(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ゲートウェイ
(51)【国際特許分類】
H04L 69/08 20220101AFI20230808BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20230808BHJP
H04L 69/18 20220101ALI20230808BHJP
【FI】
H04L69/08
H04L12/28 100F
H04L12/28 200Z
H04L69/18
(21)【出願番号】P 2020093381
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】長尾 英紀
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-097457(JP,A)
【文献】特開2020-087328(JP,A)
【文献】特開2003-316427(JP,A)
【文献】特開2010-205163(JP,A)
【文献】特開2013-109617(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110832411(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 69/08
H04L 12/28
H04L 69/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトコルAで通信する第1制御装置に接続可能な第1コネクタと、
前記プロトコルAで通信する第2制御装置に接続可能な第2コネクタと、
前記プロトコルAとは互換性のないプロトコルBで通信する第3制御装置に接続可能な第3コネクタと、
前記第1コネクタから受信した信号を前記第2コネクタへ再送信し、前記第2コネクタから受信した信号を前記第1コネクタへ再送信するリピータと、
前記リピータを通過する前記プロトコルAの信号を捕らえるスニッフィング部と、
前記スニッフィング部が捕らえた信号の形式を前記プロトコルAから前記プロトコルBに変換して前記第3コネクタへ送信するテスト用プロトコル変換部と、
前記第1コネクタから受信した信号の形式を前記プロトコルAから前記プロトコルBに変換して前記第3コネクタへ送信し、前記第3コネクタから受信した信号の形式を前記プロトコルBから前記プロトコルAに変換して前記第1コネクタへ送信する本番用プロトコル変換部と、
前記第3コネクタの接続先を、前記テスト用プロトコル変換部と前記本番用プロトコル変換部との間で択一的に切替可能な切替部と、
を備えることを特徴とするゲートウェイ。
【請求項2】
前記第1制御装置は、産業プラントに設けられたドライブ装置であり、
前記第2制御装置は、前記産業プラントに設けられた既設のプログラマブルロジックコントローラであり、
前記第3制御装置は、前記既設のプログラマブルロジックコントローラを置き換えるための新設のプログラマブルロジックコントローラであること、
を特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ。
【請求項3】
前記第1制御装置は、産業プラントに設けられたプログラマブルロジックコントローラであり、
前記第2制御装置は、前記産業プラントに設けられた既設のドライブ装置であり、
前記第3制御装置は、前記既設のドライブ装置を置き換えるための新設のドライブ装置であること、
を特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ。
【請求項4】
前記第1制御装置は、産業プラントに設けられた第1プログラマブルロジックコントローラであり、
前記第2制御装置は、前記産業プラントに設けられた既設の第2プログラマブルロジックコントローラであり、
前記第3制御装置は、前記既設の第2プログラマブルロジックコントローラを置き換えるための新設のプログラマブルロジックコントローラであること、
を特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートウェイに関する。
【背景技術】
【0002】
工業活動に必要な素材や資源を生産する産業プラント(水処理設備プラント、製紙プラント、鉄鋼プラント、発電プラント、石油プラント、化学プラント等)が知られている。
【0003】
産業プラントを制御するプラント制御システムは、多数のフィールド機器(アクチュエータ、センサを含む)を制御する複数の制御装置がコンピュータネットワークを介して接続された構成を備える。
【0004】
複数の制御装置は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLCと記す。)とドライブ装置を含む。複数の制御装置は、所定の通信プロトコル(例えば光伝送プロトコル)で通信する。
【0005】
ところで、プラント制御システムの老朽化により、複数の制御装置の一部を新たな制御装置に更新したい場合がある。新たな制御装置では、技術進歩に伴い新たな通信プロトコルが採用されることが多い。また、新たな通信プロトコルは、従来の通信プロトコルと互換性がない場合もある。
【0006】
このような場合、異なるプロトコルで通信する制御装置間にゲートウェイを適用する必要がある。ゲートウェイは、コンピュータネットワークをプロトコルの異なるネットワークと接続するためのネットワークノードである。
【0007】
例えば、特許文献1(特開2019-68677号公報)には、PLCとドライブ装置との間で相互のデータ通信を可能するゲートウェイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7を参照して、ドライブ装置73は維持しつつ、老朽化した既設PLC74を新設PLC75に更新するケースについて説明する。
【0010】
既設構成71は、ドライブ装置73と既設PLC74とを備える。ドライブ装置73と既設PLC74は、プロトコルAで通信する。一方、既設PLC74から置き換える新設PLC75は、プロトコルAとは互換性のない新たなプロトコルBのみに対応する。そのため、更新後構成72では、ドライブ装置73と新設PLC75は、ゲートウェイ76を介して接続される。ゲートウェイ76は、ドライブ装置73とプロトコルAで通信し、新設PLC75とプロトコルBで通信する。また、新設PLC75では、プロトコルBでドライブ装置73を駆動するための制御ソフトウェアが新たに設計・実装される。
【0011】
図7に示すように、従来の制御装置の更新手法では、既設構成71から更新後構成72へ一度に切り替える必要があった。すなわち、既設構成71から既設PLC74を取り除き、これを新設PLC75とゲートウェイ76とのセットに切り替える必要があった。そのため、新設PLC75にて設計したプロトコルB向けのドライブ装置73の制御ソフトウェアの妥当性確認の術がなかった。
【0012】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、既設の制御装置を新設の制御装置へ更新する前に、新設の制御装置による制御の妥当性確認を可能にするゲートウェイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的の達成のため、本発明に係るゲートウェイは以下のように構成される。
【0014】
本発明に係るゲートウェイ1は、第1コネクタ、第2コネクタ、第3コネクタ、リピータ、スニッフィング部、テスト用プロトコル変換部、本番用プロトコル変換部、切替部を備える。
【0015】
第1コネクタは、プロトコルAで通信する第1制御装置に接続可能である。第2コネクタは、前記プロトコルAで通信する第2制御装置に接続可能である。第3コネクタは、前記プロトコルAとは互換性のないプロトコルBで通信する第3制御装置に接続可能である。
【0016】
リピータは、パススルー機能を有する。具体的には、リピータは、前記第1コネクタから受信した信号を前記第2コネクタへ再送信し、前記第2コネクタから受信した信号を前記第1コネクタへ再送信する。
【0017】
スニッフィング部は、前記リピータを通過する前記プロトコルAの信号を捕らえる。
【0018】
テスト用プロトコル変換部は、前記スニッフィング部が捕らえた信号の形式を前記プロトコルAから前記プロトコルBに変換して前記第3コネクタへ送信する。
【0019】
本番用プロトコル変換部は、前記第1コネクタから受信した信号の形式を前記プロトコルAから前記プロトコルBに変換して前記第3コネクタへ送信し、前記第3コネクタから受信した信号の形式を前記プロトコルBから前記プロトコルAに変換して前記第1コネクタへ送信する。
【0020】
切替部は、前記第3コネクタの接続先を、前記テスト用プロトコル変換部と前記本番用プロトコル変換部との間で択一的に切替可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るゲートウェイは、既設の第1制御装置と第2制御装置との間の信号を相互に通過させつつ、これと並列に、第1制御装置および第2制御装置から受信した信号を捕らえてプロトコル変換して第3制御装置へ送信できる。
【0022】
すなわち、既設の第1制御装置から送信された信号は、既設の第2制御装置へ送信されるとともに、プロトコル変換されて第3制御装置へも送信される。また、既設の第2制御装置から送信された信号は、既設の第1制御装置へ送信されるとともに、プロトコル変換されて第3制御装置へも送信される。
【0023】
そのため、本発明に係るゲートウェイによれば、既設構成(第1制御装置、第2制御装置)による実制御を継続させつつ、第3制御装置は実制御のデータを確認できる。これによれば、既設の第2制御装置を新設の第3制御装置へ更新する前に、新設の第3制御装置による制御の妥当性を確認するためのパラレルランが可能となり、新旧制御装置のスムーズな移行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るゲートウェイを用いたパラレルラン構成を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るゲートウェイについて説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る新設制御システムの構成を説明するためのブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係るゲートウェイを用いたパラレルラン構成の変形例を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係るゲートウェイを用いたパラレルラン構成の変形例を説明するための図である。
【
図6】ゲートウェイが有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
【
図7】従来の制御装置の更新手法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0026】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るゲートウェイ1を用いたパラレルラン構成10を説明するための図である。
【0027】
パラレルランとは、産業プラントを制御する既設制御システム内に流れる信号を、新設制御システムにも流れるように並列に構成することで、新設制御システムの動作確認を行う試験手法である。
【0028】
パラレルラン構成10において、第1制御装置および第2制御装置は、既設制御システムを構成する装置である。
図1に示す例では、第1制御装置はドライブ装置73、第2制御装置は既設PLC74である。既設PLC74は、ドライブ装置73を制御する制御ソフトウェアを実行する。第1制御装置および第2制御装置は、コンピュータネットワークで接続され、プロトコルAで通信する。
【0029】
パラレルラン構成10において、第1制御装置、第3制御装置およびゲートウェイ1は、新設制御システムを構成する装置である。すなわち、第1制御装置は、既設制御システムから引き継き使用される装置である。第3制御装置は、老朽化した第2制御装置に換えて使用される予定の装置である。第3制御装置は、プロトコルAとは互換性がないプロトコルBで通信する。ゲートウェイ1は、新設制御システムで追加される装置である。
【0030】
ゲートウェイ1は、ドライブ装置73から送信された信号(ドライブ出力データ)をそのまま既設PLC74へ再送信し、既設PLC74から送信された信号(PLC出力データ)をそのままドライブ装置73へ再送信する。
【0031】
このようなパススルー機能によれば、既設制御システムよる運用状態を維持することができる。
【0032】
さらにゲートウェイ1は、ドライブ装置73から送信された信号(ドライブ出力データ)および既設PLC74から送信された信号(PLC出力データ)を、プロトコルBに変換して新設PLC75へ再送信する。
【0033】
このようなパラレルラン構成10によれば、新設PLC75が実行する制御プログラムの動作確認が可能である。すなわち、既設制御システムのドライブ出力データに応じて新設PLC75の制御プログラムが出力するデータが、既設制御システムのPLC出力データと一致するか否かを確認することができる。
【0034】
このようなパラレルランによる動作確認を実現するためのゲートウェイ1について
図2を参照して詳説する。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態1に係るゲートウェイ1について説明するためのブロック図である。
【0036】
ゲートウェイ1は、第1コネクタ11、第2コネクタ12、第3コネクタ13、リピータ14、スニッフィング部15、テスト用プロトコル変換部16、本番用プロトコル変換部17、切替部18を備える。
【0037】
第1コネクタ11は、プロトコルAで通信する第1制御装置(ドライブ装置73)に接続する。
【0038】
第2コネクタ12は、プロトコルAで通信する第2制御装置(既設PLC74)に接続する。
【0039】
第3コネクタ13は、プロトコルAとは互換性のないプロトコルBで通信する第3制御装置(新設PLC75)に接続する。
【0040】
リピータ14は、パススルー機能を有する。具体的には、リピータ14は、第1コネクタ11から受信した信号を第2コネクタ12へそのまま再送信し、第2コネクタ12から受信した信号を第1コネクタ11へそのまま再送信する。これにより、既設制御システムの運用状態を維持できる。
【0041】
スニッフィング部15は、リピータ14を通過するプロトコルAの信号を捕らえる。
【0042】
テスト用プロトコル変換部16は、スニッフィング部15が捕らえた信号の形式をプロトコルAからプロトコルBに変換して第3コネクタ13へ送信する。
【0043】
本番用プロトコル変換部17は、第1コネクタ11から受信した信号の形式をプロトコルAからプロトコルBに変換して第3コネクタ13へ送信する。また、本番用プロトコル変換部17は、第3コネクタ13から受信した信号の形式をプロトコルBからプロトコルAに変換して第1コネクタ11へ送信する。
【0044】
切替部18は、第3コネクタ13の接続先を、テスト用プロトコル変換部16と本番用プロトコル変換部17との間で択一的に切替可能である。切替部18は、外部からの操作または信号に応じて接続先を切り替える。
【0045】
次に、
図3を参照して、
図1におけるパラレルラン構成10における第3制御装置の動作確認が終わった後、新設制御システム20として運用を開始するための構成について説明する。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態1に係る新設制御システム20の構成を説明するためのブロック図である。
【0047】
新設制御システム20は、上述したパラレルランによる動作確認が終わった後、第2制御装置(既設PLC74)をゲートウェイ1から切り離した構成である。このとき、切替部18によって、第3コネクタ13の接続先は、テスト用プロトコル変換部16から本番用プロトコル変換部17に切り替えられる。
【0048】
<効果>
以上説明したように、本実施形態に係るゲートウェイ1によれば、既設の第1制御装置(ドライブ装置73)から送信された信号は、第2制御装置(既設PLC74)へ送信されるとともに、プロトコル変換されて第3制御装置(新設PLC75)へも送信される。また、既設の第2制御装置(既設PLC74)から送信された信号は、第1制御装置(ドライブ装置73)へ送信されるとともに、プロトコル変換されて第3制御装置へも送信される。
【0049】
そのため、本発明に係るゲートウェイ1によれば、既設制御システム(第1制御装置、第2制御装置)による実制御を継続させつつ、第3制御装置はその実制御のデータを確認できる。これによれば、既設の第2制御装置を新設の第3制御装置へ更新する前に、新設の第3制御装置の制御ソフトウェアの動作を確認するためのパラレルランが可能となる。そして、第3制御装置の動作を確認した後に新設制御システム20での実制御に切り替えることができる。そのため、新旧制御装置のスムーズな移行が可能となる。
【0050】
<変形例>
ところで、上述した実施の形態1のシステムにおいては、第1制御装置をドライブ装置73、第2制御装置を既設PLC74、第3制御装置を新設PLC75としているがこれに限定されるものではない。
図4に示すパラレルラン構成10aのように、第1制御装置を既設のPLC73a、第2制御装置を既設ドライブ装置74a、第3制御装置を新設ドライブ装置75aとしてもよい。また、
図5に示すパラレルラン構成10bのように、第1制御装置を既設第1PLC73b、第2制御装置を既設第2PLC74b、第3制御装置を新設PLC75bとしてもよい。
【0051】
<ハードウェア構成例>
図6は、上述したゲートウェイ1が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。これらの装置内の各部は機能の一部を示し、各機能は処理回路により実現される。一態様として、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ81と少なくとも1つのメモリ82とを備える。他の態様として、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア83を備える。
【0052】
処理回路がプロセッサ81とメモリ82とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ82に格納される。プロセッサ81は、メモリ82に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0053】
処理回路が専用のハードウェア83を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路で実現される。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ゲートウェイ
10、10a、10b パラレルラン構成
11 第1コネクタ
12 第2コネクタ
13 第3コネクタ
14 リピータ
15 スニッフィング部
16 テスト用プロトコル変換部
17 本番用プロトコル変換部
18 切替部
20 新設制御システム
71 既設構成
72 更新後構成
73 ドライブ装置
73a PLC
73b 既設第1PLC
74 既設PLC
74a 既設ドライブ装置
74b 既設第2PLC
75 新設PLC
75a 新設ドライブ装置
75b 新設PLC
76 ゲートウェイ
81 プロセッサ
82 メモリ
83 ハードウェア