(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/14 20140101AFI20230808BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230808BHJP
E05B 81/06 20140101ALI20230808BHJP
E05B 81/16 20140101ALI20230808BHJP
E05B 81/30 20140101ALI20230808BHJP
E05B 81/50 20140101ALI20230808BHJP
【FI】
E05B81/14
B60J5/00 N
E05B81/06
E05B81/16
E05B81/30
E05B81/50
(21)【出願番号】P 2019217020
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷野 泰朗
(72)【発明者】
【氏名】園 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】林 卓臣
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111939(JP,A)
【文献】特開2020-143423(JP,A)
【文献】特開2006-22521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放位置と非開放位置との間を回転可能であり、前記開放位置にて機械的操作により作動したときには車体に開閉可能に連結された車両ドアが開放可能になり、前記非開放位置にて機械的操作により作動したときには前記車両ドアが開放できないように構成された機械的開放機構と、
通電されることにより正逆回転する電動モータと、
前記電動モータの回転が伝達されることにより第一回転位置と第二回転位置との間を回転する回転部材と、
前記回転部材を前記第一回転位置と前記第二回転位置との間の中立位置に弾性付勢する第一付勢部材と、
アンロック位置とロック位置との間を回転可能であり、前記ロック位置から前記アンロック位置に回転した場合に前記機械的開放機構が前記非開放位置から前記開放位置に回転し、前記アンロック位置から前記ロック位置に回転した場合に前記機械的開放機構が前記開放位置から前記非開放位置に回転するように、前記機械的開放機構に連結されるアクティブレバーと、
初期位置と作動位置との間を回転可能に構成され、前記初期位置から前記作動位置まで回転することにより、前記機械的開放機構を作動させることなく前記車両ドアを開放することができるように構成されたリリースレバーと、
前記回転部材の回転軌跡から外れた退避位置と前記回転部材の回転軌跡内の阻止位置との間を移動可能に構成された阻止レバーと、
前記阻止レバーを前記退避位置に向かう方向に弾性付勢する第二付勢部材と、
を備え、
前記アクティブレバーは、前記ロック位置にあるときに前記回転部材が前記中立位置から前記第一回転位置まで回転した場合に前記ロック位置から前記アンロック位置に向かう方向に回転するとともに、前記アンロック位置にあるときに前記回転部材が前記中立位置から前記中立位置と前記第二回転位置との間の第三回転位置まで回転した場合に前記アンロック位置から前記ロック位置に向かう方向に回転するように、前記回転部材に係合し、
前記リリースレバーは、前記回転部材が前記中立位置から前記第二回転位置まで回転した場合に前記第二回転位置にて前記初期位置から前記作動位置まで回転するように、前記回転部材に係合し、
前記阻止レバーは、前記アクティブレバーが前記ロック位置から前記アンロック位置に回転した時に前記第二付勢部材の弾性付勢力に抗して前記退避位置から前記阻止位置に移動するように、前記アクティブレバーに係合し、
前記回転部材は、前記アクティブレバーが前記アンロック位置にあるときに前記中立位置から前記第三回転位置に向かう方向に回転した場合に、前記第三回転位置にて前記阻止レバーに係合することにより、前記第三回転位置から前記第二回転位置に向かう方向への回転が阻止されるように構成される、
車両用ドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記アクティブレバーが前記アンロック位置にあるときに前記回転部材が前記中立位置から前記第三回転位置まで回転した場合に、前記アクティブレバーが前記ロック位置まで回転するとともに、前記阻止レバーは前記回転部材との係合により前記阻止位置に保持される、
車両用ドアロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記回転部材は、前記阻止レバーに係合可能な係合部を有し、
前記係合部は、前記アクティブレバーが前記アンロック位置にあるときに前記回転部材が前記中立位置から前記第三回転位置まで回転した場合に、前記第三回転位置にて前記阻止レバーの移動方向に交差する方向から前記阻止レバーに係合する、
車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置には、電気的操作(例えば電動モータの駆動力)により車両ドアを開放する電気駆動手段を有するものがある。特許文献1には、電動モータの回転動力によって回転する回転部材と、この回転部材の回転によって作動するトリガレバーとを有し、トリガレバーを作動させて電気的に車両ドアを開放する通常操作が行われる車両用ドアロック装置が開示される。この車両用ドアロック装置では、電気的操作により車両ドアを開放する際に、ロックレバーは常にロック位置に保持される。また、電気的操作により車両ドアを開放する通常操作から機械的操作(例えばドアハンドルの手動操作)により車両ドアを開放する緊急操作に切り替える場合には、回転部材が通常操作時の回転方向とは反対の方向に回転し、ロックレバーがロック位置からロック解除位置まで移動する。これにより機械的操作により車両ドアを開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
一つの電動モータの正逆回転方向の切替えによって、ロック状態(機械的操作により車両ドアを開放することができない状態)とアンロック状態(機械的操作により車両ドアを開放することができる状態)とアンラッチ状態(電気的操作により車両ドアが開放する状態。「リリース状態」と称することもある)の3つの状態を切り替える場合、各状態を適切に切り替えることが困難な場合がある。例えば、電動モータの駆動により回転する回転部材にアンロック対応位置(車両用ドアロック装置をロック状態からアンロック状態に切り替える位置)とロック対応位置(車両用ドアロック装置をアンロック状態からロック状態に切り替える位置)とリリース位置(車両用ドアロック装置をアンラッチ状態に切り替えて車両ドアを開放することができる位置)を設定し、アンロック対応位置とリリース位置との間にロック対応位置を設定した場合において、アンロック状態からロック状態に切り替える場合、回転部材はアンロック対応位置からロック対応位置に向かって回転することとなる。しかしながら、回転部材をロック対応位置で停止させようとしても、モータの回転軸と回転部材の慣性によってロック対応位置を行き過ぎるおそれがある。そして、回転部材がロック対応位置を行き過ぎてリリース位置に達すると、車両用ドアロック装置がアンラッチ状態に切り替わってしまうことになる。このように、電動モータの回転方向の正逆の切り替えによって3つの状態を適切に切り替えることは困難であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電動モータの回転方向の正逆の切り替えにより3つの状態の切り替えが適切に行われ得る車両用車両用ドアロック装置を提供することを目的とする。
【0006】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用ドアロック装置(2)は、開放位置と非開放位置との間を回転可能であり、開放位置にて機械的操作により作動したときには車体(10)に開閉可能に連結された車両ドア(12)が開放可能になり、非開放位置にて機械的操作により作動したときには車両ドア(12)が開放できないように構成された機械的開放機構(オープンリンク(27))と、通電されることにより正逆回転する電動モータ(22)と、電動モータ(22)の回転が伝達されることにより第一回転位置(アンロック対応位置)と第二回転位置(アンラッチ対応位置)との間を回転する回転部材(23)と、回転部材(23)を第一回転位置(アンロック対応位置)と第二回転位置(アンラッチ対応位置)との間の中立位置に弾性付勢する第一付勢部材(回転部材付勢部材(24))と、アンロック位置とロック位置との間を回転可能であり、ロック位置からアンロック位置に回転した場合に機械的開放機構(オープンリンク(27))が非開放位置から開放位置に回転し、アンロック位置からロック位置に回転した場合に機械的開放機構(オープンリンク(27))が開放位置から非開放位置に回転するように、機械的開放機構(オープンリンク(27))に連結されるアクティブレバー(25)と、初期位置と作動位置との間を回転可能に構成され、初期位置から作動位置まで回転することにより、機械的開放機構(オープンリンク(27))を作動させることなく車両ドア(12)を開放することができるように構成されたリリースレバー(26)と、回転部材(23)の回転軌跡から外れた退避位置と回転部材(23)の回転軌跡内の阻止位置との間を移動可能に構成された阻止レバー(33)と、阻止レバー(33)を退避位置に向かう方向に弾性付勢する第二付勢部材(阻止レバー付勢部材(34))と、を備える。
【0007】
アクティブレバー(25)は、ロック位置にあるときに回転部材(23)が中立位置から第一回転位置(アンロック対応位置)まで回転した場合にロック位置からアンロック位置に向かう方向に回転するとともに、アンロック位置にあるときに回転部材(23)が中立位置から中立位置と第二回転位置(アンラッチ対応位置)との間の第三回転位置(ロック対応位置)まで回転した場合にアンロック位置からロック位置に向かう方向に回転するように、回転部材(23)に係合する。リリースレバー(26)は、回転部材(23)が中立位置から第二回転位置(アンラッチ対応位置)まで回転した場合に第二回転位置(アンラッチ対応位置)にて初期位置から作動位置まで回転するように、回転部材(23)に係合する。阻止レバー(33)は、アクティブレバー(25)がロック位置からアンロック位置に回転した時に第二付勢部材(阻止レバー付勢部材(34))の弾性付勢力に抗して退避位置から阻止位置に移動するように、アクティブレバー(25)に係合する。そして、回転部材(23)は、アクティブレバー(25)がアンロック位置にあるときに中立位置から第三回転位置(ロック対応位置)に向かう方向に回転した場合に、第三回転位置(ロック対応位置)にて阻止レバー(33)に係合することにより、第三回転位置(ロック対応位置)から第二回転位置(アンラッチ対応位置)に向かう方向への回転が阻止されるように構成される。
【0008】
発明がこのように構成されると、車両用ドアロック装置(2)をアンロック状態(アクティブレバー(25)がアンロック位置にある状態)からロック状態(アクティブレバー(25)がロック位置にある状態)に切り替える場合、電動モータ(22)が通電されて回転部材(23)が中立位置から回転移動して第三回転位置(ロック対応位置)にまで回転する。回転部材(23)が第三回転位置(ロック対応位置)に達すると、回転部材(23)は第三回転位置(ロック対応位置)にて阻止位置にある阻止レバー(33)に当接し、それ以上は第二回転位置(アンラッチ対応位置)の側に向かって回転できない。このため、回転部材(23)を第三回転位置(ロック対応位置)で停止させることができる。また、回転部材(23)が第三回転位置(ロック対応位置)に達すると、アクティブレバー(25)がアンロック位置からロック位置に回転する。これにより車両用ドアロック装置(2)をロック状態に切り替えることができる。その後、電動モータ(22)への通電が停止されると、回転部材(23)が第一付勢部材(24)の弾性付勢力により中立位置に戻される。このとき阻止レバー(33)はアクティブレバー(25)との係合が解けることにより、第二付勢部材(34)の弾性付勢力により退避位置に移動する。
【0009】
また、車両用ドアロック装置(2)をアンラッチ状態に切り替える場合、電動モータ(22)が通電されて回転部材(23)が中立位置から第二回転位置(アンラッチ対応位置)にまで回転する。ここで、車両用ドアロック装置(2)がロック状態であって回転部材(23)が中立位置にある場合には、阻止レバー(33)は退避位置に位置する。よって、回転部材(23)は阻止レバー(33)により進路を妨害されることなく中立位置から第三回転位置(ロック対応位置)を超えて第二回転位置(アンラッチ対応位置)にまで回転移動できる。これによりリリースレバー(26)を初期位置から作動位置に回転させて、電気的操作により(電動モータ(22)の回転動力により)車両ドアを開放させることができる。その後、電動モータ(22)への通電が停止されると、回転部材(23)が第一付勢部材(24)の弾性付勢力により中立位置に戻される。
【0010】
また、車両用ドアロック装置(2)をロック状態からアンロック状態に切り替える場合、電動モータ(22)が通電されて回転部材(23)が中立位置から第二回転位置(アンラッチ対応位置)および第三回転位置(ロック対応位置)とは反対側の第一回転位置(アンロック対応位置)にまで回転移動する。回転部材(23)が第一回転位置(ロック対応位置)に達すると、アクティブレバー(25)がロック位置からアンロック位置に回転する。これにより車両用ドアロック装置(2)をアンロック状態に切り替えることができる。その後、電動モータ(22)への通電が停止されると、回転部材(23)が第一付勢部材(24)の弾性付勢力により中立位置に戻される。このように、本発明によれば、電動モータ(22)の回転方向の正逆の切り替えにより3つの状態の切り替えが可能になる。
【0011】
そして、本発明によれば、アンロック状態からロック状態に切り替える際に、回転部材(23)が第三回転位置(ロック対応位置)にて阻止レバー(33)と係合することにより、回転部材(23)が第三回転位置(ロック対応位置)を行き過ぎて第二回転位置(アンラッチ位置)に達することが阻止される。このため、アンロック状態からロック状態に切り替える際に、ラッチ機構(40)がアンラッチ状態に切り替わることが阻止される。よって、本発明によれば、3つの状態(ロック状態、アンロック状態、及びアンラッチ状態)を、適切に切り替えることができる。
【0012】
本発明において、機械的開放機構(オープンリンク(27))は、開放位置にて機械的操作により作動したときには車体(10)に開閉可能に連結された車両ドア(12)に設けられたラッチ(41)と車体(10)に固定されたストライカ(101)との噛み合いを解除することによって車両ドア(12)を開放し、非開放位置にて機械的操作により作動したときにはラッチ(41)とストライカ(101)との噛み合いを解除しないことによって車両ドア(12)が開放されないように構成されていてもよい。また、リリースレバー(26)は、初期位置と作動位置との間を回転可能に構成され、初期位置から作動位置まで回転することにより、機械的開放機構(オープンリンク(27))を作動させることなくラッチ(41)とストライカ(101)との噛み合いを解除することができるように構成されていてもよい。
【0013】
また、本発明は、アクティブレバー(25)がアンロック位置にあるときに回転部材(23)が中立位置から第三回転位置(ロック対応位置)まで回転した場合に、アクティブレバー(25)がロック位置まで回転するとともに、阻止レバー(33)は回転部材(23)との係合により阻止位置に保持される、という構成であってもよい。この場合、アクティブレバー(25)がアンロック位置にあるときに回転部材(23)が中立位置から第三回転位置(ロック対応位置)まで回転した場合に、回転部材(23)が阻止位置にある阻止レバー(33)に係合した後に、アクティブレバー(25)がアンロック位置からロック位置に回転するように構成されていると良い。
【0014】
発明がこのように構成されると、回転部材(23)が第三回転位置(ロック対応位置)にて阻止レバー(33)に係合し、その係合力により阻止レバー(33)が阻止位置に保持されたまま、アクティブレバー(25)がアンロック位置からロック位置に回転する。このため、アクティブレバー(25)がロック位置に回転した後においても、回転部材(23)と阻止レバー(33)との係合が維持されるので、回転部材(23)を第三回転位置(ロック対応位置)にて精度良く停止させることができる。
【0015】
また、本発明は、回転部材(23)が阻止レバー(33)に係合可能な係合部(第四係合部(234))を有し、この係合部(第四係合部(234))は、アクティブレバー(25)がアンロック位置にあるときに回転部材(23)が中立位置から第三回転位置(ロック対応位置)まで回転した場合に、第三回転位置(ロック対応位置)にて阻止レバー(33)の移動方向に交差する方向から阻止レバー(33)に係合する、という構成であってもよい。この場合、係合部(第四係合部(234))は、回転部材(23)の周方向に延びた壁状突起であり、阻止レバー(33)は、上記突起が挿抜する溝としての第一係合部(331)を有しているとよい。
【0016】
発明がこのように構成されると、回転部材(23)が第三回転位置(ロック対応位置)にて阻止レバー(33)にその移動方向に交差する方向から係合しているので、阻止レバー(33)は阻止位置から退避位置に移動することができない。このため、その後にアクティブレバー(25)がアンロック位置からロック位置に回転した場合においても、回転部材(23)と阻止レバー(33)との係合が維持されて、回転部材(23)を第三回転位置(ロック対応位置)にて精度良く停止させることができる。そして、その後に電動モータへの通電が停止されて、回転部材(23)が第一付勢部材(24)の弾性付勢力により中立位置に戻されると、回転部材(23)と阻止レバー(33)との係合が解けて、阻止レバー(33)は第二付勢部材(34)の弾性付勢力により退避位置に移動する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置が適用された車両ドアの構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置の構成例を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置の構成例および動作を示す図であり、ロック状態を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置の構成例および動作を示す図であり、アンロック状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置の構成例および動作を示す図であり、アンロック状態からロック状態に切り替える動作を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置の構成例および動作を示す図であり、アンロック状態からロック状態に切り替える動作を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置の構成例および動作を示す図であり、アンロック状態からロック状態に切り替える動作を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置の構成例および動作を示す図であり、アンラッチ状態に切り替える動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置2について、図面を参照して説明する。説明の便宜上、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置2を、「ドアロック装置2」と略して記すことがある。
図1は、ドアロック装置2が適用された車両ドア12の側面図であり、車内側から見た図である。
図2は、ドアロック装置2が適用された車両ドア12の後端部近傍の断面図であり、
図1のII-II線断面矢視図である。
【0019】
車両ドア12は、車体10に対して回転可能に連結されており、車体10に対して回転移動することで閉止と開放ができるように構成されている。車両ドア12は、その下半部を構成するドア本体部121と、その上半部に設けられているドアサッシュ122とを備えている。ドア本体部121は、車両ドア12の外側面を構成するアウタパネル124と、このアウタパネル124の車内側に固定されているインナパネル123と、このインナパネル123の車内側に固定されておりドア本体部121の内側面を構成する樹脂製のトリム125とを備えている。アウタパネル124にはアウトサイドドアハンドル127が、トリム125にはインサイドドアハンドル126が、それぞれ車両ドア12に対して回転移動可能に取り付けられている。なお、車両ドア12の構成は特に限定されるものではない。車両ドア12は、車体10に対して回転可能に連結されており、車体10に対して回転移動することで閉止と開放ができるように構成されていればよい。
【0020】
図2に示すように、ドアロック装置2は、車両ドア12の内部空間(すなわち、アウタパネル124とインナパネル123に囲まれる空間)に配置されており、一部は車両ドア12の後端部において外部に露出している。そして、ドアロック装置2はインナパネル123(すなわち車両ドア12)に固定されている。
【0021】
ドアロック装置2は、ラッチ状態とアンラッチ状態とに切替可能なラッチ機構40を有している。ラッチ状態は、車両ドア12を車体10に対して開放不能(以下、「閉止状態」と記すことがある)に保持する状態をいうものとし、アンラッチ状態は車両ドア12の閉止状態を解除可能な状態、すなわち車両ドア12を開放することができる状態、をいうものとする。ラッチ機構40は、車体10に固定されているストライカ101を保持可能なラッチ41と、ラッチ41に係合可能なポールと、ポールに連係しているリフトレバー42とを有している。そして、ラッチ機構40は、リフトレバー42が非解除位置から解除位置に移動することで、ラッチ41がストライカ101に噛み合ってストライカ101を保持している状態(ラッチ状態)から、ラッチ41とストライカ101との噛み合いが解除されてストライカ101の保持を解除できる状態(アンラッチ状態)に切り替わるように構成されている。なお、ラッチ機構40の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。要は、リフトレバー42が非解除位置から解除位置に移動することで、ラッチ機構40がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されていればよい。
【0022】
また、ドアロック装置2は、ロック状態とアンロック状態の切替えができるように構成されている。ロック状態は、車両ドア12に設けられているインサイドドアハンドル126或いはアウトサイドドアハンドル127の手動操作、若しくは外部からの手動操作、すなわち機械的操作によっては、ラッチ41とストライカ101との噛み合いを解除することができない状態、すなわちラッチ機構40をラッチ状態からアンラッチ状態に切替不能な状態(車両ドア12が開放されない状態)をいうものとする。アンロック状態は、インサイドドアハンドル126或いはアウトサイドドアハンドル127の手動操作、若しくは外部からの手動操作、すなわち機械的操作によって、ラッチ41とストライカ101との噛み合いを解除することができる状態、すなわちラッチ機構40をラッチ状態からアンラッチ状態に切替可能な状態(車両ドア12を開放可能な状態)をいうものとする。
【0023】
ドアロック装置2は、後述する電動モータ22の駆動力によって、ロック状態からアンロック状態への切り替えと、アンロック状態からロック状態への切り替えとができるように構成されている。さらにドアロック装置2は、電動モータ22の駆動力によって、ラッチ機構40のラッチ状態からアンラッチ状態への切り替えができるように構成されている。
【0024】
図3は、ドアロック装置2の構成例を示す分解斜視図である。
図4~
図9は、ドアロック装置2の構成例と動作を示す図である。なお、
図4~
図9においては、各部材の位置関係を分かりやすく示すため、一部の線を省略してある。ドアロック装置2は、ハウジング21と、電動モータ22と、回転部材23と、第一付勢部材の例である回転部材付勢部材24と、アクティブレバー25と、節度スプリング35と、阻止レバー33と、第二付勢部材の例である阻止レバー付勢部材34と、リリースレバー26と、インサイドレバー29と、インサイドオープンレバー30と、アウトサイドオープンレバー31と、アウトサイドオープンレバー付勢部材32と、機械的開放機構の例であるオープンリンク27と、前述したラッチ機構40とを有している。
【0025】
ハウジング21は、ドアロック装置2の筐体としての機能を有する部材である。ハウジング21は、第一支持部211~第五支持部215を有している。第一支持部211は、回転部材23を回転可能に支持できるように構成されている。第二支持部212は、リリースレバー26を回転可能に支持できるように構成されている。第三支持部213は、アクティブレバー25とインサイドレバー29を同軸に回転可能に支持できるように構成されている。第四支持部214は、インサイドオープンレバー30を回転可能に支持できるように構成されている。第五支持部215は、アウトサイドオープンレバー31を回転可能に支持できるように構成されている。
【0026】
回転部材23と、アクティブレバー25と、リリースレバー26と、インサイドレバー29と、インサイドオープンレバー30と、アウトサイドオープンレバー31とには、それぞれ軸孔が形成されている。そして、これら各部材の軸孔に第一支持部211~第五支持部215のそれぞれが挿入されることで、これらの各部材が各支持部211~215を中心としてハウジング21に対して回転可能に支持される。なお、本実施形態では、第一支持部211~第五支持部215に円柱状または円筒状の軸などが適用される構成を示すが、第一支持部211~第五支持部215の具体的な構成は限定されるものではない。第一支持部211~第五支持部215は、所定の部材をハウジング21に対して回転可能に支持できるように構成されていればよい。
【0027】
回転部材23と、リリースレバー26と、インサイドレバー29と、インサイドオープンレバー30の軸線C1~C4(回転中心線)はたがいに平行である。また、アウトサイドオープンレバー31の軸線C5(回転中心線)は、リリースレバー26と、インサイドレバー29と、インサイドオープンレバー30の軸線C1~C4(回転中心線)に対して略直角である。また、オープンリンク27は、アウトサイドオープンレバー31に対して回転可能に支持されている。電動モータ22は、ハウジング21に固定されている。
【0028】
電動モータ22は、回転部材23の回転駆動力源であり、通電されることで正逆回転可能である。電動モータ22の回転軸221にはウォーム222が設けられており、電動モータ22はこのウォーム222を介して回転部材23を回転駆動する。なお、電動モータ22は回転部材23を正逆両方向に回転駆動できればよく、具体的な構成は特に限定されるものではない。電動モータ22には、公知の各種モータが適用できる。
【0029】
回転部材23は、第一支持部211によってハウジング21に対して回転可能に支持されており、電動モータ22から伝達される回転動力によって回転するように構成されている。本実施形態では、回転部材23としてウォームホイールが適用され、電動モータ22の回転軸221に設けられているウォーム222と噛み合っている。なお、電動モータ22のウォーム222と回転部材23(ウォームホイール)とは逆駆動可能に構成されている。すなわち、回転部材23は、電動モータ22に通電されていない状態(電動モータ22が駆動していない状態)では、後述する回転部材付勢部材24の付勢力によって回転することが可能である。
【0030】
回転部材23は、電動モータ22の回転軸221の回転が伝達されることで、第一回転位置と第二回転位置との間を回転可能に構成されている。第一回転位置は、ドアロック装置2をアンロック状態に切り替えるための位置である。
図5は回転部材23が第一回転位置に位置する状態を示す。第二回転位置は、ドアロック装置2のラッチ機構40をアンラッチ状態に切り替えるための位置である。
図9は回転部材23が第二回転位置に位置する状態を示す。説明の便宜上、第一回転位置を「アンロック対応位置」と記し、第二回転位置を「リリース位置」と記すことがある。また、回転部材23は、回転部材付勢部材24によって、アンロック対応位置(第一回転位置)とリリース位置(第二回転位置)との間の中立位置に向けて常時弾性付勢されている。このため、回転部材23は、電動モータ22が作動していない場合(電動モータ22に通電されていない場合)には、回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置に保持される。
図4と
図6は回転部材23が中立位置に位置する状態を示す。さらに、中立位置とリリース位置との間には、第三回転位置が設定されている。第三回転位置は、ドアロック装置2をロック状態に切り替えるための位置である。
図8は回転部材23が第三回転位置に位置する状態を示す。説明の便宜上、第三回転位置を「ロック対応位置」と記すことがある。
【0031】
このように、回転部材23は、中立位置から所定の方向(
図4~
図9においては反時計回りの方向)に回転することでアンロック対応位置(第一回転位置)に移動でき、中立位置から前記所定の方向とは反対方向(
図4~
図9においては時計回りの方向)に回転することで、ロック対応位置(第三回転位置)とリリース位置(第二回転位置)に移動できる。
【0032】
回転部材23は、第一係合部231~第四係合部234を有している。回転部材23の第一係合部231は、回転部材23の軸線C1方向の一方側(
図4~
図9においては紙面手前側)であって、回転部材23の軸線C1から半径方向外側に離れた位置(例えば、回転部材23の外周近傍)に位置している。そして、回転部材23の第一係合部231は、回転部材23の軸線C1方向の一方(
図4~
図9においては紙面手前側)に向かって突出する突起状の構成を有しており、アクティブレバー25の第一係合部251と第二係合部252に択一的に係脱自在である。具体的には、回転部材23の第一係合部231は、回転部材23が中立位置からアンロック対応位置に向かって回転移動する際にロック位置にあるアクティブレバー25の第一係合部251に係合してこの第一係合部251を押すように構成され、回転部材23が中立位置からロック対応位置に向かって回転移動する際にアンロック位置にあるアクティブレバー25の第二係合部252に係合してこの第二係合部252を押すように構成されている。
【0033】
回転部材23の第二係合部232は、回転部材23の軸線C1方向に関して第一係合部231が位置する側とは反対側(
図4~
図9においては紙面奥側)であって、回転部材23の軸線C1から半径方向外側に離れた位置(例えば、回転部材23の外周近傍)に位置している。そして、回転部材23の第二係合部232は、回転部材23の軸線C1方向の他方(
図4~
図9においては紙面奥側)に向かって突出する突起状の構成を有しており、リリースレバー26の第一係合部261に係脱可能である。具体的には、回転部材23の第二係合部232は、回転部材23が中立位置からリリース位置に向かって回転移動する際に、リリース位置にてリリースレバー26の第一係合部261に係合してリリースレバー26の第一係合部261を押すように構成されている。
【0034】
回転部材23の第三係合部233は、回転部材23の軸線C1方向に関して第二係合部232と同じ側(
図4~
図9においては紙面奥側)であって、回転部材23の軸線C1から半径方向外側に離れた位置(例えば、回転部材23の外周近傍)に位置している。そして、回転部材23の第三係合部233は、阻止レバー33と当接可能に構成されている。具体的には、回転部材23の第三係合部233は、回転部材23の径方向に延在する壁状に構成され、回転部材23が中立位置からロック対応位置に向かって回転移動する際に、阻止位置(後述)に位置している阻止レバー33に当接するように構成されている。ただし、回転部材23の第三係合部233は、回転部材23の位置にかかわらずリリースレバー26には係合しないように構成されている。
【0035】
回転部材23の第四係合部234は、回転部材23の軸線C1方向に関して第二係合部232および第三係合部233と同じ側であって、回転部材23の軸線C1から半径方向外側に離れた位置(例えば、回転部材23の外周近傍)に位置している。そして、回転部材23の第四係合部234は、阻止位置に位置している阻止レバー33の第一係合部331に係脱自在に構成されている。具体的には、回転部材23の第四係合部234は、第三係合部233から回転部材23の円周方向の一方(回転部材23がアンロック対応位置からロック対応位置に向けて回転する場合における回転方向の前方側)に延出する壁状突起の構成を有している。また、回転部材23の第四係合部234は、回転部材23の回転中心と同軸の略円弧形状を有している。そして、回転部材23の第四係合部234は、回転部材23が中立位置からロック対応位置に回転移動することで、阻止位置に位置している阻止レバー33の第一係合部331に係合するように構成されている。
【0036】
回転部材付勢部材24は、第一付勢部材の例であり、回転部材23を中立位置に向けて弾性付勢するように構成されている。回転部材付勢部材24には、例えば、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネが適用できる。この場合、一方のアームが回転部材23に係合し、他方のアームがハウジング21に係合するという構成が適用できる。なお、回転部材付勢部材24は、前述のようなねじりコイルバネに限定されるものではない。回転部材付勢部材24は、回転部材23を中立位置に向けて弾性付勢するとともに、弾性変形することで、回転部材23がアンロック対応位置、ロック対応位置、リリース位置に回転移動することを許容する構成であればよい。
【0037】
アクティブレバー25は、第三支持部213によってハウジング21に対して回転移動可能に支持されおり、回転することでロック位置とアンロック位置との間を移動可能に構成されている。
図4と
図8はアクティブレバー25がロック位置に位置する状態を示し、
図5~
図7はアクティブレバー25がアンロック位置に位置する状態を示す。アクティブレバー25は、節度スプリング35によって、ロック位置とアンロック位置の一方に向けて弾性付勢されている。具体的には、アクティブレバー25は、ロック位置に近い側に位置する場合には節度スプリング35によってロック位置に向かって弾性付勢され、アンロック位置に近い側に位置する場合には節度スプリング35によってアンロック位置に向かって弾性付勢される。なお、節度スプリング35の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。
【0038】
アクティブレバー25は、回転部材23の第一係合部231に係脱自在な第一係合部251と第二係合部251を有している。アクティブレバー25の第一係合部251は、アクティブレバー25がロック位置に位置する状態では、回転部材23の第一係合部231の移動軌跡上であって、中立位置に位置する回転部材23の第一係合部231から見てアンロック対応位置の側に位置するように構成される(
図4参照)。アクティブレバー25の第二係合部252は、アクティブレバー25がアンロック位置に位置する状態では、回転部材23の第一係合部231の移動軌跡上であって、中立位置に位置する回転部材23の第一係合部231から見てロック対応位置の側に位置するように構成される(
図5、
図6参照)。また、アクティブレバー25の第一係合部251と第二係合部252は、アクティブレバー25がロック位置とアンロック位置のいずれに位置していても、回転部材23が中立位置に位置している場合には、回転部材23の第一係合部231と係合しないように構成される(
図4、
図6参照)。換言すると、回転部材23の第一係合部231は、回転部材23が中立位置に位置する場合には、回転部材23の円周方向に関してアクティブレバー25の第一係合部251と第二係合部252との間に位置するように構成される。
【0039】
そして、アクティブレバー25の第一係合部251は、アクティブレバー25がロック位置に位置するときに、回転部材23が中立位置からアンロック対応位置へ移動した場合、回転部材23の第一係合部231に係合する。そして、アクティブレバー25は、回転部材23の第一係合部231によってアンロック位置に向かって押される。このため、回転部材23が中立位置から第一回転位置(アンロック対応位置)へ移動すると、アクティブレバー25はロック位置からアンロック位置へ向かって移動(回転)する。一方、アクティブレバー25の第二係合部252は、アクティブレバー25がアンロック位置に位置するときに、回転部材23が中立位置からロック対応位置へ移動した場合、回転部材23の第一係合部231に係合する。そして、アクティブレバー25は、回転部材23の第一係合部231によってロック位置に向かって押される。このため、回転部材23が中立位置から第三回転位置(ロック対応位置)へ移動すると、アクティブレバー25はアンロック位置からロック位置に向かって移動(回転)する。
【0040】
このほか、アクティブレバー25は、阻止レバー33の第二係合部332と係脱自在な第三係合部253を有している。アクティブレバー25の第三係合部253は、アクティブレバー25がアンロック位置に位置するときに阻止位置にある阻止レバー33を阻止位置に保持し、アクティブレバー25がロック位置に位置するときに阻止レバー33の阻止位置から退避位置への移動を許容するように構成される。
【0041】
また、アクティブレバー25は、車両ドア12に設けられている図略のキーシリンダと連係している。例えば、アクティブレバー25は図略のコントロールレバーを介してキーシリンダと連結されている。そして、アクティブレバー25はキーシリンダの操作に応じてロック位置からアンロック位置へ、またはアンロック位置からロック位置へ移動するように構成されている。
【0042】
オープンリンク27は、機械的開放機構の例である。オープンリンク27は、アウトサイドオープンレバー31の支持部311によって回転可能に支持されている。このため、オープンリンク27は、アウトサイドオープンレバー31に対して相対的に回転可能であるとともに、アウトサイドオープンレバー31とともにハウジング21に対して相対的に回転可能である。そして、オープンリンク27は、アウトサイドオープンレバー31に対して相対的に回転することで、開放位置と非開放位置との間を移動(回転)可能である。また、オープンリンク27は、アウトサイドオープンレバー31とともに非作動位置と作動位置との間を移動可能である。つまり、オープンリンク27は、開放位置と非開放位置とのそれぞれの位置にて、非作動位置から作動位置に向かって作動可能に構成される。
【0043】
オープンリンク27は第一係合部271と第二係合部272とを有している。オープンリンク27の第一係合部271は、リフトレバー42の第一係合部421に係脱自在に構成されている。具体的には、オープンリンク27の第一係合部271は、オープンリンク27が開放位置に位置する状態でアウトサイドオープンレバー31とともに非作動位置から作動位置へ移動すると、ラッチ機構40のリフトレバー42の第一係合部421を押してリフトレバー42を非解除位置から解除位置へ移動させるように構成されている。このように、オープンリンク27の開放位置は、リフトレバー42を解除位置に移動させることができる位置である。したがって、オープンリンク27が開放位置に位置しているときに、アウトサイドドアハンドル127またはインサイドドアハンドル126の手動操作、或いは外部からの手動操作、すなわち機械的操作によってオープンリンク27を非作動位置から作動位置に作動させた場合、リフトレバー42が非解除位置から解除位置に移動してラッチ41とストライカ101との噛み合いが解除され、車両ドア12の閉止状態が解除される。これにより車両ドア12を開放することができる。
【0044】
一方、オープンリンク27の第一係合部271は、オープンリンク27が非開放位置に位置する状態では、アウトサイドオープンレバー31とともに非作動位置から作動位置に移動しても、リフトレバー42の第一係合部421に係合しない(リフトレバー42を非解除位置から解除位置に移動させない)ように構成されている。このように、オープンリンク27の非開放位置は、オープンリンク27の第一係合部271がリフトレバー42の第一係合部421と係合しない位置(オープンリンク27がリフトレバー42を解除位置に移動させない位置)である。したがって、オープンリンク27が非開放位置に位置しているときに、アウトサイドドアハンドル127またはインサイドドアハンドル126の手動操作、或いは外部からの手動操作、すなわち機械的操作によってオープンリンク27を非作動位置から作動位置に作動させた場合、リフトレバー42が非解除位置に留まり、ラッチ41とストライカ101との噛み合いを解除することができず、車両ドア12の閉止状態を解除することができず、車両ドア12を開放することができない。
【0045】
オープンリンク27の第二係合部272は、オープンリンク付勢部材28と係合する部分である。オープンリンク付勢部材28は、アクティブレバー25の取付部254に取り付けられている。そして、オープンリンク付勢部材28は、アクティブレバー25がロック位置に位置する場合にはオープンリンク27を非開放位置に向けて弾性付勢し、アクティブレバー25がアンロック位置に位置する場合にはオープンリンク27を開放位置に向けて弾性付勢する。オープンリンク付勢部材28には、例えば、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネが適用できる。オープンリンク付勢部材28の2本のアームは略平行であり、2本のアームどうしの間隔が広がるように弾性変形できる。この場合、オープンリンク27の第二係合部272は、オープンリンク27の軸線(アウトサイドオープンレバー31に対する相対的な回転中心線)に平行な方向(
図4~
図9においては紙面手前側)に向かって突出する突起状の構成が適用できる。そして、オープンリンク27の第二係合部272は、オープンリンク付勢部材28の2本のアームの間に位置している。
【0046】
リリースレバー26は、第二支持部212によってハウジング21に対して回転可能に支持されており、初期位置と作動位置の間を回転移動可能である。
図4~
図8はリリースレバー26が初期位置に位置する状態を示し、
図9はリリースレバー26が作動位置に位置する状態を示す。
【0047】
リリースレバー26は、回転部材23の第二係合部232と係脱自在な第一係合部261と、リフトレバー42の第二係合部422に係脱自在な第二係合部262とを有している。そして、リリースレバー26の第一係合部261は、回転部材23が中立位置からリリース位置に向かって回転移動すると、リリース位置にて回転部材23の第二係合部232に係合するように構成されている。リリースレバー26の第一係合部261が回転部材23の第二係合部232に係合して押されると、リリースレバー26は初期位置から作動位置へ移動する。リリースレバー26の第二係合部262は、リリースレバー26が初期位置から作動位置へ移動すると、ラッチ機構40のリフトレバー42の第二係合部422に係合してリフトレバー42を非解除位置から解除位置へ移動させる。このように、リリースレバー26は、回転部材23の中立位置からリリース位置への回転移動に連動して初期位置から作動位置に移動(回転)し、これによりオープンリンク27を作動させることなくリフトレバー42を非解除位置から解除位置に移動させて、ラッチ41とストライカ101との噛み合いを解除し、車両ドア12を開放することができるように構成されている。
【0048】
阻止レバー33は、ドアロック装置2をアンロック状態からロック状態に切り替える際に、回転部材23がロック対応位置を超えてリリース位置の側に移動することを阻止する機能を有する。阻止レバー33は、概ね棒状に形成されており、ハウジング21に対して直線往復移動可能に支持され、退避位置と阻止位置の間を移動可能に構成されている。なお、阻止レバー33の移動方向は、回転部材23の第三係合部233と第四係合部234の回転方向(移動軌跡)に対して交差する方向である。
図4と
図9は阻止レバー33が退避位置に位置する状態を示し、
図5~
図7は阻止レバー33が阻止位置に位置する状態を示す。退避位置は、回転部材23の回転を阻止しない位置であり、具体的には回転部材23の第三係合部233と第四係合部234の回転軌跡の外側の位置である。
【0049】
阻止位置は、阻止レバー33が回転部材23の第三係合部233に当接し且つ回転部材23の第四係合部234と係合することで、回転部材23のロック対応位置からリリース位置へ向かう回転移動を阻止する位置である。具体的には、阻止位置は、阻止レバー33の少なくとも一部が回転部材23の第三係合部233及び第四係合部234の回転軌跡内に入り込んでいる位置であり、かつ、回転部材23がロック対応位置に位置する状態で回転部材23の第三係合部233の側面(回転部材23が中立位置からロック対応位置に向かって回転する場合に、回転方向前側に位置する面)が阻止レバー33に当接する位置である。
【0050】
阻止レバー33は第一係合部331と第二係合部332とを有する。阻止レバー33の第一係合部331は、回転部材23の第四係合部234が挿抜自在な溝として形成される。具体的には、阻止レバー33の第一係合部331としての溝は、阻止レバー33が阻止位置に位置している状態で、阻止レバー33の移動方向(阻止レバー33が阻止位置から退避位置に向かう方向)に交差(本例ではほぼ直交)する方向であって、回転部材23の円周方向に延伸し、回転部材23の第四係合部234の回転移動の軌跡上に位置するように構成されている。このため、阻止レバー33が阻止位置に位置する状態では、回転部材23が中立位置からロック対応位置に回転移動することで、回転部材23の第四係合部234が阻止位置にある阻止レバー33の第一係合部331(溝)に挿抜可能である。そして、阻止レバー33の第一係合部331(溝)に回転部材23の第四係合部234が係合している(嵌まり込んでいる)状態では、阻止レバー33は阻止位置に保持され退避位置に移動できない。
【0051】
阻止レバー付勢部材34は、第二付勢部材の例であり、阻止レバー33を退避位置に向けて常時弾性付勢するように構成されている。阻止レバー付勢部材34には、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネが適用できる。そして、一方のアームが阻止レバー33に係合しており、他方のアームがハウジング21に係合している。なお、阻止レバー付勢部材34の付勢力は、アクティブレバー25を付勢する節度スプリング35の付勢力よりも小さい。
【0052】
阻止レバー33の第二係合部332は、アクティブレバー25の第三係合部253と係脱自在に構成されている。アクティブレバー25がロック位置からアンロック位置へ移動すると、阻止レバー33の第二係合部332がアクティブレバー25の第三係合部253に押され、阻止レバー33は阻止レバー付勢部材34の付勢力に抗して退避位置から阻止位置へ移動する。そして、アクティブレバー25がアンロック位置に位置している状態では、阻止レバー33は阻止位置に保持される。アクティブレバー25がアンロック位置からロック位置へ移動すると、アクティブレバー25の第三係合部253と阻止レバー33の第二係合部332との係合が外れる。
【0053】
インサイドオープンレバー30は、第四支持部214によってハウジング21に対して回転可能に支持されており、非作動位置と作動位置との間を回転移動可能に構成されている。なお、
図4~
図9は、インサイドオープンレバー30が非作動位置に位置する状態を示す。インサイドオープンレバー30の作動位置は、
図4~
図9中、非作動位置から時計回りの方向に所定の角度回転した位置である。
【0054】
インサイドオープンレバー30は、車両ドア12に設けられているインサイドドアハンドル126と連係しており、インサイドドアハンドル126の手動操作に連動して非作動位置から作動位置へ移動するように構成されている。例えば、インサイドオープンレバー30とインサイドドアハンドル126とは、図略の操作ワイヤなどによって連結されている。また、インサイドオープンレバー30は、図略の付勢部材(例えばバネなど)によって非作動位置に向けて常時弾性付勢されている。このため、インサイドオープンレバー30は、インサイドドアハンドル126が操作されていない状態では、この付勢部材の付勢力によって非作動位置に保持される。
【0055】
インサイドオープンレバー30は係合部301を有している。インサイドオープンレバー30の係合部301は、インサイドレバー29の第一係合部291と係脱自在に係合可能に構成されている。そして、インサイドオープンレバー30は、非作動位置から作動位置に移動すると、インサイドオープンレバー30の係合部301がインサイドレバー29の第一係合部291に係合してインサイドレバー29の第一係合部291を押すように構成されている。
【0056】
インサイドレバー29は、第三支持部213によってハウジング21に対して回転可能に支持されており、非作動位置と作動位置との間を回転移動可能である。
図4~
図9は、インサイドレバー29が非作動位置に位置している状態を示す。
図4~
図9中において、インサイドレバー29の作動位置は、非作動位置から反時計回りの方向に所定の角度回転移動した位置である。
【0057】
インサイドレバー29は、第一係合部291と第二係合部292を有している。インサイドレバー29の第一係合部291は、インサイドオープンレバー30の係合部301に係脱自在に構成されている。インサイドレバー29の第二係合部292は、アウトサイドオープンレバー31の係合部312に係脱自在に係合可能に構成されている。そして、インサイドオープンレバー30が非作動位置から作動位置に移動すると、インサイドレバー29の第一係合部291がインサイドオープンレバー30の係合部301に押され、インサイドレバー29は非作動位置から作動位置へ移動する。インサイドレバー29が非作動位置から作動位置へ移動すると、インサイドレバー29の第二係合部292がアウトサイドオープンレバー31の係合部312に係合してアウトサイドオープンレバー31の係合部312を押す。このため、アウトサイドオープンレバー31は非作動位置から作動位置へ移動する。
【0058】
アウトサイドオープンレバー31は、第五支持部215によってハウジング21に対して回転可能に支持されており、非作動位置と作動位置との間を回転移動可能である。
図4~
図9は、アウトサイドオープンレバー31が非作動位置に位置する状態を示す。なお、アウトサイドオープンレバー31の軸線C5(回転中心線)は、
図4~
図9中では左右に略平行な方向である。
【0059】
アウトサイドオープンレバー31はアウトサイドドアハンドル127と連係している。例えば、アウトサイドオープンレバー31は、操作ワイヤなどによってアウトサイドドアハンドル127と連結されている。そして、アウトサイドオープンレバー31は、使用者によるアウトサイドドアハンドル127の手動操作によって、非作動位置から作動位置へ回転移動するように構成されている。さらに、アウトサイドオープンレバー31は支持部311を有しており、この支持部311によってオープンリンク27を回転可能に支持している。
【0060】
また、アウトサイドオープンレバー31は、アウトサイドオープンレバー付勢部材32によって非作動位置に向けて常時弾性付勢されており、アウトサイドドアハンドル127が操作されていない場合と、インサイドレバー29が作動位置に位置していない場合(すなわち、インサイドドアハンドル126が操作されていない場合)とには、このアウトサイドオープンレバー付勢部材32の付勢力によって非作動位置に保持される。
【0061】
ラッチ機構40は、車両ドア12を閉止状態に保持可能なラッチ状態と、車両ドア12の閉止状態を解除可能なアンラッチ状態とに切替可能に構成されている。ラッチ機構40の具体的な構成は特に限定されるものではなく、公知の各種構成が適用できるが、例えば次のような構成が適用できる。
【0062】
ラッチ機構40は、ラッチ41とポール(図略)とリフトレバー42とを有している。ラッチ41は、ドアロック装置2のフレームなどに回転可能に支持されており、アンラッチ位置とラッチ位置(ハーフラッチ位置とフルラッチ位置)とに回転移動可能である。アンラッチ位置は車体10に設けられているストライカ101を保持しない位置(係脱自在な位置)、すなわちラッチ41とストライカ101との噛み合いを解除することができる位置である。ラッチ位置は、車両ドア12が閉止状態にある場合において、車体10に設けられているストライカ101を保持する位置(係合する位置)、すなわちラッチ41とストライカ101との噛み合いを解除することができない位置である。ラッチ41はラッチ復帰バネによってアンラッチ位置に向けて常時付勢されている。
【0063】
ポールは、ドアロック装置2のフレームなどに回転可能に支持されており、係合位置と非係合位置とに移動可能である。係合位置は、ラッチ41と係合することでラッチ41をラッチ位置に保持する(アンラッチ位置への回転移動を阻止する)位置である。アンラッチ位置は、ラッチ41に係合しない位置であり、ラッチ41がアンラッチ位置へ回転移動することを許容する位置である。また、ポールはポール復帰バネによって係合位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0064】
そして、ラッチ機構40は、車両ドア12が閉止状態にある場合に、ラッチ41がラッチ位置に位置することでラッチ41とストライカ101との噛み合い状態を保持し、ポールが係合位置に位置してラッチ41をラッチ位置に保持する。これにより、ラッチ機構40は、車両ドア12を車体10に対して閉止状態に保持する。
【0065】
リフトレバー42は、車両ドア12が閉止状態にある場合に非解除位置から解除位置へ移動すると、ポールに係合して(例えばポールを押して)ポールを係合位置から非係合位置へ移動させる。これによりポールとラッチ41の係合が解除され、ラッチ41がラッチ復帰バネの付勢力によってアンラッチ位置に回転移動し、車両ドア12の閉止状態が解除可能になる。このように、ラッチ機構40は、リフトレバー42が非解除位置から解除位置に移動した場合に、リフトレバー42の動きによってラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されている。
【0066】
次に、ドアロック装置2の動作について説明する。
【0067】
図4は、回転部材23が中立位置に位置しており、アクティブレバー25がロック位置に位置している状態を示す。
図4に示す状態を、ロック基準状態と呼ぶ。ロック基準状態であるとき、回転部材23は中立位置に位置しており、回転部材23の第一係合部231はアクティブレバー25の第一係合部251と第二係合部252のいずれにも係合しない。このため、アクティブレバー25は、節度スプリング35の付勢力によって、ロック位置に保持される。そして、アクティブレバー25がロック位置に位置していると、オープンリンク27はアクティブレバー25に取り付けられているオープンリンク付勢部材28によって非開放位置に向けて付勢され、オープンリンク27は非開放位置に保持される。
【0068】
図4に示すロック基準状態でアウトサイドドアハンドル127が手動操作されると、アウトサイドドアハンドル127の動作がアウトサイドオープンレバー31に伝達され、アウトサイドオープンレバー31は非作動位置から作動位置へ移動する。また、
図4に示すロック基準状態でインサイドドアハンドル126が手動操作されると、インサイドドアハンドル126の動作がインサイドオープンレバー30とインサイドレバー29を介してアウトサイドオープンレバー31に伝達され、アウトサイドオープンレバー31は非作動位置から作動位置へ移動する。しかしながら、オープンリンク27が非開放位置に位置しているため、アウトサイドオープンレバー31の非作動位置から作動位置への移動に伴いオープンリンク27が作動しても、オープンリンク27はリフトレバー42の第一係合部321に係合しない。このため、リフトレバー42は非解除位置から移動せず、ラッチ機構40はラッチ状態に保持される。
【0069】
このように、オープンリンク27は、非開放位置に位置する状態でアウトサイドオープンレバー31の機械的操作により作動しても、ラッチ機構40をラッチ状態からアンラッチ状態に切替えない(ラッチ41とストライカ101との噛み合いを解除しない)ように構成される。このため、車両ドア12を開放することができない。
【0070】
なお、
図4に示すように、回転部材23が中立位置に位置しているときには、阻止レバー33の第一係合部331と回転部材23の第四係合部234とは係合しない。また、アクティブレバー25がロック位置に位置しているときには、阻止レバー33は退避位置への移動が許容される。このため、阻止レバー33は阻止レバー付勢部材34の付勢力によって退避位置に保持される。
【0071】
図5は、ドアロック装置2をロック状態からアンロック状態に切り替える動作を示す図である。この場合、ロック基準状態のドアロック装置2の電動モータ22に通電して、電動モータ22を一方向(例えば正方向)に回転させる。これにより、回転部材23が
図4に示す中立位置からアンロック対応位置に回転移動する。
図5には、回転部材23がアンロック対応位置に回転した状態が示される。ここで、
図4に示すようにアクティブレバー25がロック位置に位置していると、アクティブレバー25の第一係合部251は回転部材23の第一係合部231の回転軌跡上に位置する。このため、
図5に示すように電動モータ22が動作して回転部材23が中立位置からアンロック対応位置へ回転移動すると(
図4と
図5に示す例では、回転部材23が中立位置から反時計回りの方向に回転すると)、回転部材23の第一係合部231がアクティブレバー25の第一係合部251と係合してこの第一係合部251を押す。このため、アクティブレバー25はロック位置からアンロック位置へ向かって回転移動する。そして、アクティブレバー25は、ロック位置からアンロック位置へ向かって所定の距離を回転移動すると、節度スプリング35の付勢力によってアンロック位置に移動し、アンロック位置にてストッパ等に当接することにより、アンロック位置に位置決めされる。これにより、ドアロック装置2がロック状態からアンロック状態に切り替わる。このように、回転部材23が中立位置からアンロック対応位置へ回転移動することで、ドアロック装置2はロック状態からアンロック状態に切り替わる。
【0072】
アクティブレバー25がロック位置からアンロック位置へ移動すると、アクティブレバー25の動作がオープンリンク付勢部材28を介してオープンリンク27に伝達され、オープンリンク27は非開放位置から開放位置へ移動する。また、阻止レバー33の第二係合部332がアクティブレバー25の第三係合部253によって阻止位置に向かって押される。このため、阻止レバー33は、阻止レバー付勢部材34の付勢力に抗して退避位置から阻止位置へ移動する。
【0073】
図6は、
図5に示す状態になった後に電動モータ22の動作を停止させた状態(電動モータ22への通電を停止した状態)を示す。電動モータ22の駆動を停止すると、回転部材23は回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置に移動する。ただし、回転部材23が中立位置に移動しても、回転部材23の第一係合部231はアクティブレバー25の第一係合部251に係合しないため、アクティブレバー25は節度スプリング35の付勢力によってアンロック位置に保持される。そして、アクティブレバー25がアンロック位置に保持されることで、阻止レバー33は阻止位置に保持される。
【0074】
図6に示す状態では、アクティブレバー25がアンロック位置に位置し、回転部材23が中立位置に位置する。この状態を、アンロック基準状態と呼ぶ。アンロック基準状態のドアロック装置2において、アウトサイドドアハンドル127またはインサイドドアハンドル126が手動操作されると、アウトサイドオープンレバー31が非作動位置から作動位置へ移動する。この際、オープンリンク27が開放位置に位置しているため、オープンリンク27がアウトサイドオープンレバー31とともに非作動位置から作動位置へ移動してリフトレバー42の第一係合部421を押す。このため、リフトレバー42は非解除位置から解除位置へ移動し、ラッチ機構40はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。
【0075】
このように、オープンリンク27は、開放位置に位置する状態でアウトサイドオープンレバー31の機械的操作により作動すると、ラッチ機構40をラッチ状態からアンラッチ状態に切替える(ラッチ41とストライカ101との噛み合いを解除する)ように構成される。このため、ドアロック装置2はロック状態からアンラッチ状態に切り替わり、車両ドア12を開放することができる。
【0076】
図7は、ドアロック装置2をアンロック状態からロック状態に切り替える動作を示す図である。この場合、アンロック基準状態のドアロック装置2の電動モータ22に通電して、電動モータを他方向(例えば逆方向)に回転させる。これにより、回転部材23が
図6に示す中立位置からロック対応位置に向かって回転する。
図7は、回転部材23が中立位置からロック対応位置に向かって所定量回転した状態を示す。電動モータ22の回転駆動力によって回転部材23が中立位置からロック対応位置に向かって所定量回転すると、
図7に示すように、回転部材23の第一係合部231がアクティブレバー25の第二係合部252に係合するよりも先に、回転部材23の第四係合部234が阻止レバー33の第一係合部331と係合する。回転部材23の第四係合部234が阻止レバー33の第一係合部331と係合すると、阻止レバー33は阻止位置から退避位置へ移動できない状態となる。
【0077】
図8は、回転部材23が
図7に示す位置からさらに回転してロック対応位置に達した状態を示す図である。回転部材23がロック対応位置に達すると、回転部材23の第一係合部231がアクティブレバー25の第二係合部252を押し、アクティブレバー25はアンロック位置からロック位置へ向かって移動する。そして、アクティブレバー25は、回転部材23の第一係合部231に押されてアンロック位置から所定の距離アンロック位置へ移動して、その後は節度スプリング35の付勢力によってロック位置に移動し、ストッパ等に当接することによってロック位置に位置決めされる。これにより、ドアロック装置2がアンロック状態からロック状態に切り替わる。このように、ドアロック装置2をアンロック状態からロック状態に切り替える際には、回転部材23が阻止位置にある阻止レバー33に係合した後に(具体的には回転部材23の第四係合部234が阻止レバー33の第一係合部331に係合を開始した後に)、アクティブレバー25がアンロック位置からロック位置に回転する。
【0078】
ここで、アクティブレバー25がアンロック位置からロック位置に移動した場合、アクティブレバー25の第三係合部253と阻止レバー33の第二係合部332との係合が外れるので、阻止レバー33は阻止レバー付勢部材34の付勢力により阻止位置から退避位置に移動しようとする。しかしながら、アクティブレバー25がアンロック位置からロック位置に移動したときには阻止レバー33の第一係合部331と回転部材23の第四係合部234が既に係合している。回転部材23の第四係合部234(壁状突起)は、阻止レバー33の第一係合部331(溝)に阻止レバー33の移動方向に交差する方向から係合している(差し込まれている)ので、斯かる係合によって阻止レバー33は阻止位置から抜け出すことができずに阻止位置に保持される。
【0079】
その後、電動モータ22への通電が停止される。ここで、電動モータ22への通電を停止した後においても、慣性によって回転部材23の回転が継続することがある。このため、回転部材23は電動モータ22への通電停止後に慣性によってロック対応位置を通り過ぎてリリース位置に向かって移動しようとする。しかしながら、本実施形態においては、阻止レバー33が阻止位置に位置しているため、回転部材23はロック対応位置に阻止レバー33に当接してその移動が阻止される。具体的には、回転部材23の第三係合部233が、ロック対応位置にて、阻止レバー33の一方の側面を構成する側壁333に当接する。このため、阻止レバー33によって回転部材23がロック対応位置を行き過ぎること(すなわち、ロック対応位置よりもリリース位置の側に移動すること)が阻止される。
【0080】
上記したような回転部材23の慣性が消失した後は、回転部材23は回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置へ移動する。回転部材23が中立位置へ移動すると、回転部材23の第四係合部234と阻止レバー33の第一係合部331の係合が解除される(回転部材23の第四係合部234が阻止レバー33の第一係合部331である溝から抜け出る)。このため、阻止レバー33は、退避位置に向かう方向に移動可能となり、阻止レバー付勢部材34の付勢力によって阻止位置から退避位置へ移動し、ドアロック装置2は
図4に示すロック基準状態になる。
【0081】
次に、電動モータ22の駆動力によって、すなわち電気的操作によって、車両ドア12を開放する動作について説明する。この場合、ドアロック装置2が
図4に示すロック基準状態であるときに、例えば車両ドア12に設けられている開放スイッチが押圧操作される。これにより電動モータ22が通電されて、電動モータ22が他方向(例えば逆方向)に回転する。電動モータ22の回転により回転部材23が中立位置からロック対応位置を超えてリリース位置に回転移動する。なお、
図4に示すロック基準状態では、阻止レバー33が退避位置に位置しているために、阻止レバー33により回転部材23の回転が阻止されることはない。
【0082】
電動モータ22の駆動力によって回転部材23が中立位置からリリース位置へ移動すると、回転部材23の第二係合部232がリリースレバー26の第一係合部261に係合してリリースレバー26の第一係合部261を押す。これにより、リリースレバー26は初期位置から作動位置へ移動する。リリースレバー26が作動位置へ移動すると、リリースレバー26の第二係合部262がリフトレバー42の第二係合部322を押し、リフトレバー42は非解除位置から解除位置へ移動する。このため、ラッチ機構40はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。これにより、車両ドア12を電気的操作により開放することができる。
【0083】
なお、リリースレバー26の第二係合部262は、直接的にラッチ機構40のリフトレバー42の第二係合部322に係合してリフトレバー42を非解除位置から解除位置に移動させる。このため、オープンリンク27が開放位置にあるか否かにかわからず、回転部材23を中立位置からリリース位置に移動させることで、ラッチ機構40をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができる。すなわち、オープンリンク27を作動させることなく、電気的操作により車両ドア12を開放することができる。その後、電動モータ22への通電が停止される。これにより回転部材23が回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置へ移動する。回転部材23が中立位置に復帰すると、リリースレバー26が初期位置に復帰し、ドアロック装置2は
図4に示すロック基準状態にされる。
【0084】
このように、本実施形態によれば、電動モータ22の回転方向を正逆切り替えることで、回転部材23をアンロック対応位置(第一回転位置)とリリース位置(第二回転位置)とロック対応位置(第三回転位置)に回転移動させることができる。したがって、電動モータ22の回転方向の正逆の切り替えにより、アンロック状態とロック状態とアンラッチ状態の3つの状態の切り替えが可能になる。
【0085】
また、本実施形態に係るドアロック装置2では、アンロック状態からロック状態に切り替える際に、回転部材23がロック対応位置を行き過ぎてリリース位置に移動することが阻止レバー33により阻止される。このため、ドアロック装置2をアンロック状態からロック状態に切り替える際に回転部材33が回転し過ぎてリリース位置に至り、ラッチ機構40がアンラッチ状態に切り替わることが阻止される。このように、本実施形態に係るドアロック装置2によれば、3つの状態を正確に切り替えることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係るドアロック装置2は、通常は電気的操作によりリリースレバー26を作動させて車両ドア12を開放し、緊急時にアンロック状態に切り替えて機械的操作により車両ドア12を開放するように構成することができる。また、上記実施形態では、機械的操作により車両ドア12を開放する場合に車両ドア12に取り付けられているアウトサイドドアハンドル127或いはインサイドドアハンドル126を操作する例について説明したが、これらのハンドルによらず、例えば外部ツールを用いて機械的操作により車両ドア12を開放するように構成してもよい。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
10…車体、101…ストライカ、12…車両ドア、2…ドアロック装置、22…電動モータ、23…回転部材、24…回転部材付勢部材、25…アクティブレバー、26…リリースレバー、27…オープンリンク、28…オープンリンク付勢部材、33…阻止レバー、34…阻止レバー付勢部材、40…ラッチ機構、41…ラッチ、42…リフトレバー