IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許-クロマトグラフ用オートサンプラ 図1
  • 特許-クロマトグラフ用オートサンプラ 図2
  • 特許-クロマトグラフ用オートサンプラ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】クロマトグラフ用オートサンプラ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20230808BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20230808BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G01N35/10 A
G01N35/00 E
G01N30/24 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021541888
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033845
(87)【国際公開番号】W WO2021038778
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】舎川 知広
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/167986(WO,A1)
【文献】特開平08-159930(JP,A)
【文献】特開平08-211073(JP,A)
【文献】特開2007-040811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 35/00
G01N 30/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィー用の分析流路中への試料の注入動作を実行する試料注入部と、
前記試料注入部の注入条件をユーザに入力させるための情報入力部と、
前記情報入力部を介して入力された前記注入条件に基づいて、前記試料注入部に同一試料の前記注入動作を複数回にわたって注入する連続注入動作を実行させるための動作命令が記述されたシーケンスデータを作成するように構成されたシーケンスデータ作成部であって、前記連続注入動作のうち初回の注入動作のための動作命令が記述された初回注入シーケンスを作成して第1データ領域に保存し、前記初回の注入動作の後で実行すべき繰返し注入動作のための動作命令が記述された繰返し注入シーケンスを作成して第2データ領域に保存し、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスの複製を第3データ領域に保存するように構成されたシーケンスデータ作成部と、
前記試料注入部を制御する制御部であって、前記第1データ領域の前記初回注入シーケンスを実行した後、前記試料注入部による試料注入回数が設定された回数に達するまで、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスを繰り返し実行することにより、前記試料注入部に前記連続注入動作を行なわせるように構成された制御部と、
前記情報入力部を介して前記繰返し注入動作についての変更された注入条件がユーザによって入力されたときに、前記変更された注入条件に基づいて前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスを変更するように構成されたシーケンス変更部と、
前記繰返し注入シーケンスが繰返し実行されることにより前記試料注入部が一の注入動作を終了した後、前記試料注入部による次の注入動作が開始される前に、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスを前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスで書き換えるように構成されたシーケンス書換え部と、を備えたクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項2】
前記シーケンス変更部は、ユーザにより前記繰返し注入シーケンスの変更指示が入力されたときに、前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスにおける変更可能なパラメータ項目を前記ユーザに提示して変更させるように構成されている、請求項1に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項3】
前記変更可能なパラメータ項目には注入間隔が含まれる、請求項2に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項4】
前記変更可能なパラメータ項目には、前記分析流路への試料注入量が含まれる、請求項2に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項5】
前記変更可能なパラメータ項目には、前記分析流路に注入すべき液の数及び種類が含まれる、請求項2に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項6】
前記シーケンスデータ作成部は、前記試料注入部が前記初回の注入動作よりも前に実行すべき前処理動作のための動作命令が記述された前処理シーケンスを作成して前記第1データ領域に保存するように構成されている、請求項1に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項7】
前記前処理動作は洗浄動作を含む、請求項6に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項8】
前記シーケンスデータ作成部は、前記試料注入部が前記連続注入動作を終了した後に実行すべき後処理動作のための動作命令が記述された後処理シーケンスを作成して第4データ領域に保存するように構成されており、
前記制御部は、前記試料注入部による試料注入回数が前記設定された回数に達した後で前記第4データ領域の前記後処理シーケンスを実行し、前記試料注入部に前記後処理動作を行なわせるように構成されている、請求項1に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ用オートサンプラに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ及び超臨界流体クロマトグラフでは、クロマトグラフィー用の分析流路中に試料を自動的に注入するオートサンプラが使用される。オートサンプラの動作制御は、事前に作成されたシーケンスデータに従って行われる。シーケンスデータには、試料注入前の前処理動作、試料の注入動作、試料注入が終了した後の後処理動作に関する動作命令が順に記述されており、オートサンプラの制御部がシーケンスデータに記述された動作命令を順に実行することで、オートサンプラによる前処理動作、注入動作、後処理動作が行われる。
【0003】
ユーザがシーケンスデータを編集することによって、標準的な試料の注入動作だけでなく、試料を希釈してから注入するようにしたり、注入動作を複数回にわたって繰り返し行ったりするなど、種々の動作をオートサンプラに実行させることができる。同一試料の分析を複数回にわたって実行する場合には、前の分析が終了する前に次の試料を分析流路へ注入する連続注入を実施することができる(特許文献1参照)。オートサンプラに連続注入を実行させる場合、シーケンスデータには、注入量などの標準的な注入動作に関連するパラメータだけでなく、注入回数、注入間隔、次の注入までの待機時間といったパラメータが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-131457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オートサンプラが連続注入を実行している間に、注入回数、注入間隔、試料注入量といった注入条件を変更したいという要望がある。しかし、オートサンプラの制御部が実行中のシーケンスデータの内容を変更することはできない。仮に実行中のシーケンスデータの内容を変更できるようにしたとしても、制御部は変更された内容をどの段階で動作に反映させればよいかを判断することは困難である。
【0006】
上記理由により、これまでのオートサンプラでは、連続注入の実行中に注入条件を変更することができなかった。このため、連続注入の注入条件を変更するためには、分析を中断させるか、又は、最後まで分析を実行させた後でシーケンスデータのパラメータ変更を行なう必要があり、移動相や時間の無駄が生じていた。また、ユーザが最適な注入条件を見つけるために何度も分析を実行する必要があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、試料の連続注入の実行中に注入条件を変更できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るクロマトグラフ用オートサンプラは、クロマトグラフィー用の分析流路中への試料の注入動作を実行する試料注入部と、前記試料注入部の注入条件をユーザに入力させるための情報入力部と、前記情報入力部を介して入力された前記注入条件に基づいて、前記試料注入部に同一試料の前記注入動作を複数回にわたって注入する連続注入動作を実行させるための動作命令が記述されたシーケンスデータを作成するように構成されたシーケンスデータ作成部であって、前記連続注入動作のうち初回の注入動作のための動作命令が記述された初回注入シーケンスを作成して第1データ領域に保存し、前記初回の注入動作の後で実行すべき繰返し注入動作のための動作命令が記述された繰返し注入シーケンスを作成して第2データ領域に保存し、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスの複製を第3データ領域に保存するように構成されたシーケンスデータ作成部と、前記試料注入部を制御する制御部であって、前記第1データ領域の前記初回注入シーケンスを実行した後、前記試料注入部による試料注入回数が設定された回数に達するまで、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスを繰り返し実行することにより、前記試料注入部に前記連続注入動作を行なわせるように構成された制御部と、前記情報入力部を介して前記繰返し注入動作についての変更された注入条件がユーザによって入力されたときに、前記変更された注入条件に基づいて前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスを変更するように構成されたシーケンス変更部と、前記繰返し注入シーケンスが繰返し実行されることにより前記試料注入部が一の注入動作を終了した後、前記試料注入部による次の注入動作が開始される前に、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスを前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスで書き換えるように構成されたシーケンス書換え部と、を備えている。
【0009】
ここで、制御部がシーケンスを実行するとは、制御部がシーケンスデータに記述された動作命令にしたがって試料注入部の動作を制御することを意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクロマトグラフ用オートサンプラによれば、試料注入部に連続注入動作を実行させるための動作命令が記述されたシーケンスデータのうち、初回の注入動作のための動作命令が記述された初回注入シーケンスを第1データ領域に保存し、前記初回の注入動作の後で実行すべき繰返し注入動作のための動作命令が記述された繰返し注入シーケンスを第2データ領域に保存し、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスの複製を第3データ領域に保存し、第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスの内容をユーザによって変更可能とした。そして、制御部は、前記第1データ領域の前記初回注入シーケンスを実行した後、前記試料注入部による試料注入回数が設定された回数に達するまで、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスを繰り返し実行する。一方で、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスは、前記繰返し注入シーケンスが実行されるときに前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスによって書き換えられ、書き換えられた前記繰返し注入シーケンスが次の注入動作のタイミングで前記制御部によって実行される。すなわち、前記試料注入部が連続注入動作を実行している間に前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスの内容が変更されると、その変更内容が前記試料注入部の注入動作に反映される。したがって、試料の連続注入を実行している間における連続注入の注入条件の変更が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】クロマトグラフ用オートサンプラの一実施例を示すブロック図である。
図2】シーケンスデータ作成部によって作成されるシーケンスデータのデータ構造を示す図である。
図3】同実施例の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るクロマトグラフ用オートサンプラの一実施例について説明する。
【0013】
図1に示されているように、この実施例のオートサンプラは、試料注入部2、制御装置4及び情報入力部6を備えている。図示は省略されているが、試料注入部2は、サンプリング用のニードル、ニードルを介して試料を吸入するためのシリンジポンプ、ニードルによって採取された試料を一時的に保持するためのサンプルループ、及び、サンプルループを液体クロマトグラフィー用又は超臨界流体クロマトグラフィー用の分析流路に介在させた状態と介在させない状態との間で流路状態を切り替えるための流路切替えバルブなどによって構成される。
【0014】
制御装置4は試料注入部2の動作制御を行なうためのものであり、CPU(中央演算装置)及びデータ記憶装置が搭載された電子回路によって実現することができる。制御装置4には、情報入力部6を介して種々の情報が入力される。情報入力部6を介して制御装置4に入力される情報には、試料注入部2のシーケンスデータの作成に必要な注入条件が含まれる。注入条件には、試料注入回数、試料注入量、連続注入における注入間隔、試料の希釈率といったパラメータが含まれる。
【0015】
制御装置4は、シーケンスデータ作成部8、制御部10、シーケンス変更部12及びシーケンス書換え部14を備えている。シーケンスデータ作成部8、制御部10、シーケンス変更部12及びシーケンス書換え部14は、CPUがデータ記憶装置に記憶された所定のプログラムを実行することによって得られる機能である。
【0016】
シーケンスデータ作成部8は、情報入力部6を介してユーザにより入力される注入条件に基づいて、試料注入部2による連続注入動作のシーケンスデータを作成するように構成されている。
【0017】
図2に示されているように、シーケンスデータ作成部8によって作成されるシーケンスデータには、前処理シーケンス、初回注入シーケンス、繰返し注入シーケンス及び後処理シーケンスが含まれる。
【0018】
前処理シーケンスは、試料の注入動作よりも前に試料注入部2が実行すべき前処理について規定したものである。前処理シーケンスには、試料注入部2に前処理を実行させるために必要な動作命令が順に記述される。前処理には、例えば、サンプリング用のニードルの洗浄動作、ニードルに接続された流路内の洗浄動作が含まれる。
【0019】
初回注入シーケンスは、前処理の後で試料注入部2が実行すべき初回の注入動作について規定したものである。初回注入シーケンスには、試料注入部2に初回の注入動作を実行させるために必要な動作命令が順に記述される。初回注入シーケンスの作成に用いられるパラメータとして、試料注入量、試料希釈率などが挙げられる。
【0020】
繰返し注入シーケンスは、初回の注入動作の後で試料注入部2が繰り返すべき注入動作(以下、繰返し注入動作という)について規定したものである。繰返し注入シーケンスには、試料注入部2に繰返し注入動作を実行させるために必要な動作命令が順に記述される。繰返し注入シーケンスの作成に用いられるパラメータとして、試料注入回数、試料注入量、注入間隔、試料の希釈率などが挙げられる。
【0021】
後処理シーケンスは、設定された回数の試料注入動作が終了した後で試料注入部2が実行すべき後処理について規定したものである。後処理シーケンスには、試料注入部2に後処理を実行させるために必要な動作命令が順に記述される。後処理には、例えば、サンプリング用のニードル又は流路の洗浄動作が含まれる。
【0022】
シーケンスデータ作成部8は、作成した前処理シーケンス及び初回注入シーケンスをデータ記憶装置の第1データ領域に保存し、繰返し注入シーケンスを第2データ領域に保存し、後処理シーケンスを第4データ領域に保存するように構成されている。さらに、シーケンスデータ作成部8は、第2データ領域に保存された繰返し注入シーケンスの複製を第3データ領域に保存するように構成されている。
【0023】
第1データ領域、第2データ領域及び第4データ領域に保存されたシーケンスの内容は、ユーザが任意に変更することはできない。一方で、第3データ領域に保存された繰返し注入シーケンスの内容は、ユーザが任意のタイミングで変更することができる。
【0024】
制御部10は、シーケンスデータ作成部8によって作成されたシーケンスデータを実行することにより、試料注入部2の動作制御を行なうように構成されている。具体的には、制御部10は、前処理シーケンス及び初回注入シーケンスを実行した後、試料の注入回数がユーザによって設定された回数に達するまで、第2データ領域の繰返し注入シーケンスを実行する。例えば、ユーザが試料の注入回数をm回と設定した場合、制御部10は、初回注入シーケンスを実行した後で、第2データ領域の繰返し注入シーケンスをm-1回実行する。制御部10は、試料注入回数が設定された回数に達すると、後処理シーケンスを実行する。
【0025】
シーケンス変更部12は、シーケンスデータ作成部8によってシーケンスデータが作成された後で、ユーザが繰返し注入動作の注入条件の変更を所望する場合に、ユーザに対して変更可能な注入条件のパラメータ項目を提示し、所望の項目のパラメータを変更させるように構成されている。さらに、シーケンス変更部12は、ユーザによって変更された注入条件のパラメータに基づいて、第3データ領域の繰返し注入シーケンスを変更するように構成されている。
【0026】
シーケンス書換え部14は、第2データ領域の繰返し注入シーケンスが制御部10によって実行されるときに、第2データ領域の繰返し注入シーケンスを第3データ領域の繰返し注入シーケンスによって書き換える(置換する)ように構成されている。
【0027】
試料の連続注入に関する一連の動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0028】
ユーザが制御装置4へ情報入力部6を介して注入条件に関するパラメータを入力すると、シーケンスデータ作成部8がシーケンスデータを作成する。シーケンスデータが作成された後、ユーザが分析開始の指示を入力すると、制御部10は第1データ領域に保存されている前処理シーケンスを実行する(ステップ101)。具体的には、前処理シーケンスに記述されている動作命令に従って試料注入部2の動作を制御し、試料注入部2に前処理を実行させる。
【0029】
試料注入部2の前処理動作が終了した後、制御部10は、第1データ領域に保存されている初回注入シーケンスを実行する(ステップ102)。具体的には、初回注入シーケンスに記述されている動作命令に従って試料注入部2の動作を制御し、試料注入部2に初回注入動作を実行させる。
【0030】
次に、制御部10は、第2データ領域に保存されている繰返し注入シーケンスを実行する(ステップ103)。具体的には、繰返し注入シーケンスに記述されている動作命令に従って試料注入部2の動作を制御し、試料注入部2に繰返し注入動作を実行させる。
【0031】
試料注入部2が繰返し注入動作を終了した後、試料注入部2が実行した試料注入回数がユーザによって設定された回数に達していない場合、シーケンス書換え部14が、第2データ領域の繰返し注入シーケンスを第3データ領域に保存されている繰返し注入シーケンスに書き換える(ステップ105)。制御部10は、シーケンス書換え部14によって書き換えられた第2データ領域の繰返し注入シーケンスを実行する(ステップ103)。この動作は、試料注入回数がユーザによって設定された回数に達するまで繰り返して実行される。試料注入回数がユーザによって設定された回数に達すると、制御部10は第4データ領域に保存されている後処理シーケンスを実行する(ステップ106)。具体的には、後処理シーケンスに記述されている動作命令に従って試料注入部2の動作を制御し、試料注入部2に後処理を実行させる。
【0032】
ここで、第3データ領域の繰返し注入シーケンスは、元々、第2データ領域の繰返し注入シーケンスの複製であるため、第3データ領域の繰返し注入シーケンスがシーケンス変更部12によって変更されない限り、試料注入部2は同じ繰返し注入動作を繰り返すことになる。一方、n回目の注入動作中に第3データ領域の繰返し注入シーケンスの内容がシーケンス変更部12によって変更された場合、n+1回目の注入動作はシーケンス変更部12によって変更された内容で実行される。すなわち、分析中にユーザが繰返し注入動作の注入条件を変更すると、次の繰返し注入動作にその変更内容が反映されることになる。したがって、従来では不可能であった分析中における注入条件の変更が可能になり、ユーザは注入条件の最適化を効率的に行なうことができる。
【0033】
以上において説明した実施例は、本発明のクロマトグラフ用オートサンプラの実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係るクロマトグラフ用オートサンプラの実施形態は以下のとおりである。
【0034】
本発明に係るクロマトグラフ用オートサンプラの実施形態は、クロマトグラフィー用の分析流路中への試料の注入動作を実行する試料注入部と、前記試料注入部の注入条件をユーザに入力させるための情報入力部と、前記情報入力部を介して入力された前記注入条件に基づいて、前記試料注入部に同一試料の前記注入動作を複数回にわたって注入する連続注入動作を実行させるための動作命令が記述されたシーケンスデータを作成するように構成されたシーケンスデータ作成部であって、前記連続注入動作のうち初回の注入動作のための動作命令が記述された初回注入シーケンスを作成して第1データ領域に保存し、前記初回の注入動作の後で実行すべき繰返し注入動作のための動作命令が記述された繰返し注入シーケンスを作成して第2データ領域に保存し、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスの複製を第3データ領域に保存するように構成されたシーケンスデータ作成部と、前記試料注入部を制御する制御部であって、前記第1データ領域の前記初回注入シーケンスを実行した後、前記試料注入部による試料注入回数が設定された回数に達するまで、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスを繰り返し実行することにより、前記試料注入部に前記連続注入動作を行なわせるように構成された制御部と、前記情報入力部を介して前記繰返し注入動作についての変更された注入条件がユーザによって入力されたときに、前記変更された注入条件に基づいて前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスを変更するように構成されたシーケンス変更部と、前記繰返し注入シーケンスが繰返し実行されるときに、前記第2データ領域の前記繰返し注入シーケンスを前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスで書き換えるように構成されたシーケンス書換え部と、を備えている。
【0035】
本発明に係るクロマトグラフ用オートサンプラの実施形態の第1態様では、前記シーケンス変更部は、ユーザにより前記繰返し注入シーケンスの変更指示が入力されたときに、前記第3データ領域の前記繰返し注入シーケンスにおける変更可能なパラメータ項目を前記ユーザに提示して変更させるように構成されている。このような態様により、分析中に変更可能なパラメータ項目がユーザに提示されるので、ユーザは容易に注入条件の変更を行なうことができる。
【0036】
上記第1態様において、前記変更可能なパラメータ項目には注入間隔が含まれていてもよい。注入間隔とは、分析流路に試料が注入されてから次に分析流路へ試料が注入されるまでの時間である。
【0037】
上記第1態様において、前記変更可能なパラメータ項目には、前記分析流路への試料注入量が含まれていてもよい。
【0038】
上記第1態様において、前記変更可能なパラメータ項目には、前記分析流路に注入すべき液の数及び種類が含まれていてもよい。分析流路に注入すべき液として希釈液が挙げられる。このような態様により、サンプリング用のニードルで吸入する液の数や種類を変更したり追加したりすることが可能となる。例えば、初期の設定では試料を希釈しないで分析流路へ注入するようになっていた場合に、分析流路に注入すべき液として希釈液を追加するように繰返し注入シーケンスを変更することができる。このような変更はシーケンスデータの行数の変更を伴うため、制御部が実行中のシーケンスデータを書き換えると、制御部による試料注入部の制御に支障をきたす可能性がある。一方、本発明では、制御部によって実行されない第3データ領域の繰返し注入シーケンスが変更された後、制御部によって次に第2データ領域の繰返し注入シーケンスが実行されるタイミングで、第2データ領域の繰返し注入シーケンスが第3データ領域の繰返し注入シーケンスに書き換えられるため、問題なく試料注入部の動作に反映させることができる。
【0039】
本発明に係るクロマトグラフ用オートサンプラの実施形態の第2態様では、前記シーケンスデータ作成部は、前記試料注入部が前記初回の注入動作よりも前に実行すべき前処理動作のための動作命令が記述された前処理シーケンスを作成して前記第1データ領域に保存するように構成されている。
【0040】
上記第2態様において、前記前処理動作は洗浄を含んでいてもよい。洗浄には、サンプリング用のニードルの洗浄、ニードルに接続された流路内の洗浄などを含むことができる。
【0041】
本発明に係るクロマトグラフ用オートサンプラの実施形態の第3態様では、前記シーケンスデータ作成部は、前記試料注入部が前記連続注入動作を終了した後に実行すべき後処理動作のための動作命令が記述された後処理シーケンスを作成して第4データ領域に保存するように構成されており、前記制御部は、前記試料注入部による試料注入回数が前記設定された回数に達した後で前記第4データ領域の前記後処理シーケンスを実行し、前記試料注入部に前記後処理動作を行なわせるように構成されている。
【符号の説明】
【0042】
2 試料注入部
4 制御装置
6 情報入力部
8 シーケンスデータ作成部
10 制御部
12 シーケンス変更部
14 シーケンス書換え部
図1
図2
図3