(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】産業車両のバッテリ自動補水装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/691 20210101AFI20230808BHJP
H01M 50/618 20210101ALI20230808BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230808BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20230808BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230808BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230808BHJP
【FI】
H01M50/691
H01M50/618
B60K1/04 Z
H01M10/42 Z
H01M10/48 301
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2020037336
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】土井 惇平
(72)【発明者】
【氏名】石川 忠史
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-272711(JP,A)
【文献】特開2006-302738(JP,A)
【文献】特開2011-165427(JP,A)
【文献】特開2001-210312(JP,A)
【文献】特開2002-358950(JP,A)
【文献】実開昭56-67663(JP,U)
【文献】特開平1-108007(JP,A)
【文献】米国特許第4161115(US,A)
【文献】中国実用新案第201059202(CN,Y)
【文献】米国特許出願公開第2010/0125941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/60
H01M 50/20
H01M 10/42
H01M 10/48
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両の車体に搭載されるバッテリと、
前記車体に搭載され、バッテリ精製水を貯留するバッテリ精製水タンクと、
前記バッテリと前記バッテリ精製水タンクとを接続する給水管と、
前記バッテリ精製水タンクのバッテリ精製水を前記バッテリへ前記給水管を介して給水する給水ポンプと、
前記給水ポンプを駆動するポンプモータと、
前記ポンプモータを制御するコントローラと、
前記コントローラと接続され、前記給水管におけるバッテリ精製水の給水圧力を検出する圧力検出器と、
前記給水管における前記給水ポンプと前記圧力検出器との間に設けられ、予め設定される第1設定圧以上のとき、前記バッテリへ向けてバッテリ精製水を通す給水用チェックバルブと、を備えた産業車両のバッテリ自動補水装置において、
前記給水管における前記給水用チェックバルブと前記給水ポンプとの間と、前記給水管における前記バッテリと前記給水用チェックバルブとの間とを接続するバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられ、前記バッテリの満水後に前記給水管のバッテリ精製水を前記バッテリ精製水タンクへ向けて戻して前記給水管の残圧を開放するリターン機構と、を備えることを特徴とする産業車両のバッテリ自動補水装置。
【請求項2】
前記リターン機構は、前記給水管のバッテリ精製水を前記バッテリ精製水タンクへ戻すリターン用チェックバルブであることを特徴とする請求項1記載の産業車両のバッテリ自動補水装置。
【請求項3】
前記リターン機構は、前記リターン機構の前後の差圧が予め設定された第2設定圧以上のとき、前記給水管のバッテリ精製水をバッテリ精製水タンクへ向けて戻して前記給水管の残圧を開放することを特徴とする請求項1又は2記載の産業車両のバッテリ自動補水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両の車体に搭載されたバッテリにバッテリ精製水を自動的に補給することが可能な産業車両のバッテリ自動補水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両のバッテリ自動補水装置の従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたバッテリ式産業車両のバッテリ液補水装置が知られている。特許文献1に開示されたバッテリ式産業車両のバッテリ液補水装置は、走行用もしくは荷役作業用の電源としてバッテリを搭載し、バッテリ液が貯留された補水タンクおよび電動式の補水ポンプを備えている。バッテリの各セルの補水栓と補水タンクとは補水ポンプおよび配管を介して相互に接続されている。バッテリ液補水装置は、充電中にバッテリへ補水液を供給する補水回路を作動可能とする補水作動手段と、補水回路の作動を終了させる補水終了手段と、を備えている。
【0003】
補水作動手段は、バッテリへの充電器が外部の商用電源に接続され、充電器に付属する充電スイッチが押されたときに連動して閉じられるマグネットスイッチを備える。マグネットスイッチは、充電スイッチが押されるとオン作動し、充電が終了するとオフされる。補水終了手段は、マグネットスイッチと直列に接続された常時オンのタイマスイッチを備え、補水回路の圧力を検出する圧力スイッチと、タイマスイッチをオフ作動させる駆動回路を備える。
【0004】
充電器の充電スイッチをオン操作すると、バッテリの充電が開始される。充電回数がN回目である場合には、電動モータが回転して補水ポンプを駆動する。補水が必要なセルに止水弁を介して補水され、止水弁はセル内に補水液が供給されて液面レベルが規定値に達すると閉じる。各セルの止水弁が閉じて配管の内圧が上昇すると圧力スイッチが作動して駆動回路が作動し、電動モータ、補水ポンプが停止すると、補水作動は終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたバッテリ式産業車両のバッテリ液補水装置では、補水タンクへ連通する圧抜き路が開口しているため、補水タンクとバッテリとの配置や、配管長さの影響によってバッテリ補水液の流量が安定しないという問題がある。このため、バッテリ補水液の流量が不安定となることで補水量の推定の精度が低下する。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、バッテリの満水後における給水管の残圧を開放することが可能であって、バッテリ精製水の流量を安定させることが可能な産業車両のバッテリ自動補水装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、産業車両の車体に搭載されるバッテリと、前記車体に搭載され、バッテリ精製水を貯留するバッテリ精製水タンクと、前記バッテリと前記バッテリ精製水タンクとを接続する給水管と、前記バッテリ精製水タンクのバッテリ精製水を前記バッテリへ前記給水管を介して給水する給水ポンプと、前記給水ポンプを駆動するポンプモータと、前記ポンプモータを制御するコントローラと、前記コントローラと接続され、前記給水管におけるバッテリ精製水の給水圧力を検出する圧力検出器と、前記給水管における前記給水ポンプと前記圧力検出器との間に設けられ、予め設定される第1設定圧以上のとき、前記バッテリへ向けてバッテリ精製水を通す給水用チェックバルブと、を備えた産業車両のバッテリ自動補水装置において、前記給水管における前記給水用チェックバルブと前記給水ポンプとの間と、前記給水管における前記バッテリと前記給水用チェックバルブとの間とを接続するバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられ、前記バッテリの満水後に前記給水管のバッテリ精製水を前記バッテリ精製水タンクへ向けて戻して前記給水管の残圧を開放するリターン機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、ポンプモータが給水ポンプを駆動することにより、給水管の圧力が第1設定圧以上になると、給水用チェックバルブが開いてバッテリへのバッテリ精製水の供給が行われる。バッテリ精製水の供給によりバッテリにおけるバッテリ液が満水になると、バッテリではバッテリ精製水の供給を遮断するので、給水管の内圧が上昇する。そして、圧力検出器が満水を示す給水圧力を検出するとコントローラはポンプモータを停止し、給水管におけるバッテリ精製水はリターン機構を通じてバイパス配管を通り、バッテリ精製水タンクへ向かう。このため、満水後の給水管における残圧は開放される。バイパス配管が閉回路であるため、大気圧開放によるリターン配管の場合と比較するとバッテリ精製水の流量がバッテリ精製水タンクや給水管の長さによる影響を受けることがなく安定する。その結果、補水量を精度よく推定することが可能となる。また、バッテリ精製水タンクの位置や給水管の長さを考慮する必要がないので、産業車両のバッテリ自動補水装置のレイアウトの自由度が向上する。
【0010】
また、上記の産業車両のバッテリ自動補水装置において、前記リターン機構は、前記給水管のバッテリ精製水を前記バッテリ精製水タンクへ戻すリターン用チェックバルブである構成としてもよい。
この場合、リターン用チェックバルブとすることで安価なリターン機構を実現できるほか、バッテリ精製水の流量を精度良く推定することができる。
【0011】
また、上記の産業車両のバッテリ自動補水装置において、前記リターン機構は、前記リターン機構の前後の差圧が予め設定された第2設定圧以上のとき、前記給水管のバッテリ精製水をバッテリ精製水タンクへ向けて戻して前記給水管の残圧を開放する構成としてもよい。
この場合、リターン機構は、給水管の圧力が予め設定された第2設定圧以上になると給水管のバッテリ精製水をバッテリ精製水タンクへ向けて戻して給水管の残圧を開放することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バッテリの満水後における給水管の残圧を開放することが可能であって、バッテリ補水液の流量を安定させることが可能な産業車両のバッテリ自動補水装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係るバッテリ自動補水装置を搭載する産業車両としてのフォークリフトの側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るバッテリ自動補水装置の概略構成図である。
【
図3】(a)はバッテリへバッテリ精製水が送出される状態を示す図であり、(b)はバッテリ精製水がバッテリ精製水タンクへ送出される状態を示す図である。
【
図4】第2の実施形態に係るバッテリ自動補水装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る産業車両のバッテリ自動補水装置について図面を参照して説明する。本実施形態の産業車両はバッテリ式フォークリフトである。本実施形態ではバッテリ式フォークリフトのバッテリ自動補水装置について例示して説明する。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、バッテリ式フォークリフトのオペレータが運転席の運転シートに着座して、バッテリ式フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。
【0015】
まず、バッテリ式フォークリフト(以下、単に「フォークリフト」と表記する。)について説明する。
図1に示すフォークリフト10は、車体11の前部に荷役装置12を備えている。車体11の中央付近には運転席13が設けられている。車体11の前部には前輪としての駆動輪14が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪15が設けられている。車体11の後部にはカウンタウエイト16が備えられており、カウンタウエイト16は車両重量の調整と車体11における重量バランスを図るためのものである。
【0016】
車体11における運転席13の下方にはバッテリ17が収容されている。バッテリ17は鉛蓄電池である。バッテリ17の電力により駆動する走行モータ18が車体11に備えられている。走行モータ18と駆動輪14との間には、走行モータ18の走行駆動力を駆動輪14へ伝達する動力伝達機構(図示せず)が設けられている。
【0017】
車体11における運転席13には、オペレータが着座可能な運転シート19が設けられている。運転シート19は、車体11に開閉可能に設けられたシートスタンド20上に配置されている。運転シート19の前方には、操舵のためのステアリングホイール21が設けられている。運転席13の床にはアクセルペダル22が設けられており、アクセルペダル22はフォークリフト10の車速を調整するためのものである。フォークリフト10は、オペレータによるアクセルペダル22の踏み込み量に応じた車速となるように走行モータ18の駆動を制御する。
【0018】
車体11には、フォークリフト10の各部の電気的制御を行うコントローラ23が搭載されている。コントローラ23は、カウンタウエイト16の前方に位置し、シートスタンド20により覆われている。また、次に説明するフォークリフト10のバッテリ自動補水装置(以下、単に「バッテリ自動補水装置」)25が備えるバッテリ精製水タンク26が車体11の内部に収容されるバッテリ17と車体11の上部に備えられる運転シート19との間に設置されている。
【0019】
次に、バッテリ自動補水装置25について説明する。バッテリ自動補水装置25は、予め設定された作動条件を満たすとき、バッテリ精製水をバッテリ17へ自動的に補給する装置である。
図2に示すように、バッテリ自動補水装置25は、バッテリ精製水タンク26と、給水管27と、給水ポンプ28と、ポンプモータ29と、コントローラ23と、表示器30と、圧力センサ31と、を備えている。
【0020】
バッテリ精製水タンク26は、バッテリ精製水を貯留するためのタンクであり、本実施形態では、車体11の内部に収容されている。バッテリ精製水タンク26は車体11の内部に収容されているが、車体11に設けたスリット(図示せず)により、バッテリ精製水タンク26におけるバッテリ精製水の水位(液面レベル)は目視可能である。本実施形態では、バッテリ精製水タンク26は、バッテリ17に対するバッテリ精製水の給水を数回程度行える容量を有している。バッテリ精製水タンク26に貯留されるバッテリ精製水は純水である。バッテリ精製水をバッテリ精製水タンク26に補充する場合は、シートスタンド20を起立させることで、バッテリ精製水タンク26にバッテリ精製水を補充できる状態となる。なお、バッテリ精製水タンク26の一部又は全部は車体11の外部に取り付けられていてもよい。
【0021】
給水管27は、バッテリ17とバッテリ精製水タンク26と接続する配管である。図示はされないが、給水管27はバッテリ17の各セルにバッテリ精製水を供給するための分岐管を備えており、分岐管の数はバッテリ17のセル数に対応する。分岐管のセル側の端部には止水栓(図示せず)が備えられている。止水栓は、セルのバッテリ液の液面が予め設定された設定液面レベルに達すると閉じられ、この設定液面レベルより液面レベルが下がると開くように構成されている。具体的には、バッテリ液に浮かぶフロートによる止水栓、あるいは、液面センサによる検出により開閉される電磁開閉弁を止水栓として用いればよい。
【0022】
給水管27には給水用チェックバルブ32が設けられている。給水用チェックバルブ32は、バッテリ17へ向かう方向へのみバッテリ精製水を通す逆止弁である。そして、給水用チェックバルブ32は、給水用チェックバルブ32の前後の差圧が予め設定された第1設定圧P1以上のときに開き、バッテリ精製水をバッテリ17へ向けて通し、給水用チェックバルブ32の前後の差圧が第1設定圧未満のときは閉じる。第1設定圧P1は、給水用チェックバルブ32の弁体(図示せず)を閉じる方向に付勢する付勢部材(図示せず)の付勢力により設定される。給水用チェックバルブ32は、バッテリ精製水タンク26のバッテリ精製水が水頭によってのみバッテリ17へ単に流れ込むことを規制する。給水用チェックバルブ32の前後の差圧とは、給水管27において給水用チェックバルブ32の前方となるバッテリ17と給水用チェックバルブ32との間の圧力と、給水管27において給水用チェックバルブ32の後方となるバッテリ精製水タンク26と給水用チェックバルブ32との間の圧力との差である。
【0023】
給水ポンプ28は、バッテリ精製水タンク26に貯留されているバッテリ精製水をバッテリ17へ供給するためのポンプである。給水ポンプ28は、例えば、インペラの回転によってバッテリ精製水を圧送する渦巻ポンプであり、インペラを含む回転部(図示せず)を有する。ポンプモータ29は、給水ポンプ28の回転部を回転させるための電動モータである。ポンプモータ29は、コントローラ23と配線33により電気的に接続されており、ポンプモータ29の駆動制御は配線33を介してコントローラ23により行われる。配線33は信号線に相当する。
【0024】
表示器30は報知器に相当する。本実施形態の表示器30は、各種情報を表示可能な液晶ディスプレイであり、運転席13の前部において運転シート19に着座したオペレータから目視し易い位置に備えられている。本実施形態の表示器30は、コントローラ23と接続されており、バッテリ液満水である旨の表示するほか、ポンプモータ29の駆動不能や停止不能の異常や給水管27の漏水が疑われる場合に警告表示する。警告表示としては、例えば、「バッテリ液給水完了」、「ポンプモータ駆動不能又は給水管漏水」、「ポンプモータ停止不能」といった文言が点滅表示される。
【0025】
圧力センサ31は、圧力検出器に相当し、ポンプモータ29の運転時の給水管27におけるバッテリ精製水の圧力(給水圧力)Pを検出するセンサである。圧力センサ31は、検出した給水圧力を検出値に応じた電流値の信号に変換する。圧力センサ31により検出された給水圧力の信号はコントローラ23へ伝達される。圧力センサ31がバッテリ17の満水示す閾値Ptを検出すると、コントローラ23はバッテリ17が満水であることを認識するので、圧力センサ31は満水検出手段に相当すると言える。
【0026】
本実施形態のコントローラ23は、ポンプモータ29を駆動制御するため、ポンプモータ29と配線33により電気的に接続されている。コントローラ23は、予め設定された作動条件を満たすとき、ポンプモータ29を駆動して、バッテリ精製水の供給を開始する。予め設定された作動条件は、例えば、バッテリ17のセルにおけるバッテリ液の液面レベルが予め設定された所定液面レベルより下がった場合や、所定の充電回数を経てから最新の充電から所定日数が経過している場合等である。
【0027】
コントローラ23は、圧力センサ31により検出された給水圧力Pに基づいてバッテリ液の満水を判別する機能を有している。バッテリ17における各セルのバッテリ液の液面が予め設定された設定液面レベルに達すると止水栓が閉じられるため、ポンプモータ29が作動していることと相まって給水管27の圧力が上昇する。そして、圧力センサ31が満水を示す閾値Ptを検出すると、コントローラ23は満水であると判断して、ポンプモータ29を停止する制御を行う。
【0028】
ところで、本実施形態では、満水後の給水管27の残圧を開放するためにバイパス配管34が給水管27に接続されている。バイパス配管34の一端は給水管27における給水ポンプ28と給水用チェックバルブ32との間に接続され、バイパス配管34の他端は給水管27におけるバッテリ17と給水用チェックバルブ32との間に接続されている。バイパス配管34は給水管27に対してのみ接続されているため、大気開放されない閉回路を構成する配管である。
【0029】
バイパス配管34には、リターン用チェックバルブ35が設けられている。リターン用チェックバルブ35は、給水用チェックバルブ32と構造は同じであり、給水ポンプ28へ向かう方向へのみバッテリ精製水を通す逆止弁である。そして、リターン用チェックバルブ35は、リターン用チェックバルブ35における前後の差圧が予め設定された第2設定圧P2以上のときに開き、バッテリ精製水をバッテリ精製水タンク26へ向けて通し、リターン用チェックバルブ35における前後の差圧が第2設定圧P2未満のときは閉じる。第2設定圧P2は、リターン用チェックバルブ35の弁体(図示せず)を閉じる方向に付勢する付勢部材(図示せず)の付勢力により設定される。リターン用チェックバルブ35は、バイパス配管34に設けられ、バッテリ17の満水後に給水管27のバッテリ精製水をバッテリ精製水タンク26へ向けて戻して給水管27の残圧を開放するリターン機構に相当する。本実施形態では第2設定圧P2は第1設定圧P1よりも小さい。
【0030】
リターン用チェックバルブ35の前後の差圧とは、給水管27においてリターン用チェックバルブ35の前方となるバッテリ17とリターン用チェックバルブ35との間の圧力と、給水管27においてリターン用チェックバルブ35の後方となるバッテリ精製水タンク26とリターン用チェックバルブ35との間の圧力との差である。
【0031】
次に、バッテリ自動補水装置25の作動について説明する。フォークリフト10の運転中に、予め設定された作動条件を満たすと、バッテリ自動補水装置25はバッテリ精製水タンク26から自動的にバッテリ精製水をバッテリ17に供給する。具体的には、コントローラ23は、予め設定された作動条件を満たしたことを検知すると、ポンプモータ29を駆動させる駆動信号を伝達し、ポンプモータ29は駆動信号を受けて駆動する。なお、予め設定された条件とは、例えば、バッテリ17のセルにおけるバッテリ液の液面レベルが予め設定された所定液面レベルより下がった場合や、所定の充電回数を経てから最新の充電から所定日数が経過している場合等である。
【0032】
ポンプモータ29が駆動されると、給水ポンプ28がバッテリ精製水をバッテリ17へ向けて送出する。給水管27における給水ポンプ28と給水用チェックバルブ32との間の圧力が上昇し、給水用チェックバルブ32の前後の差圧が第1設定圧P1以上になると給水用チェックバルブ32が開く。給水用チェックバルブ32が開くことにより、
図3(a)に示すように、バッテリ精製水が給水用チェックバルブ32を通りバッテリ17へ送出される。バッテリ精製水の送出量が一定になると、圧力センサ31により検出される給水圧力Pは一定となる。
【0033】
リターン用チェックバルブ35は、給水管27における給水ポンプ28と給水用チェックバルブ32との間の圧力が上昇しても開くことはなく、バイパス配管34を通じてバッテリ17へバッテリ精製水を送出されることはない。バイパス配管34が大気開放されない閉回路であるため、バッテリ精製水タンク26の高さや給水管27の長さに影響されることなくバッテリ精製水の流量は安定する。
【0034】
バッテリ17の各セルがバッテリ精製水の供給を受けて、各セルのバッテリ液の液面が所定液面レベルに達して満水になると止水栓が閉じる。このため、バッテリ精製水タンク26のバッテリ精製水がポンプモータ29により送出されるものの止水栓が閉じられているので、圧力センサ31に検出される給水圧力Pは増大する。このため、圧力センサ31に検出される給水圧力Pが満水を示す閾値Ptを検出すると、コントローラ23は、バッテリ17の各セルのバッテリ液が満水であると判断し、ポンプモータ29を停止する信号をポンプモータ29へ伝達する。ポンプモータ29は、停止信号の伝達を受けて停止し、ポンプモータ29の停止に伴い、給水ポンプ28が停止する。
【0035】
給水ポンプ28の停止により、給水管27における給水ポンプ28と給水用チェックバルブ32との間のバッテリ精製水の一部は、給水ポンプ28を通過してバッテリ精製水タンク26に戻る。このため、給水管27における給水ポンプ28と給水用チェックバルブ32との間の圧力は低下する。給水管27における給水ポンプ28と給水用チェックバルブ32との間の圧力が第1設定圧P1未満になると、給水用チェックバルブ32は閉じる。そして、リターン用チェックバルブ35における前後の差圧が第2設定圧P2以上であると、リターン用チェックバルブ35が開く。
【0036】
リターン用チェックバルブ35が開くことで、
図3(b)に示すように、給水管27におけるバッテリ17と給水用チェックバルブ32との間のバッテリ精製水がバイパス配管34およびリターン用チェックバルブ35を通じてバッテリ精製水タンク26へ向けて送出される。このため、給水管27におけるバッテリ17と給水用チェックバルブ32との間の圧力は低下し、バッテリ17と給水用チェックバルブ32との間の圧力が第2設定圧P2未満になると、リターン用チェックバルブ35は閉じる。このため、給水管27におけるバッテリ17と給水用チェックバルブ32との間の圧力による給水管27やバッテリ17の止水栓に負荷は、バッテリ精製水をバイパス配管34およびリターン用チェックバルブ35を通じてバッテリ精製水タンク26へ送出しない場合と比較して軽減される。
【0037】
本実施形態に係るバッテリ自動補水装置25は、以下の作用効果を奏する。
(1)ポンプモータ29が給水ポンプ28を駆動することにより、バッテリ17へのバッテリ精製水の供給が行われる。バッテリ精製水の供給によりバッテリ17におけるバッテリ液が満水になると、バッテリ17にてバッテリ精製水の供給を遮断するので、給水管27の内圧が上昇する。そして、圧力センサ31が満水を示す閾値Ptを検出するとコントローラ23はポンプモータ29を停止する。給水管27におけるバッテリ精製水はリターン用チェックバルブ35を通じてバイパス配管34を通り、バッテリ精製水タンク26へ向かう。このため、満水後の給水管27における残圧は開放される。バイパス配管34が閉回路であるため、大気圧開放によるリターン配管が設けられている場合と比較するとバッテリ精製水の流量がバッテリ精製水タンク26や給水管27の長さによる影響を受けることがなく安定する。その結果、補水量を精度良く推定することが可能となる。また、バッテリ精製水タンク26の位置や給水管27の長さを考慮する必要がないので、バッテリ自動補水装置25のレイアウトの自由度が向上する。
【0038】
(2)リターン機構が給水管27のバッテリ精製水をバッテリ精製水タンク26へ戻すリターン用チェックバルブ35であるので、安価なリターン機構を実現できるほか、バッテリ精製水の流量を精度良く推定することができる。バッテリ17へのバッテリ精製水の流量を精度良く推定することで、給水管27およびバッテリ17の止水栓に対する過度な負荷の発生を防止することができる。
【0039】
(3)リターン用チェックバルブ35は、リターン用チェックバルブ35における前後の差圧が予め設定された第2設定圧P2以上のとき、給水管27のバッテリ精製水をバッテリ精製水タンク26へ向けて戻して給水管27の残圧を開放することができる。このため、給水管27およびバッテリ17の止水栓に対する過度な負荷の発生を確実に防止することができる
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る産業車両のバッテリ自動補水装置について説明する。本実施形態では、リターン用バルブに代えて絞りをリターン機構とした点で第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0041】
図4に示すバッテリ自動補水装置40では、バイパス配管34には絞り41が設けられている。絞り41は、ピンホールであり、バイパス配管34の管径に対して十分に小さい内径を有している。これは、給水用チェックバルブ32が閉じているとき、バッテリ精製水タンク26におけるバッテリ精製水の水頭によってバッテリ17へ向けてバイパス配管34を通るバッテリ精製水を可及的に少なくするためである。
【0042】
本実施形態のバッテリ自動補水装置40によれば、給水ポンプ28の駆動によって給水用チェックバルブ32が開いてバッテリ精製水がバッテリ17へ送出される。このとき、絞り41を通ってバイパス配管34からバッテリ17へ向かうバッテリ精製水の量は、給水管27を通るバッテリ精製水の量と比較すると無視できる量であり、バッテリ17への送出量を推定する場合に影響は殆どない。
【0043】
バッテリ17におけるバッテリ液が満水になると、バッテリ17にてバッテリ精製水の供給を遮断するので、給水管27の内圧が上昇する。そして、圧力センサ31が満水を示す給水圧力Pを検出するとコントローラ23はポンプモータ29を停止する。給水管27におけるバッテリ精製水は絞り41を通じてバイパス配管34を通り、バッテリ精製水タンク26へ向かう。このため、満水後の給水管27における残圧は開放される。
【0044】
本実施形態では、給水管27におけるバッテリ精製水を絞り41を通じてバイパス配管34に通すので、満水後の給水管27における残圧を開放することができる。リターン機構が絞り41であってもバイパス配管34は閉回路であるため、バッテリ精製水の流量がバッテリ精製水タンク26や給水管27の長さによる影響を受けることがなく安定する。また、バッテリ精製水タンク26の位置や給水管27の長さを考慮する必要がないので、バッテリ自動補水装置25のレイアウトの自由度が向上する。
【0045】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0046】
○ 上記の実施形態ではリターン機構としてリターン用チェックバルブ又は絞りを用いたが、リターン機構はチェックバルブ、絞りに限定されない。リターン機構は、例えば、電磁開閉弁であってもよく、バッテリ精製水がバッテリへ送出されるとき電磁開閉弁を閉じてバイパス配管を遮断し、満水後の電磁開閉弁を開いてバイパス配管にバッテリ精製水を通して給水管の残圧を解消するようにしてもよい。因みに、給水管の開閉をバイパス配管の開閉と同時に行う単一の電磁開閉弁としてもよい。
○ 上記の実施形態では、バッテリ自動補水装置が報知器(表示器)を備えるとしたが、この限りではない。バッテリ自動補水装置は必ずしも報知器を備える必要はない。また、報知部の例として警告を表示可能な表示器を示したが、報知部は表示器に限らない。報知部は、例えば、音声による警告やランプ点灯・点滅といった警告を発する構成としてもよい。また、音声および文字表示等を組み合わせた警告としてもよい。
○ 上記の実施形態では、産業車両としてバッテリ式フォークリフトを例示して説明したが、これに限らない。産業車両は、例えば、バッテリ式牽引車等、少なくとも鉛蓄電池を搭載するバッテリ式の産業車両であればよい。
【符号の説明】
【0047】
10 フォークリフト
11 車体
17 バッテリ
23 コントローラ
25 バッテリ自動補水装置
26 バッテリ精製水タンク
27 給水管
28 給水ポンプ
29 ポンプモータ
31 圧力センサ(圧力検出器)
32 給水用チェックバルブ
33 配線
34 バイパス配管
35 リターン用チェックバルブ(リターン機構)
40 バッテリ自動補水装置(第2の実施形態)
41 絞り(リターン機構)