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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20230808BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20230808BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20230808BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230808BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230808BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20230808BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20230808BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230808BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20230808BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20230808BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20230808BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230808BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20230808BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230808BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230808BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20230808BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230808BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20230808BHJP
   H01M 50/193 20210101ALN20230808BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/264
H01M50/186
H01M50/204 101
H01M50/249
H01M50/289 101
H01M50/293
H01M10/613
H01M10/6561
H01M10/6567
H01M10/6556
H01M10/625
H01M50/342 201
H01M50/204 401F
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M50/548
H01G11/12
H01G11/78
H01M50/193
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021556009
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2020040672
(87)【国際公開番号】W WO2021095551
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019205521
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020002377
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129031(JP,A)
【文献】特開2010-198933(JP,A)
【文献】特開2013-037946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/262
H01M 50/264
H01M 50/186
H01M 50/204
H01M 50/249
H01M 50/289
H01M 50/293
H01M 10/613
H01M 10/6561
H01M 10/6567
H01M 10/6556
H01M 10/625
H01M 50/342
H01M 10/04
H01M 10/0585
H01M 50/548
H01G 11/12
H01G 11/78
H01M 50/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、前記集電体の一方の主面に設けられた正極層、及び前記集電体の他方の主面に設けられた負極層を含むと共に第1方向に積層された複数のバイポーラ電極を有する電極積層体と、前記電極積層体の前記第1方向に沿った側面を封止する封止部材と、を有する蓄電モジュールを少なくとも1つ含むモジュール構造体と、
前記モジュール構造体を収容するケースと、
前記ケースに収容された第1中間部材と、
を備え、
前記ケースは、前記第1方向において開口する開口部が設けられた有底箱型の本体部と、シール部材を介して前記本体部に気密に固定され前記開口部を塞ぐ蓋部と、を有し、
前記第1方向において前記開口部に対向する前記本体部の底壁部、及び前記蓋部は、前記第1方向における前記モジュール構造体の両端に配置され前記モジュール構造体に拘束荷重を付加するための一対の拘束部材であり、
前記ケースの内部が前記ケースの外部に対して減圧されており、前記ケースの内部と前記ケースの外部との圧力差によって、前記拘束部材を介して前記モジュール構造体に対して前記拘束荷重が付加され、
前記モジュール構造体は、当該モジュール構造体の前記第1方向の一端を構成すると共に前記電極積層体に電気的に接続された集電板をさらに含み、
前記モジュール構造体は、前記第1方向に積層された複数の前記蓄電モジュールと、前記第1方向において隣り合う前記蓄電モジュールの間に配置された熱交換器とをさらに含み、
前記第1中間部材は、前記拘束部材と前記集電板との間に介在されており、前記拘束部材からの前記拘束荷重を前記モジュール構造体に伝達し、
前記第1中間部材は、前記拘束荷重に応じて変形可能な第1パッケージと、前記第1パッケージに封入された流体と、を含む、
蓄電装置。
【請求項2】
前記第1中間部材の外縁は、前記第1方向から見て前記集電板の外縁よりも外側に位置している、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記モジュール構造体の前記一端には、前記第1方向から見て前記集電板を囲むように前記集電板の外側に前記封止部材が配置されており、
前記第1中間部材は、前記集電板から前記封止部材にわたって配置されている、
請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第1中間部材の外縁は、前記第1方向から見て前記集電板の外側に配置された前記封止部材の外縁よりも外側に位置している、
請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記第1中間部材の外縁は、前記第1方向から見て前記集電板の外縁よりも内側に位置している、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第1中間部材と前記モジュール構造体との間に配置され、前記第1中間部材と前記モジュール構造体とを接着する第1接着層、及び前記第1中間部材と前記拘束部材との間に配置され、前記第1中間部材と前記拘束部材とを接着する第2接着層の少なくとも一方をさらに備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第1中間部材と前記モジュール構造体との間において、前記第1中間部材の外縁又は前記モジュール構造体の外縁に沿って設けられたシール部材をさらに備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項8】
車両に搭載される蓄電装置であって、
前記蓋部は、前記車両のパネル部材によって構成されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記モジュール構造体における前記第1方向に延在する側面と前記ケースの前記本体部の内面との間に介在する第2中間部材をさらに備え、
前記第2中間部材は、内容物の充填に応じて膨張可能な第2パッケージと、前記第2パッケージ内に充填された衝撃吸収材とによって構成されている、
請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記モジュール構造体は、前記第1方向に積層された複数の前記蓄電モジュールと、前記第1方向に隣り合う前記蓄電モジュール間に配置された熱交換器と、を含み、
前記第2中間部材は、少なくとも前記蓄電モジュール及び前記熱交換器と前記本体部の前記内面との間に介在している、
請求項に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記第2パッケージは、電気絶縁性を有する材料によって構成されている、
請求項9又は10に記載の蓄電装置。
【請求項12】
前記ケースは、前記モジュール構造体を気密に収容するケースであり、
前記ケースにおいて、前記内面を構成する壁部には、前記第2中間部材と接しない位置に圧力開放弁が設けられている、
請求項9~11のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項13】
前記第2パッケージは、前記蓄電モジュールの劣化時或いは異常時に前記蓄電モジュールから生じる気体によって破断可能な材料によって構成され、
前記第2パッケージ内には、前記衝撃吸収材と共に発火抑制剤が充填されている、
請求項9~12のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項14】
集電体、前記集電体の一方の主面に設けられた正極層、及び前記集電体の他方の主面に設けられた負極層を含むと共に第1方向に積層された複数のバイポーラ電極を有する電極積層体と、前記電極積層体の前記第1方向に沿った側面を封止する封止部材と、を有する蓄電モジュールを少なくとも1つ含むモジュール構造体と、
前記モジュール構造体を収容するケースと、
前記ケースに収容された第1中間部材と、
前記ケースに収容された第2中間部材と、
を備え、
前記ケースは、前記第1方向において開口する開口部が設けられた有底箱型の本体部と、前記開口部を塞ぐ蓋部と、を有し、
前記第1方向において前記開口部に対向する前記本体部の底壁部、及び前記蓋部は、前記第1方向における前記モジュール構造体の両端に配置され前記モジュール構造体に拘束荷重を付加するための一対の拘束部材であり、
前記モジュール構造体は、当該モジュール構造体の前記第1方向の一端を構成すると共に前記電極積層体に電気的に接続された集電板をさらに含み、
前記第1中間部材は、前記拘束部材と前記集電板との間に介在されており、前記拘束部材からの前記拘束荷重を前記モジュール構造体に伝達し、
前記第1中間部材は、前記拘束荷重に応じて変形可能な第1パッケージと、前記第1パッケージに封入された流体と、を含み、
前記第2中間部材は、前記モジュール構造体における前記第1方向に延在する側面と前記ケースの前記本体部の内面との間に介在されており、
前記第2中間部材は、内容物の充填に応じて膨張可能な第2パッケージと、前記第2パッケージ内に充填された衝撃吸収材とによって構成されている、
蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電装置が記載されている。この蓄電装置は、互に積層された複数の蓄電モジュールを含むモジュール積層体と、モジュール積層体に対して拘束荷重を付加する拘束部材と、を備えている。拘束部材は、モジュール積層体を積層方向に挟む一対のエンドプレートと、エンドプレート同士を締結するボルト及びナットと、によって構成されている。エンドプレートの縁部には、モジュール積層体よりも外側となる位置に挿通孔が設けられている。ボルトは、一方のエンドプレートの挿通から他方のエンドプレートの挿通孔に通されており、他方のエンドプレートの挿通孔から突出したボルトの先端部にはナットが螺合されている。これにより、モジュール積層体がエンドプレートによって挟持されて拘束荷重が付加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-129031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した蓄電装置では、エンドプレートのモジュール積層体側の面に、電気絶縁性を有するフィルムが設けられることによって、エンドプレートとモジュール積層体との間の絶縁が図られている。このため、上述した蓄電装置では、エンドプレートからの拘束荷重が、フィルムを介してモジュール積層体に付加される。
【0005】
一方、一対のエンドプレートを互いに締結するためのボルトが、エンドプレートの縁部に配置されている。このため、モジュール積層体に拘束荷重を付加するに際して、一対のエンドプレートの縁部が互いに対向する方向に撓むように、エンドプレートが変形するおそれがある。したがって、上記技術分野にあっては、エンドプレートといった拘束部材が変形した場合であっても、蓄電モジュールに対して均一に拘束荷重を付加可能とすることが要求され得る。
【0006】
そこで、本開示は、拘束部材が変形した場合でも蓄電モジュールに対して均一に拘束荷重を付加可能な蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を進めることにより、次のような知見を得た。すなわち、拘束部材と、蓄電モジュールを含むモジュール構造体との間に、ゴムやスポンジ等の単一の弾性部材からなる中間部材を介在させた場合には、拘束部材の変形量に応じて、当該中間部材が位置により異なる圧縮量で圧縮される結果、モジュール構造体への拘束荷重が位置に応じてばらつくおそれがある。これに対して、拘束荷重に応じて変形可能なパッケージに液体や気体等の流体を封入して構成される中間部材を利用すれば、当該中間部材が位置により異なる圧縮量で圧縮されても、パッケージ内部の圧力が一定に保たれる結果、蓄電モジュールに対して均一に拘束荷重を付加することが可能となる。本開示は、以上の知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本開示に係る蓄電装置は、集電体、集電体の一方の主面に設けられた正極層、及び集電体の他方の主面に設けられた負極層を含むと共に第1方向に積層された複数のバイポーラ電極を有する電極積層体と、電極積層体の第1方向に沿った側面を封止する封止部材と、を有する蓄電モジュールを少なくとも1つ含むモジュール構造体と、第1方向におけるモジュール構造体の両端に配置され、モジュール構造体に拘束荷重を付加するための一対の拘束部材と、拘束部材とモジュール構造体との間に介在され、拘束部材からの拘束荷重をモジュール構造体に伝達する第1中間部材と、を備え、第1中間部材は、拘束荷重に応じて変形可能な第1パッケージと、第1パッケージに封入された流体と、を含む。
【0009】
この蓄電装置においては、モジュール構造体に対して、その両端に配置された一対の拘束部材から拘束荷重が付加される。拘束部材とモジュール構造体との間には、拘束部材からの拘束荷重をモジュール構造体に伝達する第1中間部材が配置されている。そして、第1中間部材は、拘束荷重に応じて変形可能な第1パッケージと、第1パッケージに封入された流体と、を含む。このため、上記の知見のとおり、拘束部材の変形に応じて第1中間部材が位置により異なる圧縮量で圧縮されても、第1パッケージ内部の圧力が一定に保たれる結果、蓄電モジュールに対して均一に拘束荷重を付加することが可能である。
【0010】
本開示に係る蓄電装置においては、モジュール構造体は、当該モジュール構造体の第1方向の一端を構成すると共に電極積層体に電気的に接続された集電板をさらに含み、第1中間部材は、第1中間部材の外縁が第1方向から見て集電板の外縁よりも外側に位置するように、拘束部材と集電板との間に介在されていてもよい。この場合、モジュール構造体に対して拘束荷重が付加されると、第1中間部材における集電板と重なる部分が圧縮され、第1中間部材における集電板よりも外側に位置する部分が集電板の縁を包むように集電板に向かって変形する。これにより、第1中間部材の動きが集電板の縁によって規制されるため、第1中間部材とモジュール構造体とのずれが抑制される。
【0011】
本開示に係る蓄電装置においては、モジュール構造体の一端には、第1方向から見て集電板を囲むように集電板の外側に封止部材が配置されており、第1中間部材は、集電板から封止部材にわたって配置されていてもよい。この場合、蓄電モジュールに加えて、封止部材に対して均一に拘束荷重を付加できる。
【0012】
本開示に係る蓄電装置においては、第1中間部材の外縁は、第1方向から見て集電板の外側に配置された封止部材の外縁よりも外側に位置していてもよい。この場合、上述したようにモジュール構造体に対して拘束荷重が付加されると、第1中間部材における集電板及び封止部材と重なる部分は、圧縮され、第1中間部材における封止部材よりも外側に位置する部分は、封止部材の縁を包むように封止部材に向かって変形する。これにより、第1中間部材の動きが封止部材の縁によって規制されるため、第1中間部材とモジュール構造体とのずれが抑制される。
【0013】
本開示に係る蓄電装置においては、モジュール構造体は、当該モジュール構造体の第1方向の一端を構成すると共に電極積層体に電気的に接続された集電板をさらに含み、第1中間部材は、第1中間部材の外縁が第1方向から見て集電板の外縁よりも内側に位置するように、拘束部材と集電板との間に介在されていてもよい。この場合、第1中間部材の第1パッケージが集電板の縁に接触していないため、第1パッケージの破損が抑制される。
【0014】
本開示に係る蓄電装置は、第1中間部材とモジュール構造体との間に配置され、第1中間部材とモジュール構造体とを接着する第1接着層、及び第1中間部材と拘束部材との間に配置され、第1中間部材と拘束部材とを接着する第2接着層の少なくとも一方をさらに備えてもよい。この場合、上記のように変形可能な第1パッケージの第1中間部材を用いていても、拘束部材とモジュール構造体とのずれが抑制される。
【0015】
本開示に係る蓄電装置は、第1中間部材とモジュール構造体との間において、第1中間部材の外縁又はモジュール構造体の外縁に沿って設けられたシール部材をさらに備えてもよい。この場合、第1中間部材とモジュール構造体との間への水分等の侵入が抑制されるため、モジュール構造体での錆の発生等が抑制される。
【0016】
本開示に係る蓄電装置は、拘束部材同士を締結することにより、拘束部材を介してモジュール構造体に対して拘束荷重を付加するための締結部材をさらに備えてもよい。この場合、拘束部材が変形したとしても、蓄電モジュールに対して均一に拘束荷重を付加することが可能である。
【0017】
本開示に係る蓄電装置は、モジュール構造体を収容するケースを備え、ケースは、第1方向において開口する開口部が設けられた有底箱型の本体部と、開口部を塞ぐ蓋部と、を有し、一対の拘束部材は、第1方向において開口部に対向する本体部の底壁部、及び蓋部によって構成されていてもよい。また、ケース内が大気圧に対して減圧されることにより、底壁部及び蓋部を介してモジュール構造体に対して拘束荷重が付加されていてもよい。この場合、蓄電モジュールに対して均一に拘束荷重を付加することが可能である。また、モジュール構造体への振動又は蓋部のうねりの影響を第1中間部材によって十分に緩和できる。
【0018】
本開示に係る蓄電装置においては、蓋部は、車両のパネル部材によって構成されていてもよい。この場合、モジュール構造体への車両のパネル部材のうねりの影響を第1中間部材によって十分に緩和できる。
【0019】
本開示に係る蓄電装置は、モジュール構造体における第1方向に延在する側面とケースの本体部の内面との間に介在する第2中間部材をさらに備え、第2中間部材は、内容物の充填に応じて膨張可能な第2パッケージと、第2パッケージ内に充填された衝撃吸収材とによって構成されていてもよい。この場合、モジュール構造体の側面と本体部の内面との間に第2パッケージを萎ませた状態で配置した後に、第2パッケージ内に衝撃吸収材を充填し、第2パッケージを膨張させることによって、モジュール構造体の側面と本体部の内面との間に第2中間部材を隙間なく配置できる。したがって、この蓄電装置では、モジュール構造体への振動の影響を第2中間部材によって十分に緩和できる。
【0020】
本開示に係る蓄電装置においては、モジュール構造体は、第1方向に積層された複数の蓄電モジュールと、第1方向に隣り合う蓄電モジュール間に配置された熱交換器と、を含み、第2中間部材は、少なくとも蓄電モジュール及び熱交換器と本体部の内面との間に介在していてもよい。この場合、モジュール構造体の主要な構成に対する振動の影響を十分に緩和できる。
【0021】
本開示に係る蓄電装置においては、第2パッケージは、電気絶縁性を有する材料によって構成されていてもよい。この場合、第2中間部材の介在によってモジュール構造体と本体部との間の電気絶縁性を確保できる。モジュール構造体と本体部との絶縁にあたって別の絶縁部材を配置する必要がなくなるため、装置構成を簡素化できる。
【0022】
本開示に係る蓄電装置においては、ケースは、モジュール構造体を気密に収容するケースであり、当該ケースにおいて、内面を構成する壁部には、第2中間部材と接しない位置に圧力開放弁が設けられていてもよい。この場合、蓄電モジュールの劣化時或いは異常時にケースの内圧が高まった場合に圧力開放弁が作動し、ケース内の圧力を緩和できる。圧力開放弁が第2中間部材と接しない位置に設けられることにより、圧力開放弁による圧力の緩和が第2中間部材によって阻害されることも回避できる。
【0023】
本開示に係る蓄電装置においては、第2パッケージは、蓄電モジュールの劣化時或いは異常時に蓄電モジュールから生じる気体によって破断可能な材料によって構成され、第2パッケージ内には、衝撃吸収材と共に発火抑制剤が充填されていてもよい。この場合、蓄電モジュールの劣化時或いは異常時に蓄電モジュールから生じる気体によって第2パッケージが破断し、当該気体を第2パッケージ内の発火抑制剤に接触させることが可能となる。したがって、蓄電装置の安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、拘束部材が変形した場合でも蓄電モジュールに対して均一に拘束荷重を付加可能な蓄電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、第1実施形態に係る蓄電装置を示す模式的な側面図である。
図2図2は、図1に示された蓄電モジュールの模式的な断面図である。
図3図3は、第2実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
図4図4は、図3に示された蓄電モジュールの層構成を示す概略的な断面図である。
図5図5は、ダンパの構成の一例を示す要部拡大断面図である。
図6図6の(a)及び(b)は、第2実施形態に係る蓄電装置の製造方法の一実施形態を示す概略的な断面図である。
図7】変形例に係る蓄電モジュールの模式的な断面図である。
図8】変形例に係る蓄電モジュールの模式的な断面図である。
図9】変形例に係る蓄電モジュールの模式的な断面図である。
図10】変形例に係る蓄電モジュールの模式的な断面図である。
図11】変形例に係る蓄電装置を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。図1及び図2の説明においては、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、図1及び図2には、X軸、Y軸、及び、Z軸によって規定される直交座標系を図示する。Z軸方向は、一例として鉛直方向であり、X軸方向及びY軸方向は、一例として水平方向である。
【0027】
図1は、第1実施形態に係る蓄電装置を示す模式的な側面図である。図1に示される蓄電装置1Aは、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられ得る。蓄電装置1Aは、積層体(モジュール構造体)2と、積層体2に電気的に接続される接続部材3,4と、積層体2を拘束する(積層体2に拘束荷重を付加する)ための一対の拘束板(拘束部材)5と、拘束板5を互いに締結する締結部材6と、積層体2と拘束板5のそれぞれとの間に配置された中間部材(第1中間部材)7と、を備える。
【0028】
積層体2は、Z軸方向(第1方向)に沿って積層された複数の蓄電モジュール11と、蓄電モジュール11に接触するように設けられた正極集電板12及び負極集電板(集電板)13と、を有している。以下では、Z軸方向を単に「積層方向」という場合がある。ここでは、積層体2は、2つの蓄電モジュール11を有している。正極集電板12は、互に隣り合う蓄電モジュール11の間に配置されている。負極集電板13は、積層方向における積層体2の両端に配置されている。換言すれば、負極集電板13は、積層方向における積層体2の両端を構成している。負極集電板13は、蓄電モジュール11を構成する電極に電気的に接続されている。中間部材7は、負極集電板13のそれぞれと拘束板5との間に介在されている。
【0029】
接続部材3は、蓄電装置1Aの正極として機能する導電部材(バスバー)である。接続部材3は、一例として積層方向に沿って設けられている。接続部材3は、例えば、金属板又は合金板である。金属板の材料としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、及び、ニッケル等が挙げられる。合金板の材料としては、例えば、ステンレス鋼板(SUS301、SUS304等)や、上記金属板の材料の合金が挙げられる。接続部材3は、(ここでは1つの)正極集電板12に電気的に接続されている。
【0030】
接続部材4は、蓄電装置1Aの負極として機能する導電部材(バスバー)である。接続部材4は、一例として積層方向に沿って設けられている。接続部材4は、接続部材3の金属板や合金板と同一の材料の金属板又は合金板であってもよいし、接続部材3の金属板や合金板と異なる材料の金属板又は合金板であってもよい。接続部材4は、(ここでは2つの)負極集電板13に電気的に接続されている。
【0031】
接続部材3,4の少なくとも一方は、熱伝導性に優れる放熱フィン(不図示)等を取り付けてもよい。この場合、蓄電モジュール11において発生した熱を、正極集電板12、負極集電板13、接続部材3,4、及び、放熱フィンを介して蓄電モジュール11の外部に効果的に放熱することが可能となる。
【0032】
拘束板5のそれぞれは、積層方向における積層体2の両端に配置されている。拘束板5のそれぞれは、例えば導電性の金属(例えば、銅、アルミニウム、チタン又はニッケル等の金属、若しくは、これらの金属を含む合金又はステンレス鋼等の合金)から構成され得る。締結部材6は、例えばボルト6A及びナット6Bを含み、拘束板5を互いに締結することにより、拘束板5を介して積層体2に拘束荷重を付加する。拘束板5のそれぞれには、ボルト6Aが挿通される貫通孔が形成されている。
【0033】
中間部材7のそれぞれは、例えば、全体として絶縁性を有する。中間部材7のそれぞれは、ここでは負極集電板13に接触している。すなわち、ここでは、積層方向における積層体2の両端に、後述する負極層23となる活物質層が塗工された負極終端電極19が配置されるように、蓄電モジュール11が配列されている。中間部材7の具体的な構成については後述する。
【0034】
引き続いて、図2を参照して蓄電モジュール11の詳細について説明する。図2は、図1に示された蓄電装置の一部を拡大して示す模式的な断面図である。図2では、図1に示された2つの蓄電モジュール11のうちの一方を主に示している。図2に示されるように、蓄電モジュール11は、略直方体形状を呈する単電池である。蓄電モジュール11は、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電モジュール11は、電気二重層キャパシタであってもよい。蓄電モジュール11は、全固体電池であってもよい。
【0035】
ここでは、蓄電モジュール11は、バイポーラ型のリチウムイオン二次電池である。蓄電モジュール11は、積層方向において正極集電板12と負極集電板13とによって挟まれており、正極集電板12を介して接続部材3に電気的に接続されると共に、負極集電板13を介して接続部材4に電気的に接続される。
【0036】
蓄電モジュール11は、積層体(電極積層体)14と、封止部材15と、を備えている。積層体14は、複数のバイポーラ電極(電極)16、複数のセパレータ17、正極終端電極(電極)18、及び、負極終端電極(電極)19を有している。複数のバイポーラ電極16は、ここでは、Z軸方向に沿って積層されている。このように、ここでは、バイポーラ電極16の積層方向と蓄電モジュール11の積層方向とが一致しているため、以下では、バイポーラ電極16の積層方向も単に「積層方向」という場合がある。積層体14は、積層方向に沿った側面14sを有している。
【0037】
正極終端電極18は、積層方向における積層体14の一端において、バイポーラ電極16に積層されている。負極終端電極19は、積層方向における積層体14の他端において、バイポーラ電極16に積層されている。セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及び、バイポーラ電極16と負極終端電極19との間に介在されている。
【0038】
バイポーラ電極16は、電極板(集電体)21、正極層(電極層)22、及び、負極層(電極層)23を有している。電極板21は、積層方向に交差する一対の主面21a,21bを含む。主面21aには正極層22が設けられ、主面21bには負極層23が設けられている。すなわち、バイポーラ電極16は、電極板21の両面に形成された電極層を含む。電極板21は、積層方向に沿って正極層22と負極層23とによって挟まれている。なお、バイポーラ電極16は、一方の面に正極層22が形成された電極板21と、一方の面に負極層23が形成された別の電極板21とを、電極層が形成されていない面同士が接触するように重ね合されて形成されてもよい。
【0039】
電極板21は、シート状の導電部材であり、略矩形状を呈している。電極板21は、例えば、金属箔又は合金箔である。金属箔は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、又は、ニッケル箔等である。合金箔は、例えば、ステンレス鋼箔(例えば、JIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301等)、メッキ処理が施された鋼板(例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等))、メッキ処理が施されたステンレス鋼板、又は、上記金属箔に用いられる金属材料を含む合金箔等である。電極板21が合金箔である場合、或いは、電極板21がアルミニウム箔以外の金属箔である場合、電極板21の表面はアルミニウムで被覆されていてもよい。電極板21の厚さは、例えば、5μm以上70μm以下である。
【0040】
正極層22は、正極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材であり、略矩形状を呈している。本実施形態の正極活物質は、例えば、複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等である。複合酸化物の組成には、例えば、鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物の例には、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)が挙げられる。結着剤は、活物質又は導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。
【0041】
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。粘度調整溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等である。
【0042】
負極層23は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材であり、略矩形状を呈している。本実施形態の負極活物質は、例えば、黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、カーボン(ハードカーボン、ソフトカーボン等)、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等である。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。導電助剤及び結着剤は正極層22と同様のものを用いることができる。
【0043】
正極終端電極18は、電極板21と、電極板21の一方の主面21aに形成された正極層22と、含む。正極終端電極18においては、電極板21の他方の主面21bには正極層22や負極層23等の電極層が形成されていない。正極終端電極18は、電極板21の一方の主面21a及び正極層22がバイポーラ電極16側(積層体14の内側)に向くようにバイポーラ電極16に積層されている。
【0044】
負極終端電極19は、電極板21と、電極板21の他方の主面21bに形成された負極層23と、を含む。負極終端電極19においては、電極板21の他方の主面21bには、正極層22や負極層23等の電極層が形成されていない。負極終端電極19は、電極板21の他方の主面21b及び負極層23がバイポーラ電極16側(積層体14の内側)に向くようにバイポーラ電極16に積層されている。
【0045】
セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間のそれぞれを隔てる層状部材であり、略矩形状を呈している。セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間の短絡を防止する部材である。セパレータ17は、正極層22及び負極層23に含まれる電解質を含んで構成されている。セパレータ17が固体電解質によって構成される場合、セパレータ17は、略矩形板形状を呈してもよい。セパレータ17の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0046】
セパレータ17は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムに電解質を含ませたものであってもよい。セパレータ17は、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等に電解質を含ませたものであってもよい。セパレータ17は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。
【0047】
封止部材15は、積層体14に含まれる複数のバイポーラ電極16、複数のセパレータ17、正極終端電極18、及び負極終端電極19を保持する部材であり、絶縁性を有している。より詳細には、封止部材15は、バイポーラ電極16、正極終端電極18、及び負極終端電極19を構成する電極板21を保持している。封止部材15は、積層体14の側面14sを封止すると共に、バイポーラ電極16同士の短絡を防止する短絡防止部材としても機能し得る。
【0048】
封止部材15は、積層方向からみたとき、電極板21の外形に沿って枠状(ここでは矩形枠状)に設けられており、電極板21の外縁部21cにおいて、積層方向に隣り合う電極板21の間に介在されている。電極板21の間に介在する封止部材15は、電極板21の外縁部21cにおいて主面21aに接合(例えば溶着)されている。なお、封止部材15は、電極板21の主面21bにさらに接合(例えば溶着)されていてもよいし、積層方向に隣り合う封止部材15同士が互いに接合(例えば溶着)されていてもよい。一方、封止部材15は、積層方向における積層体14の一端では、正極終端電極18の電極板21の積層体14の外側に臨む主面21b上にも配置され、当該主面21bにも接合(例えば溶着)されている。さらに、封止部材15は、負極終端電極19の電極板21の積層体14の外側に臨む主面21a上に配置され、当該主面21aに接合(例えば溶着)されている。
【0049】
積層方向から見て、正極終端電極18の電極板21の主面21bにおける封止部材15に囲われる領域には、正極集電板12(後述する本体部12a)が配置されている。すなわち、積層方向における積層体14の一端には、積層方向から見て正極集電板12を囲うように封止部材15が配置されることとなる。また、積層方向から見て、負極終端電極19の電極板21の主面21aにおける封止部材15に囲われる領域には、負極集電板13(後述する本体部13a)が配置されている。すなわち、積層方向における積層体14の他端には、積層方向から見て負極集電板13を囲うように負極集電板13の外側に封止部材15が配置されることとなる。
【0050】
封止部材15を形成する材料は、耐熱性を示す樹脂部材等である。耐熱性を示す樹脂部材の例としては、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)及びポリアミド(PA)等が挙げられる。封止部材15の厚さは、例えば、400μm以上900μm以下である。
【0051】
封止部材15によって封止された空間(封止部材15と電極板21とによって囲われた領域)Sには、図示しない電解液が収容されている。電解液の例は、カーボネート系又はポリカーボネート系の電解液である。電解液に含まれる支持塩は、例えばリチウム塩である。リチウム塩は、例えば、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO、もしくはこれらの混合物である。
【0052】
正極集電板12は、積層体14に接触する導電部材であり、板形状を呈している。正極集電板12は、積層方向において蓄電モジュール11に隣接している。すなわち、正極集電板12は、正極終端電極18の電極板21に接触している。正極集電板12は、電極板21に接触する本体部12aと、積層方向において本体部12aの縁12bの一部から突出する突出部12cとを有する。ここでは、接続部材3は、この突出部12cに接続されている。本体部12aは、積層方向においてバイポーラ電極16及びセパレータ17に重なる部分であり、略矩形状を呈している。正極集電板12の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0053】
負極集電板13は、積層体14に接触する導電部材であり、板形状を呈している。負極集電板13は、正極集電板12と同様に積層方向において蓄電モジュール11に隣接している。すなわち、負極集電板13は、負極終端電極19の電極板21に接触している。負極集電板13は、電極板21に接触する本体部13aと、積層方向において本体部13aの縁13bの一部から突出する突出部13cとを有する。ここでは、接続部材4は、この突出部13cに接続されている。本体部13aは、積層方向においてバイポーラ電極16及びセパレータ17に重なる部分であり、略矩形状を呈している。負極集電板13の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0054】
正極集電板12及び負極集電板13の少なくとも一方には、積層方向に交差する方向(例えば、X軸方向又はY軸方向)に貫通する貫通孔(図示せず)が形成されていてもよい。この場合、蓄電装置1Aの放熱性を高めることができる。また、当該貫通孔には、熱伝導率の高い流体を流通させてもよい。この場合、蓄電装置1Aの放熱性をより一層高めることができる。
【0055】
二つの蓄電モジュール11は、正極終端電極18が互いに対向するように配置されている。正極集電板12は、これら互いに対向する二つの正極終端電極18に接触するように配置されている。すなわち、本実施形態では、一つの正極集電板12が、二つの蓄電モジュール11の正極集電板として機能している。
【0056】
蓄電装置1Aは、積層体2を構成する複数の蓄電モジュール11を1つの蓄電セル群としてみたとき、積層方向において蓄電セル群の両端に配置される電極は、共に負極終端電極19であるか、又は、共に正極終端電極18である。ここでは、積層方向において蓄電セル群の両端に配置される電極は、共に負極終端電極19である。言い換えれば、二つの蓄電モジュール11は、負極終端電極19が互いに背向するように(正極終端電極18が互いに対向するように)配置されている。二つの負極集電板13のそれぞれは、これら互いに背向する二つの負極終端電極19のそれぞれに接触するように配置されている。
【0057】
引き続いて、図1,2を参照し、中間部材7について説明する。中間部材7は、拘束板5と積層体2との間に介在されている。中間部材7は、拘束板5と積層体2とを電気的に絶縁している。本実施形態においては、積層方向における積層体2の両端に負極集電板13が配置されている。したがって、中間部材7は、拘束板5と負極集電板13との間に介在されることとなる。中間部材7は、拘束板5からの拘束荷重を積層体2に伝達する。
【0058】
中間部材7は、パッケージ(第1パッケージ)71と、パッケージ71に封入された流体72と、を含む。パッケージ71は、拘束荷重に応じて変形可能な柔軟な材質によって構成されている。パッケージ71の材質は、例えば樹脂であって、一例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂等である。流体72は、気体、液体、ゲル、又は、それらの混合物である。さらに、流体72は、気体、液体、ゲル、又はそれらの混合物に対して、粉末(一例として消火剤)が混合されたものであってもよい。流体72の材料は、例えば、使用環境で凍結、気化しない液体であって、例えばオイル、またはエンジンの冷却水として使用されるクーラント液やロングライフクーラント(LLC)などを用いることができる。このように、中間部材7は、ガスパック、液パック、又はゲルパックとして構成されている。
【0059】
パッケージ71の材質が樹脂である場合には、積層体2に伝達される拘束荷重が分散しやすくなり、その結果、蓄電モジュール11に対して均一に拘束荷重を付加することが可能となる。パッケージ71の材質は、例えば金属を含むラミネートフィルム等であってもよい。パッケージ71の材質がラミネートフィルムである場合には、パッケージ71を薄くすることができる。流体72が液体である場合には、中間部材7が圧縮されにくくなり、その結果、蓄電モジュール11に対して均一に拘束荷重を付加することを好適に実現することが可能となる。
【0060】
中間部材7と拘束板5との間には、接着層(第2接着層)73が配置されている。これにより、中間部材7は拘束板5に接着される。また、中間部材7と積層体2との間には、別の接着層(第1接着層)74が配置されている。これにより、中間部材7は、積層体2に接着される。この結果、積層体2、拘束板5、及び、中間部材7が積層方向に交差する方向(例えばX軸方向及びY軸方向)に互いに位置ズレすることが抑制される。
【0061】
なお、接着層73,74は、中間部材7の変形の余地を生じさせるために全体を覆っておらず、中間部材7の少なくとも一部を露出させている。一方、上述したような位置ズレを抑制する観点からは、接着面積を確保することが望ましい。ここでは、一例として、中間部材7における拘束板5に対向する表面、及び、中間部材7における積層体2に対向する裏面の大部分に接着層73を設けることにより接着面積を確保しつつ、中間部材7における表面と裏面との間の側面を接着層73,74から露出させている。接着層74の外縁は、積層方向から見て接着層73の外縁よりも内側に位置している。なお、接着層73は、一例として両面テープや接着剤である。
【0062】
ここで、積層体2の両端には、上述したように積層方向から見て負極集電板13を囲むように負極集電板13の外側に封止部材15が配置されている。したがって、積層体2の積層方向での両端には、負極集電板13の外表面と封止部材15の外表面とによって端面が形成されている。この端面では、負極集電板13と封止部材15との境界に段差が形成されていてもよいし、実質的に面一であってもよい。
【0063】
中間部材7は、積層方向から見て、負極集電板13から封止部材15に渡って延在して配置されている。すなわち、中間部材7は積層体2の両端面において、中心側の封止部材15の外表面から封止部材15と負極集電板13との境界を越えて負極集電板13の外表面に渡って配置されている。中間部材7の外縁は、積層方向から見て負極集電板13の外縁よりも外側に位置している。中間部材7の外縁は、積層方向から見て封止部材15の外縁よりも内側に位置している。これにより、積層体2の端面において負極集電板13と封止部材15との境界に段差がある場合でも、中間部材7が当該段差に倣うように変形することによって、封止部材15に対して均一に拘束荷重が伝達され得る。
【0064】
蓄電装置1Aは、シート状のシール部材24を備えている。シール部材24は、中間部材7と積層体2との間において、中間部材7の外縁に沿って設けられている。シール部材24は、中間部材7と積層体2との間に、水分等が侵入することを防止する。シール部材24は、積層方向から見て矩形枠状を呈している。シール部材24は、積層方向から見て接着層74を囲んでいる。シール部材24は、中間部材7の変形に従って変形する。つまり、シール部材24は、中間部材7に追従して変形する。シール部材24は、例えばシリコンからなるゴムシートである。シール部材24は、例えば液状ガスケットであってもよい。
【0065】
以上説明したように、蓄電装置1Aにおいては、積層された複数の蓄電モジュール11を含む積層体2に対して、その両端に配置された一対の拘束板5から拘束荷重が付加される。拘束板5と積層体2との間には、拘束板5からの拘束荷重を積層体2に伝達する中間部材7が配置されている。そして、中間部材7は、拘束荷重に応じて変形可能なパッケージ71と、パッケージ71に封入された流体72と、を含む。このため、拘束板5の変形に応じて中間部材7が位置により異なる圧縮量で圧縮されても、パッケージ71内部の圧力が一定に保たれる結果、蓄電モジュール11に対して均一に拘束荷重を付加することが可能である。この結果として、拘束板5が拘束荷重の反力によって撓むように変形することが許容されることとなる。よって、拘束板5の軽量化を実現できる。
【0066】
また、蓄電装置1Aにおいては、蓄電モジュール11は、積層体14の積層方向に沿った側面14sを封止するように複数のバイポーラ電極16等のそれぞれに設けられた複数の封止部材15をさら含む。積層体2は、当該積層体2の積層方向の一端を構成すると共に、負極終端電極19に電気的に接続された負極集電板13をさらに含む。積層体2の一端には、積層方向から見て負極集電板13を囲むように負極集電板13の外側に封止部材15が配置されている。そして、中間部材7は、負極集電板13から封止部材15にわたって配置されている。このため、蓄電モジュール11に加えて、封止部材15に対して均一に拘束荷重を付加できる。
【0067】
また、蓄電装置1Aは、中間部材7と積層体2との間に配置され、中間部材7と積層体2とを接着する接着層74と、中間部材7と拘束板5との間に配置され、中間部材7と拘束板5とを接着する接着層73と、を備えている。この場合、上記のように変形可能なパッケージ71の中間部材7を用いていても、積層方向に交差する方向について拘束板5と積層体2とのずれが抑制される。
【0068】
また、蓄電装置1Aは、中間部材7と積層体2との間において、中間部材7の外縁に沿って設けられたシール部材24を備えている。この場合、中間部材7と積層体2との間への水分等の侵入が抑制されるため、積層体2での錆の発生等が抑制される。
【0069】
また、蓄電装置1Aは、拘束板5同士を締結することにより、拘束板5を介して積層体2に対して拘束荷重を付加するための締結部材6を備えている。この場合、拘束板5が変形したとしても、積層体2に対して均一に拘束荷重を付加することが可能である。
【0070】
[第2実施形態]
以下、図3図6を参照しながら、第2実施形態に係る蓄電装置及び蓄電装置の製造方法について詳細に説明する。図3図6の説明においては、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0071】
図3は、第2実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。図3に示す蓄電装置1Bは、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる装置である。図3に示すように、蓄電装置1Bは、ケース20と、積層体(モジュール構造体)30と、中間部材(第1中間部材)140と、ダンパ(第2中間部材)80とを含んで構成されている。
【0072】
ケース20は、例えばステンレスといった金属によって形成され、直方体形状をなすケース本体40を有している。ケース本体40は、一面側に開口部50aが設けられた有底箱型の本体部50と、本体部50の開口部50aを塞ぐ平板状の蓋部60とによって構成されている。本体部50は、底壁部50bと、底壁部50bの四辺の縁にそれぞれ立設された側壁部50cとを有している。本体部50の開口部50a回りには、フランジ50dが設けられており、蓋部60は、シール部材70によってフランジ50dに対して気密に固定されている。これにより、ケース本体40には、蓄電モジュール110を含む蓄電要素を気密に収容する内部空間S1が形成されている。
【0073】
積層体30は、蓄電モジュール110と、集電板120と、熱交換器130とを含んで構成されている。ここでは、積層体30は、2体の蓄電モジュール110と、3体の熱交換器130とを有しており、熱交換器130間に蓄電モジュール110が挟まれるように熱交換器130と蓄電モジュール110とが交互に配置されている。蓄電モジュール110及び熱交換器130の配置数は、図3の例に限られず、より多数の蓄電モジュール110及び熱交換器130を交互に配置してもよい。ダンパ(第2中間部材)80は、蓄電装置1Bに振動が加わった場合に、積層体30への振動の影響を緩和する部材である。ダンパ80は、積層体30と共にケース20内に配置されている。ダンパ80の詳細は、後述する。
【0074】
集電板120は、正極集電板120A及び負極集電板120Bによって構成されている。正極集電板120Aは、積層方向における積層体30の中央部側に配置され、負極集電板120Bは、積層方向における積層体30の端部側に配置されている。正極集電板120A同士及び負極集電板120B同士は、不図示のバスバーによってケース20の外部で互いに接続されている。
【0075】
熱交換器130は、蓄電モジュール110の冷却を行う部分である。熱交換器130は、例えば内部に冷却用流体が通る流路130aを有する板状部材である。流路130aは、板状部材を面内方向に貫通する貫通孔によって構成されている。流路130aには、ケース20を通した供給管が接続され、ケース20の外部との間で冷却用流体の循環が行われる。冷却用流体としては、例えば空気、水、油などが用いられる。冷却用流体は、電気絶縁性を有するものであってもよい。冷却用流体が導電性を有するものである場合、熱交換器130は、冷却用流体に対して絶縁されていることが好ましい。
【0076】
中間部材140は、第1実施形態の蓄電装置1Aの中間部材7と同様な構成を有している。中間部材140は、積層体30における積層方向(第1方向)の両端にそれぞれ配置されている。中間部材140は、本体部50の底壁部50bと積層体30との間及び蓋部60と積層体30との間にそれぞれ位置している。この中間部材140は、底壁部50b及び蓋部60と積層体30との間を保持する部材としても機能し得る。中間部材140により、底壁部50b及び蓋部60からの拘束荷重が積層体30の積層方向に付加されている。なお、中間部材140は、接着剤等によってケース20及び熱交換器130に接着されていてもよい。
【0077】
積層体30、中間部材140及びダンパ80は、ケース20に収容されている。積層体30は、積層体30の積層方向と、本体部50における開口部50aと底壁部50bとの対向方向とが一致するように、本体部50に収容されている。蓋部60は、蓄電装置1Bの取り付け先である車両のパネル部材によって構成されている。本体部50のフランジ50dは、例えば複数のボルト(図示省略)及びナット(図示省略)等によって蓋部60に締結されている。車両のパネル部材としては、例えばフロアパネル等が用いられる。
【0078】
底壁部50b及び蓋部60は、一対の拘束部材として機能する。具体的には、内部空間S1は、製造時に減圧された状態で気密に封止され、減圧ポンプ(図示省略)の吸引によって大気圧に対して減圧された状態が維持されている。内部空間S1の内圧は、ケース20の外部の大気圧よりも小さい。そのため、ケース20にはケース20の外側から内側に向かった力が作用する。つまり、底壁部50b及び蓋部60を介して積層体30に対して拘束荷重が付加されている。
【0079】
図4は、蓄電モジュールの層構成を示す概略的な断面図である。同図に示す蓄電モジュール110は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電モジュール110は、電気二重層キャパシタであってもよく、全固体電池であってもよい。本実施形態では、バイポーラ型のリチウムイオン二次電池を例示する。
【0080】
蓄電モジュール110は、図4に示すように、電極積層体210と、封止部(封止部材)220とを備えている。電極積層体210は、複数のバイポーラ電極230と、複数のセパレータ2400とを含んで構成されている。バイポーラ電極230は、金属箔(集電体)250と、金属箔250の一方面に形成された正極活物質層(正極層)260と、金属箔250の他方面に形成された負極活物質層(負極層)270とを有している。正極活物質層260及び負極活物質層270は、積層方向から見て矩形状をなしている。負極活物質層270は、正極活物質層260に比べて一回り大きい形状をなし、積層方向から見た場合に、正極活物質層260の形成領域は、負極活物質層270の形成領域に重なるようになっている。なお、バイポーラ電極230は、一方面に正極活物質層260のみが形成された金属箔250と、一方面に負極活物質層270のみが形成された金属箔250とを、金属箔250,250同士が接触するように重ね合せることによって形成されていてもよい。
【0081】
また、電極積層体210の積層方向の一端には、正極終端電極280が積層され、電極積層体210の積層方向の他端には、負極終端電極290が積層される。正極終端電極280は、一方面に正極活物質層260のみが形成された金属箔250によって形成され、負極終端電極290は、一方面に負極活物質層270のみが形成された金属箔250によって形成されている。これらの終端電極は、活物質層が積層方向の中央部側(隣り合うバイポーラ電極230側)を向くように配置されている。
【0082】
金属箔250は、第1実施形態の電極板21と同様な構成を有している。正極活物質層260は、第1実施形態の正極層22と同様な構成を有している。負極活物質層270は、第1実施形態の負極層23と同様な構成を有している。
【0083】
セパレータ240は、隣り合うバイポーラ電極230,230の間、バイポーラ電極230と正極終端電極280との間、及びバイポーラ電極230と負極終端電極290との間を隔てるシート状の部材である。セパレータ240は、正極活物質層260及び負極活物質層270に比べて一回り大きい矩形状をなしている。セパレータ240は、正極活物質層260及び負極活物質層270の間に位置し、積層方向から見た場合に、正極活物質層260の形成領域及び負極活物質層270の形成領域の全面と重なるように配置されている。セパレータ240は、第1実施形態のセパレータ17と同様な構成を有している。
【0084】
封止部220は、電極積層体210の積層方向に沿う側面部分を封止すると共に、隣り合うバイポーラ電極230,230同士の短絡を防止する部材である。封止部220は、例えば平面視において矩形の枠状をなしており、金属箔250の縁部250aの一方面に溶着されている。封止部220の縁部220aは、金属箔250の縁部250aよりも金属箔250の面内方向の外側に張り出している。積層方向に隣り合う封止部220の縁部220a,22a同士は、熱板溶着等によって互いに溶着されていてもよい。
【0085】
封止部220を形成する材料としては、電気絶縁性及び耐熱性を示す樹脂部材等が挙げられる。封止部220の材料は、第1実施形態の封止部材15の材料と同じである。封止部220によって封止された内部空間S2及びセパレータ240内には、電解液が収容されている。電解液は、第1実施形態の空間Sに収容された電解液と同じである。
【0086】
続いて、上述したダンパ80について詳細に説明する。
【0087】
図5は、ダンパの構成の一例を示す要部拡大断面図である。同図に示すように、ダンパ80は、パッケージ(第2パッケージ)31と、パッケージ31内に充填された衝撃吸収材32とによって構成されている。パッケージ31は、内容物(すなわち、衝撃吸収材32)が充填されていない場合には萎み、内容物の充填に応じて膨張可能な材料によって構成されている。また、パッケージ31は、電気絶縁性を有する材料によって構成されている。パッケージ31の構成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。パッケージ31の材質が樹脂である場合には、積層体30に伝達される拘束荷重が分散しやすくなり、その結果、蓄電モジュール110に対して均一に拘束荷重を付加することが可能となる。パッケージ31の材質は、例えば金属を含むラミネートフィルム等であってもよい。パッケージ31の材質がラミネートフィルムである場合には、パッケージ31を薄くすることができる。
【0088】
パッケージ31は、衝撃吸収材32の充填により、充填前に比べて膨張した状態となっている。これにより、ダンパ80は、積層体30における蓄電モジュール110の積層方向に延在する側面30aと、ケース20の内面20aとの間に介在している。図5の例では、積層体30の側面30aは、同積層方向に延在する蓄電モジュール110の側面及び熱交換器130の側面によって画成されている。また、ケース20の内面20aは、ケース本体40の側壁部50cによって画成されている。そして、ダンパ80は、積層体30における中央の熱交換器130及び当該熱交換器130を積層方向に挟む一対の蓄電モジュール110,110と、ケース20の内面20aとの間に隙間なく介在した状態となっている。
【0089】
なお、ダンパ80は、ケース本体40において互いに対向する一対の側壁部50cに対応して設けられていてもよく、全ての側壁部50cに対応して設けられていてもよい。ダンパ80が全ての側壁部50cに対応して設けられる場合、ダンパ80は、積層体30の全ての側面30aを囲むように筒状に設けられていてもよい。ダンパ80は、接着等により、積層体30の側面30a及びケース20の内面20aの少なくとも一方に対して固定されていてもよい。
【0090】
また、蓄電モジュール110及び熱交換器130の配置数が図3の形態よりも多数であり、ケース20の内面20aとの間にダンパ80が介在しない蓄電モジュール110が存在する形態においては、当該蓄電モジュール110とこれに隣接する集電板120、さらに、当該集電板120とこれに隣接する熱交換器130とが接着剤等で互いに接合されていてもよい。中間部材140によって積層体30が積層方向に保持されている場合には、これらの蓄電モジュール110、集電板120、及び熱交換器130が接着剤等で互いに接合されていなくてもよい。ダンパ80が積層体30の側面30aの全体とケース20の内面20aとの間に介在する場合には、蓄電モジュール110、集電板120、及び熱交換器130が接着剤等で互いに接合されていなくてもよい。
【0091】
衝撃吸収材32としては、気体、液体、ゲルからなる材料を用いることができる。衝撃吸収材32は、粉末状、粒子状といった固体の材料を用いることもできる。衝撃吸収材32は、これらの混合物からなる材料であってもよい。材料の一例としては、例えば使用環境において凍結及び気化しないオイル、またはエンジンの冷却水として使用されるクーラント液やロングライフクーラント(LLC)などが挙げられる。衝撃吸収材32が液体である場合には、ダンパ80が圧縮されにくくなり、その結果、積層体30への振動の影響をダンパ80によって緩和することを好適に実現することが可能となる。
【0092】
また、パッケージ31内には、衝撃吸収材32と共に発火抑制剤33が充填されていてもよい。発火抑制剤33は、消火剤或いは難燃剤といった発火を抑制する材料である。発火抑制剤33は、気体、液体、固体(粉末)のいずれであってもよい。発火抑制剤33の一例としては、例えば無機系の粉末のリン酸二水素アンモニウム(化学式:NHPO、ABC粉末消火剤の主成分)などが挙げられる。
【0093】
発火抑制剤33を充填する場合、パッケージ31は、蓄電モジュール110の劣化時或いは異常時に蓄電モジュール110から生じる気体によって破断可能な材料によって構成されていることが好ましい。この場合、パッケージ31の材料としては、例えば天然高分子(コラーゲンやゼラチンなどのタンパク質、セルロースやデンプンなどの多糖類、天然ゴム等及びゼラチン-アラビアゴム、ゼラチン-ゲランゴム等の混合物)、及び合成高分子(ポリスチレン、ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等)などを用いることができる。
【0094】
ケース20において、内面20aを構成する壁部には、ダンパ80と接しない位置に圧力開放弁34が設けられていてもよい。図5の例では、ケース本体40の側壁部50cにおいて、ダンパ80よりも蓋部60側となる位置に、ケース本体40の内部空間S1とケース本体40の外部とを連通する貫通孔35が設けられており、当該貫通孔35に圧力開放弁34が設けられている。
【0095】
この圧力開放弁34は、蓄電モジュール110の劣化時或いは異常時に発生する高温の気体によってケース本体40の内圧が上昇した場合に作動する弁である。圧力開放弁34の作動により、ケース本体40の内部空間S1の気体がケース本体40の外部に放出されることで、ケース本体40の内圧が所定値を上回らないように圧力緩和が行われる。圧力開放弁34の種類には、特に制限はないが、例えば圧力が所定の閾値を超えたときに破断する破断タイプの弁であってもよく、温度が所定の閾値を超えたときに溶融する溶栓タイプの弁であってもよい。
【0096】
以上のような蓄電装置1Bを製造する場合、図6(a)に示すように、ケース20の本体部50内に積層体30を配置する。また、積層体30の側面30aとケース20の内面20aとの間に、内容物の充填に応じて膨張可能な絶縁性のパッケージ31を配置する。この時点では、パッケージ31に衝撃吸収材32を充填せず、パッケージ31を萎ませた状態で積層体30の側面30aとケース20の内面20aとの間に配置する。ケース20への積層体30の配置及びパッケージ31の配置は、いずれを先に行ってもよい。パッケージ31の配置を先に行う場合には、ケース20の内面20aの所定の位置に接着等によってパッケージ31を予め固定しておいてもよい。
【0097】
次に、図6(b)に示すように、パッケージ31に衝撃吸収材32を充填する。衝撃吸収材32の充填により、積層体30の側面30aとケース20の内面20aとの間でパッケージ31が膨張し、積層体30の側面30aとケース20の内面20aとの間に介在するダンパ80が形成される。パッケージ31への衝撃吸収材32の充填にあたっては、例えば衝撃吸収材32を供給する供給管を接続可能な弁をパッケージ31に設けておき、供給管を介して衝撃吸収材32を充填した後に弁を閉じるようにしてもよい。また、注射器を用いてパッケージ31内に衝撃吸収材32を充填し、衝撃吸収材32の充填後に注射器による孔を溶着或いはシール部材の貼り付け等によって塞ぐようにしてもよい。ダンパ80の形成後、内部空間S1が減圧された状態で、シール部材70(図3参照)を介して本体部50に蓋部60を固定及び気密に封止することにより、図3に示した蓄電装置1Bが得られる。
【0098】
以上説明したように、蓄電装置1Bは、積層体30を収容するケース20を備えている。ケース20は、積層方向において開口する開口部50aが設けられた有底箱型の本体部50と、開口部50aを塞ぐ蓋部60と、を有している。積層方向において開口部50aに対向する本体部50の底壁部50b、及び蓋部60は、一対の拘束部材を構成している。ケース20内が大気圧に対して減圧されることにより、底壁部50b及び蓋部60を介して積層体30に対して拘束荷重が付加されている。この場合、第1実施形態の蓄電装置1Aと同様に、底壁部50b又は蓋部60の変形に応じて中間部材140が位置により異なる圧縮量で圧縮されても、中間部材140内部の圧力が一定に保たれる結果、積層体30に対して均一に拘束荷重を付加することが可能である。また、積層体30への振動又は蓋部60のうねりの影響を中間部材140によって十分に緩和できる。
【0099】
本実施形態では、蓋部60は、車両のパネル部材によって構成されている。この場合、積層体30への車両のパネル部材のうねりの影響を中間部材140によって十分に緩和できる。
【0100】
本実施形態では、積層体30における蓄電モジュール110の積層方向に延在する側面30aとケース20の内面20aとの間にダンパ80が介在している。このダンパ80は、内容物の充填に応じて膨張可能なパッケージ31に衝撃吸収材32を充填することによって構成されている。このため、積層体30の側面30aとケース20の内面20aとの間にパッケージ31を萎ませた状態で配置した後に、パッケージ31内に衝撃吸収材32を充填し、パッケージ31を膨張させることによって、積層体30の側面30aとケース20の内面20aとの間にダンパ80を隙間なく配置できる。したがって、この蓄電装置1Bでは、積層体30への振動の影響をダンパ80によって十分に緩和することができる。また、ケース20内への積層体30の収容がダンパ80によって阻害されることがなく、積層体30をケース20内に収容する際の収容し易さを十分に確保できる。
【0101】
本実施形態では、積層体30が積層方向に隣り合う蓄電モジュール110,110間に配置された熱交換器130を含んでいる。そして、ダンパ80は、少なくともこれらの蓄電モジュール110,110及び熱交換器130と、ケース20の内面20aとの間に介在している。これにより、積層体30の主要な構成に対する振動の影響を十分に緩和できる。
【0102】
本実施形態では、パッケージ31が電気絶縁性を有する材料によって構成されている。これにより、ダンパ80の介在によって積層体30とケース20との間の電気絶縁性を確保できる。積層体30とケース20との絶縁にあたって別の絶縁部材を配置する必要がなくなるため、蓄電装置1Bの装置構成を簡素化できる。
【0103】
本実施形態では、ケース20の内面20aを構成する側壁部50cにおいて、ダンパ80と接しない位置に圧力開放弁34が設けられている。これにより、蓄電モジュール110の劣化時或いは異常時にケース20の内圧が高まった場合に圧力開放弁34が作動し、ケース20内の圧力を緩和できる。圧力開放弁34がダンパ80と接しない位置に設けられることにより、圧力開放弁34による圧力の緩和がダンパ80によって阻害されることも回避できる。
【0104】
本実施形態では、パッケージ31は、蓄電モジュール110の劣化時或いは異常時に蓄電モジュール110から生じる気体によって破断可能な材料によって構成されている。また、パッケージ31内には、衝撃吸収材32と共に発火抑制剤33が充填されている。この場合、蓄電モジュール110の劣化時或いは異常時に蓄電モジュール110から生じる気体によってパッケージ31が破断し、当該気体をパッケージ31内の発火抑制剤33に接触させることが可能となる。したがって、蓄電装置1Bの安全性を高めることができる。
【0105】
[変形例]
以上の実施形態は、本開示の一態様を説明したものである。したがって、本開示は、上記実施形態に限定されることなく変形され得る。
【0106】
例えば、図7に示すように、第1実施形態においては、中間部材7の外縁は、積層方向から見て負極集電板13の外側に配置された封止部材15の外縁よりも外側に位置していてもよい。積層方向から見て負極集電板13及び封止部材15の全体は、中間部材7の配置領域内に位置する。すなわち、積層方向からみた場合、中間部材7の面積は、負極集電板13の面積及び封止部材15の面積の合計よりも大きい。この場合、シール部材24は、積層体2の封止部材15の外縁に沿って設けられている。積層体2に対して拘束荷重が付加されると、中間部材7における負極集電板13及び封止部材15と重なる部分が、圧縮され、中間部材7における封止部材15よりも外側に位置する部分が、封止部材15の縁(エッジ)15aを包むように封止部材15に向かって変形する。これにより、中間部材7の動きが封止部材15の縁15aによって規制されるため、中間部材7と積層体2とのずれが抑制される。
【0107】
また、図8に示すように、蓄電装置1Aは、負極集電板13の外側に配置された封止部材15に代えて、シート状のシール部材25を備えていてもよい。シール部材25は、負極集電板13と負極終端電極19との間において、負極集電板13の外縁に沿って設けられている。シール部材25は、負極集電板13と負極終端電極19との間に、水分等が侵入することを防止する。シール部材25は、積層方向から見て矩形枠状を呈している。シール部材25の材質は、例えばシリコンからなるゴムである。シール部材25は、例えば液状ガスケットであってもよい。
【0108】
また、蓄電装置1Aが封止部材15に代えてシール部材25を備えている場合においても、中間部材7の外縁は、積層方向から見て負極集電板13の外縁よりも外側に位置していてもよい。中間部材7は、積層方向から見て負極集電板13を含んでいる。積層方向からみた場合、中間部材7の面積は、負極集電板13の面積よりも大きい。この場合、上述したように積層体2に対して拘束荷重が付加されると、中間部材7における負極集電板13と重なる部分は、圧縮され、中間部材7における負極集電板13よりも外側に位置する部分は、負極集電板13の縁(エッジ)13dを包むように負極集電板13に向かって変形する。これにより、中間部材7の動きが負極集電板13の縁13dによって規制されるため、中間部材7と積層体2とのずれが抑制される。
【0109】
また、図9に示すように、中間部材7の外縁は、積層方向から見て負極集電板13の外縁よりも内側に位置していてもよい。すなわち、積層方向からみた場合、中間部材7の面積は、負極集電板13の面積よりも小さい。この場合、中間部材7のパッケージ71が負極集電板13の縁(エッジ)13dに接触していないため、特にパッケージ71が脆い場合にパッケージ71の破損が抑制される。なお、中間部材7の外縁は、積層方向から見て正極層22の外縁よりも外側に位置している。
【0110】
また、負極集電板13の外縁は、積層方向から見て負極終端電極19の電極板21の外縁よりも外側に位置していてもよい。積層方向からみた場合、負極集電板13の面積は、電極板21の面積よりも大きい。この場合、電極板21が負極集電板13の縁(エッジ)に接触していないため、電極板21の破損が抑制される。
【0111】
また、図10に示すように、第1実施形態においては、蓄電装置1Aは、蓄電モジュール11に代えて、蓄電モジュール400を備えていてもよい。蓄電モジュール400は、複数の蓄電セル46が積層方向にスタック(積層)されたセルスタック500を含んで構成されている。各蓄電セル46は、正極41と、負極42と、セパレータ43と、スペーサ(封止部材)44とを備える。正極41は、集電体51と、集電体51の第1面51aに設けられた正極活物質層(正極層)52とを備える。正極41は、例えば矩形状の電極である。負極42は、集電体51と、集電体51の第1面51aに設けられた負極活物質層(負極層)53とを備える。負極42は、例えば矩形状の電極である。負極42は、負極活物質層53が正極活物質層52と対向するように配置されている。正極活物質層52及び負極活物質層53は、いずれも矩形状に形成されている。負極活物質層53は、正極活物質層52よりも一回り大きく形成されており、積層方向から見た平面視において、正極活物質層52の形成領域の全体が負極活物質層53の形成領域内に位置している。
【0112】
各集電体51は、第1面51aとは反対側の面である第2面51bを有する。正極41の集電体51の第2面51bには、正極活物質層52が形成されていない。負極42の集電体51の第2面51bには、負極活物質層53が形成されていない。正極41の集電体51の第2面51bと負極42の集電体51の第2面51bとが互いに接するように、蓄電セル46がスタックされることによって、セルスタック500が構成される。これにより、複数の蓄電セル46が電気的に直列に接続される。セルスタック500では、積層方向に隣り合う蓄電セル46,46により、互いに接する正極41の集電体51及び負極42の集電体51を電極体(1つの集電体)とする疑似的なバイポーラ電極が形成される。すなわち、1つのバイポーラ電極は、互いに隣接する2つの集電体51,51、正極活物質層52及び負極活物質層53を含む。積層方向の一端には、終端電極として正極41の集電体51が配置される。積層方向の他端には、終端電極として負極42の集電体51が配置される。
【0113】
集電体51は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層52及び負極活物質層53に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体51を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体51は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。集電体51の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。集電体51は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。集電体51を金属箔とする場合、集電体51は、例えば、第1実施形態の電極板21と同じである。集電体51としてステンレス鋼箔を用いた場合、集電体51の機械的強度を確保することができる。集電体51は、上記電極板21の金属を含む合金箔又はクラッド箔であってもよい。正極41の集電体51はアルミニウム箔であり、負極42の集電体51は銅箔である。箔状の集電体51を用いる場合、その厚みは、例えば、1μm~100μmとしてよい。
【0114】
正極活物質層52は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。正極活物質層52は複合酸化物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)を含む。
【0115】
負極活物質層53は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としてLi、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)又はソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。負極活物質層53は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0116】
正極活物質層52及び負極活物質層53のそれぞれ(以下、単に「活物質層」ともいう)は、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は当該成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚みは、例えば2~150μmである。集電体51の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法等の従来から公知の方法を用いてもよい。正極41又は負極42の熱安定性を向上させるために、集電体51の表面(片面又は両面)又は活物質層の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0117】
導電助剤は、正極41又は負極42の導電性を高めるために添加される。導電助剤は、第1実施形態の導電助剤と同じである。結着剤は、第1実施形態の結着剤と同じである。
【0118】
セパレータ43は、正極41の正極活物質層52と負極42の負極活物質層53との間に配置されて、正極41と負極42とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ43は、蓄電セル46をスタックした際に隣り合うバイポーラ電極間の短絡を防止する。
【0119】
セパレータ43は、基材層55を含んで構成されている。基材層55は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。基材層55を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。基材層55は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。基材層55には、電解質が含浸されてもよく、基材層55自体を高分子電解質又は無機型電解質等の電解質で構成してもよい。
【0120】
基材層55に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリクス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質などが挙げられる。
【0121】
基材層55に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0122】
スペーサ44は、正極41の集電体51と負極42の集電体51との間に形成され、正極41の集電体51及び負極42の集電体51の少なくとも一方(例えば正極41の集電体51及び負極42の集電体51の両方、又は正極41の集電体51及び負極42の集電体51のいずれか一方のみ)に接合又は固定される。スペーサ44は、絶縁材料を含み、正極41の集電体51と負極42の集電体51との間を絶縁することによって、それら両集電体間の短絡を防止する。スペーサ44を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、変性ポリプロピレン(変性PP)、ABS樹脂、AS樹脂などの種々の樹脂材料が用いられる。
【0123】
スペーサ44は、集電体51の縁部51eに沿って延在し、平面視で矩形状に形成された正極活物質層52又は負極活物質層53の周囲を取り囲むように、平面視で矩形の枠状に形成されている。スペーサ44に、セパレータ43の縁部43aが埋設されていてもよい。
【0124】
各蓄電セル46に配置されるスペーサ44は、一対の集電体51間に配置される部分と集電体51の縁部51eよりも外側に延びる部分とを有しており、セルスタック500の積層方向に隣り合うスペーサ44の外側に延びる部分同士が接合されて一体化している。複数のスペーサ44が一体化されて封止体44aを形成している。スペーサ44、正極41及び負極42によって囲まれた空間S2には、セパレータ43及び電解質(電解液)が収容されている。平面視において矩形の枠状をなすスペーサ44は、集電体51の縁部51eに接合固定されている。複数のスペーサ44が一体化されてなる封止体44aは、セルスタック500の積層方向の一端に配置された集電体51から積層方向の他端に配置された集電体51まで積層方向に延在する筒状部分を有している。隣り合うスペーサ44同士を接合する方法としては、例えば、熱溶着、超音波溶着又は赤外線溶着など、公知の溶着方法が用いられる。
【0125】
スペーサ44は、正極41及び負極42との間の空間S2を封止する封止部としても機能しており、空間S2に収容された電解質の外部への透過を防止し得る。また、スペーサ44は、蓄電モジュール400の外部から空間S2内への水分の侵入を防止し得る。さらに、スペーサ44は、例えば充放電反応等により正極41又は負極42から発生したガスが蓄電モジュール400の外部に漏れることを防止し得る。
【0126】
セルスタック500の積層方向において最も外側に配置された集電体51の第2面51bには、負極集電板13又は正極集電板12との導電接触を良好にする目的で、導電層45が更に配置されてもよい。この場合、導電層45は、集電体51の第2面51bに密着してもよい。
【0127】
導電層45は、例えば集電体51の硬度よりも低い硬度を有する。導電層45は、アセチレンブラック又はグラファイト等のカーボンを含む層であってもよく、Auを含むメッキ層であってもよい。
【0128】
また、第1実施形態においては、二つの蓄電モジュール11が、正極終端電極18が互いに対向するように配置され、正極集電板12が、これら互いに対向する二つの正極終端電極18に接触するように配置されていた。すなわち、二つの蓄電モジュール11が並列接続となるように積層されていた。しかし、図11に示されるように、複数(ここでは二つ)の蓄電モジュール11は、それぞれの正極終端電極18(図2参照)及び負極終端電極19(図2参照)が互いに対向するように配置されていてもよい。この場合、隣り合う蓄電モジュール11の間、及び積層方向における積層体2の両端には、集電板8が配置されている。すなわち、複数の蓄電モジュール11は、直列接続となるように積層されている。なお、接続部材3は、積層方向における積層体2の他端の集電板(正極終端電極に接触する集電板)8の突出部8cに電気的に接続されている。接続部材4は、積層方向における積層体2の一端の集電板(負極終端電極に接触する集電板)8の突出部8cに電気的に接続されている。第2実施形態においても同様に、複数の蓄電モジュール110が、それぞれの正極終端電極280(図4参照)及び負極終端電極290(図4参照)が互いに対向するように配置されていてもよい。
【0129】
また、第1実施形態においては、中間部材7が、絶縁性を有し、積層体2と拘束板5との絶縁を担っていた。しかし、積層体2と拘束板との間に中間部材7とは別の絶縁部材を介在させることにより、中間部材7が絶縁性を有さないように構成され得る。
【0130】
また、第1実施形態においては、蓄電装置1Aは、接着層73及び接着層74のいずれか一方を備えていなくてもよい。つまり、蓄電装置1Aは、接着層73及び接着層74の少なくとも一方を備えていればよい。
【0131】
また、上述したように、第1実施形態においては、中間部材7によれば、蓄電モジュール11に対して均一な拘束荷重を付加するに際して、拘束板5の一定の変形が許容される。このため、例えば、積層体2の角部等に、変形した拘束板5との接触を考慮して緩衝部材を設けてもよい。
【0132】
また、第2実施形態においては、ダンパ80は、蓄電モジュール110及び熱交換器130に接触していることに加え、集電板120に接触していてもよい。ダンパ80は、蓄電モジュール110の積層方向に更に延在し、中央の熱交換器130に接触していることに加え、上下の熱交換器130,130の少なくとも一方に更に接触していてもよい。ダンパ80は、積層体30の全体とケース20の内面20aとの間に介在していることが好ましい。ダンパ80は、積層体30の一部と内面20aとの間に介在していてもよい。
【0133】
また、第2実施形態においては、蓄電モジュール110に適用される電解質は、必ずしも液体状(電解液)の電解質でなくてもよい。電解質は、固体電解質であってもよく、不織布等からなるセパレータに含浸された半固体状(ゲル状)の電解質であってもよい。また、封止部220は、必ずしも電極積層体210が外気に触れないように電極積層体210の側面部分を隙間なく封止するものでなくてもよい。例えば電解質が固体電解質或いは半固体状(ゲル状)の電解質である場合には、当該電解質が漏出しない程度の封止であってもよい。
【0134】
また、第2実施形態においては、発火抑制剤が衝撃吸収性を有するものである場合、衝撃吸収材32としての発火抑制剤33のみがパッケージ31内に充填されていてもよい。この場合の発火抑制剤33は、気体、液体、固体(粉体)のいずれであってもよい。
【0135】
また、第2実施形態においては、第1実施形態と同様に、蓄電装置1Bは、蓄電モジュール110に代えて、蓄電モジュール400を備えていてもよい。
【0136】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、蓄電装置1A,1Bは、複数の蓄電モジュール11,110にかえて、1つの蓄電モジュール11,110を備えていてもよい。
【0137】
また、第2実施形態においては、積層体30の側面30aとケース20の内面20aとの間にダンパ80が介在していなくてもよい。
【0138】
また、第2実施形態においては、ケース20内が大気圧に対して減圧されることにより、底壁部50b及び蓋部60を介して積層体30に対して拘束荷重が付加されていなくてもよい。例えば、本体部50のフランジ50dと蓋部60とを締結する複数のボルト及びナット等による締結力により、底壁部50b及び蓋部60を介して積層体30に対して拘束荷重が付加されていてもよい。
【0139】
また、第2実施形態においては、本体部50の蓋部60は、車両のパネル部材によって構成されなくてもよい。蓋部60は、車両のパネル部材とは別のパネル部材によって構成されていてもよい。
【0140】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、複数の蓄電モジュール11,110が積層方向に交差する面内方向において並んでいてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1A,1B…蓄電装置、2,30…積層体(モジュール構造体)、5…拘束板(拘束部材)、6…締結部材、7,140…中間部材(第1中間部材)、8…集電板、11,110…蓄電モジュール、12…正極集電板(集電板)、13…負極集電板(集電板)、14,210…積層体(電極積層体)、14s…側面、15…封止部材、16,230…バイポーラ電極、17…セパレータ、18,280…正極終端電極、19,290…負極終端電極、20…ケース、20a…内面、21…電極板(集電体)、22…正極層、23…負極層、30a…側面、31…パッケージ(第2パッケージ)、32…衝撃吸収材、33…発火抑制剤、34…圧力開放弁、50…本体部、50a…開口部、50b…底壁部(拘束部材)、50c…側壁部(壁部)、60…蓋部(拘束部材)、71…パッケージ(第1パッケージ)、72…流体、73…接着層(第2接着層)、74…接着層(第1接着層)、80…ダンパ(第2中間部材)、120…集電板、130…熱交換器、220…封止部(封止部材)、250…金属箔(集電体)、260…正極活物質層(正極層)、270…負極活物質層(負極層)、25…シール部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11