(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230808BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20230808BHJP
B24B 23/02 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25F5/02
B24B23/02
(21)【出願番号】P 2021573035
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048840
(87)【国際公開番号】W WO2021149459
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2020010369
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192337
【氏名又は名称】福本 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100206092
【氏名又は名称】金 佳恵
(72)【発明者】
【氏名】畠山 健太郎
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209455(JP,A)
【文献】特開2015-213989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B25F 5/02
B24B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤハウジングと、
前記ギヤハウジングから第1方向に突出するスピンドルと、
前記ギヤハウジングに保持され、内輪及び外輪を有し、前記スピンドルを回転可能に支持する軸受と、
前記スピンドルに設けられて先端工具を取付可能な先端工具取付部と、前記軸受よりも前記第1方向側に位置するシール部材と、
前記シール部材の前記第1方向への移動を規制する規制部材と、を備え、
前記ギヤハウジングは、前記軸受と一体成型されるとともに前記軸受を保持する軸受保持部を有し、
前記軸受保持部は、
前記第1方向に延び、前記外輪の外周面を支持する円筒支持部と、
前記外輪よりも前記第1方向側に位置するとともに前記円筒支持部から前記スピンドルの径方向で内側方向に突出し、前記軸受の前記第1方向への移動を規制する突出部と、を有し、
前記突出部の前記径方向における内方端は、前記径方向において、前記外輪の前記外周面よりも内方且つ前記外輪の内周面よりも外方に位置し、
前記シール部材は、前記スピンドルと前記突出部との間に設けられ、
前記シール部材の少なくとも一部は、前記スピンドルの軸方向において前記内輪とオーバーラップし、
前記規制部材は、前記スピンドル及び前記軸受保持部のいずれか一方に保持されていることを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記規制部材は、前記径方向において前記スピンドルと前記突出部との間に位置することを特徴とする請求項
1に記載の作業機。
【請求項3】
前記規制部材は、前記スピンドルの外周面に固定され、前記スピンドルと一体的に回転することを特徴とする請求項
1または
2に記載の作業機。
【請求項4】
前記規制部材は、
前記スピンドルに固定された円環部分と、
前記円環部分の前記径方向における外周縁から前記第1方向に延びる円筒部分と、
前記円筒部分の前記第1方向の端部の外周面から前記径方向の外方に延びる鍔部と、を有し、
前記シール部材は、前記径方向において前記円筒部分の外方に位置することを特徴とする請求項
3に記載の作業機。
【請求項5】
前記規制部材は、前記軸受保持部に固定されていることを特徴とする請求項
1に記載の作業機。
【請求項6】
前記規制部材は、
前記径方向において前記スピンドルの外方に位置する円環部分と、
前記円環部分の前記径方向における外周縁から前記第1方向の反対方向となる第2方向に延びる円筒部分と、
前記円筒部分の前記第2方向の端部の外周面から前記径方向の外方に延びるとともに前記軸受保持部に固定された鍔部と、を有し、
前記シール部材は、前記スピンドルと前記円筒部分との間に位置していることを特徴とする請求項
5に記載の作業機。
【請求項7】
前記規制部材は、前記軸受保持部に圧入によって固定されることを特徴とする請求項
5又は
6に記載の作業機。
【請求項8】
前記規制部材は、前記軸受保持部と一体的に成型され前記軸受保持部に固定されていることを特徴とする請求項
5又は
6に記載の作業機。
【請求項9】
前記シール部材は前記軸受保持部に支持されることを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研磨や切削等の作業を行う作業機が広く用いられている。特許文献1には、このような作業機として、モータと、モータの回転によって回転するベベルギヤと、ベベルギヤから下方に延びベベルギヤと一体に回転するスピンドルと、スピンドルの下部に設けられた先端工具保持部と、ベベルギヤ及びスピンドルを回転可能に支持するギヤカバーと、を備える電動グラインダが開示されている。
【0003】
上記電動グラインダにおいては、砥石等の先端工具を先端工具保持部に取り付けた状態でモータを駆動し、ベベルギヤ、スピンドル、先端工具保持部、及び先端工具を一体に回転させ、回転する先端工具を用いて研磨等の作業を行う。また、当該電動グラインダのスピンドルは、ギヤカバー内の上部に設けられた軸受とギヤカバー内の下部に設けられた軸受とによって2箇所で回転可能に支持されており、スピンドルの下部は、ギヤカバーの下部から下方に突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電動グラインダにおいては、スピンドルの下部に設けられた先端工具保持部に取付けられた先端工具によって研磨等の作業が行われるため、当該研磨等の作業箇所とギヤケースの下部とが近接している。このため、当該研磨等の作業によって発生する粉塵が、ギヤケース下部に設けられた軸受に侵入する虞があった。また、当該粉塵が軸受に侵入した場合には、スピンドルの円滑な回転が妨げられ、作業性が損なわれる虞があった。
【0006】
そこで本発明は、スピンドルを回転可能に支持する軸受に作業で発生する粉塵が侵入することを抑制し、作業性を良好に維持することが可能な作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、ギヤハウジングと、前記ギヤハウジングから第1方向に突出するスピンドルと、前記ギヤハウジングに保持され、内輪及び外輪を有し、前記スピンドルを回転可能に支持する軸受と、前記スピンドルに設けられて先端工具を取付可能な先端工具取付部と、前記軸受よりも前記第1方向側に位置するシール部材と、前記シール部材の前記第1方向への移動を規制する規制部材と、を備え、前記シール部材の少なくとも一部は、前記スピンドルの径方向において前記内輪とオーバーラップし、前記規制部材は、前記スピンドル及び前記ギヤハウジングのいずれか一方に保持されていることを特徴とする作業機を提供する。
【0008】
上記構成によると、スピンドル及びギヤハウジングのいずれか一方に保持された規制部材によって、シール部材は軸受の内輪と径方向においてオーバーラップする位置で第1方向への移動が規制されるため、好適なシール性を実現することができる。これにより、作業で発生する粉塵が軸受に侵入することを好適に抑制し、作業性を良好に維持することができる。
【0009】
上記構成において、前記ギヤハウジングは、前記軸受と一体成型される軸受保持部を有することが好ましい。
【0010】
上記構成において、前記軸受保持部は、前記第1方向に延び、前記外輪の外周面を支持する円筒支持部と、前記外輪よりも前記第1方向側に位置するとともに前記円筒支持部から前記スピンドルの径方向の内方に突出し、前記軸受の前記第1方向への移動を規制する突出部と、を有することが好ましい。
【0011】
上記構成において、前記突出部の前記径方向における内方端は、前記径方向において、前記外輪の前記外周面よりも内方且つ前記外輪の内周面よりも外方に位置し、前記シール部材は、前記径方向において、前記スピンドルと前記突出部との間に設けられることが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するために本発明はさらに、ギヤハウジングと、前記ギヤハウジングから第1方向に突出するスピンドルと、前記ギヤハウジングに保持され、内輪及び外輪を有し、前記スピンドルを回転可能に支持する軸受と、前記スピンドルに設けられて先端工具を取付可能な先端工具取付部と、前記軸受よりも前記第1方向側に位置するシール部材と、前記シール部材の前記第1方向への移動を規制する規制部材と、を備え、前記ギヤハウジングは、前記軸受と一体成型されるとともに前記軸受を保持する軸受保持部を有し、前記軸受保持部は、前記第1方向に延び、前記外輪の外周面を支持する円筒支持部と、前記外輪よりも前記第1方向側に位置するとともに前記円筒支持部から前記スピンドルの径方向で内側方向に突出し、前記軸受の前記第1方向への移動を規制する突出部と、を有し、前記突出部の前記径方向における内方端は、前記径方向において、前記外輪の前記外周面よりも内方且つ前記外輪の内周面よりも外方に位置し、前記シール部材は、前記スピンドルと前記突出部との間に設けられ、前記シール部材の少なくとも一部は、前記軸方向において前記内輪とオーバーラップし、前記規制部材は、前記スピンドル及び前記軸受保持部のいずれか一方に保持されていることを特徴とする作業機を提供する。
【0013】
一般に、軸受と一体的に成型される軸受保持部を用いた場合には、作業機の生産コスト削減の効果を奏するが、成型上の理由から、軸受の第1方向への移動を規制する突出部の径方向における内方端(軸受の第1方向への移動を規制する位置)が、外輪の内周面よりも径方向において外方に位置する構成となってしまう。また、シール部材は軸受の内輪と軸方向においてオーバーラップする位置において好適なシール性を奏するが、突出部の径方向における内方端が外輪の内周面よりも径方向外方に位置してしまう構成においては、シール部材を上記のような好適な位置に位置決めすることが困難である。しかしながら、本発明の上記構成によると、スピンドル及び軸受保持部のいずれか一方に保持された規制部材によって、シール部材は軸受の内輪と軸方向においてオーバーラップする位置で第1方向への移動が規制される。このため、軸受と一体的に成型される軸受保持部を用いる構成でありながらも、シール部材を軸受の内輪と軸方向においてオーバーラップする位置に位置決めすることができ、生産コストの削減及び好適なシール性を実現することができる。これにより、作業で発生する粉塵が軸受に侵入することを好適に抑制し、作業性を良好に維持することができる。
【0014】
上記構成において、前記規制部材は、前記径方向において前記スピンドルと前記突出部との間に位置することが好ましい。
【0015】
上記構成によると、シールが必要なスピンドルと突出部との間の空間に規制部材が位置しているため、規制部材も防塵部材として機能する。これにより、作業で発生する粉塵が軸受に侵入することをより好適に抑制し、作業性をより良好に維持することができる。
【0016】
上記構成において、前記規制部材は、前記スピンドルの外周面に固定され、前記スピンドルと一体的に回転することが好ましい。
【0017】
上記構成において、前記規制部材は、前記スピンドルに固定された円環部分と、前記円環部分の前記径方向における外周縁から前記第1方向に延びる円筒部分と、前記円筒部分の前記第1方向の端部の外周面から前記径方向の外方に延びる鍔部と、を有し、前記シール部材は、前記径方向において前記円筒部分の外方に位置することが好ましい。
【0018】
上記構成において、前記規制部材は、前記軸受保持部に固定されていることが好ましい。
【0019】
上記構成によると、規制部材が回転しないので、規制部材によって位置決めされているシール部材との摩擦が発生し難く、シール部材の早期摩耗を抑制することができる。
【0020】
上記構成において、前記規制部材は、前記径方向において前記スピンドルの外方に位置する円環部分と、前記円環部分の前記径方向における外周縁から前記第1方向の反対方向となる第2方向に延びる円筒部分と、前記円筒部分の前記第2方向の端部の外周面から前記径方向の外方に延びるとともに前記軸受保持部に固定された鍔部と、を有し、前記シール部材は、前記スピンドルと前記円筒部分との間に位置していることが好ましい。
【0021】
上記構成によると、内輪と軸方向においてオーバーラップしているシール部材の径方向の寸法を小さくすることができる。これにより、規制部材とシール部材との摩擦をより抑制することができ、シール部材の早期摩耗をより抑制することができる。
【0022】
上記構成において、前記規制部材は、前記軸受保持部に圧入によって固定されることが好ましい。
【0023】
上記構成において、前記規制部材は、前記軸受保持部と一体的に成型され前記軸受保持部に固定されていることが好ましい。
上記構成において、前記シール部材は、前記軸受保持部に支持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スピンドルを回転可能に支持する軸受に作業で発生する粉塵が侵入することを抑制し、作業性を良好に維持することが可能な作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態によるディスクグラインダの外観を示す側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるディスクグラインダの外観を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るディスクグラインダの内部構造を示す部分縦断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態によるディスクグラインダの軸受保持部、第1軸受、出力シャフト部、及び防塵部を示す部分断面拡大図である。
【
図5】本発明の第1実施形態によるディスクグラインダの防塵部、先端工具取付部、及び先端工具取付部に取付けられる先端工具を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態によるディスクグラインダの軸受保持部及び第1軸受の一体成型の過程を説明するための図であり、(a)は、軸受保持部の下端部を成型するための型部材に第1軸受が固定されている状態を示し、(b)は、軸受保持部の下端部を成型するための型部材に軸受保持部の上下方向における中央部分を成型するための型部材が組付けられた状態を示し、(c)は、軸受保持部の成型するための型が完成した状態を示し、(d)は、完成した型の内部空間に液体状の樹脂が流し込まれた状態を示し、(e)は、樹脂が固まり且つ軸受保持部の上部を成型するための型部材が取り外された状態を示し、(f)は、軸受保持部が第1軸受を保持した状態で成型された状態を示す。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るディスクグラインダの内部構造を示す部分縦断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態によるディスクグラインダの軸受保持部、第1軸受、出力シャフト部、及び防塵部を示す部分断面拡大図である。
【
図9】本発明の第2実施形態によるディスクグラインダの防塵部、先端工具取付部、及び先端工具取付部に取付けられる先端工具を示す分解斜視図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るディスクグラインダの内部構造を示す部分縦断面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態によるディスクグラインダの軸受保持部、第1軸受、出力シャフト部、及び防塵部を示す部分断面拡大図である。
【
図12】本発明の第3実施形態によるディスクグラインダの軸受保持部、第1軸受、及び規制部材の一体成型の過程を説明するための図であり、(a)は、軸受保持部の下端部を成型するための型部材に規制部材及び第1軸受が固定されている状態を示し、(b)は、軸受保持部の下端部を成型するための型部材に軸受保持部の上下方向における中央部分を成型するための型部材が組付けられた状態を示し、(c)は、軸受保持部の成型するための型が完成した状態を示し、(d)は、完成した型の内部空間に液体状の樹脂が流し込まれた状態を示し、(e)は、樹脂が固まり且つ軸受保持部の上部を成型するための型部材が取り外された状態を示し、(f)は、軸受保持部が第1軸受及び規制部材を保持した状態で成型された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<1.第1実施形態の説明> 本発明の第1の実施の形態に係る作業機の一例であるディスクグラインダ1について、
図1乃至
図6を参照しながら説明する。ディスクグラインダ1は、円盤状に形成された砥石等の先端工具Pを用いて被加工材の研磨、研削等を行うための電動式の作業機である。
【0027】
以下の説明においては、図中に示されている「前」を前方向、「後」を後方向、「上」を上方向、「下」を下方向と定義する。また、ディスクグラインダ1を後から視た場合の「右」を右方向、「左」を左方向と定義する。
【0028】
<1-1.第1実施形態によるディスクグラインダ1の全体構成の概要>
図1乃至
図3に示されるように、ディスクグラインダ1は、ハウジング2と、モータ3と、動力伝達部4と、出力シャフト支持部5と、砥石等の先端工具Pを取付可能な出力シャフト部6と、防塵部7と、ホイールガード8とを備えている。
【0029】
図1及び
図2に示されているように、ハウジング2は、ディスクグラインダ1の外郭をなす部分であり、モータハウジング21と、テールハウジング22と、ギヤハウジング23とを有している。
【0030】
モータハウジング21は、樹脂製又は金属性であり、前後方向に延びる筒形状をなしている。モータハウジング21は、内部にモータ3を収容しており、モータハウジングの21の左側面の前部には、モータ3の始動及び停止を制御するための手動操作可能なスライド式の駆動スイッチ21Aが設けられている。
【0031】
テールハウジング22は、樹脂製又は金属性であり、モータハウジング21の後部から後方に延びる略角筒形状をなしている。テールハウジング22の後端部からは、図示せぬ交流電源(例えば、商用交流電源)に接続可能な電源コード部22Aが後方に延出しており、テールハウジング22の内部には、
図3に示されているように、スイッチ機構22Bが収容されている。
【0032】
スイッチ機構22Bは、駆動スイッチ21Aに対する操作に連動してオン状態とオフ状態との間で切り替わるスイッチである。スイッチ機構22Bは、オン状態においてモータ3と電源コード部22Aとを電気的に接続し、オフ状態においてモータ3と電源コード部22Aとの電気的接続を遮断する。スイッチ機構22Bは、駆動スイッチ21Aに対してオン操作(前方へのスライド操作)が行われるとオン状態となり、駆動スイッチ21Aに対してオフ操作(後方へのスライド操作)が行われるとオフ状態となる。電源コード部22Aを交流電源に接続した状態で駆動スイッチ21Aに対してオン操作を行うと、スイッチ機構22Bがオン状態となり、スイッチ機構22B及び電源コード部22Aを介して、交流電源からモータ3に電力が供給されモータ3が駆動される。
【0033】
ギヤハウジング23は、
図3に示されているように、モータハウジング21の前端部から前方に突出する部分であり、ギヤカバー231及び軸受保持部232を有している。ギヤハウジング23は、その内部に、動力伝達部4、出力シャフト支持部5、及び出力シャフト部6の上部を収容している。
【0034】
ギヤカバー231は、ギヤハウジング23の上部を構成する部分であり、例えば、アルミニウム等の金属性である。軸受保持部232は、ギヤハウジング23の下部を構成する部分であり、ギヤカバー231の下部にボルト等によって固定されている。軸受保持部232の詳細については、後述する。
【0035】
モータ3は、ACブラシ付モータであり、回転シャフト31、図示せぬロータ、及び図示せぬステータを有している。回転シャフト31は、
図3に示されているように、前後方向に延びており、モータハウジング21によって前後方向に延びる第1回転軸A1を中心に回転可能に支持されている。回転シャフト31の前部には、ハウジング2内に冷却風を発生させるためのファン32が回転シャフト31と同軸一体回転可能に固定されている。
【0036】
ロータは、回転シャフト31に同軸一体回転可能に固定されており、複数のロータコイルを有している。ステータは、複数の駆動用コイル及び複数のブレーキ用コイルを有している。
【0037】
動力伝達部4は、モータ3の回転を出力シャフト部6に伝達する機構であり、ギヤハウジング23のギヤカバー231に収容されている。動力伝達部4は、
図3に示されているように、ピニオンギヤ41及びベベルギヤ42を有している。
【0038】
ピニオンギヤ41は、前後方向に延びており、回転シャフト31と同軸一体回転するように回転シャフト31の前端部に固定されている。ピニオンギヤ41は、モータ3が駆動されると、回転シャフト31と一体に第1回転軸A1を中心に回転する。
【0039】
ベベルギヤ42は、略円盤形状に形成されており、ピニオンギヤ41と噛合している。ベベルギヤ42の平面視中央には、ベベルギヤ42を上下方向に貫通する貫通孔42aが形成されている。
【0040】
出力シャフト支持部5は、出力シャフト部6を第2回転軸A2を中心に回転可能に支持する部分であり、
図3に示されているように、第1軸受51及び第2軸受52を有している。第1軸受51は、軸受保持部232に保持されたボールベアリングであり、平面視円環形状の外輪51A及び内輪51Bを有している。第1軸受51は、出力シャフト部6の上下方向の中央部分において、出力シャフト部6を回転可能に支持している。第2軸受52は、ニードルベアリングであり、ギヤカバー231内の上部に設けられている。第2軸受52は、出力シャフト部6の上端部において、出力シャフト部6を回転可能に支持している。第1軸受51の詳細については、後述する。
【0041】
出力シャフト部6は、先端工具Pが取付けられた状態で回転することで、研磨等の作業を行う部分であり、
図3に示されているように、スピンドル61及び先端工具取付部62を有している。
【0042】
スピンドル61は、上下方向に延びる略円柱形状をなすシャフトである。スピンドル61の上端部は、ギヤハウジング23内に収容されており、スピンドル61の下端部はギヤハウジング23から下方に突出している。まあ、スピンドル61は、第1軸受51及び第2軸受52によって、第2回転軸A2を中心に回転可能に支持されている。スピンドル61の上部は、ベベルギヤ42の貫通孔42aに圧入されている。これにより、出力シャフト部6とベベルギヤ42とが互いに固定されている。スピンドル61及びベベルギヤ42は、ピニオンギヤ41が回転すると、第1回転軸A1と略直交する方向(本実施形態においては、上下方向)に延びる第2回転軸A2を中心に一体に回転する。スピンドル61の詳細については、後述する。下方向は、本発明における「第1方向」の一例である。上方向は、本発明における「第2方向」の一例である。スピンドル61の下端部は、本発明における「第1端部」の一例である。スピンドル61の上端部は、本発明における「第2端部」の一例である。
【0043】
先端工具取付部62は、先端工具Pが取付けられる部分であり、ワッシャ621及びナット622を有している。ワッシャ621は、ナット622と協働して先端工具Pを保持する部材である。ワッシャ621は、平面視において略円環形状をなしており、スピンドル61の下部に固定されている。ナット622は、平面視において略円環形状をなしており、スピンドル61の下端部に形成された雄ネジ部に螺合可能に構成されている。
【0044】
先端工具Pは、例えば、砥石、ベベルワイヤブラシ、不織布ブラシ、ダイヤモンドホイール等である。砥石のより具体的な例としては、レジノイドフレキシブル砥石、フレキシブル砥石、レジノイド砥石、サンディングディスク等が挙げられる。先端工具Pとして砥石を用いる場合には、砥石の材質や砥粒の種類を適宜選択することにより、金属、合成樹脂、大理石、コンクリート等の表面研磨、曲面研磨等が可能である。
【0045】
先端工具取付部62への先端工具Pの取付は、先端工具Pの平面視略中央に形成された貫通孔にワッシャ621に形成された円筒形状の部分を貫通させ且つ先端工具Pの上面をワッシャ621の底面に当接させた状態で、スピンドル61の下端部に形成された雄ネジ部にナット622を螺合することにより行う。また、先端工具Pの先端工具取付部62からの取外しは、スピンドル61の雄ネジ部とナット622との螺合を解除することにより行う。
【0046】
防塵部7は、先端工具Pを用いた研磨等の作業によって発生する粉塵の第1軸受51内部等への侵入を抑制するための防塵機構である。防塵部7は、軸受保持部232の内面とスピンドル61との間に位置し、且つ第1軸受51の下方に設けられている。防塵部7の詳細については、後述する。
【0047】
ホイールガード8は、ギヤハウジング23の下端部に設けられており、先端工具Pが先端工具取付部62に取付けられた状態で、先端工具Pの後部を覆うように構成されている。
【0048】
<1-2.ディスクグラインダ1の動作> 次に、ディスクグラインダ1の動作について説明する。先端工具取付部62に先端工具Pを取り付け且つ電源コード部22Aを交流電源に接続した状態で、作業者がモータハウジング21の駆動スイッチ21Aに対してオン操作を行うと、スイッチ機構22Bがオン状態となり、モータ3に交流電源から電力が供給される。モータ3に電力が供給されると、モータ3が駆動され、回転シャフト31及びピニオンギヤ41が一体に第1回転軸A1を中心に回転する。
【0049】
ピニオンギヤ41が回転すると、ピニオンギヤ41と噛合しているベベルギヤ42にモータ3の回転が伝達され、ベベルギヤ42、スピンドル61、先端工具取付部62、及び先端工具取付部62に取付けられた先端工具Pが一体に第2回転軸A2を中心に回転する。この回転する先端工具Pによって、研磨等の作業が可能となる。
【0050】
<1-3.軸受保持部232、第1軸受51、スピンドル61、及び防塵部7の詳細な説明> 次に、
図3乃至
図6を参照しながら、軸受保持部232、第1軸受51、スピンドル61、及び防塵部7の詳細について説明する。
【0051】
<1-3-1.軸受保持部232の詳細> 軸受保持部232は、樹脂製であり、
図4に示されているように、円筒支持部232Aと、第1円環突出部232Bと、第2円環突出部232Cとを有している。また、軸受保持部232には、円環凹部232aが形成されている。
【0052】
円筒支持部232Aは、上下方向に延びる略円筒形状の部分であり、スピンドル61の径方向において第1軸受51の外方に位置している。円筒支持部232Aの内周面は、第1軸受51の外輪51Aの外周面と接触しており、円筒支持部232Aは、外輪51Aの外周面を支持している。また、円筒支持部232Aの上下方向の寸法は、外輪51Aの上下方向における寸法よりも大きく構成されており、円筒支持部232Aの上端は、外輪51Aの上端よりも上方に位置し、円筒支持部232Aの下端は、外輪51Aの下端よりも下方に位置している。なお、以下においては、スピンドル61の径方向を、単に「径方向」と呼ぶ。
【0053】
第1円環突出部232Bは、円筒支持部232Aのうちの外輪51Aよりも下方に位置する部分から径方向内方に突出する部分であり、底面視において円環形状をなしている。第1円環突出部232Bの上面は、外輪51Aの下面に接触しており、第1円環突出部232Bは、外輪51Aの下面を支持している。また、第1円環突出部232Bの径方向における内方端は、外輪51Aの外周面よりも径方向において内方に位置し且つ外輪51Aの内周面よりも径方向において外方に位置している。第1円環突出部232Bは、本発明における「突出部」の一例である。
【0054】
第2円環突出部232Cは、円筒支持部232Aのうちの外輪51Aよりも上方に位置する部分から径方向内方に突出する部分であり、平面視において円環形状をなしている。第2円環突出部232Cの下面は、外輪51Aの上面に接触しており、第2円環突出部232Cは、外輪51Aの上面を支持している。また、第2円環突出部232Cの径方向における内方端は、外輪51Aの外周面よりも径方向において内方に位置し且つ外輪51Aの内周面よりも径方向において外方に位置している。
【0055】
円環凹部232aは、円筒支持部232Aの内周面、第1円環突出部232Bの上面、及び第2円環突出部232Cの下面によって画成された凹部であり、平面視において円環形状をなしている。円環凹部232aの上下方向の寸法は、外輪51Aの上下方向の寸法と同一である。
【0056】
<1-3-2.第1軸受51の詳細> 第1軸受51は、
図4に示されているように、上述の外輪51A及び内輪51Bに加え、複数のボール51Cと、第1円環シール部材51Dと、第2円環シール部材51Eとを有している。複数のボール51Cは、外輪51Aと内輪51Bとの間に介在している。第1円環シール部材51Dは、平面視において円環形状をなし、外輪51Aの内周面と内輪51Bの外周面との間に画成される円筒状の空間の下端を閉塞するシール部材である。第2円環シール部材51Eは、平面視において円環形状をなし、上述の円筒状の空間の上端を閉塞するシール部材である。以下においては、外輪51Aと内輪51Bとの間に画成される上述の円筒状の空間を、単に「第1軸受51の内部空間」と呼ぶ。
【0057】
第1軸受51は、外輪51Aの外周部が軸受保持部232の円環凹部232aに収容された状態で、軸受保持部232に保持されている。より詳細には、第1軸受51は、軸受保持部232と一体に成型されることで、ギヤハウジング23に固定(保持)されている。また、第1軸受51の内輪51Bの内周部の上面は、ベベルギヤ42の下面に接触している。
【0058】
ここで、
図6(a)~(f)を参照しながら、軸受保持部232及び第1軸受51の一体成型について説明する。軸受保持部232及び第1軸受51の一体成型には、
図6(a)~(f)に示されている所定の型Mが用いられる。型Mは、軸受保持部232の下端部分を成型するための型部材M1を含む複数の型部材から構成されている。型Mは、当該複数の型部材から組み立て可能であり、且つ当該複数の型部材に分解可能である。
【0059】
軸受保持部232及び第1軸受51を一体に成型する場合、まず、
図6(a)に示されているように型部材M1に設けられた円柱部M2の上面に第1軸受51を載置し、所定の方法で第1軸受51を型部材M1に固定する。なお、円柱部M2の直径は、第1軸受51の直径よりも小さく構成されており、円柱部M2の外周面の径方向の位置は第1円環突出部232Bの内周面の径方向の位置と一致している。
【0060】
その後、
図6(b)及び(c)に示されているように、軸受保持部232の下端部分よりも上方の部分を成型するための残りの型部材を型部材M1に組付け、型Mを完成させる。この状態で、
図6(d)に示されているように、型Mに形成された図示せぬ孔から高熱に熱せられた液体状の樹脂Rを型Mの内部に形成された空間に流し込む。そして、樹脂Rが固まった後に、
図6(e)に示されているように、型Mを分解しながら樹脂Rから取り外す。これにより、
図6(f)に示されているように、第1軸受51を保持した状態の軸受保持部232が成型される。このようにして、軸受保持部232及び第1軸受51は一体に成型される。
【0061】
<1-3-3.スピンドル61の詳細> スピンドル61は、
図3及び
図4に示されているように、第1円柱部611と、第2円柱部612と、第3円柱部613と、第4円柱部614と、第5円柱部615とを有している。
【0062】
第1円柱部611は、
図3に示されて言うように、スピンドル61の上端部を構成する部分であり、上下方向に延びる円柱形状をなしている。第1円柱部611は、第2軸受52に圧入されている。
【0063】
第2円柱部612は、第1円柱部611の下端と連続するとともに当該下端から下方向に延びる円柱形状の部分であり、ベベルギヤ42の貫通孔42aに圧入されている。第2円柱部612の直径は、第1円柱部611の直径よりも大きく構成されている。
【0064】
第3円柱部613は、第2円柱部612の下端と連続するとともに当該下端から下方向に延びる円柱形状の部分であり、第1軸受51の内輪51Bに圧入されている。第3円柱部613の直径は、第2円柱部612の直径よりも大きく構成されている。第3円柱部613の上端は、内輪51Bの上端よりも僅かに下方に位置し、第3円柱部613の下端は、内輪51Bの下端よりも僅かに下方に位置している。
【0065】
また、第3円柱部613の下端部の外周面全域は、僅かに径方向内方に凹んでおり、平面視において円環形状の円環凹部613aを画成している。円環凹部613aの上端は、内輪51Bの下端よりも上方に位置しており、円環凹部613aの下端は、内輪51Bの下端よりも下方に位置している。なお、本実施形態においては、円環凹部613aの下端は、第3円柱部613の下端と一致している。
【0066】
第4円柱部614は、第3円柱部613の下端と連続するとともに当該下端から下方向に延びる円柱形状の部分であり、上下方向に所定の寸法を有している。第4円柱部614の直径は、第3円柱部613の直径よりも大きく構成されている。第4円柱部614の外周面は、内輪51Bの内周面よりも径方向において外方に位置し、且つ内輪51Bの外周面よりも径方向において内方に位置している。また、第4円柱部614の上端は内輪51Bの下端よりも僅かに下方に位置しており、第4円柱部614の外周部の上面は内輪51Bの内周部の下面と僅かに離間している。
【0067】
第5円柱部615は、スピンドル61の下部を構成する部分であり、第4円柱部614の下端と連続するとともに当該下端から下方向に延びるとともにギヤハウジング23から下方に突出している。なお、上述の先端工具取付部62のワッシャ621は、第5円柱部615に固定されている。
【0068】
<1-3-4.防塵部7の詳細> 防塵部7は、
図4及び
図5に示されているように、防塵シール部材71及び規制部材72を有している。
【0069】
防塵シール部材71は、研磨等の作業によって発生する粉塵が第1軸受51の内部(すなわち、円筒空間)に侵入することを抑制するためのシール部材である。防塵シール部材71は、本発明における「シール部材」である。
【0070】
防塵シール部材71は、平面視において円環形状をなしており、軸受保持部232の第1円環突出部232Bとスピンドル61との間に位置している。より具体的には、防塵シール部材71は、第1円環突出部232Bよりも径方向内方且つスピンドル61(より詳細には、第4円柱部614)及び後述の円筒部分72Bよりも径方向外方に位置している。本実施形態においては、防塵シール部材71は、潤滑油を含侵させたフェルトである。
【0071】
防塵シール部材71の径方向における寸法(幅方向における寸法)は、第1軸受51の円筒空間の径方向における寸法(幅方向における寸法)よりも大きく構成されており、防塵シール部材71の外周面は、外輪51Aの外周面よりも径方向内方且つ外輪51Aの内周面よりも径方向外方に位置し、防塵シール部材71の内周面は、内輪51Bの外周面よりも径方向内方且つ内輪51Bの内周面よりも径方向外方に位置している。すなわち、防塵シール部材71の少なくとも一部は、軸方向において、内輪51Bとオーバーラップしている。言い換えると、防塵シール部材71の少なくとも一部は、上下方向(軸方向)に見て、内輪51Bと重なっている。より具体的には、防塵シール部材71の径方向内方端部は、内輪51Bと軸方向においてオーバーラップしている。
【0072】
また、防塵シール部材71の外周面は、第1円環突出部232Bの内方端(すなわち、第1円環突出部232Bの内周面)と接触している。すなわち、軸方向において、第1軸受51の円筒空間全体が防塵シール部材71とオーバーラップしている。言い換えれば、上下方向に見て、円筒空間全体が防塵シール部材71と重なっている。
【0073】
防塵シール部材71の上下方向の寸法は、第1円環突出部232Bの上下方向の寸法と同一であり、防塵シール部材71の上端は第1円環突出部232Bの上端と一致し且つ防塵シール部材71の下端は第1円環突出部232Bの下端と一致している。また、防塵シール部材71の上面は、外輪51Aの径方向内方端部の下面、第1円環シール部材51Dの下面、及び内輪51Bの径方向外方部の下面に接触している。すなわち、防塵シール部材71は、研磨等の作業で発生する粉塵の第1軸受51の内部(円筒空間)への侵入経路となり得る外輪51Aと第1円環シール部材51Dとの接触部分及び内輪51Bと第1円環シール部材51Dとの接触部分を覆っている。
【0074】
規制部材72は、金属製であり、防塵シール部材71を第1円環突出部232Bと協働して保持するとともに防塵シール部材71の下方への移動を規制する部材である。規制部材72は、第1円環突出部232Bとスピンドル61との間に位置しており、
図4及び
図5に示されているように、円環部分72Aと、円筒部分72Bと、鍔部72Cとを有している。
【0075】
円環部分72Aは、規制部材72の径方向における内方部を構成する部分であり、平面視において円環形状をなしている。円環部分72Aの内周縁部は、第1軸受51の内輪51Bの下面とスピンドル61の第4円柱部614の上面とによって挟持されている。これにより、円環部分72Aは、スピンドル61及び内輪51Bに対して固定されている。すなわち、規制部材72は、スピンドル61の外周面に固定されている。
【0076】
円環部分72Aの径方向における外方端は、内輪51Bの外周面よりも径方向において内方に位置し、且つ内輪51Bの内周面よりも径方向において外方に位置している。円環部分72Aの径方向における内方端は、内輪51Bの内周面よりも径方向において内方に位置しており、第3円柱部613の円環凹部613aに接触している。また、円環部分72Aの上面は、内輪51Bの下面に接触している。
【0077】
円筒部分72Bは、円環部分72Aの径方向における外周縁から下方に延びる円筒形状をなす部分である。円筒部分72Bは、径方向において防塵シール部材71よりも内方に位置しており、円筒部分72Bの下端は、防塵シール部材71の下端よりも下方に位置している。また、円筒部分72Bの外周面は、防塵シール部材71の内周面に接触しており、第1円環突出部232Bと協働して、防塵シール部材71を径方向に僅かに圧縮変形させた状態で防塵シール部材71を挟持している。円筒部分72Bの下端部は、本発明における「円筒部分の第1方向の端部」の一例である。
【0078】
鍔部72Cは、円筒部分72Bの下端部の外周面から径方向における外方に延びており、平面視において円環形状をなしている。鍔部72Cは、防塵シール部材71の下方に位置しており、防塵シール部材71との間に僅かな隙間を形成している。
【0079】
また、鍔部72Cの径方向における外方端は、防塵シール部材71の外周面よりも径方向において外方に位置しており、鍔部72Cによって防塵シール部材71の下面が覆われている。すなわち、軸方向において、防塵シール部材71全体が鍔部72Cとオーバーラップしている。さらに、言い換えれば、上下方向に見て、防塵シール部材71全体が鍔部72Cと重なっている。上述のように鍔部72Cが構成されているため、防塵シール部材71が下方に移動した場合には、鍔部72Cの上面に防塵シール部材71が接触し、防塵シール部材71のそれ以上の下方への移動が規制される。これにより、防塵シール部材71がディスクグラインダ1から抜け落ちることが防止される。
【0080】
<1-4.ディスクグラインダ1における作用及び効果> 上述した第1実施形態によるディスクグラインダ1は、ギヤハウジング23と、下方に延びるとともに下端部がギヤハウジング23から突出し且つ上端部がギヤハウジング23に収容されたスピンドル61と、ギヤハウジング23に保持されるとともに内輪51B及び外輪51Aを有しスピンドル61を回転可能に支持する第1軸受51と、スピンドル61の下端部に設けられ先端工具Pを取付可能な先端工具取付部62と、第1軸受51の下方に位置する防塵シール部材71と、防塵シール部材71の下方への移動を規制する規制部材72とを備えている。また、ギヤハウジング23は、第1軸受51と一体成型されるとともに第1軸受51を保持する軸受保持部232を有している。また、軸受保持部232は、下方に延び外輪51Aの外周面を支持する円筒支持部232Aと、外輪51Aの下方に位置するとともに円筒支持部232Aからスピンドル61の径方向の内方に突出し第1軸受51の下方への移動を規制する第1円環突出部232Bとを有している。さらに、第1円環突出部232Bの径方向における内方端(すなわち、第1円環突出部232Bの内周面)は、径方向において外輪51Aの外周面よりも内方且つ外輪51Aの内周面よりも外方に位置し、防塵シール部材71は、スピンドル61と第1円環突出部232Bとの間に設けられ、防塵シール部材71の少なくとも一部は、軸方向において内輪51Bとオーバーラップし、規制部材72は、スピンドル61に保持されている。
【0081】
上記のように構成されたディスクグラインダ1においては、スピンドル61に保持された規制部材72によって、防塵シール部材71は第1軸受51の内輪51Bと軸方向においてオーバーラップする位置で下方への移動が規制される。このため、第1軸受51と一体的に成型される軸受保持部232を用いる構成でありながらも、防塵シール部材71を第1軸受51の内輪51Bと軸方向においてオーバーラップする位置に位置決めすることができ、生産コストの削減及び好適なシール性を実現することができる。これにより、作業で発生する粉塵が第1軸受51に侵入することを好適に抑制し、作業性を良好に維持することができる。
【0082】
より詳細には、第1軸受51と一体的に成型される軸受保持部232を用いた場合には、ディスクグラインダ1の生産コスト削減の効果を奏する。しかしながら、軸受保持部232と第1軸受51とを一体的に成型する際には上述したような成型手法を用いるため、第1軸受51の下方への移動を規制する第1円環突出部232Bの径方向における内方端(第1軸受51の下方への移動を規制する位置)を外輪51Aの内周面よりも径方向内方に突出させようとすると、型部材M1の円柱部M2の外周面が外輪51Aの内周面よりも径方向内方に位置するように円柱部M2の小さく構成しなければならず、このように構成した型部材M1を使用すると、熱せられて高熱となった液体状の樹脂Rが、第1軸受51の第1円環シール部材51Dを溶かして第1軸受51の内部空間に侵入し、樹脂Rが固まると外輪51Aと内輪51Bとが相対回転不能となってしまう。このため、第1軸受51と一体的に成型される軸受保持部232を用いる本実施形態のような構成においては、第1円環突出部232Bの径方向における内方端(第1軸受51の下方への移動を規制する位置)が外輪51Aの内周面よりも径方向において外方に位置する構成となってしまう。
【0083】
また、防塵シール部材71は内輪51Bと軸方向においてオーバーラップする位置において好適なシール性を奏するが、第1円環突出部232Bの径方向における内方端が外輪51Aの内周面よりも径方向外方に位置してしまう構成においては、防塵シール部材71を上記のような好適な位置に位置決めすることが困難である。
【0084】
しかしながら、本実施形態によると、第1軸受51と一体的に成型される軸受保持部232を用いる構成でありながらも、スピンドル61に保持された規制部材72によって、防塵シール部材71は第1軸受51の内輪51Bと軸方向においてオーバーラップする位置に位置決めすることができ、生産コストの削減及び好適なシール性を実現することができる。
【0085】
また、ディスクグラインダ1における規制部材72は、径方向においてスピンドル61と第1円環突出部232Bとの間に位置している。すなわち、シールが必要なスピンドル61と第1円環突出部232Bとの間の空間に規制部材72が位置している。このため、規制部材72も防塵部材(シール部材)として機能する。これにより、研磨等の作業で発生する粉塵が第1軸受51に侵入することをより好適に抑制し、作業性をより良好に維持することができる。
【0086】
また、ディスクグラインダ1においては、スピンドル61が回転するとスピンドル61に固定されている規制部材72もスピンドル61と一体に回転するため、円筒部分72Bの外周面と防塵シール部材71の内周面との間で摩擦熱が発生する。しかしながら、ディスクグラインダ1においては、防塵シール部材71の内周面が内輪51Bの外周面よりも径方向内方に位置しているため、防塵シール部材71の内周面が内輪51Bの外周面よりも径方向外方に位置する構成と比較して、円筒部分72Bの外周面と防塵シール部材71の内周面との相対周速度を小さくすることができ、発生する摩擦熱を低く抑えることができる。これにより、摩擦熱による防塵シール部材71の早期摩耗・劣化を抑制することができ、良好なシール性を長く維持することができる。
【0087】
また、ディスクグラインダ1においては、規制部材72の鍔部72Cと防塵シール部材71との間に僅かな隙間が形成されている。このため、規制部材72がスピンドル61と一体に回転した際に、鍔部72Cと防塵シール部材71との間に摩擦熱が発生することを抑制することができる。これにより、摩擦熱による防塵シール部材71の早期摩耗・劣化をより抑制することができる。
【0088】
また、ディスクグラインダ1においては、鍔部72Cと防塵シール部材71との間に形成された上述の隙間によって、研磨等の作業で発生する粉塵の第1軸受51への侵入経路を長くすることができる。これにより、当該粉塵が第1軸受51に侵入することをより好適に抑制することができる。
【0089】
<2.第2実施形態によるディスクグラインダ101の説明> 次に、
図7乃至
図9を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る作業機の一例であるディスクグラインダ101について説明する。ディスクグラインダ101の基本的構成は、第1実施形態に係るディスクグラインダ1と同一であるため、相違する構成について主に説明する。また、ディスクグラインダ101において、ディスクグラインダ1における部材、部位、要素と同一のものについては、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0090】
ディスクグラインダ101は、防塵部7に替えて、防塵部170を備えている点で、ディスクグラインダ1と異なる。
【0091】
<2-1.防塵部170の詳細> 防塵部170は、
図7及び
図8に示されているように、防塵シール部材171及び規制部材172を有している。
【0092】
防塵シール部材171は、平面視において円環形状をなしており、軸受保持部232の第1円環突出部232Bとスピンドル61との間に位置している。より具体的には、第1円環突出部232Bの径方向内方且つスピンドル61の第4円柱部614の径方向外方に位置している。本実施形態における防塵シール部材171は、防塵シール部材71と同様、潤滑油を含侵させたフェルトである。防塵シール部材171は、本発明における「シール部材」の一例である。
【0093】
防塵シール部材171の径方向における寸法は、ディスクグラインダ1の防塵シール部材71の径方向における寸法よりも小さく構成されている。より具体的には、防塵シール部材171の径方向における寸法は、外輪51Aの径方向における寸法、内輪51Bの径方向における寸法、及び円筒空間の径方向における寸法よりも小さい。また、防塵シール部材171の上下方向の寸法も、ディスクグラインダ1の防塵シール部材71の径方向における寸法よりも小さく構成されている。
【0094】
防塵シール部材171の外周面は、外輪51Aの内周面よりも径方向内方且つ内輪51Bの外周面よりも径方向外方に位置しており、防塵シール部材171の内周面は、内輪51Bの外周面よりも径方向内方且つ内輪51Bの内周面よりも径方向外方に位置している。すなわち、防塵シール部材171の少なくとも一部は、軸方向において、内輪51Bとオーバーラップしている。言い換えると、防塵シール部材171の少なくとも一部は、上下方向に見て、内輪51Bと重なっている。より具体的には、防塵シール部材171のうち径方向における外方端部以外の部分は、内輪51Bと軸方向においてオーバーラップしている。また、防塵シール部材171の内周面は、スピンドル61の第4円柱部614の外周面と接触している。
【0095】
防塵シール部材171の上下方向の寸法は、防塵シール部材71の上下方向の寸法よりも小さく構成されており、第1円環突出部232Bの上下方向の寸法よりも小さい。防塵シール部材171の上端は第1円環突出部232Bの上端と一致し且つ防塵シール部材71の下端は第1円環突出部232Bの下端よりも上方に位置している。また、防塵シール部材171の上面は、第1軸受51の第1円環シール部材51Dの径方向内方部と当該部分と連続する内輪51Bの径方向外方端部の下面に接触している。すなわち、防塵シール部材171は、粉塵の第1軸受51の内部(円筒空間)への侵入経路となり得る内輪51Bと第1円環シール部材51Dとの接触部分を覆っている。
【0096】
規制部材172は、金属製であり、防塵シール部材171をスピンドル61の第4円柱部614と協働して保持するとともに防塵シール部材
171の下方への移動を規制する部材である。規制部材172は、
図8及び
図9に示されているように、平面視において全体として円環形状をなしており、軸受保持部232の第1円環突出部232Bに圧入されている。より詳細には、規制部材172は、軸受保持部232の第1円環突出部232Bの内周面、第1軸受51の下面、及びスピンドル61の外周面によって画成される平面視円環形状の空間に嵌め込まれている。これにより、規制部材172は、第1円環突出部232Bとスピンドル61との間に位置するとともに軸受保持部232に固定(保持)されている。規制部材172は、円環部分172Aと、円筒部分172Bと、鍔部172Cと、複数の突出壁部172Dと、を有している。
【0097】
円環部分172Aは、規制部材172の径方向における内方部を構成する部分であり、平面視において円環形状をなしている。円環部分172Aは、径方向においてスピンドル61の外方に位置しており、円環部分172Aの内縁部とスピンドル61の第4円柱部614との間には僅かな隙間が形成されている。
【0098】
円環部分172Aの径方向における外方端は、内輪51Bの外周面よりも径方向外方且つ外輪51Aの内周面よりも径方向において内方に位置している。円環部分172Aの径方向における内方端は、内輪51Bの内周面よりも径方向外方且つ内輪51Bの外周面よりも径方向内方に位置している。また、円環部分172Aの上面は、防塵シール部材171の下面と上下方向に対向しており、円環部分172Aの上面と防塵シール部材171の下面との間には僅かな隙間が形成されている。このため、防塵シール部材171が下方に移動した場合には、円環部分172Aの上面に防塵シール部材171が接触し、防塵シール部材171のそれ以上の下方への移動が規制される。これにより、防塵シール部材171がディスクグラインダ101から抜け落ちることが防止される。
【0099】
円筒部分172Bは、円環部分172Aの径方向における外周縁から上方に延びる円筒形状をなす部分である。円筒部分172Bは、防塵シール部材171よりも径方向外方に位置しており、円筒部分172Bの上面は、第1軸受51の第1円環シール部材51Dの下面に接触している。また、円筒部分172Bは、防塵シール部材171の外周面に接触しており、第4円柱部614と協働して、防塵シール部材171を径方向に僅かに圧縮変形させた状態で防塵シール部材171を挟持している。
【0100】
鍔部172Cは、円筒部分172Bの上端部の外周面から径方向外方に延びており、平面視において円環形状をなしている。鍔部172Cは、第1軸受51の下方に位置しており、鍔部172Cの上面は、外輪51Aの径方向内方部の下面及び第1円環シール部材51Dの下面に接触している。すなわち、鍔部172Cは、粉塵の第1軸受51の内部(円筒空間)への侵入経路となり得る外輪51Aと第1円環シール部材51Dとの接触部分を覆っている。
【0101】
また、鍔部172Cの径方向外方端は、外輪51Aの内周面よりも径方向外方且つ第1円環突出部232Bの内周面よりも径方向内方に位置しており、鍔部172Cの径方向外方端と第1円環突出部232Bの内周面との間には僅かな隙間が形成されている。
【0102】
複数の突出壁部172Dは、
図9に示されているように、鍔部172Cの外周縁部の下面から下方に突出する部分であり、互いに同一形状をなしている。複数の突出壁部172Dは、スピンドル61の周方向において等間隔に設けられており、隣り合う2つの突出壁部172Dの間には所定の隙間が形成されている。また、
図8に示されているように、複数の突出壁部172Dは、規制部材172が軸受保持部232に嵌め込まれた状態で径方向内方に撓んでおり、複数の突出壁部172Dのそれぞれの外周面は、第1円環突出部232Bの
内周面と圧接している。これにより、規制部材172は、第1円環突出部232Bに対して固定されている。
【0103】
<2-2.ディスクグラインダ101における作用及び効果> 上述した第2実施形態によるディスクグラインダ101においては、軸受保持部232に保持された規制部材172によって、防塵シール部材171は第1軸受51の内輪51Bと軸方向においてオーバーラップする位置で下方への移動が規制される。このため、第1軸受51と一体的に成型される軸受保持部232を用いる構成でありながらも、防塵シール部材171を第1軸受51の内輪51Bと軸方向においてオーバーラップする位置に位置決めすることができ、生産コストの削減及び好適なシール性を実現することができる。これにより、作業で発生する粉塵が第1軸受51に侵入することを好適に抑制し、作業性を良好に維持することができる。
【0104】
また、ディスクグラインダ101における規制部材172は、軸受保持部232に固定されている。このため、第1実施形態によるディスクグラインダ1とは異なり、スピンドル61の回転によって規制部材172は回転しない。これにより、規制部材172と規制部材172によって位置決めされている防塵シール部材171との間で摩擦が発生することを抑制することができ、摩擦熱による防塵シール部材171の早期摩耗・劣化を抑制することができる。
【0105】
また、ディスクグラインダ101においては、防塵シール部材171の上下方向における寸法は、ディスクグラインダ1の防塵シール部材71の上下方向における寸法よりも小さく構成されている。このため、ディスクグラインダ101における防塵シール部材171とスピンドル61との接触面積は、ディスクグラインダ1における防塵シール部材71と規制部材72の円筒部分72Bとの接触面積よりも小さい。これにより、ディスクグラインダ101においては、スピンドル61が回転するとスピンドル61の第4円柱部614と防塵シール部材171との間で摩擦熱が発生するが、ディスクグラインダ1における防塵シール部材71と規制部材72の円筒部分72Bとの間に発生する摩擦熱と比較して、発生する摩擦熱を低く抑えることができる。
【0106】
また、ディスクグラインダ101においては、防塵シール部材171の下方への移動を規制する規制部材172の円環部分172Aと防塵シール部材171との間には、隙間が形成されている。このため、防塵シール部材171と円環部分172Aとの間で摩擦が発生することを抑制することができる。また、防塵シール部材171の径方向における寸法は、ディスクグラインダ1の防塵シール部材71の径方向における寸法よりも小さく構成されている。このため、防塵シール部材171と円環部分172Aとの間で摩擦が発生した場合であっても、発生する摩擦熱を低く抑えることができる。
【0107】
なお、ディスクグラインダ101におけるディスクグラインダ1と同様の構成は、ディスクグラインダ1におけるそれらの構成と同様の作用効果を奏する。
【0108】
<3.第3実施形態によるディスクグラインダ201の説明> 次に、
図10乃至
図12を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る作業機の一例であるディスクグラインダ201について説明する。ディスクグラインダ201の基本的構成は、第1実施形態に係るディスクグラインダ1と同一であるため、相違する構成について主に説明する。また、ディスクグラインダ201において、ディスクグラインダ1における部材、部位、要素と同一のものについては、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0109】
ディスクグラインダ201は、軸受保持部232及び防塵部7に替えて、軸受保持部332及び防塵部270を備えている点がディスクグラインダ1と異なる。
【0110】
<3-1.軸受保持部332の詳細> 軸受保持部332は、
図10及び
図11に示されているように、円筒支持部232A及び第1円環突出部232Bに替えて、円筒支持部332A及び第1円環突出部332Bを有している点で、ディスクグラインダ1の軸受保持部232と異なる。
【0111】
円筒支持部332Aは、円環凹部332aが形成されている点で円筒支持部232Aと異なる。円環凹部332aは、円筒支持部332Aの下部に形成された径方向外方に凹む凹部であり、平面視において円環形状をなしている。円環凹部332aの上端は外輪51Aの下端と上下方向において一致している。
【0112】
第1円環突出部332Bは、円筒支持部332Aのうち円環凹部332aが形成された部分よりも下方に位置する部分から径方向内方に突出する部分であり、底面視において円環形状をなしている。第1円環突出部332Bの径方向における内方端は、外輪51Aの外周面よりも径方向内方且つ外輪51Aの内周面よりも径方向外方に位置している。第1円環突出部332Bは、本発明における「突出部」の一例である。
【0113】
<3-2.防塵部270の詳細> 防塵部270は、
図11に示されているように、防塵シール部材271及び規制部材272を有している。
【0114】
防塵シール部材271は、平面視において円環形状をなしており、軸受保持部332の第1円環突出部332Bとスピンドル61との間に位置している。より具体的には、第1円環突出部332Bよりも径方向内方且つスピンドル61の第4円柱部614よりも径方向外方に位置している。本実施形態における防塵シール部材271は、防塵シール部材71と同様、潤滑油を含侵させたフェルトである。防塵シール部材271は、本発明における「シール部材」の一例である。
【0115】
防塵シール部材271の径方向における寸法は、ディスクグラインダ1の防塵シール部材71の径方向における寸法よりも小さく構成されている。より具体的には、防塵シール部材271の径方向における寸法は、外輪51Aの径方向における寸法、内輪51Bの径方向における寸法、及び円筒空間の径方向における寸法よりも小さい。
【0116】
防塵シール部材271の外周面は、外輪51Aの内周面よりも径方向内方且つ内輪51Bの外周面よりも径方向外方に位置しており、防塵シール部材271の内周面は、内輪51Bの外周面よりも径方向内方且つ内輪51Bの内周面よりも径方向外方に位置している。すなわち、防塵シール部材271の少なくとも一部は、軸方向において、内輪51Bとオーバーラップしている。言い換えると、防塵シール部材271の少なくとも一部は、上下方向に見て、内輪51Bと重なっている。より具体的には、防塵シール部材271のうち径方向における外方端部以外の部分は、内輪51Bと軸方向においてオーバーラップしている。また、防塵シール部材271の内周面は、スピンドル61の第4円柱部614の外周面と接触している。
【0117】
防塵シール部材271の上下方向の寸法は、防塵シール部材71の上下方向の寸法よりも小さく構成されており、第1円環突出部332Bの上下方向の寸法よりも小さい。防塵シール部材271の上端は、円環凹部332aの上端と上下方向において一致しており、防塵シール部材271の下端は、第1円環突出部332Bの下端よりも上方に位置している。また、防塵シール部材271の上面は、第1軸受51の第1円環シール部材51Dの径方向内方部の下面と内輪51Bの径方向外方部の下面とに接触している。すなわち、防塵シール部材271は、粉塵の第1軸受51の内部空間への侵入経路となり得る内輪51Bと第1円環シール部材51Dとの接触部分を覆っている。
【0118】
規制部材272は、防塵シール部材271をスピンドル61の第4円柱部614と協働して保持するとともに防塵シール部材271の下方への移動を規制する部材である。規制部材272は、金属製であり、平面視において円環形状をなしている。規制部材272は、第1軸受51及び軸受保持部332と一体に成型されることで、軸受保持部332の第1円環突出部332Bに固定されている。規制部材272は、円環部分272Aと、円筒部分272Bと、鍔部272Cとを有している。
【0119】
ここで、
図12(a)~(f)を参照しながら、軸受保持部332、第1軸受51、及び規制部材272の一体成型について説明する。軸受保持部332、第1軸受51、及び規制部材272の一体成型には、
図12(a)~(f)に示されている所定の型Nが用いられる。型Nは、軸受保持部332の下端部分を成型するための型部材N1を含む複数の型部材から構成されている。型Nは、当該複数の型部材から組み立て可能であり、且つ当該複数の型部材に分解可能である。
【0120】
軸受保持部
332、第1軸受51、及び規制部材272を一体に成型する場合、最初に、
図12(a)に示されているように、型部材N1に設けられた円環壁部N2の上面に規制部材272を載置する。その後、規制部材272の上面に第1軸受51を載置して、規制部材272及び第1軸受51を所定の方法で型部材N1に固定する。なお、円環壁部N2の直径は、第1軸受51の直径よりも小さく構成されており、円環壁部N2の外周面の径方向の位置は第1円環突出部332Bの内周面の径方向の位置と一致している。
【0121】
その後、
図12(b)及び(c)に示されているように、軸受保持部
332の下端部分よりも上方の部分を成型するための残りの型部材を型部材N1に組付け、型Nを完成させる。この状態で、
図12(d)に示されているように、型Nに形成された図示せぬ孔から高熱に熱せられた液体状の樹脂Rを型Nの内部に形成された空間に流し込む。そして、樹脂Rが固まった後に、
図12(e)に示されているように、型Nを分解しながら樹脂Rから取り外す。これにより、
図12(f)に示されているように、規制部材272及び第1軸受51を保持した状態(すなわち、軸受保持部332に規制部材272及び第1軸受51が固定された状態)の軸受保持部332が成型される。このようにして、軸受保持部332、規制部材272、及び第1軸受51は、一体に成型される。
【0122】
円環部分272Aは、規制部材272の径方向における内方部を構成する部分であり、平面視において円環形状をなしている。円環部分272Aは、スピンドル61の径方向外方に位置しており、円環部分272Aの内縁部とスピンドル61の第4円柱部614との間には僅かな隙間が形成されている。
【0123】
円環部分272Aの径方向における外方端は、内輪51Bの外周面よりも径方向外方且つ外輪51Aの内周面よりも径方向内方に位置している。円環部分272Aの径方向における内方端は、内輪51Bの内周面よりも径方向外方且つ内輪51Bの外周面よりも径方向内方に位置している。
【0124】
また、円環部分272Aの上面は、防塵シール部材271の下面と接触している。このため、防塵シール部材271のそれ以上の下方への移動が規制される。これにより、防塵シール部材271がディスクグラインダ201から抜け落ちることが防止される。
【0125】
円筒部分272Bは、円環部分272Aの径方向における外周縁部から上方に延びる円筒形状をなす部分である。円筒部分272Bは、防塵シール部材271よりも径方向外方に位置しており、円筒部分272Bの上面は、第1軸受51の第1円環シール部材51Dの下面に接触している。また、円筒部分272Bは、防塵シール部材271の外周面に接触しており、第4円柱部614と協働して、防塵シール部材271を径方向に僅かに圧縮変形させた状態で防塵シール部材271を挟持している。
【0126】
鍔部272Cは、円筒部分272Bの上端部の外周面から径方向外方に延びており、平面視において円環形状をなしている。鍔部272Cの延出端部(すなわち、径方向における外方端部)は、円筒支持部332Aに形成された円環凹部332a内に収容された状態で、円筒支持部332Aに固定(保持)されている。このため、鍔部272Cの径方向における外方端は、外輪51Aの外周面及び第1円環突出部332Bの内周面よりも径方向外方に位置している。円筒部分272Bの上端部は、本発明における「円筒部分の第2方向の端部」の一例である。
【0127】
また、鍔部272Cは、第1軸受51の下方に位置しており、鍔部272Cの上面は、外輪51Aの下面全体及び当該下面と隣り合う第1円環シール部材51Dの下面に接触している。すなわち、鍔部272Cは、粉塵の第1軸受51の内部空間への侵入経路となり得る外輪51Aと第1円環シール部材51Dとの接触部分を覆っている。このため、規制部材272は、第1軸受51の内部空間への粉塵の侵入を抑制する防塵部材としても機能する。
【0128】
<3-3.ディスクグラインダ201における作用及び効果> 上述した第3実施形態によるディスクグラインダ201においては、軸受保持部332に保持された規制部材272によって、防塵シール部材271は第1軸受51の内輪51Bと軸方向においてオーバーラップする位置で下方への移動が規制される。このため、第1軸受51と一体的に成型される軸受保持部332を用いる構成でありながらも、防塵シール部材271を第1軸受51の内輪51Bと軸方向においてオーバーラップする位置に位置決めすることができ、生産コストの削減及び好適なシール性を実現することができる。これにより、作業で発生する粉塵が第1軸受51に侵入することを好適に抑制し、作業性を良好に維持することができる。
【0129】
なお、ディスクグラインダ201におけるディスクグラインダ1及びディスクグラインダ101と同様の構成は、ディスクグラインダ1及びディスクグラインダ101におけるそれらの構成と同様の作用効果を奏する。
【0130】
<4.その他の変形例> 本発明による作業機は、上述の実施の形態に限定されず特許請求の範囲に記載された範囲内で種々の変形や改良が可能である。
【0131】
本実施の形態においては、作業機としてディスクグラインダ1、101、201を例に説明したが、本発明はディスクグラインダ以外の作業機、例えば、丸鋸、ドリル等のスピンドルと当該スピンドルを回転可能に支持する軸受を有する作業機であれば適用可能である。
【0132】
本実施形態においては、防塵シール部材71、171、271は、潤滑油を含侵させたフェルトであったが、これに限られず、防塵効果を奏する部材であればよい。例えば、防塵シール部材71、171、271として、当該フェルトに代えて、ゴム等の弾性体を採用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1,101,201…ディスクグラインダ、2…ハウジング、3…モータ、4…動力伝達部、5…出力シャフト支持部、6…出力シャフト部、7,170,270…防塵部、8…ホイールガード、21…モータハウジング、22…テールハウジング、23…ギヤハウジング、51…第1軸受、51A…外輪、51B…内輪、52…第2軸受、61…スピンドル、62…先端工具取付部、71,171,271…防塵シール部材、72,172,272…規制部材、72A,172A,272A…円環部分、72B,172B,272B…円筒部分、72C,172C,272C…鍔部、231…ギヤカバー、232,332…軸受保持部、232A,332A…円筒支持部、232B,332B…第1円環突出部、A1…第1回転軸、A2…第2回転軸、P…先端工具、R…樹脂