(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】助手席用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/205 20110101AFI20230808BHJP
B60R 21/237 20060101ALI20230808BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20230808BHJP
【FI】
B60R21/205
B60R21/237
B60R21/2338
(21)【出願番号】P 2020061821
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕直
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-099085(JP,A)
【文献】特開2019-064282(JP,A)
【文献】特開2008-013162(JP,A)
【文献】特開2002-187515(JP,A)
【文献】特開2016-026942(JP,A)
【文献】特開2013-209007(JP,A)
【文献】特開2002-316605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/205
B60R 21/237
B60R 21/2338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
助手席に着座した乗員の前方に配置されたインストルメントパネルに設けられる収納部位に折り畳まれて収納され、内部に膨張用ガスを流入させて車両後方側に向かって突出するように膨張し、前記乗員を保護可能に構成されるエアバッグを備え、
該エアバッグが、可撓性を有したシート体から構成される袋状として、膨張完了時に前記乗員側に配置される乗員側壁部と、該乗員側壁部の周縁から延びて前記収納部位側に取り付けられる前端側にかけて収束する周壁部と、を有し、前記周壁部の前端側に、内部に膨張用ガスを流入させるための流入用開口を配設させる構成の助手席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、略平らに展開した状態の前記乗員側壁部を、前記流入用開口側に接近させるようにして、前記周壁部の部位に折目を付けた予備折りバッグの状態から、前後方向側の幅寸法を縮めるような第1前後縮小折り工程と、該第1前後縮小折り工程後において左右方向側の幅寸法を縮められるような左右縮小折り工程と、該左右縮小折り工程後において前後方向側の幅寸法を縮められるような第2前後縮小折り工程と、を、経て折り畳まれた折り完了体の状態で、前記収納部位内に収納される構成とされ、
前記第1前後縮小折り工程により折り畳まれる前後縮小折りバッグが、前記予備折りバッグにおいて、前記流入用開口よりも後側の領域を、後端を前記流入用開口に接近させつつ、前記周壁部側に向かって
巻くようなロール折りにより、折り畳まれる後側折畳部を、有する構成とされ、
前記左右縮小折り工程により折り畳まれる左右縮小折りバッグが、前記前後縮小折りバッグにおける左縁側と右縁側とを、それぞれ、前記乗員側壁部側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳まれるロール折り部位を、有する構成とされ
、
前記エアバッグが、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体と、該バッグ本体の内部に配置されて前記バッグ本体の膨張完了形状を規制するテザー部と、を備える構成とされ、
該テザー部が、前記バッグ本体の膨張完了時に前後方向に略沿って配設されるとともに、後端側を前記乗員側壁部に結合させて、前記乗員側壁部の後方への突出を抑制する前後テザーを、備える構成とされ、
前記前後縮小折りバッグにおいて、前記後側折畳部が、前記前後テザーの後端を前記乗員側壁部に結合させる結合部位の下端側を折り込むように、形成されていることを特徴とする助手席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記テザー部が、
前記前後テザーと、
前記周壁部における左右方向側で対向する左壁部と右壁部とを連結するように、前記バッグ本体の膨張完了時に左右方向に略沿うように配置されて、前記左壁部と前記右壁部との相互の離隔距離を規制する左右テザーと、
を備える構成とされ、
前記左右テザーが、前記バッグ本体の膨張完了時に上下方向に略沿って配置される幅広の帯状体から形成され、
前記前後テザーが、上下方向側の幅寸法を前記左右テザーと略同一に設定される帯状体から構成されるとともに、前記左右テザーの左右の略中央と前記乗員側壁部の左右の略中央とを連結するように、配設されていることを特徴とする
請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、助手席に着座した乗員の前方に配置されたインストルメントパネルに設けられる収納部位に折り畳まれて収納され、内部に膨張用ガスを流入させて車両後方側に向かって突出するように膨張し、乗員を保護可能に構成されるエアバッグを、備える助手席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、助手席用エアバッグ装置としては、エアバッグを、前後方向側と左右方向側との幅寸法を縮めて折り畳んで収納部位内に収納させる際に、エアバッグと別体の規制部材を利用することにより、エアバッグの展開膨張を制御するものがあった。詳細には、エアバッグにおける膨張完了時の後部側の部位を下端側から折り畳んで形成される折畳部を、規制部材に形成されるポケット状の仮保持部に収納させて仮保持させることにより、この折畳部の折りの展開の開始を若干遅らせるように制御する構成であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の助手席用エアバッグ装置では、別体の規制部材を利用してエアバッグの膨張初期の展開を制御していることから、このような規制部材を使用せずにエアバッグの膨張初期の展開を制御できる構成とする点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、別体の規制部材を用いなくとも、エアバッグの展開を制御できて、乗員を円滑に保護可能な助手席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、助手席に着座した乗員の前方に配置されたインストルメントパネルに設けられる収納部位に折り畳まれて収納され、内部に膨張用ガスを流入させて車両後方側に向かって突出するように膨張し、乗員を保護可能に構成されるエアバッグを備え、
エアバッグが、可撓性を有したシート体から構成される袋状として、膨張完了時に乗員側に配置される乗員側壁部と、乗員側壁部の周縁から延びて収納部位側に取り付けられる前端側にかけて収束する周壁部と、を有し、周壁部の前端側に、内部に膨張用ガスを流入させるための流入用開口を配設させる構成の助手席用エアバッグ装置であって、
エアバッグが、略平らに展開した状態の乗員側壁部を、流入用開口側に接近させるようにして、周壁部の部位に折目を付けた予備折りバッグの状態から、前後方向側の幅寸法を縮めるような第1前後縮小折り工程と、第1前後縮小折り工程後において左右方向側の幅寸法を縮められるような左右縮小折り工程と、左右縮小折り工程後において前後方向側の幅寸法を縮められるような第2前後縮小折り工程と、を、経て折り畳まれた折り完了体の状態で、収納部位内に収納される構成とされ、
第1前後縮小折り工程により折り畳まれる前後縮小折りバッグが、予備折りバッグにおいて、流入用開口よりも後側の領域を、後端を流入用開口に接近させつつ、周壁部側に向かって折り重ねるように、左右方向に沿った複数の折目を付けて折り畳まれる後側折畳部を、有する構成とされ、
左右縮小折り工程により折り畳まれる左右縮小折りバッグが、前後縮小折りバッグにおける左縁側と右縁側とを、それぞれ、乗員側壁部側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳まれるロール折り部位を、有する構成とされることを特徴とする。
【0007】
本発明の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグが、内部に膨張用ガスを流入させつつ、収納部位から突出して展開膨張する際に、まず、第2前後縮小折り工程による折りを解消し、次いで、左右縮小折り工程による折りを解消しようとすることとなるが、流入用開口より後側の領域では、予備折りバッグを周壁部側に折り重ねるようにして形成される後側折畳部が、左右両縁側を、乗員側壁部側に巻くようにロール折りされており、換言すれば、左右縮小折り工程により形成されるロール折り部位の後端側の領域(後側折畳部をロール折りして形成される部位)は、折り重ねの向きを異ならせつつ、かつ、折目を略直交させるようにロール折りされて配置される構成である。そのため、ロール折りの解消が、エアバッグの後端側(予備折りバッグの後端側)では、後側折畳部に邪魔されて遅れ、後側折畳部自体の折りが、折りを解消し難く、エアバッグは、この後側折畳部を配置されていない前側(上側)の領域から、左右縮小折り工程におけるロール折りを解消するように、展開し、その後、後側折畳部の領域を、折りを解消するように、展開させることとなり、エアバッグの膨張初期に、乗員側壁部を、上端側の領域を立ち上がらせるように、上下に広く展開させることができて、その状態を維持しつつ、後方移動させるように膨張させることができる。その結果、本発明の助手席用エアバッグ装置では、乗員を、上下に広く展開した乗員側壁部によって、迅速に保護することが可能となり、従来の助手席用エアバッグ装置のごとく別体の規制部材を用いなくとも、後側折畳部を左右の両縁側からロール折りするように折り畳むだけで、後側折畳部の折りの解消を、的確に遅らせることができる。
【0008】
したがって、本発明の助手席用エアバッグ装置では、別体の規制部材を用いなくとも、エアバッグの展開を制御できて、乗員を円滑に保護することができる。
【0009】
また、本発明の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグを、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体と、バッグ本体の内部に配置されてバッグ本体の膨張完了形状を規制するテザー部と、を備える構成とし、
テザー部を、バッグ本体の膨張完了時に前後方向に略沿って配設されるとともに、後端側を乗員側壁部に結合させて、乗員側壁部の後方への突出を抑制する前後テザーを、備える構成とし、
前後縮小折りバッグにおいて、後側折畳部を、前後テザーの後端を乗員側壁部に結合させる結合部位の下端側を含めるように、形成する構成とすることが、好ましい。
【0010】
助手席用エアバッグ装置を上記構成とすれば、乗員側壁部の後方への突出を抑制する前後テザーが、後端側における下端側の領域を、後側折畳部とともに、折り畳まれる構成であることから、展開膨張時において、乗員側壁部が、下端側の後側折畳部の折り重ね状態を維持された状態で、上端側の領域を上下方向に略沿わせるように、配置される際に、前後テザーが、後側折畳部に折り込まれていない上側の領域を、上縁側だけ前後で張った状態で配置されるような態様となり、詳細に述べれば、前後テザーは、上縁側だけ張り、上縁側から下方の領域は折り込まれて張らない(伸長しない)状態となって、この展開膨張時における乗員側壁部の後方側への過度の突出を抑制できる。
【0011】
さらに、上記構成の助手席用エアバッグ装置において、テザー部を、
前後テザーと、
周壁部における左右方向側で対向する左壁部と右壁部とを連結するように、バッグ本体の膨張完了時に左右方向に略沿うように配置されて、左壁部と右壁部との相互の離隔距離を規制する左右テザーと、
を備える構成とし、
左右テザーを、バッグ本体の膨張完了時に上下方向に略沿って配置される幅広の帯状体から形成し、
前後テザーを、上下方向側の幅寸法を左右テザーと略同一に設定される帯状体から構成するとともに、左右テザーの左右の略中央と乗員側壁部の左右の略中央とを連結するように、配設させる構成とすることが、好ましい。
【0012】
助手席用エアバッグ装置をこのような構成とすれば、膨張初期に、流入用開口から流入した膨張用ガスが、上下に幅広の帯状体からなる左右テザーに当たって、ダイレクトに乗員側壁部を後方に押し出すことを抑制されることとなり、また、膨張用ガスは、左右テザーにより、上下に分岐されてそれぞれ上方及び下方に向かって流れるような態様となる。そのため、エアバッグを、膨張初期に、後方側への部分的な大きな突出を抑制して、上下に広く展開させることができ、前後方向側で揺動するようなブレを、抑制して、迅速に膨張させることができる。また、上記構成の助手席用エアバッグ装置では、前後テザーが、上下方向側の幅寸法を左右テザーと略同一に設定される帯状体から構成されており、この前後テザーは、後端を乗員側壁部に結合させる結合部位の下端側を、後側折畳部の形成時にともに折り込まれる構成であることから、膨張完了時に左右テザーの下端とバッグ本体との間に形成される開口は、塞がれるように、後側折畳部によって折り畳まれる領域に、配置されることとなる。そのため、エアバッグの膨張初期に、下端側の開口を経て、後下方側に向かって膨張用ガスが流れることを的確に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である助手席用エアバッグ装置に使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態の概略斜視図である。
【
図2】
図1のエアバッグの前後方向に沿った概略縦断面図である。
【
図3】
図1のエアバッグの左右方向に沿った概略縦断面図である。
【
図4】
図1のエアバッグの前後方向に沿った概略横断面図である。
【
図5】
図1のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
【
図6】
図1のエアバッグを予備折りして形成される予備折りバッグの平面図と底面図である。
【
図7】
図1のエアバッグの折り畳み工程を示す概略図である。
【
図8】
図1のエアバッグの折り畳み工程を示す概略図であり、
図7の後の工程を示す。
【
図9】
図1のエアバッグを折り畳んで形成される左右縮小折りバッグにおいて、後側折畳部の部位付近を示す概略斜視図である。
【
図10】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張過程を示す概略横断面図である。
【
図11】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張過程を示す概略縦断面図である。
【
図12】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張過程を示す概略縦断面図であり、
図11の後の過程を示す。
【
図13】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略縦断面図である。
【
図14】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略横断面図である。
【
図15】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、助手席用エアバッグ装置M(以下、単に「エアバッグ装置」と省略する)は、
図13,14に示すように、に右側に助手席PSを配置させた左ハンドル車である車両Vにおける助手席PSに着座した乗員MPの前方において、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2の内部に配置されるトップマウントタイプとされている。エアバッグ装置Mを搭載させる車両Vのインパネ1には、
図14に示すように、車両Vの車幅方向の中央側であって、図示しない運転席と助手席PSとの間の部位の前方である中央側部位1aの後端近傍に、カーナビゲーションシステムのモニタ3が、突出部として、上面2から部分的に上方に突出するように、配設されている(
図15の二点鎖線参照)。なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vの前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0015】
エアバッグ装置Mは、
図13,14に示すように、エアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ15及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ15を覆うエアバッグカバー6と、を備えている。エアバッグカバー6は、エアバッグ15の展開膨張時に開き可能な扉部(図符号省略)を、備えている。
【0016】
エアバッグ15は、
図1~4に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体16と、バッグ本体16内への膨張用ガスの流れを規制する整流布37と、バッグ本体16の内部に配置されてバッグ本体16の膨張完了形状を規制するテザー部50と、を備えている。
【0017】
バッグ本体16は、
図13に示すように、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置可能な構成とされている。具体的には、バッグ本体16は、膨張完了時の形状を、
図1に示すように、頂部を前端側に配置させた略四角錐形状とされるもので、膨張完了時に乗員MP側に配置されて乗員MPを受け止める乗員側壁部25と、乗員側壁部25の周縁から延びてケース12側に取り付けられる前端側にかけて収束する周壁部17と、を備えている(
図2,4参照)。
【0018】
周壁部17は、エアバッグ15の膨張完了時に、主に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置される部位であり、上下両側で略左右方向に沿って配置される上壁部17a,下壁部17bと、左右両側で略前後方向に沿って配置される左壁部17c,右壁部17dと、を備えている。周壁部17における下壁部17bの前端近傍において、左右の略中央となる位置には、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口して、周縁をケース12に取り付けられる流入用開口20が、形成されている。流入用開口20の周縁には、リテーナ9のボルト(図符号省略)を挿通させて、流入用開口20の周縁をケース12の底壁部(図符号省略)に取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔21が、形成されている。周壁部17における左壁部17cと右壁部17dとには、バッグ本体16内に流入した余剰の膨張用ガスを排気するためのベントホール23が、略円形に開口して、形成されている。実施形態の場合、ベントホール23は、テザー部50における後述する左右テザー51よりも後方となる位置、すなわち、後述する後側膨張部31の領域内に、形成されている(
図2参照)。
【0019】
整流布37は、
図1,2~4に示すように、バッグ本体16内において、流入用開口20の上方を覆って、流入用開口20から流入した膨張用ガスGを前後方向側に向かうように整流可能に構成されるもので、前端側と後端側とに、それぞれ、前側流出用開口38,後側流出用開口39を配設させた略筒状とされている。実施形態の場合、整流布37は、
図5に示す整流布用素材42から、構成されている。整流布用素材42は、中央側に配置されて流入用開口20の周縁に結合される取付側部位43と、取付側部位43から左右両側に延びて整流布37を構成する本体用部位44,44と、を備えている。本体用部位44,44は、縁部44a相互を結合させることにより、筒状の整流布37を構成することとなる。
【0020】
バッグ本体16内に配置されるテザー部50は、実施形態の場合、
図1~4に示すように、左右テザー51と前後テザー53とを備えて、膨張完了時のエアバッグ15を上方から見た状態で略T字形状に配置されている。
【0021】
左右テザー51は、周壁部17における左右方向側で対向する左壁部17cと右壁部17dとを連結するように、バッグ本体16の膨張完了時に左右方向に略沿うように配置されて(
図3,4参照)、左壁部17cと右壁部17dとの相互の離隔距離を規制するもので、実施形態の場合、バッグ本体16の膨張完了時に上下方向に略沿って配置される幅広の帯状体から形成されている。詳細には、
図3に示すように、左右テザー51は、上下方向側の幅寸法を、左右方向側の幅寸法よりもわずかに大きくした略長方形状として構成されるもので、左端51a側と右端51b側とを、それぞれ、周壁部17における左壁部17c若しくは右壁部17dに、全長にわたって、縫合糸を用いて縫着されている。左右テザー51は、詳細には、膨張完了時のバッグ本体16を左右方向側から見た状態において、左壁部17c,右壁部17dの前後上下の略中央となる位置であって、最も上下に幅広として配置される部位に、乗員側壁部25に略沿うように配設されている(
図2,15参照)。この左右テザー51は、上下方向側の幅寸法(長さ寸法)L1を、膨張完了時に左右方向側から見た状態のバッグ本体16における最も上下に幅広の領域の幅寸法L2の3/5程度に設定され(
図2参照)、バッグ本体16の膨張完了時に、上端51cと上壁部17aとの間と、下端51dと下壁部17bとの間と、に、それぞれ、隙間を設けるように配設されている(
図2,3参照)。すなわち、実施形態のバッグ本体16は、左右テザー51によって、前後に(前側膨張部30と後側膨張部31とに)区画されるような態様となり(
図2,4参照)、この前側膨張部30と後側膨張部31とは、
図2,3に示すように、左右テザー51と上壁部17a若しくは下壁部17bとの間に形成される隙間から構成される上側連通部33,下側連通部34により、連通されることとなる。
【0022】
また、実施形態の場合、左右テザー51は、
図2に示すように、単体で膨張させた状態での膨張完了時のエアバッグ15における前後方向に略沿った縦断面において、上端51cを、整流布37の後端側に形成される後側流出用開口39の上端39aよりも上方に位置させ、下端51dを、後側流出用開口39の下端39bよりも下方に位置させるように、構成されている。すなわち、左右テザー51は、エアバッグ15の膨張完了時において、整流布37における後側流出用開口39の後方を、全面にわたって覆うように、構成されている。なお、車両搭載状態においては、整流布37における後側流出用開口39は、下側の領域を、ケース12内に配置させるような態様となるが(
図13参照)、この左右テザー51は、車両搭載状態でのエアバッグ15の膨張完了時においても、整流布37における後側流出用開口39の後方を、全面にわたって覆っている。
【0023】
この左右テザー51は、エアバッグ15の膨張完了時における左壁部17cと右壁部17dとの過度の離隔を抑制して、かつ、エアバッグ15の膨張完了時に、左壁部17cと右壁部17dとの離隔距離を規制するために、配設されている。左右テザー51の左右方向側の幅寸法は、エアバッグ15の膨張完了時に、各左壁部17c,右壁部17dにおいて、左右テザー51と連結される左側結合部位58L,右側結合部位58Rの周囲の部位に、左右の内方へ向かうような凹みを生じさせることが可能な寸法に、設定されている(
図3,4参照)。左右テザー51の左端51aと右端51bとをそれぞれ左壁部17c,右壁部17dに連結(縫着)させる左側結合部位58L及び右側結合部位58Rは、左端51a,右端51bの全長にわたって連続的に、形成されている。
【0024】
実施形態では、膨張完了時のエアバッグ15の左方に、カーナビゲーションシステムのモニタ3が、近接して配設される構成である(
図3,15の二点鎖線及び
図14参照)。実施形態のエアバッグ15では、左右テザー51は、車両搭載状態でのバッグ本体16の膨張完了時に、インパネ1から部分的に突出するように配設されているモニタ3と対応する位置に、配設されている。実施形態の場合、左右テザー51は、車両搭載状態でのバッグ本体16の膨張完了時に、左端51aの左壁部17cへの連結部位(左側結合部位58L)を、モニタ3に略沿わせるようにして、モニタ3に対応した位置に配置させる構成とされている(
図15参照)。すなわち、エアバッグ15の膨張完了時に、左壁部17cにおいて、左側結合部位58Lの周縁の部位が、左右の内方に凹むように配設されることから、エアバッグ15が、左壁部17cの左方に近接して配置されるモニタ3と干渉することを、抑制できる。
【0025】
前後テザー53は、バッグ本体16の膨張完了時に、前後方向に略沿って配設されるもので、実施形態の場合、左右テザー51の左右の略中央と乗員側壁部25の左右の略中央とを連結するように、配設されている。前後テザー53は、前端53a側を左右テザー51に連結され、後端53b側を乗員側壁部24に連結されている(
図2,4参照)。この前後テザー53は、乗員側壁部25の後方への突出を抑制するもので、実施形態の場合、バッグ本体16の膨張完了時に上下方向に略沿って配置される幅広の帯状体から構成されている。前後テザー53は、上下方向側の幅寸法を左右テザー51と略同一に設定される帯状体から、構成されている。詳細には、実施形態の場合、前後テザー53は、上下方向側の幅寸法(長さ寸法)を、左右テザー51の上下方向側の幅寸法(長さ寸法)より僅かに小さくして、5/6程度に、設定されている。また、前後テザー53の前後方向側の幅寸法は、バッグ本体16の膨張完了時に、後端53b側を乗員側壁部25に結合させている後側結合部位60周縁の領域を、僅かに前方に向かって凹ませるような寸法に、設定されている。前後テザー53の後端53bを乗員側壁部25に結合させる後側結合部位60は、膨張完了時のバッグ本体16における乗員側壁部25の上下左右の略中央となる位置において、上下方向に略沿うように形成されるもので、後端53bの全長にわたって、連続的に形成されている。具体的には、後側結合部位60は、長さ寸法L3を、主に乗員側壁部25を構成する乗員側パネル部71の上下方向側の幅寸法L4の3/7程度とし、かつ、後述する予備折りバッグ75における乗員側壁部25の上下方向側の幅寸法L5の5/8程度に、設定されている(
図5,6のA参照)。
【0026】
実施形態のテザー部50は、
図4,5に示すように、左右テザー51を構成する2枚の左右テザー用基材55L,55Rと前後テザー53を構成する1枚の前後テザー用基材56と、から構成されている。各左右テザー用基材55L,55Rは、それぞれ、上下方向側を幅広とした略長方形状として、外形形状を略同一として構成され、前後テザー用基材56は、上下方向側を幅広とした略長方形状とされている。実施形態の場合、前後テザー用基材56は、長手方向側(上下方向側)の幅寸法と短手方向側(前後方向側)の幅寸法と、を、ともに、左右テザー用基材55L,55Rよりも若干小さくするように、構成されている。そして、実施形態のテザー部50は、左右テザー用基材55L,55Rの対応する縁部55a,55a相互と、前後テザー用基材56の縁部56aと、を、長手方向(上下方向)側の中心を略一致させるようにして重ねて、縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、上方側から見た外形形状を略T字形状として、構成されることとなる。
【0027】
バッグ本体16は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、
図5に示すように、主に周壁部17側を構成する周壁パネル部65と、主に乗員側壁部25側を構成する乗員側パネル部71と、を備えている。周壁パネル部65は、周壁部17を左右方向側で略2分割するようにして、左側の領域を構成する左側パネル66と、右側の領域を構成する右側パネル68と、を備えている。左側パネル66は、周壁部17における上壁部17aの左半分の領域から、左壁部17cを経て、下壁部17bの左半分の領域にかけてを構成するもので、右側パネル68は、周壁部17における上壁部17aの右半分の領域から、右壁部17dを経て、下壁部17bの右半分の領域にかけてを構成している。左側パネル66,右側パネル68は、それぞれ、流入用開口20の周縁の領域を構成する突出部67,69を、備えている。
【0028】
実施形態では、バッグ本体16を構成する周壁パネル部65(左側パネル66,右側パネル68),乗員側パネル部71、整流布37を構成する整流布用素材42、テザー部50を構成する左右テザー用基材55L,55R,前後テザー用基材56は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0029】
次に、実施形態のエアバッグ15の製造について説明をする。左側パネル66,右側パネル68の内周面側には、予め、左右テザー用基材55L,55Rの縁部55bを、左側結合部位58L,右側結合部位58Rを形成するように縫着させ、乗員側パネル部71には、予め、前後テザー用基材56の縁部56bを、後側結合部位60を形成するように縫着させておく。そして、まず、左側パネル66と右側パネル68とを重ねて、下縁66c,68c相互を縫着させる。次いで、左側パネル66と右側パネル68とを上縁66b,68bを相互に離隔させるように開いて、突出部67,69を相互に重ね、突出部67,69の内周面側に、整流布用素材42の取付側部位43を重ねる。そして、流入用開口20の周縁となる部位を、縫合糸を用いて縫着させ、突出部67,69相互と、整流布用素材42の取付側部位43と、を、縫着させる。次いで、流入用開口20と取付孔21とを開口させる。その後、左側パネル66と右側パネル68との上縁66b,68b相互を、縫合糸を用いて縫着させる。次いで、左側パネル66の後縁66dと乗員側パネル部71の左縁71aとを縫着させ、同様に、右側パネル68の後縁68dと乗員側パネル部71の右縁71bとを縫着させる。左右テザー用基材55L,55Rの残りの縁部55aと、前後テザー用基材56の残りの縁部56aと、を、縫合糸を用いて縫着させて、テザー部50を形成する。整流布用素材42における本体用部位44,44の縁部44a相互を縫着させて、整流布37を形成する。その後、未縫合とされている左側パネル66,右側パネル68の前上縁66a,68a側の領域を利用して、バッグ本体16を反転させる。次いで、左側パネル66における前上縁66aと、右側パネル68における前上縁68aと、を、それぞれ、二つ折りするようにして、縫合糸を用いて縫着させれば、バッグ本体16を製造できると同時に、エアバッグ15を製造することができる。
【0030】
次に、エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。まず、エアバッグ15を、図示しないボルトを取付孔21から突出させるようにして、内部にリテーナ9を収納させた状態から、ケース12内に収納可能に、折り畳む。実施形態では、エアバッグ15は、予備折り後の予備折りバッグ75の状態から、前後方向側の幅寸法を縮めるような第1前後縮小折り工程と、第1前後縮小折り工程後において左右方向側の幅寸法を縮められるような左右縮小折り工程と、左右縮小折り工程後において前後方向側の幅寸法を縮められるような第2前後縮小折り工程と、を、経て折り畳まれた折り完了体95の状態で、ケース12内に収納されることとなる。具体的には、まず、乗員側壁部25を略平らに展開しつつ、乗員側壁部25を、流入用開口20側に接近させるようにして、周壁部17の部位に谷折りの折目を付けて折り畳み、
図6のA,Bに示すような予備折りバッグ75を、形成する。
【0031】
次いで、この予備折りバッグ75を、第1前後縮小折り工程により、折り畳む。具体的には、
図7のAに示すように、予備折りバッグ75において、流入用開口20よりも後側の領域を、後端(後縁,下縁)を流入用開口20に接近させつつ、周壁部17側に向かって折り重ねるように、左右方向に沿った複数の折目を付けて折り畳んで、後側折畳部78を形成し、
図7のBに示すような前後縮小折りバッグ80を、形成する。実施形態では、前後縮小折りバッグ80に形成される後側折畳部78は、予備折りバッグ75における後側(下側)2/5程度の領域(後側部位76)を、後縁76a(下縁)を流入用開口20側に接近させつつ、周壁部17側に向かって巻くようなロール折りにより、折り畳まれて形成される。さらに詳細には、後側折畳部78は、前後テザー53の後端53bを乗員側壁部25に結合させている後側結合部位60の下端60a側を折り込むようにして、予備折りバッグ75の後縁側の部位を、三重に折り重ねるようなロール折りにより、形成されている。次いで、前後縮小折りバッグ80を、左右縮小折り工程により、折り畳む。具体的には、
図7のB及び
図8のAに示すように、前後縮小折りバッグ80における流入用開口20の左側となる左側部位81を、左縁81aを流入用開口20に接近させつつ、乗員側壁部25側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳み、同様に、流入用開口20の右側となる右側部位82も、右縁82aを流入用開口20に接近させつつ、乗員側壁部25側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳み、ロール折り部位83L,83Rを形成して、
図8のAに示すように、ロール折り部位83L,83Rを備える左右縮小折りバッグ86を形成する。その後、左右縮小折りバッグ86を、第2前後縮小折り工程により、折り畳む。具体的には、
図8のA,Bに示すように、左右縮小折りバッグ86における流入用開口20より後方側となる後側部位87を、流入用開口20の後縁近傍となる部位で折り返し、この折り返した部位を、後縁87a側を周壁部17側に向かって巻くようにロール折りしてロール折り部位90を形成する。その後、
図8のBに示すように、左右縮小折りバッグ86において、流入用開口20より前方側となる前側部位88を、端部側をロール折り部位90の上側に載せるように折り返せば、
図8のCに示すように、ケース12内に収納可能な折り完了体95を形成することができる。
【0032】
このように折り畳んだエアバッグ15(折り完了体95)は、周囲を、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるむ。その後、折り完了体95を、ケース12内に収納させ、インフレーター8を、リテーナ9を利用してエアバッグ15の流入用開口20の周縁とともに、ケース12に連結させる。その後、折り畳まれたエアバッグ15とインフレーター8とを保持させたケース12を、車両Vに搭載されたインパネ1に形成されるエアバッグカバー6に連結させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載させることができる。
【0033】
エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、インフレーター8から膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部を押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方へ突出するとともに、車両後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、
図13~15に示すように、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。
【0034】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させつつ、収納部位としてのケース12から突出して展開膨張する際に、まず、
図11のAに示すように、第2前後縮小折り工程による折りを解消し、次いで、左右縮小折り工程による折りを解消しようとすることとなるが、流入用開口20より後側の領域では、
図8のA及び
図9に示すように、予備折りバッグ75を周壁部17側に折り重ねるようにして形成される後側折畳部78が、左右両縁側を、乗員側壁部25側に巻くようにロール折りされており、換言すれば、左右縮小折り工程により形成されるロール折り部位83L,83Rの後端側の領域(後側折畳部78をロール折りして形成される部位、規制折畳部85L,85R、
図9参照)は、折り重ねの向きを異ならせつつ、かつ、折目を略直交させるようにロール折りされて配置される構成である。そのため、ロール折りの解消が、エアバッグ15の後端側(予備折りバッグ75の後端側)では、後側折畳部78に邪魔されて遅れ、後側折畳部78自体の折りが、折りを解消し難く、エアバッグ15は、この後側折畳部78を配置されていない前側(上側)の領域(一般ロール折り部位84L,84R、
図8のA及び
図9参照)から、左右縮小折り工程におけるロール折りを解消するように、展開し、その後、後側折畳部78の領域(規制折畳部85L,85R)を、折りを解消するように、展開させることとなり(
図11のB及び
図12のA,B参照)、エアバッグ15の膨張初期に、
図11のBに示すように、乗員側壁部25を、上端25a側の領域を立ち上がらせるように、上下に広く展開させることができて、その状態を維持しつつ、後方移動させるように膨張させることができる。その結果、実施形態のエアバッグ装置Mでは、乗員MPを、上下に広く展開した乗員側壁部25によって、迅速に保護することが可能となり、従来の助手席用エアバッグ装置のごとく別体の規制部材を用いなくとも、後側折畳部78を左右の両縁側からロール折りするように折り畳むだけ(規制折畳部85L,85Rを形成するだけ)で、後側折畳部78の折りの解消を、的確に遅らせることができる。
【0035】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、別体の規制部材を用いなくとも、エアバッグ15の展開を制御できて、乗員MPを円滑に保護することができる。
【0036】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、前後縮小折りバッグ80において、後側折畳部78が、前後テザー53の後端53bを乗員側壁部25に結合させる後側結合部位60の下端60a側を含めるように、形成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ15では、乗員側壁部25の後方への突出を抑制する前後テザー53が、後端53b側における下端側の領域を、後側折畳部78とともに、折り畳まれる構成であることから、展開膨張時において、乗員側壁部25が、下端側の後側折畳部78の折り重ね状態を維持された状態で、上端25a側の領域を上下方向に略沿わせるように、配置される際に、前後テザー53が、後側折畳部78に折り込まれていない上側の領域を、上縁側だけ前後で張った状態で配置されるような態様となり、詳細に述べれば、前後テザー53は、上縁側だけ張り、上縁側から下方の領域は折り込まれて張らない(伸長しない)状態となって、この展開膨張時における乗員側壁部25の後方側への過度の突出を抑制できる。なお、このような点を考慮しなければ、前後テザーの後端を乗員側壁部に結合させる後側結合部位の下端側を、後側折畳部とともに折り込まないような構成としてもよく、さらには、エアバッグの内部に、前後テザーを配設させない構成としてもよい。
【0037】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、バッグ本体16内に配置されるテザー部50が、左右テザー51と前後テザー53とを備える構成であり、左右テザー51が、バッグ本体16の膨張完了時に上下方向に略沿って配置される幅広の帯状体から形成され、前後テザー53が、上下方向側の幅寸法を左右テザー51と略同一に設定される帯状体から構成されるとともに、左右テザー51の左右の略中央と乗員側壁部25の左右の略中央とを連結するように、配設される構成である。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ15の膨張初期に、流入用開口20から流入した膨張用ガスGが、上下に幅広の帯状体からなる左右テザー51に当たって、ダイレクトに乗員側壁部25を後方に押し出すことを抑制されることとなり、また、膨張用ガスは、左右テザー51により、上下に分岐されてそれぞれ上方及び下方に向かって流れるような態様となる(
図13参照)。そのため、エアバッグ15を、膨張初期に、後方側への部分的な大きな突出を抑制して、上下に広く展開させることができ、前後方向側で揺動するようなブレを、抑制して、迅速に膨張させることができる。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、バッグ本体16内に配置される前後テザー53が、上下方向側の幅寸法を左右テザー51と略同一に設定される帯状体から構成されており、この前後テザー53は、後端53bを乗員側壁部25に結合させる後側結合部位60の下端60a側を、後側折畳部78の形成時にともに折り込まれる構成であることから、膨張完了時に左右テザー51の下端51dとバッグ本体16との間に形成される開口としての下側連通部34は、
図7のAに示すように、塞がれるようにして、後側折畳部78によって折り畳まれる領域に、配置されることとなる。そのため、エアバッグ15の膨張初期に、下側連通部34を経て、後下方側に向かって膨張用ガスが流れることを的確に抑制できる。
【0038】
特に、実施形態のエアバッグ装置Mでは、バッグ本体16内に配置される左右テザー51が、バッグ本体16の膨張完了時に上下方向に略沿って配置される幅広の帯状体から形成されており、換言すれば、バッグ本体16内が、左右テザー51によって、前側膨張部30と後側膨張部31とを形成するように前後に区画され、前側膨張部30と後側膨張部31とは、左右テザー51の上端51c側若しくは下端51d側と、周壁部17と、の間の隙間からそれぞれ構成される上側連通部33,下側連通部34によって、連通される構成である。そのため、流入用開口20から膨張用ガスを流入させて膨張する膨張初期に、まず、バッグ本体16において左右テザー51より前側の前側膨張部30が、主に膨張し(
図10のA参照)、その後、上側連通部33,下側連通部34を経て膨張用ガスを流入させることにより、左右テザー51より後側の後側膨張部31が、膨張することとなるが(
図10のB参照)、後側膨張部31内への膨張用ガスの流入時には、前側膨張部30と後側膨張部31とを区画している左右テザー51が、左右方向側でテンションを生じさせるように、張った状態で配置されるため、後側膨張部31の周壁を構成している乗員側壁部25が、後方へ大きく突出しようとすることとなっても、左右テザー51から延びるように配設される前後テザー53にも、前後方向に沿ってテンションが発生して、前後テザー53が、後方移動を規制されることとなり、後側膨張部31の揺動を抑制できて、乗員側壁部25の後方への突出を的確に抑制することができる。さらに、上述したごとく、下側連通部34を構成している部位が、後側折畳部78によって折り畳まれていることから、後側折畳部78の折り解消前には、後側膨張部31には、上側の上側連通部33のみから、膨張用ガスGが流入することとなる(
図12のA参照)。そのため、このエアバッグ15の折り畳み形状と、テザー部50の形状とによって、エアバッグ15の膨張初期に、乗員側壁部25を、上端25a側の領域を立ち上がらせるように、上下に広く展開させることができ、その状態を維持しつつ、後方移動させるように膨張させることができる。そのため、乗員MPを、上下に広く展開した乗員側壁部25によって、迅速に保護することができる。
【0039】
なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後側折畳部78は、予備折りバッグ75の後縁76aを周壁部17側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳まれているが、後側折畳部の折り畳みは、実施形態に限定されるものではなく、例えば、後側折畳部を、周壁部側に向かって折り重ねるような蛇腹折りにより、折り畳んでもよい。しかしながら、後側折畳部を配置されていない上側の領域からの、左右縮小折り工程におけるロール折りの解消時における折畳状態をある程度維持し、かつ、その後の展開時に、折りを解消して迅速に展開させる観点からは、後側折畳部は、左右縮小折り時におけるロール折りと向きの異なる周壁部側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳むことが望ましい。
【符号の説明】
【0040】
1…インストルメントパネル(インパネ)、12…ケース(収納部位)、15…エアバッグ、16…バッグ本体、17…周壁部、17c…左壁部、17d…右壁部、20…流入用開口、25…乗員側壁部、25a…上端、50…テザー部、51…左右テザー、53…前後テザー、53a…前端、53b…後端、60…後側結合部位、60a…下端、75…予備折りバッグ、78…後側折畳部、80…前後縮小折りバッグ、83L,83R…ロール折り部位、86…左右縮小折りバッグ、95…折り完了体、MP…乗員、V…車両、M…助手席用エアバッグ装置。