定し得る機能と、
予め定められたイベントの発生を検出する機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記検出する機能は、前記映像データの保存契機として定められた保存契機イベントの発生と、前記保存契機イベントとは異なるイベントであってその検出タイミングを記録すべき対象として定められた非保存契機イベントの発生を前記イベントとして検出し、
前記記録させる機能は、
前記検出する機能が前記非保存契機イベントを検出した場合、前記非保存契機イベントの検出タイミングを記録し、
前記非保存契機イベントが検出されてから前記非保存契機イベントと対応して定められた
第1の待機期間内に前記検出する機能が前記保存契機イベントを検出した場合、前記非保存契機イベントの検出タイミン
グと前記保存契機イベントの検出タイミングの
双方を含む
期間の連続的な映像データを
上書き禁止の対象として設定
し、
前記非保存契機イベントが検出されてから前記非保存契機イベントと対応して定められた待機期間であって前記第1の待機期間より長い第2の待機期間内に前記検出する機能が前記保存契機イベントを検出した場合、前記非保存契機イベントの検出タイミングの映像を含む映像データと前記保存契機イベントの検出タイミングの映像を含む映像データとを関連づけた形でそれぞれ前記保存対象として設定することを特徴とする記録制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周囲の映像などの情報を記録する記録制御装置、記録制御方法、および記録制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドライブレコーダとも呼ばれる装置を設置する車両が増えている。ドライブレコーダに走行中の映像や音声を記録することにより、例えば車両の周囲で事故やトラブルが発生したような場合に事故原因の究明やトラブル解決に記録映像や記録音声が寄与し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、事故やトラブル等の重大事象が発生した場合に、その発生より一定時間前まで遡って映像を保存する機能が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、一定時間前まで遡るだけでは重大事象の原因となる事象が映像に含まれないことがある一方、無闇に長時間遡って映像を保存することとすればメモリカード等の保存領域を無駄に圧迫することとなりかねない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、重大事象と関連する可能性のある事象をより広く保存対象にし得る記録制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の記録制御装置は、車両の周囲を撮影した映像データを取得する映像取得部と、映像データを所定領域に記録させるとともに映像データの少なくとも一部を保存対象として設定し得る記録制御部と、予め定められたイベントの発生を検出するイベント検出部と、を備える。イベント検出部は、映像データの保存契機として定められた保存契機イベントの発生と、保存契機イベントとは異なるイベントであってその検出タイミングを記録すべき対象として定められた非保存契機イベントの発生をイベントとして検出し、記録制御部は、イベント検出部が非保存契機イベントを検出した場合、非保存契機イベントの検出タイミングを記録し、非保存契機イベントが検出されてから非保存契機イベントと対応して定められた待機期間内にイベント検出部が保存契機イベントを検出した場合、非保存契機イベントの検出タイミングの映像と保存契機イベントの検出タイミングの映像とを含む映像データを保存対象として設定する。
【0007】
本発明の別の態様は、記録制御方法である。この方法は、車両の周囲を撮影した映像データを取得する過程と、映像データを所定領域に記録させる過程と、映像データの保存契機として予め定められた保存契機イベントの発生を検出した場合、保存契機イベントの検出タイミングを含む映像データを保存対象として設定する過程と、保存契機イベントとは異なるイベントであってその検出タイミングを記録すべき対象として定められた非保存契機イベントの発生をイベントとして検出した場合、非保存契機イベントが検出されてから非保存契機イベントと対応して定められた待機期間内に保存契機イベントが検出された場合に、非保存契機イベントの検出タイミングと保存契機イベントの検出タイミングとを含む映像データを保存対象として設定する過程と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システム、プログラムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重大事象と関連する可能性のある事象をより広く保存対象にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ドライブレコーダの機能構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】第1~3の決定方法における過程を示すタイムチャートである。
【
図3】マーキングイベントごとの待機期間および保存時間の対応関係を例示するテーブルの図である。
【
図4】実施の形態1における映像保存過程を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2における映像保存過程を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態3における映像保存過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。以下説明する実施の形態においては、記録制御装置として主にドライブレコーダを例示する。
【0012】
(実施の形態1)
【0013】
図1は、ドライブレコーダ10の機能構成を模式的に示すブロック図である。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0014】
ドライブレコーダ10は、映像取得部12、音声取得部14、車両情報取得部16、イベント検出部18、記録制御部20、一時記憶部22、通信部24、操作受付部26を備える。映像取得部12は、車両情報取得部16の一部として構成されてもよく、映像取得部12が車両情報取得部16に含まれてもよい。ドライブレコーダ10は、車両に搭載される。通信部24は、外部機器との間で無線通信接続によって情報を送受信する。操作受付部26は、ユーザの操作入力を受け付ける。ドライブレコーダ10は、撮影した映像を表示するモニタ部と、録音した音声を出力するスピーカ部と、をさらに備えてもよい。
【0015】
映像取得部12は、車両に設けられるカメラ42が撮影する映像データを取得する。カメラ42は、車両の周囲を撮影するよう構成され、例えば、車両の前方を撮影するように構成される。カメラ42は、車両の室外のみを撮影するように構成されてもよいし、車両の室外および室内の双方を撮影するように構成されてもよい。車両に複数のカメラが搭載されてもよく、例えば複数のカメラのそれぞれが車両の前方、後方、側方、室内を撮影してもよい。カメラ42は、車両の室外および室内の双方を撮影する構成として、周囲360度を撮影可能な一つの全周カメラで構成してもよいし、前後を撮影する複数のカメラで構成してもよい。カメラ42は、ドライブレコーダ10に内蔵されてもよいし、ドライブレコーダ10とは別体であってもよい。映像取得部12は、車両の走行に関する車両情報としてカメラ42が撮影した画像を取得してもよく、映像取得部12を車両情報取得部16の一部とみなしてもよい。
【0016】
音声取得部14は、車両に設けられるマイク44が取得する音声データを取得する。マイク44は、車両の内外から集音するよう構成される。マイク44は、ドライブレコーダ10に内蔵されてもよいし、ドライブレコーダ10とは別体であってもよいし、カメラ42と一体であってもよい。音声取得部14は、車両の走行に関する車両情報としてマイク44により音声を取得してもよく、音声取得部14を車両情報取得部16の一部とみなしてもよい。
【0017】
車両情報取得部16は、車両に設けられる車載装置46から車両の走行に関する車両情報を取得する。車載装置46の具体例として、車速センサ、舵角センサ、アクセル操作量センサ、ブレーキ操作量センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、レーダセンサ、ライダ(LiDAR;Light Detection and Ranging)、位置情報センサ(例えば、GNSS;Global Navigation Satellite System)、乗員の着座センサなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。車両情報取得部16は、各種制御ECU(Electronic Control Unit)を介して車両情報を取得してもよいし、ナビゲーション装置を介して車両情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、通信部24を介してユーザの携帯電話等の端末に内蔵された加速度センサ、ジャイロセンサ、位置情報センサ等の各センサによって検出された情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、ドライブレコーダ10が内蔵するセンサから車両の走行に関する情報を取得してもよい。例えば、ドライブレコーダ10が加速度センサや位置情報センサなどのセンサを内蔵してもよい。なお、カメラ42やマイク44を車載装置の一つとしてみなし、車両情報取得部16が映像取得部12や音声取得部14を含むように構成されてもよい。
【0018】
車両情報取得部16は、例えば車両の状態に関する情報、車両に対する操作に関する情報、車両の速度に関する情報、車両の位置に関する情報、車両の周囲の障害物に関する情報、車両の運転支援機能の作動状態に関する情報などを車載装置46から取得する。車両情報取得部16は、車両の状態に関する情報として、例えばドアや窓の開閉状態を示す情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、車両に対する操作に関する情報として、例えばドアや窓の開閉を指示する操作があったことを示す情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、車両の周囲の障害物に関する情報として、車両の周囲の一定範囲内に他車両が存在するか否かや、走行中の車線上に歩行者や自転車、落下物や建造物などの障害物が存在するか否かを示す情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、車両内に乗員が存在するか否かを示す情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、車両の運転支援機能の作動状態に関する状態として、自動運転機能や遠隔操作機能のオンオフに関する情報や、特定の運転支援機能が作動中であるか否かに関する情報を取得してもよい。運転支援機能として、例えば、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC;Adaptive Cruise Control)やレーン・キープ・アシスト(LKAS;Lane Keeping Assistance System)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
イベント検出部18は、映像取得部12が取得する映像データ、音声取得部14が取得する音声データ、車両情報取得部16が取得する車両情報に基づいて、予め定められた各種イベントの発生を検出する。イベント検出部18が検出し得るイベントとして、トリガーイベントとマーキングイベントとが予め定められる。
【0020】
トリガーイベントは、車両の事故やトラブル等の重大事象として想定され、その発生や検出があった場合に映像データを上書き禁止データとして保存する契機となる保存契機イベントである。イベント検出部18は、トリガーイベントとして、例えば車両の衝突、接触、横転、転落などの事故や、周囲の車両の運転者による粗暴行為や危険運転などのトラブルの発生を検知する。イベント検出部18は、例えばカメラ42によって取得される映像データやマイク44によって取得される音声データから、所定の認識パターンに基づく画像認識や音声認識によって事故やトラブルの発生を検出してもよい。イベント検出部18は、例えば車両の走行速度や加速度の情報、アクセル、ブレーキおよびステアリングなどの操作情報から、急発進、急停止、急旋回などによる車両挙動の急激な変化を認識することでトリガーイベントの発生を検出してもよい。イベント検出部18は、事故やトラブルの可能性が高い状態を認識するための所定の閾値または所定の認識パターンに基づいて車両挙動の急激な変化を認識することでトリガーイベントの発生を検出してもよい。イベント検出部18は、カメラ42の映像データや車両のレーダセンサなどの情報から、所定の認識パターンに基づいて前方車両との接近、車両周囲の物体との接近、走行中の車線からの逸脱などを認識することでトリガーイベントの発生を検出してもよい。イベント検出部18は、ドライブレコーダ10に設けられた保存開始ボタンの押下や保存開始を示す音声指示を操作受付部26が受け付けたときにも、これをトリガーイベントの発生として検出してもよい。
【0021】
マーキングイベントは、その後に事故やトラブル等の重大事象が発生した場合には、事後的にその重大事象と何らかの関係性を有することとなり得る非保存契機イベントである。マーキングイベントは、単独では保存契機とはされないものの、その検出タイミングを記録しておくべき対象として定められたイベントである。マーキングイベントは、その種類ごとに個別の待機期間が定められている。マーキングイベントごとに定められる待機期間には、記録媒体48の全体容量または空き容量に応じて調節される可変期間の第1待機期間と、第1待機期間とは別に定められる固定期間である第2待機期間とが含まれる。第1待機期間は、第2待機期間の長さを上限とする可変期間である。待機期間の詳細は後述する。マーキングイベントは、平常時は事故やトラブルとは無関係といえるイベントであるが、待機期間内に事故やトラブルが発生した場合にはそうした事象と何らかの関係性を有する事象であった可能性が事後的に判明し得る。そのため、マーキングイベントを検出しても直ちに映像データの保存はしないが、その検出タイミングだけは記録しておき、所定の待機期間内にトリガーイベントが発生した場合には事後的に遡って保存対象とする。したがって、マーキングイベントの検出タイミングは、事後的に保存対象として遡る場合の映像データの起点候補として記録される。マーキングイベントは、一見すると事故やトラブルとは関係しないと思われるような些細な事象も含まれる。マーキングイベントは、例えば、異音、ドアや窓の開閉、光の明滅、乗員の変化、運転者によるステアリング以外の操作、車両の上下動、周辺車両の挙動、天候変化などのイベントである。
【0022】
マーキングイベントとしての「異音」は、マイク44によって取得される車両内外の音声のうち所定の認識パターンに基づいて認識される音声であり、例えば所定音量を超える音声や音量の上昇率が所定値を超える音声、所定周波数範囲の音声でもよいし、携帯電話の着信音でもよい。マーキングイベントとしての「ドアや窓の開閉」は、車両情報取得部16が車載装置46から取得する、ドアや窓の開閉状態を示す情報、または、ドアや窓の開閉を指示する操作があったことを示す情報に基づいて検出される。マーキングイベントとしての「光の明滅」は、例えば画像データから所定の認識パターンに基づいて検出される。マーキングイベントとしての「乗員の変化」は、例えば運転者や同乗者の視線や姿勢の大きな変化であり、画像データから所定の認識パターンに基づいて検出される。視線の変化は、例えば車外での事故や飛び出しが発生したのを目撃し、その発生方向へ急に視線を移動させたような変化である。姿勢の変化は、例えば足元への落とし物を拾う動作など、通常の運転動作とは異なる動作である。マーキングイベントとしての「運転者による操舵以外の操作」は、例えば方向指示器、シフトレバー、ハンドブレーキなど、操舵以外の運転操作であってもよいし、運転操作以外の操作、例えばナビゲーション装置やオーディオ装置、携帯電話などの装置の操作であってもよい。これらの操作は、車載装置46から取得する車両に対する操作に関する情報により検出されてもよいし、車両内を撮影した映像データから所定の認識パターンに基づいて検出されてもよい。マーキングイベントとしての「車両の上下動」は、例えば駐車場を出入りするときの段差による上下動であってもよく、加速度センサによる車両情報または画像データから所定の閾値または認識パターンに基づいて検出されてもよい。段差による上下動を加速度センサによる車両情報から検出する場合、車両の衝突検出に用いられる閾値より低い所定の閾値によって検出する。マーキングイベントとしての「周辺車両の挙動」は、車両の周囲にある他車両が所定速度を超える極端に速い速度で追い抜く、またはすれ違うといった挙動であり、画像データから所定の認識パターンに基づいて検出されてもよい。マーキングイベントとしての「天候変化」は、例えば大雨や雪などの荒天への急な変化であり、画像データから所定の認識パターンに基づいて検出されてもよい。
【0023】
検出されるマーキングイベントが相対的に短時間の事象である場合は、そのマーキングイベントが最初に検出されたタイミングを「検出タイミング」としてもよい。マーキングイベントの検出状態が所定時間以上継続する場合は、そのマーキングイベントが検出される期間の最後を「検出タイミング」としてもよい。同種のマーキングイベントが所定範囲内の時間的間隔をあけて連続する場合、それら連続する同種のマーキングイベントを一つのマーキングイベントとして記録してよい。その場合、連続するマーキングイベントのうち最後のイベントが終わったタイミングを「検出タイミング」としてもよい。
【0024】
記録制御部20は、カメラ42により常時撮影されて映像取得部12が取得した映像データ、マイク44により常時集音されて音声取得部14が取得した音声データ、車両情報取得部16が取得した車両情報を、所定領域に記録する。「所定領域」は、一時記憶部22および記録媒体48である。まず、記録制御部20は、映像データ、音声データ、車両情報を一時記憶部22へ一時的に記憶させる。記録制御部20は、一時記憶部22に記憶される映像データおよび音声データをリングバッファ方式で記録媒体48に記録する。
【0025】
一時記憶部22は、フラッシュメモリないしソリッドステートドライブ(SSD;Solid State Drive)などの不揮発性メモリ、または、DRAMなどの揮発性メモリで構成されるバッファメモリであってもよい。記録媒体48は、例えば、SDカード(登録商標)などのメモリカードであり、ドライブレコーダ10に設けられるスロットに挿入して使用され、ドライブレコーダ10から取り外し可能となるよう構成される。記録媒体48は、ソリッドステートドライブやハードディスクドライブなどの補助記憶装置で構成されてもよい。なお、一時記憶部22へ記憶させる音声データや記録媒体48に記録される音声データは、映像データと合成された動画像データの形式で記憶ないし記録される。ただし、ユーザが選択するモードに応じて、音声データが含まれない無音の映像データとして動画像データが記憶ないし記録される場合もある。したがって、以下に説明する「映像データ」の概念には、特に説明しないが、音声データが含まれる場合と含まれない場合とがあり得る。
【0026】
一時記憶部22へ記憶させる映像データは、MPEG2-TSなどの所定時間で区切られたストリーミング形式の動画像データとして記憶させてもよい。記録媒体48へ記録する映像データは、一時記憶部22へ記憶させる映像データと同じ形式でもよいし、異なる形式、例えばMP4形式などのより圧縮率の高い形式でもよい。
【0027】
記録制御部20は、映像データをリングバッファ方式で一時記憶部22および記録媒体48へ記録するため、一時記憶部22および記録媒体48に記録されたデータが容量一杯になると、最も古いデータから上書きされる。記録制御部20は、映像データを上書き可能の属性で一時記憶部22および記録媒体48にいったん記録する。記録制御部20は、イベント検出部18によりマーキングイベントが検出された場合に、マーキングイベントの検出タイミングを記録媒体48に記録する。検出タイミングもまた、上書き可能の属性で記録してもよい。検出タイミングの記録は、例えば検出タイミングを示す日時の情報でもよいし、映像データにおける時間的な位置情報でもよい。記録制御部20は、検出タイミングそのものを示す情報だけでなく、その検出タイミングにおいて車速センサや位置情報センサから取得した車速や車両位置といった車両情報を合わせて記録してもよい。
【0028】
記録制御部20は、イベント検出部18によりトリガーイベントの発生が検出された場合に、記録媒体48に記録された映像データのうち、少なくともトリガーイベントの検出タイミングを含む期間の映像データに上書き不可の保存形式を設定する。記録制御部20は、上書き不可の保存形式を設定することにより、映像データの少なくとも一部を上書き禁止にする。上書き可能および上書き不可の属性は、例えば映像データに含まれる所定のフラグ等に書き込むことによって設定してもよいし、映像データから独立したインデックス等の管理ファイルに上書き可否の属性を書き込むことによって設定してもよい。元の映像データ自体に上書き可否の属性を書き込む場合、例えば元の映像データのうち上書き不可とする保存対象の期間の開始位置と終了位置を示す情報を書き込んでもよい。この場合、保存対象以外の部分、すなわち上書き可能とする部分を後から別データで上書きする際に、保存対象の開始位置から終了位置までが結果的に切り出されて残るようにそれ以外の部分に上書きする。また、保存対象とする部分を元の映像データから切り出して独立させたファイルの形で別途保存することで、上書き可能と上書き不可を区別する仕様としてもよい。保存対象として切り出す部分が複数の映像データをまたぐ場合、それぞれの映像データから切り出して連結したファイルを保存してもよい。独立させたファイルの形で別途保存する場合、上書き可能なデータが記録された領域とは異なる特定の領域、例えば特定のフォルダに記録することで、上書き可能と上書き不可を区別する仕様としてもよい。上書き不可の属性が設定されたデータは、ユーザの明示的な操作によって削除または上書き可能の属性への変更がされるまで上書き禁止の状態が保持される。
【0029】
記録制御部20が記録媒体48に記録される映像データを上書き禁止の保存対象を決定する方法は主に3通りある。本実施の形態では、従来の手順に相当する第1の決定方法に加え、第2および第3の決定方法にて映像データを保存する点を主な特徴とする。
【0030】
第1の決定方法は、トリガーイベントが検出された場合に、その検出タイミングを含む所定期間の映像データを保存対象として設定する決定方法である。この場合、記録制御部20は、トリガーイベントの検出タイミングより所定時間、例えば5秒間を遡った時点から、トリガーイベントの検出タイミングより所定時間、例えば10秒間を経過した時点までの映像データを保存対象として設定する。トリガーイベントの検出タイミングを基準として保存対象とする前後15秒の期間は固定時間である。すなわち第1の決定方法は、保存対象とされる映像に事故やトラブル等の重大事象の画面やその原因が実際に含まれているか否かにかかわらず一定の時間だけ遡った時点を保存対象の起点とする手法である。この場合、事故やトラブルの原因となるイベントが保存対象の映像に含まれないことがある一方、無闇に長時間遡って映像を保存することとすればメモリカード等の保存領域を無駄に圧迫することとなりかねない。
【0031】
第2の決定方法は、マーキングイベントが検出されてからマーキングイベントと対応して定められた第1の待機期間内にトリガーイベントが検出された場合に実行される決定方法である。記録制御部20は、イベント検出部18がマーキングイベントを検出した場合に、マーキングイベントの検出タイミングを所定領域に記録する。「所定領域」は、例えば記録媒体48である。第1の待機期間は、マーキングイベントの後からトリガーイベントが発生した場合に、事後的に遡って事故やトラブルが映った映像の起点として認定するために、トリガーイベントの発生を待機する期間である。記録制御部20は、第1の待機期間として、原則として後述の第2の待機期間と同じ時間を設定するが、所定の条件下では第2の待機期間より短い時間を設定する。例えば、記録媒体48としてのメモリカードの仕様上の最大容量値が所定値より小さいことを記録制御部20が検出した場合や、そのメモリカードの上書き可能な残り容量が所定値より小さいことを記録制御部20が検出した場合に、第2の待機期間より短い期間を設定する。変形例として、最大ファイル数や最大ファイルサイズなどの仕様が所定値より小さいことを記録制御部20が検出した場合にも、第2の待機期間より短い期間を設定してもよい。マーキングイベントの検出タイミングから第1の待機期間内にトリガーイベントが検出されると、記録制御部20は、マーキングイベントの検出タイミングとトリガーイベントの検出タイミングの双方を含む期間の連続的な映像データを保存対象として設定する。記録制御部20は、マーキングイベントの検出タイミングを示すマーキング情報を、例えば記録媒体48に上書き可能の属性で記録する映像データの一部に記録してもよいし、映像データと関連づける別データとして記録してもよい。変形例として、マーキングイベントを記録する「所定領域」は、一時記憶部22であってもよい。すなわち、記録制御部20は、マーキングイベントの検出タイミングを記録媒体48へ記録する代わりに一時記憶部22に記憶させることとしてもよい。
【0032】
第2の決定方法により、保存対象とする映像データの起点として遡る期間を、固定期間ではなく可変期間とすることができる。また、保存対象とする映像データの起点として遡る期間を、マーキングイベントからトリガーイベントまでの実際の期間の長さに応じて長くすることができ、無闇に長時間遡って映像を保存することを回避できる。さらに、メモリカードの全体容量や残り容量の状況に合わせて第1の待機期間を最適な時間に設定することで、メモリカードの残量枯渇を回避する。なお、第1の待機期間は、最長で第2の待機期間と同じ時間を上限とする一方、下限値をマーキングイベントごとに個別の時間値を設定してもよい。あるいは、その下限値を0秒とすることで、メモリカードの残量が切迫した状況では第2の決定方法による保存対象の遡りを事実上スキップするような仕様としてもよい。変形例として、トリガーイベントからマーキングイベントまで遡った期間のフレームレートを、トリガーイベントの前後のフレームレートより低く設定することで映像データのサイズを相対的に小さくしてもよい。
【0033】
第3の決定方法は、マーキングイベントが検出されてからマーキングイベントと対応する第2の待機期間内にトリガーイベントが検出された場合に実行される決定方法である。第2の待機期間は、可変期間である第1の待機期間の上限値に相当する固定期間であり、第1の待機期間が状況に応じて短縮された場合には結果的に第1の待機期間より長い期間となる。その上で、第1の待機期間が短縮された場合であって、その第1の待機期間内にトリガーイベントが検出されなかった場合に第3の決定方法が実行され得る。第2の待機期間は、第1の待機期間内にトリガーイベントが発生しなくとも、その後にトリガーイベントが発生すれば、事故やトラブルとの関連性を有する可能性があるものとみなし、事後的に映像を保存対象とするためにトリガーイベントの発生を待機する期間である。第2の待機期間は、トリガーイベントの発生を待機する期間として想定される最長の時間である。記録制御部20は、マーキングイベントの検出タイミングの映像を含む映像データとトリガーイベントの検出タイミングの映像を含む映像データを、互いに関連づけた形でそれぞれ保存対象として設定する。すなわち、第3の決定方法は、マーキングイベントの検出タイミングまで遡って一つの連続的な映像データを保存対象とする第2の決定方法と異なり、それぞれの検出タイミングの映像を別々に保存する。関連づけの方法として、記録制御部20は関連づける複数の映像データに同じ識別情報を付与してもよいし、それぞれの映像データに互いのファイル名をリンクし合ってもよい。なお、メモリカードの容量に十分な余裕がある場合には第1の待機期間が短縮されず、結果的に第2の待機期間に相当する時間以上に遡って保存対象とされる可能性がある。また、本実施の形態では第2および第3の決定方法が存在する結果、マーキングイベントが検出される前、またはマーキングイベントの検出から第2の待機期間の経過後にトリガーイベントが検出された場合に限り、第1の決定方法にて保存対象が設定されることとなる。
【0034】
第3の決定方法により、マーキングイベントの検出から第1の待機期間を超える長さの時間が経過した後にトリガーイベントが発生した場合でも、事故やトラブルと何らかの関連性を有する可能性があるイベントの映像を事後的に保存対象とすることができる。また、その場合に、マーキングイベントからトリガーイベントまでの間に存在し得る、事故やトラブルとは無関係な長時間の映像を無駄に残すことを回避できる。その結果、事故やトラブルと関連する可能性があるか否かがその検出時点では不明である些細なイベントであっても、そのようなイベントの映像を事後的に幅広く保存対象に含めることができる。また、そのような幅広い保存対象をメモリカードを圧迫することなく効率よく保存することができる。
【0035】
図2は、第1~3の決定方法における過程を示すタイムチャートである。
図2(a)においては、破線で描かれる帯形状の第1映像データ60の一部が第1の決定方法で保存される過程が示される。この例では、t10の時点で事故等のトリガーイベントが検出されたことを契機に、記録制御部20が第1保存期間66にわたる映像データを保存対象として設定する。第1の決定方法は、t10から少なくとも第2待機期間82だけ遡った時点までの間にマーキングイベントが発生していないことが実行条件となる。言い換えれば、トリガーイベントの検出タイミングが、それより前に検出されたすべてのマーキングイベントの待機期間(すなわち、マーキングイベントごとに定められる待機期間の最長時間)の経過後であることが実行条件となる。記録制御部20は、第1保存期間66、すなわちt10の5秒前からt10の10秒後までの15秒間の映像データを保存対象として設定する。
【0036】
図2(b)においては、破線で描かれる帯形状の第2映像データ62の一部が第2の決定方法で保存される過程が示される。第1マーキングイベント68は、その検出が所定時間(例えば3秒)以上継続する種類のイベント、または、所定時間(例えば2秒)未満の間隔で連続的に検出される種類のイベントであり、t12の少し前からt14の時点までの期間を一つのイベントとみなす。記録制御部20は、第1マーキングイベント68が終わったt14を第1マーキングイベント68の検出タイミングとして記録媒体48に記録する。ただし、変形例においては第1マーキングイベント68が検出されたt12を検出タイミングとして記録媒体48に記録してもよい。t14の時点から第1待機期間80(例えば30秒)が経過するまでの間に含まれるt20において事故等のトリガーイベントが検出されたことを契機に、記録制御部20が映像データを保存対象として設定する。この場合、t20の5秒前からt20の10秒後までの15秒間(この期間を「仮想保存期間72」として図示している)の映像部分だけを保存対象として設定するのではなく、第1マーキングイベント68が検出されたt12の所定時間前、例えば1秒前まで遡って保存対象とする。すなわち、t12の1秒前からt20の10秒後までの第2保存期間74の映像部分を一つの連続的な映像データの形で保存対象として設定する。
【0037】
一方、第1マーキングイベント68が検出されてからトリガーイベントが検出されるまでの間に、別のマーキングイベントである第2マーキングイベント70がさらに検出された場合を説明する。第2マーキングイベント70は、例えば方向指示器の操作のように一瞬で完結するイベント、すなわち、そのイベントの検出が所定時間(例えば3秒)以上継続しない種類のイベントである。記録制御部20は、第2マーキングイベント70が検出されたt16を第2マーキングイベント70の検出タイミングとして記録媒体48に記録する。
図2(b)の例では、記録制御部20は第2マーキングイベント70の映像部分を包含する形で第2保存期間74の映像部分を一つの連続的な映像データの形で保存対象として設定する。ただし、仮に第1マーキングイベント68が検出されていなかった場合でも、t16から第1待機期間80の経過までにt20においてトリガーイベントが検出されたことを契機に、記録制御部20がt16の1秒前まで遡った映像データを保存対象として設定することとなる。この場合、記録制御部20は、t16の1秒前からt20の10秒後までの期間を一つの連続的な映像データの形で保存対象として設定する。
【0038】
図2(c)においては、破線で描かれる帯形状の第3映像データ64の一部が第3の決定方法で保存される過程が示される。第4マーキングイベント77は、その検出が所定時間(例えば3秒)以上継続しない種類のイベントである。記録制御部20は、第4マーキングイベント77が検出されたt24を第4マーキングイベント77の検出タイミングとして記録媒体48に記録する。t24の時点から第1待機期間80が経過するまでの間には事故等のトリガーイベントが検出されないため、第2の決定方法は実行されない。一方、t24の時点から第2待機期間82が経過するまでの間に含まれるt26において事故等のトリガーイベントが検出されたことを契機に、第3の決定方法が実行され、t24を含む映像データとt26を含む映像データが互いに関連づけられる形で保存対象として設定される。この場合、t24の1秒前からt24の1秒後までの2秒間を第4マーキングイベント77の映像データとして保存対象とし、t26の5秒前からt26の10秒後までの15秒間を第3保存期間78の映像データとして保存対象とする。映像データ同士の関連づけの情報は、映像データの中に書き込まれてもよいし、映像データとは別ファイルである管理ファイルに書き込まれてもよい。
【0039】
一方、t24よりも前のt22において第3マーキングイベント76が検出されて、その検出タイミングが記録媒体48に記録されるものの、その後、t22の時点から第2待機期間82が経過するまでの間にt26は含まれず、他の事故等のトリガーイベントも検出されない。したがって、第3マーキングイベント76はt26のトリガーイベントとは関連づけがなされず、第3マーキングイベント76が映像データとして保存対象となることもない。
【0040】
図2(d)においては、破線で描かれる帯形状の第4映像データ65の一部が第2および第3の決定方法の組合せで保存される過程が示される。第6マーキングイベント75は、(b)の第1マーキングイベント68と同様に、その検出が所定時間以上継続する種類のイベント、または、所定時間未満の間隔で連続的に検出される種類のイベントであり、t28の少し前からt29までの期間を一つのイベントとみなす。記録制御部20は、第6マーキングイベント75が終わったt29を第6マーキングイベント75の検出タイミングとして記録媒体48に記録する。t29の時点から第1待機期間80(例えば30秒)が経過するまでの間に含まれるt30において事故等のトリガーイベントが検出されたことを契機に、記録制御部20が映像データを保存対象として設定する。この場合、t30の5秒前からt30の10秒後までの15秒間(この期間を「仮想保存期間79」として図示している)の映像部分だけを保存対象として設定するのではなく、第6マーキングイベント75が検出されたt28の所定時間前、例えば1秒前まで遡って保存対象とする。すなわち、t28の1秒前からt30の10秒後までの第4保存期間71の映像部分を一つの連続的な映像データの形で保存対象として設定する。
【0041】
一方、第6マーキングイベント75の前には第5マーキングイベント73も検出されており、記録制御部20は、第5マーキングイベント73が検出されたt27を第5マーキングイベント73の検出タイミングとして記録媒体48に記録する。t27から第1待機期間80の経過までにトリガーイベントが検出されないが、第2待機期間82におけるt30にてトリガーイベントが検出されるため、これを契機に第3の決定方法が実行される。これにより、t27を含む映像データがt28およびt30を含む映像データと関連づけられる形で保存対象として設定される。この場合、t27の1秒前からt27の1秒後までの2秒間を第5マーキングイベント73の映像データとして保存対象とする。
【0042】
ここで、
図2(d)の例では、第5マーキングイベント73の検出タイミングであるt27から第1待機期間80の間に第6マーキングイベント75が検出され(t28)、さらにその検出タイミング(t28またはt29)から第1待機期間80の間にトリガーイベントが検出されている。
図2(d)の変形例としては、このようにマーキングイベントごとの第1待機期間内に次のマーキングイベントが連鎖した後にトリガーイベントが検出された場合、連鎖する最初のマーキングイベントまで遡って一つの連続した映像データの形で保存対象に設定する仕様としてもよい。すなわち、マーキングイベントが待機期間以上の間隔をあけることなく連鎖した場合は、最初のマーキングイベントまで遡って連続する長時間の映像データとして保存することができる。また、別の変形例として、トリガーイベントにも待機期間を定める仕様としてもよい。複数種類のトリガーイベントのうち特定のトリガーイベントに対して待機期間を定めてもよいし、トリガーイベントごとに個別の待機期間を設定してもよい。この場合、トリガーイベントの発生が検出されてから、そのトリガーイベントに対応する待機期間が経過するまでに別のトリガーイベントが検出された場合に、それら複数のトリガーイベントを含む連続した一つの映像データの形で保存対象に設定する。すなわち、待機期間内にトリガーイベントが発生した場合は、前のトリガーイベントまで遡って連続する映像データとして保存することで、トリガーイベントが連続的に発生するような場合には連鎖的に長時間の映像を保存することができる。例えば、数kmにも及ぶ長い距離ないし長時間にわたって煽り運転の被害にあったような場合でも、長時間にわたる映像を保存することができる。
【0043】
なお、
図2の例では(a)~(c)の比較を容易にするためにマーキングイベントごとの第1待機期間80および第2待機期間82の長さをそれぞれ30秒と60秒の例で共通にして説明した。実際には、第1待機期間80はマーキングイベントごとに個別の長さに設定され、第2待機期間82もまたマーキングイベントごとに個別の長さに設定される。また、第1待機期間80は、メモリカードの状況に応じて最適な時間が設定される。変形例においては、第1待機期間80を第2待機期間82より短い固定時間としてもよいし、第2待機期間82を可変時間としてもよい。
【0044】
図3は、マーキングイベントごとの待機期間および保存時間の対応関係を例示するテーブルの図である。記録制御部20は、図示するようなマーキングイベントテーブル90を参照して、マーキングイベントごとの第1待機期間、第2待機期間、保存対象とする場合の保存時間を設定する。マーキングイベントテーブル90においては、イベント種類92の欄には、「異音」「ドアや窓の開閉」「光の明滅」「乗員の視線変化」「乗員の姿勢変化」「方向指示器操作」「ナビゲーション装置操作」といったマーキングイベントの種類が定義される。第1待機期間94、第2待機期間96、保存時間98の欄には、マーキングイベントごとに第1待機期間、第2待機期間、保存時間がそれぞれ定義される。
【0045】
例えば、イベント種類「異音」に対しては、第1待機期間の下限が30秒で上限が120秒、第2待機期間が120秒と定められ、保存時間としてはイベント検出タイミングの1秒前からイベント検出タイミングの5秒後までの6秒間と定められる。イベント種類「ドアや窓の開閉」に対しては、第1待機期間が20~180秒、第2待機期間が180秒と定められ、保存時間としてはイベント検出タイミングの1秒前からイベント検出タイミングの5秒後までの6秒間と定められる。イベント種類「光の明滅」に対しては、第1待機期間が20~60秒、第2待機期間が60秒と定められ、保存時間としてはイベント検出タイミングの1秒前からイベント検出タイミングの1秒後までの2秒間と定められる。イベント種類「乗員の視線変化」に対しては、第1待機期間が20~60秒、第2待機期間が60秒と定められ、保存時間としてはイベント検出タイミングの1秒前からイベント検出タイミングの5秒後までの6秒間と定められる。イベント種類「乗員の姿勢変化」に対しては、第1待機期間が30~120秒、第2待機期間が120秒と定められ、保存時間としてはイベント検出タイミングの1秒前からイベント検出タイミングの5秒後までの6秒間と定められる。イベント種類「方向指示器操作」に対しては、第1待機期間が30~120秒、第2待機期間が120秒と定められ、保存時間としてはイベント検出タイミングの1秒前からイベント検出タイミングの1秒後までの2秒間と定められる。イベント種類「ナビゲーション装置操作」に対しては、第1待機期間が30~90秒、第2待機期間が90秒と定められ、保存時間としてはイベント検出タイミングの2秒前からイベント検出タイミングの10秒後までの12秒間と定められる。
【0046】
本図では、第1待機期間として下限と上限が定められた可変値を例示し、その上限は第2待機期間と等しい値を例示するが、変形例においては下限を0秒としてもよいし、上限を第2待機期間より短い時間に定めてもよい。あるいは、第1待機期間を固定値としてもよい。また、第2待機期間をメモリカードの残量の状況に応じて定める可変値としてもよい。第2待機期間を可変とする場合でも、第1待機期間としては第2待機期間より長い時間は設定されない。
【0047】
図4は、実施の形態1における映像保存過程を示すフローチャートである。まず、新たなマーキングイベントの検出があった場合(S30のY)、その検出タイミングを記録制御部20が記録媒体48へ記録する(S32)。新たなマーキングイベントの検出がなく(S30のN)、新たなトリガーイベントの検出もない場合は(S34のN)、フローの最初に戻り、マーキングイベントの検出があるたびにその検出タイミングを記録する(S30のY、S32)。新たなトリガーイベントの検出があった場合(S34のY)、その検出タイミングがマーキングイベントの検出タイミングから第1待機期間内であれば(S36のY)、マーキングイベントの前後からトリガーイベントの前後までを連続した一つの映像データの形で保存対象に設定する(S38)。また、トリガーイベントの検出が第1待機期間内となるマーキングイベントが複数ある場合はそれら複数のマーキングイベントを包含する一つの映像データの形で保存対象に設定する。一方、トリガーイベントの検出が第1待機期間を超えて第2待機期間内となるマーキングイベントがある場合(S39のY)、そのマーキングイベントの前後を含む映像データとS38の映像データを関連づけて保存する(S40)。S38とS40の組合せは、
図20(d)に示す第2および第3の決定方法の組合せである。S39においてトリガーイベントの検出が第2待機期間内となるマーキングイベントがない場合(S39のN)、S40をスキップする。これが第2の決定方法である。S36において新たなトリガーイベントの検出タイミングがマーキングイベントの検出タイミングから第1待機期間内ではなく(S36のN)、第2待機期間内であれば(S41のY)、マーキングイベントの前後を含む映像データとトリガーイベントの前後を含む映像データを関連づける形で保存対象に設定する(S42)。これが第3の決定方法である。新たなトリガーイベントの検出タイミングが第2待機期間内でもない場合は(S41のN)、トリガーイベントの前後だけを含む映像データを保存対象として設定する(S44)。これが第1の決定方法である。
【0048】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、マーキングイベントごとに一つの待機期間が定められる点で、マーキングイベントごとに第1待機期間と第2待機期間の二つの待機期間が定められる実施の形態1とは相違する。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0049】
図5は、実施の形態2における映像保存過程を示すフローチャートである。まず、新たなマーキングイベントの検出があった場合(S50のY)、その検出タイミングを記録制御部20が記録媒体48へ記録する(S52)。新たなマーキングイベントの検出がなく(S50のN)、新たなトリガーイベントの検出もない場合は(S54のN)、フローの最初に戻り、マーキングイベントの検出があるたびにその検出タイミングを記録する(S50のY、S52)。新たなトリガーイベントの検出があった場合(S54のY)、その検出タイミングがマーキングイベントの検出タイミングからの待機期間内であれば(S56のY)、マーキングイベントの前後からトリガーイベントの前後までを連続した一つの映像データの形で保存対象に設定する(S58)。これが第2の決定方法である。新たなトリガーイベントの検出タイミングがマーキングイベントの検出タイミングからの待機期間内でなければ(S56のN)、トリガーイベントの前後だけを保存対象として設定する(S60)。これが第1の決定方法である。本実施の形態においては、第3の決定方法は採用されない。
【0050】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、マーキングイベントごとに一つの待機期間が定められる点で実施の形態2と共通するが、待機期間の経過後にトリガーイベントが検出された場合の決定方法が実施の形態2と相違する。また、マーキングイベントごとに第1待機期間と第2待機期間の二つの待機期間が定められる実施の形態1とも相違する。以下、実施の形態1,2との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0051】
図6は、実施の形態3における映像保存過程を示すフローチャートである。まず、新たなマーキングイベントの検出があった場合(S70のY)、その検出タイミングを記録制御部20が記録媒体48へ記録する(S72)。新たなマーキングイベントの検出がなく(S70のN)、新たなトリガーイベントの検出もない場合は(S74のN)、フローの最初に戻り、マーキングイベントの検出があるたびにその検出タイミングを記録する(S70のY、S72)。新たなトリガーイベントの検出があった場合(S74のY)、その検出タイミングがマーキングイベントの検出タイミングからの待機期間内であれば(S76のY)、マーキングイベントの前後からトリガーイベントの前後までを連続した一つの映像データの形で保存対象に設定する(S78)。これが第2の決定方法である。新たなトリガーイベントの検出タイミングがマーキングイベントの検出タイミングからの待機期間内でなければ(S76のN)、時間的に最も近いマーキングイベントの前後とトリガーイベントの前後を別々の映像データとして互いに関連づける形で保存対象に設定する(S80)。これは第3の決定方法の変形例である。「時間的に最も近いマーキングイベント」は、一つのマーキングイベントでもよいし、複数のマーキングイベントでもよい。本実施の形態においては、第1の決定方法は採用されない。
【0052】
以上説明したように各実施の形態によれば、保存対象とする映像データの起点として遡る期間を、マーキングイベントからトリガーイベントまでの実際の期間の長さに応じて長くすることができ、無闇に長時間遡って映像を保存することを回避できる。また、メモリカードの全体容量や残り容量の状況に合わせて待機期間を最適な時間に設定でき、メモリカードの残量枯渇を回避できる。また、マーキングイベントの検出から第1の待機期間を超える長さの時間が経過した後にトリガーイベントが発生した場合でも、事故やトラブルと何らかの関連性を有する可能性があるイベントの映像を事後的に保存対象とすることができる。また、その場合に、マーキングイベントからトリガーイベントまでの間に存在し得る、事故やトラブルとは無関係な長時間の映像を無駄に残すことを回避できる。その結果、事故やトラブルと関連する可能性があるか否かがその検出時点では不明である些細なイベントであっても、そのようなイベントの映像を事後的に幅広く保存対象に含めることができる。また、そのような幅広い保存対象をメモリカードを圧迫することなく効率よく保存することができる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0054】
10 ドライブレコーダ、 12 映像取得部、 16 車両情報取得部、 18 イベント検出部、 20 記録制御部、 22 一時記憶部、 42 カメラ、 48 記録媒体、 60,62,64,65 映像データ、 80 第1待機期間、 82 第2待機期間、 94 第1待機期間、 96 第2待機期間。