(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】光ファイバ
(51)【国際特許分類】
C03C 25/47 20180101AFI20230808BHJP
C03C 25/1065 20180101ALI20230808BHJP
C03C 25/285 20180101ALI20230808BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C03C25/47
C03C25/1065
C03C25/285
G02B6/44 301A
G02B6/44 331
(21)【出願番号】P 2020538450
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2019032703
(87)【国際公開番号】W WO2020040223
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018155181
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】浜窪 勝史
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0321265(US,A1)
【文献】特表2010-511770(JP,A)
【文献】特開2001-066474(JP,A)
【文献】特開平02-069706(JP,A)
【文献】特開2003-315639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及びクラッドを含むガラスファイバと、前記ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、前記プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備える光ファイバであって、
前記セカンダリ樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含む樹脂組成物の硬化物からなり、
前記無機酸化物粒子の含有量が、前記樹脂組成物の総量を基準として
5質量%以上60質量%以下であり、
前記セカンダリ樹脂層のガラス転移温度が、60℃以上120℃以下である、光ファイバ。
【請求項2】
前記無機酸化物粒子が、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記無機酸化物粒子の平均一次粒径が、500nm以下である、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記セカンダリ樹脂層のヤング率が、23℃±2℃で1150MPa以上2700MPa以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバに関する。
本出願は、2018年8月22日出願の日本出願第2018-155181号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバは、光伝送体であるガラスファイバを保護するための被覆樹脂層を有し、被覆樹脂層は、プライマリ樹脂層及びセカンダリ樹脂層を備えている。光ファイバに側圧が付与された際に発生する微小な曲げにより誘起される伝送損失の増加を小さくするために、光ファイバには、側圧特性に優れることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、セカンダリ樹脂層(第二コーティング)のヤング率を高くすることで、光ファイバの曲げ損失を低減することが検討されている。また、特許文献2には、被覆樹脂層における残留応力が、光ファイバの伝送損失の原因となることを防ぐために、特定のウレタン(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物を用いてセカンダリ樹脂層のガラス転移温度を低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-510520号公報
【文献】特開2003-277453号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る光ファイバは、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、セカンダリ樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含む樹脂組成物の硬化物からなり、無機酸化物粒子の含有量が、樹脂組成物の総量を基準として1質量%以上60質量%以下であり、セカンダリ樹脂層のガラス転移温度が、60℃以上120℃以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
側圧特性を向上するためには、セカンダリ樹脂層のヤング率を大きくすることが重要となるものの、セカンダリ樹脂層のガラス転移温度が高くなってしまう。これに伴い、プライマリ樹脂層にかかる残留応力が大きくなり、光ファイバにボイドが発生し易くなる。したがって、セカンダリ樹脂層には、側圧特性を向上するために要求されるヤング率を維持しつつ、光ファイバにボイドが発生することを抑制することが求められる。
【0008】
そこで、本開示は、ボイドの発生が抑制され、側圧特性に優れる光ファイバを提供することを目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、ボイドの発生が抑制され、側圧特性に優れる光ファイバを提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一態様に係る光ファイバは、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、セカンダリ樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含む樹脂組成物の硬化物からなり、無機酸化物粒子の含有量が、樹脂組成物の総量を基準として1質量%以上60質量%以下であり、セカンダリ樹脂層のガラス転移温度が、60℃以上120℃以下である。
【0011】
本開示の一態様に係る光ファイバは、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、前記ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備える光ファイバであって、セカンダリ樹脂層が、無機酸化物粒子を含み、無機酸化物粒子の含有量が、セカンダリ樹脂層の総量を基準として1質量%以上60質量%以下であり、セカンダリ樹脂層のガラス転移温度が、60℃以上120℃以下である。
【0012】
無機酸化物粒子を特定の範囲で含有する樹脂組成物を用いることで、ガラス転移温度を一定の範囲に保ちつつ、高いヤング率を有するセカンダリ樹脂層を形成することができる。これにより、光ファイバにおけるボイドの発生を十分に抑制し、側圧特性を向上することができる。
【0013】
樹脂組成物中での分散性に優れ、ヤング率の高い樹脂層を形成し易いことから、上記無機酸化物粒子は、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0014】
ヤング率の高い樹脂層を形成することから、無機酸化物粒子の平均一次粒径は、500nm以下であってもよい。
【0015】
被覆樹脂層に適度な強度を付与する観点から、セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃±2℃で1150MPa以上2700MPa以下であってもよい。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る樹脂組成物及び光ファイバの具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されず、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
<光ファイバ>
図1は、本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。光ファイバ10は、コア11及びクラッド12を含むガラスファイバ13と、ガラスファイバ13の外周に設けられたプライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15を含む被覆樹脂層16とを備えている。
【0018】
クラッド12はコア11を取り囲んでいる。コア11及びクラッド12は石英ガラス等のガラスを主に含み、例えば、コア11にはゲルマニウムを添加した石英を用いることができ、クラッド12には純石英、又は、フッ素が添加された石英を用いることができる。
【0019】
図1において、例えば、ガラスファイバ13の外径(D2)は125μm程度であり、ガラスファイバ13を構成するコア11の直径(D1)は、7~15μm程度である。
【0020】
被覆樹脂層16の厚さは、通常、60~70μm程度である。プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、10~50μm程度であってもよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが35μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが25μmであってもよい。光ファイバ10の外径は、245~265μm程度であってもよい。
【0021】
また、被覆樹脂層16の厚さは、27~48μm程度であってよい。プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、10~38μm程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが25μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが10μmであってよい。光ファイバ10の外径は、179~221μm程度であってよい。
【0022】
さらに、ガラスファイバ13の外径(D2)が100μm程度で、被覆樹脂層16の厚さが22~37μm程度であってもよい。プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、5~32μm程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが25μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが10μmであってよい。光ファイバ10の外径は、144~174μm程度であってよい。
【0023】
(セカンダリ樹脂層)
セカンダリ樹脂層15は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含む樹脂組成物を硬化させて形成することができる。すなわち、セカンダリ樹脂層15は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含む樹脂組成物の硬化物を含む。
【0024】
ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸等についても同様である。
【0025】
(無機酸化物粒子)
本実施形態に係る無機酸化物粒子は、その表面が疎水処理されている。本実施形態に係る疎水処理とは、無機酸化物粒子の表面に疎水性の基が導入されていることをいう。疎水性の基が導入された無機酸化物粒子は、樹脂組成物中の分散性に優れている。疎水性の基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の反応性基、又は、炭化水素基(例えば、アルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基)等の非反応性基であってもよい。無機酸化物粒子が反応性基を有する場合、ヤング率が高い樹脂層を形成し易くなる。
【0026】
本実施形態に係る無機酸化物粒子は、分散媒に分散されている。分散媒に分散された無機酸化物粒子を用いることで、樹脂組成物中に無機酸化物粒子を均一に分散でき、樹脂組成物の保存安定性を向上することができる。分散媒としては、樹脂組成物の硬化を阻害しなければ、特に限定されない。分散媒は、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0027】
反応性の分散媒として、(メタ)アクリロイル化合物、エポキシ化合物等のモノマーを用いてもよい。(メタ)アクリロイル化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物及びグリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。(メタ)アクリロイル化合物として、後述するモノマーで例示する化合物を用いてもよい。
【0028】
非反応性の分散媒として、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒、メタノール(MeOH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール系溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶媒を用いてもよい。非反応性の分散媒の場合、ベース樹脂と分散媒に分散された無機酸化物粒子とを混合した後、分散媒の一部を除去して樹脂組成物を調製してもよい。表面修飾された無機酸化物粒子が含まれる分散媒を電子顕微鏡で観察して、凝集した粒子が観察されない場合に、表面修飾された無機酸化物粒子が一次粒子で分散されたといえる。
【0029】
分散媒に分散された無機酸化物粒子は、樹脂組成物の硬化後も樹脂層中に分散した状態で存在する。反応性の分散媒を使用した場合、無機酸化物粒子は樹脂組成物に分散媒ごと混合され、分散状態が維持されたまま樹脂層中に取り込まれる。非反応性の分散媒を使用した場合、分散媒は少なくともその一部が樹脂組成物から揮発して無くなるが、無機酸化物粒子は分散状態のまま樹脂組成物中に残り、硬化後の樹脂層にも分散した状態で存在する。樹脂層中に存在する無機酸化物粒子は、電子顕微鏡で観察した場合に、一次粒子が分散した状態で観察される。
【0030】
樹脂組成物中での分散性に優れ、強靱な樹脂層を形成し易いことから、上記無機酸化物粒子は、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン(チタニア)、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より少なくとも1種であることが好ましい。廉価性に優れる、表面処理がし易い、紫外線透過性を有する、樹脂層に適度な硬さを付与し易い等の観点から、本実施形態に係る無機酸化物粒子として、疎水性のシリカ粒子を用いることがより好ましい。
【0031】
セカンダリ樹脂層に適度な靱性を付与する観点から、無機酸化物粒子の平均一次粒径は、500nm以下であってもよく、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。セカンダリ樹脂層のヤング率を高くする観点から、無機酸化物粒子の平均一次粒径は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。平均一次粒径は、例えば、電子顕微鏡写真の画像解析、光散乱法、BET法等によって測定することができる。無機酸化物粒子の一次粒子が分散された分散媒は、一次粒子の粒径が小さい場合は目視で透明に見える。一次粒子の粒径が比較的大きい(40nm以上)場合は、一次粒子が分散された分散媒は白濁して見えるが沈降物は観察されない。
【0032】
無機酸化物粒子の含有量は、樹脂組成物の総量(ベース樹脂及び無機酸化物粒子の総量)を基準として1質量%以上60質量%以下であり、3質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましい。無機酸化物粒子の含有量が1質量%以上であると、側圧特性に優れる樹脂層を形成し易くなる。無機酸化物粒子の含有量が60質量%以下であると、優れた靱性を有する樹脂層を形成することができる。なお、樹脂組成物の総量と樹脂組成物の硬化物の総量は同じと考えてよい。無機酸化物粒子の含有量は、セカンダリ樹脂層の総量(セカンダリ樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の総量)を基準として1質量%以上60質量%以下であり、3質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0033】
(ベース樹脂)
本実施形態に係るベース樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有する。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られるオリゴマーを用いることができる。
【0035】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールが挙げられる。ポリオール化合物の数平均分子量は、400以上1000以下であってもよい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合成する際の触媒として、一般に有機スズ化合物が使用される。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸2-エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチル)及びジブチルスズオキシドが挙げられる。易入手性又は触媒性能の点から、触媒としてジブチルスズジラウレート又はジブチルスズジアセテートを使用することが好ましい。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー合成時に炭素数5以下の低級アルコールを使用してもよい。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール及び2,2-ジメチル-1-プロパノールが挙げられる。
【0038】
モノマーとしては、重合性基を1つ有する単官能モノマー、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーを用いることができる。モノマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、3-(3-ピリジン)プロピル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等の複素環含有(メタ)アクリレート;マレイミド、N-シクロへキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のN-置換アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマーが挙げられる。
【0040】
単官能モノマーとして、樹脂層のヤング率、ガラス転移温度(Tg)及び粘度を調整する観点から、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート又は4-tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート及び2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。
【0041】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20-エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3-エチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0042】
多官能モノマーとして、所望のヤング率を有する樹脂層を形成する観点から、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを用いてもよい。その中でも、多官能モノマーとして、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
光重合開始剤としては、公知のラジカル光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。光重合開始剤として、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン(Omnirad 907、IGM Resins社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO、IGM Resins社製)及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Omnirad 819、IGM Resins社製)が挙げられる。
【0044】
セカンダリ樹脂層のヤング率が調整し易くなることから、本実施形態に係るベース樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを更に含有してもよい。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、グリシジル基を2以上有するエポキシ樹脂に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるオリゴマーを用いることができる。
【0045】
樹脂組成物は、シランカップリング剤、光酸発生剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤等を更に含有してもよい。
【0046】
シランカップリング剤としては、樹脂組成物の硬化の妨げにならなければ、特に限定されない。シランカップリング剤として、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド及びγ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが挙げられる。
【0047】
光酸発生剤としては、A+B-の構造をしたオニウム塩を用いてもよい。光酸発生剤としては、例えば、UVACURE1590(ダイセル・サイテック製)、CPI-100P、110P、210S(サンアプロ製)等のスルホニウム塩、IOmnicat 250(IGM Resins社製)、WPI-113(富士フイルム和光純薬製)、Rp-2074(ローディア・ジャパン製)等のヨードニウム塩が挙げられる。
【0048】
本実施形態に係る樹脂組成物をセカンダリ樹脂層に用いることで、高いヤング率を有し、側圧特性に優れる光ファイバを作製することができる。
【0049】
セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃±2℃で1150MPa以上2700MPa以下であることが好ましく、1200MPa以上2700MPa以下であることがより好ましく、1300MPa以上2500MPa以下であることが更に好ましい。セカンダリ樹脂層のヤング率が1150MPa以上であると、光ファイバの側圧特性を向上し易く、2700MPa以下であると、セカンダリ樹脂層に適度な靱性を付与できるため、セカンダリ樹脂層に割れ等が発生し難くなる。
【0050】
残留応力を低減して、ボイドの発生を抑制する観点から、セカンダリ樹脂層のTgは、60℃以上120℃以下であり、65℃以上115℃以下であることが好ましく、70℃以上110℃以下であることがより好ましい。
【0051】
(プライマリ樹脂層)
プライマリ樹脂層14は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤を含む樹脂組成物を硬化させて形成することができる。すなわち、プライマリ樹脂層14は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤を含有する樹脂組成物の硬化物を含むことができる。
【0052】
プライマリ樹脂層用の樹脂組成物は、従来公知の技術を用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤としては、上記ベース樹脂で例示した化合物から適宜、選択してもよい。ただし、プライマリ樹脂層を形成する樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層を形成するベース樹脂とは異なる組成を有している。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物及びアルコールを反応させて得られるオリゴマーを用いてもよい。
【0054】
プライマリ樹脂層のヤング率は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合成する際に用いる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物及びアルコールの配合割合により目的の範囲に調整してもよい。アルコールの配合割合が多くなると、反応性基である(メタ)アクリロイル基を両末端に有するオリゴマーが減るため、ヤング率を低減し易くなる。また、プライマリ樹脂層14のヤング率は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合成する際に用いるポリオール化合物の分子量により目的の範囲に調整してもよい。ポリオール化合物の数平均分子量は、1000以上8000以下が好ましく、1200以上6500以下がより好ましく、1500以上6000以下が更に好ましい。
【0055】
光ファイバにボイドが発生することを抑制することから、プライマリ樹脂層のヤング率は、23℃±2℃で0.04MPa以上1.0MPa以下であることが好ましく、0.05MPa以上0.9MPa以下であることがより好ましく、0.05MPa以上0.8MPa以下であることが更に好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本開示に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本開示を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0057】
[セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物]
(オリゴマー)
オリゴマーとして、分子量600のポリプロピレングリコール、2,4-トリレンジイソシアネート及びヒドロキシエチルアクリレートを反応させることにより得られたウレタンアクリレートオリゴマー(UA)、並びにエポキシアクリレートオリゴマー(EA)を準備した。
【0058】
(モノマー)
モノマーとして、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社の商品名「IBXA」)、トリプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社の商品名「TPGDA」)及び2-フェノキシエチルアクリレート(共栄化学株式会社の商品名「ライトアクリレートPO-A」)を準備した。
【0059】
(光重合開始剤)
光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを準備した。
【0060】
(無機酸化物粒子)
無機酸化物粒子として、MEKに分散され、メタクリロイル基を有し、平均一次粒径が10~15nmである疎水性シリカ粒子を準備した。
【0061】
(樹脂組成物)
まず、上記オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を混合して、ベース樹脂を調製した。次いで、ベース樹脂とシリカ粒子とを混合した後、分散媒であるMEKの大部分を減圧除去して、セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物を作製した。なお、樹脂組成物中に残存しているMEKの含有量は、5質量%以下であった。
【0062】
表1及び表2において、モノマーの数値は、ベース樹脂の総量を基準とする含有量であり、オリゴマーの数値は、モノマー、オリゴマー及びシリカ粒子の総量を基準とする含有量であり、シリカ粒子の数値は、樹脂組成物の総量を基準とする含有量である。
【0063】
[プライマリ樹脂層用の樹脂組成物]
(オリゴマー)
分子量4000のポリプロピレングリコール、イソホロンジイソシアネート、ヒドロキシエチルアクリレート及びメタノールを反応させて得られるウレタンアクリレートオリゴマーを準備した。
【0064】
(樹脂組成物)
ウレタンアクリレートオリゴマーを75質量部、ノニルフェノールEO変性アクリレート12質量部、N-ビニルカプロラクタム6質量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート2質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド1質量部、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン1質量部を混合して、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物を作製した。
【0065】
[光ファイバの作製]
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物を用いて厚さ35μmのプライマリ樹脂層を形成し、更にその外周にセカンダリ樹脂層用の樹脂組成物を用いてセカンダリ樹脂層を形成して、実施例及び比較例の光ファイバを作製した。線速は1500m/分とした。
【0066】
(プライマリ樹脂層のヤング率)
プライマリ樹脂層のヤング率は、23℃でのPullout Modulus(POM)法により測定した。光ファイバの2箇所を2つのチャック装置で固定し、2つのチャック装置の間の被覆樹脂層(プライマリ樹脂層及びセカンダリ樹脂層)部分を除去し、次いで、一方のチャック装置を固定し、他方のチャック装置を固定したチャック装置の反対方向に緩やかに移動させた。光ファイバにおける移動させるチャック装置に挟まれている部分の長さをL、チャックの移動量をZ、プライマリ樹脂層の外径をDp、ガラスファイバの外径をDf、プライマリ樹脂層のポアソン比をn、チャック装置の移動時の荷重をWとした場合、下記式からプライマリ樹脂層のヤング率を求めた。プライマリ樹脂層のヤング率は、0.5MPaであった。
ヤング率(MPa)=((1+n)W/πLZ)×ln(Dp/Df)
【0067】
(セカンダリ樹脂層のヤング率)
セカンダリ樹脂層のヤング率は、光ファイバからガラスファイバを抜き取って得られるパイプ状の被覆樹脂層(長さ:50mm以上)を用いて、23±2℃、50±10%RHの環境下で引張試験(標線間距離:25mm)を行い、2.5%割線値から求めた。結果を表1及び2に示す。
【0068】
(セカンダリ樹脂層のTg)
セカンダリ樹脂層のTgの測定は、光ファイバからガラスファイバを抜き取って得られるパイプ状の被覆樹脂層を用い、TAインスツルメント社の「RSA 3」を用いて、引張りモード(標線間距離:10mm)、周波数11Hz、昇温速度5℃/分、温度範囲30~150℃の条件で、被覆樹脂層の動的粘弾性を測定した。測定されたtanδのピークトップ温度をセカンダリ樹脂層のTgとした。結果を表1及び2に示す。
【0069】
(ボイドの観察)
10mの光ファイバを85℃で湿度85%の条件下で120日間保管した後、-40℃に16時間置いて、直径10μm以上のボイドの有無を顕微鏡で観察した。光ファイバ1m当たりのボイドの数が1個未満の場合を「A」、ボイドの数が1個を超える場合を「C」と評価した。結果を表1及び2に示す。
【0070】
(側圧特性)
サンドペーパーで表面を覆った280mm径のボビンに、光ファイバ10を単層状に巻き付けた時の1550nmの波長の光の伝送損失を、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)法により測定した。また、サンドペーパーのない280mm径のボビンに、光ファイバ10を単層状に巻き付けた時の1550nmの波長の光の伝送損失を、OTDR法により測定した。測定した伝送損失の差を求め、伝送損失差が0.6dB/km以下の場合を側圧特性「OK」と、伝送損失差が0.6dB/km超の場合を側圧特性「NG」と判断した。なお、比較例4では、光ファイバをボビンに巻取る時に樹脂層にクラックが生じ、側圧特性が評価できなかった。結果を表1及び2に示す。
【0071】
【0072】
【符号の説明】
【0073】
10…光ファイバ、11…コア、12…クラッド、13…ガラスファイバ、14…プライマリ樹脂層、15…セカンダリ樹脂層、16…被覆樹脂層。