(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】車両用シートベルト装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/18 20060101AFI20230808BHJP
B60R 22/24 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B60R22/18 118
B60R22/24
(21)【出願番号】P 2020176065
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗木 誠
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-039926(JP,U)
【文献】実開昭51-064319(JP,U)
【文献】特開平05-112204(JP,A)
【文献】実開平05-034029(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/18 - 22/26
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる車両用シートベルト装置であって、
シートに着座した乗員に架け渡されるシートベルトと、
上記シートよりも車両後方に設けられ上記シートベルトを引き出し可能に巻き取るリトラクタと、
上記リトラクタから引き出された上記シートベルトをガイドする第1ガイド部と、
上記第1ガイド部よりも車両前方において上記車両の側壁部に設けられ上記第1ガイド部と上記乗員との間で上記シートベルトをガイドする第2ガイド部と、
を備え、
上記第2ガイド部には、上記シートベルトがベルト幅方向を車高方向として車長方向に沿って挿通される挿通開口が設けられており、上記挿通開口の上記車高方向の開口幅は、上記シートベルトのベルト幅を上回り且つ上記シートのシートバックが標準姿勢位置から安楽姿勢位置まで傾動する動きに追従して上記シートベルトの上記車高方向のスライドを可能とする大きさである、車両用シートベルト装置。
【請求項2】
上記第2ガイド部は、上記第1ガイド部と上記シートバックの外壁部とを結ぶシートベルト仮想経路よりも側壁部寄りの迂回位置に上記挿通開口を備える、請求項1に記載の車両用シートベルト装置。
【請求項3】
上記側壁部には開口が設けられており、上記第2ガイド部は、上記挿通開口を形成するベルト保持部と、上記ベルト保持部を挟んで上記車高方向の両側に設けられた2つの被固定部と、を有し、上記開口を跨いで上記2つの被固定部のそれぞれにおいて上記側壁部に固定されている、請求項1または2に記載の車両用シートベルト装置。
【請求項4】
上記第2ガイド部は、上記ベルト保持部及び上記2つの被固定部の中に相対的に剛性が低い低剛性部を含む、請求項3に記載の車両用シートベルト装置。
【請求項5】
上記第2ガイド部は、上記ベルト保持部と一体化された第1部材と、上記2つの被固定部を含む第2部材と、を有し、上記第1部材と上記第2部材が分離可能に連結されている、請求項3または4に記載の車両用シートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、この種のシートベルト装置として、車両のリアシートに適用されるものが知られている。このシートベルト装置は、リトラクタから引き出されたシートベルをガイドするためのガイド部を備えている。このシートベルト装置によれば、シートに着座した乗員にシートベルトを適正に装着することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、自動車の用途の多様化によって、運転席以外の助手席や後席についても固有の条件を考慮した設計の必要性が生じている。その中の1つに、乗員が標準姿勢のほかにシートを後方へ倒した安楽姿勢で着座できる構造を採用したものがある。安楽姿勢は乗員がリラックスした状態で快適に過ごせることを想定した着座姿勢である。ところが、安楽姿勢ではシートベルトのうちショルダー部分が乗員の体から離れて浮きやすく、また乗員の視界を妨げたり乗員の動きを邪魔したりすることになる。このため、乗員は安楽姿勢をとったにもかかわらず、本来の目的である快適性が損なわれるという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、乗員が安楽姿勢をとるときの快適性を確保できる車両用シートベルト装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両に設けられる車両用シートベルト装置であって、
シートに着座した乗員に架け渡されるシートベルトと、
上記シートよりも車両後方に設けられ上記シートベルトを引き出し可能に巻き取るリトラクタと、
上記リトラクタから引き出された上記シートベルトをガイドする第1ガイド部と、
上記第1ガイド部よりも車両前方において上記車両の側壁部に設けられ上記第1ガイド部と上記乗員との間で上記シートベルトをガイドする第2ガイド部と、
を備え、
上記第2ガイド部には、上記シートベルトがベルト幅方向を車高方向として車長方向に沿って挿通される挿通開口が設けられており、上記挿通開口の上記車高方向の開口幅は、上記シートベルトのベルト幅を上回り且つ上記シートのシートバックが標準姿勢位置から安楽姿勢位置まで傾動する動きに追従して上記シートベルトの上記車高方向のスライドを可能とする大きさである、車両用シートベルト装置、
にある。
【発明の効果】
【0007】
この車両用シートベルト装置において、シートよりも車両後方に設けられたリトラクタから引き出されたシートベルトは、第1ガイド部と第2ガイド部を順次経由してシートに着座した乗員に架け渡される。第2ガイド部では、シートベルトがベルト幅方向を車高方向として車長方向に沿って挿通開口に挿通される。このとき、第2ガイド部を車両の側壁部に設けることによって、シートベルトを第1ガイド部からシートバックに干渉しにくい経路で乗員までガイドすることができる。
【0008】
ここで、挿通開口の車高方向の開口幅は、シートベルトのベルト幅を上回るとともに、シートのシートバックが標準姿勢位置から安楽姿勢位置まで傾動する動きに追従してシートベルトの車高方向のスライドを可能とする大きさになっている。このため、乗員が安楽姿勢をとったときでもシートベルトが乗員から浮き上がるのを防ぐことができる。
【0009】
以上のごとく、上記の態様によれば、乗員が安楽姿勢をとるときの快適性を確保できる車両用シートベルト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の車両用シートベルト装置を乗員が標準姿勢にあるときに車室側からみた側面図。
【
図2】
図1の車両用シートベルト装置を上方からみた様子を模式的に示す図。
【
図4】
図3において第2ガイド部の組付け前の状態を示す図。
【
図5】実施形態1の車両用シートベルト装置を乗員が安楽姿勢にあるときに車室側からみた側面図。
【
図7】実施形態2の車両用シートベルト装置を乗員が標準姿勢にあるときに車室側からみた側面図。
【
図8】
図7のVIII-VIII線矢視断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の各態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0012】
上記の車両用シートベルト装置において、上記第2ガイド部は、上記第1ガイド部と上記シートバックの外壁部とを結ぶシートベルト仮想経路よりも側壁部寄りの迂回位置に上記挿通開口を備えるのが好ましい。
【0013】
このシートベルト装置によれば、第2ガイド部の挿通開口を迂回位置に配置することによって、シートベルトをシートベルト仮想経路よりもシートバックに干渉させにくい経路で第1ガイド部から乗員までガイドすることができる。
【0014】
上記の車両用シートベルト装置において、上記側壁部には開口が設けられており、上記第2ガイド部は、上記挿通開口を形成するベルト保持部と、上記ベルト保持部を挟んで上記車高方向の両側に設けられた2つの被固定部と、を有し、上記開口を跨いで上記2つの被固定部のそれぞれにおいて上記側壁部に固定されているのが好ましい。
【0015】
このシートベルト装置によれば、シートベルトをガイドする第2ガイド部が開口を跨いで側壁部に固定されるため、この第2ガイド部を側壁部のうち開口周辺の剛性を高める手段として兼用することができる。このとき、シートベルトが乗員から受ける荷重が第2ガイド部を介してシート側から車両側に分散するためシート自体の剛性を抑えることができ、これにより車両の軽量化を図ることができる。
【0016】
上記の車両用シートベルト装置において、上記第2ガイド部は、上記ベルト保持部及び上記2つの被固定部の中に相対的に剛性が低い低剛性部を含むのが好ましい。
【0017】
このシートベルト装置によれば、第2ガイド部はベルト保持部がシートベルトから荷重を受けたときに低剛性部で優先的に撓み変形して荷重を吸収することができる。
【0018】
上記の車両用シートベルト装置において、上記第2ガイド部は、上記ベルト保持部と一体化された第1部材と、上記2つの被固定部を含む第2部材と、を有し、上記第1部材と上記第2部材が分離可能に連結されているのが好ましい。
【0019】
このシートベルト装置によれば、第2ガイド部の第1部材と第2部材を互いに分離させた状態から適宜の順番で連結しながら車両の側壁部に固定することができる。これにより、第2ガイド部を車両の側壁部に固定するときの操作性を高めることができる。
【0020】
以下、車両に設けられる車両用シートベルト装置(以下、単に「シートベルト装置」ともいう。)の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
このシートベルト装置の説明のための図面において、特に断りのない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両外方を矢印OUTで示している。また、車高方向を矢印Xで示し、車長方向を矢印Yで示し、車幅方向を矢印Zで示している。
【0022】
(実施形態1)
図1に示されるように、車両1の側壁部2を構成する車体骨格2aには、Cピラー3及びDピラー4が含まれている。Cピラー3とDピラー4との間には、窓部を構成する開口5が設けられている。
【0023】
シート20は、車両1の後席用のシートであり、乗員Cの背もたれを構成するシートバック21と、乗員Cの着座面を構成するシートクッション22と、を備えている。シートバック21は、シートクッション22に対して軸部23を中心に傾動領域Aを回動可能に構成されている。このため、乗員Cは、シートバック21が標準姿勢位置である第1位置P1(
図1中の実線で示される位置)にあるときに標準姿勢をとることができる。また、乗員Cは、シートバック21が第1位置P1よりも後方の安楽姿勢位置である第2位置P2(
図1中の二点鎖線で示される位置)にあるときに安楽姿勢をとることができる。
【0024】
ここでいう「標準姿勢」とは、シートバック21を起立させた起立状態で乗員Cがシート20に着座したときの姿勢をいう。この標準姿勢は、典型的には、垂線に対するシートバック21若しくは乗員Cの胴部の傾斜角度が20°から25°程度の範囲となる姿勢をいう。
【0025】
これに対して「安楽姿勢」とは、シートバック21を起立状態よりも後方へ傾動させた傾動状態で乗員Cがシート20に着座したときの姿勢をいう。特に、この安楽姿勢は、乗員Cがリラックスした状態で快適に過ごせることを想定した着座姿勢であり、典型的には、垂線に対するシートバック21若しくは乗員Cの胴部の傾斜角度が標準姿勢のときの角度から50°前後の角度までの範囲となる姿勢をいう。
【0026】
実施形態1のシートベルト装置10は、シートベルトBと、リトラクタ30と、第1ガイド部31と、第2ガイド部32と、を備えている。
【0027】
シートベルトBは、シート20に着座した乗員Cに架け渡される長尺状のウェビングとして構成されている。このシートベルトBの第1領域B1には、プレート形状のタング11が摺動自在に取付けられている。このタング11は、シート20側に設けられているバックル12に対して係合及び係合解除が可能とされている。
【0028】
乗員Cは、シートベルトBを装着するときにタング11とバックル12を係合させる。シートベルトBの装着状態では、シートベルトBの第1領域B1が乗員Cの胸部から肩部までの範囲に密着することによって、乗員Cの拘束が可能になる。一方で、乗員Cは、シートベルトBの装着を解除するときに、タング11とバックル12との係合を解除させる。シートベルトBの装着が解除されることによって、乗員Cの拘束が解除される。
【0029】
リトラクタ30は、シートベルトBを引き出し可能に巻き取るためのものである。このリトラクタ30は、特に図示しないものの、シートベルトBの巻き取り軸を構成するスプールと、このスプールを巻き取り方向に付勢するベルト巻き取り機構と、をケース内に収容するよう構成されている。本実施形態において、リトラクタ30は、シート20よりも車両後方に設けられている。より具体的には、側壁部2のうちシートバック21の傾動領域Aよりも車両後方に位置するDピラー4にリトラクタ30が固定されている。
【0030】
リトラクタ30から引き出されたシートベルトBは、第1ガイド部31によってガイドされ、更に第1ガイド部31と乗員Cとの間で第2ガイド部32によってガイドされる。シートベルトBのうち、リトラクタ30側の一端部とは反対側の他端部は、シート20に設けられたベルトアンカー13(
図2を参照)に連結されている。
【0031】
第1ガイド部31は、リトラクタ30から引き出されたシートベルトBをリトラクタ30の上方でガイドするためのものである。この第1ガイド部31は、Dピラー4のうちリトラクタ30の上方に固定されている。この第1ガイド部31には、シートベルトBのうち第1ガイド部31から乗員Cの肩部まで延びる第2領域B2が挿通される挿通穴31aが設けられている。
【0032】
挿通穴31aは、その穴幅がシートベルトBのベルト幅d1を概ね同様となるように寸法設定されている。即ち、挿通穴31aの穴幅がシートベルトBのベルト幅d1と同じか若しくはベルト幅d1を若干上回るようになっている。このため、シートベルトBは、挿通穴31aに挿通された状態でベルト長方向の摺動が可能とされる一方でベルト幅方向のスライドが規制される。このような第1ガイド部31は、「スリップジョイント」とも称呼される。
【0033】
第1ガイド部31は、シートバック21が第1位置P1から第2位置P2までの範囲で傾動するときに、シートベルトBが乗員Cから浮かない状態が維持される位置に配置されている。典型的には、シートバック21が第2位置P2にある状態を側方からみたとき、シートベルトBの第2領域B2が乗員Cの肩部と第1ガイド部31との間で概ね直線状に延びるように、第1ガイド部31の位置を設定するのが好ましい。
【0034】
第2ガイド部32は、車高方向Xを長手方向として延びている。この第2ガイド部32は、側壁部2の車体骨格2aのうちCピラー3とDピラー4との間の部位に固定されている。この第2ガイド部32には、シートベルトBの第2領域B2が挿通される挿通開口としての挿通穴35が設けられている。挿通穴35は、車長方向Yについて第1ガイド部31に並んだ位置に設けられている。シートベルトBの第2領域B2は、ベルト幅方向を車高方向Xとして車長方向Yに沿って挿通穴35に挿通された状態で、車長方向Yの摺動が可能とされる。
【0035】
挿通穴35の車高方向Xの開口幅d2は、シートベルトBのベルト幅d1を上回り且つシートバック21が第1位置P1から第2位置P2まで傾動する動きに追従してシートベルトBの車高方向Xのスライドを可能とする大きさになっている。典型的には、挿通穴35の寸法d2がシートベルトBのベルト幅d1の倍以上となるように寸法設定されるのが好ましい。これによりシートベルトBの第2領域B2は、挿通穴35の車高方向Xの上端から下端までの間でスライドが可能になる。
【0036】
この第2ガイド部32によれば、シートバック21が第1位置P1から第2位置P2まで傾動したときでも、シートベルトBの第2領域B2が挿通穴35を車高方向Xにスライドすることで、シートベルトBが乗員Cの胸部から離れるのが抑制される。このため、挿通穴35を有する第2ガイド部32は、シートベルトBのベルト幅方向のスライドを規制する挿通穴31aを有する第1ガイド部31とは本質的に異なる機能を有する。このような第2ガイド部32は、乗員Cとの接触を維持する「フィッテイングガイド」とも称呼される。
【0037】
シートバック21は、側壁部2寄りの上部に肩口ガイド14を備えている。肩口ガイド14は、シートベルトBを挿通可能な環状ベルトによって構成されている。肩口ガイド14は、シートベルトBのベルト長方向の摺動は可能とする一方で、タング11の通過を防止するように構成されている。この肩口ガイド14によれば、シートベルトBの装着が解除された状態でこのシートベルトB自体が後方へ移動しないようにすることができる。このため、シートベルトBの次回の装着時に乗員Cがタング11を把持しやすくなり、シートベルトBの装着時の操作性が向上する。
【0038】
図2に示されるように、車室内を上方からみたとき、第2ガイド部32の挿通穴35は、シートベルト仮想経路Rよりも側壁部2寄りの迂回位置Dに設けられている。シートベルト仮想経路Rは、第1ガイド部31とシートバック21の外壁部21aとを直線状に結ぶ仮想線に沿って延びる経路である。即ち、第2ガイド部32が省略されている場合、シートベルトBの第2領域B2は、このシートベルト仮想経路Rに沿って第1ガイド部31とシートバック21の外壁部21aとの間で直線状に配置される。
【0039】
このため、シートベルトBを第2ガイド部32の挿通穴35に挿通させることによってシートベルト仮想経路Rよりも側壁部2寄りに迂回させて延ばすシートベルト経路Sに配置することができる。シートベルト経路Sは、シートベルト仮想経路Rに比べて、シートベルトBをシートバック21に干渉させにくい状態で第1ガイド部31から乗員Cまでガイドするのに有効な経路である。
【0040】
図3に示されるように、第2ガイド部32は、挿通穴35を形成するベルト保持部34と、ベルト保持部34と一体化された第1部材としての支持プレート部材33と、支持プレート部材33とは別体である第2部材としての支持プレート部材36と、を有する。
【0041】
シートベルトBは、挿通穴35に挿通された部位である第2領域B2がベルト保持部34によって保持される。ベルト保持部34の材質は特に限定されないが、シートベルトBとの間の摺動抵抗を抑えるのに有効な材質を採用するのが好ましい。これにより、シートベルトBの耐久性を向上させるとともに、シートベルトBの引出し性及び巻き取り性を向上させることができる。
【0042】
2つの支持プレート部材33,36はいずれも、車幅方向Zを板厚方向として車高方向Xに延びている。支持プレート部材33は、車高方向Xの上端部33a及び下端部33bのそれぞれが固定部材37によって支持プレート部材36に固定されている。支持プレート部材36は、被固定部としての車高方向Xの上端部36a及び下端部36bのそれぞれが固定部材38によって側壁部2の車体骨格2aに固定されている。なお、必要に応じて、2つの支持プレート部材33,36の少なくとも一方を、複数の部材によって構成することもできる。
【0043】
2つの被固定部(上端部36a及び下端部36b)は、ベルト保持部34を挟んで車高方向Xの両側に設けられている。これにより、第2ガイド部32は、開口5を跨いで支持プレート部材36の上端部36aと下端部36bとのそれぞれにおいて側壁部2の車体骨格2aに固定されている。
【0044】
固定部材37,38は、典型的には、ボルト部材、ナット部材、リベットなどの手段によって構成されるのが好ましい。
【0045】
支持プレート部材36の下端部36bは、第2ガイド部32のベルト保持部34及び2つの被固定部(上端部36a及び下端部36b)の中で相対的に剛性が低い低剛性部である。これにより、第2ガイド部32は、ベルト保持部34がシートベルトBから荷重を受けたときに低剛性部である下端部36bで優先的に撓み変形する。
【0046】
支持プレート部材33は、その上端部33a及び下端部33bのそれぞれが支持プレート部材36に対して車幅方向Zに重ねられた状態で、固定部材37によって分離可能に連結されている。
【0047】
これにより、
図4に示されるように、第2ガイド部32を車両1の側壁部2に組み付ける組付け作業の一例では、支持プレート部材36を固定部材38によって側壁部2の車体骨格2aに予め固定する。その後、ベルト保持部34と一体化されている支持プレート部材33を固定部材37によって支持プレート部材36に固定する。また、別例の組付け作業では、ベルト保持部34と一体化されている支持プレート部材33を固定部材37によって支持プレート部材36に予め固定する。その後、支持プレート部材33と一体化された支持プレート部材36を固定部材38によって側壁部2の車体骨格2aに固定する。
【0048】
図1に示されるように、乗員Cが標準姿勢をとる場合、シート20のシートバック21を第1位置P1に設定する。このとき、
図3に示されるように、第2ガイド部32に挿通穴35が設けられているため、シートベルトBの第2領域B2は挿通穴35内の上側の第1位置Q1に配置される。これにより、シートベルトBの第1領域B1が乗員Cの胸部及び肩部に架け渡され、且つシートベルトBの第2領域B2を側方からみたとき、第2領域B2が第1ガイド部31から乗員Cの肩部までの間で直線状に延びた状態が形成される。
【0049】
次に、
図5及び
図6を参照しながら、乗員Cが標準姿勢から安楽姿勢まで姿勢変更を行う場合について説明する。
【0050】
図5に示されるように、乗員Cが安楽姿勢をとる場合、シート20のシートバック21を第1位置P1(
図1を参照)から第2位置P2まで後方へ傾動させる。このとき、乗員Cは、シートベルトBを装着したままの状態でシートバック21を第2位置P2まで傾動させてもよいし、或いはシート20に着座した状態でシートバック21を第2位置P2まで傾動させた後でシートベルトBを装着してもよいし、或いはシートバック21を第2位置P2まで傾動させた後でシート20に着座してシートベルトBを装着してもよい。
【0051】
乗員Cがシートバック21の傾斜角度に応じて安楽姿勢をとることで、乗員Cの肩部及び胸部の位置が下がるため、これに合わせてシートベルトBの第2領域B2が下向きの引っ張り荷重を受ける。
【0052】
このとき、
図6に示されるように、第2ガイド部32に挿通穴35が設けられているため、シートベルトBの第2領域B2は、下向きの引っ張り荷重にしたがって挿通穴35内を上側の第1位置Q1から下側の第2位置Q2まで下降する。第2領域B2は、挿通穴35内における下降動作は規制されず、車幅方向Zについてのみ動きが規制された状態にある。これにより、シートベルトBの第1領域B1が乗員Cの胸部及び肩部に架け渡され、且つシートベルトBの第2領域B2を側方からみたとき、第2領域B2が第1ガイド部31から乗員Cの肩部までの間で直線状に延びた状態を維持できる。
【0053】
以下に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0054】
上述の実施形態1によれば、シートベルト装置10において、シート20よりも車両後方に設けられたリトラクタ30から引き出されたシートベルトBは、第1ガイド部31と第2ガイド部32を順次経由してシート20に着座した乗員Cに架け渡される。第2ガイド部32では、シートベルトBがベルト幅方向を車高方向Xとして車長方向Yに沿って挿通穴35に挿通される。このとき、第2ガイド部32を車両1の側壁部2に設けることによって、シートベルトBを第1ガイド部31からシートバック21に干渉しにくい経路で乗員までガイドすることができる。
【0055】
ここで、挿通穴35の車高方向Xの開口幅d2は、シートベルトBのベルト幅d1を上回るとともに、シート20のシートバック21が第1位置P1から第2位置P2まで傾動する動きに追従してシートベルトBの車高方向Xのスライドを可能とする大きさになっている。このため、乗員Cが安楽姿勢をとったときでもシートベルトBが乗員から浮き上がるのを防ぐことができる。
【0056】
従って、上述の実施形態1によれば、乗員Cが安楽姿勢をとるときの快適性を確保できるシートベルト装置10を提供することができる。
【0057】
上記のシートベルト装置10によれば、第2ガイド部32の挿通穴35を迂回位置Dに配置することによって、シートベルトBの第2領域B2をシートベルト仮想経路Rよりもシートバック21に干渉させにくい経路で第1ガイド部31から乗員Cまでガイドすることができる。
【0058】
上記のシートベルト装置10によれば、シートベルトBの第2領域B2をガイドする第2ガイド部32が開口5を跨いで側壁部2に固定されるため、この第2ガイド部32を側壁部2のうち開口5の周辺の剛性を高める手段として兼用することができる。このとき、シートベルトBが乗員Cから受ける荷重が第2ガイド部32を介してシート20側から車両1側に分散するためシート20自体の剛性を抑えることができ、これにより車両1の軽量化を図ることができる。
【0059】
上記のシートベルト装置10によれば、第2ガイド部32はベルト保持部34がシートベルトBの第2領域B2から荷重を受けたときに低剛性部である、支持プレート部材36の下端部36bで優先的に撓み変形して荷重を吸収することができる。
【0060】
上記のシートベルト装置10によれば、第2ガイド部32の支持プレート部材33と支持プレート部材36を互いに分離させた状態から適宜の順番で連結しながら車両1の側壁部2に固定することができる。これにより、第2ガイド部32を車両1の側壁部2に固定するときの操作性を高めることができる。
【0061】
次に、実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0062】
(実施形態2)
図7及び
図8に示されるように、実施形態2のシートベルト装置110は、第2ガイド部132の構造について実施形態1のシートベルト装置10のものと相違している。
【0063】
図8に示されるように、第2ガイド部132は、挿通穴35を形成するベルト保持部34と、ベルト保持部34と一体化された支持プレート部材133と、を有する。支持プレート部材133は、被固定部としての車高方向Xの上端部133a及び下端部133bのそれぞれが固定部材37によって側壁部2の車体骨格2aに固定されている。この支持プレート部材133は、実施形態1の2つの支持プレート部材33,36が一体化されているのと実質的に同様の構造を有する。これにより、第2ガイド部132は、開口5を跨いで2つの被固定部のそれぞれにおいて側壁部2の車体骨格2aに固定されている。また、支持プレート部材133の下端部133bは、第2ガイド部132のベルト保持部34及び2つの被固定部(上端部133a及び下端部133b)の中で相対的に剛性が低い低剛性部である。
【0064】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0065】
実施形態2のシートベルト装置110によれば、実施形態1のシートベルト装置10に比べて、第2ガイド部132の部品点数を少なくでき構造を簡素化できる。
【0066】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0067】
本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上記の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0068】
上述の実施形態では、第2ガイド部32,132にシートベルトBのための挿通開口として挿通穴35を設ける場合について例示したが、これに代えて、挿通穴35の一部が切り欠かれたような挿通開口を採用することもできる。
【0069】
上述の実施形態では、第2ガイド部32,132の挿通穴35を第1ガイド部31とシートバック21の外壁部21aとを結ぶシートベルト仮想経路Rよりも側壁部寄りの迂回位置Dに設ける場合について例示したが、第1ガイド部31の配置等の特定の条件を前提とした場合には、シートベルト仮想経路R上に挿通穴35を設けるようにしてもよい。
【0070】
上述の実施形態では、第2ガイド部32,132が開口5を跨いで側壁部2に固定される場合について例示したが、必要に応じて、第2ガイド部32,132が開口5から外れた位置で側壁部2に固定されるようにしてもよい。
【0071】
上述の実施形態1では、第2ガイド部32の支持プレート部材36の下端部36bをベルト保持部34及び上端部36aに対する低剛性部とする場合について例示したが、これに代えて、支持プレート部材36の上端部36aをベルト保持部34や下端部36bに対する低剛性部にしてもよい。また、上述の実施形態2では、第2ガイド部132の支持プレート部材133の下端部133bをベルト保持部34及び上端部133aに対する低剛性部とする場合について例示したが、これに代えて、支持プレート部材133の上端部133aをベルト保持部34や下端部133bに対する低剛性部にしてもよい。
【0072】
上述の実施形態では、車両1の後席用のシート20に適用されるシートベルト装置10,110について例示したが、このシートベルト装置10,110の構造を必要に応じて車両1の助手席用のシートに適用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1 車両
2 側壁部
5 開口
10,110 車両用シートベルト装置
20 シート
21 シートバック
21a 外壁部
30 リトラクタ
31 第1ガイド部
32,132 第2ガイド部
33 支持プレート部材(第1部材)
34 ベルト保持部
35 挿通穴(挿通開口)
36 支持プレート部材(第2部材)
36a 上端部(被固定部)
36b 下端部(被固定部、低剛性部)
133a 上端部(被固定部)
133b 下端部(被固定部、低剛性部)
B シートベルト
C 乗員
D 迂回位置
d1 ベルト幅
d2 開口幅
R シートベルト仮想経路
P1 第1位置(標準姿勢位置)
P2 第2位置(安楽姿勢位置)
X 車高方向
Y 車長方向