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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/14 20190101AFI20230808BHJP
   B65H 31/26 20060101ALI20230808BHJP
   B65H 31/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G07D11/14
B65H31/26
B65H31/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019213499
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021086301
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】中岡 陽一
(72)【発明者】
【氏名】長岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】若林 円
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/14
B65H 31/26
B65H 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者へと引き渡す媒体を収容する収容器と、
前記収容器の内部で対向して配置され、前記収容器の内部を移動可能なビルプレスとプールガイドと、
前記ビルプレスと前記プールガイドの移動を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記ビルプレスと前記プールガイドのそれぞれを、前記収容器へ搬送されてきた媒体を前記ビルプレスと前記プールガイドとの間に集積する為の集積ポジションから、前記ビルプレスと前記プールガイドとの間に集積された媒体を使用者に引き渡す為の引き渡しポジションへと移動させる間に、前記ビルプレスと前記プールガイドの両方を移動させる第1の期間と、当該第1の期間につづく、前記プールガイドのみを前記ビルプレスから遠ざかる方向に移動させる第2の期間とを設けた
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記収容器は、一端側よりも他端側が下方に位置するように傾いた底面を有し、
前記ビルプレスと前記プールガイドは、前記ビルプレスが前記底面の一端側、前記プールガイドが前記底面の他端側となる位置関係で対向して配置され、
前記ビルプレスと前記プールガイドのそれぞれの引き渡しポジションは、それぞれの前記集積ポジションよりも前記収容器の底面の他端側に位置している
ことを特徴とする請求項に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2の期間において、前記プールガイドのみを前記ビルプレスから遠ざかる方向に、予め設定された一定量だけ移動させて前記引き渡しポジションに到達させる
ことを特徴とする請求項に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の期間において、前記プールガイドのみを前記ビルプレスから遠ざかる方向に、前記プールガイドと前記ビルプレスとの間に集積された媒体の枚数に応じた移動量だけ移動させて前記引き渡しポジションに到達させる
ことを特徴とする請求項に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記収容器の底面から上昇する方向及びその逆方向に移動可能なリフトを備え、
前記制御部は、前記ビルプレスと前記プールガイドの両方が前記引き渡しポジションに到達すると、前記リフトを前記収容器の底面から上昇する方向に移動させて、前記ビルプレスと前記プールガイドの間に集積されている媒体を前記リフトにより押し上げる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記ビルプレスの前記プールガイド側である一面から前記プールガイド側に突出する突起部を有するレバーを備え、
前記レバーは、前記突起部が前記ビルプレスの一面から突出する突出状態と、前記突起部が前記ビルプレスの裏側に退避した退避状態とに遷移可能であり、前記ビルプレスと前記プールガイドの両方が前記引き渡しポジションに到達すると、前記退避状態から前記突出状態へと遷移する
ことを特徴とする請求項に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記突起部が前記ビルプレスの一面から突出する突出量は、前記ビルプレスの一面に張り付いた媒体を前記ビルプレスの一面から引き剥がすのに最低限必要な量である
ことを特徴とする請求項に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記レバーは、
前記リフトが上昇する方向に移動した際に前記リフトと当接する当接部を有し、前記当接部が前記リフトと当接して押し上げられることにともなって、前記退避状態から前記突出状態へと遷移する
ことを特徴とする請求項6または7に記載の媒体処理装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の媒体処理装置を備えた
ことを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体処理装置及び自動取引装置に関し、例えば紙幣のような紙葉状の媒体を投入して所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)等に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関などで使用される現金自動預払機では、使用者(例えば金融機関の顧客)との取引内容に応じて、使用者に紙幣や硬貨などの現金を入金させる入金取引や、使用者へ現金を出金する出金取引などの各種取引を行うようになっている。
【0003】
この現金自動預払機は、例えば、紙幣の入出金に関する処理を行う紙幣入出金機を有している。さらにこの紙幣入出金機は、例えば、使用者との間で紙幣の授受を行う接客部を有している。
【0004】
このような紙幣入出金機が有する接客部として、例えばビルプレスとプールガイドとを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。このような紙幣入出金部の構成を、図14に示す。この図14に示すように、紙幣入出金部は、例えば、収容器200と、収容器200の内部に設けられたビルプレス201とプールガイド202とを有している。
【0005】
収容器200は、底面の前端側に、収容器200に投入された紙幣を取り込む為の取込口200aが設けられ、底面の後端側に、収容器200へ紙幣を放出する為の放出口200bが設けられている。ビルプレス201とプールガイド202は、ビルプレス201が後側、プールガイド202が前側となる位置関係で対向配置され、それぞれ収容器200の底面に沿って前後方向に移動可能となっている。
【0006】
この接客部は、出金取引時、ビルプレス201とプールガイド202を、放出口200b近傍の集積ポジションへ移動させ、ビルプレス201とプールガイド202との間に形成される集積空間に、放出口200bから紙幣を放出して集積させる。さらに接客部は、ビルプレス201とプールガイド202とを、間に紙幣を集積した状態で、集積ポジションよりも前方に位置する引き渡しポジション(紙幣を使用者に引き渡す際のポジション)まで移動させる。このとき、接客部は、ビルプレス201とプールガイド202との間隔を、集積された紙幣BLの束の厚さ以上となるように広げながら、ビルプレス201とプールガイド202とを引き渡しポジションまで移動させる。その後、接客部は、ビルプレス201とプールガイド202との間に集積された紙幣を使用者に取り出させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-5351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の接客部は、ビルプレス201とプールガイド202とを集積ポジションから引き渡しポジションまで移動させながら、ビルプレス201とプールガイド202との間隔が広がっていく為、移動中に、ビルプレス201とプールガイド202との間に集積された紙幣が安定せずにばらけるなどして、紙幣を取り出し難くなることがあるという問題を有していた。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、従来と比べて媒体を取り出し易くし得る媒体処理装置及び自動取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、使用者へと引き渡す媒体を収容する収容器と、前記収容器の内部で対向して配置され、前記収容器の内部を移動可能なビルプレスとプールガイドと、前記ビルプレスと前記プールガイドの移動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ビルプレスと前記プールガイドのそれぞれを、前記収容器へ搬送されてきた媒体を前記ビルプレスと前記プールガイドとの間に集積する為の集積ポジションから、前記ビルプレスと前記プールガイドとの間に集積された媒体を使用者に引き渡す為の引き渡しポジションへと移動させる間に、前記ビルプレスと前記プールガイドの両方を移動させる第1の期間と、当該第1の期間につづく、前記プールガイドのみを前記ビルプレスから遠ざかる方向に移動させる第2の期間とを設けた。
【0011】
こうすることで、第1の期間では、ビルプレスとプールガイドとの間隔を維持した状態で、ビルプレスとプールガイドとを集積ポジションから引き渡しポジションへと向かう方向に移動させることができるので、移動中に、ビルプレスとプールガイドとの間に集積された媒体がばらけてしまうことを防ぐことができる。また、第2の期間では、ビルプレスとプールガイドとの間隔を広げることができるので、媒体を取り出し易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来と比べて媒体を取り出し易くし得る媒体処理装置及び自動取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】現金自動取引装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】紙幣入出金機の構成を示す側断面図である。
図3】上部ユニット及び下部ユニットの構成を示す側断面図である。
図4】接客部の構成を示す側断面図である。
図5】ビルプレスとリフトの接続部分を示す斜視図である。
図6】ビルプレスとプールガイドの集積ポジションを示す側断面図である。
図7】ビルプレスとプールガイドの引き渡しポジションを示す側断面図である。
図8】ビルプレスとプールガイドの動作を示す側断面図である。
図9図8につづくビルプレスとプールガイドの動作を示す側断面図である。
図10図9につづくビルプレスとプールガイドの動作を示す側断面図である。
図11図10につづくビルプレスとプールガイドの動作を示す側断面図である。
図12図11につづくビルプレスとプールガイドの動作を示す側断面図である。
図13】ビルプレスとプールガイドの動作を示すタイミングチャートである。
図14】従来の接客部の構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0015】
[1.現金自動預払機の全体構成]
図1に、自動取引装置としての現金自動預払機1の外観を示す。この現金自動預払機1は、例えば金融機関や各種商業施設などに設置され、使用者(例えば金融機関や商業施設の顧客)との間で、入金処理や出金処理などの現金に関する取引を行う装置である。尚、ここでは、使用者と対峙する正面側を現金自動預払機1の前側、その反対側を現金自動預払機1の後側、現金自動預払機1の前側に対峙する利用者から見て上側、下側、左側、右側を、それぞれ現金自動預払機1の上側、下側、左側、右側と定義する。
【0016】
現金自動預払機1は、略箱型の筐体2によって外観を形成している。筐体2は、その前側に対峙した使用者が紙幣の投入やタッチパネルによる操作などをし易い箇所に、応対部3が設けられている。
【0017】
応対部3は、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7及びレシート発行口8などが設けられ、顧客との間で現金や通帳などを直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。カード入出口4は、キャッシュカードなどの各種カードが挿入又は排出される部分である。このカード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号などの読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客が入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。
【0018】
操作表示部6は、取引に際して操作画面や取引内容などを表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。テンキー7は、「0」~「9」の数字などの入力を受け付ける物理的なキーであり、暗証番号や取引金額などの入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容などを印字したレシートを発行する部分である。このレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容などを印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
【0019】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10などが設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成され、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどから所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理などの種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリなどでなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0020】
[2.紙幣入出金機の構成]
次に、図2を用いて、紙幣入出金機10の内部構成について説明する。尚、図2は、紙幣入出金機10の側断面図である。紙幣入出金機10は、大きく分けて、全体の上側部分を占有する上部ユニット10Uと、全体の下側部分を占有する下部ユニット10Lと、全体の外枠部分を形成するとともに、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lとを保持するフレーム10Fとで構成されている。
【0021】
フレーム10Fは、筐体2(図1)の内部に取り付けられている。フレーム10Fは、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lを、それぞれ前後方向に延びるスライドレール(図示せず)を介して保持している。この為、紙幣入出金機10は、筐体2の前扉(もしくは後扉)が開放された状態で、フレーム10Fから上部ユニット10Uと下部ユニット10Lをそれぞれ前方(もしくは後方)へ引き出すことができ、また引き出した上部ユニット10Uと下部ユニット10Lをそれぞれフレーム10F側に押し入れて、フレーム10F内に格納できるようになっている。
【0022】
[2-1.上部ユニットの構成]
図2の上部を拡大した図3(A)に示すように、上部ユニット10Uには、全体を統括制御する紙幣制御部20、接客部21、上前搬送部22、鑑別部23、上後搬送部24、一時保留部25及びリジェクト庫26が設けられている。
【0023】
紙幣制御部20は、図示しないCPUを中心に構成され、図示しないROMやフラッシュメモリなどから所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理など、種々の処理を行う。また紙幣制御部20は、内部にRAMやフラッシュメモリなどでなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。尚、図3(A)に示す紙幣制御部20の位置は、一例であり、他の位置に設けられていてもよい。
【0024】
接客部21は、使用者との間で紙幣を受け渡すことにより、使用者に紙幣を入金させたり、使用者に紙幣を出金させたりする部分である。接客部21は、紙幣を収容する収容器30を有している。この収容器30は、上端が入出金口5(図1)と繋がる開口部となっている。接客部21は、収容器30の開口部を可動式のシャッタ31により開放又は閉塞するようになっている。また接客部21は、収容器30の前端部と接客部21の前側下方に位置する上前搬送部22とを繋ぐ搬送路32、及び収容器30の後端部と接客部21の後方に位置する上後搬送部24とを繋ぐ搬送路33を有している。
【0025】
この接客部21は、収容器30内に収容された紙幣を1枚ずつに分離しながら図中丸印で示す搬送ローラにより搬送路32に沿って上前搬送部22へと搬送する。また接客部21は、上後搬送部24から搬送されてきた紙幣を、搬送ローラにより搬送路33に沿って収容器30まで搬送し、収容器30内へ放出させるようになっている。
【0026】
上前搬送部22は、上部ユニット10U内部の前下側に位置しており、1つの分岐箇所を有する搬送路40と、搬送路40の分岐箇所に設けられた、紙幣の搬送経路を切り替える切替器41とを有している。搬送路40は、接客部21の搬送路32、鑑別部23、及び下部ユニット10Lの前部と接続されている。
【0027】
この上前搬送部22は、紙幣制御部20の制御に従って切替器41を動作させることで、搬送路40をもとに形成される紙幣の搬送経路を、接客部21の搬送路32と鑑別部23を繋ぐ搬送経路、又は鑑別部23と下部ユニット10Lの前部とを繋ぐ搬送経路に切り替える。そして、上前搬送部22は、切り替えた搬送経路に沿って搬送ローラにより紙幣を搬送するようになっている。
【0028】
鑑別部23は、接客部21の下方且つ上前搬送部22の後方に位置している。鑑別部23は、前方の上前搬送部22及び後方の上後搬送部24と接続された直線状の搬送路50を有していて、この搬送路50に沿って複数のセンサが配置されている。鑑別部23は、搬送路50に沿って搬送ローラにより紙幣を搬送しながら、複数のセンサから得られる検知結果をもとに、紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)などを判断すると共に搬送状態を認識し、これらを鑑別結果として、紙幣制御部20に送るようになっている。
【0029】
上後搬送部24は、接客部21及び鑑別部23の後方に位置している。この上後搬送部24は、3つの分岐箇所を有する搬送路60と、3つの分岐箇所のそれぞれに設けられた、切替器61、62、63を有している。
【0030】
搬送路60は、接客部21の搬送路33、鑑別部23、一時保留部25、リジェクト庫26、及び下部ユニット10Lの後部と接続されている。この上後搬送部24は、紙幣制御部20の制御に従って3つの切替器61、62、63を動作させることで、搬送路60をもとに形成される紙幣の搬送経路を、鑑別部23と一時保留部25とを繋ぐ搬送経路、鑑別部23と接客部21の搬送路33とを繋ぐ搬送経路、鑑別部23とリジェクト庫26とを繋ぐ搬送経路、又は下部ユニット10Lの後部とリジェクト庫26とを繋ぐ搬送経路に切り替えるようになっている。そして、上後搬送部24は、切り替えた搬送経路に沿って搬送ローラにより紙幣を搬送するようになっている。
【0031】
一時保留部25は、例えばテープ方式であり、上後搬送部24から搬送されてきた紙幣をテープとともにドラムの周側面に巻き付けて収納する。また一時保留部25は、紙幣を繰り出す場合、ドラムの周側面からテープと共に紙幣を引き剥がし、これを上後搬送部24に引き渡すようになっている。
【0032】
リジェクト庫26は、例えば損傷の程度が大きく出金すべきで無いと判断されたリジェクト紙幣を収納する部分であり、上後搬送部24からリジェクト紙幣が搬送されてくると、このリジェクト紙幣を内部の収納空間へ放出して収納する。
【0033】
[2-2.下部ユニットの構成]
図2の下部を拡大した図3(B)に示すように、下部ユニット10Lの上端部分には、下搬送部27が配置され、この下搬送部27の下方には、下部フレーム28が設けられている。下部フレーム28は、上端が開放された中空の直方体状であり、内部に、再利用(リサイクル)可能な紙幣を収納する4つの紙幣収納庫29(29A、29B、29C、29D)が前後方向に並べて配置されている。
【0034】
紙幣収納庫29(29A~29D)は、何れも同様に構成されており、上下方向に長い直方体状となっている。各紙幣収納庫29は、紙幣の収納及び繰り出しが可能で、紙幣収納時には、下搬送部27により搬送されてきた紙幣を内部の収納空間に放出して集積する。また、各紙幣収納庫29は、紙幣繰り出し時には、内部の収納空間に集積されている紙幣を上から1枚ずつに分離して上方へと搬送し、下搬送部27に引き渡すようになっている。各紙幣収納庫29は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。
【0035】
下搬送部27は、4つの分岐箇所を有する搬送路70と、4つの分岐箇所のそれぞれに設けられた、切替器71、72、73、74とを有している。搬送路70は、上前搬送部22、上後搬送部24、及び紙幣収納庫29A、29B、29C、29Dと接続されている。この下搬送部27は、紙幣制御部20の制御に従って4つの切替器71、72、73、74を動作させることで、搬送路70をもとに形成される紙幣の搬送経路を、上前搬送部22と紙幣収納庫29A~29Dのいずれかとを繋ぐ搬送経路、又は上前搬送部22と上後搬送部24とを繋ぐ搬送経路に切り替えるようになっている。そして、下搬送部27は、切り替えた搬送経路に沿って搬送ローラにより紙幣を搬送するようになっている。
【0036】
尚、ここでは、下部フレーム28に、複数の紙幣収納庫29を設けた例について説明したが、これに限らず、例えば、下部フレーム28に、複数の紙幣収納庫29と、使用者が接客部21から取り忘れた紙幣を収納する取り忘れ収納庫を設けるなどしてもよい。
【0037】
[3.入金取引時及び出金取引時の動作]
次に、紙幣入出金機10による入金取引時及び出金取引時の動作について簡単に説明する。まず、入金取引時の動作から説明する。入金取引時、紙幣入出金機10は、使用者に入金された紙幣の金種等を鑑別しながら枚数を計数する入金計数処理を行い、その後、各紙幣を適切な収納箇所へ搬送して収納する入金収納処理を行うようになっている。尚、この入金計数処理及び入金収納処理は、紙幣制御部20が各部を制御して行う処理である。
【0038】
具体的に、紙幣入出金機10は、操作表示部6(図1)を介して使用者から入金取引を開始する旨の操作指示を受け付けると、入金計数処理を開始する。入金計数処理を開始すると、紙幣入出金機10は、接客部21のシャッタ31(図3(A))を開く。その後、紙幣入出金機10は、使用者により収容器30内へ紙幣が投入されると、接客部21のシャッタ31を閉じ、収容器30内の紙幣を1枚ずつに分離して、上前搬送部22を介して鑑別部23へ搬送する。ここで、紙幣入出金機10は、鑑別部23の鑑別結果から正常紙幣として判別された紙幣については、鑑別部23から上後搬送部24を介して一時保留部25へ搬送して収納する。一方で、鑑別部23の鑑別結果から入金に適さない入金リジェクト紙幣として判別された紙幣については、鑑別部23から上後搬送部24を介して接客部21の搬送路33へ搬送し、搬送路33上に退避させる。
【0039】
そして収容器30内に投入された紙幣を全て繰り出し終えると、紙幣入出金機10は、搬送路33上に退避させている紙幣(つまり入金リジェクト紙幣)を収容器30に戻してシャッタ31を開くことで使用者に返却する。一方で、搬送路33上に退避させている紙幣が存在しない場合、紙幣入出金機10は、入金計数処理を完了する。その後、紙幣入出金機10は、接客部21から取り込んだ紙幣の金種及び枚数の集計結果を基に入金額を算出すると共に、所定の操作指示画面を操作表示部6(図1)に表示させ、使用者に入金額を提示すると共に入金取引を継続するか否かを選択させる。
【0040】
ここで、使用者により入金取引の中止が指示された場合、紙幣入出金機10は、一時保留部25に収納している全ての紙幣を、上後搬送部24を介して接客部21の収容器30へ戻し、シャッタ31(図3(A)を開くことで使用者に返却する。一方で、使用者により入金取引の継続が指示された場合、紙幣入出金機10は、入金収納処理を開始する。入金収納処理を開始すると、紙幣入出金機10は、一時保留部25に収納している紙幣(つまり正常紙幣)を順次繰り出し、上後搬送部24を介して鑑別部23へ搬送して金種を判別する。そして紙幣入出金機10は、金種が判別された紙幣を、鑑別部23から上前搬送部22及び下搬送部27を順次介して、その金種に対応する紙幣収納庫29へ搬送して収納する。一時保留部25に収納されている全ての紙幣を収納し終えると、紙幣入出金機10は、この入金収納処理を終了する。紙幣入出金機10による入金取引時の動作は、以上のようになっている。
【0041】
次に、紙幣入出金機10による出金取引時の動作について説明する。出金取引時、紙幣入出金機10は、使用者に指定された金額に応じた金種及び枚数の紙幣を出金する出金処理を行うようになっている。尚、この出金処理も、紙幣制御部20が各部を制御して行う処理である。
【0042】
具体的に、紙幣入出金機10は、操作表示部6(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨及び出金額を指定する旨の操作指示を受け付けると、出金処理を開始する。出金処理を開始すると、紙幣入出金機10は、出金額に応じた紙幣の金種及び枚数を決定する。そして、紙幣入出金機10は、決定した金種及び枚数に応じて、各紙幣収納庫29から紙幣を1枚ずつ繰り出し、下搬送部27及び上前搬送部22を順次介して鑑別部23へ搬送する。
【0043】
ここで、紙幣入出金機10は、鑑別部23の鑑別結果から正常紙幣として判別された紙幣については、鑑別部23から上後搬送部24を介して接客部21へ搬送して収容器30内に集積する。一方で、鑑別部23の鑑別結果から出金に適さない出金リジェクト紙幣として判別された紙幣については、鑑別部23から上後搬送部24を介してリジェクト庫26へ搬送して収納する。そして、紙幣入出金機10は、出金額分の紙幣が収容器30内に集積されると、接客部21のシャッタ31を開くことで、収容器30内に集積された紙幣を使用者に取り出させる。紙幣入出金機10による出金取引時の動作は、以上のようになっている。
【0044】
[4.接客部の構成]
次に、図4を用いて、接客部21の内部構成について説明する。尚、図4は、接客部21の側断面図であり、搬送ローラなどの一部を省略した図となっている。接客部21は、筐体80の内部に、収容器30と、分離繰出機構81と、集積機構82と、搬送路32と、搬送路33とが設けられた構成となっている。
【0045】
収容器30は、箱型であり、上端が入出金口5(図1)と繋がる開口部となっていて、この開口部がシャッタ31により開放又は閉塞されるようになっている。またこの収容器30は、後端側よりも前端側が下方に位置するよう前方に傾けられた状態で、筐体80に設けられている。この収容器30に、ロアフレーム90と、図示しないサイドガイドと、ビルプレス91と、プールガイド92とが設けられている。
【0046】
ロアフレーム90は、収容器30の底面を形成するフレームであり、後端側よりも前端側が下方に位置するよう前方に傾けられている。つまり、収容器30の底面は、後端側よりも前端側が下方に位置するよう前方に傾けられている。このロアフレーム90の前端側には、収容器30内に収容された紙幣を、収容器30から取り込む為の取込口90aが設けられ、このロアフレーム90の後端側には、収容器30内へと紙幣を放出する為の放出口90bが設けられている。尚、この収容器30には、長方形の紙幣が、長手方向を左右方向、短手方向を上下方向、厚さ方向を前後方向とする向きで収容されるようになっている。
【0047】
さらにこのロアフレーム90の前後方向の中央部分には、ロアフレーム90の上面とほぼ平行な状態で、ロアフレーム90からせり上がる方向(上方)及びその逆方向(下方)に移動可能なリフト93が設けられている。このリフト93は、詳しくは後述するが、ロアフレーム90の上面からせり上がる方向(上方)に所定量だけ移動することで、収容器30に収容された紙幣を、上方(つまり入出金口5へ近づく方向)へと押し上げるようになっている。尚、このリフト93の上端部は、例えば、図5にデフォルメした斜視図を示すように、前後方向に細長い凹部93aと凸部93bとを左右方向に交互に配置した所謂櫛歯状に形成されている。
【0048】
図4に戻り、ビルプレス91とプールガイド92は、収容器30の内部で、ビルプレス91がロアフレーム90の後端側、プールガイド92がロアフレーム90の前端側となる位置関係で、前後方向に対向配置されている。収容器30の内部では、ロアフレーム90と、ビルプレス91と、プールガイド92と、収容器30の左右両側面に設けられた図示しないサイドガイドとにより形成される集積空間Spに、紙幣を集積するようになっている。
【0049】
ビルプレス91は、側面視で略くの字型の部材である。このビルプレス91は、プールガイド92と対向する前面の屈曲箇所より下側の部分(前面の大よそ下半分)が、収容器30の底面に対してほぼ垂直な下側平面91Lとなっていて、屈曲箇所より上側の部分(前面の大よそ上半分)が、下側平面91Lの上端から後方ななめ上に延びる上側平面91Uとなっている。
【0050】
このビルプレス91は、収容器30の底面に沿って前後方向に移動可能に構成されている。さらにこのビルプレス91は、図示しない左右方向に延びる回転軸を介して、図中時計回り方向、及び図中反時計回り方向に回転可能に構成されていて、例えば、下側平面91Lが収容器30の底面に対してほぼ垂直となる状態から、図中時計回り方向に回転することで、上側平面91Uが収容器30の底面に対してほぼ垂直となる状態(例えば図6に示す状態)へと遷移することができる。
【0051】
またこのビルプレス91は、図5に示すように、下端部が、凹部91aと凸部91bとを左右方向に交互に配置した所謂櫛歯状に形成されていて、リフト93の上端部と噛み合うようになっている。これにより、リフト93は、ビルプレス91が上方に位置していても、例えば、リフト93側の凸部93bがビルプレス91側の凹部91aの上端に到達するまでの範囲で、上方に移動することができる。
【0052】
さらにこのビルプレス91には、レバー94が設けられている。このレバー94は、側面視で略くの字型の部材であり、前面の上端部に突起部94aが設けられ、前面の下端部がリフト93と当接する当接部94bとなっている。このレバー94は、ビルプレス91の下側平面91Lの裏側(後側)に設けられていて、ビルプレス91により、左右方向に延びる回転軸94cを介して、図中時計回り方向、及び図中反時計回り方向に回転可能に保持されている。
【0053】
このレバー94は、回転軸94cに設けられた図示しないトーションバネにより、全体がビルプレス91の裏側に退避した退避状態(例えば図4に示す状態)を維持するように付勢されている。このレバー94は、リフト93の上昇にともなって当接部94bにリフト93が当接して押し上げられると、図中時計回り方向に回転することで、退避状態から、ビルプレス91の下側平面91Lの屈曲箇所近傍に設けられた図示しない孔から突起部94aのみが前方に突出した突出状態(例えば図7に示す状態)へと遷移することができる。
【0054】
一方、プールガイド92は、側面視で略台形状の部材である。このプールガイド92は、ビルプレス91と対向する後面が側面視でくの字型に屈曲していて、後面の屈曲箇所より下側の部分(前面の下側2/3程度)が、収容器30の底面に対してほぼ垂直な下側平面92Lとなっていて、後面の屈曲箇所より上側の部分(前面の上側1/3程度)が、下側平面92Lの上端から前方ななめ上に延びる上側平面92Uとなっている。このプールガイド92は、ビルプレス91とは独立して、収容器30の底面に沿って前後方向に移動可能な構成となっている。
【0055】
尚、図は省略するが、このプールガイド92も、下端部が、凹部と凸部とを左右方向に交互に配置した所謂櫛歯状に形成されていて、リフト93の上端部と噛み合うようになっている。これにより、リフト93は、ビルプレス91及びプールガイド92が上方に位置していても、例えば、リフト93側の凸部93bがビルプレス91側の凹部91aの上端(もしくはプールガイド92側の凹部の上端)に到達するまでの範囲で、上方に移動することができる。
【0056】
分離繰出機構81は、フィードローラ100と、ゲートローラ101と、ピックアップローラ102とを有している。フィードローラ100とゲートローラ101は、収容器30の前端の底面付近に設けられ、取込口90aを挟んでフィードローラ100が前側、ゲートローラ101が後側となる位置関係で前後方向に対向配置されている。ピックアップローラ102は、収容器30内部の前端で、且つフィードローラ100の上方に設けられている。ピックアップローラ102は、プールガイド92が取込口90a近傍に移動してきたときに、プールガイド92の下側平面92Lに設けられた図示しない孔から突出するようになっている。そしてこのとき、ピックアップローラ102は、図中時計回り方向に回転することで、ビルプレス91とプールガイド92との間に収容されている紙幣のうちの1番前側に位置する紙幣と接触して、その紙幣を取込口90aへと送り出すようになっている。フィードローラ100とゲートローラ101は、ゲートローラ101は回転せずにフィードローラ100のみが回転することで、ピックアップローラ102により送り出されてきた紙幣を1枚ずつ分離しながら取込口90aから搬送路32へと繰り出すようになっている。
【0057】
集積機構82は、集積ローラ110とプレッシャローラ111とを有している。集積ローラ110とプレッシャローラ111は、収容器30の後端の底面付近に設けられ、放出口90bを挟んで集積ローラ110が前側、プレッシャローラ111が後側となる位置関係で前後方向に対向配置されている。集積機構82では、集積ローラ110を図中時計回り方向に回転させる一方で、プレッシャローラ111を図中反時計回り方向に回転させることにより、搬送路33に沿って収容器30へと搬送されてきた紙幣を、放出口90bから、放出口90b近傍に位置しているビルプレス91とプールガイド92との間に放出して集積させるようになっている。接客部21の構成は、以上のようになっている。
【0058】
[5.ビルプレスとプールガイドのポジション]
次に、収容器30内部でのビルプレス91とプールガイド92のポジションについて説明する。ここでは、ビルプレス91とプールガイド92のポジションとして、ビルプレス91とプールガイド92の間の集積空間Spに紙幣を集積する為の集積ポジションと、ビルプレス91とプールガイド92の間の集積空間Spに集積された紙幣を使用者に引き渡す為の引き渡しポジションとについて説明する。尚、ビルプレス91とプールガイド92は前後方向に対向配置されている為、集積ポジションは、ビルプレス91とプールガイド92とで異なる位置に設定されている。同様に、引き渡しポジションも、ビルプレス91とプールガイド92とで異なる位置に設定されている。
【0059】
まず図6に示す拡大図を用いて、集積ポジションについて説明する。接客部21は、搬送路33に沿って搬送されてくる紙幣(例えば出金する紙幣)を、ビルプレス91とプールガイド92の間の集積空間Spに集積する為に、ビルプレス91とプールガイド92を集積ポジションに位置させる。
【0060】
すなわち、接客部21は、ビルプレス91とプールガイド92とを放出口90b近傍へと移動させるとともに、ビルプレス91を上側平面91Uが収容器30の底面に対してほぼ垂直となるように回転させることで、ビルプレス91とプールガイド92のそれぞれを集積ポジションに位置させる。このとき、ビルプレス91は、上側平面91Uが、プールガイド92の下側平面92Lとほぼ平行になるとともに、下側平面91Lがプールガイド92の下側平面92Lに対して後方に傾いた状態となる。またこのとき、ビルプレス91は、上側平面91Uが放出口90bよりも前方に位置するとともに、上側平面91Uの下端と放出口90bとの間に下側平面91Lが位置する状態となる。つまり、ビルプレス91の下側平面91Lは、放出口90bから放出される紙幣BLを、ビルプレス91の上側平面91Uとプールガイド92の下側平面92Lとの間に案内するガイドとして機能する。一方、プールガイド92は、上側平面92Uをビルプレス91の上側平面91Uに近接させた状態となる。
【0061】
この状態で、接客部21は、集積機構82を駆動させることで、紙幣BLを、放出口90bからビルプレス91とプールガイド92の間の集積空間Spへと放出して、ビルプレス91の上側平面91Uとプールガイド92の上側平面92Uとの間に前後方向に重なるようにして集積していく。またこのとき接客部21は、集積する紙幣BLの枚数が増えるにつれて、プールガイド92をビルプレス91から離れる方向に徐々に移動させていくようになっている。
【0062】
つづけて、図7に示す拡大図を用いて、引き渡しポジションについて説明する。接客部21は、ビルプレス91とプールガイド92の間の集積空間Spに集積された紙幣(例えば出金する紙幣)を使用者に引き渡す為に、ビルプレス91とプールガイド92を引き渡しポジションに位置させる。
【0063】
すなわち、接客部21は、ビルプレス91とプールガイド92との間の集積空間Spに紙幣BLを集積した状態で、ビルプレス91を、下側平面91Lが収容器30の底面に対してほぼ垂直となるように回転させるとともに、ビルプレス91とプールガイド92とを取込口90aと放出口90bの間のほぼ中央へと移動させることで、ビルプレス91とプールガイド92のそれぞれを引き渡しポジションに位置させる。このとき、ビルプレス91は、下側平面91Lが、プールガイド92の下側平面92Lとほぼ平行になるとともに、上側平面91Uがプールガイド92の下側平面92Lに対して後方に傾いた状態となる。一方、プールガイド92は、プールガイド92の下側平面92Lとビルプレス91の下側平面91Lとの距離が、集積空間Spに集積している紙幣BLの束の厚さよりも大きくなるように、ビルプレス91から離れた状態となる。
【0064】
またこのとき、接客部21は、リフト93を上方に所定量だけ移動させることで、ビルプレス91とプールガイド92との間の集積空間Spに集積された紙幣BLの束を上方に押し出すとともに、レバー94を退避状態から突出状態へと回転させるようになっている。尚、レバー94は、突出状態となることにより、例えば、静電気などによってビルプレス91に張り付いてしまった紙幣を、ビルプレス91から引き剥がすことができる。その後、接客部21は、シャッタ31を開き、入出金口5から使用者に紙幣を引き渡すようになっている。
【0065】
[6.ビルプレスとプールガイドの動作]
次に、図8図12と、図13(A)に示すタイミングチャートを用いて、上述した集積ポジションから引き渡しポジションへと移るときのビルプレス91とプールガイド92の動作について説明する。ここで、図13(A)に示すタイミングチャートは、横軸を時間、縦軸をビルプレス91の前面下端、及びプールガイド92の後面下端の位置(具体的には収容器30の後面からの距離)を示している。尚、以下に示すビルプレス91とプールガイド92の動作は、紙幣制御部20により制御される動作である。
【0066】
まず集積ポジションで複数枚の紙幣BLの集積が完了した時点t0(図13(A)参照)のビルプレス91とプールガイド92を図8に示す。このとき、ビルプレス91の上側平面91Uと、プールガイド92の下側平面92Lとの間に紙幣BLの束が集積された状態となっている。この時点t0での(つまり集積ポジションでの)、ビルプレス91の前面下端の位置をP1b、プールガイド92の後面下端の位置をP2bとする(図13(A)参照)。
【0067】
接客部21は、このようにして紙幣BLの集積が完了すると、時点t0から時点t1までの間に、図9に示すように、ビルプレス91を下側平面91Lが収容器30の底面に対してほぼ垂直となるように(つまりプールガイド92の下側平面92Lとほぼ平行になるように)図中反時計回り方向に回転させる。このとき、ビルプレス91の前面下端が、プールガイド92の後面下端へと近づくことで、下側平面91Lとプールガイド92の下側平面92Lとの間に紙幣BLの束が挟み込まれた状態となる。
【0068】
時点t1以降、接客部21は、図10に示すように、ビルプレス91とプールガイド92との間隔を維持したまま(つまり集積している紙幣BLの束の厚さと同程度の間隔を維持したまま)、ビルプレス91とプールガイド92とをそれぞれほぼ同じ速度で引き渡しポジションへと向かう方向(前方)に移動させる。そして接客部21は、ビルプレス91が引き渡しポジションに到達した時点t2で、ビルプレス91を停止させる。この時点t2でのビルプレス91の前面下端の位置をP2bとする。
【0069】
このように、接客部21では、時点t1から時点t2までの期間において、ビルプレス91とプールガイド92との間隔を維持したまま、ビルプレス91とプールガイド92とをそれぞれに設定された引き渡しポジションへと向かう方向(前方)に移動させるようにしたことにより、移動中に、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積された紙幣の束がばらけてしまうことを防ぐことができるようになっている。
【0070】
さらに接客部21は、ビルプレス91を停止させた時点t2以降も、図11に示すように、プールガイド92をそのまま前方に移動させ続け、プールガイド92が引き渡しポジションに到達した時点t3でプールガイド92を停止させる。この時点t3でのプールガイド92の後面下端の位置をP2pとする。
【0071】
このように、接客部21は、ビルプレス91を引き渡しポジションに停止させた後、時点t2から時点t3までの期間において、プールガイド92をさらに所定量だけ移動させて引き渡しポジションまで移動させることで、集積している紙幣BLの束の厚さと同程度の間隔を維持した状態でビルプレス91とプールガイド92の両方を移動させていたときよりも、ビルプレス91とプールガイド92との間隔を広げるようになっている。これにより、接客部21は、ビルプレス91とプールガイド92とを引き渡しポジションまで移動させたときに、ビルプレス91とプールガイド92との間隔を、集積している紙幣BLの束の厚さよりも大きくすることができ、ビルプレス91とプールガイド92との間から紙幣BLの束を取り出し易くすることができる。
【0072】
またこのとき、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積されている紙幣BLのそれぞれは、収容器30全体が前方に傾いていることから、紙幣BLの重心から重力方向に延ばした仮想線と収容器30の底面との交点Pxが、紙幣BLの下端と収容器30の底面との接触部分よりも前方(つまりプールガイド92側)に位置する。
【0073】
この為、図12に示すように、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積されている紙幣BLのそれぞれは、プールガイド92が前方に離れると、下端部をビルプレス91側に残したまま上端部がプールガイド92側に近づくように倒れて、プールガイド92の前面に倒れ掛かった状態となる。こうすることで、接客部21は、ビルプレス91からプールガイド92が離れてこれらの間隔が広がっても、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積された紙幣BLの束がばらけることを防いで、紙幣BLの束を取り出し易くすることができる。尚、図11図12では、説明の都合上、プールガイド92が引き渡しポジションに到達した後、紙幣BLがプールガイド92に倒れ掛かるようになっているが、実際には、プールガイド92がビルプレス91から離れていく過程で、紙幣BLが徐々にプールガイド92側に倒れていく。またこのとき引き渡しポジションに位置するビルプレス91とプールガイド92との距離が離れすぎると、紙幣BLがロアフレーム90まで倒れてしまい、紙幣BLを取り出し難くなってしまう。よって、時点t2から時点t3の間のプールガイド92の移動距離は、紙幣BLの短手方向よりは短くなっている。
【0074】
このように、接客部21は、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積されている紙幣BLを、プールガイド92側に倒れ掛けることができるので、ビルプレス91とプールガイド92との間隔を広げても、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積された紙幣がばらけてしまうことを防ぐことができるようになっている。
【0075】
このようにして、接客部21は、ビルプレス91とプールガイド92を、集積ポジションから引き渡しポジションへと移動させるようになっている。その後、接客部21は、図7に示すように、引き渡しポジションのビルプレス91とプールガイド92との下方に配置されているリフト93を上昇させることで、プールガイド92の前面に倒れ掛かった状態の紙幣BLの束を入出金口5へと近づけて、使用者に取り出し易くするようになっている。またこのとき、接客部21は、リフト93の上昇にともなって、レバー94が退避状態から突出状態へと回転することで、例えば、静電気などによりビルプレス91に張り付いてしまった紙幣BLを、ビルプレス91から引き剥がして、取り出し易くするようになっている。
【0076】
[7.まとめと効果]
ここまで説明したように、紙幣入出金機10は、紙幣制御部20がビルプレス91とプールガイド92とを集積ポジションから引き渡しポジションへと移動させる間に、ビルプレス91とプールガイド92の両方を移動させる時点t1から時点t2までの期間(これを第1の期間とする)と、プールガイド92のみを移動させる時点t2から時点t3までの期間(これを第2の期間とする)とを設けるようにした。
【0077】
こうすることで、紙幣入出金機10は、第1の期間において、ビルプレス91とプールガイド92との間隔を維持した状態で、ビルプレス91とプールガイド92とを集積ポジションから引き渡しポジションへと向かう方向に移動させることができるので、移動中に、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積された紙幣がばらけてしまうことを防ぐことができる。また第2の期間において、ビルプレス91とプールガイド92との間隔を広げることができるので、紙幣を取り出し易くすることができる。
【0078】
また紙幣入出金機10では、接客部21に、引き渡しポジションに位置するビルプレス91とプールガイド92との間に集積されている紙幣を、入出金口5に近づける方向に押し上げるリフト93を設けた。これにより、紙幣入出金機10では、より一層、紙幣を取り出し易くすることができる。
【0079】
さらに紙幣入出金機10では、接客部21に、リフト93の動作と連動してビルプレス91の前面(プールガイド92側の一面)から突出することで、ビルプレス91に張り付いている紙幣をビルプレス91から引き剥がすレバー94を設けるようにした。これにより、紙幣入出金機10では、ビルプレス91に紙幣が張り付いてしまう状況を回避することができ、より一層、紙幣を取り出し易くすることができる。
【0080】
ここで、本実施の形態の紙幣入出金機10のように、ビルプレス91を引き渡しポジションに停止させた後、プールガイド92をさらに移動させて引き渡しポジションまで移動させるのではなく、ビルプレス91とプールガイド92との間隔を徐々に広げながら、ビルプレス91とプールガイド92を引き渡しポジションまで移動させる場合について簡単に説明する。
【0081】
この場合のビルプレス91とプールガイド92の動作を、図13(B)に示すタイミングチャートを用いて説明する。この場合、紙幣入出金機10は、集積ポジションで複数枚の紙幣BLの集積が完了した時点t0から時点t1までの間にビルプレス91を回転させる。このときの動作は、図13(A)に示す動作と同一である。
【0082】
その後、時点t1から時点t2までの間に、ビルプレス91とプールガイド92は、徐々に間隔を広げながら移動していき、時点t2で、それぞれが引き渡しポジションに到達して停止する。この場合、ビルプレス91とプールガイド92とを引き渡しポジションまで移動させながら、ビルプレス91とプールガイド92との間隔が徐々に広がっていく為、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積された紙幣がばらけてしまうことがある(図14参照)。
【0083】
このようにビルプレス91とプールガイド92との間で紙幣がばらけてしまう場合、レバー94に、ビルプレス91から紙幣を引き剥がす機能にくわえて、ビルプレス91側に倒れ掛かってきた紙幣をプールガイド92側へと押し返して、紙幣をプールガイド92側に倒れ掛けさせる機能を持たせる必要が出てくる。
【0084】
この場合、例えば、図7に点線で示すように、レバー94に、突起部94aよりもビルプレス91からの突出量が大きい突起部94xを設けなければならず、この突起部94xが、紙幣を取り出すときの邪魔になる可能性がある。
【0085】
これに対して、本実施の形態の紙幣入出金機10では、ビルプレス91を引き渡しポジションに停止させた後で、プールガイド92をビルプレス91から離すことで、自然に紙幣がプールガイド92の前面に倒れ掛かるようにした。こうすることで、本実施の形態の紙幣入出金機10では、レバー94に、紙幣をビルプレス91から引き剥がす為に最低限必要な突出量の突起部94aを設ければよく、紙幣を取り出すときに突起部94aが邪魔にならず、紙幣を取り出し易くすることができる。
【0086】
[8.他の実施の形態]
[8-1.他の実施の形態1]
さらに上述した実施の形態では、第1の期間において、ビルプレス91とプールガイド92をそれぞれ引き渡しポジションへと向かう方向(前方)に移動させ、ビルプレス91が引き渡しポジションに到達するとビルプレス91を停止させ、その後、第2の期間において、プールガイド92のみをビルプレス91から遠ざかる方向(前方)に移動させて引き渡しポジションに到達させるようにした。これに限らず、例えば、第1の期間において、ビルプレス91とプールガイド92をそれぞれ引き渡しポジションへと向かう方向(前方)に移動させ、プールガイド92が引き渡しポジションに到達するとプールガイド92を停止させ、その後、第2の期間において、ビルプレス91のみをプールガイド92から遠ざかる方向(後方)に移動させて引き渡しポジションに到達させるようにしてもよい。
【0087】
またこれに限らず、例えば、ビルプレス91とプールガイド92をそれぞれ引き渡しポジションへと向かう方向(前方)に移動させ、ビルプレス91が引き渡しポジションに到達するとビルプレス91を停止させ、その後、例えばビルプレス91をわずかに後方へ戻しながら、プールガイド92を前方へ移動させて引き渡しポジションに到達させるなどしてもよい。
【0088】
[8-2.他の実施の形態2]
さらに上述した実施の形態では、第1の期間において、ビルプレス91が引き渡しポジションに到達するとビルプレス91を停止させ、その後、第2の期間において、プールガイド92のみをビルプレス91から遠ざかる方向(前方)に所定量だけ移動させて引き渡しポジションに到達させるようにした。ここで、ビルプレス91を停止させてからのプールガイド92の移動量については、予め設定された一定量であってもよいし、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積されている紙幣の枚数に応じて変化させるようにしてもよい。ビルプレス91を停止させてからのプールガイド92の移動量を、ビルプレス91とプールガイド92との間に集積されている紙幣の枚数に応じて変化させる場合、例えば、集積されている紙幣の枚数が多いほど移動量を多くすればよい。
【0089】
[8-3.他の実施の形態3]
さらに上述した実施の形態では、ビルプレス91に設けられているレバー94の当接部94bがリフト93に押し上げられることでレバー94が回転して退避状態から突出状態へと遷移するようにしたが、これに限らず、例えば、他のリンク機構でレバー94とリフト93とを連結して、リフト93の上昇にともなってレバー94が回転するようにしてもよい。またこれに限らず、レバー94を、例えばモータの駆動力などにより、リフト93とは独立して回転させるようにしてもよい。
【0090】
[8-4.他の実施の形態4]
さらに上述した各実施の形態では、本発明を、媒体処理装置としての紙幣入出金機10に適用したが、これに限らず、例えば、金券、商品券、切符、帳票などの紙幣以外の媒体を処理する媒体処理装置に適用してもよい。さらに上述した各実施の形態では、本発明を、自動取引装置としての現金自動預払機1に適用したが、これに限らず、例えば、金券、商品券、切符、帳票などの紙幣以外の媒体を扱う自動取引装置に適用してもよい。さらに上述した各実施の形態では、入金取引と出金取引の両方に対応する紙幣入出金機10及び現金自動預払機1に本発明を適用したが、これに限らず、出金取引のみに対応する媒体処理装置及び自動取引装置に適用してもよい。
【0091】
[8-5.他の実施の形態5]
さらに上述した各実施の形態では、紙幣入出金機10に、ビルプレス91、プールガイド92、リフト93、レバー94の動作を制御する制御部の具体例として、紙幣制御部20を設けたが、これに限らず、例えば、接客部21にこれらを制御する制御部を設けるなどしてもよい。
【0092】
[8-6.他の実施の形態6]
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、ビルプレスとプールガイドとを備え、これらの間に媒体を集積する様々な装置で利用できる。
【符号の説明】
【0094】
1……現金自動預払機、5……入出金口、10……紙幣入出金機、20……紙幣制御部、21……接客部、30、200……収容器、31……シャッタ、90……ロアフレーム、90a……取込口、90b……放出口、91、201……ビルプレス、92、202……プールガイド、93……リフト、94……レバー、94a……突起部、94b……当接部、94c……回転軸、BL……紙幣。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14