(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20230808BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20230808BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20230808BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20230808BHJP
B60W 20/40 20160101ALI20230808BHJP
F02D 41/06 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/48 ZHV
B60W10/00 102
B60W10/02 900
B60W20/40
F02D41/06
(21)【出願番号】P 2019226970
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 健大
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-016390(JP,A)
【文献】特開2005-162081(JP,A)
【文献】特開平08-061105(JP,A)
【文献】特開2008-101486(JP,A)
【文献】特開2006-266240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/06
B60K 6/48
B60W 10/02
B60W 20/40
F02D 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンクラッチを介して接続されたディーゼルエンジン及びモータジェネレータと、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出装置と、
前記モータジェネレータのモータジェネレータ回転数を検出するモータジェネレータ回転数検出装置と、
前記モータジェネレータに電気的に接続されたバッテリと、
前記ディーゼルエンジンの各気筒内に燃料を噴射する複数の燃料噴射弁と、
前記エンジンクラッチ、前記ディーゼルエンジン、前記モータジェネレータ、前記エンジン回転数検出装置、前記モータジェネレータ回転数検出装置、及び、複数の前記燃料噴射弁に接続された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記ディーゼルエンジンが停止している一方で前記モータジェネレータが前記バッテリから給電されて回転駆動され、且つ、前記エンジンクラッチが断状態であるモータ走行により加速していて、前記ディーゼルエンジンを始動する場合に、前記エンジンクラッチを半係合状態に設定して、前記モータジェネレータによる前記ディーゼルエンジンのクランキングを開始するように制御するクランキング開始制御部と、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が所定の着火可能回転数に達したか否かを判定する着火可能回転数判定部と、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記着火可能回転数に達したと判定した場合には、前記エンジンクラッチを断状態に設定した後、複数の前記燃料噴射弁を介して始動用燃料を噴射するように制御する始動用燃料噴射制御部と、
を有し、
前記始動用燃料噴射制御部は、
前記始動用燃料として、前記エンジン回転数がアイドル回転数になるように噴射するアイドル燃料噴射量に、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差に応じた回転数補正量を加算補正した補正燃料噴射量を噴射するように制御
し、
更に、前記始動用燃料噴射制御部は、
前記エンジン回転数の増加に伴って増加するベース補正量と、
前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差と、
を取得する第2パラメータ取得部を有し、
前記エンジン回転数に対応する前記ベース補正量と前記回転数差とを掛け算して前記回転数補正量を取得する、
ハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記始動用燃料噴射制御部は、
前記エンジン回転数の増加に伴って減少する基本アイドル燃料噴射量と、
前記ディーゼルエンジンの所定の外乱要因によって決定される比例補正量と、
前記ディーゼルエンジンの個別のバラツキによって決定される積分補正量と、
を取得する第1パラメータ取得部を有し、
前記エンジン回転数に対応する前記基本アイドル燃料噴射量と前記比例補正量と前記積分補正量とを加算して前記アイドル燃料噴射量を取得する、
ハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記始動用燃料噴射制御部は、
前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差の増加に伴って増加する重み付け補正係数を取得する第3パラメータ取得部を有し、
前記エンジン回転数に対応する前記ベース補正量と前記回転数差とを掛け算した値に、更に、前記重み付け補正係数を掛け算して前記回転数補正量を取得する、
ハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記制御装置は、
前記補正燃料噴射量を噴射した後、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差が所定の係合回転閾値以下になったか否かを判定する係合回転数差判定部と、
前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差が前記係合回転閾値以下になったと判定した場合は、前記エンジンクラッチを係合状態に設定して、前記ディーゼルエンジン及び前記モータジェネレータからの動力で走行するハイブリッド走行を開始するように制御するハイブリッド走行制御部と、
を有する、
ハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項
4に記載のハイブリッド車両において、
前記制御装置は、
前記補正燃料噴射量を噴射した後、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差が前記係合回転閾値よりも大きい所定の半係合回転閾値以下になったか否かを判定する半係合回転数差判定部と、
前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差が前記半係合回転閾値以下になったと判定した場合は、前記エンジンクラッチを半係合状態に設定する半係合設定部と、
を有する、
ハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン及びモータジェネレータを備えたハイブリッド車両に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載されるハイブリッド車の制御装置では、エンジンを停止してモータジェネレータのみを駆動力とするモータ走行により加速しているときに、エンジンを始動するエンジン始動制御に関する技術が提案されている。
【0003】
具体的には、ハイブリッドECUは、エンジンの始動要求が発生した時点で、モータジェネレータの動力でエンジンをクランキングする処理を開始する。エンジンECUは、エンジン回転速度が所定値α(着火可能回転数)まで上昇した時点で、燃料噴射と点火を開始してエンジンの始動を開始する(着火始動)。そして、ハイブリッドECUは、エンジン回転速度が所定値βまで上昇した時点で、クランキングを終了する。
【0004】
その後、エンジンECUは、エンジン回転速度の急上昇を抑制するように、スロットル開度指令値の時間当たりの変化量及び吸気バルブの開閉タイミングの位相角であるバルブタイミング位相角指令値の時間当たりの変化量を補正する指令値補正を実行する。この指令値補正により、エンジンの吸入空気量が緩やかに増加するように制御されて、エンジン回転速度を緩やかに上昇させることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたハイブリッド車は、ガソリンエンジンであったが、ディーゼルエンジンの場合には、燃料噴射量によるトルク制御のため、燃料噴射量によってエンジン回転数を制御する必要がある。その結果、ディーゼルエンジンを用いたパラレル式ハイブリッド車両では、ディーゼルエンジンを停止してモータジェネレータのみを駆動力とするモータ走行から、ディーゼルエンジンとモータジェネレータを駆動力として使用するハイブリッド走行への移行を着火始動で実施した場合、アイドル回転数を目標エンジン回転数として噴射量制御が行われる。
【0007】
このため、モータジェネレータのモータジェネレータ回転数がアイドル回転数を超えた場合には、ディーゼルエンジンの始動後にエンジン回転数が、モータジェネレータ回転数に追従できないという問題がある。そして、エンジン回転数が、モータジェネレータ回転数に追従できない場合には、エンジンクラッチが係合されないため、ディーゼルエンジンがアイドル回転数で駆動された状態で、モータジェネレータのみで走行して、燃費を悪化させる虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、ディーゼルエンジンの始動時に、エンジン回転数をモータジェネレータのモータジェネレータ回転数に確実に追従させることができるハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、エンジンクラッチを介して接続されたディーゼルエンジン及びモータジェネレータと、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出装置と、前記モータジェネレータのモータジェネレータ回転数を検出するモータジェネレータ回転数検出装置と、前記モータジェネレータに電気的に接続されたバッテリと、前記ディーゼルエンジンの各気筒内に燃料を噴射する複数の燃料噴射弁と、前記エンジンクラッチ、前記ディーゼルエンジン、前記モータジェネレータ、前記エンジン回転数検出装置、前記モータジェネレータ回転数検出装置、及び、複数の前記燃料噴射弁に接続された制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ディーゼルエンジンが停止している一方で前記モータジェネレータが前記バッテリから給電されて回転駆動され、且つ、前記エンジンクラッチが断状態であるモータ走行により加速していて、前記ディーゼルエンジンを始動する場合に、前記エンジンクラッチを半係合状態に設定して、前記モータジェネレータによる前記ディーゼルエンジンのクランキングを開始するように制御するクランキング開始制御部と、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が所定の着火可能回転数に達したか否かを判定する着火可能回転数判定部と、前記ディーゼルエンジンのエンジン回転数が前記着火可能回転数に達したと判定した場合には、前記エンジンクラッチを断状態に設定した後、複数の前記燃料噴射弁を介して始動用燃料を噴射するように制御する始動用燃料噴射制御部と、を有し、前記始動用燃料噴射制御部は、前記エンジン回転数がアイドル回転数になるように噴射するアイドル燃料噴射量に、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差に応じた回転数補正量を加算補正した補正燃料噴射量を噴射するように制御する、ハイブリッド車両である。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るハイブリッド車両において、前記始動用燃料噴射制御部は、前記エンジン回転数の増加に伴って減少する基本アイドル燃料噴射量と、前記ディーゼルエンジンの所定の外乱要因によって決定される比例補正量と、前記ディーゼルエンジンの個別のバラツキによって決定される積分補正量と、を取得する第1パラメータ取得部を有し、前記エンジン回転数に対応する前記基本アイドル燃料噴射量と前記比例補正量と前記積分補正量とを加算して前記アイドル燃料噴射量を取得する、ハイブリッド車両である。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明又は第2の発明に係るハイブリッド車両において、前記始動用燃料噴射制御部は、前記エンジン回転数の増加に伴って増加するベース補正量と、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差と、を取得する第2パラメータ取得部を有し、前記エンジン回転数に対応する前記ベース補正量と前記回転数差とを掛け算して前記回転数補正量を取得する、ハイブリッド車両である。
【0012】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係るハイブリッド車両において、前記始動用燃料噴射制御部は、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差の増加に伴って増加する重み付け補正係数を取得する第3パラメータ取得部を有し、前記エンジン回転数に対応する前記ベース補正量と前記回転数差とを掛け算した値に、更に、前記重み付け補正係数を掛け算して前記回転数補正量を取得する、ハイブリッド車両である。
【0013】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のうちの1の発明に係るハイブリッド車両において、前記制御装置は、前記補正燃料噴射量を噴射した後、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差が所定の係合回転閾値以下になったか否かを判定する係合回転数差判定部と、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差が前記係合回転閾値以下になったと判定した場合は、前記エンジンクラッチを係合状態に設定して、前記ディーゼルエンジン及び前記モータジェネレータからの動力で走行するハイブリッド走行を開始するように制御するハイブリッド走行制御部と、を有する、ハイブリッド車両である。
【0014】
次に、本発明の第6の発明は、上記第5の発明に係るハイブリッド車両において、前記制御装置は、前記補正燃料噴射量を噴射した後、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差が前記係合回転閾値よりも大きい所定の半係合回転閾値以下になったか否かを判定する半係合回転数差判定部と、前記モータジェネレータ回転数と前記エンジン回転数との回転数差が前記半係合回転閾値以下になったと判定した場合は、前記エンジンクラッチを半係合状態に設定する半係合設定部と、を有する、ハイブリッド車両である。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、ディーゼルエンジンを停止させたモータ走行により加速していて、ディーゼルエンジンを始動する場合に、制御装置は、エンジンクラッチを半係合状態に設定して、クランキングを開始する。そして、制御装置は、エンジン回転数が着火可能回転数に達すると、エンジンクラッチを断状態に設定した後、エンジン回転数がアイドル回転数になるように噴射するアイドル燃料噴射量に、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差に応じた回転数補正量を加算補正した補正燃料噴射量を始動用燃料として噴射する。
【0016】
これにより、ディーゼルエンジンの始動時に、モータジェネレータ回転数がアイドル回転数を超えた場合においても、アイドル燃料噴射量に、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差に応じた回転数補正量を加算補正した補正燃料噴射量が噴射されるため、エンジン回転数をモータジェネレータの回転数に確実に追従させることができる。従って、ディーゼルエンジンの始動時に、モータジェネレータ回転数がアイドル回転数を超えた場合においても、エンジンクラッチを早期に係合させて、モータ走行からハイブリッド走行に移行することができ、電力消費を抑え、燃費向上を図ることができる。
【0017】
第2の発明によれば、アイドル燃料噴射量は、エンジン回転数の増加に伴って減少する基本アイドル燃料噴射量と、ディーゼルエンジンの所定の外乱要因(例えば、オルタネータやオイルポンプやウオータポンプ等の駆動)によって決定される比例補正量と、ディーゼルエンジンの個別のバラツキによる学習によって決まる積分補正量と、を加算して算出される。これにより、エンジン始動時の目標回転数をアイドル回転数とした際の、エンジン回転数に応じたアイドル燃料噴射量を迅速に取得することができる。
【0018】
第3の発明によれば、回転数補正量は、エンジン回転数に対応するベース補正量に、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差を掛け算して算出される。これにより、エンジン始動時の目標回転数をモータジェネレータ回転数とした際の、アイドル燃料噴射量に対する噴射燃料の増量分である回転数補正量を迅速に取得することができる。
【0019】
第4の発明によれば、エンジン回転数に対応するベース補正量に、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差を掛け算した値に、更に、この回転数差の増加に伴って増加する重み付け補正係数を掛け算して回転数補正量が算出される。これにより、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差に応じて回転数補正量を増加させることができ、エンジン回転数を早期にモータジェネレータ回転数に追従させることができる。
【0020】
第5の発明によれば、制御装置は、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差が係合回転閾値以下になったと判定した場合は、エンジンクラッチを係合状態に設定して、ディーゼルエンジン及びモータジェネレータからの動力で走行するハイブリッド走行を開始する。これにより、エンジン始動時に、エンジン回転数をモータジェネレータ回転数へ確実に追従させてハイブリッド走行を開始することができる。
【0021】
第6の発明によれば、制御装置は、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差が、係合回転閾値よりも大きい所定の半係合回転閾値以下になったと判定した場合は、エンジンクラッチを半係合状態に設定する。これにより、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差が係合回転閾値以下になった場合に、半径行状態のエンジンクラッチをスムーズに係合させることができ、エンジン始動時のショックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を説明する図である。
【
図2】制御装置が実行するエンジン始動制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】エンジン始動制御処理の一例を時間経過で説明するチャート模式図である。
【
図4】アイドル燃料噴射量を決定するマップの一例を示す図である。
【
図5】ベース補正量を決定するマップの一例を示す図である。
【
図6】重み付け補正係数を決定するマップの一例を示す図である。
【
図7】回転数補正量を決定するマップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るハイブリッド車両を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るハイブリッド車両1の概略構成について
図1に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るハイブリッド車両1は、ディーゼルエンジン11と、モータジェネレータ(MG)21と、トランスミッション31と、運転状態に応じて車両を複合的に制御するハイブリッドシステム20と、制御装置(ECU)50と、を主に備えている。
【0025】
ディーゼルエンジン11は、エンジン本体12に形成された複数(本実施形態では、4個)の気筒13A~13Dを有しており、燃料噴射弁14A~14Dが、それぞれの気筒13A~13Dに設けられている。燃料噴射弁14A~14Dには、不図示のコモンレールと不図示の燃料配管を介して燃料が供給されており、燃料噴射弁14A~14Dは、制御装置50からの制御信号によって駆動され、それぞれの気筒13A~13D内に燃料を噴射する。
【0026】
ディーゼルエンジン11のクランクシャフト15の一端は、エンジンクラッチ17(例えば、湿式多板クラッチ等である。)を介してモータジェネレータ21の回転軸22の一端に接続されている。また、エンジン本体12には、エンジン回転数検出装置41が設けられている。エンジン回転数検出装置41は、例えば、回転センサであり、クランクシャフト15の回転角(すなわち、クランク角度)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。例えば、エンジン回転数検出装置41は、クランクシャフト15が15度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが制御装置50に入力される。制御装置50は、エンジン回転数検出装置41の出力パルスからクランク角度、及び、エンジン回転数を検出する。
【0027】
モータジェネレータ21には、発電運転が可能な永久磁石式の交流同期モータが用いられている。このモータジェネレータ21の回転軸22の他端は、モータクラッチ18(例えば、湿式多板クラッチ等である。)を介してトランスミッション31のインプットシャフト32に接続されている。このモータジェネレータ21は、エンジン本体12を始動するスタータモータ(不図示)の代わりに、クランキングを行う機能も有している。
【0028】
また、モータジェネレータ21には、モータジェネレータ回転数検出装置42が設けられている。モータジェネレータ回転数検出装置42は、例えば、回転センサであり、回転軸22の回転角に応じた検出信号を制御装置50に出力する。例えば、モータジェネレータ回転数検出装置42は、回転軸22が5度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが制御装置50に入力される。制御装置50は、モータジェネレータ回転数検出装置42の出力パルスからモータジェネレータ回転数を検出する。
【0029】
トランスミッション31には、ハイブリッド車両1の運転状態と予め設定されたマップデータとに基づいて決定された目標変速段へ自動的に変速するセミオートマチックトランスミッション(AMT)又はオートマチックトランスミッション(AT)が用いられている。このトランスミッション31における変速操作は、変速段制御装置であるTCM51により制御される。変速操作は、TCM51が検出したインプットシャフト32の回転数(車速に相当する)が予め設定された変速回転数Cになったときに自動的に開始される。尚、TCM51は、不図示のセンサを用いてトランスミッション31の変速に関する回転数として、インプットシャフト32の回転数Rを取得している。
【0030】
この変速操作の際には、1回の変速毎にモータクラッチ18が断接されて、ディーゼルエンジン11及びモータジェネレータ21とトランスミッション31とが切り離され、又は結合される。また、トランスミッション31で変速された回転動力は、アウトプットシャフト33に接続されたプロペラシャフト34を介してデファレンシャル35に伝達され、後輪である一対の駆動輪36にそれぞれ駆動力として分配される。
【0031】
ハイブリッドシステム20は、モータジェネレータ21と、このモータジェネレータ21に電気的に接続されたインバータ23と、高電圧バッテリ24と、DC/DCコンバータ25と、低電圧バッテリ26とを有している。高電圧バッテリ24としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等が好ましく例示される。また、低電圧バッテリ26には、鉛バッテリが用いられる。
【0032】
DC/DCコンバータ25は、高電圧バッテリ24と低電圧バッテリ26との間における充放電の方向及び出力電圧を制御する機能を有している。また、低電圧バッテリ26は、各種の車両電装品27に電力を供給する。このハイブリッドシステム20における種々のパラメータ、例えば、高電圧バッテリ24の電流値、電圧値や充電率(SOC)等は、バッテリマネージメントシステム(BMS)28により検出され、制御装置50に出力される。
【0033】
これらのディーゼルエンジン11及びハイブリッドシステム20は、制御装置50により制御される。具体的には、ハイブリッド車両1の発進時や加速時には、ハイブリッドシステム20は、高電圧バッテリ24から電力を供給されたモータジェネレータ21により駆動力の少なくとも一部をアシストする。一方で、慣性走行時や制動・減速時においては、ハイブリッドシステム20は、モータジェネレータ21による回生発電を行い、プロペラシャフト34等に発生する余剰の運動エネルギーを電力に変換して高電圧バッテリ24に充電する。
【0034】
また、ハイブリッド車両1は、エンジンクラッチ17を駆動力が伝達されない断状態に設定し、且つ、モータクラッチ18を係合した接状態に設定することで、モータジェネレータ21のみを駆動源とするモータ走行が可能となる。通常、モータ走行時には、ディーゼルエンジン11は停止される。
【0035】
制御装置(ECU:Electronic Control Unit)50は、CPU、EEPROM、RAM、ROM、タイマ、不図示のバックアップRAM等を備えた公知のものである。CPUは、ROMやEEPROMに記憶された各種プログラムや各種パラメータに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、EEPROM、及び、バックアップRAMは、例えば、ディーゼルエンジン11やモータジェネレータ21の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
【0036】
制御装置50は、信号線を介してディーゼルエンジン11、エンジンクラッチ17、モータジェネレータ21、モータクラッチ18、TCM51やバッテリマネージメントシステム28等の各部と電気的に接続されている。また、制御装置50には、アクセルペダル45に設けられて、このアクセルペダル45の踏込量を検出するアクセルペダル踏込量検出装置46の検出信号が入力される。アクセルペダル踏込量検出装置46は、例えば、アクセルペダル踏込角度センサである。制御装置50は、アクセルペダル踏込量検出装置46からの検出信号に基づいて、運転者によるアクセルペダル45の踏込量を検出することが可能である。
【0037】
上記のように構成されたハイブリッド車両1において、モータ走行により加速している場合に、制御装置50によるディーゼルエンジン11を始動して、モータジェネレータ21とディーゼルエンジン11とを駆動源とするハイブリッド走行に移行する「エンジン始動制御処理」の一例について
図2乃至
図6に基づいて説明する。尚、制御装置50は、ハイブリッド車両1がモータ走行により加速している場合に、
図2のフローチャートで示されるエンジン始動制御処理の処理手順を実行する。
【0038】
モータ走行は、ディーゼルエンジン11が停止している一方でモータジェネレータ21が高電圧バッテリ24からの給電により回転駆動され、且つ、エンジンクラッチ17が断状態で、モータクラッチ18が接状態である。尚、加速している場合は、アクセルペダル踏込量検出装置46を介して検出したアクセルペダル45の踏み込み量が「ゼロ」よりも大きい状態が維持された場合である。
【0039】
図2に示すように、先ず、ステップS11において、制御装置50は、エンジンクラッチ17を断状態から半係合(若しくは、スリップ係合)の状態(例えば、複数の摩擦板の間で滑りを生じながら係合している状態)に設定した後、ステップS12に進む。ステップS12において、制御装置50は、高電圧バッテリ24から給電して回転駆動させたモータジェネレータ21を用いて、エンジン本体12のクランキングを開始した後、ステップS13に進む。
【0040】
ステップS13において、制御装置50は、エンジン回転数検出装置41から入力される検出信号に基づいて、エンジン回転数が各燃料噴射弁14A~14Dから噴射された燃料が着火可能となる着火可能回転数(例えば、400[rpm]等)に達するのを待つ(S13:NO)。そして、エンジン回転数検出装置41から入力される検出信号に基づいて、エンジン回転数が着火可能回転数に達したと判定した場合には(S13:YES)、制御装置50は、ステップS14に進む。
【0041】
ステップS14において、制御装置50は、エンジンクラッチ17を半係合の状態から駆動力が伝達されない断状態に設定した後、ステップS15に進む。ステップS15において、制御装置50は、各燃料噴射弁14A~14Dのうちのいずれか1つを介して始動用の燃料量を噴射した後、ステップS16に進む。
【0042】
例えば、
図3に示すように、ハイブリッド車両1は、モータ走行により加速して、モータジェネレータ21のモータジェネレータ回転数(MG回転数)が、時間T1にて、ディーゼルエンジン11のアイドル回転数(例えば、500~700[rpm])よりも高い回転数(例えば、1400[rpm])に達する。また、制御装置50は、この時間T1にて、エンジンクラッチ17を半係合(若しくは、スリップ係合)の状態に設定した後、時間T2にて、ディーゼルエンジン11のエンジン回転数が着火可能回転数に達すると、エンジンクラッチ17を断状態に設定する。
【0043】
続いて、制御装置50は、各燃料噴射弁14A~14Dのうちのいずれか1つを介して始動用の燃料量を噴射する。これにより、各気筒13A~13Dのうちのいずれか1つにおいて、噴射された燃料が着火して燃焼し、クランクシャフト15が回転されて、ディーゼルエンジン11のエンジン回転数が上昇する。尚、
図3中、太実線は、ディーゼルエンジン11のエンジン回転数を示し、太一点鎖線は、モータジェネレータ21のモータジェネレータ回転数(MG回転数)を示す。
【0044】
続いて、
図2に示すように、ステップS16において、制御装置50は、エンジン回転数検出装置41から入力される検出信号に基づいて、ディーゼルエンジン11のエンジン回転数が始動完了回転数(例えば、420[rpm]等)に達したか否かを判定する。そして、ディーゼルエンジン11のエンジン回転数が始動完了回転数に達していないと判定した場合には(S16:NO)、制御装置50は、再度ステップS15以降の処理を実行する。一方、ディーゼルエンジン11のエンジン回転数が始動完了回転数に達したと判定した場合には(S16:YES)、制御装置50は、自己着火によってディーゼルエンジン11のエンジン回転数を上昇させることができると判定して、ステップS17に進む。
【0045】
ステップS17において、制御装置50は、先ず、エンジン回転数検出装置41によって検出されたエンジン回転数に対応するアイドル燃料噴射量Q1を、例えば、
図4に示すディーゼルエンジン11のエンジン回転数とアイドル回転数(例えば、500~700[rpm])に達するように噴射するアイドル燃料噴射量Q1との関係を対応づけた2次元マップM1を用いて取得する。
図4には、エンジン回転数とアイドル燃料噴射量Q1との関係の一例が示されている。
【0046】
図4に示すように、2次元マップM1は、下記式(1)によって算出され、予めEEPROMに記憶されている。尚、
図4の破線で示されるように、基本アイドル燃料噴射量61は、エンジン回転数の増加に伴って減少し、下記式(1)の「A1」は、エンジン回転数が「ゼロ」のときに噴射する基本アイドル燃料噴射量61である。また、下記式(1)の「-B1」は、
図4に示す破線の傾きである。また、比例補正量は、不図示のオルタネータやオイルポンプやウオータポンプ等の駆動によって決定される補正量であり、予め実機試験よって取得される。また、積分補正量は、ディーゼルエンジン11の個別のバラツキによる学習によって決まるものであり、予め実機試験によって取得される。
【0047】
アイドル燃料噴射量Q1=A1-エンジン回転数×B1+比例補正量+積分補正量・・・・(1)
【0048】
続いて、制御装置50は、モータジェネレータ回転数検出装置42によって検出されたモータジェネレータ回転数(MG回転数)(例えば、1400[rpm])とエンジン回転数との回転数差に応じた「回転数補正量Q2」を下記式(2)によって算出する。具体的には、制御装置50は、先ず、
図5に示すエンジン回転数とベース補正量とを関係づけた2次元マップM2を用いて、ベース補正量を取得する。
図5に示すように、ベース補正量は、エンジン回転数の増加に伴って増加し、無負荷(ニュートラル)時のエンジン回転数に対する燃料噴射量の傾きと同じ傾きで増加しており、2次元マップM2は、予めEEPROMに記憶されている。
【0049】
そして、制御装置50は、モータジェネレータ回転数検出装置42によって検出されたモータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」を算出する。更に、制御装置50は、
図6に示すモータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」と「重み付け補正係数」とを関係づけた2次元マップM3を用いて、この算出した「回転数差」に対応する「重み付け補正係数」を取得する。
【0050】
重み付け補正係数は、エンジン回転数がより早期にモータジェネレータ回転数に追従することを目的として、任意に設定される。例えば。
図6に示すように、「重み付け補正係数」は、モータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」が大きくなるに従って増加するように設定されており、2次元マップM3は、予めEEPROMに記憶されている。
【0051】
その後、制御装置50は、下記式(2)に示すように、ベース補正量と、モータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」と、「重み付け補正係数」と、を掛け算して、回転数補正量Q2としてRAMに記憶する。そして、制御装置50は、この回転数補正量Q2をアイドル燃料噴射量Q1に加算補正した「補正燃料噴射量Q3」を下記式(3)によって算出して、RAMに記憶した後、ステップS18に進む。
【0052】
回転数補正量Q2=ベース補正量×(モータジェネレータ回転数-エンジン回転数)×重み付け補正係数・・・・(2)
補正燃料噴射量Q3=アイドル燃料噴射量Q1+回転数補正量Q2・・・・(3)
【0053】
尚、
図7に示すモータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」と「回転数補正量Q2」とを関係づけた2次元マップM4を実機試験等により取得して、予めEEPROMに記憶するようにしてもよい。そして、制御装置50は、
図7に示すモータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」と「回転数補正量Q2」とを関係づけた2次元マップM4を用いて、「回転数補正量Q2」を取得するようにしてもよい。続いて、制御装置50は、この回転数補正量Q2をアイドル燃料噴射量Q1に加算補正した「補正燃料噴射量Q3」を上記式(3)によって算出して、RAMに記憶するようにてもよい。
【0054】
続いて、
図2に示すように、ステップS18において、制御装置50は、モータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」が、エンジンクラッチ17を断状態から半係合(若しくは、スリップ係合)の状態に設定する半係合回転閾値(例えば、90~100[rpm])以下になったか否かを判定する。つまり、制御装置50は、エンジン回転数が、アイドル回転数よりも高いモータジェネレータ回転数に対して、半係合回転閾値(例えば、90~100[rpm])以下になるまで上昇したか否かを判定する。
【0055】
そして、モータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」が、半係合回転閾値(例えば、90~100[rpm])よりも大きいと判定した場合には(S18:NO)、制御装置50は、エンジンクラッチ17の断状態を維持して、ステップS19に進む。ステップS19において、制御装置50は、上記ステップS17で取得した「補正燃料噴射量Q3」をRAMから読み出し、各燃料噴射弁14A~14Dのうちのいずれか1つを介して補正燃料噴射量Q3の燃料を噴射した後、再度ステップS17以降の処理を実行する。
【0056】
例えば、
図3に示すように、制御装置50は、時間T3において、ディーゼルエンジン11のエンジン回転数が始動完了回転数(例えば、420[rpm]等)に達した場合には、補正燃料噴射量Q3の燃料噴射を開始する。そして、制御装置50は、エンジン回転数と、アイドル回転数よりも高いモータジェネレータ回転数(例えば、1400[rpm])との「回転数差」が、半係合回転閾値(例えば、90~100[rpm])よりも大きい場合には(S18:NO)、エンジンクラッチ17の断状態を維持する。
【0057】
一方、
図2に示すように、上記ステップS18で、モータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」が、半係合回転閾値(例えば、90~100[rpm])以下であると判定した場合には(S18:YES)、制御装置50は、ステップS20に進む。ステップS20において、制御装置50は、エンジンクラッチ17を断状態から半係合(若しくは、スリップ係合)の状態(例えば、複数の摩擦板の間で滑りを生じながら係合している状態)に設定した後、ステップS21に進む。
【0058】
ステップS21において、制御装置50は、上記ステップS17で実行した処理と同じ処理を実行して、アイドル燃料噴射量Q1に回転数補正量Q2を加算補正した「補正燃料噴射量Q3」を上記式(3)によって算出して、RAMに記憶した後、ステップS22に進む。
【0059】
ステップS22において、制御装置50は、モータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」が、エンジンクラッチ17を半係合の状態から係合させて接状態に設定する係合回転閾値(例えば、40~50[rpm])以下になったか否かを判定する。つまり、制御装置50は、エンジン回転数が、アイドル回転数よりも高いモータジェネレータ回転数に対して、係合回転閾値(例えば、40~50[rpm])以下になるまで上昇したか否かを判定する。
【0060】
そして、モータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」が、係合回転閾値(例えば、40~50[rpm])よりも大きいと判定した場合には(S22:NO)、制御装置50は、エンジンクラッチ17の半係合の状態を維持して、ステップS23に進む。ステップS23において、制御装置50は、上記ステップS21で取得した「補正燃料噴射量Q3」をRAMから読み出し、各燃料噴射弁14A~14Dのうちのいずれか1つを介して補正燃料噴射量Q3の燃料を噴射した後、再度ステップS21以降の処理を実行する。
【0061】
一方、モータジェネレータ回転数(MG回転数)とエンジン回転数との「回転数差」が、係合回転閾値(例えば、40~50[rpm])以下であると判定した場合には(S22:YES)、制御装置50は、ステップS24に進む。ステップS24において、制御装置50は、エンジンクラッチ17を係合した接状態に設定して、モータジェネレータ21及びディーゼルエンジン11からの動力で走行するハイブリッド走行を開始して、当該処理を終了する。
【0062】
例えば、
図3に示すように、補正燃料噴射量Q3の燃料噴射が継続されて、時間T4において、アイドル回転数(例えば、500~700[rpm])よりも高いモータジェネレータ回転数(例えば、1400[rpm])とエンジン回転数との「回転数差」が半係合回転閾値(例えば、90~100[rpm])に達した場合には、エンジンクラッチ17が断状態から半係合(若しくは、スリップ係合)の状態に設定される。
【0063】
更に、補正燃料噴射量Q3の燃料噴射が継続されて、時間T5において、アイドル回転数よりも高いモータジェネレータ回転数とエンジン回転数との「回転数差」が係合回転閾値(例えば、40~50[rpm])に達した場合には、エンジンクラッチ17が係合されて、接状態に設定される。そして、制御装置50は、モータジェネレータ21及びディーゼルエンジン11からの動力で走行するハイブリッド走行を開始する。
【0064】
尚、
図3の二点鎖線で示すように、時間T3~時間T5において、制御装置50が補正燃料噴射量Q3の燃料噴射を行わないで、アイドル燃料噴射量Q1の燃料噴射を継続した場合には、エンジン回転数はアイドル回転数になり、モータジェネレータ回転数に追従できない。このため、ハイブリッド車両1は、エンジンクラッチ17の断状態が継続され、モータジェネレータ21のみで走行し、燃費が悪化する。
【0065】
ここで、制御装置50は、クランキング開始制御部、着火可能回転数判定部、始動用燃料噴射制御部、第1パラメータ取得部、第2パラメータ取得部、第3パラメータ取得部、係合回転数差判定部、ハイブリッド走行制御部、半係合回転数差判定部、半係合設定部の一例として機能する。
【0066】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るハイブリッド車両1では、ディーゼルエンジン11を停止させたモータ走行により加速していて、ディーゼルエンジン11を始動する場合に、制御装置50は、エンジンクラッチ17を半係合状態に設定して、クランキングを開始する。そして、制御装置50は、エンジン回転数が着火可能回転数に達すると、エンジンクラッチ17を断状態に設定した後、エンジン回転数がアイドル回転数になるように噴射するアイドル燃料噴射量Q1に、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差に応じた回転数補正量Q2を加算補正した補正燃料噴射量Q3を始動用燃料として噴射する。
【0067】
これにより、ディーゼルエンジン11の始動時に、モータジェネレータ回転数がアイドル回転数を超えた場合においても、アイドル燃料噴射量Q1に、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差に応じた回転数補正量Q2を加算補正した補正燃料噴射量Q3が噴射されるため、エンジン回転数をモータジェネレータの回転数に確実に追従させることができる。従って、ディーゼルエンジン11の始動時に、モータジェネレータ回転数がアイドル回転数を超えた場合においても、エンジンクラッチ17を早期に係合させて、モータ走行からハイブリッド走行に移行することができ、電力消費を抑え、燃費向上を図ることができる。
【0068】
また、アイドル燃料噴射量Q1は、エンジン回転数の増加に伴って減少する基本アイドル燃料噴射量61と、ディーゼルエンジン11の所定の外乱要因(例えば、不図示のオルタネータやオイルポンプやウオータポンプ等の駆動)によって決定される比例補正量と、ディーゼルエンジン11の個別のバラツキによる学習によって決まる積分補正量と、を上記式(1)により加算して算出される。これにより、エンジン始動時の目標回転数をアイドル回転数とした際の、エンジン回転数に応じたアイドル燃料噴射量Q1を迅速に取得することができる。
【0069】
また、回転数補正量Q2は、エンジン回転数に対応して増加するベース補正量に、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差を掛け算して算出される。これにより、エンジン始動時の目標回転数をモータジェネレータ回転数とした際の、アイドル燃料噴射量Q1に対する噴射燃料の増量分である回転数補正量Q2を迅速に取得することができる。
【0070】
また、エンジン回転数に対応するベース補正量に、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差を掛け算した値に、更に、この回転数差の増加に伴って増加する重み付け補正係数を掛け算して回転数補正量Q2が算出される。これにより、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差に応じて回転数補正量Q2を増加させることができ、エンジン回転数を早期にモータジェネレータ回転数に追従させることができる。
【0071】
また、制御装置50は、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差が係合回転閾値以下になったと判定した場合は、エンジンクラッチ17を係合した接状態に設定して、ディーゼルエンジン11及びモータジェネレータ21からの動力で走行するハイブリッド走行を開始する。これにより、エンジン始動時に、エンジン回転数をモータジェネレータ回転数へ確実に追従させてハイブリッド走行を開始することができる。
【0072】
また、制御装置50は、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差が、係合回転閾値よりも大きい所定の半係合回転閾値以下になったと判定した場合は、エンジンクラッチ17を半係合状態に設定する。これにより、モータジェネレータ回転数とエンジン回転数との回転数差が係合回転閾値以下になった場合に、半係合状態のエンジンクラッチ17をスムーズに係合させることができ、エンジン始動時のショックの発生を抑制することができる。
【0073】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。尚、以下の説明において上記
図1~
図7の前記実施形態に係るハイブリッド車両1等と同一符号は、前記実施形態に係るハイブリッド車両1等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0074】
(A)例えば、モータジェネレータ21の回転軸22の他端を、トランスミッション31のインプットシャフト32に接続して、モータクラッチ18をトランスミッション31内のインプットシャフト32に設けるようにしてもよい。そして、モータクラッチ18は、係合することによって回転軸22及びインプットシャフト32のトルクを伝達し、断状態に設定することによってトルクの伝達を遮断してニュートラル状態を設定することができるようにしてもよい。
【0075】
(B)前記実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 ハイブリッド車両
11 ディーゼルエンジン
13A~13D 気筒
14A~14D 燃料噴射弁
17 エンジンクラッチ
21 モータジェネレータ
24 高電圧バッテリ
41 エンジン回転数検出装置
42 モータジェネレータ回転数検出装置
50 制御装置