(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】片末端重合性ポリオルガノシロキサン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/388 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
C08G77/388
(21)【出願番号】P 2020025537
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 守
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-187921(JP,A)
【文献】特開平09-278850(JP,A)
【文献】特開2008-239671(JP,A)
【文献】特開2000-319398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
[式(1)中、R
1はn-ブチルであり;R
2、R
3、R
4及びR
5はメチルであり;R
6は炭素数が2~20の、ジイソシアナートから2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であり;R
7はジメチレンであり;R
8はメチル基であり;nはポリシロキサンセグメントの平均重合度で1~500であり;Xは炭素数が2~20のアルキレン基であり;Yは-OCH
2CH
2-、-OCH(CH
3)CH
2-又は
-OCH
2CH(CH
3)-であり;pは1以上の数であり;Zは-O-である。]
で表される数平均分子量500~50,000である片末端重合性ポリオルガノシロキサン。
【請求項2】
一般式(1)中において、R
6の2価の残基が誘導されるジイソシアナートが、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMHMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)よりなる群から選ばれるジイソシアナートである、請求項1に記載の片末端重合性ポリオルガノシロキサン。
【請求項3】
反応式[b]に示す、一般式(2)で表される片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体と、一般式(3)で表される重合性基含有イソシアナートとを、ウレタン化反応させる、請求項1又は2に記載の一般式(1)で表される片末端重合性ポリオルガノシロキサンの製造方法。
【化2】
[式中、R
1はn-ブチルであり;R
2、R
3、R
4及びR
5はメチルであり;R
6は炭素数が2~20の、ジイソシアナートから2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であり;R
7はジメチレンであり;R
8はメチル基であり;nはポリシロキサンセグメントの平均重合度で1~500であり;Xは炭素数が2~20のアルキレン基であり;Yは-OCH
2CH
2-、-OCH(CH
3)CH
2-又は
-OCH
2CH(CH
3)-であり;pは1以上の数であり;Zは-O-である。]
【請求項4】
一般式(3)で表される重合性基含有イソシアナートが、下記反応式[c]に示す、一般式(6)で表される化合物Aと、一般式(7)で表される化合物Bとを反応させて製造されたものである、請求項3に記載の一般式(1)で表される片末端重合性ポリオルガノシロキサンの製造方法。
【化3】
[式中、R
6は炭素数が2~20の、ジイソシアナートから2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であり;R
7はジメチレンであり;R
8はメチル基であり;Zは-O-である。]
【請求項5】
一般式(2)で表される片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体が、下記反応式[a]に示す、一般式(4)で表される片末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサンと、一般式(5)で表される片末端水酸基とアルケニル基を有するポリオキシアルキレンとの付加反応により製造されたものである、請求項3又は請求項4に記載の一般式(1)で表される片末端重合性ポリオルガノシロキサンの製造方法。
【化4】
[式中、R
1はn-ブチルであり;R
2、R
3、R
4及びR
5はメチルであり;nはポリシロキサンセグメントの平均重合度で1~500であり;Xは炭素数が2~20のアルキレン基であり;X’は炭素数が2~20のアルケニル基であり;Yは-OCH
2CH
2-、-OCH(CH
3)CH
2-又は
-OCH
2CH(CH
3)-であり;pは1以上の数である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラジカル重合性シリコーン及びその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、片末端の重合性基とポリシロキサンセグメントの間にウレタン結合を含む新規な構造を有する片末端重合性ポリオルガノシロキサン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを開環重合することによって、片末端に(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンを合成することが知られている。例えば、特開昭59-78236号公報(特許文献1)においては、リチウムトリメチルシラノレートを重合開始剤として用いてヘキサメチルシクロトリシロキサンを開環重合し、3-(2-メタクリロキシエトキシ)プロピルジメチルクロロシランで反応を停止することにより、片末端に(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンを合成する方法が提案されている。
また、特開平7-224168号公報(特許文献2)においては、トリメチルシラノール又は3-メタクリロキシプロピルジメチルシラノールを開始剤として用い、五配位ケイ素触媒の存在下、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを開環重合し、次いでそれぞれ3-メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン又はトリメチルクロロシランで反応を停止することにより、片末端に(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンを合成する方法が提案されている。
しかしながら、これらの片末端重合性オルガノポリシロキサンは、いずれも片末端の重合性基とポリシロキサンセグメントとがエステル結合を介して結合したポリシロキサンである。
【0003】
特開2001-55446号(特許文献3)では、親水性基を含有する片末端重合性ポリオルガノシロキサンが報告されている。この片末端重合性ポリオルガノシロキサンは、親水性基を有することで他の親水性アクリルモノマーと相溶性がよく、共重合体を得ることができる。
しかしながら、特許文献1~2に記載の片末端重合性オルガノポリシロキサンと同様に、特許文献3に記載の親水性基を含有する片末端重合性ポリオルガノシロキサンもまた、特に分子量が高い場合、反応性が悪く、高重合物が得られないといった問題がある。
【0004】
特表平11-507682号(特許文献4)では、末端の重合性基とポリシロキサンセグメントとの間にウレタン結合を有する重合性オルガノポリシロキサン(シロキサンマクロモノマー)が報告されているが、この材料はコンタクトレンズのような架橋硬化物を得ることを目的としているため、シロキサンマクロモノマーの純度について詳しく開示されておらず、またその開示の製造方法からは分子量分布の狭く構造の明確なシロキサンマクロモノマーを高純度で得ることは不可能である。
【0005】
特開2000-319398号(特許文献5)では、末端重合性基とポリシロキサンセグメントの間にウレタン結合を有する片末端重合性ポリオルガノシロキサンが報告され、親水性アクリルモノマーとの相溶性や重合物の加水分解性について改善されたと報告されている。しかし、片末端マクロモノマーとしての反応性については報告されておらず、使用される用途が限られると推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-78236号公報
【文献】特開平7-224168号公報
【文献】特開2001-55446号公報
【文献】特表平11-507682号公報
【文献】特開2000-319398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~5に開示されたラジカル重合性シリコーン(ラジカル重合性オルガノポリシロキサン)を用いたグラフトポリマーの用途として、毛髪用化粧料、皮膚用化粧料、メイクアップ化粧料、油中水型乳化化粧料、水中油型乳化化粧料、コンタクトレンズ、床用艶出し剤、合成皮革、光磁気記憶装置のコート剤、磁性塗料、粘着剤、撥水加工用塗料、水性樹脂乳濁液、高分子材料用表面改質剤、電着塗料用樹脂組成物、船底塗料用水中防汚剤、及び撥水撥油剤などを挙げることができる。いずれの用途においても親水性アクリルモノマーとの相溶性や片末端マクロマーの反応性は重要であり、親水性アクリルモノマーとの相溶性が低いと均一なグラフトポリマーが得られず、反応性が低いとフリーのシリコーン(未反応のマクロマー)が経時でブリードしてくるなどの問題が生じやすい。
従って、本発明は、親水性アクリルモノマーとの相溶性が高く、片末端マクロマーとしての反応性が高い片末端重合性ポリオルガノシロキサンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、重合性基含有イソシアナートを、片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体とウレタン化反応をさせることで、片末端の重合性基とポリシロキサンセグメントの間にウレタン結合を含む新規な構造を有する片末端重合性ポリオルガノシロキサンが得られ、それが親水性アクリルモノマーと高い相溶性を示し、また片末端マクロマーとしての反応性が高いことを知見した。
【0009】
即ち本発明の片末端重合性ポリオルガノシロキサンは、次の1~3項で示される。
1.一般式(1)
【化1】
[式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立に炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数6~10のアリール含有基であり;R
6は炭素数が2~20の、ジイソシアナートから2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であり;R
7は炭素数が2~20のアルキレン基であり;R
8は水素又はメチル基であり;nはポリシロキサンセグメントの平均重合度で1~500であり;Xは炭素数が2~20のアルキレン基であり;Yは-OCH
2CH
2-、-OCH(CH
3)CH
2-又はOCH
2CH(CH
3)-であり;pは1以上の数であり;Zは-O-、又は-NH-である。]
で表される数平均分子量500~50,000である片末端重合性ポリオルガノシロキサン。
2.一般式(1)中において、R
6の2価の残基が誘導されるジイソシアナートが、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMHMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)よりなる群から選ばれるジイソシアナートである前記1項に記載の片末端重合性ポリオルガノシロキサン。
3.一般式(1)中において、R
1がn-ブチル、R
2、R
3、R
4及びR
5がメチル、R
7がジメチレン、Zが-O-である前記1又は2項に記載の片末端重合性ポリオルガノシロキサン。
本発明の片末端重合性ポリオルガノシロキサンの製造方法は、次の4~6項で示される。
4.反応式[b]に示す、一般式(2)で表される片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック重合体と、一般式(3)で表される重合性基含有イソシアナートとを、ウレタン化反応させる、一般式(1)で表される片末端重合性ポリオルガノシロキサンの製造方法。
【化2】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立に炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数6~10のアリール含有基であり;R
6は炭素数が2~20の、ジイソシアナートから2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であり;R
7は炭素数が2~20のアルキレン基であり;R
8は水素又はメチル基であり;nはポリシロキサンセグメントの平均重合度で1~500であり;Xは炭素数が2~20のアルキレン基であり;Yは-OCH
2CH
2-、-OCH(CH
3)CH
2-又はOCH
2CH(CH
3)-であり;pは1以上の数であり;Zは-O-、又は-NH-である。]
5.一般式(3)で表される重合性基含有イソシアナートが、下記反応式[c]に示す、一般式(6)で表される化合物Aと、一般式(7)で表される化合物Bとを反応させて製造されたものである、前記4項に記載の一般式(1)で表される片末端重合性ポリオルガノシロキサンの製造方法。
【化3】
[式中、R
6は炭素数が2~20の、ジイソシアナートから2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であり;R
7は炭素数が2~20のアルキレン基であり;R
8は水素又はメチル基であり;Zは-O-、-NH-である。]
6.一般式(2)で表される片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体が、下記反応式[a]に示す、一般式(4)で表される片末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサンと、一般式(5)で表される片末端水酸基とアルケニル基を有するポリオキシアルキレンとの付加反応により製造されたものである、4項又は5項に記載の一般式(1)で表される片末端重合性ポリオルガノシロキサンの製造方法。
【化4】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立に炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数6~10のアリール含有基であり;nはポリシロキサンセグメントの平均重合度で1~500であり;Xは炭素数が2~20のアルキレン基であり;X’は炭素数が2~20のアルケニル基であり;Yは-OCH
2CH
2-、-OCH(CH
3)CH
2-又はOCH
2CH(CH
3)-であり;pは1以上の数である。]
【発明の効果】
【0010】
本発明の片末端重合性ポリオルガノシロキサンは、片末端の重合性基とポリシロキサン基の間にウレタン結合を含む新規な構造を有するため、親水性モノマーと高い相溶性を示す。また該片末端重合性ポリオルガノシロキサンは片末端マクロマーとしての反応性が高く、高分子量の重合体を得ることや、未反応のマクロマーを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1で製造した化合物の
1H-NMRである。
【
図2】
図2は、実施例1で製造した化合物及び比較例1の化合物の重合反応の経時での転化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の片末端重合性ポリオルガノシロキサンは、一般式(1)で表されるものである。
【化5】
[式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立に炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数6~10のアリール含有基であり;R
6は炭素数が2~20の、ジイソシアナートから2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であり;R
7は炭素数2~20のアルキレン基であり;R
8は水素又はメチル基であり;nはポリシロキサンセグメントの平均重合度で1~500であり;Xは炭素数が2~20のアルキレン基であり;Yは-OCH
2CH
2-、-OCH(CH
3)CH
2-又はOCH
2CH(CH
3)-であり;pは1以上の数であり;Zは-O-、又は-NH-である。]
【0013】
前記一般式(1)におけるR1、R2、R3、R4及びR5で示される炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどがあげられる。また炭素数6~10のアリール含有基としてはフェニル、トルイル、キシリル、エチルフェニル等のアリール及び、ベンジル、フェネチル等のアラルキルなどが挙げられる。R1としてはメチルもしくはn-ブチルが好ましく、R2、R3、R4及びR5としてはメチルが好ましい。
【0014】
前記一般式(1)におけるXで示される炭素数が2~20のアルキレン基としては、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、テトラデカメチレン、2-メチルエチレン、2-メチルトリメチレン、2-メチルテトラメチレン、2-メチルペンタメチレン、2-メチルヘキサメチレン、2-メチルヘプタメチレン、2-メチルオクタメチレン、2-メチルノナメチレン、2-メチルデカメチレン、2-メチルウンデカメチレンなどがあげられる。好ましいXは、トリメチレン、2-メチルエチレンなど炭素数が3のアルキレンである。
【0015】
前記一般式(1)において、Zは-O-、又は-NH-である。好ましいZは、-O-である。
【0016】
前記一般式(1)において、R6は炭素数が2~20の、ジイソシアナートから2つのイソシアナート基を除いた2価の残基(炭素数が2~20の有機基)である。R6の2価の残基が誘導されるジイソシアナートとしては、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMHMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)が挙げられる。好ましいジイソシアナートとしては、イソホロンジイソシアナート(IPDI)である。すなわち、R6としては、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMHMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)又は1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)から2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であれることが好ましく、イソホロンジイソシアナート(IPDI)から2つのイソシアナート基を除いた2価の残基であることがより好ましい。
【0017】
前記一般式(1)におけるR7で示される炭素数が2~20のアルキレン基としては、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、テトラデカメチレン、2-メチルエチレン、2-メチルトリメチレン、2-メチルテトラメチレン、2-メチルペンタメチレン、2-メチルヘキサメチレン、2-メチルヘプタメチレン、2-メチルオクタメチレン、2-メチルノナメチレン、2-メチルデカメチレン、2-メチルウンデカメチレンなどがあげられる。好ましいR7は、トリメチレン、2-メチルエチレンなど炭素数が3のアルキレンである。
【0018】
前記一般式(1)におけるR8は水素又はメチル基である。好ましいR8はメチルである。
【0019】
前記一般式(1)におけるYpは、ポリオキシアルキレンセグメントを表わす。pは、ポリオキシアルキレンセグメントの重合度を示し、1以上あれば特に限定されるものではないが、1から10が好ましい。Yは前述のオキシアルキレンであるが、好ましいYとしては、-OCH2CH2-が示される。
【0020】
前記一般式(1)におけるnはポリシロキサンセグメントの平均重合度で1~500あり、好ましくは1~200である。
【0021】
前記一般式(1)で示される末端重合性ポリオルガノシロキサンの分子量は、特に限定されるものではないが、平均分子量で500~50,000であることが好ましい。
平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0022】
本発明の一般式(1)で示される片末端重合性ポリオルガノシロキサンは、例えば、つぎの方法で製造することができる。
【0023】
すなわち、反応式[b]に示すように、片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体(2)と、重合性基含有イソシアナート(3)とをウレタン化反応させることにより一般式(1)で示される片末端重合性ポリオルガノシロキサンを製造することができる。
【0024】
【0025】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、n、X、Y、Z及びpは前記一般式(1)で示されたものと同じである。
【0026】
片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体(2)と重合性基含有イソシアナート化合物(3)とをウレタン化反応させる反応[b]においては、反応触媒として公知慣用の触媒を使用するが、代表的な触媒としては、無機酸、リン酸もしくはほう酸のエステル、p-トルエンスルホン酸のような酸触媒;トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、へキサメチレンテトラミンなどのアミン触媒;ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化第一錫、塩化第二錫、トリ-n-ブチルチンアセテート、鉄アセチルアセトン、ビスマスアセチルアセトン、トリメチルチンハイドロオキサイド、テトラオクチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト、三塩化アンチモンなどのような有機金属化合物又は金属塩化物などが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0027】
該触媒の使用量は、常法により実施者が適宜決定すればよい。一般的には経済性などを考慮した場合、該触媒の使用量は、片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体(2)の質量に対し10ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、さらには50ppm以上500ppm以下であることが好ましい。
【0028】
反応式[b]において、一般的に式(2)の片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体は粘度が高いため、溶媒を添加することにより反応液の粘度を下げて、反応を十分に完結させることもできる。その反応溶媒としては、反応を阻害するものでなければ制限はなく、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒などを例示することができる。これらの溶媒は単独で使用しても、その複数を組み合わせて使用してもよい。これらの溶媒はイソシアナート化合物と反応する成分(水、アルコール類、アミン類など)の含有量が極力少ないことが好ましい。
【0029】
このウレタン化反応の反応温度は特に限定されないが、該反応に溶剤を用いる場合には、該溶剤の沸点以下であることが好ましい。溶剤を使用しない場合には、0~250℃で反応させることが好ましい。重合性基の副反応などを考慮すると20~100℃で行なうことが好ましい。
【0030】
また、上記反応において、必要に応じて重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては(メタ)アクリル化合物に対して従来使用されているものであればよい。例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン(MQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、2-t-ブチルヒドロキノン、4-メトキシフェノール、及び2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(t-ブチルヒドロキシトルエン、BHT)等のフェノール系重合禁止剤が挙げられる。これらの重合禁止剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。重合禁止剤の量は特に制限されるものではないが、得られる化合物の質量に対して5~500ppmとなる量が好ましく、より好ましくは20~200ppmとなる量である。
【0031】
上記反応式[b]における、一般式(3)で表される重合性基含有イソシアナートを得るのに、下記反応式[c]に示す、一般式(6)で表される化合物A及び一般式(7)で表される化合物Bを反応させる方法が挙げられる。
【0032】
【化7】
ここで、R
6、R
7、R
8及びZは、前記一般式(1)で示されるものと同じである。
一般式(6)で表される化合物Aとしては、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMHMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)等のジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0033】
一般式(6)で表される化合物A及び一般式(7)で表される化合物Bは、モル比率A/B=1/1.1~1/1.6で反応させることが好ましい。この化合物A1モルに対する化合物Bのモル比率が1.1未満であると、反応後にジイソシアナート化合物Aが多く残存し、反応式[b]で示される反応の際に一般式(2)の2量体(化合物Aの両末端に一般式(2)の化合物が結合した物)が生成し目的物中に不純物として残存するおそれがある。また化合物A1モルに対する化合物Bのモル比率が1.6を超えると一般式(3)で表される化合物の生成比率が低くなり、目的物の収率が低下し、経済的ではない。
そのほかの反応条件は、前記反応式[b]で示されるウレタン化反応の条件と同じである。
【0034】
式(2)で表される片末端水酸基ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンブロック共重合体は、例えば、下記の反応式[a]に示す、片末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサン(4)と、片末端水酸基とアルケニル基を有するアルコール(5)との付加反応(ヒドロシリル化反応)により製造することができる。
【化8】
ここで、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、n、X、Y及びpは前記一般式(1)で示されるものと同じである。X'は炭素数2~20のアルケニル基を示す。
【0035】
一般式(5)におけるX’で示される炭素数が2~20のアルケニル基としては、ビニル、ヘキサニル、オクテニル等が挙げられる。好ましいX’はアリル、メタリルなどのアルケニル基である。
【0036】
上記ヒドロシリル化反応式[a]において反応溶媒は必ずしも必要ではないが、必要に応じて反応を阻害するものでなければ適当な溶媒を使用してもよい。具体的にはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール溶媒;水などを例示することができる。これらの溶媒は単独又はいくつかを組み合わせて使用することもできる。
【0037】
ヒドロシリル化反応の反応温度は特に限定されないが、通常は反応溶媒の沸点以下である。反応溶媒を使用しない場合は0~250℃で反応することができるが、経済性などを考慮すると20~120℃で行なうことが好ましい。ヒドロシリル化反応においては反応触媒を使用してもよく、一般的に使用される触媒としては、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、モリブデン、マンガンを含む化合物を例示することができる。更に、これらは溶媒に溶解するいわゆる均一系触媒という形態や、カーボン、シリカなどに担持させた担持型触媒の形態、ホスフィンやアミン、酢酸カリウムなどを助触媒とした触媒形態のいずれのものも使用することができる。
【0038】
末端水酸基とアルケニル基を有するアルコール(5)は、市販のアリルグリコール、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテルなどを使用することができる。
【0039】
例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルの場合、日本油脂(株)製のつぎのようなものが示される。
“ユニオックスPKA-5001”(式(5)において、X’がアリル基で、Yが-OCH2CH2-である平均分子量200のポリエチレングリコールモノアリルエーテル)
“ユニオックスPKA-5002”(式(5)において、X’がアリル基で、Yが-OCH2CH2-である平均分子量400のポリエチレングリコールモノアリルエーテル)
【実施例】
【0040】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0041】
実施例において使用した測定装置、測定条件は以下の通りである。
GPC:HLC-8220(東ソー社製)
カラム:TSKgel SuperH2500 6.0mmI.D.×15cm、3μm
TSKgel SuperHM-H 6.0mmI.D.×15cm、3μm
リファレンスカラム: TSKgel SuperH-RC
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折検出器)
NMR:AVANCEIII-400(Buruker社製)、
1H-NMR、測定溶媒として重クロロホルム使用
粘度:キャノンフェンスケ粘度計を用いて測定した。
屈折率:デジタル屈折率計RX-5000(アタゴ社製)を用いて測定した。
水酸基価:下記JIS K0070の水酸基価により算出した。
水酸基価測定方法(JIS K0070):
試料に無水酢酸及びピリジンからなるアセチル試薬を加えた後加熱して、試料中の水酸基をアセチル化した。次に水を加えて過剰の無水酢酸を酢酸に分解し、0.5規定の水酸化カリウム-エチルアルコール溶液を用いて酢酸の中和滴定を行った。
次式により水酸基価を算出した。式中の各符号は次の通りである。
α:空試験における0.5規定水酸化カリウム-エチルアルコール溶液の使用量(ml)
β:本試験における0.5規定水酸化カリウム-エチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.5規定水酸化カルシウム-エチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
D:酸価
【数1】
【0042】
[実施例1]
式(8)で示される本発明の片末端重合性ポリオルガノシロキサンの合成
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた2Lのガラス製反応器中に、イソホロンジイソシアナート(IPDI;分子量222)126.8g、及び鉄(III)アセチルアセトン0.021gを仕込み、30℃に加熱した後、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA;分子量130)104gを滴下した。発熱が収まったのを確認し、重合禁止剤であるメチルヒドロキノン(MQ)0.92g、及びt-ブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.92gを加えて系を50℃まで加熱し、1.5時間反応を行った。
続いて、同じ反応器に市販品である片末端カルビノール変性シリコーン(信越化学工業製X-22-170DX;水酸基価10)800gと鉄(III)アセチルアセトン0.021gを投入し、80℃まで加熱し、2時間反応させた。さらに残存イソシアナート基を失活させるためにHEMAを56g投入し、追加で1時間反応させた。
得られた反応液を室温にもどした後、副反応で生成した低分子不純物をメタノール1080gで三回洗浄し、最終的に減圧留去して揮発分を除去し、淡黄色透明の液体774gを得た。
【0043】
得られた生成物の25℃における粘度、屈折率、数平均分子量(ゲル透過クロマトグラフによる測定)、水酸基価を測定した。結果を以下に示す。これらの結果より、得られた生成物は式(8)で示される片末端重合性ポリオルガノシロキサンであり、分子量分布が狭く構造の明確な高純度のポリオルガノシロキサンであることがわかった。
粘度:419mm
2/s
屈折率:1.4116
数平均分子量:7500
水酸基価:1以下
【化9】
【0044】
[比較例1]
市販品として、式(9)で示される末端重合性ポリオルガノシロキサン(片末端メタクリル変性シリコーン(信越化学工業製、KF-2012)を下記で述べる比較例1の化合物として使用した。
【化10】
【0045】
<相溶性試験>
実施例1で得た化合物と比較例1の化合物で、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)との相溶性(混合重量比;化合物:ヒドロキシエチルメタクリレート=10:1)を比較した。可溶した場合は○、不溶で混合物が白濁した場合は×と評価し、結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
<重合反応の反応性試験>
実施例1で得た化合物と比較例1の化合物で、それぞれ下記の条件で単独重合を行った。
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた100mLのガラス製反応器中に、実施例1で得た化合物20g又は比較例1の化合物20g、及び反応溶媒としてキシレン18gを仕込み95℃に加熱した後、ラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.02gとキシレン2gで調製した溶液を投入し、経時での転化率をGPC測定でのピーク面積のシフトより見積もった。
反応時間に対する算出されたマクロマー転化率を
図2に示す。
【0048】
実施例1で得た化合物は親水性モノマーであるHEMAとの相溶性が高く、また、片末端マクロマーとしての反応性が高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の片末端重合性ポリオルガノシロキサンは、片末端の重合性基とポリシロキサンセグメントの間にウレタン結合を含む新規な構造を有するため、親水性アクリルモノマーと高い相溶性を示し、また片末端マクロマーとしての反応性が高く、高分子量の重合体を得られることや、未反応のマクロマーを低減することが可能である。したがって、本発明の片末端重合性ポリオルガノシロキサンは、毛髪用化粧料、皮膚用化粧料、メイクアップ化粧料、油中水型乳化化粧料、水中油型乳化化粧料、コンタクトレンズ、床用艶出し剤、合成皮革、光磁気記憶装置のコート剤、磁性塗料、粘着剤、撥水加工用塗料、水性樹脂乳濁液、高分子材料用表面改質剤、電着塗料用樹脂組成物、船底塗料用水中防汚剤、及び撥水撥油剤などの分野に使用されるグラフトポリマーのマクロマーとして利用することができる。