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特許7327362車載用のバックアップ制御装置及び車載用のバックアップ装置
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  • 特許-車載用のバックアップ制御装置及び車載用のバックアップ装置 図1
  • 特許-車載用のバックアップ制御装置及び車載用のバックアップ装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】車載用のバックアップ制御装置及び車載用のバックアップ装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230808BHJP
   H02J 9/00 20060101ALI20230808BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H02J7/00 302B
H02J7/00 302C
H02J7/00 A
H02J9/00 120
B60R16/033 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020195784
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084124
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2022-07-25
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】信藤 皓
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127112(JP,A)
【文献】特開2019-176629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-17/02
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と蓄電部とを備えた車載用電源システムに用いられ、前記電源部から電力が供給される導電路の電圧が閾値未満となる異常状態において前記蓄電部からの電力に基づいて少なくとも複数の対象負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部の放電を行う放電回路と、
前記放電回路を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記異常状態のときに前記複数の対象負荷に同時に電力を供給する場合の前記蓄電部の電圧条件として定められる重畳可能電圧又は前記複数の対象負荷のいずれかに対応付けて定められる供給完了電圧のうちいずれかを遮断閾値として設定し、
前記異常状態において前記蓄電部の充電電圧が前記遮断閾値以下に達したことを条件として、前記複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を遮断又は遅延し前記複数の対象負荷の同時動作を禁止し、
更に、前記制御部は、前記異常状態のときに前記重畳可能電圧又は前記供給完了電圧のうち小さい方を前記遮断閾値として設定する
車載用のバックアップ制御装置。
【請求項2】
電源部と蓄電部とを備えた車載用電源システムに用いられ、前記電源部から電力が供給される導電路の電圧が閾値未満となる異常状態において前記蓄電部からの電力に基づいて少なくとも複数の対象負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部の放電を行う放電回路と、
前記放電回路を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記異常状態のときに前記複数の対象負荷に同時に電力を供給する場合の前記蓄電部の電圧条件として定められる重畳可能電圧又は前記複数の対象負荷のいずれかに対応付けて定められる供給完了電圧のうちいずれかを遮断閾値として設定し、
前記異常状態において前記蓄電部の充電電圧が前記遮断閾値以下に達したことを条件として、前記複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を遮断又は遅延し前記複数の対象負荷の同時動作を禁止し、
前記複数の対象負荷は、第1対象負荷と第2対象負荷とを含み、
前記制御部は、前記蓄電部の充電電圧が前記第2対象負荷に対応して定められた前記供給完了電圧よりも大きく且つ前記重畳可能電圧以下である場合において、前記第1対象負荷が動作済状態ではなく且つ前記第1対象負荷の動作を行う条件が成立している場合、前記第2対象負荷への電力の供給を遮断又は遅延する
車載用のバックアップ制御装置。
【請求項3】
電源部と蓄電部とを備えた車載用電源システムに用いられ、前記電源部から電力が供給される導電路の電圧が閾値未満となる異常状態において前記蓄電部からの電力に基づいて少なくとも複数の対象負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部の放電を行う放電回路と、
前記放電回路を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記異常状態のときに前記複数の対象負荷に同時に電力を供給する場合の前記蓄電部の電圧条件として定められる重畳可能電圧又は前記複数の対象負荷のいずれかに対応付けて定められる供給完了電圧のうちいずれかを遮断閾値として設定し、
前記異常状態において前記蓄電部の充電電圧が前記遮断閾値以下に達したことを条件として、前記複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を遮断又は遅延し前記複数の対象負荷の同時動作を禁止し、
更に、前記制御部は、前記対象負荷の消費電力と予定動作回数とに基づいて決定される必要エネルギー量と、前記放電回路からの出力電力と、前記蓄電部の静電容量と、前記異常状態が発生した際の前記蓄電部の充電電圧と、に基づき、前記対象負荷の前記供給完了電圧を算出する
車載用のバックアップ制御装置。
【請求項4】
電源部と蓄電部とを備えた車載用電源システムに用いられ、前記電源部から電力が供給される導電路の電圧が閾値未満となる異常状態において前記蓄電部からの電力に基づいて少なくとも複数の対象負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部の放電を行う放電回路と、
前記放電回路を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記異常状態のときに前記複数の対象負荷に同時に電力を供給する場合の前記蓄電部の電圧条件として定められる重畳可能電圧又は前記複数の対象負荷のいずれかに対応付けて定められる供給完了電圧のうちいずれかを遮断閾値として設定し、
前記異常状態において前記蓄電部の充電電圧が前記遮断閾値以下に達したことを条件として、前記複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を遮断又は遅延し前記複数の対象負荷の同時動作を禁止し、
更に、前記制御部は、予め定められる下限電圧と、前記複数の対象負荷が所定時間同時に動作した場合に予想される突入電流の発生による前記蓄電部での電圧低下量と、前記複数の対象負荷が同時に動作する場合の前記蓄電部の内部抵抗による電圧降下とを加算した加算値に基づいて前記重畳可能電圧を設定する
車載用のバックアップ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記異常状態において前記蓄電部の充電電圧が前記遮断閾値以下に達したことを条件として、前記複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を遮断し前記複数の対象負荷の同時動作を禁止する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車載用のバックアップ制御装置と、
前記蓄電部と、
を備える車載用のバックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用のバックアップ制御装置及び車載用のバックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主電源の電圧低下時に、蓄電部から負荷に電力供給する蓄電装置が開示されている。この蓄電装置の制御回路は、主電源の正常時に充電回路を制御して、蓄電部を充電させる。そして、この制御回路は、主電源の電圧が低下するとき(例えば、アイドリングストップ終了後のエンジン起動時)に、蓄電部と負荷の間に配置されるスイッチをオンにして、負荷に電力供給する。また、特許文献1には、この蓄電装置を、主電源異常時の電源バックアップシステムにも適用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-296808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用のバックアップ装置は、主電源の失陥時に主電源とは異なる蓄電部を利用して複数の負荷に電力を供給するバックアップ動作を行うが、複数の負荷が同時に作動する場合には、同時作動に起因する問題が生じる懸念がある。例えば、蓄電部の保有エネルギーが同時作動に必要なエネルギー以下に低下しているのに複数の負荷が同時に動作してしまうと、負荷に対して適切に電力が供給されない事態が生じる虞がある。
【0005】
本開示は、蓄電部を利用したバックアップ動作時に、複数の負荷に対してより適切に電力を供給し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである車載用のバックアップ制御装置は、
電源部と蓄電部とを備えた車載用電源システムに用いられ、記電源部から電力が供給される導電路の電圧が閾値未満となる異常状態において前記蓄電部からの電力に基づいて少なくとも複数の対象負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部の放電を行う放電回路と、
前記放電回路を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記異常状態のときに前記複数の対象負荷に同時に電力を供給する場合の前記蓄電部の電圧条件として定められる重畳可能電圧又は前記複数の対象負荷のいずれかに対応付けて定められる供給完了電圧のうちいずれかを遮断閾値として設定し、
前記異常状態において前記蓄電部の充電電圧が前記遮断閾値以下に達したことを条件として、前記複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を遮断又は遅延し前記複数の対象負荷の同時動作を禁止する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、蓄電部を利用したバックアップ動作時に、複数の負荷に対してより適切に電力を供給し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の車載用のバックアップ制御装置を含む車載用電源システムを概略的に例示するブロック図である。
図2図2は、第1実施形態の車載用のバックアップ制御装置で行われる制御の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔6〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕電源部と蓄電部とを備えた車載用電源システムに用いられ、記電源部から電力が供給される導電路の電圧が閾値未満となる異常状態において前記蓄電部からの電力に基づいて少なくとも複数の対象負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部の放電を行う放電回路と、
前記放電回路を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記異常状態のときに前記複数の対象負荷に同時に電力を供給する場合の前記蓄電部の電圧条件として定められる重畳可能電圧又は前記複数の対象負荷のいずれかに対応付けて定められる供給完了電圧のうちいずれかを遮断閾値として設定し、
前記異常状態において前記蓄電部の充電電圧が前記遮断閾値以下に達したことを条件として、前記複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を遮断又は遅延し前記複数の対象負荷の同時動作を禁止する
車載用のバックアップ制御装置。
【0011】
上記の〔1〕の車載用のバックアップ制御装置は、電源部からの電力の供給が途絶えた異常状態において蓄電部を利用したバックアップ動作を行うことができ、バックアップ動作時に、複数の負荷に対してより適切に電力を供給し得る。このバックアップ制御装置では、充電電圧が相対的に低い状態で複数の対象負荷が同時に動作することによる不具合を生じにくくすることができる。更に、このバックアップ制御装置は、重畳可能電圧又は供給完了電圧のうちのいずれかを重視して、遮断閾値として設定することができる。
【0012】
〔2〕〔1〕に記載の車載用のバックアップ制御装置において、以下の特徴を有する。上記複数の対象負荷は、第1対象負荷と第2対象負荷とを含む。上記制御部は、上記蓄電部の充電電圧が上記第2対象負荷に対応して定められた上記供給完了電圧よりも大きく且つ上記重畳可能電圧以下である場合において、上記第1対象負荷が動作済状態ではなく且つ上記第1対象負荷の動作を行う条件が成立している場合、上記第2対象負荷への電力の供給を遮断又は遅延する。
【0013】
上記の〔2〕の車載用のバックアップ制御装置は、蓄電部の充電電圧が第2対象負荷に対応して定められた供給完了電圧よりも大きくても、重畳可能電圧以下である場合には、第1対象負荷の動作を優先することができる。従って、このバックアップ制御装置は、蓄電部の充電電圧が重畳可能電圧以下である場合に第1対象負荷及び第2対象負荷がいずれも動作することに起因する第1対象負荷への不十分な電力供給の問題を生じにくくすることができる。
【0014】
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載の車載用のバックアップ制御装置において、以下の特徴を有する。上記制御部は、上記対象負荷の消費電力と予定動作回数とに基づいて決定される必要エネルギー量と、上記放電回路からの出力電力と、上記蓄電部の静電容量と、上記異常状態が発生した際の上記蓄電部の充電電圧と、に基づき、上記対象負荷の上記供給完了電圧を算出する。
【0015】
上記の〔3〕の車載用のバックアップ制御装置は、対象負荷の消費電力と予定動作回数を反映し、放電回路の出力電圧と蓄電部の静電容量と異常状態発生の際の蓄電部の充電電圧とを加味して、当該対象負荷の供給完了電圧を適切に設定することができる。
【0016】
〔4〕〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の車載用のバックアップ制御装置において、以下の特徴を有する。上記制御部は、予め定められる下限電圧と、上記複数の対象負荷が所定時間同時に動作した場合に予想される上記蓄電部での電圧低下量と、上記複数の対象負荷が同時に動作する場合の上記蓄電部での電圧降下とを加算した加算値に基づいて上記重畳可能電圧を設定する。
【0017】
上記の〔4〕の車載用のバックアップ制御装置では、蓄電部の充電電圧が上記加算値を超えていれば複数の対象負荷が所定時間同時に動作しても蓄電部の充電電圧が下限電圧に達しにくいといえる。よって、このような加算値に基づいて重畳可能電圧を設定すれば、複数の対象負荷が同時に動作して蓄電部の充電電圧が下限電圧を下回ってしまうような事態を生じにくくすることができる。
【0018】
〔5〕上記の〔4〕に記載の車載用のバックアップ制御装置において、以下の特徴を有する。上記蓄電部の温度を検出する温度検出部を有する。上記制御部は、上記蓄電部の温度が低いほど上記下限電圧を高く定める。
【0019】
上記の〔5〕の車載用のバックアップ制御装置は、実際に検出された蓄電部の温度を反映し、蓄電部の温度が低いほど下限電圧を高く定めることができる。即ち、このバックアップ制御装置は、実際に検出された蓄電部の温度が低いほど重畳可能電圧を高く設定することができる。
【0020】
〔6〕〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の車載用のバックアップ制御装置と、上記蓄電部と、を備える車載用のバックアップ装置。
【0021】
上記の〔6〕の車載用のバックアップ装置は、〔1〕のバックアップ制御装置と同様の効果を奏する。
【0022】
<第1実施形態>
〔車載用電源システムの構成〕
図1に示される車載用電源システム100は、電源部90、第1負荷91、第2負荷92、第3負荷93、蓄電部70、及び車載用のバックアップ制御装置1を備える。車載用のバックアップ制御装置1は、バックアップ制御装置1とも称される。蓄電部70及びバックアップ制御装置1は、車載用のバックアップ装置2を構成する。車載用のバックアップ装置2は、バックアップ装置2とも称される。
【0023】
電源部90は、車載用電源システム100が搭載された車両が始動した場合に継続的に電力を供給する主電源として機能する。電源部90は、直流電圧を生じる直流電源である。電源部90は、例えば鉛バッテリなどのバッテリによって構成される。電源部90の高電位側の端子は、電力路80に電気的に接続され、電源部90の低電位側の端子はグラウンドに電気的に接続されている。電源部90は、電力路80に対して所定電圧を印加する。なお、本明細書において、電圧とは、特に限定がない限り、グラウンドを基準とする電圧である。
【0024】
電源部90は、電力路80を介して第1負荷91,第2負荷92、第3負荷93に電気的に接続されている。電源部90からの電力は、電力路80を介して第1負荷91,第2負荷92、第3負荷93に供給される。図1の例では、電力路80は、電源部90に直接的に接続される導電路である電力路81Aと、第1負荷91に接続される電力路81Bと、第2負荷92に接続される導電路である電力路81Cと、第3負荷93に接続される導電路である電力路81Dとを備える。電力路81A,81B,81C,81Dは、互いに電気的に接続されている。電源部90から第1負荷91,第2負荷92、第3負荷93に電力が供給される状態では、電力路81A,81B,81C,81Dは、同電位とされる。電力路80には、図示されていないリレーやヒューズなどが設けられ、これらの素子は、電力路80の導通を遮断する機能を有する。
【0025】
第1負荷91、第2負荷92、第3負荷93は、車載用の電気機器である。第1負荷91、第2負荷92、第3負荷93は、電源部90からの電力供給が停止した異常状態(失陥状態)のときに電力供給が望まれる負荷である。第1負荷91、第2負荷92、第3負荷93は、例えばモータなどのアクチュエータであってもよい。或いは、電動パーキングブレーキシステムにおけるECUやアクチュエータ、シフトバイワイヤ制御システムにおけるECUやアクチュエータなどであってもよい。或いは、これら以外の車載用の電気機器であってもよい。
【0026】
本明細書では、第1負荷91は、負荷91又は第1対象負荷91とも称される。第2負荷92は、負荷92又は第2対象負荷92とも称される。第3負荷93は、負荷93とも称される。第1負荷91及び第2負荷92は、複数の対象負荷の一例に相当する。
【0027】
バックアップ装置2は、少なくとも電源部90からの電力供給が途絶えた異常状態のときに蓄電部70の電力に基づいて第1負荷91、第2負荷92、第3負荷93に電力を供給するバックアップ動作を行いうる装置である。バックアップ制御装置1は、このようなバックアップ動作を制御する装置である。
【0028】
蓄電部70は、補助電源として機能する。蓄電部70は、直流電圧を出力する直流電源であり、例えば電気二重層キャパシタである。蓄電部70は、導電路26を介して充放電部42に電気的に接続されており、充放電部42を介して充電及び放電がなされる。蓄電部70の充電電圧(出力電圧)は、導電路26に印加される電圧である。蓄電部70の高電位側の端子は、導電路26に電気的に接続されて、導電路26と同電位とされる。蓄電部70の低電位側の端子は、グラウンドに電気的に接続されて、グラウンドと同電位とされる。
【0029】
バックアップ装置2では、車載用電源システム100が搭載される車両の始動スイッチがオフ状態になっている停止状態において蓄電部70の充電電圧(出力電圧)が待機電圧以下に保持される。そして、バックアップ装置2は、車両の始動スイッチがオン状態に切り替わることに応じて蓄電部70の充電電圧を上記待機電圧よりも大きい目標電圧以上とするように充電を行う。車両の始動スイッチがオン状態のときには、失陥状態が生じていない場合には、蓄電部70の充電電圧は上記目標電圧で維持される。車両の始動スイッチがオン状態からオフ状態に切り替わった場合には、バックアップ装置2は、蓄電部70の充電電圧が待機電圧以下となるまで蓄電部70を放電する。
【0030】
バックアップ制御装置1は、制御部40、充放電部42、スイッチ11,12,13,14,15、電圧検出部31,32、導電路21,22,23,24,25,26,27,28,29A,29B,29Cなどを有する。
【0031】
制御部40は、情報処理機能、演算機能、制御機能などを有する情報処理装置である。制御部40は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリ、A/D変換器等を有している。制御部40は、充放電部42(放電回路)を制御する機能を有する。
【0032】
充放電部42は、放電回路の一例に相当する。充放電部42は、例えばDCDCコンバータ等の電圧変換回路として構成される。充放電部42は、導電路26と導電路27の間に配置される。充放電部42は、蓄電部70に対する充電動作及び放電動作を行う。充放電部42は、充電動作として、導電路27に印加された電圧を昇圧又は降圧して導電路26に印加する電圧変換動作を行う。充放電部42の充電動作は、制御部40によって制御される。制御部40は、充放電部42に上記充電動作を行わせる場合、スイッチ14,15をオン状態とする。充放電部42は、放電動作として、導電路26に印加された電圧を昇圧又は降圧して導電路27に印加する電圧変換動作を行う。充放電部42の放電動作は、制御部40によって制御される。制御部40は、充放電部42に上記放電動作を行わせる場合、例えば、スイッチ14,15をオフ状態としつつ、スイッチ11,12,13のいずれか1以上をオン状態とする。
【0033】
電圧検出部31,32は、例えば電圧検出回路として構成されている。電圧検出部31は、導電路24の電圧を検出する。導電路24は、電力路80に電気的に接続され、電力路80と同電位とされる導電路である。従って、電圧検出部31は、電力路80の電圧を検出し得る。電圧検出部32は、導電路26の電圧を検出する。導電路26は、蓄電部70の高電位側の端子に電気的に接続され、蓄電部70の高電位側の端子と同電位とされる導電路である。従って、電圧検出部32は、蓄電部70の充電電圧(出力電圧)を検出し得る。蓄電部70の充電電圧は、グラウンドを基準とする蓄電部70の高電位側の端子の電圧である。
【0034】
導電路25は、スイッチ14を介して導電路24に接続される導電路である。スイッチ14がオン状態のときに導電路24と導電路25とが導通し互いに同電位とされる。導電路27は、スイッチ15を介して導電路25に接続される導電路である。導電路27は、充放電部42の一端側に電気的に接続される導電路である。スイッチ15がオン状態のときには導電路25と導電路27とが導通し互いに同電位とされる。導電路26は、充放電部42の他端側に電気的に接続される導電路である。導電路28は、一端が導電路27に電気的に接続され、他端が導電路29A,29B,29Cに電気的に接続される導電路である。導電路27,28,29A,29B,29Cは互いに同電位とされる。導電路29Aは、一端が導電路28に電気的に接続され、他端がダイオード37のアノードに電気的に接続される。ダイオード37は、カソードが導電路25に電気的に接続される。導電路21は、スイッチ11と第1負荷91の間の導電路である。スイッチ11がオン状態のときには導電路25と導電路21とが同電位とされる。導電路29Bは、一端が導電路28に電気的に接続され、他端がスイッチ12に電気的に接続される。スイッチ12がオン状態のときには導電路29Bと導電路22とが同電位とされる。導電路29Cは、一端が導電路28に電気的に接続され、他端がスイッチ13に電気的に接続される。スイッチ13がオン状態のときには導電路29Cと導電路23とが同電位とされる。
【0035】
〔バックアップ制御装置の動作〕
図2には、制御部40が行うバックアップ制御の一例が示されている。制御部40は、所定の開始条件が成立した場合に、図2のバックアップ制御を開始する。図2のバックアップ制御を開始する条件は、例えば、車載用電源システム100が搭載された車両の始動スイッチがオフ状態からオン状態に切り替わったことであってもよく、他の条件であってもよい。以下で説明される代表例では、車両の始動スイッチがオフ状態からオン状態になった場合に、始動スイッチがオン状態に切り替わったことを示す始動信号が外部装置(例えば、外部のECU(Electronic Control Unit))から制御部40に与えられるようになっている。制御部40は、このような始動信号を受けた場合に、図2のバックアップ制御を開始する。
【0036】
制御部40は、図2のバックアップ制御を開始した場合、ステップS11において電源部90(主電源)が失陥状態であるか否かを判定する。制御部40は、電圧検出部31が検出する電圧に基づき、導電路24の電圧が閾値未満であるか否かを判定する。この閾値は、電源部90が正常時に電力路80に印加する出力電圧よりも大幅に小さい値であり、0よりも大きい値である。制御部40は、ステップS11において導電路24の電圧が閾値未満であると判定した場合(ステップS11でYesの場合)、処理をステップS12に進める。本代表例では、導電路24の電圧が閾値未満である場合、即ち、電力路80の電圧が閾値未満である場合が異常状態の一例に相当する。制御部40は、ステップS11において導電路24の電圧が閾値以上であると判定した場合(ステップS11でNoの場合)、図2の制御を終了する。制御部40は、ステップS11でNoと判定して図2の制御を終了した場合、即座に図2の制御を開始する。従って、電源部90が上述の異常状態でない場合には、図2のバックアップ制御及びステップS11の判定処理が短い時間間隔で繰り返し実行されることになる。
【0037】
例えば、電力路80に地絡や断線などが生じ、電源部90からの導電路24への電力供給及び電力路81B,81C,81Dへの電力供給が途絶えた異常状態では、導電路24の電圧が0V程度となる。このような場合、バックアップ制御装置1では、制御部40が充放電部42に対し導電路27に電力を供給する放電動作を行わせるとともにステップS12以降の処理を行い、蓄電部70からの電力に基づいて複数の負荷91,92,93に電力を供給するバックアップ動作を行う。なお、以下では、負荷91,92を対象負荷として、主電源が失陥した場合に負荷91,92に電力を供給する例について説明する。なお、複数の負荷91,92に電力を供給するバックアップ動作を行う場合、ステップS12の時点でスイッチ11,12をオン状態としてもよく、ステップS12の時点よりも少し前又は少し後にスイッチ11,12をオン状態としてもよい。充放電部42は、蓄電部70の充電状態ではない通常時(主電源が失陥していない状態)においてスイッチ12,13,15をオフ状態としつつ導電路27に所定電圧を印加する動作を継続的に行ってもよく、ステップS11においてYesとなった後に導電路27に所定電圧を印加する動作を開始してもよい。
【0038】
制御部40は、ステップS11において導電路24の電圧が閾値未満であると判定した場合(ステップS11でYesの場合)、ステップS12において、蓄電部70の温度Tcと、蓄電部70の充電電圧Vbを記録する。ステップS12の時点での蓄電部70の温度Tc及び蓄電部70の充電電圧Vbは、例えば、図示されていない記憶部に記憶される。図1に示されるバックアップ装置2には、蓄電部70の温度Tc(例えば、蓄電部70の表面温度や内部温度)を検出する温度検出部35が設けられている。制御部40は、ステップS12の時点で温度検出部35が検出した温度の情報を取得し、蓄電部70の温度Tcを記憶部に記憶する。
【0039】
制御部40は、ステップS12の後、ステップS13において、第2対象負荷92に関する遮断閾値を算出する。制御部40は、ステップS13以降の処理が実行される異常状態のときには、重畳可能電圧Ve又は供給完了電圧Vgのうちのいずれかを遮断閾値として設定する。重畳可能電圧Veは、複数の対象負荷(第1対象負荷91、第2対象負荷92)に同時に電力を供給する場合の蓄電部70の電圧条件として定められる電圧である。供給完了電圧Vgは、第2対象負荷92に対応付けて定められる電圧である。
【0040】
制御部40は、以下のように、第2対象負荷92の供給完了電圧Vgを設定する。制御部40は、まず必要エネルギー量Eを算出する。必要エネルギー量を算出するにあたり、負荷91,92,93の必要エネルギー量が以下のように定められる。負荷91の必要エネルギー量E1は、負荷91の1回の動作の消費電力X1と予定動作回数N1とに基づいてX1×N1の式によって決定される。負荷92の必要エネルギー量E2は、負荷92の1回の動作の消費電力X2と予定動作回数N2とに基づいてX2×N2の式によって決定される。負荷93の必要エネルギー量E3は、負荷93の1回の動作の消費電力X3と予定動作回数N3とに基づいてX3×N3の式によって決定される。なお、E、E1、E2、E3の単位は、例えばmAhである。X1、X2、X3の単位は、例えばmAhである。
【0041】
制御部40は、ステップS13において、第2対象負荷92の供給完了電圧Vgを算出する場合、ステップS13の時点で、負荷91及び負荷93が未動作である場合、負荷92の必要エネルギー量E2に基づき、E=E2+Ic×(Tm-Tr)の式によって必要エネルギー量Eを算出する。Icは、単位時間当たりのバックアップ装置2自身の消費電流であり、例えば、予め定められた値である。Icの単位は、例えばmA/sである。Tmは、バックアップ装置2を動作させる最大時間として予め定められた最大動作時間である。Trは、ステップS11でYesに進んだとき(電源部90の失陥が生じたと判定したとき)からステップS13で必要エネルギー量Eを算出する時点までの経過動作時間である。Tm、Trの単位は、例えばsである。
【0042】
制御部40は、ステップS13において、第2対象負荷92の供給完了電圧Vgを算出する場合、ステップS13の時点で、負荷91が未動作であり、負荷93が動作済である場合、負荷92の必要エネルギー量E2及び負荷93の必要エネルギー量E3に基づき、E=E2+E3+Ic×(Tm-Tr)の式によって必要エネルギー量Eを算出する。
【0043】
制御部40は、ステップS13において、第2対象負荷92の供給完了電圧Vgを算出する場合、ステップS13の時点で、負荷91が動作済であり、負荷93が未動作である場合、負荷91の必要エネルギー量E1及び負荷92の必要エネルギー量E2に基づき、E=E2+E1+Ic×(Tm-Tr)の式によって必要エネルギー量Eを算出する。
【0044】
制御部40は、ステップS13において、第2対象負荷92の供給完了電圧Vgを算出する場合、ステップS13の時点で、負荷91,93が動作済である場合、負荷91の必要エネルギー量E1、負荷92の必要エネルギー量E2、負荷93の必要エネルギー量E3に基づき、E=E1+E2+E3+Ic×(Tm-Tr)の式によって必要エネルギー量Eを算出する。
【0045】
制御部40は、ステップS13において、必要エネルギー量Eを算出した場合、E(mAh)×Vc(V)=Z(J)の式に基づいてZ(J)を算出する。Vc(V)は、充放電部42が導電路27に印加する出力電圧である。そして、Z(J)=C×A×B×(Vb-Va)/2の式に基づいて、放電後の推定電圧Vaを算出する。このVaが第2対象負荷92に対応付けて定められる供給完了電圧Vgである。上記Aの値は、劣化状態係数である。劣化状態係数(劣化係数)は、公知の方法で算出及び設定されてもよく、予め定められた値であってもよい。上記Bの値は、充放電部42の放電効率である。放電効率は公知の方法で算出及び設定されてもよく、予め定められた値であってもよい。上記Cの値は、蓄電部70の静電容量である。制御部40は、公知の方法で静電容量Cを検出し得る。制御部40は、予め定められたタイミング(例えば、充放電部42が動作する毎)で静電容量Cを検出することができ、ステップS13では、最も直近に検出された静電容量Cを用いる。
【0046】
このように、制御部40は、必要エネルギー量E2に基づく必要エネルギー量Eと、充放電部42(放電回路)からの出力電力と、蓄電部70の静電容量Cと、異常状態が発生した際の蓄電部70の充電電圧Vbと、に基づき、第2対象負荷92の供給完了電圧Vgを算出する。
【0047】
制御部40は、以下のように、重畳可能電圧Veを算出する。制御部40は、予め定められる下限電圧Vxと、複数の対象負荷(第1対象負荷91及び第2対象負荷92)が所定時間同時に動作した場合に予想される蓄電部70での電圧低下量Vyと、複数の対象負荷(第1対象負荷91及び第2対象負荷92)が同時に動作する場合の蓄電部70での電圧降下Vzとを加算した加算値(Vx+Vy+Vz)に基づいて重畳可能電圧Veを設定する。以下の例では、Ve=Vx+Vy+Vzとする。但し、この例に限定されず、加算値に対して補正値を加えたり、係数を乗じたりして重畳可能電圧Veを設定してもよい。
【0048】
下限電圧Vxは、予め定められた所定パワー(所定出力電圧及び所定出力電流)を充放電部42が供給するために必要となる入力側電圧(導電路26の電圧)の下限値である。Vxは、予め定められた固定値であってもよく、蓄電部70の温度Tcに基づいて定められてもよい。温度Tcに基づいて下限電圧Vxを定める場合、制御部40は、蓄電部70の温度Tcが低いほど下限電圧Vxを高く定める所定の演算式又は所定のテーブルを参照し、温度検出部35が検出した蓄電部70の温度Tcに基づき、温度Tcに応じた下限電圧Vxを定めてもよい。
【0049】
電圧低下量Vyは、例えばVy=((α+β)×Ty)/(C×Dt)によって定めることができる。αは、第1負荷91の負荷電流であり、βは、第2負荷92の負荷電流である。α、βは、例えば予め想定される電流値を固定値として定めておくことができる。Tyは、突入電流の発生時間である。Tyは、予め想定される時間を固定値として定めておくことができる。Dtは、温度係数である。制御部40は、予め定められた演算式又はテーブルに基づいて温度Tに応じた温度係数Dtを定める。この例ではVyは温度Tに応じて上記演算式によって定まるが、固定値としても良い。
【0050】
Vzは、例えばVz=(α+β)×(Rc×Ft)によって求めることができる。Rcは、蓄電部70の内部抵抗である。制御部40は、公知の方法で内部抵抗Rcを検出し得る。制御部40は、予め定められたタイミング(例えば、充放電部42が動作する毎)で内部抵抗Rcを検出することができ、ステップS13では、最も直近に検出された内部抵抗Rcを用いる。Ftは、温度係数である。制御部40は、予め定められた演算式又はテーブルに基づいて温度Tcに応じた温度係数Ftを定める。
【0051】
制御部40は、ステップS13において供給完了電圧Vg及び重畳可能電圧Veを算出した後、Vg<Veであるか否かを判定する。Vg<Veであれば、Vgを遮断閾値とする。Vg≧Veであれば、Veを遮断閾値とする。
【0052】
制御部40は、ステップS13の後、ステップS14において蓄電部70の充電電圧(出力電圧)が遮断閾値以下であるか否かを判定する。制御部40は、ステップS14において蓄電部70の充電電圧が遮断閾値以下であると判定した場合、ステップS15において第2対象負荷92への電力供給を遮断する。制御部40は、ステップS15において、第2対象負荷92への電力供給を遮断する場合、スイッチ12をオフ状態とする。この場合、制御部40は、充放電部42に対し導電路27に所定電圧を印加する動作を継続的に行わせ、スイッチ11がオン状態であれば、第1対象負荷91へ電力が供給され、スイッチ11がオフ状態であれば、第1対象負荷91への電力供給が遮断される。この場合、制御部40は、例えば外部装置からの指示に応じてスイッチ11のオンオフを制御することができる。
【0053】
制御部40は、ステップS14において蓄電部70の充電電圧が遮断閾値以下でないと判定した場合、ステップS16において蓄電部70の充電電圧が重畳可能電圧Ve以下であるか否かを判定する。制御部40は、ステップS16において蓄電部70の充電電圧が重畳可能電圧Ve以下であると判定した場合、ステップS17において第1対象負荷91の動作条件が成立したか否かを判定する。「第1対象負荷91の動作条件が成立した場合」とは、「第1対象負荷91が動作済状態ではなく且つ第1対象負荷91の動作を行う条件が成立している場合」である。第1対象負荷91が動作済状態とは、第1対象負荷91において予め定められた動作が全て完了し、以後において第1対象負荷91が動作しない状態である。第1対象負荷91の動作を行う条件とは、第1対象負荷91の動作を開始する条件として予め定められた条件であり、例えば、外部装置から制御部40に対して第1対象負荷91の動作開始を示すトリガー情報が与えられたことであってもよく、その他の条件であってもよい。制御部40は、ステップS17において第1対象負荷91の動作条件が成立したと判定した場合、ステップS18において第2対象負荷92への電力供給を遮断する。制御部40は、ステップS18において、第2対象負荷92への電力供給を遮断する場合、スイッチ12をオフ状態とする。この場合、制御部40は、充放電部42に対し導電路27に所定電圧を印加する動作を継続的に行わせ、スイッチ11がオン状態であれば、第1対象負荷91へ電力が供給され、スイッチ11がオフ状態であれば、第1対象負荷91への電力供給が遮断される。この場合、制御部40は、例えば外部装置からの指示に応じてスイッチ11のオンオフを制御することができる。制御部40は、ステップS15の後、ステップS18の後、又はステップS16、S17においてNoと判定した場合、処理をステップS19に進める。
【0054】
制御部40は、ステップS19において蓄電部70の充電電圧(出力電圧)が通知基準電圧Vdを超えるか否かを判定する。制御部40は、ステップS19において蓄電部70の充電電圧(出力電圧)が通知基準電圧Vdを超えないと判定した場合、ステップS20において第2対象負荷92への電力供給を遮断し、その後、ステップS21において蓄電部70のSOCが低下していることを通知する処理を行う。
【0055】
制御部40は、ステップS19において蓄電部70の充電電圧(出力電圧)が通知基準電圧Vdを超えると判定した場合又はステップS21の後には、ステップS22においてその他の処理を行い、その後、処理をステップS13に戻す。
【0056】
以上のように、制御部40は、上述の異常状態において蓄電部70の充電電圧が遮断閾値以下に達したことを条件として、複数の対象負荷(第1対象負荷91、第2対象負荷92)のいずれかへの電力の供給を遮断又は遅延し、これら複数の対象負荷の同時動作を禁止する。そして、制御部40は、蓄電部70の充電電圧が第2対象負荷92に対応して定められた供給完了電圧Vgよりも大きく且つ重畳可能電圧Ve以下である場合において、第1対象負荷91が動作済状態ではなく且つ第1対象負荷91の動作を行う条件が成立している場合、第2対象負荷92への電力の供給を遮断する。
【0057】
次の説明は、本構成の効果の一例に関する。
バックアップ制御装置1は、電源部90からの電力の供給が途絶えた異常状態において蓄電部70を利用したバックアップ動作を行うことができ、バックアップ動作時に、複数の負荷91,92,93に対してより適切に電力を供給し得る。このバックアップ制御装置1では、蓄電部70の充電電圧が相対的に低い状態で複数の対象負荷(第1対象負荷91、第2対象負荷92)が同時に動作することによる不具合を生じにくくすることができる。更に、このバックアップ制御装置1は、重畳可能電圧又は供給完了電圧のうちのいずれかを重視して、遮断閾値として設定することができる。
【0058】
バックアップ制御装置1は、蓄電部70の充電電圧が第2対象負荷92に対応して定められた供給完了電圧よりも大きくても、重畳可能電圧以下である場合には、第1対象負荷91の動作を優先することができる。従って、このバックアップ制御装置1は、蓄電部70の充電電圧が重畳可能電圧以下である場合に第1対象負荷91及び第2対象負荷92がいずれも動作することに起因する第1対象負荷91への不十分な電力供給の問題を生じにくくすることができる。
【0059】
バックアップ制御装置1は、対象負荷の消費電力と予定動作回数を反映し、充放電部42(放電回路)の出力電圧と蓄電部70の静電容量と異常状態発生の際の蓄電部70の充電電圧とを加味して、当該対象負荷の供給完了電圧を適切に設定することができる。
【0060】
バックアップ制御装置1では、蓄電部70の充電電圧が上述の加算値を超えていれば複数の対象負荷が所定時間同時に動作しても蓄電部70の充電電圧が下限電圧に達しにくいといえる。よって、このような加算値に基づいて重畳可能電圧を設定すれば、複数の対象負荷が同時に動作して蓄電部の充電電圧が下限電圧を下回ってしまうような事態を生じにくくすることができる。
【0061】
バックアップ制御装置1は、実際に検出された蓄電部70の温度を反映し、蓄電部70の温度が低いほど下限電圧を高く定めることができる。即ち、このバックアップ制御装置1は、実際に検出された蓄電部70の温度が低いほど重畳可能電圧を高く設定することができる。
【0062】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0063】
上記実施形態では、異常状態において蓄電部70の充電電圧が遮断閾値以下に達したことを条件として、複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を遮断又は遅延して複数の対象負荷の同時動作を禁止する例が説明されたが、上述された例に限定されない。異常状態において蓄電部70の充電電圧が遮断閾値以下に達した場合には、複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を完全に遮断して、以後のバックアップ動作中は、遮断した対象負荷への電力供給を一切行わないようにしてもよい。或いは、遮断閾値に達した場合に、複数の対象負荷のいずれかへの電力の供給を一旦遅延させて同時供給を防ぎ、他の対象負荷の動作が済んでから行うようにしてもよい。
【0064】
上記第1実施形態では、車両の始動スイッチが説明されるが、始動スイッチはイグニッションスイッチであってもよい。或いは、電気自動車などではEVシステムを指導するためのパワースイッチであってもよい。
【0065】
上記第1実施形態では、電源部が鉛バッテリであるが、鉛バッテリに限られない。電源部は、例えば、リチウムイオンバッテリなどの他種の電池であってもよく、オルタネータ、コンバータなどの電源であってもよい。
【0066】
上記第1実施形態では、蓄電部が電気二重層キャパシタであるが、蓄電部は電気二重層キャパシタに限られない。蓄電部は、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオンバッテリなどの他種の蓄電部であってもよい。
【0067】
上記第1実施形態では、電源部からの電力供給が途絶えた場合にバックアップ制御装置がバックアップ動作を行うが、バックアップ制御装置は、電力供給が完全に途絶えていない所定の状態で蓄電部から電力供給を行うようにバックアップ動作を行ってもよい。
【0068】
上記第1実施形態では、重畳可能電圧を定める方法の一例が示されたが、この例に限定されない。重畳可能電圧は、第1実施形態に示された方法を若干変更した方法、例えば、第1実施形態に示された方法で得られる重畳可能電圧に対して何らかの係数を乗じたり、マージン分の補正値を加算したりする方法で補正された値を重畳可能電圧としてもよく、予め定められた固定値を重畳可能電圧としてもよい。上記第1実施形態では、第2対象負荷92に対応する供給完了電圧を定める方法の一例が示されたが、この例に限定されない。第2対象負荷92に対応する供給完了電圧は、第1実施形態に示された方法を若干変更した方法、例えば、第1実施形態に示された方法で得られる供給完了電圧に対して何らかの係数を乗じたり、マージン分の補正値を加算したりする方法で補正された値を供給完了電圧としてもよく、第2対象負荷92に対応付けて予め定められた固定値を供給完了電圧としてもよい。
【0069】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 :バックアップ制御装置
2 :バックアップ装置
11 :スイッチ
12 :スイッチ
13 :スイッチ
14 :スイッチ
15 :スイッチ
21 :導電路
22 :導電路
23 :導電路
24 :導電路
25 :導電路
26 :導電路
27 :導電路
28 :導電路
29A :導電路
29B :導電路
29C :導電路
31 :電圧検出部
32 :電圧検出部
35 :温度検出部
37 :ダイオード
40 :制御部
42 :充放電部
70 :蓄電部
80 :電力路
81A :電力路
81B :電力路
81C :電力路
81D :電力路
90 :電源部
91 :第1負荷(第1対象負荷)
92 :第2負荷(第2対象負荷)
93 :第3負荷
100 :車載用電源システム
図1
図2