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特許7327108永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20230808BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230808BHJP
   H01F 13/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H02K15/03 H
H01F41/02 G
H01F13/00 300
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019211316
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021083278
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 成康
(72)【発明者】
【氏名】溝口 徹彦
(72)【発明者】
【氏名】日南田 純平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄亮
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-240224(JP,A)
【文献】特開2016-065763(JP,A)
【文献】特開2014-096450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H01F 41/02
H01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心の中央に回転軸を有し、前記鉄心における前記回転軸の外周側にスロットを有し、前記スロット内に着磁前磁石を備える永久磁石回転子を加熱する際に、前記着磁前磁石の温度分布を把握することができる、永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法であって、
前記鉄心に形成されたフラックスバリヤ内に複数の熱電対を挿入し、前記回転軸の軸方向における複数の位置の各々に前記熱電対を配置することによって、前記回転軸の軸方向および幅方向における加熱時または加熱後の前記着磁前磁石の温度分布を把握する、永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、希土類磁石(ネオジム磁石等)のような保磁力が高い磁石が、モーター等に利用される永久磁石回転子として用いられる場合がある。保磁力が高い磁石は耐熱性が高いという利点を有する。
【0003】
永久磁石回転子に搭載される永久磁石を多極着磁する方法として、例えばコイル通電方式の着磁装置を用いた方法が挙げられる。この着磁装置には、被着磁物である回転子を挿入・抜出可能な穴部が着磁ヨークの中心に設けられ、その穴部の内壁面に軸方向に延びる溝が着磁の極数に応じて形成されている。さらにその溝内には、絶縁性被膜を施した導線が埋設されており、隣り合う導線がつづら折れ状に連続してコイルを形成している。
このような穴部に被着磁物を挿入し、コンデンサに蓄えた電荷を瞬時に放出することでコイルにパルス電流を流し、そのパルス電流によって着磁ヨークに発生した着磁磁場により、回転子に搭載された磁石の着磁を行うことができる。
【0004】
しかしながら、保磁力が高い磁石を着磁するには高い着磁磁場が必要となるため、着磁装置(着磁ヨーク)は大型化し、または着磁のために高い電力が必要になるというデメリットが生じていた。例えば結晶粒径が小さく保磁力が高い磁石は、例えば特許文献1に記載のような方法によって、複数回にわたって着磁することで完全着磁を達成できる可能性もあるが、高い電力が必要となり、また、着磁するために長時間が必要となる。
【0005】
そして、着磁が不十分になってしまうと、特に希土類磁石においては温度上昇時に不可逆減磁が発生しやすい。
そこで、被着磁物を高温に加熱することで着磁に要する着磁磁場を減少させた後に着磁する方法が提案されている。
【0006】
例えば特許文献2には、マンガン-アルミニウム-炭素系合金磁石を120℃~220℃の温度範囲に加熱して複数極の着磁を行うことを特徴とする永久磁石の着磁方法が記載されている。そして、このような着磁方法によれば、従来法ではとても不可能とされた領域まで着磁することが可能となり、外周表面磁束密度の大幅な増加が初めて可能となり、着磁に必要なエネルギーも低下させることができるようになり、着磁電源の小型化も可能となったと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-63555号公報
【文献】特開昭61-121405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、加熱中または加熱後の着磁前磁石は、その部位によって昇温速度が異なるので、磁石全体を十分に着磁するには、磁石全体の温度が均一化して相対的に温度が低い部位がなくなるように、長時間をかけて十分に加熱する必要があった。
ここで、磁石全体の温度を均一化する必要はなく、相対的に温度が低い部分の温度を把握し、その温度において完全着磁することができる着磁磁場を付与すれば、磁石全体を完全着磁することができる。
また、加熱時間は短い方がよく、さらに、加熱時間が短ければ、より低エネルギーにて完全着磁することができるので好ましい。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明の目的は、加熱時または加熱後の着磁前磁石の温度分布を把握することができる、永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は鉄心の中央に回転軸を有し、前記鉄心における前記回転軸の外周側にスロットを有し、前記スロット内に着磁前磁石を備える永久磁石回転子を加熱する際に、前記着磁前磁石の温度分布を把握することができる、永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法であって、前記鉄心に形成されたフラックスバリヤ内に複数の熱電対を挿入し、前記回転軸の軸方向における複数の位置の各々に前記熱電対を配置することによって、前記回転軸の軸方向および幅方向における加熱時または加熱後の前記着磁前磁石の温度分布を把握する、永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱時または加熱後の着磁前磁石の温度分布を把握することができる、永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】永久磁石回転子の概略斜視図である。
図2】永久磁石回転子を形成するために用い得る電磁鋼板を例示した概略斜視図である。
図3】永久磁石回転子(完成図)の概略斜視図である。
図4】熱電対の好適例を示す概略側面図である。
図5】実施例において用いた永久磁石回転子を説明するための概略図である。
図6】実施例における永久磁石回転子内の磁石の温度分布測定結果である。
図7】永久磁石回転子へ熱電対を固定したことを示す図(概略図)である。
図8】永久磁石回転子の加熱・冷却温度変化と着磁温度の把握(100℃着磁の一例)である。
図9】加熱用治具の例を示す写真である。
図10】加熱用治具のイメージ図である。
図11】永久磁石回転子の加熱・冷却温度変化と着磁温度の把握(150℃着磁の一例)である。
図12】永久磁石回転子の冷却速度を測定するときに用いることができる測温治具の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について説明する。
鉄心の中央に回転軸を有し、前記鉄心における前記回転軸の外周側にスロットを有し、前記スロット内に着磁前磁石を備える永久磁石回転子を加熱した後、着磁する場合、加熱時または加熱後に着磁前磁石の温度分布を把握することが重要である。着磁前磁石の全ての部分において均一な温度とするには多大な時間およびエネルギーが必要となってしまうため、着磁前磁石の温度分布を把握したうえで、温度が低い部分が所定の温度以上となっていることを確認したうえで着磁すれば、永久磁石の全ての部分において完全着磁することが可能となるからである。また、着磁前磁石の温度分布を把握することができれば、逆に、必要以上に着磁前磁石を加熱しないようにすることができるので、加熱時間を短縮し、加えて加熱するためのエネルギーを抑制することができる。
【0014】
<永久磁石回転子>
初めに、本発明において加熱および着磁の対象となる永久磁石回転子について、図を用いて説明する。
本発明において加熱および着磁の対象となる永久磁石回転子1(以下では「回転子1」ともいう)は、例えば図1に示すように、鉄心10の中央に回転軸12を有し、鉄心10における回転軸12の外周側にスロット14を有し、さらにスロット14内に着磁前磁石3を備える。さらに、鉄心10はフラックスバリヤ15を有する。
【0015】
鉄心10の中央には回転軸12を貫通させるための孔11が形成されており、この孔11に貫通された回転軸12は鉄心10に固定されている。
【0016】
鉄心10は、例えば図2に示すように、所定の形状(円形等)に打ち抜かれた電磁鋼板5を複数積層し、各々の主面を固着して形成することができる。電磁鋼板5は、例えば厚さが350μm程度のものを用いることができる。
鉄心10は電磁鋼板5の他、例えば軟磁性板材を複数積層し、各々の主面を固着して形成することもできる。
【0017】
鉄心10は、中心軸12の外周側において周方向に略等間隔で極数分、設けられたスロット14を有している。図1に例示する鉄心は4つのスロット14を有している。
スロット14は着磁前磁石3を挿入するための孔であり、回転軸12の軸方向に平行な方向が深さ方向となるように形成されている。
そして、スロット14の各々の中に、着磁前磁石3が挿入される。図1に例示する態様の場合、4つの着磁前磁石3が、4つのスロット14の各々の内部へ配置される。
【0018】
また、鉄心10はフラックスバリヤ15を有する。フラックスバリヤ15はスロット14と同様に、回転軸12の軸方向に平行な方向が深さ方向となるように形成されている。
後述するように、このフラックスバリヤ15へ複数の熱電対を挿入することができる。
【0019】
スロット14内に着磁前磁石3を挿入した後、図3に示すように、回転軸12に平行な方向における鉄心10の少なくとも一方の面(図3においては鉄心10の両端面)に、着磁前磁石3が回転軸12と平行な方向へ抜けてしまうことを防止するための端板16が取り付けられる。
【0020】
ここで、端板16にはフラックスバリヤ15へ通じる孔17を形成する。回転子1の外側から孔17を介してフラックスバリヤ15の内部へ、複数の熱電対を挿入する。
【0021】
なお、着磁前磁石3の厚さは、スロット14に確実に挿入できるように寸法公差を考慮してそれよりも小さくなければならない。
着磁前磁石3としては結晶粒径0.1~3μm程度のネオジム磁石が好適である。ダイドー電子株式会社製PLP磁石やMQ3熱間圧延磁石を用いることができる。
【0022】
このような鉄心10に形成されたスロット14に着磁前磁石3を装着し、端板16を取り付けた後、回転子1の外側から孔17を介してフラックスバリヤ15の内部へ、複数の熱電対を挿入する。また、スロット14の内面と着磁前磁石3の外面との隙間に複数の熱電対を挿入してもよい。
鉄心10に複数のフラックスバリヤ15が存在する場合、着磁前磁石3の表面近くに位置するフラックスバリヤを選択して、ここへ熱電対を挿入することが好ましい。
複数のフラックスバリヤへ熱電対を挿入してもよい。
【0023】
挿入する熱電対の数は特に限定されないが、3~7本程度であってよく、5本程度であってよい。
【0024】
フラックスバリヤ15の内部またはスロット14の内面と着磁前磁石3の外面との隙間へ複数の熱電対を挿入し、各々の熱電対によって、異なる箇所の温度を測定できるように各熱電対を配置する。例えば、フラックスバリヤ15の深さ方向を均等に区切り、それぞれの箇所に熱電対を配置することができる。このようにフラックスバリヤ15を配置すると、着磁前磁石3における回転軸の軸方向および幅方向における温度分布を測定することができる。
また、細部への複数測定箇所を必要とする場合は、例えば図4に示すような、同軸状でかつ複数本が挿入されている熱電対を活用するとよい。具体的には、安立計器株式会社のSEセンサーなどが挙げられる。これは複数個所の磁石温度である加熱・冷却傾向が正確かつ再現性よく測定が実現でき、最適な着磁温度を可能とする(後述する図8参照)
【0025】
ここで、温度測定箇所を増すほど、熱電対とデータ処理部とを接続する補償導線も増す。また、測定環境や着磁工程によっては、導線の距離も長くなる場合がある。すると、一般的に抵抗値が大きくなり、正確な測定ではなくなる。
そこで、無線温度ロガーを用いて(例:ADVANTEST WM1000,2000)、距離のデメリットを無くすことができる。また、導線の取り回しや回転物への対応も容易となる。そして、永久磁石回転子への加熱に対して回転加熱も可能となり、均一性にも寄与できる。
【0026】
また、発振器内部には、電池が内蔵されており所望とする耐熱温度を有する。ただし、高い温度下で使用する場合は、ベークライトのような耐熱樹脂内部に収納し内壁は断熱材を施しておくとよい。
【0027】
前述のように、比較的、短い時間、永久磁石回転子を加熱すると着磁前磁石の温度は均一にはならないが、その温度分布内における最低温度が特定温度以上であり、かつ、最高温度が特定温度以下となるように調整する。例えば着磁前磁石における永久磁石回転子の両端部に近い部分は温度が低くなる傾向があるが、この両端部の温度が特定温度以上かつ特定温度以下となるように着磁前磁石を加熱する。
なお、着磁前磁石を加熱した後、加熱後の着磁前磁石を加熱部内から取り出して、着磁部内へセットする際に、加熱後の着磁前磁石の温度は、ある程度(3~8℃程度)、低下する。よってこの低下温度の分だけ高い温度に着磁前磁石を加熱することが好ましい。そうすることで、着磁する際に所望の温度にて着磁することができる。
このようにして加熱後の着磁前磁石における最低温度が特定温度以上となるように、かつ、最高温度が特定温度以下となるように永久磁石回転子を加熱した後、着磁部にて着磁すると、所定の温度に到達したことを確認し、かつ、過剰とならないように効率的に着磁前磁石を加熱することができ、全部位において十分に着磁されている永久磁石を得ることができる。
【実施例1】
【0028】
実施例1について説明する。本発明に以下に説明する実施例1に限定されない。
初めに図5に示す永久磁石回転子を用意した。図5(a)は永久磁石回転子20(以下では「回転子20」ともいう)における回転軸22と平行方向における断面図(概略断面図)であり、図5(b)は回転子20における鉄心24の端面24aを軸方向から見た図(概略図)であり、図5(c)は回転子20に熱電対を挿入した状態を示す概略図である。なお、図5では端板の記載を省略しているが、実際は、図1に例示した孔17に相当する貫通孔が形成された端板を回転子20は有する。また、図5(b)では4つのスロット26と、フラックスバリヤ等へ挿入する4つの熱電対の挿入位置(H1、H2、H3、H4)を示しているが、図5(a)では理解を容易にするため、1つの挿入位置Hのみを記し、その他のフラックスバリヤおよびスロットは記載を省略している。
【0029】
ここでは、スロット14に合わせた着磁前磁石が挿入される。
【0030】
そして、4つの挿入位置(H1、H2、H3、H4)の各々に、5本の熱電対(合計20本)を挿入した。そして、挿入位置(H1、H2、H3、H4)の各々において、回転軸22の軸方向における5か所の測定位置(A1、A2、A3、A4、A5)の各々に熱電対を配置した。
ここで測定位置A1は鉄心24の端面24aから深さ1mmにおける温度を測定できる位置であり、測定位置A2は鉄心24の端面24aから深さ15mmにおける温度を測定できる位置であり、測定位置A3は鉄心24の端面24aから深さ29mmにおける温度を測定できる位置であり、測定位置A4は鉄心24の端面24aから深さ43mmにおける温度を測定できる位置であり、測定位置A5は鉄心24の端面24aから深さ57mmにおける温度を測定できる位置である。
【0031】
このような回転子20を加熱炉に挿入して加熱し、図6に示す結果を得た。
図6においてX軸は鉄心24の端面24aからの深さを示しており、Y軸は熱電対によって測定された各測定位置(A1、A2、A3、A4、A5)における温度を示しており、回転子内部の磁石に対する温度分布を示している。
【0032】
図6から端面24aおよび端面24bに近い位置、すなわち、測定位置A1および測定位置A5の温度は他の測定位置に対して低くなることが分かった。また、4つの熱電対挿入箇所(H1、H2、H3、H4)毎に、ある程度の温度差が存在することがわかった。
具体的には、今回の実施例の場合であれば、挿入箇所H3における測定位置A5の温度が最も低くなり、挿入箇所H2における測定位置A3の温度が最も高くなった。
このような場合、この回転子20を着磁するのであれば、熱電対挿入箇所H3における測定位置A5の温度が特定温度以上となるように、かつ、熱電対挿入箇所H2における測定位置A3の温度が特定温度以下となるように回転子20を加熱した後、着磁部にて着磁すると全部位において十分に着磁されている永久磁石を得ることができる。
【0033】
また、このような本発明によって、着磁前磁石における各部位の温度が所定の温度に到達したことを確認でき、さらに、温度が過剰とならないように加熱することができるので、効率的に着磁前磁石を加熱することができる。
【実施例2】
【0034】
実施例2について説明する。本発明に以下に説明する実施例2に限定されない。
【0035】
永久磁石回転子の高温着磁(加熱着磁)は、永久磁石回転子の温度が重要である。一般的には、表面温度での管理となるが、磁石材料がより難着磁磁石となるほど、永久磁石回転子内部に挿入された磁石単体の温度が完全着磁を左右する。
よって、一般的な熱電対で測温するが、複数本の熱電対を磁石近傍の隙間にかつ着磁に影響しない位置へ複数本を挿入して、永久磁石回転子内部の磁石温度分布を把握することは困難である。
そこで、複数測定箇所を必要とする場合は、同軸状でかつ複数本が挿入されている熱電対を活用するとよい。
例として、安立計器株式会社のSEセンサーなどがある。この様なφ2.1に5本の熱電対を製作し、フラックスバリヤなどの隙間を利用し、永久磁石回転子の軸方向および幅方向における磁石温度を正確に測定可能とした(図4図5)。
磁石近傍の温度をより正確に測定するには、熱電対を磁石面に当て、インサート治具で熱電対を固定するとよい。インサート治具は耐熱性がある樹脂などが、電磁鋼板を痛める心配がなく好ましい(図7
その結果、複数個所の磁石温度である加熱・冷却傾向が正確かつ再現性よく測定が実現でき、最適な着磁温度を可能とする(図8)。
さらに、困難な永久磁石回転子内部の温度が把握できたことにより、永久磁石回転子外周部の温度との相関が得られる。よって、所望とする磁石温度にするには、外部温度を制御することも可能であり量産工程での温度管理が容易となり適応しやすい。なお、表示温度は無線化すると利便性が向上する。
【0036】
永久磁石回転子を一定温度で加熱する手法に、恒温槽がある。恒温槽は、循環式ファン付き恒温槽を用いる。たとえば、アズワン製(6F450B)があり炉内温度分布が良く、永久磁石回転子を均一に加熱してくれる。
【0037】
炉内に永久磁石回転子入れる際は、治具を用いて横置きに設置した。これは、熱電対と炉壁の干渉を避けるためである。また、治具を用いることで安定性は増し、永久磁石回転子の取り出しも容易である。さらに、治具の材質は熱伝導がよく安価なアルミ製を用いた。この状態にて、各部位の温度上昇変化を採取する(図9図10)。
アルミ治具は、恒温槽内で予備加熱しておくとスムーズに永久磁石回転子の温度を上げることができる。
【0038】
高温着磁(加熱着磁)の狙いとなる温度以上に恒温槽で加熱する。
例えば、100℃で着磁したい場合は、110℃程度に恒温槽を加熱するとよい(図8)。理由は、(1) 永久磁石回転子の長手方向から見た中央部付近の磁石部位の温度を確実に100℃に到達させるためである。この現象は、本件の熱電対を用いたことで永久磁石回転子内部の磁石温度分布を測定できたことによる効果である。(2)着磁時は、耐電圧の要因から着磁ヨークを加熱できないため、永久磁石回転子を恒温槽から取り出しセットする。この時の温度低下速度と着磁温度のタイミングをとる点からも必要な処置である。このような測定で、さらに温度を高めての高温着磁(加熱着磁)の制御も可能となる(図11)。
【0039】
永久磁石回転子が所定温度に到達後、恒温槽から取り出す。そして、着磁ヨークにセットするが、適正な温度と着磁タイミングの把握や着磁ヨークへの実験的な温度負荷を避けるために以下の手法を用いた。
熱を奪いづらい材質の治具に永久磁石回転子を置く。例えば、安価な木材などがある。そして、置き方は縦置きとした(図12)。
縦置きにする理由には、円周方向と縦方向の冷却を一律にするために空気以外の影響を排除するためである。また、着磁ヨークを縦型としたため同一条件に近い再現をするためでもある。
【0040】
上記手法により、所定の着磁温度まで降下する温度推移は、永久磁石回転子の上下部位がほぼ均一で、かつもっとも早い。そこで、この上下部位の温度が狙いの着磁温度に到達したタイミングで着磁をすることが好ましい(図8図11)。
【0041】
着磁後は、冷却の温度を下げて次工程にスムーズに進めるために冷却をする必要がある。工程のタクトタイムを短くするには、急冷する方法がある。例えば、圧縮空気や冷風を当てることが良い。この冷却時間も、本件の熱電対にて温度推移が得られ、数分間でハンドリングできる温度と熱減磁を抑制できる。この時は、木製治具に設置することで均一な冷却推移を得られる(図12)。
【0042】
以上に説明した本発明によれば、加熱時または加熱後の着磁前磁石の温度分布を把握することができる、永久磁石回転子内の磁石の温度分布計測方法を提供することができる。
この手法から得られたデータを用いれば、永久磁石回転子の表面温度を熱電対1箇所または非接触型の表面温度計の温度と相関を得られて、量産工程での温度と着磁性の管理が容易であり生産性も向上する。
【符号の説明】
【0043】
1 回転子
3 着磁前磁石
5 電磁鋼板
10 鉄心
11 孔
12 回転軸
14 スロット
15 フラックスバリヤ
16 端板
17 孔
20 回転子
22 回転軸
24 鉄心
24a、24b 端面
26 スロット
1、H2、H3、H4 熱電対挿入位置
1、A2、A3、A4、A5 測定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12