(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】トレイ
(51)【国際特許分類】
B65D 5/20 20060101AFI20230808BHJP
B65D 5/30 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B65D5/20 A
B65D5/30 A
(21)【出願番号】P 2019225947
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-02-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年8月29日に森羽紙業株式会社が有限会社さとう農園に発明に係るトレイのブランクシートを販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏川 準司
(72)【発明者】
【氏名】中路 哲也
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-013249(JP,A)
【文献】実開平06-027535(JP,U)
【文献】英国特許出願公告第00737685(GB,A)
【文献】実公昭46-036210(JP,Y1)
【文献】特開2016-216118(JP,A)
【文献】特開2018-188153(JP,A)
【文献】特開2018-177242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/20
B65D 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板に連設された前後の端壁および左右の側壁と、
前記側壁の前後方向の縁部に連設され、前記端壁の内面に重ねられた内フラップと、
前記端壁の上縁部に連設された桟板と、
前記桟板の左右方向の縁部に連設された係合片と、を備え、
前記側壁から前記内フラップに亘って横方向に延びている係合用スリットが形成され、
前記係合片の下部は、前記係合用スリットに外側から差し込まれており、
前記側壁の上部と前記内フラップの上部とは、上部折れ線を介して連設され、
前記側壁の下部と前記内フラップの下部とは、二本の下部折れ線を介して連設され、
前記両下部折れ線の横方向の間隔は、上方に向かうに連れて大きく形成されており、
前記上部折れ線の下端部は、前記係合用スリットに接続され、
前記両下部折れ線の上端部は、前記上部折れ線の下端部の両側で前記係合用スリットに接続され
、
前記側壁の上縁部から前記係合用スリットに亘って屈曲補助折れ線が形成されていることを特徴とするトレイ。
【請求項2】
底板と、
前記底板に連設された前後の端壁および左右の側壁と、
前記側壁の前後方向の縁部に連設され、前記端壁の内面に重ねられた内フラップと、
前記端壁の上縁部に連設された桟板と、
前記桟板の左右方向の縁部に連設された係合片と、を備え、
前記側壁から前記内フラップに亘って横方向に延びている係合用スリットが形成され、
前記係合片の下部は、前記係合用スリットに外側から差し込まれており、
前記側壁の上部と前記内フラップの上部とは、上部折れ線を介して連設され、
前記側壁の下部と前記内フラップの下部とは、二本の下部折れ線を介して連設され、
前記両下部折れ線の横方向の間隔は、上方に向かうに連れて大きく形成されており、
前記上部折れ線の下端部は、前記係合用スリットに接続され、
前記両下部折れ線の上端部は、前記上部折れ線の下端部の両側で前記係合用スリットに接続され
、
前記係合用スリットの下側において前記側壁が厚さ方向に押し潰されていることを特徴とするトレイ。
【請求項3】
底板と、
前記底板に連設された前後の端壁および左右の側壁と、
前記側壁の前後方向の縁部に連設され、前記端壁の内面に重ねられた内フラップと、
前記端壁の上縁部に連設された桟板と、
前記桟板の左右方向の縁部に連設された係合片と、を備え、
前記側壁から前記内フラップに亘って横方向に延びている係合用スリットが形成され、
前記係合片の下部は、前記係合用スリットに外側から差し込まれており、
前記側壁の上部と前記内フラップの上部とは、上部折れ線を介して連設され、
前記側壁の下部と前記内フラップの下部とは、二本の下部折れ線を介して連設され、
前記両下部折れ線の横方向の間隔は、上方に向かうに連れて大きく形成されており、
前記上部折れ線の下端部は、前記係合用スリットに接続され、
前記両下部折れ線の上端部は、前記上部折れ線の下端部の両側で前記係合用スリットに接続され
、
前記係合片には、上方に向けて窪んだ窪み部が形成されており、
前記窪み部には、前記係合用スリットの下側の前記側壁が差し込まれていることを特徴とするトレイ。
【請求項4】
底板と、
前記底板に連設された前後の端壁および左右の側壁と、
前記側壁の前後方向の縁部に連設され、前記端壁の内面に重ねられた内フラップと、
前記端壁の上縁部に連設された桟板と、
前記桟板の左右方向の縁部に連設された係合片と、を備え、
前記側壁から前記内フラップに亘って横方向に延びている係合用スリットが形成され、
前記係合片の下部は、前記係合用スリットに外側から差し込まれており、
前記側壁の上部と前記内フラップの上部とは、上部折れ線を介して連設され、
前記側壁の下部と前記内フラップの下部とは、二本の下部折れ線を介して連設され、
前記両下部折れ線の横方向の間隔は、上方に向かうに連れて大きく形成されており、
前記上部折れ線の下端部は、前記係合用スリットに接続され、
前記両下部折れ線の上端部は、前記上部折れ線の下端部の両側で前記係合用スリットに接続され
、
前記桟板の先端縁部から下方に向けて延びている傾斜板が設けられ、
前記傾斜板は、上縁部から下縁部に向かうに連れて前記端壁の内面から離れるように傾斜し、前記傾斜板の下縁部は、前記底板の上面に接しており、
前記傾斜板には、左右方向に延びている傾斜補助折れ線が形成されていることを特徴とするトレイ。
【請求項5】
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載のトレイであって、
前記係合用スリットの前記側壁側の端部には、上方に向けて延びている切れ込みが形成されており、
前記係合片には、前記係合用スリットの上縁部に下側から係合する突出部が形成されていることを特徴とするトレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール製のトレイとしては、前後の端壁の上縁部に桟板が連設され、左右の側壁には横方向に延びている係合用スリットが形成されており、桟板に連設された係合片の下部が係合用スリットに外側から差し込まれているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のトレイを組み立てる工程において、係合用スリットに対して係合片を差し込むときに、係合用スリットは閉じた状態であるため、係合用スリットに対して係合片を差し込み難いという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、組み立て時の作業効率を高めることができるトレイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、トレイであって、底板と、前記底板に連設された前後の端壁および左右の側壁と、前記側壁の前後方向の縁部に連設され、前記端壁の内面に重ねられた内フラップと、を備えている。また、前記トレイは、前記端壁の上縁部に連設された桟板と、前記桟板の左右方向の縁部に連設された係合片と、を備えている。前記側壁から前記内フラップに亘って横方向に延びている係合用スリットが形成され、前記係合片の下部は、前記係合用スリットに外側から差し込まれている。前記側壁の上部と前記内フラップの上部とは、上部折れ線を介して連設されている。前記側壁の下部と前記内フラップの下部とは、二本の下部折れ線を介して連設されている。前記両下部折れ線の横方向の間隔は、上方に向かうに連れて大きく形成されている。前記上部折れ線の下端部は、前記係合用スリットに接続されている。前記両下部折れ線の上端部は、前記上部折れ線の下端部の両側で前記係合用スリットに接続されている。
【0007】
本発明のトレイを組み立てるときに、側壁に対して内フラップを内側に向けて折り曲げると、内フラップの上部は一本の上部折れ線において側壁の上部に対して折れ曲がるとともに、内フラップの下部は二本の下部折れ線において側壁の下部に対して折れ曲がる。
そして、側壁に対して内フラップが折れ曲がると、側壁の下部は外側に押し出され、側壁の上部は内側に引き込まれる。これにより、係合用スリットが左右方向に開いた状態となるため、係合用スリットに対して係合片の下部を差し込み易くなる。
【0008】
本発明の第一の構成としては、前記側壁の上縁部から前記係合用スリットに亘って屈曲補助折れ線を形成する。
このようにすると、側壁に対して内フラップを折り曲げたときに、側壁の上部において屈曲補助折れ線よりも内フラップ側の領域が内側に引き込まれ易くなるため、係合用スリットを大きく開いた状態となる。
【0009】
本発明の第二の構成としては、前記係合用スリットの下側において前記側壁を厚さ方向に押し潰して薄くすることで、係合用スリットの開口幅を大きくする。
【0010】
前記したトレイにおいて、前記係合用スリットの前記側壁側の端部には、上方に向けて延びている切れ込みを形成し、前記係合片には、前記係合用スリットの上縁部に下側から係合する突出部を形成することが好ましい。
【0011】
この構成では、係合片の突出部が係合用スリットの上縁部に係合することで、係合用スリットに対する係合片の抜け止めが構成されている。係合用スリットから係合片を抜き取るときには、係合用スリットの上縁部を内側に押し込んで、係合用スリットの上縁部を係合片の突出部から離間させる。
前記した構成では、係合用スリットの他端部に上向きの切れ込みが形成されているため、係合用スリットの上縁部を内側に押し込んだときに、係合用スリットの上縁部を大きく押し込むことができる。これにより、係合用スリットから係合片を容易に抜き取ることができる。
【0012】
本発明の第三の構成としては、前記係合片には、上方に向けて窪んだ窪み部を形成し、前記窪み部に前記係合用スリットの下側の前記側壁を差し込むことで、係合片が側壁に対してずれるのを防ぐことができ、桟板を安定させることができる。
【0013】
本発明の第四の構成としては、前記桟板の先端縁部から下方に向けて延びている傾斜板を設ける。前記傾斜板は、上縁部から下縁部に向かうに連れて前記端壁の内面から離れるように傾斜させ、前記傾斜板の下縁部は、前記底板の上面に接するように構成する。
【0014】
この場合には、傾斜板の上面に接する内容物の形状に沿って傾斜板が屈曲するように、前記傾斜板に左右方向に延びている傾斜補助折れ線を形成することで、トレイ内に内容物を安定して収容できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトレイでは、側壁に対して内フラップを折り曲げることで、係合用スリットが自動的に開くため、係合用スリットに対して係合片を差し込み易くなる。したがって、本発明のトレイは、組み立て時の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るトレイを前方左上から見た斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るトレイのブランクシートを示した図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るトレイの端壁を組み立てる前の状態を前方左上から見た斜視図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るトレイにおいて、側壁に対して内フラップを折り曲げた状態を示した斜視図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係るトレイにおいて、係合片を係合用スリットに差し込んだ状態を示した斜視図である。
【
図6】本発明の第二実施形態に係るトレイを前方左上から見た斜視図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係るトレイのブランクシートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
以下の説明において、前後左右方向とは、本実施形態のトレイを説明する上で便宜上設定したものであり、トレイの構成や使用状態を限定するものではない。
【0018】
[第一実施形態]
第一実施形態のトレイ1Aは、
図1に示すように、底板10と、底板10に連設された前後の端壁20,20および左右の側壁30,30と、側壁30の前後の縁部に連設された内フラップ40と、を備えている。また、トレイ1Aは、両端壁20,20の上縁部に連設された前後の桟板50,50と、桟板50の左右の縁部に連設された係合片60と、を備えている。
【0019】
トレイ1Aは、
図2に示すように、段ボール製のシートを切り抜いたブランクシートS1を各折れ線において山折りまたは谷折りすることで形成される。
図2に示すブランクシートS1は内面側が見えるように配置されている。
ブランクシートS1の折れ線は、ブランクシートS1の表面を線状に押し込んで形成された罫線(押罫)である。なお、罫線に断続的な切れ込みを形成してもよい。このようにすると、罫線においてブランクシートS1を折り曲げ易くなる。
また、シートの表面のみを切断したハーフカットの切れ込みやシートを貫通した切れ込みを断続して線状に形成することで折れ線を構成してもよい。
【0020】
底板10は、
図3に示すように、四角形に形成されている。底板10の前後の縁部には、前後の端壁20,20が連設され、底板10の左右の縁部には、左右の側壁30,30が連設されている。
【0021】
前側の端壁20は、
図1に示すように、折れ線を介して底板10の前縁部に連設され、底板10の前縁部から上方に向けて延びている。後側の端壁20は、底板10の後縁部に折れ線を介して連設され、底板10の後縁部から上方に向けて延びている。前後の端壁20,20は、四角形の同じ形状に形成されている。前後の端壁20,20は、底板10に対して垂直に形成されている。
【0022】
底板10と端壁20との角部において、左右方向の中央部には連結穴11が貫通している。また、端壁20の上縁部において、左右方向の中央部には連結部12が上方に向けて突出している。
【0023】
前側の端壁20の上縁部には、折れ線を介して前側の桟板50が連設されている。前側の桟板50は、前側の端壁20の上縁部に沿って長方形に形成されている。前側の桟板50は、前側の端壁20に対して垂直に形成されている。前側の桟板50の先端縁部(後縁部)の左右方向の中間部は、前方に向けて窪んでいる。
【0024】
前側の桟板50の左縁部には、折れ線を介して左前の係合片60が連設されている(
図3参照)。左前の係合片60は、桟板50の左縁部から下方に向けて延びている。左前の係合片60は、桟板50に対して垂直に形成されている。
左前の係合片60の上部は、左側の側壁30の外面に重ねられている。左前の係合片60の下部は、後記する係合用スリット70に差し込まれている。
【0025】
左前の係合片60の後縁部の下部には、
図5に示すように、後方に向けて突出した突出部61が形成されている。突出部61の上縁部は、係合片60の上縁部に平行している。
左前の係合片60の前縁部の下部には、後方に向けて斜め上向きに延びている窪み部62が形成されている(
図2参照)。
【0026】
前側の桟板50の右縁部には、
図1に示すように、折れ線を介して右前の係合片60が連設されている(
図3参照)。右前の係合片60は、左前の係合片60と左右対称に形成されている。
【0027】
後側の端壁20の上縁部には、後側の桟板50が連設されている。後側の桟板50は、前側の桟板50と前後対称に形成されている。
後側の桟板50の左右の縁部には、左右の係合片60,60が連設されている(
図3参照)。後側の両係合片60,60は、前側の両係合片60,60とそれぞれ前後対称に形成されている。
【0028】
左側の側壁30は、折れ線を介して底板10の左縁部に連設され、底板10の左縁部から上方に向けて延びている。左側の側壁30は、略四角形に形成されている。左側の側壁30は、底板10に対して垂直に形成されている。
【0029】
左側の側壁30の前縁部には、
図4に示すように、左前の内フラップ40が連設されている。内フラップ40は、四角形に形成されている。左前の内フラップ40は、左側の側壁30の前縁部から右方に向けて延びている。内フラップ40は、側壁30に対して垂直に形成されている。
【0030】
側壁30の上部と内フラップ40の上部とは、一本の上部折れ線L1を介して連設されている。上部折れ線L1は、ブランクシートS1(
図2参照)の裏面に形成された罫線である。
上部折れ線L1は、側壁30の上部と内フラップ40の上部との境界線である。上部折れ線L1は、側壁30および内フラップ40の上縁部に対して垂直に形成されている(
図2参照)。
【0031】
側壁30の下部と内フラップ40の下部とは、二本の下部折れ線L2,L2を介して連設されている。下部折れ線L2は、ブランクシートS1(
図2参照)の裏面に形成された罫線である。両下部折れ線L2,L2は、側壁30の下部と内フラップ40の下部との境界を構成している。
【0032】
両下部折れ線L2,L2の下端部は、底板10の角部の頂点に接続されている。このように、両下部折れ線L2,L2の下端部は接続されている。
両下部折れ線L2,L2の上端部は、横方向に間隔を空けて配置されており、上部折れ線L1の下端部の両側に配置されている。
両下部折れ線L2,L2の横方向の間隔は、下端部から上端部に向かうに連れて大きく形成されている(
図2参照)。つまり、両下部折れ線L2,L2はV字形状に配置されている両下部折れ線L2,L2の間には三角形の領域R1が形成されている。
【0033】
側壁30側の下部折れ線L2は、底板10の上面の法線に対して、側壁30側に傾斜している。側壁30側の下部折れ線L2の傾斜角度は限定されるものではないが、底板10の上面の法線に対して60度から85度の間の角度で傾斜していることが好ましい。
内フラップ40側の下部折れ線L2は、底板10の上面の法線に対して、内フラップ40側に傾斜している。内フラップ40側の下部折れ線L2の傾斜角度は限定されるものではないが、底板10の上面の法線に対して60度から85度の間の角度で傾斜していることが好ましい。
また、側壁30側の下部折れ線L2の傾斜角度と、内フラップ40側の下部折れ線L2の傾斜角度とは、それぞれ異なる傾斜角度でもよいが、同じ角度であることが好ましい。
【0034】
左側の側壁30および左前の内フラップ40には、左前の係合用スリット70が形成されている(
図2参照)。左前の係合用スリット70は、左側の側壁30の前部から左前の内フラップ40の左縁部に亘って横方向に延びている。係合用スリット70は、側壁30および内フラップ40を貫通している線状の切れ込みである。
ブランクシートS1(
図2参照)の状態では、係合用スリット70の上縁部と下縁部とが接しており、係合用スリット70は閉じられている。
【0035】
係合用スリット70は、側壁30および内フラップ40の高さ方向の中間部に配置されている。上部折れ線L1の下端部が、係合用スリット70の前部に接続されている。また、両下部折れ線L2,L2の上端部が、上部折れ線L1の下端部の両側で係合用スリット70の前部に接続されている。
【0036】
係合用スリット70の側壁30側の部位は、前部よりも後部が下方に配置され、前部と後部との間に傾斜部が形成されている(
図2参照)。
係合用スリット70の側壁30側の端部71は、側壁30の前後方向の中央部よりも前方に配置されている。係合用スリット70の側壁30側の端部71には、上方に向けて延びている切れ込み72が形成されている。この切れ込み72は、前方に向けて半円状に折り返されている。
【0037】
左側の側壁30には、上縁部から係合用スリット70の後部に亘って屈曲補助折れ線L3が形成されている。屈曲補助折れ線L3は、ブランクシートS1(
図2参照)の裏面に形成された罫線である。屈曲補助折れ線L3は、側壁30の上縁部に対して垂直に形成されている。
【0038】
係合用スリット70の側壁30側の部位の後部では、係合用スリット70の下側において側壁30が厚さ方向に押し潰されて薄くなっている。
【0039】
左前の係合用スリット70には、
図5に示すように、左前の係合片60の下部が外側から差し込まれている。これにより、係合片60は、上部が側壁30の外面に重なり、下部は側壁30の内面に重なっている。
係合片60の突出部61の上縁部は、係合用スリット70の上縁部に下側から係合している。つまり、突出部61の上縁部は、係合用スリット70の上側の側壁30の縁部に下側から係合している。
係合片60の窪み部62には、係合用スリット70の下側の側壁30の縁部が差し込まれている。
【0040】
左側の側壁30の後縁部には、
図3に示すように、左後の内フラップ40が連設されている。左後の内フラップ40は、左前の内フラップ40と前後対称に形成されている。
左側の側壁30の上部と左後の内フラップ40の上部とは、
図2に示すように、一本の上部折れ線L1を介して連設されている。また、左側の側壁30の下部と左後の内フラップ40の下部とは、二本の下部折れ線L2,L2を介して連設されている。
【0041】
左側の側壁30および左後の内フラップ40には、
図3に示すように、左後の係合用スリット70が形成されている。左後の係合用スリット70は、左前の係合用スリット70と前後対称に形成されている。
【0042】
右側の側壁30は、左側の側壁30と左右対称に形成されている。また、右側の側壁30には、左側の側壁30と同様に、前後の内フラップ40,40が連設されている。さらに、右側の側壁30および前後の内フラップ40,40にも前後の係合用スリット70,70が形成されている。
【0043】
図1に示すように、前側の左右の係合用スリット70,70には、前側の桟板50に連設された左右の係合片60,60がそれぞれ差し込まれている。また、後側の左右の係合用スリット70,70には、後側の桟板50に連設された左右の係合片60,60がそれぞれ差し込まれている。
【0044】
第一実施形態のトレイ1Aを組み立てるときには、
図3に示すように、作業者は底板10に対して左右の側壁30,30を立ち上げた後に、側壁30に対して前後の内フラップ40,40を内側に向けて折り曲げる。
このとき、
図4に示すように、内フラップ40の上部は、一本の上部折れ線L1において側壁30の上部に対して折れ曲がる。また、内フラップ40の下部は、二本の下部折れ線L2,L2において側壁30の下部に対して折れ曲がる。これにより、内フラップ40の下部と側壁30の下部との間には、下端部から上方に向かうに連れて横幅が大きくなる三角形の領域R1が形成される。
【0045】
このような領域R1が内フラップ40の下部と側壁30の下部との間に形成されることで、側壁30の下部が外側に押し出される。また、側壁30の上部は内側に引き込まれる。そして、側壁30の上部は、屈曲補助折れ線L3において屈曲し、屈曲補助折れ線L3よりも内フラップ40側の領域R2が内側に傾斜する。
このようにして、係合用スリット70の下縁部が外側に押し出され、係合用スリット70の上縁部が内側に引き込まれることで、係合用スリット70が左右方向に開いた状態となる。
【0046】
続いて、
図1に示すように、作業者は底板10に対して前後の端壁20,20を立ち上げて、内フラップ40の外面に端壁20を重ねるとともに、桟板50に対して係合片60を折り曲げる。
さらに、
図5に示すように、作業者は端壁20に対して桟板50を内側に向けて折り曲げるとともに、係合片60の下部を側壁30の外側から係合用スリット70に差し込む。
【0047】
係合片60を係合用スリット70に差し込むと、係合片60の突出部61の上縁部が、係合用スリット70の上縁部に下側から係合する。また、係合片60の窪み部62には、係合用スリット70の下側の側壁30が差し込まれる。
図1に示すように、前後左右の係合片60を前後左右の係合用スリット70にそれぞれ差し込むことで、前後の桟板50,50が左右の側壁30,30に固定される。これにより、前後の桟板50,50を有するトレイ1Aの組み立て作業が完了する。
【0048】
二つのトレイ1Aを上下に積み重ねた場合には、下側のトレイ1Aの前後の連結部12,12が、上側のトレイ1Aの前後の連結穴11,11にそれぞれ差し込まれることで、二つのトレイ1Aを安定して積み重ねることができる。
【0049】
トレイ1Aを組み立てた後に、桟板50を開くときには、作業者が
図5に示す係合用スリット70の側壁30側の上縁部を内側に押し込む。このようにすると、係合用スリット70の上縁部が係合片60の突出部61に対して内側に移動し、係合片60の突出部61と、係合用スリット70の上縁部との係合が解除される。これにより、係合片60の下部を係合用スリット70から引き抜くことができ、桟板50を開くことができる。
【0050】
以上のようなトレイ1Aでは、
図4に示すように、組み立て時に側壁30に対して内フラップ40を折り曲げると、側壁30の下部が外側に押し出され、側壁30の上部は内側に引き込まれることで、係合用スリット70が開いた状態となる。
また、第一実施形態のトレイ1Aでは、側壁30に対して内フラップ40を折り曲げたときに、側壁30の上部が屈曲補助折れ線L3によって内側に引き込まれ易いため、係合用スリット70が大きく開いた状態となる。
また、第一実施形態のトレイ1Aでは、係合用スリット70の下側の側壁30が薄いため、係合用スリット70の開口幅が大きくなる。
【0051】
このように、第一実施形態のトレイ1Aでは、側壁30に対して内フラップ40を折り曲げることで、自動的に係合用スリット70が開くため、
図5に示すように、係合用スリット70に対して係合片60を差し込み易くなる。したがって、第一実施形態のトレイ1Aでは、組み立て時の作業効率を高めることができる。
【0052】
第一実施形態のトレイ1Aでは、係合片60の突出部61が係合用スリット70の上縁部に係合することで、係合用スリット70に対して係合片60を確実に係合できる。
第一実施形態のトレイ1Aでは、係合片60の窪み部62に係合用スリット70の下側の側壁30が差し込まれるため、係合片60が側壁30に対してずれるのを防ぐことができ、桟板50を安定させることができる。
【0053】
第一実施形態のトレイ1Aでは、係合用スリット70の側壁30側の端部71に切れ込み72が形成されており、係合用スリット70の上縁部を内側に大きく押し込むことができるため、係合用スリット70から係合片60を容易に抜き取ることができる。
【0054】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は前記第一実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
第一実施形態のトレイ1Aでは、
図1に示すように、前後の桟板50,50が設けられているが、前後一方のみに桟板50を設けてもよい。また、係合片60および係合用スリット70の形状は限定されるものではなく、左右の一方のみに係合片60および係合用スリット70を設けてもよい。
【0055】
また、底板10の上面の垂線に対する下部折れ線L2の傾斜角度は限定されるものではない。内フラップ40側の下部折れ線L2の傾斜角度を大きくすると、側壁30に対して内フラップ40を折り曲げたときに、側壁30の下部が押し出される量を大きくすることができ、係合用スリット70の開口幅を大きくすることができる。
【0056】
第一実施形態のトレイ1Aは段ボール製であるが、各種公知の板紙によってトレイを形成してもよい。
【0057】
[第二実施形態]
第二実施形態のトレイ1Bは、
図6に示すように、傾斜板90を備えている点が第一実施形態のトレイ1A(
図1参照)と異なっている。
第二実施形態のトレイ1Bは、
図7に示すブランクシートS2を各折れ線において山折りまたは谷折りすることで形成される。
図7に示すブランクシートS2は内面側が見えるように配置されている。
【0058】
第二実施形態のトレイ1Bでは、
図6に示すように、後側の桟板50の先端縁部(前縁部)から下方に向けて延びている傾斜板90が設けられている。
傾斜板90の上縁部は、後側の桟板50の先端縁部の左右方向の中央部に、折れ線を介して連設されている。傾斜板90は、上縁部から下縁部に向かうに連れて左右方向の幅が大きくなるように台形状に形成されている。
傾斜板90は、上縁部から下縁部に向かうに連れて後側の端壁20の内面から離れるように傾斜している。傾斜板90の下縁部は、底板10の上面に接している。また、傾斜板90の下端部の左右の端部は、両側壁30,30の内面に接している。
【0059】
傾斜板90は、複数の内容物を底板10に対して傾斜させた状態でトレイ1B内に収容するときに、最も後方の内容物を支持するための板である。したがって、傾斜板90の上面には、内容物の側面が接することになる。
傾斜板90には、左右方向に延びている上下の傾斜補助折れ線L4,L4が形成されている。傾斜補助折れ線L4は、傾斜板90の上面に形成された折れ線であり、罫線または複数の切れ込みによって構成されている。
【0060】
第二実施形態のトレイ1Bでは、傾斜板90の上面に接する内容物の形状に沿って傾斜板90が上下の傾斜補助折れ線L4,L4において適宜に屈曲するため、トレイ1B内に内容物を安定して収容できる。
【0061】
以上、本発明の第二実施形態について説明したが、本発明は前記第二実施形態に限定されることなく、前記第一実施形態と同様に、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、前側の桟板50の先端縁部(後縁部)から下方に向けて延びている傾斜板を設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1A トレイ(第一実施形態)
1B トレイ(第二実施形態)
10 底板
11 連結穴
12 連結部
20 端壁
30 側壁
40 内フラップ
50 桟板
60 係合片
61 突出部
62 窪み部
70 係合用スリット
71 端部
90 傾斜板
L1 上部折れ線
L2 下部折れ線
L3 屈曲補助折れ線
L4 傾斜補助折れ線
S1 ブランクシート(第一実施形態)
S2 ブランクシート(第二実施形態)