IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

特許7327360熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム
<>
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図1
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図2
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図3
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図4
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図5
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図6
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図7
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図8
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図9
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図10
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図11
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図12
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図13
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図14
  • 特許-熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】熱処理システム、核酸抽出システム、核酸分析システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230808BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230808BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20230808BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/02
C12Q1/6813 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020192548
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081170
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】桑田 正弘
【審査官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0329261(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0282270(US,A1)
【文献】特開2000-189152(JP,A)
【文献】国際公開第2019/158131(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/174818(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0111435(US,A1)
【文献】特開2014-190357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/02
C12Q 1/6813
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを収容可能な収容部と、前記収容部を閉塞する蓋部と、を有する容器と、
前記容器の前記収容部を挿入して熱処理する挿入孔が設けられた熱処理装置と、を備え、
前記蓋部は、前記収容部に挿入されて、前記収容部の内壁面に当接することにより封止を行う封止材を有し、
前記封止材は、前記収容部が前記挿入孔に挿入された状態で、前記挿入孔の中に位置する、熱処理システム。
【請求項2】
前記熱処理装置に対し前記容器を相対的に移動させる移動装置を備え、
前記容器は、
前記サンプルを収容する複数の前記収容部と、
前記複数の収容部を閉塞する前記蓋部と、を有しており、
前記移動装置は、
前記複数の収容部を支持する容器支持部と、
前記蓋部と重なり、前記容器支持部との間で前記容器を挟み込むと共に、前記容器支持部に対し開閉可能に設けられた容器固定部と、を有し、
前記容器支持部及び前記容器固定部のいずれか一方には、複数の孔部が設けられ、
前記容器支持部及び前記容器固定部の他方には、前記複数の孔部に挿入されて、当該複数の孔部の縁部に係合する複数の爪部が設けられている、請求項1に記載の熱処理システム
【請求項3】
前記移動装置は、
前記容器支持部と前記容器固定部とが相対的に平行移動することで、
前記複数の爪部が前記複数の孔部の縁部に係合し、前記容器支持部に対して前記容器固定部が開放不能となるロック状態と、
前記複数の爪部が前記複数の孔部の縁部から離間し、前記容器支持部に対して前記容器固定部が開放可能となるロック解除状態と、が切り替えられる開放規制部を有する、請求項2に記載の熱処理システム
【請求項4】
前記開放規制部は、
前記容器支持部及び前記容器固定部のいずれか一方に設けられ、一対の曲面部と、該一対の曲面部の端部同士を接続する一対の平面部とを周面に備える回動軸と、
前記容器支持部及び前記容器固定部の他方に設けられ、前記回動軸が回転可能な丸穴と、前記丸穴に連設され、前記一対の平面部と係合可能な長孔とが形成された軸受部と、を有する、請求項3に記載の熱処理システム
【請求項5】
前記移動装置は、前記ロック状態と前記ロック解除状態を検出する検出部を有する、請求項3または4に記載の熱処理システム
【請求項6】
前記検出部は、隙間をあけて対向する投光部及び受光部を有し、
前記容器固定部の一部は、前記容器支持部に対する平行移動によって、前記投光部及び前記受光部の間から進退する、請求項5に記載の熱処理システム
【請求項7】
前記複数の孔部及び前記複数の爪部の少なくとも一部は、前記複数の収容部の連結方向において、前記複数の収容部の間に配置されている、請求項2~6のいずれか一項に記載の熱処理システム
【請求項8】
前記容器は、前記複数の収容部を連結する連結部を有し、
前記連結部には、前記複数の孔部の少なくとも一つと重なる位置に、前記爪部が通過可能な通過孔が設けられている、請求項2~7のいずれか一項に記載の熱処理システム
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱処理システムを備え、前記サンプルの細胞から核酸を抽出する、核酸抽出システム。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸抽出システムを備え、抽出した前記核酸を分析する、核酸分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、核酸抽出システム、核酸分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞から核酸を抽出するためには、細胞の膜構造を破壊(溶解)し、細胞の内容物を細胞外に放出させる必要がある。下記特許文献1には、液体を含むサンプルを収容した容器を100℃以上の高温で処理することにより、細胞から核酸を抽出する方法が開示されている。下記特許文献2には、ポリメラーゼ連鎖反応を行う際に、容器内のサンプルを沸点付近の温度に熱するため、容器蓋部に定盤を当接させ、容器蓋部を押え付ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5624487号公報
【文献】特開2011-19537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように100℃以上の高温で処理した場合、サンプルを収容する個々の容器には大きな内圧がかかる。そのため、処理装置は、個々の容器で発生する内圧の合力を押さえ込む必要がある。しかしながら、特許文献1及び2には、このような大きな内圧がかかる場合の耐圧構造については言及がない。内圧によって容器蓋部の一部に隙間が生じると、サンプルの蒸気が容器外部に漏れ、サンプル量が減少する。また、サンプルの蒸気が容器外部に漏れると、サンプルの蒸発による潜熱によりサンプル温度が想定した温度まで上昇せず、意図した反応が行われない。
【0005】
本発明は、上記事情点に鑑みてなされたものであり、サンプルの蒸気が容器外部に漏れることを抑制できる処理装置、核酸抽出システム、核酸分析システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る処理装置は、サンプルを収容した容器を熱処理する熱処理装置と、前記熱処理装置に対し前記容器を相対的に移動させる移動装置と、を備え、前記容器は、前記サンプルを収容する複数の収容部と、前記複数の収容部を閉塞する蓋部と、を有しており、前記移動装置は、前記複数の収容部を支持する容器支持部と、前記蓋部と重なり、前記容器支持部との間で前記容器を挟み込むと共に、前記容器支持部に対し開閉可能に設けられた容器固定部と、を有し、前記容器支持部及び前記容器固定部のいずれか一方には、複数の孔部が設けられ、前記容器支持部及び前記容器固定部の他方には、前記複数の孔部に挿入されて、当該複数の孔部の縁部に係合する複数の爪部が設けられている。
【0007】
(2)上記(1)に記載された処理装置であって、前記移動装置は、前記容器支持部と前記容器固定部とが相対的に平行移動することで、前記複数の爪部が前記複数の孔部の縁部に係合し、前記容器支持部に対して前記容器固定部が開放不能となるロック状態と、前記複数の爪部が前記複数の孔部の縁部から離間し、前記容器支持部に対して前記容器固定部が開放可能となるロック解除状態と、が切り替えられる開放規制部を有してもよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載された処理装置であって、前記開放規制部は、前記容器支持部及び前記容器固定部のいずれか一方に設けられ、一対の曲面部と、該一対の曲面部の端部同士を接続する一対の平面部とを周面に備える回動軸と、前記容器支持部及び前記容器固定部の他方に設けられ、前記回動軸が回転可能な丸穴と、前記丸穴に連設され、前記一対の平面部と係合可能な長孔とが形成された軸受部と、を有してもよい。
【0009】
(4)上記(2)または(3)に記載された処理装置であって、前記移動装置は、前記ロック状態と前記ロック解除状態を検出する検出部を有してもよい。
【0010】
(5)上記(4)に記載された処理装置であって、前記検出部は、隙間をあけて対向する投光部及び受光部を有し、前記容器固定部の一部は、前記容器支持部に対する平行移動によって、前記投光部及び前記受光部の間から進退してもよい。
【0011】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載された処理装置であって、前記蓋部は、前記収容部に挿入されて、前記収容部の内壁面に当接することにより封止を行う封止材を有し、前記熱処理装置は、前記収容部を挿入して加熱する挿入孔が形成された加熱ブロックを有し、前記封止材は、前記収容部が前記挿入孔に挿入された状態で、前記挿入孔の中に位置してもよい。
【0012】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載された処理装置であって、前記複数の孔部及び前記複数の爪部の少なくとも一部は、前記複数の収容部の連結方向において、前記複数の収容部の間に配置されていてもよい。
【0013】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載された処理装置であって、前記容器は、前記複数の収容部を連結する連結部を有し、前記連結部には、前記複数の孔部の少なくとも一つと重なる位置に、前記爪部が通過可能な通過孔が設けられていてもよい。
【0014】
(9)本発明の一態様に係る核酸抽出システムは、上記(1)~(8)のいずれかに記載された処理装置を備え、前記サンプルの細胞から核酸を抽出する。
【0015】
(10)本発明の一態様に係る核酸分析システムは、上記(9)に記載された核酸抽出システムを備え、抽出した前記核酸を分析する。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の一態様によれば、サンプルの蒸気が容器外部に漏れることを抑制できる処理装置、核酸抽出システム、核酸分析システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る核酸分析システムの概略図である。
図2】第1実施形態に係る核酸抽出システムの概略図である。
図3】第1実施形態に係る容器装着部が加熱ブロックに容器を挿入したときの平面図である。
図4図3に示す矢視IV-IV断面図である。
図5】第1実施形態に係る容器固定部ロック解除状態を示す断面図である。
図6】第1実施形態に係る容器固定部を開いた状態を示す断面図である。
図7】第2実施形態に係る容器装着部が加熱ブロックに容器を挿入したときの平面図である。
図8図7に示す矢視VIII-VIII断面図である。
図9図7に示す矢視IX-IX断面図である。
図10】第2実施形態に係る容器固定部のロック状態の判定制御のフローチャート図である。
図11】第2実施形態に係るタイマ割込みの処理のフローチャートである。
図12】第3実施形態に係る容器装着部が加熱ブロックに容器を挿入したときの平面図である。
図13図12に示す矢視XIII-XIII断面図である。
図14】第4実施形態に係る容器装着部が加熱ブロックに容器を挿入したときの平面図である。
図15図14に示す矢視XV-XV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る処理装置、核酸抽出システム、核酸分析システムについて詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0019】
〔概要〕
上述した特許文献2に記載されているポリメラーゼ連鎖反応の自動実施装置は、沸点付近の温度によりポリメラーゼ連鎖反応が行なわれる。したがって、容器内のサンプルの蒸気圧は大気圧以下であり、蒸気圧により容器の蓋部が開放される方向に働く圧力は1気圧以下であり、大きな力ではないため特許文献2に開示されている耐圧構造でも蓋部が解放されることは無い。一方で、特許文献1に記載されている核酸抽出方法では、沸点を超える温度に容器内のサンプルを加熱し、反応を行うため、1気圧以上の蒸気圧が発生し、容器蓋部が開放される方向に働く力を押え付ける必要がある。
【0020】
特に、細菌や真菌の一部では、細胞の膜構造を破壊(溶解)するためには、サンプルを120℃~180℃に加熱し反応を行う必要があり、これは2気圧~10気圧に相当するため耐圧構造を要する。特に近年、核酸を用いた分析の大規模化、高度化に伴い、複数の容器を列方向、あるいは行方向、あるいはその両方に配列し、複数のサンプルに対して同時に処理を行う場合がある。したがって、容器蓋部が開放される方向に働く力は増加傾向にある。
【0021】
このような耐圧構造を、特許文献2に開示されている、容器蓋部に定盤を当接させる構成で行うと、定盤が内圧により撓んでしまうため、曲がらないように厚く重くする必要がある。そうすると、装置の大型化を招き、装置の操作性を悪化させてしまう。一方で、十分な定盤の厚さを確保しなかった場合には、定盤が内圧により撓んでしまい、容器蓋部の一部が開放されるため、容器内のサンプルの蒸気が容器外部に漏れ、サンプル量が減少してしまう。また、容器蓋部の一部が開放され、容器内のサンプルの蒸気が外部に漏れ続けると、サンプルの蒸発による潜熱によりサンプル温度が想定した温度まで上昇せず、意図した反応が行われない。
【0022】
本発明の実施形態は、処理装置、核酸抽出システム、核酸分析システムにおいて、容器を支持する容器支持部と、容器支持部との間で容器蓋部を押え付ける容器固定部とを、複数の爪部で係合させ、容器の個々の収容部において発生する蒸気圧を、個々の爪部で受けさせる。また、爪部と爪部との間においては容器固定部が撓み得るが、爪部が複数あることで爪部と爪部との間の撓み距離(スパン)が短くなり、容器固定部全体の撓みが抑制される。これにより、サンプルの蒸気が容器外部に漏れることを抑制できる。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る核酸分析システム1の概略図である。
図1に示すように、核酸分析システム1は、菌回収システム2と、核酸抽出システム3と、ハイブリダイズ反応システム4と、検出システム5と、を備えている。
【0024】
菌回収システム2は、サンプル100から、サンプル100に含まれている菌(細菌や真菌など)を回収するシステムである。サンプル100は、例えば、飲料を対象とした検査であれば、製造した飲料や、当該飲料を製造するための水、または、当該飲料を製造する過程の液体などである。あるいは、サンプル100は、製造環境の菌の汚染の有無、汚染度合いを検査するために、検査環境をふき取った綿棒などから菌を回収した液体である場合もある。
【0025】
菌は、例えば、回収した液体に加圧あるいは減圧を加えることで、フィルタで濾過して回収することができる。フィルタは、例えば、細菌や真菌を回収する場合には、孔径が0.22μm~0.45μmのフィルタであるとよい。フィルタで菌を回収した後は、フィルタを菌が培養される培養液に浸し、菌が培養された培養液を、次工程(核酸抽出システム3)のサンプル100としてもよい。あるいは菌を遠心分離などで集めた液体、あるいは遠心分離などで集めた凝集体を溶解した液体を、次工程のサンプル100としてもよい。あるいはフィルタを入れた液体を振動させ、菌が懸濁した液を次工程のサンプル100としてもよい。
【0026】
核酸抽出システム3は、サンプル100中の細胞の膜構造を破壊(溶解)し、細胞の核酸を抽出するシステムである。なお、核酸を抽出したサンプル100に、抽出した核酸と反応する他の核酸が含まれた液体を混ぜてもよい。また、当該他の核酸は、後述する検出工程(検出システム5)にて検出するために、特定の条件で蛍光や発光や消光作用を有する部位が付与された核酸であってもよい。これらは核酸抽出システム3にて処理をする前のサンプル100に混ぜても良いし、核酸抽出システム3にて処理をした後のサンプル100に対して混ぜても良い。
【0027】
ハイブリダイズ反応システム4は、サンプル100中の核酸にハイブリダイズ反応をさせるシステムである。なお、この工程にて、サンプル100は、例えば60℃に加熱されると共に撹拌されることにより、上述の他の核酸と合致するハイブリダイズ反応を行う。この反応にて、例えば、上述の他の核酸に付与した特定の条件で蛍光や発光や消光作用を有する部位が、サンプル100中の核酸と反応することで、蛍光や発光や消光作用が発現する。
【0028】
なお、上述の他の核酸の構造を、特定の核酸と反応するように設計することにより、例えば、サンプル100中の特定の細菌や真菌などが持つ核酸とのみ反応させることができる。つまり、ハイブリダイズ反応システム4の処理では、当該特定の核酸と反応する他の核酸を用いることにより、サンプル100の中に特定の細菌や真菌などが含まれている時のみ、他の核酸に付与した蛍光や発光や消光作用を発現するようにすることができる。
【0029】
検出システム5は、ハイブリダイズ反応システム4で処理したサンプル100において発現した蛍光や発光や消光作用の有無、その程度などを検出する。検出システム5は、例えば、サンプル100の核酸で発現した蛍光作用を、励起レーザー光にて励起し、励起後の蛍光を高感度カメラにて検出する。
【0030】
あるいは、検出システム5は、サンプル100の核酸で発現した発光作用を、高感度カメラにて検出する。あるいは、検出システム5は、サンプル100の核酸で発現した消光作用を、消光作用を付与した部位の近傍に付与した蛍光や発光が消光される程度を高感度カメラにて検出する。この検出方法に関しては、例えば、特開2020-74726号公報に記載されているような方法を採用してもよい。
【0031】
核酸分析システム1は、上述のような一連のシステムを用いることにより、サンプル100の中に特定の菌(細菌や真菌など)が含まれているか、またはその濃度を分析する。
【0032】
図2は、第1実施形態に係る核酸抽出システム3の概略図である。
図2に示すように、核酸抽出システム3には、熱処理装置10と、移動装置20と、を備える処理装置6が設けられている。熱処理装置10は、加熱ブロック11と、冷却ブロック12と、を備えている。移動装置20は、第1アクチュエータ21と、第2アクチュエータ22と、容器装着部23と、を備えている。
【0033】
なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。X軸方向は、加熱ブロック11及び冷却ブロック12が並ぶ第1の水平方向とする。Z軸方向は、重力方向とする。Y軸方向は、図2において図示しないが、後述する図3及び図4などに図示するように、上記X軸方向及び上記Z軸方向と直交する第2の水平方向とする。
【0034】
加熱ブロック11は、上述のサンプル100を収容した容器30(図3参照)を加熱する。冷却ブロック12は、加熱ブロック11によって加熱された容器30を冷却する。容器装着部23は、容器30を移動装置20に装着する。第2アクチュエータ22は、容器装着部23をZ軸方向に移動させる。第1アクチュエータ21は、第2アクチュエータ22をX軸方向に移動させる。
【0035】
移動装置20は、容器装着部23に装着した容器30を、加熱ブロック11、冷却ブロック12の順に移動させる。このように、容器30を加熱ブロック11から冷却ブロック12に移動させ、容器30及び容器30に封入されたサンプル100を加熱し、冷却することで、核酸抽出反応を行うことができる。
【0036】
なお、移動装置20は、容器30に対し、熱処理装置10(加熱ブロック11、冷却ブロック12)側を移動させる構成であっても構わない。また、第1アクチュエータ21が、直動ではなく水平旋回する場合、加熱ブロック11、冷却ブロック12は、第1アクチュエータ21の旋回軸に対し同一半径上に配置されていても構わない。
【0037】
図3は、第1実施形態に係る容器装着部23が加熱ブロック11に容器30を挿入したときの平面図である。図4は、図3に示す矢視IV-IV断面図である。
図3に示すように、容器装着部23には、複数の容器30がY軸方向に間隔をあけて装着されている。
【0038】
図4に示すように、加熱ブロック11には、容器30の一部が挿入される挿入孔110が形成されている。挿入孔110は、加熱ブロック11の上面11aに複数形成されている。加熱ブロック11は、例えば、熱伝導率の高い銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属材であるとよい。加熱ブロック11は、例えば、図示しない電熱ヒーターやペルチェ素子、図示しないブロック内流路を流れる熱媒体によって加熱される。なお、図2に示す冷却ブロック12は、ブロック内流路を流れる熱媒体が冷媒である以外は、加熱ブロック11と同様の構成となっている。
あるいは、冷却ブロック12は、冷媒の代わりに、外気によって常温で冷却されてもよい。また、冷却ブロック12は、常温の冷却が促進されるようにその一部に図示しないフィンを設けてもよいし、図示しないフィン部材と接触していてもよい。あるいは、冷却ブロック12は、図示しないペルチェ素子により冷却されてもよい。
【0039】
図4に示すように、容器30は、容器本体31と、蓋体32と、を備えている。容器本体31は、サンプル100を収容する複数の収容部310と、複数の収容部310を連結させる連結部311と、を備えている。収容部310は、有底筒状に形成され、半球状の底部310aと、一定の外径でZ軸方向に延びる胴部310bと、を備えている。なお、底部310aは、例えば、逆さ円錐状に形成されていても構わない。また、底部310aは、逆さ円錐状の先端が半球状などの曲面となっていても構わない。また、胴部310bは、一定の外径ではなく、Z軸方向下部に向かうに従って外径が僅かに小さなる傾斜形状を有してもよい。
【0040】
挿入孔110は、複数の収容部310が挿入可能な数及び配列で加熱ブロック11の上面11aに形成されている。挿入孔110の内壁面は、収容部310の上端部を除く挿入部分と接触または近接している。なお、挿入孔110の開口縁部には、収容部310との接触により収容部310を傷付けないように、C面取りやR面取りなどの面取りを施してもよい。複数の収容部310は、図3に示すように、X軸方向に一列に並んでいる。連結部311は、X軸方向に延びる平板状に形成され、複数の収容部310の上端部の間を連結している。
【0041】
図4に示すように、蓋体32は、X軸方向に延びて複数の収容部310の上端開口部を覆う蓋部320と、複数の収容部310の上端開口部に挿入される複数の封止部321と、を備えている。蓋部320は、平面視で、連結部311と略同じ大きさの平板形状を有する。複数の封止部321は、蓋部320の下面から下方に突設された複数の凸部である。封止部321の下端部の周面には、封止材322が配置される環状溝が形成されている。封止材322は、環状に形成され、収容部310に挿入されて、収容部310の内壁面に当接することにより封止を行う。
【0042】
封止材322は、収容部310あるいは蓋部320の少なくともいずれかよりも弾性率の低い材料であることが望ましい。弾性率が低いことで封止材322が変形することにより、封止部321が収容部310の上端開口部に、より小さな力で挿入できるようになる。また、弾性率が低いことで、封止材322が封止部321の下端部の周面に設けられた環状溝と収容部310の隙間を確実に埋め、漏れを防止することができる。このような封止材322の材料として、ニトリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、パーフロロエラストマーなどを用いることができる。
【0043】
容器装着部23は、複数の収容部310を吊下げた状態で、連結部311を支持する容器支持部41と、蓋部320と重なり、容器支持部41との間で容器30を挟み込むと共に、容器支持部41に対し開閉可能に設けられた容器固定部42と、を備えている。容器支持部41は、複数の貫通孔410を有する格子状に形成されている。複数の貫通孔410は、複数の収容部310が挿入可能な数及び配列で容器支持部41に形成されている。
【0044】
容器支持部41には、複数の貫通孔410に隣接する位置に、容器固定用の複数の孔部411が設けられている。複数の孔部411は、図3に示すように、平面視で矩形状に形成されている。複数の孔部411は、複数の収容部310(複数の貫通孔410)と一対一で容器支持部41に形成されている。複数の孔部411は、X軸方向に列を成し、Y軸方向に間隔をあけて複数列で形成されている。収容部310の列は、孔部411の列の間に配置されている。つまり、収容部310(貫通孔410)の両側には、孔部411が配置されている。
【0045】
容器固定部42は、平面視で、容器支持部41と略同じ大きさの平板形状を有する。図4に示すように、容器固定部42には、容器支持部41の複数の孔部411に挿入されて、当該複数の孔部411の縁部411aに係合する複数の爪部420が設けられている。複数の爪部420は、容器固定部42の下面からZ軸方向に垂設されると共に、その下端部がY軸方向に屈曲し、容器支持部41の下面において、孔部411の縁部411aと係合する。複数の爪部420は、複数の孔部411に挿入可能な数及び配列で容器固定部42に形成されている。
【0046】
容器装着部23は、容器支持部41に対し容器固定部42がY軸方向に平行移動することで、容器固定部42が開放不能となるロック状態と、容器固定部42が開放可能となるロック解除状態と、を切り替えられる開放規制部50を備えている。ここで、ロック状態とは、図4に示すように、複数の爪部420が複数の孔部411の縁部411aに係合し、容器支持部41に対して容器固定部42が開放不能となった状態をいう。
【0047】
図5は、第1実施形態に係る容器固定部42のロック解除状態を示す断面図である。図6は、第1実施形態に係る容器固定部42を開いた状態を示す断面図である。
ロック解除状態とは、図5に示すように、複数の爪部420が複数の孔部411の縁部411aから離間し、容器支持部41に対して容器固定部42が開放可能となった状態をいう。ロック解除状態の容器固定部42は、図6に示すように持ち上げることができ、容器支持部41に対し容器30を着脱できるようになる。
【0048】
開放規制部50は、図4図6に示すように、容器固定部42に設けられた回動軸51と、容器支持部41に設けられた軸受部52と、を備えている。回動軸51は、一対の曲面部51aと、一対の曲面部51aの端部同士を接続する一対の平面部51bとを周面に備えている。つまり、回動軸51は、断面視で小判形あるいは俵形に形成されている。一対の平面部51bは、図4及び図5に示すように、容器固定部42が閉じた状態のとき、Y軸方向に平行に延びている。
【0049】
軸受部52は、回動軸51が回転可能な丸穴52aと、丸穴52aに連設され、回動軸51の一対の平面部51bと係合可能な長孔52bと、を備えている。つまり、軸受部52には、断面視で達磨形の穴が形成されている。長孔52bのZ軸方向の幅は、丸穴52aの直径未満である。また、長孔52bのZ軸方向の幅は、容器固定部42が閉じた状態のとき、回動軸51の一対の平面部51bが進入可能な寸法とされている。長孔52bは、爪部420の屈曲した先端部と同じ方向に、丸穴52aからY軸方向に延びている。
【0050】
上記構成の容器装着部23は、図4に示すように、容器支持部41と容器固定部42とからなり、容器本体31及び蓋体32を挟み込むことできる。容器固定部42には、爪部420が複数設けられており、容器支持部41には、爪部420と合致する位置に孔部411が複数設けられている。容器支持部41が容器固定部42に対してY軸方向にスライド移動すると、複数の爪部420が複数の孔部411の縁部411aに係合し、容器固定部42が容器支持部41に対して開放不能となり、容器30が固定される。
【0051】
この容器30が加熱されると、個々の収容部310においてサンプル100が蒸発し、例えば、水が主成分の1つであるサンプル100である場合は、容器30を120℃に加熱すると2気圧程、180℃に加熱すると10気圧程の内圧が生じる。容器装着部23は、個々の収容部310に発生する内圧を、当該収容部310に隣接する爪部420において個々に受ける。これにより、容器装着部23が容器30から受ける力が分散される。したがって、小型の爪部420や、薄い容器固定部42、容器支持部41であっても、蓋体32が開放される方向に働く力を受けることができ、処理装置6を簡易且つ小型に構成することが可能となる。
【0052】
爪部420と爪部420との間においては容器固定部42が撓み得るが、爪部420が複数あることで、爪部420と爪部420との間の撓み距離(スパン)が短くなり、容器固定部42全体の撓みが抑制される。これにより、蓋体32が収容部310から開放され難くなり、サンプル100の蒸気が容器30の外部に漏れることを抑制できる。すなわち、収容部310は、例えば、樹脂の射出成形により製作した場合、胴部310bは垂直に製作しようとしても、わずかながらZ軸方向で蓋体32に近い方向に開口するようにテーパーが生じる。そこで、蓋体32が収容部310から開口する方向に移動すると、蓋体32と収容部310の間隙は大きくなり、蒸気が漏れやすくなる。したがって、上述のような構成とすることにより、簡易且つ小型な構造にてサンプル100の蒸気圧による力を受けることができ、容器固定部42の撓みによるサンプル100の蒸気の漏れを抑制できる。
【0053】
したがって、上述した第1実施形態の処理装置6は、サンプル100を収容した容器30を熱処理する熱処理装置10と、熱処理装置10に対し容器30を相対的に移動させる移動装置20と、を備える。容器30は、サンプル100を収容する複数の収容部310と、複数の収容部310を閉塞する蓋部320と、を有している。移動装置20は、複数の収容部310を支持する容器支持部41と、蓋部320と重なり、容器支持部41との間で容器30を挟み込むと共に、容器支持部41に対し開閉可能に設けられた容器固定部42と、を有している。そして、容器支持部41には、複数の孔部411が設けられ、容器固定部42には、複数の孔部411に挿入されて、当該複数の孔部411の縁部411aに係合する複数の爪部420が設けられている。この構成によれば、サンプル100の蒸気が容器30の外部に漏れることを抑制できる処理装置6、当該処理装置6を備える核酸抽出システム3、及び当該核酸抽出システム3を備える核酸分析システム1が得られる。
なお、複数の孔部411は、容器支持部41でなく容器固定部42(すなわち容器支持部41及び容器固定部42のいずれか一方)に設けられ、また、複数の爪部420は、容器固定部42ではなく容器支持部41(すなわち容器支持部41及び容器固定部42の他方)に設けられていても構わない。
【0054】
また、第1実施形態では、移動装置20は、容器支持部41と容器固定部42とが相対的に平行移動することで、複数の爪部420が複数の孔部411の縁部411aに係合し、容器支持部41に対して容器固定部42が開放不能となるロック状態と、複数の爪部420が複数の孔部411の縁部411aから離間し、容器支持部41に対して容器固定部42が開放可能となるロック解除状態と、が切り替えられる開放規制部50を有する。この構成によれば、使用者は、容器支持部41と容器固定部42とを相対的に平行移動させることでロック状態とロック解除状態とを切り替えることができ、容易且つ短時間で容器30の交換を行うことができる。
【0055】
また、第1実施形態では、開放規制部50は、容器固定部42に設けられ、一対の曲面部51aと、該一対の曲面部51aの端部同士を接続する一対の平面部51bとを周面に備える回動軸51と、容器支持部41に設けられ、回動軸51が回転可能な丸穴52aと、丸穴52aに連設され、一対の平面部51bと係合可能な長孔52bとが形成された軸受部52と、を有する。この構成によれば、図4に示すロック状態から、容器固定部42を容器支持部41に対してスライド移動させることにより、図5に示すように、容器固定部42の爪部420は、容器支持部41の孔部411の縁部411aから離れる。爪部420が、孔部411を通過できる位置に移動すると、図6に示すように、回動軸51を中心に容器固定部42を開くことが可能となる。更に容器固定部42を回動させ、容器支持部41を略垂直の状態まで移動させると、容器30の直上には障害物が無い状態にすることができ、サンプル100の交換を迅速に行うことが可能となる。
なお、回動軸51は、容器固定部42ではなく容器支持部41(すなわち容器支持部41及び容器固定部42のいずれか一方)に設けられ、また、軸受部52は、容器支持部41でなく容器固定部42(すなわち容器支持部41及び容器固定部42の他方)に設けられていても構わない。
【0056】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0057】
図7は、第2実施形態に係る容器装着部23が加熱ブロック11に容器30を挿入したときの平面図である。図8は、図7に示す矢視VIII-VIII断面図である。図9は、図7に示す矢視IX-IX断面図である。
図8に示すように、第2実施形態に係る封止材322は、容器30の収容部310が挿入孔110に挿入された状態で、挿入孔110の中に位置する。
【0058】
封止材322は、容器支持部41の厚み及び爪部420の長さを考慮し、加熱ブロック11の上面11a以下あるいは冷却ブロック12の上面以下に位置している。この構成によれば、加熱、および冷却による核酸抽出反応を行う間、収容部310内のサンプル100及びその蒸気が存在できる領域を、加熱ブロック11あるいは冷却ブロック12の内部に収めるようにすることができる。そのため、収容部310内のサンプル100及びその蒸気を加熱ブロック11あるいは冷却ブロック12の温度により近づけることが可能となる。これにより、収容部310に封入されたサンプル100の温度を精密に変化させることが可能となり、核酸抽出反応の制御が容易になる。
【0059】
このように、第2実施形態では、蓋部320は、収容部310に挿入されて、収容部310の内壁面に当接することにより封止を行う封止材322を有し、熱処理装置10は、収容部310を挿入して加熱する挿入孔110が形成された加熱ブロック11(冷却ブロック12)を有し、封止材322は、収容部310が挿入孔110に挿入された状態で、挿入孔110の中に位置する。この構成によれば、容器30に封入されたサンプル100の温度を精密に制御することが可能となり、核酸抽出が容易になる。
【0060】
また、第2実施形態に係る移動装置20は、図7及び図9に示すように、容器装着部23における容器30のロック状態とロック解除状態を検出する検出部70を備えている。検出部70は、図7に示すように、容器装着部23が取り付けられた容器支持部41に設けられている。なお、容器支持部41はベース部60を介して、図2に示す第2アクチュエータ22に連設され、容器装着部23と共にX軸方向およびZ軸方向に移動する。
【0061】
検出部70は、図9に示すように、隙間をあけて対向する投光部71及び受光部72を有している。そして、容器固定部42の一部(図9の例では回動軸51)は、容器支持部41に対する平行移動によって、投光部71及び受光部72の間から進退する。例えば、回動軸51が、投光部71及び受光部72の間の検出光を遮らない場合、容器固定部42はロック状態である。また、回動軸51が、投光部71及び受光部72の間の検出光を遮る場合、容器固定部42はロック解除状態である(図9において二点鎖線で示す)。
【0062】
図10は、第2実施形態に係る容器固定部42のロック状態の判定制御のフローチャートである。
図10に示すように、核酸抽出処理を開始する処理開始信号が入力されると、先ず、検出部70によって容器固定部42のロック状態を確認する(ステップS1)。容器固定部42がロック状態である場合(ステップS1がYESの場合)、処理を開始する(ステップS2)。
【0063】
一方、容器固定部42がロック状態でない場合(ステップS1がNOの場合)、容器固定部42が未ロックであるとして(ステップS5)、処理せず終了する。この場合、容器固定部42が未ロックであることを、処理装置6の操作画面や音や光などで使用者に報知するとよい。
【0064】
処理が開始(ステップS2)された場合、タイマ割込みを開始する(ステップS3)。タイマ割込みを開始すると、処理が終了するまで、所定間隔で後述する割込み処理を開始する信号を出力する。その後、処理が実施され(ステップS4)、タイマ割込みで問題がなければ、処理が正常に終了する。このように、容器固定部42がロック状態でない場合は処理を開始させず、例えば、使用者が処理開始を指示しても、アクチュエータの動作を開始させない。これにより、ロックが不十分な状態で処理を開始され、処理が失敗してしまうことを防止することができる。
【0065】
図11は、第2実施形態に係るタイマ割込みの処理のフローチャートである。
図11に示すように、所定間隔で前述の割込み処理を開始する信号を受けると、所定間隔割込みを開始し、検出部70によって容器固定部42のロック状態を確認する(ステップS31)。容器固定部42がロック状態である場合(ステップS31がYESの場合)、処理を継続する(ステップS32)。なお、上述の所定間隔割込み処理は、処理期間中に前述の所定間隔で割込み処理を開始する信号を受ける度に行う。
【0066】
一方、容器固定部42がロック状態でない場合(ステップS31がNOの場合)、容器固定部42が処理中に未ロックになったとして(ステップS33)、異常終了として処理を終了する。この場合、容器固定部42が処理中に未ロックになったことを、処理装置6の操作画面や音や光などで使用者に報知するとよい。
【0067】
以上のように処理中も、容器固定部42がロックされている状態が継続しているかを確認し、容器固定部42のロックが外れた場合には処理を停止し、異常が発生したことを報知する。これにより、処理中にロックが外れて処理が失敗した可能性があることを使用者に認知させることが可能となる。
【0068】
このように、第2実施形態では、容器固定部42のロック状態とロック解除状態を検出する検出部70を有し、検出部70は、隙間をあけて対向する投光部71及び受光部72を有し、容器固定部42の一部は、容器支持部41に対する平行移動によって、投光部71及び受光部72の間から進退する。この構成によれば、検出部70によって容器固定部42が確実に容器支持部41に爪部420によってロックされていることを検出することが可能となる。
【0069】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0070】
図12は、第3実施形態に係る容器装着部23が加熱ブロック11に容器30を挿入したときの平面図である。図13は、図12に示す矢視XIII-XIII断面図である。
図12に示すように、第3実施形態に係る容器30は、収容部310が列方向(X軸方向)だけでなく行方向(Y軸方向)にも配列され、それらが連結部311によって連結されている。
【0071】
連結部311には、複数の孔部411の少なくとも一つ(容器支持部41におけるY軸方向両端部の孔部411の列を除く孔部411)と重なる位置に、爪部420が通過可能な通過孔311aが設けられている。この構成によれば、収容部310が列方向および行方向に連結された面構造の容器30であっても、容器支持部41と容器固定部42を爪部420によってロックすることが可能となる。
【0072】
収容部310が列方向および行方向に連結された容器30は、多数のサンプル100を処理することが可能となる。核酸を用いた分析の大規模化、高度化に伴い、多数の核酸抽出、および核酸抽出を用いた分析を行いたいニーズに対し、このような面構造の容器30を用いることで、容器30内のサンプル100が外部に漏れることなく、確実に核酸抽出処理を行うことができる。
【0073】
また、第3実施形態では、複数の孔部411及び複数の爪部420の少なくとも一部((Y軸方向両端部の孔部411及び爪部420の列を除く孔部411及び爪部420)は、複数の収容部310の連結方向において、複数の収容部310の間に配置されている。この構成によれば、複数の収容部310の間で容器固定部42の撓みを効果的に抑制できる。このように、孔部411及び爪部420は、収容部310の近くに配置されることが望ましい。更には、収容部310を跨ぐように少なくとも1対の孔部411及び爪部420が設けられることが望ましい。また更には収容部310の数よりも多い孔部411及び爪部420が設けられることが望ましい。なお、収容部310の間隔が狭い場合、例えば、孔部411及び爪部420と、収容部310とが、列方向(X軸方向)において、千鳥配置されていてもよい。
【0074】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0075】
図14は、第4実施形態に係る容器装着部23が加熱ブロック11に容器30を挿入したときの平面図である。図15は、図14に示す矢視XV-XV断面図である。
図15に示すように、第4実施形態に係る容器支持部41は、第2アクチュエータ22に連設されたベース部60上に配置されている。ベース部60には、容器支持部41の位置を水平方向において一定の範囲に規制する規制部として、規制ピン82が設けられている。また、容器支持部41には、規制部として、規制ピン82が挿入される規制孔81が設けられている。
【0076】
なお、図示は省略するが、ベース部60には更に、容器支持部41のZ軸方向の移動を規制する規制部を設けても良い。これは、例えば、ベース部60から規制を行う部位における容器支持部41の厚さよりも離間した板を、ベース部60上に設け、容器支持部41は、その離間した間を板との間に内包される構造としてもよい。つまり、容器支持部41は、ベース部60と板の離間した間隙量から厚さを引いた量だけZ軸方向に移動することが可能である。また、容器支持部41は、ベース部60および離間した板との間の少なくともどちらかに空隙を有するため、X軸方向、Y軸方向には移動することが可能である。なお、当該Z軸方向の規制部は、規制ピン82の上端部に設けられた板体であってもよい。また、当該板体の代わりに、規制ピン82が、規制孔81よりも大きいヘッド径を有するボルトなどであっても構わない。
【0077】
容器支持部41には、加熱ブロック11と位置決めする位置決め部90として、位置決めピン92が設けられている。加熱ブロック11には、位置決め部90として、位置決めピン92が挿入される位置決め孔91が設けられている。なお、図2に示す冷却ブロック12も同様の構成となっている。
【0078】
容器装着部23は、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22によって移動し、加熱ブロック11や冷却ブロック12の直上の位置へと相対移動し、その後、下方向に移動することにより、容器30を加熱ブロック11や冷却ブロック12に設けられた挿入孔110に挿入する。
【0079】
その際に、まず、容器支持部41の位置決めピン92が、加熱ブロック11や冷却ブロック12の位置決め孔91に挿入され、その相対位置が決められる。ここで、容器支持部41は、ベース部60に対して、規制ピン82が規制孔81に内包される範囲において、その相対位置を微調整できる。
【0080】
これにより、加熱ブロック11や冷却ブロック12がその温度変化により熱膨張を起こし、その相対位置が多少変化しても、確実に容器30を加熱ブロック11や冷却ブロック12の挿入孔110へ挿入することが可能となる。また、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22の精度を多少落としても確実に容器30を加熱ブロック11や冷却ブロック12の挿入孔110へ挿入することを可能となる。したがって、高精度のアクチュエータを用いる必要がなく、装置構成を簡易にすることができる。
【0081】
位置決め孔91は、図15に示すように、その上端開口部が広がるように傾斜面91a(テーパー面)を有してもよい。これにより位置決め孔91は孔径d10から、上端開口部においては孔径がd1と広がる。
【0082】
さらに、位置決めピン92は、その下端部(先端部)が先細りになるように、逆さ円錐台状に形成されていてもよい。これにより、位置決めピン92はピン径d9が、その下端部ではピン径d8と狭まる。
【0083】
ここで、位置決めピン92と位置決め孔91のそれぞれの中心の水平方向のズレが、下式(1)よりも小さければ、位置決めピン92は位置決め孔91に入ることが可能となる。すなわち、位置決めピン92は、少なくとも位置決め孔91の傾斜面91aを滑り落ちることができる。
(d1-d8)/2 ・・・(1)
【0084】
ところで、ベース部60の上を容器支持部41が相対移動できる範囲は、規制ピン82が規制孔81の中を動くことができる範囲である。つまり、規制ピン82と規制孔81のそれぞれの中心は、規制ピン82のピン径d3、規制孔81の孔径d2としたとき、下式(2)だけ水平方向にズレることが可能である。
(d2-d3)/2 ・・・(2)
【0085】
つまり、少なくとも規制孔81、規制ピン82、位置決め孔91、位置決めピン92の関係は、下式(4)を満たす必要がある。
(d2-d3)/2<(d1-d8)/2 ・・・(3)
【0086】
さらに、アクチュエータの位置精度をda、温度変化による熱望量による位置ズレ量をdtとすると、下式(4)を満たす必要がある。
(d2-d3)/2+da+dt<(d1-d8)/2 ・・・(4)
【0087】
なお、位置決め孔91、位置決めピン92が傾斜面91aや先細り形状を有さない場合、それぞれ上式(1)~(4)において、d1をd10、d8をd9とすればよい。
【0088】
ところで、収容部310は、加熱ブロック11あるいは冷却ブロック12に設けられた挿入孔110に入る前に、容器支持部41と、加熱ブロック11あるいは冷却ブロック12との相対位置が定まっていることが望ましい。
【0089】
そこで、位置決めピン92の長さd6は、位置決めピン92の先細りになった下端部の長さd7、位置決め孔91の傾斜面91aの高さd4、挿入孔110の深さd5とすると、下式(5)を満たすことが望ましい。
d6-(d7+d4)>d5 ・・・(5)
【0090】
上式(5)の関係を満たすことで、収容部310が挿入孔110に入る前に、位置決めピン92と位置決め孔91によって、加熱ブロック11あるいは冷却ブロック12と容器支持部41との相対位置が定まる。このため、収容部310が挿入孔110に確実に挿入されるようになる。
【0091】
なお、位置決め孔91、位置決めピン92が傾斜面91aや先細り形状を有さない場合、上式(5)においてd7あるいはd4をゼロとすればよい。
【0092】
第4実施形態に係る構成は、上述した径関係、位置関係に限定されるものではなく、同様にベース部60の上を容器支持部41が可動できる範囲が、位置決めピン92が位置決め孔91に入ることができる幾何関係となる構成であればよい。
【0093】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0094】
なお、上述した実施形態に係る処理装置の一部又は全部は、以下のように付記することができる。
【0095】
(付記1)
容器装着部と、
前記容器装着部を移動させるアクチュエータと、を備え、
前記容器装着部は、
複数の挿入孔が形成された容器支持部と、
前記容器支持部と重なり、前記複数の挿入孔の少なくとも一部を開放可能に覆う容器固定部と、を有し、
前記容器支持部には、前記複数の挿入孔の少なくとも一部と隣接する位置に、複数の孔部が設けられ、
前記容器固定部には、前記複数の孔部に挿入されて、当該複数の孔部の縁部に係合する複数の爪部が設けられている、処理装置。
【0096】
(付記2)
サンプルを収容可能な収容部と、前記収容部を閉塞する蓋部と、を有する容器と、
前記容器の前記収容部を挿入して熱処理する挿入孔が設けられた熱処理装置と、を備え、
前記蓋部は、前記収容部に挿入されて、前記収容部の内壁面に当接することにより封止を行う封止材を有し、
前記封止材は、前記収容部が前記挿入孔に挿入された状態で、前記挿入孔の中に位置する、熱処理システム。
【0097】
上記付記2における熱処理システムは、上述した熱処理装置10及び容器30を含むシステムである。熱処理システムにおける熱処理装置10は、上述した加熱ブロック11及び冷却ブロック12の少なくとも一方を含む。仮に、収容部310内のサンプル100及びその蒸気が存在できる領域の一部が、加熱ブロック11あるいは冷却ブロック12の外部にある場合、蒸気の凝集等の状態変化によって熱エネルギーが奪われ、サンプル100の温度が変化する虞がある。一方で、付記2の構成によれば、収容部310内のサンプル100及びその蒸気が存在できる領域を、加熱ブロック11あるいは冷却ブロック12の内部に収めるようにすることができる。そのため、収容部310内のサンプル100及びその蒸気を加熱ブロック11あるいは冷却ブロック12の温度により近づけることが可能となる。これにより、収容部310に封入されたサンプル100の温度を精密に変化させることが可能となり、例えば核酸抽出反応の制御が容易になる。
【符号の説明】
【0098】
1 核酸分析システム
3 核酸抽出システム
6 処理装置
10 熱処理装置
11 加熱ブロック
20 移動装置
30 容器
41 容器支持部
42 容器固定部
50 開放規制部
51 回動軸
51a 曲面部
51b 平面部
52 軸受部
52a 丸穴
52b 長孔
70 検出部
71 投光部
72 受光部
100 サンプル
110 挿入孔
310 収容部
311 連結部
311a 通過孔
320 蓋部
322 封止材
411 孔部
411a 縁部
420 爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15