(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】管理装置、電力調整可能量推定方法、コンピュータプログラム、及びシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20230808BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/00 170
(21)【出願番号】P 2019213421
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145207
【氏名又は名称】酒本 裕明
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】宮田 大士
(72)【発明者】
【氏名】岡野 真一
(72)【発明者】
【氏名】相谷 菜那
(72)【発明者】
【氏名】田村 潤平
(72)【発明者】
【氏名】東 秀訓
(72)【発明者】
【氏名】富村 栄治
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-207712(JP,A)
【文献】特開2019-054647(JP,A)
【文献】特開2018-033213(JP,A)
【文献】特開2019-170037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置であって、
複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、
前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、
を備え
、
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯の電力需要を増加させる上げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出する前記処理は、
前記電力需要実績データに基づいて、前記実施時間帯における充電可能量予測値を算出し、
前記充電可能量予測値に基づいて、前記上げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
管理装置。
【請求項2】
少なくとも一つの前記デマンドレスポンス実施シナリオは、複数の前記デマンドレスポンス実施シナリオである
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
複数の前記デマンドレスポンス実施シナリオそれぞれは、前記デマンドレスポンスの開始時間及び持続時間の少なくともいずれか一つが異なる
請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記上げデマンドレスポンスは、少なくとも第1時間帯における電力需要を、前記デマンドレスポンスの前記実施時間帯である第2時間帯にシフトさせることを含み、
前記電力調整可能量を算出する前記処理は、少なくとも前記第1時間帯を含む時間帯における電力需要予測値を算出することをさらに含み、
前記上げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量は、前記電力需要予測値及び前記充電可能
量予測値に基づいて算出される
請求
項1に記載の管理装置。
【請求項5】
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要を低下させる下げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出する前記処理は、
前記電力需要実績データに基づいて、前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要予測値を算出し、
前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における前記電力需要予測値に基づいて、前記下げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記電力調整可能量に基づいて設定された電力調整の目標値と、前記デマンドレスポンスの持続中における電力調整の実績値と、に基づいて、前記目標値と前記実績値との差分が小さくなるように、前記デマンドレスポンスの持続中における複数の前記需要家装置の電力需要を調整する制御部を更に備える
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項7】
複数の前記需要家装置それぞれの電力需要を調整することは、前記デマンドレスポンスの持続中において、複数の前記需要家装置のうち、電力を消費させる対象需要家装置の数を増加又は減少させることを含む
請求項
6に記載の管理装置。
【請求項8】
前記需要家装置は、蓄電池を含む
請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項9】
前記需要家装置は、定置型の蓄電池を含む
請求項
8に記載の管理装置。
【請求項10】
デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置であって、
複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、
前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、
を備え、
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要を低下させる下げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出する前記処理は、
前記電力需要実績データに基づいて、前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要予測値を算出し、
前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における前記電力需要予測値に基づいて、前記下げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
管理装置。
【請求項11】
デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置であって、
複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、
前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、
前記電力調整可能量に基づいて設定された電力調整の目標値と、前記デマンドレスポンスの持続中における電力調整の実績値と、に基づいて、前記目標値と前記実績値との差分が小さくなるように、前記デマンドレスポンスの持続中における複数の前記需要家装置の電力需要を調整する制御部とを備える
管理装置。
【請求項12】
複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データを記憶部に格納し、
前記電力需要実績データを前記記憶部から読みだしたプロセッサが、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する
ことを含
み、
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯の電力需要を増加させる上げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出することは、
前記電力需要実績データに基づいて、前記実施時間帯における充電可能量予測値を算出し、
前記充電可能量予測値に基づいて、前記上げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
電力調整可能量推定方法。
【請求項13】
複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データを記憶部に格納し、
前記電力需要実績データを前記記憶部から読みだしたプロセッサが、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する
ことを含み、
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要を低下させる下げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出することは、
前記電力需要実績データに基づいて、前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要予測値を算出し、
前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における前記電力需要予測値に基づいて、前記下げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
電力調整可能量推定方法。
【請求項14】
複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データを記憶部に格納し、
前記電力需要実績データを前記記憶部から読みだしたプロセッサが、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出し、
前記電力調整可能量に基づいて設定された電力調整の目標値と、前記デマンドレスポンスの持続中における電力調整の実績値と、に基づいて、前記目標値と前記実績値との差分が小さくなるように、前記デマンドレスポンスの持続中における複数の前記需要家装置の電力需要を調整すること
を含む
電力調整可能量推定方法。
【請求項15】
プロセッサに、
複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行させる
コンピュータプログラム
であって、
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯の電力需要を増加させる上げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出する前記処理は、
前記電力需要実績データに基づいて、前記実施時間帯における充電可能量予測値を算出し、
前記充電可能量予測値に基づいて、前記上げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
コンピュータプログラム。
【請求項16】
プロセッサに、
複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行させる
コンピュータプログラムであって、
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要を低下させる下げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出する前記処理は、
前記電力需要実績データに基づいて、前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要予測値を算出し、
前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における前記電力需要予測値に基づいて、前記下げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
コンピュータプログラム。
【請求項17】
プロセッサに、
複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行させる
コンピュータプログラムであって、
プロセッサに、前記電力調整可能量に基づいて設定された電力調整の目標値と、前記デマンドレスポンスの持続中における電力調整の実績値と、に基づいて、前記目標値と前記実績値との差分が小さくなるように、前記デマンドレスポンスの持続中における複数の前記需要家装置の電力需要を調整する処理を更に実行させる
コンピュータプログラム。
【請求項18】
デマンドレスポンス統括装置と、
デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、
複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、
前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、
を備え、前記電力調整可能量を前記デマンドレスポンス統括装置へ送信するよう構成されて
おり、
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯の電力需要を増加させる上げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出する前記処理は、
前記電力需要実績データに基づいて、前記実施時間帯における充電可能量予測値を算出し、
前記充電可能量予測値に基づいて、前記上げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
システム。
【請求項19】
デマンドレスポンス統括装置と、
デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、
複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、
前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、
を備え、前記電力調整可能量を前記デマンドレスポンス統括装置へ送信するよう構成されており、
前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要を低下させる下げデマンドレスポンスを含み、
前記電力調整可能量を算出する前記処理は、
前記電力需要実績データに基づいて、前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要予測値を算出し、
前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における前記電力需要予測値に基づいて、前記下げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出する
ことを含む
システム。
【請求項20】
デマンドレスポンス統括装置と、
デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、
複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、
前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、
を備え、前記電力調整可能量を前記デマンドレスポンス統括装置へ送信するよう構成されており、
前記電力調整可能量に基づいて設定された電力調整の目標値と、前記デマンドレスポンスの持続中における電力調整の実績値と、に基づいて、前記目標値と前記実績値との差分が小さくなるように、前記デマンドレスポンスの持続中における複数の前記需要家装置の電力需要を調整する制御部を更に備える
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理装置、電力調整可能量推定方法、コンピュータプログラム、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蓄電装置の充電計画を作成するエネルギー管理システムを開示している。特許文献2は、電気自動車の充電実績に基づいて、使用電力量の予測値を求めるデマンドレスポンス要請装置を開示している。デマンドレスポンスは、電力の需給バランスをとるため、需要家における電力消費を調整することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-188031号公報
【文献】特開2017-70211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デマンドレスポンスの実施の際には、デマンドレスポンスにおける電力調整の目標を適切に決定すべきである。電力調整の目標を適切に決定するには、デマンドレスポンスの実施に先立って、電力調整可能量の把握が望まれる。ここで、電力調整可能量は、将来、デマンドレスポンスを実施することで、調整可能であると予想される電力量である。電力需要は時間的に変化するため、電力調整可能量は、個々の需要家における電力消費によって変化するし、デマンドレスポンスがいつ実施されるのかといった実施シナリオに応じても、変化する。
【0005】
したがって、電力調整の目標を適切に決定するため、デマンドレスポンスの実施シナリオに応じた適切な電力調整可能量を推定することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある側面は、デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置である。開示の管理装置は、複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、を備える。
【0007】
本開示の他の側面は、電力調整可能量推定方法である。開示の電力調整可能量推定方法は、複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データを記憶部に格納し、前記電力需要実績データを前記記憶部から読みだしたプロセッサが、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出することを含む。
【0008】
本開示の他の側面は、コンピュータプログラムである。開示のコンピュータプログラムは、プロセッサに、複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行させる。
【0009】
本開示の他の側面は、システムである。開示のシステムは、デマンドレスポンス統括装置と、デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置と、を備え、前記管理装置は、複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、を備え、前記電力調整可能量を前記デマンドレスポンス統括装置へ送信するよう構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、デマンドレスポンスの実施シナリオに応じた電力調整可能量が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、デマンドレスポンスのためのシステム構成図である。
【
図2】
図2は、EVサーバのハードウェア構成図である。
【
図3】
図3は、EVサーバのソフトウェア構成図である。
【
図4】
図4は、デマンドレスポンスのシーケンスである。
【
図5】
図5は、充電量積算値の算出の説明図である。
【
図6】
図6は、充電量可能量テーブルの構成図である。
【
図7】
図7は、電力調整可能量の算出の説明図である。
【
図8】
図8は、調整可能量テーブルの構成図である。
【
図9】
図9は、充電可能量テーブルの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
【0013】
(1)実施形態に係る管理装置は、デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する。管理装置は、複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、を備える。この場合、電力調整可能量は、電力需要実績データに基づいて、デマンドレスポンス実施シナリオに応じて算出される。
【0014】
(2)少なくとも一つの前記デマンドレスポンス実施シナリオは、複数の前記デマンドレスポンス実施シナリオであるのが好ましい。この場合、複数のデマンドレスポンス実施シナリオから、適切なデマンドレスポンス実施計画を策定することができる。
【0015】
(3)複数の前記デマンドレスポンス実施シナリオそれぞれは、前記デマンドレスポンスの開始時間及び持続時間の少なくともいずれか一つが異なるのが好ましい。この場合、開始時間及び持続時間の少なくともいずれか一つが異なる複数の実施シナリオから、適切なデマンドレスポンス実施計画を策定することができる。
【0016】
(4)前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯の電力需要を増加させる上げデマンドレスポンスを含むことができる。前記電力調整可能量を算出する前記処理は、前記電力需要実績データに基づいて、前記実施時間帯における充電可能量予測値を算出し、前記充電可能量予測値に基づいて、前記上げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出することを含むことができる。この場合、電力調整可能量は、第実施時間帯における充電可能量予測値から算出される。
【0017】
(5)前記上げデマンドレスポンスは、少なくとも第1時間帯における電力情報を、前記デマンドレスポンスの前記実施時間帯である第2時間帯にシフトさせることを含むことができる。前記電力調整可能量を算出する前記処理は、少なくとも前記第1時間帯を含む時間帯における電力需要予測値を算出することをさらに含むことができる。前記上げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量は、前記電力需要予測値及び前記充電可能予測値に基づいて算出されるのが好ましい。この場合、電力調整可能量は、第1時間帯における電力需要予測値、及び、第2時間帯における充電可能量予測値から算出される。
【0018】
(6)前記デマンドレスポンスは、前記デマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要を低下させる下げデマンドレスポンスを含むことができる。前記電力調整可能量を算出する前記処理は、前記電力需要実績データに基づいて、前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要予測値を算出し、前記下げデマンドレスポンスの実施時間帯における前記電力需要予測値に基づいて、前記下げデマンドレスポンスにおける前記電力調整可能量を算出することを含むことができる。
【0019】
(7)管理装置は、制御部を更に備えることができる。制御部は、前記電力調整可能量に基づいて設定された電力調整の目標値と、前記デマンドレスポンスの持続中における電力調整の実績値と、に基づいて、前記目標値と前記実績値との差分が小さくなるように、前記デマンドレスポンスの持続中における複数の前記需要家装置の電力需要を調整する。この場合、実績値を目標値に近づけることができる。
【0020】
(8)複数の前記需要家装置それぞれの電力需要を調整することは、前記デマンドレスポンスの持続中において、複数の前記需要家装置のうち、電力を消費させる対象需要家装置の数を増加又は減少させることを含むことができる。この場合、対象需要家装置の増減により、電力需要を調整できる。
【0021】
(9)前記需要家装置は、蓄電池を含むのが好ましい。この場合、蓄電池への充電を電力需要として考えることができる。
【0022】
(10)前記需要家装置は、定置型の蓄電池を含むのが好ましい。ただし、蓄電池は、定置型以外の蓄電池であってもよい。なお、需要家装置は、電力需要を制御可能な装置であればよく、蓄電池以外の装置であってもよい。
【0023】
(11)実施形態に係る電力調整可能量推定方法は、複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データを記憶部に格納し、前記電力需要実績データを前記記憶部から読みだしたプロセッサが、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出することを含む。
【0024】
(12)実施形態に係るコンピュータプログラムは、プロセッサに、複数の需要家装置それぞれの電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行させる。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な、非一時的な記憶媒体に格納される。
【0025】
(13)実施形態に係るシステムは、デマンドレスポンス統括装置と、デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置と、を備える。前記管理装置は、複数の前記需要家装置それぞれの電力需要実績データが格納される記憶部と、前記電力需要実績データに基づいて、少なくとも一つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電力調整可能量を算出する処理を実行する算出部と、を備える。前記管理装置は、前記電力調整可能量を前記デマンドレスポンス統括装置へ送信するよう構成されている。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
【0027】
図1は、デマンドレスポンスのためのシステム10を示している。システム10は、バーチャルパワープラント(Virtual Power Plant:VPP)サーバ30と、需要家装置サーバ100と、を備える。
【0028】
VPPサーバ30は、複数の発電関連機器が一つの発電所として機能するように管理する。複数の発電関連機器は、例えば、系統運用者21の機器、再生可能エネルギー発電事業者22の機器、電力の小売事業者23の機器を、含む。VPPサーバ30は、デマンドレスポンス(Demand Response:DR)を統括する装置(デマンドレスポンス統括装置)としても動作する。
【0029】
実施形態のVPPサーバ30は、需要家装置サーバ100から送信される電力調整可能量に基づいて、電力調整の目標値を決定する。また、VPPサーバ30は、デマンドレスポンスの開始時間及び持続時間も決定する。デマンドレスポンスにおける電力調整の目標値、デマンドレスポンスの開始時間及び持続時間は、調整依頼として、需要家装置サーバ100へ送信される。
【0030】
需要家装置サーバ100は、複数の需要家装置における充電等を管理する管理装置として動作する。需要家装置は、例えば、定置型の蓄電池である。定置型の蓄電池は、例えば、家庭に設置され、家庭内の電気機器へ電力を供給する。需要家装置は、電気自動車(Electric Vehicle:EV)70であってもよい。以下では、EV70が備える蓄電池(図示省略)への充電を、需要家装置における電力消費の例として説明する。実施形態の需要家装置サーバ100は、EV充電制御支援のための制御を実行する。以下では、需要家装置サーバ100を、EVサーバ100という。
【0031】
実施形態のEVサーバ100は、電力調整可能量を推定し、電力調整可能量をVPPサーバ30へ送信する。また、EVサーバ100は、VPPサーバ30から受信した調整依頼に基づいて、EV70の充電制御をする。実施形態においては、EVサーバ100は、充電のためにEV70に接続されたEVスイッチ60における充電動作を制御する。充電動作の制御のため、EVサーバ100は、EVスイッチ60へ充電制御指令を送信する。EVサーバ100は、電力調整の実績値が、電力調整の目標値に近づくようにフィードバック制御をする。
【0032】
フィードバック制御に用いられる電力調整の実績値を把握するため、EVサーバ100は、EV70への充電電力を示す電力情報を、EVスイッチ60から取得する。EV70がEVスイッチ60に接続されている場合、EVサーバ100は、例えば、1分周期で、電力情報を取得できる。なお、EVサーバ100は、EV70から、電力情報を取得してもよい。
【0033】
EVサーバ100は、テレマティクスサーバ50に接続されている。テレマティクスサーバ50は、EV70などの車両から車両情報(プローブデータ)を収集する。車両情報は、EV70に搭載された蓄電池の蓄電残量(State of Charge:SoC)を含む。EVサーバ100は、テレマティクスサーバ50から、EVサーバ100の管理下にあるEV70の車両情報を取得する。EVサーバ100は、例えば、1時間周期で車両情報を取得できる。
【0034】
図2に示すように、EVサーバ100は、プロセッサ101及びプロセッサ101に接続された記憶部102を有するコンピュータによって構成されている。記憶部102には、コンピュータをEVサーバ100として機能させるコンピュータプログラム105が格納されている。プロセッサ101は、記憶部102に格納されたコンピュータプログラム105を読み出して実行する。コンピュータプログラム105は、プロセッサ101に、後述する様々な処理を実行させるコードを有している。なお、実施形態の記憶部102は、一時記憶装置及び二次記憶装置を含む。記憶部102は、三次記憶装置を含んでもよい。
【0035】
記憶部102には、SoCモデル112が格納される。SoCモデル112は、複数のEV70それぞれに搭載された蓄電池の充電状態(SoC)を示す。記憶部102には、満充電判定データ122が格納される。満充電判定データ122は、複数のEV70それぞれに搭載された蓄電池が満充電か否かを示す判定データが格納される。記憶部102には、電力統計モデル132が格納される。
図3に示すように、実施形態の電力統計モデル132は、一例として、充電実績データベース133、充電可能量テーブル134、及び調整可能量テーブル135を有する。
【0036】
EVサーバ100は、外部の装置との通信を担うインタフェース103を更に備える。外部の装置は、例えば、VPPサーバ30、ユーザ端末40、テレマティクスサーバ50、又はEVスイッチ60である。
【0037】
図3は、EVサーバ100において実行される処理を示す。
図3に示す処理は、コンピュータプログラム105に従い、プロセッサ101によって実行される。
【0038】
EVサーバ100は、SoCモデル112の更新処理を実行する。つまり、EVサーバ100のプロセッサ101は、SoCモデル更新部111として動作する。SoCモデル更新部111は、各EV70から取得した車両情報に含まれるSoCに基づいて、SoCモデル112における各EV70の蓄電池のSoCを更新する。また、SoCモデル更新部111は、EVスイッチ60から取得した電力情報にも基づいて、SoCモデル112における各EV70の蓄電池のSoCを更新する。
【0039】
EVサーバ100は、電力統計モデル132の更新処理を実行する。つまり、EVサーバ100のプロセッサ101は、電力統計モデル更新部131として動作する。EVサーバ100は、電力調整可能量の算出処理を実行する。つまり、EVサーバ100のプロセッサ101は、電力調整量の算出部140として動作する。EVサーバ100は、需要家装置であるEV70の充電制御処理を実行する。つまり、EVサーバ100のプロセッサ101は、需要家装置制御部(充電制御部)150として動作する。EVサーバ100は、需要家(ユーザ)の参加処理を実行する。つまり、EVサーバ100のプロセッサ101は、参加処理部160として動作する。
【0040】
図4は、デマンドレスポンスのための制御タイムシーケンスを示している。ステップS11において、EVサーバ100の電力調整可能量算出部140は、デマンドレスポンス実施日の前日に、翌日(デマンドレスポンス実施日)電力調整可能量を推定する。
【0041】
ステップS12において、EVサーバ100は、電力調整可能量を、VPPサーバ30へ送信する。ステップS13において、VPPサーバ30は、電力調整可能量に基づいて、電力調整の目標値を決定する。目標値は、電力調整可能量の範囲内において、デマンドレスポンス実施時間帯における電力供給能力を考慮して決定される。
【0042】
ステップS14において、VPPサーバ30は、目標値、デマンドレスポンスの開始時間及び持続時間を含む調整依頼を、EVサーバ100へ送信する。ステップS15において、EVサーバ100の参加処理部160は、EV70を持つユーザの端末40へ、参加依頼を送信する。参加依頼の送信は、例えば、電子メールによってなされる。ユーザ端末40は、参加可否を、EVサーバ100へ送信する。
【0043】
ステップS17において、EVサーバ100の充電制御部150は、デマンドレスポンスにおいて、参加可であるユーザのEV70に対する充電制御を行う。EV充電制御は、電力調整の目標値と、電力調整の実績値との差分が小さくするフィードバック制御により行われる。フィードバック制御については後述する。
【0044】
デマンドレスポンス実施後であるステップS20において、EVサーバ100は、電力調整の実績値を、VPPサーバ30へ送信する。
【0045】
実施形態において、電力調整可能量は、電力需要実績データである過去の充電実績データに基づいて、将来のデマンドレスポンスにおいて調整可能な電力量として算出される。また、電力調整可能量は、将来のデマンドレスポンスの実施シナリオ(実施時間帯)に応じて算出される。実施形態において、実施シナリオは、デマンドレスポンスの開始時間とデマンドレスポンスの持続時間によって規定されるデマンドレスポンス実施時間帯である。なお、実施シナリオは、開始時間と終了時間によって規定されてもよい。実施形態においては、複数の実施シナリオ毎に電力調整可能量が算出される。
【0046】
図5から
図8は、上げデマンドレスポンス(以下、「上げDR」という)のための電力調整可能量の算出手順を示している。ここで、上げデマンドレスポンスは、デマンドレスポンスの実施時間帯以外の時間帯である第1時間帯(カット時間帯)における電力需要を、デマンドレスポンスの実施時間帯である第2時間帯にシフトさせる。
【0047】
上げDRにおける電力調整可能量の算出処理においては、まず、個々のEV70について第1時間帯における充電量積算値と第2時間帯における充電量積算値との合計値P
Cが算出される(
図5参照)。なお、以下では、「第1時間帯における充電量積算値と第2時間帯における充電量積算値との合計値」を、「充電量積算値P
C」という。続いて、個々のEV70について第2時間帯における充電可能量P
Aが算出される(
図6参照)。そして、全EV70の充電可能量P
ATから、第2時間帯における電力調整可能量P
ctrlが算出される(
図7参照)。調整可能量P
ctrlは、開始時間及び持続時間によって規定される複数の実施シナリオ毎に算出される(
図8参照)。また、調整可能量P
ctrlは、曜日毎に算出される(
図8参照)。以下、上げDRにおける電力調整可能量の算出処理の詳細について説明する。
【0048】
図5に示すように、充電実績データベース133には、複数のEV70についての、曜日毎の充電実績時系列データが格納されている。
図5において、EV_ID1は、識別子がID1であるEV70を示し、EVID2は、識別子がID2であるEV70を示し、EV_IDnは、識別子がIDnであるEV70を示す。曜日毎の充電実績時系列データは、該当する曜日についての過去の電力情報(EV70の充電実績データ)から生成される。充電実績時系列データは、EV70への充電電力量の時間的変化を示す。
【0049】
EVサーバ100の電力調整可能量算出部140は、デマンドレスポンスが実施される曜日の充電時系列データを参照し、個々のEV70について第1時間帯及び第2時間帯における充電量積算値PCを算出する。なお、ここでは、デマンドレスポンスが実施される曜日は、月曜日とし、電力調整可能量が算出されるのはその前日である日曜日とする。
【0050】
また、ここでは、第1時間帯(上げDRのために電力需要がカットされる時間帯)を、前日である日曜日の19:00から当日である月曜日の11:00までとする。なお、ここでは、説明の簡略化のため、第1時間帯であるカット時間の開始時間は、前日である日曜日の19:00で固定とするが、第1時間帯の開始時間を実施シナリオに応じて変動させてもよい。なお、EVサーバ100は、カット開始時間になると、EVスイッチ60をOFFにして、上げDRの開始時間まで充電を停止させ、上げDR開始時間になると、充電を開始させる。
【0051】
また、ここでは、第1時間帯の終了時間は、上げDRの開始時間に一致するが、上げDRの開始時間に一致していなくてもよい。第1時間帯の終了時間、すなわち、上げDRの開始時間は、上げDRの実施シナリオに応じて異なるが、ここでは、実施シナリオの一例として、上げDRの開始時間(第2時間帯の開始時間)は、月曜日の11:00とする。第2時間帯も、実施シナリオに応じて異なるが、ここでは、第2時間帯の持続時間は3時間とする。すなわち、第2時間帯の終了時間は14:00である。
【0052】
算出部140は、個々のEV70について、前日である日曜日の19:00から当日である月曜日の14:00までの、充電量積算値(予測値)P
Cを算出する。例えば、
図8に示すように、EV70の充電量積算値(予測値)P
Cは、過去の日曜日における充電実績データ及び過去の月曜日における充電実績データに基づいて算出される。この場合、充電量積算値(予測値)P
Cは、日曜日の19:00から当日である月曜日の14:00までの間(第1時間帯及び第2時間帯)に充電を行った場合に、充電されると予測される電力量の積算値として算出される。すなわち、充電量積算値P
Cは、第1時間帯及び第2時間帯における電力需要予測値である。
【0053】
続いて、算出部140は、個々のEV70について、上げDRとして電力需要を増大させるべき第2時間帯における充電可能量PAを算出する。
【0054】
算出部140は、充電可能量PAを単位時間あたりの電力量として算出する。ここでの単位時間は、一例として、30分とする。実施形態において、単位時間は、後述の充電制御処理において、制御が行われる時間間隔に等しい。
【0055】
図6に示すように、単位時間あたりの充電可能量P
Aは、充電量積算値P
Cを、上げDRの持続時間(第2時間帯の長さ)で割ることで算出される。ここでは、上げDRの持続時間は、単位時間(30分)数で示される。すなわち、上げDRの持続時間は、3h/0.5=6である。したがって、充電量積算値P
Cを6で割った値が、単位時間あたりの充電可能量P
Aになる。充電可能量P
Aは、第2時間帯における充電可能量の予測値(充電可能量予測値)である。
【0056】
単位時間あたりの充電可能量P
Aは、
図6の充電可能量テーブルT
m1として示すように、複数の上げDR開始時間及び複数の持続時間の組み合わせからなる複数の実施シナリオ毎に算出される。
図6の充電可能量テーブルT
m1は、月曜日における、EV_ED1についての、複数の実施シナリオ毎の充電可能量を示す。
【0057】
充電可能量テーブルTm1において、開始時間は、1日(ここでは月曜日)の間における30分毎の時間が設定されている。また、充電可能量テーブルTm1において、持続時間は、30分から240分まで、30分毎の時間が設定されている。
【0058】
上げDRの実施時間帯が異なれば、充電量積算値PCが変動し、その結果、充電可能量PAも変動する。また、上げDRの持続時間が異なれば、充電量積算値PCが同じでも、単位時間あたりの充電可能量PAが変動する。このように、上げDRの実施シナリオ毎に、充電可能量PAは異なる。本実施形態では、複数の実施シナリオそれぞれに応じた、充電可能量PAが算出される。
【0059】
算出部140は、算出した充電可能量PAを、過去に算出された充電可能量PA(充電可能量テーブルTm1にすでに格納されている値)と平均した平均値PAAを求め、その平均値PAAを充電可能量として、充電可能量テーブルTm1に格納する。
【0060】
図6の充電可能量テーブル134に示されるように、複数の実施シナリオのための充電可能量テーブルT
m1は、曜日毎に生成されるとともに、複数のEV70毎に生成される。
【0061】
続いて、算出部140は、
図6の充電可能量テーブル134を参照することで、特定の曜日における特定の実施シナリオにおける全EV70の充電可能量を合計する。ここでは、上げDR実施日である月曜日において、開始時間が11:00であり、持続時間が3時間である上げDR実施シナリオにおける、全EV70の単位時間当たり充電可能量P
ATが、算出部140によって算出される(
図7参照)。充電可能量P
ATは複数の実施シナリオ毎、かつ、曜日毎に算出される。
【0062】
続いて、算出部140は、充電可能量PATから、上げDR実施時間帯中のベースラインを減算し、電力調整可能量Pctrlを算出する。ここで、ベースラインは、上げDR実施時間帯における過去の全EV70の充電実績量から算出される。ベースラインは、EV70が、通常、充電のために消費する電力量を示す。このように、実施形態において、電力調整可能量Pctrlは、充電可能量PATからベースラインを減算した、電力調整余力として算出される。
【0063】
なお、実施形態において、ベースラインは、30分毎の値として求められるため、電力調整可能量Pctrlも、30分毎に異なる値として求められる。ただし、ここでは、上げDR実施時間帯中のベースラインの最大値Bmが減算された電力調整可能量Pctrl、すなわち、電力調整可能量Pctrlの最小値を、上げDR実施時間帯中における、電力調整可能量とする。
【0064】
図8に示すように、電力調整可能量P
ctrlは、充電可能量P
ATは複数の実施シナリオ毎に算出され、調整可能量テーブルT
m_ctrlに格納される。また、調整可能量テーブルT
m_ctrlは、曜日毎に算出され、曜日ごとの調整可能量テーブル135に格納される。
【0065】
EVサーバ100は、月曜日の上げDR実施の前日である日曜日において、月曜日における調整可能量テーブルTm_ctrlを、複数の実施シナリオ毎の調整可能量を示すデータとして、VPPサーバ30へ送信する。
【0066】
図9及び
図10は、下げデマンドレスポンス(以下、「下げDR」)のための電力調整可能量の算出手順を示している。下げデマンドレスポンスは、デマンドレスポンスの実施時間帯における電力需要を低下させる。
【0067】
上げDRにおける電力調整可能量の算出処理においては、まず、個々のEV70について、下げDR実施時間帯における充電可能量P
Cが算出される(
図9参照)。続いて、全EV70の充電可能量P
CTから、下げDR実施時間帯における電力調整可能量Pctrlが算出される(
図10参照)。以下、下げDRにおける電力調整可能量の算出処理の詳細について説明する。
【0068】
まず、電力調整可能量算出部140は、下げDRが実施される曜日の充電時系列データを参照し、個々のEV70について、下げDR実施時間帯における、単位時間(30分)あたりの充電可能量PCを算出する。なお、ここでは、下げDRが実施される曜日は、月曜日とする。
【0069】
また、ここでは、下げDR実施時間帯を、月曜日の11:00から13:00までとする。すなわち、開始時間は、11:00であり、持続時間は2時間である。
【0070】
算出部140は、個々のEV70について、月曜日の11:00から13:00までにおける充電可能量PCを単位時間(30毎)に算出する。充電可能量PCは、過去の月曜日における充電実績データに基づいて、下げDR実施日である月曜日の11:00から13:00までの間に充電を行ったとした場合に、充電されると予測される電力量として算出される。すなわち、ここでの充電可能量PCは、下げDRにより、下げDR実施時間帯において、減少させることができる電力需要の予測値である。
【0071】
単位時間毎の充電可能量P
Cは、
図9の充電可能量テーブルT
m1として示すように、複数の下げDR開始時間及び複数の持続時間の組み合わせからなる複数の実施シナリオ毎に算出される。
図9の充電可能量テーブルT
m1は、月曜日における、EV_ED1についての、複数の実施シナリオ毎の充電可能量を示す。
【0072】
充電可能量テーブルTm1において、開始時間は、1日(ここでは月曜日)の間における30分毎の時間が設定されている。また、充電可能量テーブルTm1において、持続時間は、30分から240分まで、30分毎の時間が設定されている。
【0073】
電力需要は時間によって変動するため、下げDRの実施時間帯が異なれば、充電可能量PCは変動する。このように、下げDRの実施シナリオ毎に、充電可能量PCは異なる。本実施形態では、複数の実施シナリオそれぞれに応じた、充電可能量PCが算出される。
【0074】
算出部140は、算出した充電可能量PCを、過去に算出された充電可能量PC(充電可能量テーブルTm1にすでに格納されている値)と平均した平均値PCAを求め、その平均値PCAを充電可能量として、充電可能量テーブルTm1に格納する。
【0075】
図9の充電可能量テーブル134に示されるように、複数の実施シナリオのための充電可能量テーブルT
m1は、曜日毎に生成されるとともに、複数のEV70毎に生成される。
【0076】
続いて、算出部140は、
図9の充電可能量テーブル134を参照することで、特定の曜日における特定の実施シナリオにおける全EV70の充電可能量を合計する。ここでは、下げDR実施日である月曜日において、開始時間が11:00であり、持続時間が2時間である上げDR実施シナリオにおける、全EV70の単位時間毎の充電可能量P
CTが、算出部140によって算出される(
図10参照)。充電可能量P
CTは複数の実施シナリオ毎、かつ、曜日毎に算出される。
【0077】
続いて、算出部140は、単位時間毎の充電可能量PCTにおける最小値を、上げDR実施時間帯中の電力調整可能量Pctrlとする。
【0078】
図10に示すように、電力調整可能量P
ctrlは、複数の実施シナリオ毎に算出され、調整可能量テーブルT
m_ctrlに格納される。また、調整可能量テーブルT
m_ctrlは、曜日毎に算出され、曜日ごとの調整可能量テーブル135に格納される。
【0079】
EVサーバ100は、月曜日の下げDR実施の前日である日曜日において、月曜日における調整可能量テーブルTm_ctrlを、複数の実施シナリオ毎の調整可能量を示すデータとして、VPPサーバ30へ送信する。
【0080】
VPPサーバ30は、上げDR及び下げDRそれぞれの複数の実施シナリオ毎の調整可能量に基づいて、電力供給量の変動をも考慮して、上げDRを実施するか、下げDRを実施するか決定する。また、VPPサーバ30は、上げDR又は下げDRにおけるデマンドレスポンスの開始時間、持続時間、電力調整目標値を決定する。電力目標値は、電力調整可能量の範囲内において、電力供給量の変動をも考慮して、決定する。電力目標値は、デマンドレスポンスへのユーザ参加確率(予測値)を考慮して決定してもよい。なお、電力目標値は、30分毎の値として決定される。
【0081】
図11は、デマンドレスポンス実施時間帯における、EVサーバ100によるEVスイッチ60の充電制御を示している。充電制御部150は、デマンドレスポンス実施開始時点において、充電制御を行うEV70(対象EV;対象需要家装置)を選定する。この選定を、初期選定という。初期選定の後、充電制御部150は、30分毎である選定制御周期毎に、対象EVの再選定を行う。再選定は、デマンドレスポンス実施時間帯において繰り返し行われる。対象EVの再選定を行うことで、充電が行われるEV70の偏りを低減することができる。対象EVの選定は、30分間の充電可能量が、電力目標値に到達するまで、下記の優先度順で行われる。
第1優先度:選定回数が少ないこと。
第2優先度:直前の30分において対象EVであったこと。
第3優先度:充電フェーズが安定期であること。
第4優先度:充電可能量が大きいこと。
【0082】
「第1優先度:選定回数が少ないこと」は、選定回数が少ないEV70を対象EVとして選定することで、充電されるEV70の偏りを小さくするための基準である。「第2優先度:直前の30分において対象EVであったこと」は、充電/非充電の切り替え回数の発生をできるだけ少なくして、蓄電池の劣化防止を図るための基準である。「第3優先度:充電フェーズが安定期であること」は、安定期にある蓄電池に優先的に充電するための基準である。なお、充電フェーズが安定期であるとは、充電状態が、満充電近傍に至らず、充電電流が安定している状態をいう。充電フェーズは、満充電判定データ122に基づいて判定される。「第4優先度:充電可能量が大きいこと」は、充電余力が大きい蓄電池を優先して充電するための基準である。充電可能量は、SoCモデル112に基づいて判定される。
【0083】
充電制御部150は、対象EVに接続されたEVスイッチ60に対して、充電を行わせる充電制御指令(ON指令)を送信する(
図4のステップS18)。ON指令を受信したEVスイッチ60は、対象EVへ充電を行う。EVスイッチ60は、対象EVへの充電電力を、充電実績値として、EVサーバ100へ送信する(
図4のステップS19)。EVサーバ100への充電実績値の送信は、例えば、1分毎に行われる。
【0084】
デマンドレスポンス実施時間帯において、充電制御部150は、5分毎であるフィードバック制御周期毎に、対象EVの数を増減させる。対象EVの数の増減は、EVスイッチ60から受信した充電実績値に基づいて行われる。
【0085】
例えば、
図11に示すように、11:05の時点での充電実績値に基づく、消費電力見込みは、目標値に比べて過多である。そこで、充電制御部150は、11:05の時点で、対象EVの数(充電台数)を減少させる。また、11:15の時点での充電実績値に基づく、消費電力見込みは、目標値に比べて不足している。そこで、充電制御部150は、11:15の時点で、対象EVの数を増加させる。このようなフィードバック制御を行うことで、電力調整目標値と実績値との差分を小さくして、実績値を目標値に近づけることができる。
【0086】
対象EVの数を増加させる場合、消費電力見込みが目標値に到達するまで、下記の優先度順に、非対象EVの中から、対象EVの追加選定が行われる。
第1優先度:選定回数が少ないこと。
第2優先度:充電フェーズが安定期であること。
第3優先度:充電可能量が大きいこと。
【0087】
対象EVの数を減少させる場合、消費電力見込みが目標値に到達するまで、下記の優先度順に、対象EVから外されるEV70の選定が行われる。対象EVから外されると、充電がOFFになる。
第1優先度:充電フェーズが安定期以外(満充電状態など)であること。
第2優先度:充電可能量が大きいこと。
第3優先度:選定回数が少ないこと。
【0088】
[付記]
【0089】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
10 :システム
21 :系統運用者
22 :再生可能エネルギー発電事業者
23 :小売事業者
30 :VPPサーバ
40 :ユーザ端末
50 :テレマティクスサーバ
60 :EVスイッチ
70 :EV
100 :EVサーバ
101 :プロセッサ
102 :記憶部
103 :インタフェース
105 :コンピュータプログラム
111 :SoCモデル更新部
112 :SoCモデル
122 :満充電判定データ
131 :電力統計モデル更新部
132 :電力統計モデル
133 :充電実績データベース
134 :充電可能量テーブル
135 :調整可能量テーブル
140 :電力調整可能量算出部
150 :充電制御部
160 :参加処理部