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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20230808BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20230808BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20230808BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20230808BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B60C11/00 C
B60C9/18 N
B60C11/00 D
B60C11/00 F
B60C11/01 B
B60C11/03 100A
B60C11/13 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019187502
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021062686
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻林 聡子
(72)【発明者】
【氏名】高田 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-096255(JP,A)
【文献】特開2005-053258(JP,A)
【文献】特開2006-142886(JP,A)
【文献】特開2002-316514(JP,A)
【文献】特開平6-024210(JP,A)
【文献】特開2013-100031(JP,A)
【文献】国際公開第99/037489(WO,A1)
【文献】特開2013-180637(JP,A)
【文献】特開平8-34205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接触するトレッド面を有するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備え、
前記トレッドに周方向に延びるショルダー周方向溝を刻むことにより、前記トレッド面の端を含むショルダー陸部と、軸方向において前記ショルダー陸部の内側に位置するミドル陸部とが構成され、
前記ショルダー陸部が、前記ショルダー周方向溝の壁を構成する溝壁部と、軸方向において前記溝壁部の外側に位置するキャップ部とを備え、
JIS K6264-2に規定の改良ランボーン摩耗試験によって得られる前記溝壁部及び前記キャップ部の摩耗抵抗指数について、前記溝壁部の摩耗抵抗指数が前記キャップ部の摩耗抵抗指数よりも低く、
前記ショルダー周方向溝の外縁から、前記ショルダー陸部の外面における、前記溝壁部と前記キャップ部との境界までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率が20%以上30%以下である、重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー周方向溝の深さが半分になる位置における、前記ショルダー周方向溝の壁から前記溝壁部と前記キャップ部との境界までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率が10%以上20%以下である、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記溝壁部の摩耗抵抗指数の、前記キャップ部の摩耗抵抗指数に対する比率が75%以上85%以下である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッドに、軸方向において前記ショルダー周方向溝の内側に位置し周方向に延びるミドル周方向溝を刻むことにより、軸方向において前記ミドル陸部の内側に位置するクラウン陸部が構成され、
前記ミドル周方向溝の底におけるタイヤの厚さの、前記ショルダー周方向溝の底における前記タイヤの厚さに対する比が1.0以上1.3以下である、請求項1から3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記クラウン陸部の外面形状が半径Rcを有する円弧で表され、前記ショルダー陸部の外面形状が半径Rsを有する円弧で表され、
前記クラウン陸部の外面形状を表す円弧の半径Rcの、前記ショルダー陸部の外面形状を表す円弧の半径Rsに対する比が、1.7以上2.3以下である、請求項4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ベルトが径方向に積層された複数の層で構成され、
前記層が、最も広い軸方向幅を有する第一基準層と、径方向において前記第一基準層の外側に積層された第二基準層とを含み、
軸方向において、前記第一基準層と前記第二基準層との接触面の端が、前記第二基準層の端と、前記ショルダー周方向溝の溝幅の中心との間に位置し、
前記接触面の端から前記ショルダー周方向溝の溝幅の中心までの軸方向距離が5mm以上である、請求項1から5のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ショルダー陸部の軸方向幅の、前記トレッド面の軸方向幅に対する比率が16%以上22%以下である、請求項1から6のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
偏平比の呼びが70%以下である、請求項1から7のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
走行により、タイヤのトレッドに偏摩耗が発生することがある。例えば、トラック、バス等の車両に装着される重荷重用空気入りタイヤには、大きな荷重が作用する。このため、このタイヤには偏摩耗が生じやすい。そこで、偏摩耗の発生を抑えるために、様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-96255号公報
【文献】特開2005-53258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸方向に並列した複数の陸部がトレッドに構成されたタイヤでは、特に車両のフロント軸に装着された場合に、軸方向において外側に位置する陸部、すなわちショルダー陸部において肩落ち摩耗が生じやすい傾向にある。
【0005】
偏摩耗は、タイヤの外観はもちろんのこと、タイヤの接地圧分布等に変化を招来するため、走行性能に影響する。このため、偏摩耗が発生すると、タイヤ交換のタイミングが早まることが懸念される。ショルダー陸部全体が一様に摩耗していくよう、摩耗をコントロールできる技術の確立が求められている。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、偏摩耗の発生が抑えられた、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る重荷重用空気入りタイヤは、路面と接触するトレッド面を有するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える。前記トレッドに周方向に延びるショルダー周方向溝を刻むことにより、前記トレッド面の端を含むショルダー陸部と、軸方向において前記ショルダー陸部の内側に位置するミドル陸部とが構成される。前記ショルダー陸部は、前記ショルダー周方向溝の壁を構成する溝壁部と、軸方向において前記溝壁部の外側に位置するキャップ部とを備える。JIS K6264-2に規定の改良ランボーン摩耗試験によって得られる前記溝壁部及び前記キャップ部の摩耗抵抗指数について、前記溝壁部の摩耗抵抗指数は前記キャップ部の摩耗抵抗指数よりも低い。前記ショルダー周方向溝の外縁から、前記ショルダー陸部の外面における、前記溝壁部と前記キャップ部との境界までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率は20%以上30%以下である。
【0008】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ショルダー周方向溝の深さが半分になる位置における、前記ショルダー周方向溝の壁から前記溝壁部と前記キャップ部との境界までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率は10%以上20%以下である。
【0009】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記溝壁部の摩耗抵抗指数の、前記キャップ部の摩耗抵抗指数に対する比率は75%以上85%以下である。
【0010】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記トレッドに、軸方向において前記ショルダー周方向溝の内側に位置し周方向に延びるミドル周方向溝を刻むことにより、軸方向において前記ミドル陸部の内側に位置するクラウン陸部が構成される。前記ミドル周方向溝の底におけるタイヤの厚さの、前記ショルダー周方向溝の底における前記タイヤの厚さに対する比は1.0以上1.3以下である。
【0011】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記クラウン陸部の外面形状が半径Rcを有する円弧で表され、前記ショルダー陸部の外面形状が半径Rsを有する円弧で表される。前記クラウン陸部の外面形状を表す円弧の半径Rcの、前記ショルダー陸部の外面形状を表す円弧の半径Rsに対する比は1.7以上2.3以下である。
【0012】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ベルトが径方向に積層された複数の層で構成され、前記層が、最も広い軸方向幅を有する第一基準層と、径方向において前記第一基準層の外側に積層された第二基準層とを含む。軸方向において、前記第一基準層と前記第二基準層との接触面の端は、前記第二基準層の端と、前記ショルダー周方向溝の溝幅の中心との間に位置し、前記接触面の端から前記ショルダー周方向溝の溝幅の中心までの軸方向距離は5mm以上である。
【0013】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部の軸方向幅の、前記トレッド面の軸方向幅に対する比率は16%以上22%以下である。
【0014】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、偏平比の呼びは70%以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の重荷重用空気入りタイヤでは、ショルダー陸部全体が一様に摩耗する。このタイヤでは、偏摩耗の発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、タイヤの一部が示された断面図である。
図3図3は、タイヤの一部が示された断面図である。
図4図4は、タイヤの外面形状の一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0018】
本発明においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0019】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0020】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0021】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。
【0023】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0024】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード(図示されず)、カーカス8、ベルト10、一対のクッション層12、及びインナーライナー14を備える。
【0025】
トレッド4は、その外面16、すなわちトレッド面16において路面と接触する。トレッド4は、路面と接触するトレッド面16を有する。符号PCはトレッド面16と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。
【0026】
符号PEは、トレッド面16の端である。なお、タイヤ2において、外観上、トレッド面16の端PEの識別が不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面16の端PEとして定められる。
【0027】
図1において、両矢印WTはトレッド面16の軸方向幅である。トレッド面16の軸方向幅WTは、一方のトレッド面16の端PEから他方のトレッド面16の端PEまでの軸方向距離で表される。
【0028】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0029】
カーカス8は、トレッド4及びサイドウォール6の内側に位置する。図示されないが、カーカス8は一方のビードと他方のビードとを架け渡す。このカーカス8は、ラジアル構造を有する。カーカス8は、少なくとも1枚のカーカスプライ18を備える。このタイヤ2のカーカス8は、1枚のカーカスプライ18からなる。
【0030】
図示されないが、カーカスプライ18は並列された多数のカーカスコードを含む。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。
【0031】
ベルト10は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト10は、カーカス8の径方向外側に位置する。ベルト10は、カーカス8に積層される。
【0032】
ベルト10は、径方向に積層された複数の層20で構成される。このタイヤ2のベルト10は、4枚の層20で構成される。このタイヤ2では、ベルト10を構成する層20の数に特に制限はない。ベルト10の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
【0033】
図示されないが、それぞれの層20は並列された多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0034】
このタイヤ2では、4枚の層20のうち、第一層20Aと第三層20Cとの間に位置する第二層20Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置する第四層20Dが、最小の軸方向幅を有する。
【0035】
図1に示されるように、第二層20B及び第三層20Cの端部はそれぞれゴム層22で覆われる。ゴム層22で覆われたそれぞれの端部の間には、さらに1枚のゴム層22が配置される。このタイヤ2では、第二層20Bの端部と第三層Cの端部との間に、計3枚のゴム層22からなるエッジ部材24が挟み込まれる。これにより、第三層20Cの端部は、径方向外向きに迫り上げられ、第二層20Bの端部から引き離して配置される。このエッジ部材24は架橋ゴムからなる。
【0036】
図1において、符号PNはエッジ部材24の内端である。前述したように、ベルト10は径方向に積層された複数の層20により構成される。このエッジ部材24の内端PNは、このベルト10を構成する第二層20Bと第三層20Cとの接触面の端でもある。
【0037】
それぞれのクッション層12は、ベルト10の端の部分、すなわち、ベルト10の端部において、このベルト10とカーカス8との間に位置する。クッション層12は、架橋ゴムからなる。
【0038】
インナーライナー14は、カーカス8の内側に位置する。インナーライナー14は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー14は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。
【0039】
このタイヤ2のトレッド4は、周方向に連続して延びる溝26、すなわち、周方向溝26によって区画された複数の陸部28を有する。このタイヤ2では、軸方向に並列した、少なくとも4本の周方向溝26がトレッド4に刻まれる。これにより、このトレッド4には、少なくとも5本の陸部28が構成される。図1に示されたタイヤ2では、4本の周方向溝が刻まれ、5本の陸部28がトレッド4に構成される。
【0040】
4本の周方向溝26のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝26s、すなわち、トレッド面16の端PEに近い周方向溝26sがショルダー周方向溝である。このショルダー周方向溝26sの軸方向内側に位置する周方向溝26mが、ミドル周方向溝である。このタイヤ2では、4本の周方向溝26は、一対のショルダー周方向溝26sと、一対のミドル周方向溝26mとで構成される。なお、このタイヤ2のトレッド4に5本以上の周方向溝26が刻まれ、ミドル周方向溝26mの軸方向内側に別の周方向溝が設けられる場合には、この周方向溝がクラウン周方向溝と称される。
【0041】
図1において、両矢印GMはミドル周方向溝26mの溝幅である。溝幅GMは、ミドル周方向溝26mの一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。両矢印DMは、ミドル周方向溝26mの深さである。両矢印GSは、ショルダー周方向溝26sの溝幅である。溝幅GSは、ショルダー周方向溝26sの一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。両矢印DSは、ショルダー周方向溝26sの深さである。
【0042】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ミドル周方向溝26mの溝幅GMはトレッド面16の軸方向幅WTの1~10%が好ましい。ミドル周方向溝26mの深さDMは、13~25mmが好ましい。
【0043】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ショルダー周方向溝26sの溝幅GSはトレッド面16の軸方向幅WTの1~10%が好ましい。ショルダー周方向溝26sの深さDSは、13~25mmが好ましい。
【0044】
図1に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー周方向溝26sは、軸方向において、ベルト10の第四層20Dの端と、第三層20Cの端との間に位置する。このショルダー周方向溝26sは、軸方向において、第四層20Dの端と、エッジ部材24の内端PNとの間に位置する。
【0045】
前述したように、このタイヤ2では、4本の周方向溝26がトレッド4に刻まれることにより、このトレッド4には5本の陸部28が構成される。これら陸部28は、軸方向に並列され、周方向に延びる。
【0046】
5本の陸部28のうち、軸方向において外側に位置する陸部28s、すなわち、トレッド面16の端PEを含む陸部28sがショルダー陸部である。軸方向において、このショルダー陸部28sの内側に位置する陸部28mが、ミドル陸部である。軸方向において、このミドル陸部28mの内側に位置する陸部28cが、クラウン陸部である。このタイヤ2では、このクラウン陸部28cが赤道PC上に位置する。
【0047】
このタイヤ2では、5本の陸部28は、クラウン陸部28cと、一対のミドル陸部28mと、一対のショルダー陸部28sとで構成される。クラウン陸部28cとミドル陸部28mとの間はミドル周方向溝26mである。ミドル陸部28mとショルダー陸部28sとの間は、ショルダー周方向溝26sである。
【0048】
このタイヤ2では、トレッド4にショルダー周方向溝26sを刻むことにより、トレッド面16の端PEを含むショルダー陸部28sと、軸方向においてショルダー陸部28sの内側に位置するミドル陸部28mとが構成される。このトレッド4に、軸方向においてショルダー周方向溝26sの内側に位置し周方向に延びるミドル周方向溝26mをさらに刻むことにより、軸方向においてミドル陸部28mの内側に位置するクラウン陸部28cが構成される。
【0049】
図1において、両矢印WCはクラウン陸部28cの軸方向幅である。この幅WCは、クラウン陸部28cの一方の縁から他方の縁までの軸方向距離により表される。両矢印WMは、ミドル陸部28mの軸方向幅である。この幅WMは、ミドル陸部28mの一方の縁から他方の縁までの軸方向距離により表される。両矢印WSは、ショルダー陸部28sの軸方向幅である。この幅WSは、ショルダー陸部28sの一方の縁から他方の縁までの軸方向距離により表される。
【0050】
このタイヤ2では、操縦安定性及びウェット性能の観点から、ミドル陸部28mの軸方向幅WMの、クラウン陸部28cの軸方向幅WCに対する比は0.9以上が好ましく1.1以下が好ましい。ショルダー陸部28sの軸方向幅WSの、クラウン陸部28cの軸方向幅WCに対する比は1.2以上が好ましく1.6以下が好ましい。
【0051】
図1に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー陸部28sの内縁30は、軸方向において、エッジ部材24の内端PNよりも内側に位置する。ミドル陸部28mの外縁32は、軸方向において、ベルト10の第四層20Dの端よりも外側に位置する。
【0052】
このタイヤ2のトレッド4は架橋ゴムからなる。このトレッド4は、一対の溝壁部34と、キャップ部36とを備える。
【0053】
キャップ部36は、それぞれの溝壁部34の周囲に位置する。図1に示されるように、キャップ部36は溝壁部34を包み込む。図示されないが、このタイヤ2では、キャップ部36の径方向内側にベース部が設けられる。このトレッド4は、キャップ部36の径方向内側に位置するベース部を備える。ベース部と溝壁部34との間に、キャップ部36が位置する。
【0054】
このタイヤ2では、キャップ部36は耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。ベース部は、低発熱性の架橋ゴムからなる。
【0055】
一対の溝壁部34は、軸方向において間隔をあけて配置される。図1に示されるように、それぞれの溝壁部34は、トレッド4の、ショルダー周方向溝26sの部分に設けられる。図1に示されるように、溝壁部34とキャップ部36との境界で表される溝壁部34の断面形状は内向きに先細りである。なお、このタイヤ2では、トレッド4のミドル周方向溝26mの部分には、溝壁部34は設けられない。
【0056】
このタイヤ2では、溝壁部34はトレッド面16の一部なす。キャップ部36は、トレッド面16の他の一部をなす。このタイヤ2のトレッド面16は、溝壁部34とキャップ部36とで構成される。
【0057】
溝壁部34は、ショルダー周方向溝26sの壁38を構成する。このショルダー周方向溝26sの壁38のうち、トレッド面16の端PE側の壁38Sがショルダー周方向溝26sの外壁であり、赤道PC側の壁38Uがショルダー周方向溝26sの内壁である。溝壁部34のうち、ショルダー周方向溝26sの外壁38Sを構成する溝壁部34Sが外側溝壁部であり、このショルダー周方向溝26sの内壁38Uを構成する溝壁部34Uが内側溝壁部である。この溝壁部34は、外側溝壁部34Sと内側溝壁部34Uとを備える。
【0058】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4には、クラウン陸部28cと、一対のミドル陸部28mと、一対のショルダー陸部28sとが構成され、ミドル陸部28mとショルダー陸部28sとの間がショルダー周方向溝26sである。
【0059】
このタイヤ2では、ショルダー陸部28sは、ショルダー周方向溝26sの外壁38Sを構成する溝壁部34、すなわち外側溝壁部34Sと、軸方向においてこの外側溝壁部34Sの外側に位置するキャップ部36とを備える。図1において、符号PSは、ショルダー陸部28sの外面における、溝壁部34とキャップ部36との境界を表す。
【0060】
このタイヤ2では、ミドル陸部28mは、ショルダー周方向溝26sの内壁38Uを構成する溝壁部34、すなわち内側溝壁部34Uと、軸方向においてこの内側溝壁部34Uの内側に位置するキャップ部36とを備える。図1において、符号PMは、ミドル陸部28mの外面における、溝壁部34とキャップ部36との境界を表す。
【0061】
図2は、図1に示されたタイヤの一部を示す。図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0062】
この図2において、符号ESはショルダー周方向溝26sの外壁38Sの端、すなわち、外縁である。この外縁ESは、ショルダー陸部28sの内縁30でもある。両矢印BSは、ショルダー周方向溝26sの外縁ESから、ショルダー陸部28sの外面における、溝壁部34とキャップ部36との境界PSまでの軸方向距離を表す。符号EMは、ショルダー周方向溝26sの内壁38Uの端、すなわち、内縁である。この内縁EMは、ミドル陸部28mの外縁32でもある。両矢印BMは、ショルダー周方向溝26sの内縁EMから、ミドル陸部28mの外面における、溝壁部34とキャップ部36との境界PMまでの軸方向距離を表す。
【0063】
このタイヤ2では、溝壁部34は架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、溝壁部34及びキャップ部36の摩耗抵抗指数について、溝壁部34の摩耗抵抗指数はキャップ部36の摩耗抵抗指数よりも低い。
【0064】
溝壁部34及びキャップ部36の摩耗抵抗指数は、JIS K6264-2に規定の改良ランボーン摩耗試験によって得られる。この摩耗抵抗指数の測定では、溝壁部34のゴム組成物及びキャップ部36のゴム組成物を用いて、それぞれの試験片(架橋ゴム)が準備される。(株)岩本製作所製の改良ランボーン摩耗試験機を用いて、試験片表面の速度40m/分、スリップ率10%、付加力4kN、打粉剤落下量毎分20gの条件で、試験片の摩耗抵抗指数が測定される。
【0065】
このタイヤ2のショルダー陸部28sでは、その内縁30側に外側溝壁部34Sが位置し、軸方向においてこの外側溝壁部34Sの外側にキャップ部36が位置する。溝壁部34の摩耗抵抗指数はキャップ部36の摩耗抵抗指数よりも低いので、このショルダー陸部28sの内縁30部分において摩耗が促される。ショルダー陸部28sにおける摩耗の進み具合に関し、内縁30部分の摩耗の進み具合と、外縁、すなわちトレッド面16の端PEの部分の摩耗の進み具合とがバランスよく整えられるので、ショルダー陸部28s全体が一様に摩耗する。このタイヤ2では、ショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗が生じにくい。
【0066】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝26sの外縁ESから、ショルダー陸部28sの外面における、溝壁部34とキャップ部36との境界PSまでの軸方向距離BSの、ショルダー陸部28sの軸方向幅WSに対する比率(BS/WS)は20%以上30%以下である。
【0067】
比率(BS/WS)が20%以上であるので、外側溝壁部34Sがショルダー陸部28sの内縁30部分における摩耗の進展に効果的に貢献できる。このタイヤ2では、ショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この比率(BS/WS)は22%以上が好ましい。
【0068】
比率(BS/WS)が30%以下であるので、ショルダー陸部28sの外面に占める外側溝壁部34Sの割合が適度に抑えられる。このタイヤ2では、ショルダー陸部28sの内縁30部分における過剰な摩耗(軌道摩耗とも称される。)の発生が抑えられる。この観点から、この比率(BS/WS)は28%以下が好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、ショルダー陸部28s全体が一様に摩耗する。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑えられる。このタイヤ2は、耐偏摩耗性に優れる。
【0070】
図2において、符号PHは、ショルダー周方向溝26sの深さDSが半分になる位置である。実線LHは、このショルダー周方向溝26sの深さDSが半分になる位置PHを通り、軸方向に延びる仮想線である。両矢印BShは、仮想線LHに沿って計測される、外側溝壁部34Sの厚さである。この外側溝壁部34Sの厚さBShが、ショルダー周方向溝26sの深さDSが半分になる位置PHにおける、ショルダー周方向溝26sの壁38(すなわち外壁38S)から溝壁部34(すなわち外側溝壁部34S)とキャップ部36との境界までの軸方向距離である。両矢印BMhは、仮想線LHに沿って計測される、内側溝壁部34Uの厚さである。この内側溝陸部の厚さBMhが、ショルダー周方向溝26sの深さDSが半分になる位置PHにおける、ショルダー周方向溝26sの壁38(すなわち内壁38U)から溝壁部34(すなわち内側溝壁部34U)とキャップ部36との境界までの軸方向距離である。
【0071】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝26sの深さDSが半分になる位置PHにおける、ショルダー周方向溝26sの外壁38Sから外側溝壁部34Sとキャップ部36との境界までの軸方向距離BShの、ショルダー陸部28sの軸方向幅WSに対する比率(BSh/WS)は、10%以上が好ましく、20%以下が好ましい。
【0072】
比率(BSh/WS)が10%以上に設定されることにより、ショルダー陸部28sの内縁30部分における、外側溝壁部34Sのボリュームが効果的に確保される。この外側溝壁部34Sは、ショルダー陸部28sの内縁30部分における摩耗の進展に効果的に貢献できる。このタイヤ2では、ショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗の発生が効果的に抑えられる。この観点から、この比率(BSh/WS)は12%以上がより好ましい。
【0073】
比率(BSh/WS)が20%以下に設定されることにより、ショルダー陸部28sの内縁30部分における、外側溝壁部34Sのボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、ショルダー陸部28sにおける軌道摩耗の発生も効果的に抑えられる。この観点から、この比率(BSh/WS)は18%以下がより好ましい。
【0074】
このタイヤ2のミドル陸部28mでは、その外縁32側に内側溝壁部34Uが位置し、軸方向においてこの内側溝壁部34Uの内側にキャップ部36が位置する。溝壁部34の摩耗抵抗指数はキャップ部36の摩耗抵抗指数よりも低いので、このミドル陸部28mの外縁32部分においても摩耗が促される。このミドル陸部28mの外縁32部分は、ショルダー陸部28sの内縁30部分における摩耗を促す。ショルダー陸部28sにおいて、内縁30部分の摩耗の進み具合と外縁部分の摩耗の進み具合とがバランスよく整えられるので、ショルダー陸部28s全体が一様に摩耗する。このタイヤ2では、ショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗の発生が効果的に抑制される。このミドル陸部28mの外縁32部分は、ショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗の発生を抑制することに貢献する。
【0075】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝26sの内縁EMから、ミドル陸部28mの外面における、溝壁部34とキャップ部36との境界PMまでの軸方向距離BMの、ミドル陸部28mの軸方向幅WMに対する比率(BM/WM)は20%以上が好ましく、30%以下が好ましい。
【0076】
比率(BM/WM)が20%以上に設定されることにより、ミドル陸部28mの外縁32部分がショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗の発生を抑制することに効果的に貢献できる。この観点から、この比率(BM/WM)は22%以上がより好ましい。この比率(BM/WM)が30%以下に設定されることにより、ミドル陸部28mの外縁32部分における過剰な摩耗、すなわち軌道摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この比率(BM/WM)は28%以下がより好ましい。
【0077】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝26sの深さDSが半分になる位置PHにおける、ショルダー周方向溝26sの内壁38Uから溝壁部34とキャップ部36との境界までの軸方向距離BMhの、ミドル陸部28mの軸方向幅WMに対する比率(BMh/WM)は、10%以上が好ましく、20%以下が好ましい。
【0078】
比率(BMh/WM)が10%以上に設定されることにより、ミドル陸部28mの外縁32部分がショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗の発生を抑制することに効果的に貢献できる。この観点から、この比率(BMh/WM)は12%以上がより好ましい。この比率(BMh/WM)が20%以下に設定されることにより、ミドル陸部28mにおける軌道摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この比率(BMh/WM)は18%以下がより好ましい。
【0079】
前述したように、このタイヤ2では、溝壁部34の摩耗抵抗指数はキャップ部36の摩耗抵抗指数よりも低い。具体的には、溝壁部34の摩耗抵抗指数の、キャップ部36の摩耗抵抗指数に対する比率は75%以上が好ましく、85%以下が好ましい。
【0080】
溝壁部34の摩耗抵抗指数の、キャップ部36の摩耗抵抗指数に対する比率が75%以上に設定されることにより、ショルダー陸部28s及びミドル陸部28mにおける軌道摩耗の発生が効果的に抑えられる。この観点から、この比率は78%以上がより好ましい。
【0081】
溝壁部34の摩耗抵抗指数の、キャップ部36の摩耗抵抗指数に対する比率が85%以上に設定されることにより、ショルダー陸部28sの内縁30部分において摩耗が促される。ショルダー陸部28sにおける摩耗の進み具合に関し、内縁30部分の摩耗の進み具合と外縁部分の摩耗の進み具合とがバランスよく整えられるので、ショルダー陸部28s全体が一様に摩耗する。このタイヤ2では、ショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗が生じにくい。この観点から、この比率は83%以下がより好ましい。
【0082】
図3は、図1に示されたタイヤ2の一部を示す。図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0083】
図3において、両矢印S1Tは、ミドル周方向溝26mの底におけるタイヤ2の厚さを表す。両矢印S2Tは、ショルダー周方向溝26sの底におけるタイヤ2の厚さを表す。
【0084】
このタイヤ2では、ミドル周方向溝26mの底におけるタイヤ2の厚さS1Tの、ショルダー周方向溝26sの底におけるタイヤ2の厚さS2Tに対する比(S1T/S2T)は、1.0以上が好ましく、1.3以下が好ましい。
【0085】
比(S1T/S2T)が1.0以上に設定されることにより、ショルダー周方向溝26s付近の接地圧の低下が抑えられる。このタイヤ2では、ショルダー陸部28s及びミドル陸部28mにおける軌道摩耗の発生が効果的に抑えられる。この観点から、この比(S1T/S2T)は1.1以上がより好ましい。この比(S1T/S2T)が1.3以下に設定されることにより、後述する、インフレートによる、赤道PCのリフティング量が確保される。赤道PCのリフティング量と、ショルダー陸部28sの内縁30のリフティング量との差が過剰に大きくなることが抑えられるので、このタイヤ2では、ショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗の発生が効果的に抑えられる。この観点から、この比(S1T/S2T)は1.2以下がより好ましい。
【0086】
このタイヤ2では、ベルト10を構成する複数の層20のうち、最も広い軸方向幅を有する層20Bは第一基準層40とも称され、この第一基準層40の外側に積層される層20は第二基準層42とも称される。このタイヤ2では、最も広い軸方向幅を有する第二層20Bが第一基準層40であり、径方向において、この第二層20Bの外側に積層される第三層20Cが第二基準層42である。ベルト10を構成する複数の層20は、最も広い軸方向幅を有する第一基準層40と、径方向においてこの第一基準層40の外側に積層された第二基準層42とを備える。前述のエッジ部材24の内端PNは、第一基準層40と第二基準層42との接触面の端である。
【0087】
図3において、符号MSはショルダー周方向溝26sの溝幅GSの中心を表す。両矢印ECは、第一基準層40と第二基準層42との接触面の端PNからショルダー周方向溝26sの溝幅GSの中心MSまでの軸方向距離を表す。
【0088】
このタイヤ2では、軸方向において、第一基準層40と第二基準層42との接触面の端PNは、第二基準層42の端とショルダー周方向溝26sの溝幅GSの中心MSとの間に位置し、この接触面の端PNからショルダー周方向溝26sの溝幅GSの中心MSまでの軸方向距離ECは5mm以上が好ましい。これにより、このタイヤ2では、後述する、インフレートによる、ショルダー陸部28sの内縁30のリフティング量が適正に維持されるので、ショルダー陸部28sにおける肩落ち摩耗の発生が効果的に抑えられる。この観点から、この軸方向距離ECは、7mm以上がより好ましい。ベルト10の端部における損傷の発生が抑えられる観点から、この軸方向距離ECは15mm以下が好ましい。
【0089】
図4は、図1に示されたタイヤの一部を示す。この図4には、このタイヤ2の外面形状の一部が示される。図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0090】
図4において、符号ER1はクラウン陸部28cの外面の一方の縁を表し、符号ER2はクラウン陸部28cの外面の他方の縁を表す。符号MRは、ショルダー陸部28sの軸方向幅WSが半分になる外面上の位置である。この位置MRは、ショルダー陸部28sの外面中心である。
【0091】
このタイヤ2のトレッド面16の形状は、複数の円弧で表される。図4において、矢印Rcは、クラウン陸部28cの外面形状を表す円弧の半径である。矢印Rsは、ショルダー陸部28sの外面形状を表す円弧の半径である。なお、次に説明する、半径Rc及び半径Rsの特定には、レーザー変位計を有するタイヤプロファイル測定装置を用いて計測される、正規状態のタイヤ2の外面プロファイルが用いられる。
【0092】
このタイヤ2では、クラウン陸部28cの外面形状を表す円弧の半径Rcは、次のようにして特定される。まず、赤道PC並びに、クラウン陸部28cの外面の縁ER1及び縁ER2を通る、仮想円弧(以下、第一仮想円弧とも称される。)が描かれる。クラウン陸部28cの縁ER1と縁ER2との間において、第一仮想円弧で表される軌跡とクラウン陸部28cの外面とのずれが、この第一仮想円弧の法線に沿って計測される。このずれが、クラウン陸部28cの縁ER1と縁ER2とを結ぶ第一仮想円弧の長さの3%以内にあるとき、この第一仮想円弧の半径がクラウン陸部28cの外面形状を表す円弧の半径Rcとして特定される。なお、赤道PC上に周方向溝が刻まれている場合には、この赤道PC上の周方向溝の両側に位置する2つのクラウン陸部の計4つの縁に基づいて、クラウン陸部28cの外面形状を表す円弧の半径Rcが特定される。
【0093】
このタイヤ2では、ショルダー陸部28sの外面形状を表す円弧の半径Rsは、次のようにして特定される。まず、ショルダー陸部28sの内縁30、ショルダー陸部28sの外面中心MR、及び、トレッド面16の端PE(ショルダー陸部28sの外縁)を通る、仮想円弧(以下、第二仮想円弧とも称される。)が描かれる。ショルダー陸部28sの内縁30とトレッド面16の端PEとの間において、第二仮想円弧で表される軌跡とショルダー陸部28sの外面とのずれが、この第一仮想円弧の法線に沿って計測される。このずれが、ショルダー陸部28sの内縁30とトレッド面16の端PEとを結ぶ第二仮想円弧の長さの3%以内にあるとき、この第二仮想円弧の半径がショルダー陸部28sの外面形状を表す円弧の半径Rsとして特定される。
【0094】
このタイヤ2では、クラウン陸部28cの外面形状を表す円弧の半径Rcの、ショルダー陸部28sの外面形状を表す円弧の半径Rsに対する比(Rc/Rs)は、1.7以上が好ましく、2.3以下が好ましい。これにより、このタイヤ2では、良好な走行性能を維持しつつ、偏摩耗の発生が抑えられる。同様の観点から、クラウン陸部28cの外面形状を表す円弧の半径Rcは、500mm以上が好ましく、1000mm以下が好ましい。
【0095】
以上の説明から明らかなように、本発明の重荷重用空気入りタイヤでは、ショルダー陸部全体が一様に摩耗する。このタイヤでは、偏摩耗の発生が抑えられる。本発明によれば、耐偏摩耗性に優れるタイヤが得られる。特に、本発明は、偏平比の呼びが70%以下のチューブレスタイプの重荷重用空気入りタイヤにおいて、より顕著な効果を奏する。なお、この「偏平比の呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる、「偏平比の呼び」である。
【0096】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【実施例
【0097】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0098】
[実施例1]
図1に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=275/70R22.5)を得た。
【0099】
この実施例1では、ショルダー陸部の軸方向幅WSの、トレッド面の軸方向幅WTに対する比率(WS/WT)は19%であった。
溝壁部の摩耗抵抗指数AWの、キャップ部の摩耗抵抗指数ACに対する比率(AW/AC)は80%であった。
ショルダー周方向溝の外縁ESから、ショルダー陸部の外面における、溝壁部とキャップ部との境界までの軸方向距離BSの、ショルダー陸部の軸方向幅WSに対する比率(BS/WS)は25%であった。
ショルダー周方向溝の深さDSが半分になる位置PHにおける、ショルダー周方向溝の外壁から溝壁部とキャップ部との境界までの軸方向距離BShの、ショルダー陸部の軸方向幅WSに対する比率(BSh/WS)は15%であった。
ショルダー周方向溝の内縁EMから、ミドル陸部の外面における、溝壁部とキャップ部との境界PMまでの軸方向距離BMの、ミドル陸部の軸方向幅WMに対する比率(BM/WM)が25%であった。
ショルダー周方向溝の深さDSが半分になる位置PHにおける、ショルダー周方向溝の内壁から溝壁部とキャップ部との境界までの軸方向距離BMhの、ミドル陸部の軸方向幅WMに対する比率(BMh/WM)は15%であった。
ミドル周方向溝の底におけるタイヤの厚さS1Tの、ショルダー周方向溝の底におけるタイヤの厚さS2Tに対する比(S1T/S2T)は1.15であった。
接触面の端PNからショルダー周方向溝の溝幅の中心MSまでの軸方向距離ECは10mmであった。
クラウン陸部の外面形状を表す円弧の半径Rcの、ショルダー陸部の外面形状を表す円弧の半径Rsに対する比(Rc/Rs)は2.00であった。半径Rcは1000mmであった。
【0100】
[実施例2及び比較例1]
実施例2及び比較例1では、比率(WS/WT)、比率(BS/WS)、比率(BSh/WS)、比率(BM/WM)、比率(BMh/WM)及び距離ECが下記の表1に示される通りに設定された。他は実施例1と同様に設定された。
【0101】
[実施例3及び比較例2]
実施例2及び比較例1では、比率(WS/WT)、比率(BS/WS)、比率(BSh/WS)、比率(BM/WM)及び比率(BMh/WM)が下記の表1に示される通りに設定された。他は実施例1と同様に設定された。
【0102】
[実施例4-5]
実施例4-5では、比率(WS/WT)、比率(BS/WS)、比率(BSh/WS)、比率(BM/WM)、比率(BMh/WM)及び比(S1T/S2T)が下記の表2に示される通りに設定された。他は実施例1と同様に設定された。
【0103】
[比較例3-4]
比較例3-4では、トレッドに、溝壁部は設けられなかった。比較例3-4は従来のタイヤである。比較例3では、比(S1T/S2T)及び距離ECが下記の表2に示される通りに設定された。比較例4では、距離EC、半径Rc及び比(Rc/Rs)が下記の表2に示される通りに設定された。他は実施例1と同様に設定された。
【0104】
[耐偏摩耗性評価(外観状況)]
試作タイヤを正規リムに組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、試験車両(低床バス)の前輪に装着した。この試験車両で一般道路を走行し、耐偏摩耗性を評価した。まず、1.5万km走行した時点で、タイヤのクラウン陸部の外面形状を表す円弧の半径Rc及びショルダー陸部の外面形状を表す円弧の半径Rsを計測し、比(Rc/Rs)を得た。次に、3.0万km走行した時点で、タイヤのクラウン陸部の外面形状を表す円弧の半径Rc及びショルダー陸部の外面形状を表す円弧の半径Rsを計測し、比(Rc/Rs)を得た。この結果が、下記の表1及び2に示されている。
【0105】
この評価では、タイヤの摩耗状態も目視で観察された。この結果が、次の格付けで、下記の表1及び2に示されている。
EVEN・・・ショルダー陸部全体が一様に摩耗していた。
CR・・・トレッド面全体が外向きに凸な形状を有するように摩耗していたが、ショルダー陸部全体がほぼ一様に摩耗していた。
LSD・・・肩落ち摩耗気味ではあったが、ショルダー陸部全体がほぼ一様に摩耗していた。
SD・・・肩落ち摩耗が発生していた。
RSD・・・肩落ち摩耗が顕著に発生していた。
OB・・・ショルダー陸部の内縁に軌道摩耗が発生していた。
【0106】
[耐偏摩耗性評価(摩耗ライフ)]
試作タイヤを正規リムに組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、試験車両(低床バス)の前輪に装着した。この試験車両で一般道路を走行し、新品タイヤに交換するまでの走行距離を測定した。この結果が、指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、偏摩耗が生じにくく耐偏摩耗性に優れる。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
表1及び2に示されるように、実施例では、ショルダー陸部全体が一様に摩耗し、偏摩耗の発生が抑えられている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明された耐偏摩耗性の向上を図る技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0111】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
10・・・ベルト
16・・・トレッド面
20、20A、20B、20C、20D・・・層
24・・・エッジ部材
26、26s、26m・・・周方向溝
28、28s、28m、28c・・・陸部
30・・・ショルダー陸部28sの内縁
32・・・ミドル陸部28mの外縁
34、34S、34U・・・溝壁部
36・・・キャップ部
38、38S、38U・・・壁
40・・・第一基準層
42・・・第二基準層

図1
図2
図3
図4