(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】車両の骨格構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20230808BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B62D25/04 C
B62D25/20 F
(21)【出願番号】P 2020065602
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚久
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-190992(JP,A)
【文献】特開2008-189137(JP,A)
【文献】特開2012-206693(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10332634(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008039404(DE,A1)
【文献】特開2016-094064(JP,A)
【文献】特開2009-161056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の車幅方向端縁に立設されたピラー部材と、前記車室の床部で車幅方向に延び、前記ピラー部材と車両前後方向において同位置に配置される骨格部材と、前記ピラー部材の縦壁部と前記骨格部材の上壁部とを連結して、前記ピラー部材を支えるピラー支持部材とを備える車両の骨格構造であって、
前記ピラー支持部材は、前記ピラー部材の縦壁部に連結されて車幅方向に延びる荷重受け部
と、前記荷重受け部を支えた状態で前記骨格部材の上壁部に連結される嵩上げ部とを備えており、
前記嵩上げ部は、車幅方向において前記ピラー部材側が高くなるように形成された天井板部を備えており、前記嵩上げ部の天井板部におけるピラー部材側の端部が前記荷重受け部の車幅方向における端部に連結されており、
前記荷重受け部には、その荷重受け部が車幅方向に潰れ易くなるように構成された第1の脆弱部が設けられて
おり、
前記嵩上げ部には、その嵩上げ部が前記骨格部材より変形し易くするための第2の脆弱部が設けられている車両の骨格構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の骨格構造であって、
前記嵩上げ部におけるピラー部材側の端部が縦板部によって前記車室の床部のフロアパネルに連結されている車両の骨格構造。
【請求項3】
請求項1に記載された車両の骨格構造であって、
前記ピラー支持部材の荷重受け部が嵩上げ部よりも変形し易く構成されている車両の骨格構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項3のいずれかに記載された車両の骨格構造であって、
前記ピラー支持部材の嵩上げ部は、前記車室の床部よりも高い位置で前記荷重受け部を支える構成であり、前記車室の床部と前記荷重受け部間には空間が形成されている車両の骨格構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラー部材と、車室の床部で車幅方向に延び、前記ピラー部材と車両前後方向において同位置に配置される骨格部材と、前記ピラー部材と骨格部材間で前記ピラー部材を支えるピラー支持部材とを備える車両の骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の骨格構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された車両の骨格構造では、
図11に示すように、車室の車幅方向端縁には、車両前後方向に延びるロッカー101が設けられている。そして、ロッカー101の車両前後方向における中央部にセンターピラー102が立設されている。また、車両の床部には、センターピラー102の位置で車幅方向に延びるクロスメンバー103が設けられている。そして、センターピラー102の縦壁部とクロスメンバー103の上壁部とがガセット110により連結されている。これにより、センターピラー102の下部が車室内側から支えられる。
【0003】
ガセット110は、断面略逆U字形の骨格部材であり、上端側がセンターピラー102に連結されており、下端側がクロスメンバー103に連結されている。そして、ガセット110の上端部と下端部とを除く中間部分の内側にガセットリインフォース113が設けられている。即ち、ガセットリインフォース113が設けられていないガセット110の上端部と下端部とがガセット110の脆弱部110wとなる。このため、側面衝突荷重がセンターピラー102に加わると、センターピラー102が倒れ込む際にガセット110の脆弱部110wが曲がることで、前記側面衝突荷重が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両の骨格構造では、センターピラー102が倒れ込む際、ガセット110の脆弱部110wが曲がることで、前記側面衝突荷重が吸収される。ここで、ガセット110の脆弱部110wが曲がるのに要する時間は比較的短い。また、ガセット110の脆弱部110wの曲がり開始時には比較的大きな荷重が必要となるのに対し、いったん脆弱部110wが曲がり始めると、それほど大きな荷重は必要とされない。即ち、上記した車両の骨格構造では、前記側面衝突荷重を効率的に長い時間吸収するのは難しい。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の側面衝突荷重を比較的長い時間効率的に吸収できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車室の車幅方向端縁に立設されたピラー部材と、前記車室の床部で車幅方向に延び、前記ピラー部材と車両前後方向において同位置に配置される骨格部材と、前記ピラー部材の縦壁部と前記骨格部材の上壁部とを連結して、前記ピラー部材を支えるピラー支持部材とを備える車両の骨格構造であって、前記ピラー支持部材は、前記ピラー部材の縦壁部に連結されて車幅方向に延びる荷重受け部と、前記荷重受け部を支えた状態で前記骨格部材の上壁部に連結される嵩上げ部とを備えており、前記嵩上げ部は、車幅方向において前記ピラー部材側が高くなるように形成された天井板部を備えており、前記嵩上げ部の天井板部におけるピラー部材側の端部が前記荷重受け部の車幅方向における端部に連結されており、前記荷重受け部には、その荷重受け部が車幅方向に潰れ易くなるように構成された第1の脆弱部が設けられており、前記嵩上げ部には、その嵩上げ部が前記骨格部材より変形し易くするための第2の脆弱部が設けられている。
【0008】
本発明によると、ピラー支持部材の荷重受け部は、車幅方向に延びるように形成されている。また、荷重受け部には、その荷重受け部が車幅方向に潰れ易くなるように構成された第1の脆弱部が設けられている。このため、車両のピラー部材に対して側面衝突荷重が加わると、ピラー支持部材の荷重受け部がピラー部材の縦壁部に押圧されて車幅方向に潰れ、側面衝突荷重が吸収される。即ち、ピラー支持部材の荷重受け部が車幅方向に潰れることで側面衝突荷重を吸収する構成のため、荷重受け部の潰れストロークにより潰れ時間を比較的長くでき、さらに潰れ荷重を一定に近づけることができる。これにより、側面衝突荷重を比較的長い時間効率的に吸収できるようになる。
また、側面衝突荷重がピラー支持部材を介して骨格部材に加わると、骨格部材が変形する前にピラー支持部材の嵩上げ部が第2の脆弱部の働きにより変形するようになる。即ち、ピラー支持部材の嵩上げ部が変形することで、骨格部材の変形を抑制できるようになる。
【0009】
第2の発明によると、嵩上げ部におけるピラー部材側の端部が縦板部によって車室の床部のフロアパネルに連結されている。
【0010】
第3の発明によると、ピラー支持部材の荷重受け部が嵩上げ部よりも変形し易く構成されている。これにより、側面衝突荷重が加わると、荷重受け部が潰れた後に嵩上げ部が変形するようになる。即ち、荷重受け部と嵩上げ部とが同時に変形することがなく、ピラー支持部材の変形に要する時間を比較的長くできる。
【0011】
第4の発明によると、ピラー支持部材の嵩上げ部は、車室の床部よりも高い位置で荷重受け部を支える構成であり、前記車室の床部と前記荷重受け部間には空間が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、車両の側面衝突荷重を比較的長い時間効率的に吸収できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る骨格構造を備える車両を車室内から見た模式側面図である。
【
図2】前記骨格構造を表す模式縦断面図(
図1のII-II矢視断面図)である。
【
図3】前記骨格構造の車室内から見た斜視図である。
【
図4】前記骨格構造を表す縦断面図(
図3のIV-IV矢視断面図)である。
【
図6】前記骨格構造を構成するピラー支持部材の荷重受け部の斜視図である。
【
図7】前記ピラー支持部材の嵩上げ部の斜視図である。
【
図8】車両に側面衝突荷重が加わる際の骨格構造の変形の様子を表す側面図である。
【
図9】車両に側面衝突荷重が加わる際の骨格構造の変形の様子を表す側面図である。
【
図10】車両に側面衝突荷重が加わる際の骨格構造の変形の様子を表す側面図である。
【
図11】従来の車両の骨格構造を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、
図1~
図10に基づいて本発明の実施形態1に係る車両の骨格構造について説明する。本実施形態に係る車両の骨格構造は、車室中央部における骨格構造である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、本実施形態に係る骨格構造を備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<車両ボディ10の概要について>
車両ボディ10の側面には、
図1に示すように、前部席に対応するフロントドア開口部11と、中央部席、及び後部席に対応するリヤドア開口部12とが形成されている。そして、両ドア開口部11,12の下縁部には、車両前後方向に延びるロッカー30が設けられている。ロッカー30の車両前後方向における中央位置には、フロントドア開口部11とリヤドア開口部12とを区分けするセンターピラー20が立設されている。そして、フロントドア開口部11がドアヒンジを中心に回動可能なフロントドア(図示省略)により開閉可能に構成されている。また、リヤドア開口部12がスライドドア14(
図2等参照)により開閉可能に構成されている。ここで、ロッカー30、及びセンターピラー20は、車両ボディ10の車幅方向両側に設けられており、車両左側のロッカー30、及びセンターピラー20は図示省略されている。
【0016】
車両ボディ10における車室の床下部には、
図2~
図4に示すように、ロッカー30の車幅方向内側で車両前後方向に延びる左右一対のフロアサイドメンバー34が設けられている。そして、フロアサイドメンバー34とロッカー30とがセンターピラー20の位置で車幅方向に延びるアウトリガー33によって連結されている。また、左右のフロアサイドメンバー34間がアウトリガー33の延長線上の位置で車幅方向に延びるクロスメンバー35によって連結されている。アウトリガー33は、
図4等に示すように、クロスメンバー35と等しい形状のアウトリガー本体部33mと、フロアサイドメンバー34とロッカー30間でアウトリガー本体部33mの下側を囲うアウトリガー囲い部33cとを備えている。
【0017】
<フロアサイドメンバー34、クロスメンバー35等について>
フロアサイドメンバー34は、
図4に示すように、断面略U字形の溝状に成形されている。そして、フロアサイドメンバー34の上端位置(開口位置)には、幅方向外側に一定寸法だけ突出する一対のフランジ部34fが形成されている。また、フロアサイドメンバー34は、開口を塞ぐ蓋部34zを備えている。クロスメンバー35、及びアウトリガー本体部33mは、
図5に示すように、断面略U字形の溝状に成形されている。そして、クロスメンバー35、及びアウトリガー本体部33mの上端位置(開口位置)には、幅方向外側に一定寸法だけ突出する一対のフランジ部35f,33fが形成されている。
【0018】
<センターピラー20について>
センターピラー20は、
図4に示すように、断面略U字形の溝状に成形された車室内側のインナパネル22と、同じく断面略U字形の溝状に成形された車室外側のアウタパネル24とが車幅方向(左右方向)から合わせられることで筒形支柱状に形成されている。また、インナパネル22とアウタパネル24とにより形成された空間内には、前記空間を縦に仕切るようにリインフォース(図示省略)が設けられている。また、センターピラー20の下部には、インナパネル22の下端部とロッカー30のロッカーインナー301の側面を連結するピラー内側下部パネル23が設けられている。さらに、センターピラー20の下部には、インナパネル22の下端部とロッカー30のフランジ部301f,302fを連結する下部リインフォース25が設けられている。
【0019】
<ロッカー30について>
ロッカー30は、
図4に示すように、車両前後方向に延びる断面略U字形のロッカーインナー301とロッカーアウター302とが左右方向から合わせられることで筒状に形成されている。また、ロッカー30の外側面、即ち、ロッカーアウター302には、細長開口302kが前後方向に延びるように形成されている。そして、ロッカー30の内側には、細長開口302kの位置に開口部が合わせられる細長く浅い箱状のロッカー内箱305が設けられている。ロッカー内箱305は、スライドドア開閉装置のドア開閉ユニット、ロアレール等(図示省略)が収納される箱体で、センターピラー20の位置で幅広に形成されている。そして、ロッカー内箱305の幅広部分がロッカーインナー301の側面開口部301kから車幅方向内側(左側)に突出している。
【0020】
<センターピラー20とロッカー30とアウトリガー33等との連結構造について>
ロッカー30のロッカーインナー301とロッカーアウター302との上側のフランジ部301f,302fには、
図4に示すように、上記したセンターピラー20の下部リインフォース25の下端縁が固定されている。また、ロッカーインナー301の側面開口部301kの上側部分には、センターピラー20のピラー内側下部パネル23の下端部と、アウトリガー本体部33mの右端フランジ部33xとが固定されている。さらに、ロッカーアウター302の細長開口302kの上側部分には、センターピラー20のアウタパネル24の下端縁が固定されている。
【0021】
また、アウトリガー33のアウトリガー本体部33mの左端フランジ部33bは、
図4に示すように、右側のフロアサイドメンバー34の側面に固定されている。そして、アウトリガー33のアウトリガー囲い部33cの下端フランジ部33dがロッカーインナー301の下端面に固定されており、アウトリガー囲い部33cの上端フランジ部33uがフロアサイドメンバー34の下面に固定されている。これにより、ロッカーインナー301の側面開口部301kから車幅方向内側(左側)に突出しているロッカー内箱305がアウトリガー囲い部33cによって下方から囲われるようになる。
【0022】
<車室の床面について>
車室の床面はフロアパネル31により構成されている。フロアパネル31は、
図3~
図5に示すように、フロアサイドメンバー34、クロスメンバー35、及びアウトリガー本体部33mの上に重ねられた状態で、フロアサイドメンバー34、クロスメンバー35、及びアウトリガー本体部33mのフランジ部34f,35f,33fに固定される。さらに、フロアサイドメンバー34の蓋部34zは、フロアパネル31の上からフロアサイドメンバー34のフランジ部34fに固定される。また、フロアパネル31の端縁部31tは、
図3に示すように、センターピラー20のピラー内側下部パネル23に固定されている。
【0023】
<本実施形態に係る骨格構造40について>
車室の床面を構成するフロアパネル31上には、
図4、
図5に示すように、クロスメンバー35とアウトリガー本体部33mと重なる位置に床上クロスメンバー41が設けられている。床上クロスメンバー41は、骨格構造40を構成する部材であり、右側のセンターピラー20の近傍位置から左側のセンターピラー20の近傍位置まで車幅方向に延びるように設けられている。床上クロスメンバー41は、
図5に示すように、断面略逆U字形に成形されている。そして、床上クロスメンバー41の下端位置(開口位置)には、幅方向外側に一定寸法だけ突出する一対のフランジ部41fが形成されている。そして、床上クロスメンバー41のフランジ部41fがクロスメンバー35、及びアウトリガー本体部33mのフランジ部35f,33fとフロアパネル31を介して固定されている。
【0024】
骨格構造40は、
図4等に示すように、センターピラー20のインナパネル22(縦壁部)と床上クロスメンバー41の上壁部とを連結して、センターピラー20の下部を車室内側から支えるピラー支持部材400を備えている。即ち、ピラー支持部材400は、センターピラー20に対して側面衝突荷重Fが加わったときに、その側面衝突荷重Fの一部を吸収しつつ、床上クロスメンバー41に伝達できるように構成されている。ピラー支持部材400は、センターピラー20のインナパネル22に固定される荷重受け部430と、荷重受け部430を上方で支えた状態で床上クロスメンバー41の上壁部に固定される嵩上げ部450とから構成されている。なお、嵩上げ部450の上部には、荷重受け部430と共に車両用シート(図示省略)を支持するシートブラケット50が取付けられている。
【0025】
<嵩上げ部450について>
嵩上げ部450は、荷重受け部430を介して加わった側面衝突荷重Fの一部を吸収しつつ、床上クロスメンバー41に伝達する部分である。嵩上げ部450は、
図3、
図4に示すように、略楔形に成形されたプレス品であり、楔の基端部側がセンターピラー20側となるように配置された状態で床上クロスメンバー41の上部に被せられている。嵩上げ部450は、
図7に示すように、略楔形の前壁板部451、及び後壁板部452と、前後の壁板部451,452の上端縁をつなぐ天井板部453と、前後の壁板部451,452と天井板部453との右端開口(楔の基端部側)を塞ぐ右縦板部455とから構成されている。そして、前壁板部451と後壁板部452との下端縁には、床上クロスメンバー41の上部側面に溶接等により固定される固定フランジ部451f,452fが形成されている。また、前壁板部451と後壁板部452との上部中央には、荷重受け部430とシートブラケット50がボルト止めされるボルト孔451h,452hが形成されている。
【0026】
嵩上げ部450の天井板部453は、
図7に示すように、上端平面部453xと傾斜部453kと下端平面部453yとから構成されている。そして、天井板部453の上端平面部453xの中央に荷重受け部430がボルト止めされるボルト孔453hが形成されている。また、天井板部453の傾斜部453kには、嵩上げ部450の脆弱部となる凹部453wが嵩上げ部450の幅方向(車両前後方向)に延びるように形成されている。さらに、天井板部453の下端平面部453yは、床上クロスメンバー41に被せられた状態で、床上クロスメンバー41の上面に溶接等により固定される。即ち、嵩上げ部450は、脆弱部となる凹部453wの働きで、床上クロスメンバー41よりも車幅方向に変形し易く構成されている。
【0027】
嵩上げ部450の右縦板部455は、
図4、
図7に示すように、前後の壁板部451,452よりも所定寸法だけ高さ寸法が大きくなるように設定されている。これにより、嵩上げ部450が床上クロスメンバー41に被せられた状態で右縦板部455の下端がフロアパネル31に対して当接するようになる。ここで、右縦板部455の下端には、フロアパネル31に対して溶接等により固定される右端フランジ455fが右方向に突出するように形成されている。
【0028】
<荷重受け部430について>
荷重受け部430は、センターピラー20を介して加わった側面衝突荷重Fの一部を吸収しつつ、嵩上げ部450に伝達する部分である。荷重受け部430は、
図4に示すように、車幅方向に延びるように配置されている。荷重受け部430は、
図6に示すように、センターピラー20側(右側)で幅広、嵩上げ部450側(左側)で幅狭になるように、平面視において略台形状に形成されている。荷重受け部430は、前壁板部431と、後壁板部432と、前後の壁板部431,432の上端縁をつなぐ天井板部433とにより断面略逆U字形に形成されている。
【0029】
荷重受け部430の天井板部433は、
図6に示すように、平面視において略台形状に形成されており、前端縁と後端縁とが内側に凸となるように湾曲している。また、天井板部433には、荷重受け部430の脆弱部を構成する第1ビード433aと第2ビード433bとが車両前後方向に延びるように形成されている。さらに、天井板部433の左端部には、ボルト受け凹部433xが形成されており、そのボルト受け凹部433xの中央に嵩上げ部450の天井板部453のボルト孔453hと重なるボルト孔433hが形成されている。
【0030】
荷重受け部430の前壁板部431は、左右方向に長い帯板状に形成されており、天井板部453の前端縁の形状に合わせて内側(後側)に凸となるように湾曲している。前壁板部431の右端位置(センターピラー20側)には、前方に折り曲げられた状態で右端フランジ部431yが形成されており、その右端フランジ部431yの中央にセンターピラー20のインナパネル22にボルト止めされるボルト孔431kが形成されている。前壁板部431の左端位置には、左方向に延びるように左端フランジ部431zが形成されており、その左端フランジ部431zの中央に嵩上げ部450の前壁板部451のボルト孔451hと重なるボルト孔431hが形成されている。荷重受け部430の後壁板部432は、前壁板部431と前後方向において対称に形成されている。
【0031】
荷重受け部430は、上記したように、天井板部433に第1ビード433aと第2ビード433bとが形成されることで、嵩上げ部450よりも車幅方向に変形し易く構成されている。さらに、荷重受け部430は、
図6に示すように、センターピラー20側(右側)で幅広、嵩上げ部450側(左側)で幅狭になるように形成されているため、側面衝突荷重Fを受けたときに荷重受け部430が倒れることなく車幅方向に良好に潰れるようになる。
【0032】
<骨格構造40の組立について>
床上クロスメンバー41が、
図4に示すように、フロアパネル31上からクロスメンバー35、アウトリガー本体部33mに固定されると、ピラー支持部材400の嵩上げ部450が床上クロスメンバー41の上部に被せられる。この状態で、嵩上げ部450の前後の壁板部451,452の固定フランジ部451f,452fが床上クロスメンバー41の上部側面(上壁部)に溶接等により固定される。また、嵩上げ部450の天井板部453の下端平面部453yが床上クロスメンバー41の上面(上壁部)に溶接等により固定される。さらに、嵩上げ部450の右縦板部455の右端フランジ部455fがフロアパネル31に対して溶接等により固定される。
【0033】
次に、嵩上げ部450の上部に荷重受け部430とシートブラケット50がセットされる。即ち、嵩上げ部450の前壁板部451と後壁板部452とのボルト孔451h,452hに対して荷重受け部430の前壁板部431と後壁板部432とのボルト孔431h,432hが重ねられる。また、嵩上げ部450の天井板部453のボルト孔453hに対して荷重受け部430の天井板部433のボルト孔433hが重ねられる。さらに、嵩上げ部450の前壁板部451と後壁板部452とのボルト孔451h,452hに対してシートブラケット50のボルト孔が重ねられる。この状態で、嵩上げ部450に対して荷重受け部430とシートブラケット50とがボルト止めされる。次に、荷重受け部430における前壁板部431と後壁板部432との右端側のボルト孔431k,432kがセンターピラー20のインナパネル22(縦壁部)にボルト止めされ、骨格構造40の組立が完了する。これにより、
図4等に示すように、センターピラー20)と荷重受け部430と嵩上げ部450とに囲われた部分に空間SPが形成される。
【0034】
<骨格構造40の働きについて>
次に、
図8~
図10に基づいて骨格構造40の働きについて説明する。
図8に示すように、側面衝突荷重Fがセンターピラー20の下部に対して横方向(右方向)から加わると、側面衝突荷重Fがセンターピラー20を介してピラー支持部材400に加わるようになる。ここで、ピラー支持部材400の荷重受け部430は、嵩上げ部450よりも車幅方向に変形し易く構成されている。また、嵩上げ部450は、床上クロスメンバー41よりも車幅方向に変形し易く構成されている。このため、側面衝突荷重Fが加わると、
図9に示すように、荷重受け部430が嵩上げ部450よりも先に車幅方向に潰れ、側面衝突荷重Fの一部が吸収される。次に、
図10に示すように、嵩上げ部450が車幅方向に潰れて側面衝突荷重Fの一部が吸収される。これにより、床上クロスメンバー41の車幅方向の変形が抑えられ、センターピラー20の車室内側方向への入り込み量を抑えることができる。
【0035】
<本実施形態で使用した用語と本発明に係る用語との対応について>
本実施形態のセンターピラー20が本発明のピラー部材に相当し、センターピラー20のインナパネル22が本発明の縦壁部に相当する。また、床上クロスメンバー41が本発明の骨格部材に相当する。さらに、荷重受け部430の第1ビード433aと第2ビード433bが本発明の第1の脆弱部に相当し、嵩上げ部450の凹部453wが本発明の第2の脆弱部に相当する。
【0036】
<本実施形態に係る骨格構造40の長所について>
本実施形態に係る骨格構造40によると、ピラー支持部材400の荷重受け部430は、車幅方向に延びるように形成されている。また、荷重受け部430には、その荷重受け部430が車幅方向に潰れ易くなるように構成された第1ビード433aと第2ビード433b(第1の脆弱部)が設けられている。このため、センターピラー20(ピラー部材)に対して側面衝突荷重Fが加わると、荷重受け部430がセンターピラー20に押圧されて車幅方向に潰れ、側面衝突荷重Fの一部が吸収される。即ち、荷重受け部430が車幅方向に潰れることで側面衝突荷重Fを吸収する構成のため、荷重受け部430の潰れストロークにより潰れ時間を比較的長くでき、さらに潰れ荷重を一定に近づけることができる。これにより、側面衝突荷重Fを比較的長い時間効率的に吸収できるようになる。
【0037】
また、ピラー支持部材400の嵩上げ部450には、その嵩上げ部450が床上クロスメンバー41より変形し易くするための凹部453w(第2の脆弱部)が設けられている。このため、側面衝突荷重Fがピラー支持部材400を介して床上クロスメンバー41に加わると、床上クロスメンバー41が変形する前にピラー支持部材400の嵩上げ部450が凹部453wの働きにより変形するようになる。即ち、ピラー支持部材400の嵩上げ部450が変形することで、床上クロスメンバー41の変形を抑制できるようになる。さらに、荷重受け部430が潰れた後に嵩上げ部450が変形するため、ピラー支持部材400の変形に要する時間を比較的長くできる。
【0038】
[変更例]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ピラー支持部材400の荷重受け部430を断面略逆U字形に形成する例を示した。しかし、荷重受け部430を車幅方向に延びる筒状に成形することも可能である。また、ピラー支持部材400の嵩上げ部450を同じく床上クロスメンバー41に被せられるように断面略逆U字形に形成する例を示した。しかし、嵩上げ部450を箱状に成形することも可能である。また、実施形態では、センターピラー20を支える骨格構造40に本発明を適用する例を示したが、例えば、リヤピラーを支える骨格構造に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
20・・・・センターピラー(ピラー部材)
22・・・・インナパネル(縦壁部)
41・・・・床上クロスメンバー(骨格部材)
400・・・ピラー支持部材(骨格部材)
430・・・荷重受け部(骨格部材)
433a・・第1ビード(第1の脆弱部)
433b・・第2ビード(第1の脆弱部)
450・・・嵩上げ部
453w・・凹部(第2の脆弱部)
SP・・・・空間