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  • 特許-走行制御装置及び走行制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】走行制御装置及び走行制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20230808BHJP
   B60W 30/165 20200101ALI20230808BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20230808BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20230808BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20230808BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W30/165
B60W30/12
B60W40/04
B62D6/00
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021051261
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149212
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松倉 由幸
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-144782(JP,A)
【文献】特開平10-258649(JP,A)
【文献】特開2019-192043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
B62D 6/00 - 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた走行制御装置であって、
先行車に追従するように、自車の加減速度及び操舵量を制御する自動追従制御部と、
自車の後側方の車両を検知する後側方車両検知部と、
前記自動追従制御部によって前記先行車に追従しており、かつ、前記先行車が前記後側方車両検知部によって検知された前記他車両と逆の側方方向に移動した場合、前記後側方車両検知部によって検知された前記他車両と自車との相対位置関係に基づいて、前記先行車が移動している側方方向への操舵量を抑制する操舵量抑制部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
自車前方の車線を検知する車線検知部による検知結果に基づいて、レーンキープするように操舵量を制御するレーンキープ支援制御部を、さらに備え、
前記自動追従制御部及び前記操舵量抑制部の制御によって、レーンチェンジする先行車への追従を操舵量を抑制しながら行っているときに、前記車線検知部によって自車前方の車線が検知された場合、前記自動追従制御部及び前記操舵量抑制部の制御によるレーンチェンジを中断して、前記レーンキープ支援制御部による制御に切り替えてレーンキープを行う、
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
車両に設けられた走行制御装置による走行制御方法であって、
自動追従制御部が、先行車に追従するように、自車の加減速度及び操舵量を制御するステップと、
後側方車両検知部が、自車の後側方の他車両を検知するステップと、
前記自動追従制御部によって前記先行車に追従しており、かつ、前記先行車が前記後側方車両検知部によって検知された前記他車両と逆の側方方向に移動した場合、操舵量抑制部が、前記後側方車両検知部によって検知された前記他車両と自車との相対位置関係に基づいて、前記先行車が移動している側方方向への操舵量を抑制するステップと、
を含む走行制御方法。
【請求項4】
レーンキープ支援制御部が、自車前方の車線を検知する車線検知部による検知結果に基づいて、レーンキープするように操舵量を制御するステップを、さらに含み、
前記自動追従制御部及び前記操舵量抑制部の制御によって、レーンチェンジする先行車への追従を操舵量を抑制しながら行っているときに、前記車線検知部によって自車前方の車線が検知された場合、前記自動追従制御部及び前記操舵量抑制部の制御によるレーンチェンジを中断して、前記レーンキープ支援制御部による制御に切り替えてレーンキープを行う、
請求項3に記載の走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動追従制御機能を有する車両の走行制御装置及び走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においては、自動運転を実現するための種々の機能が搭載されている。その一つに、車線を検知して走行レーンを維持するように操舵を制御する機能(LKAS:Lane Keep Assist System)がある。また別の一つに、先行車の走行軌跡に追従するように操舵を制御する自動追従機能がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
自動追従機能を有する車両は、路面状態や天気が悪く車線を検知できない場合でも、先行車が存在すれば、それに追従することで自動運転を行うことができる。
【0004】
また、自動追従機能を有する車両は、渋滞時に先行車によって前方の車線が隠れてしまった場合でも、先行車に追従することで自動運転を行うことができる。特に、渋滞中は車間距離が短く制御され、先行車が大型車である場合には、前方の車線が先行車によって隠れてしまう可能性が高いので、レーンキープ制御よりも自動追従制御が有効であることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-322697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、渋滞中に自動追従制御が実行されている状況において、追従対象である先行車が車線変更のような大きな横移動をした場合、自車もそれに追従して大きな横移動を行うことになる。この際、自車がトラック等のオーバーハングの長い車両の場合には、車輪からオーバーハング部分が操舵方向と逆方向に大きく飛び出すことになるので、後側方や真横に車両にいる他車両に衝突する可能性がある。
【0007】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、自動追従制御中に先行車が大きな横移動を行った場合でも、他車両への衝突を回避できる、走行制御装置及び走行制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の走行制御装置の一つの態様は、
先行車に追従するように、自車の加減速度及び操舵量を制御する自動追従制御部と、
自車の後側方の車両を検知する検知部によって自車の後側方に他車両が検知された場合、前記他車両が検知された方向と逆方向への操舵量を抑制する操舵量抑制部と、
を備える。
【0009】
本開示の走行制御方法の一つの態様は、
先行車に追従するように、自車の加減速度及び操舵量を制御するステップと、
自車の後側方に他車両が検知された場合、前記他車両が検知された方向と逆方向への操舵量を抑制するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、自動追従制御中に先行車が大きな横移動を行った場合でも、他車両への衝突を回避できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の走行制御装置の要部構成を示すブロック図
図2】実施の形態の走行制御装置の動作の説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態の走行制御装置100の要部構成を示すブロック図である。走行制御装置100は、車両に搭載されている。
【0014】
走行制御装置100は、自動追従制御部101を有する。自動追従制御部101は、前方レーダー102及び前方カメラ103からの先行車のレーダー情報及び画像情報に基づいて、先行車に追従するための操舵量(操舵角と言ってもよい)及び目標加減速度を出力する。
【0015】
目標加減速度は、エンジン及びブレーキ106に送られ、エンジン及びブレーキが目標加減速度に基づいて制御される。
【0016】
一方、操舵量は、操舵量抑制部104を介して操舵部105に送られる。
【0017】
操舵量抑制部104は、自車の後側方の車両を検知する後側方車両検知部108によって自車の後側方に他車両が検知された場合、他車両が検知された方向と逆方向への操舵量を抑制する。
【0018】
ここで、後側方車両検知部108は、後側方レーダー107からのレーダー情報に基づいて、自車の後側方に他車両が存在するか否かを検知するとともに、後側方に他車両が存在する場合には、他車両と自車両との相対位置関係を検知する。相対位置関係には、他車両と自車両の横方向の距離が含まれる。
【0019】
操舵量抑制部104は、後側方車両検知部108によって検知された他車両と自車との相対位置関係に基づいて、操舵量を抑制することが好ましい。例えば、他車両と自車両の横方向の距離が近いほど、抑制量を大きくする。
【0020】
また、走行制御装置100は、レーンキープ支援制御部110を有する。レーンキープ支援制御部110は、車線検知部111によって検知された自車前方の車線情報に基づいて、自車1が車線内走行を維持するための操舵量を操舵部105に出力する。
【0021】
ここで、操舵部105は、車線検知部111によって車線が検知され、レーンキープ支援制御部110から操舵量の情報が出力されているときには、レーンキープ支援制御部110からの操舵量に基づいて制御される。
【0022】
一方で、車線検知部111によって車線が検知されず、レーンキープ支援制御部110から操舵量の情報が出力されていないときには、操舵部105は、自動追従制御部101及び操舵量抑制部104により得られた操舵量に基づいて制御される。
【0023】
また、自動追従制御部101及びレーンキープ支援制御部110のどちらからも操舵量が出力されない場合には、自動操舵は行われない。
【0024】
次に、図2を用いて、本実施の形態の走行制御装置100の動作について説明する。
【0025】
図2は、走行制御装置100を搭載した車両1が、渋滞中の高速道路を走行していることを想定している。自車両1は、車線が検知できている場合には、レーンキープ支援制御部110の制御を優先してレーン内走行を維持する。一方、先行車C1に隠れて車線を検知できない場合(特に先行車C1が大型車の場合には車線を検知できない可能性が高まる)や路面状態が悪く車線を検知できないには、自動追従制御部101による自動追従制御を行う。
【0026】
自動追従制御を行っているときに、先行車C1が矢印の方向に車線変更したとすると、自車両1もこれに追従して大きく左側に横移動する。すると、自車両1の右後端のオーバーハング部分が右方向に大きく突き出てしまい、右側車線を走行している他車両C2に衝突するおそれがある。特に、渋滞時のような低速走行時には、操舵量が大きくなる可能性があるので、オーバーハング部分の突き出し量も大きくなる可能性がある。
【0027】
これを考慮して、本実施の形態の走行制御装置100は、操舵量抑制部104によって操舵量を抑制する。
【0028】
様々な抑制方法を採用し得る。一つの方法として、操舵量が所定値よりも大きくならないように制限する方法を採用し得る。例えば、操舵量(操舵角)を10°以下に制限する。つまり、操舵量抑制部104は、自動追従制御部101から10°よりも大きい操舵量を入力した場合に、操舵量を10°に制限して、操舵部105に出力する。
【0029】
本実施の形態では、後側方車両検知部108によって検知された他車両C2と自車両1との相対位置関係に基づいて、操舵量を抑制する。
【0030】
具体的に説明する。自車両1のサイズは決まっているので、各操舵量に対応するオーバーハング部分の突き出し量は一意に決まる。操舵量抑制部104は、各操舵量と、オーバーハング部分の突き出し量との関係を表すテーブルを有する。操舵量抑制部104は、後側方車両検知部108によって検知された自車両1と他車両C2の横方向距離(図2の例の場合、自車両1の右側端から他車両C2の左側端までの距離)に基づき、オーバーハング部分の突き出し量がこの横方向距離を超えないような操舵量をテーブル引きにより求め、その操舵量を出力する。
【0031】
このようにすることで、自車両1は、自動追従制御時に先行車C1が大きな横移動をした場合でも、移動方向と逆の後側方に存在する他車両C2との位置関係に基づいて操舵量を抑制するので、他車両C2との衝突を防止できる。
【0032】
また、自車両1は、自動追従制御部101及び操舵量抑制部104の制御によって、レーンチェンジする先行車C1への追従を操舵量を抑制しながら行っているときに、車線検知部111によって自車前方の車線が検知された場合、自動追従制御部101及び操舵量抑制部104の制御によるレーンチェンジを中断して、レーンキープ支援制御部110による制御に切り替えてレーンキープを行う。
【0033】
ここで、自車両1は、操舵量を抑制しながら自動追従制御によるレーンチェンジを行おうとするので、先行車C1によって隠れていた車線をレーンチェンジ中に検知できる可能性が高まる。よって、大きく蛇行することなく、レーンキープ制御に復帰できるといったメリットもある。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、先行車C1に追従するように自車1の加減速度及び操舵量を制御する自動追従制御部101と、自車両1の後側方の車両C2を検知する検知部108によって自車両1の後側方に他車両C2が検知された場合、他車両C2が検知された方向と逆方向への操舵量を抑制する操舵量抑制部104と、を設けたことにより、自動追従制御中に先行車C1が大きな横移動を行った場合でも、他車両C2への衝突を回避できる、走行制御装置100を実現できる。
【0035】
本開示の走行制御装置100は、左右方向への操舵時にオーバーハング量が大きい車両に搭載すると非常に有用である。
【0036】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本開示の技術は、自動追従制御機能を有する車両に適用可能であり、特にオーバーハングの長い大型車に有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
100 走行制御装置
101 自動追従制御部
102 前方レーダー
103 前方カメラ
104 操舵量抑制部
105 操舵部
106 エンジン及びブレーキ
107 後側方レーダー
108 後側方車両検知部
110 レーンキープ支援制御部
111 車線検知部
図1
図2