(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】乗客コンベア群の自動発停止運転方法
(51)【国際特許分類】
B66B 25/00 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B66B25/00 C
B66B25/00 B
(21)【出願番号】P 2022067942
(22)【出願日】2022-04-15
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 悠児
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247499(JP,A)
【文献】特開2020-175983(JP,A)
【文献】特開2021-138468(JP,A)
【文献】特開2019-210114(JP,A)
【文献】特開2008-273728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み段とハンドレールを循環駆動させるモーターを具えた第1乗客コンベアと第2乗客コンベアであって、前記第2乗客コンベアは、前記第1乗客コンベアから乗継可能に配置されており、
前記第1乗客コンベアは、降り口を第1検知エリアとして、前記第1検知エリアに存在する人の位置を検知する第1センサーを具え、
各前記モーターを定格速度で運転する定格運転モードと、前記モーターを停止又は低速運転する省エネ運転モードとを切り替えて運転する乗客コンベア群の自動発停止運転方法であって、
前記第1センサーにより、前記第1検知エリアの所定高さを平面スキャンし、前記第1検知エリアに存在する人の有無を検知する検知ステップと、
前記第1検知エリア内での移動方向が前記第2乗客コンベアである人が検知されると、前記第2乗客コンベアを前記定格運転モードへ移行又は継続する運転モード制御ステップ、
を含む、乗客コンベア群の自動発停止運転方法。
【請求項2】
前記検知ステップは、
前記第1検知エリアに存在する個々の人の距離データを連続的に逐次取得するデータ取得ステップ、
逐次取得された前記第1検知エリアの前記個々の人の前記距離データの重心位置を時系列順に算出する重心算出ステップ、
前記第1検知エリアの前記個々の人の前記重心位置の移動方向を算出する重心移動算出ステップを含み、
前記運転モード制御ステップは、前記第1検知エリアの前記個々の人の移動方向のうち、前記移動方向が前記第2乗客コンベアに向かう方向の乗継利用者がある場合、前記第2乗客コンベアを前記定格運転モードへ移行又は継続する、
請求項1に記載の乗客コンベア群の自動発停止運転方法。
【請求項3】
前記重心移動算出ステップは、前記乗継利用者の移動速度を算出し、
前記運転モード制御ステップは、前記乗継利用者の移動速度が、所定値以上の場合、前記モーターの加速度を大きくする、
請求項2に記載の乗客コンベア群の自動発停止運転方法。
【請求項4】
前記第1乗客コンベアは、前記第2乗客コンベアに乗り継ぐ降り口のハンドレール間の利用者を検知可能な光電センサーを具え、
前記光電センサーが利用者を検知した後、前記第2乗客コンベアを前記定格運転モードで継続する、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の乗客コンベア群の自動発停止運転方法。
【請求項5】
前記第2乗客コンベアは、光によって前記定格運転モードが継続していることを示す、
請求項1乃至請求項
3の何れかに記載の乗客コンベア群の自動発停止運転方法。
【請求項6】
前記第2乗客コンベアは、光によって前記定格運転モードが継続していることを示す、
請求項4に記載の乗客コンベア群の自動発停止運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り口及び降り口にエリア型センサーを配置し、当該エリア型センサーの検知結果に基づいて自動発停運転を行なう乗客コンベアの制御方法に関するものであり、より具体的には、同一方向に運転する乗客コンベアを2基以上連続して設けた乗客コンベア群の自動発停止運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターや動く歩道のような乗客コンベアでは、乗り口に利用者を検知するセンサーを具え、自動発停止するものが知られている(たとえば特許文献1参照)。自動発停止運転では、乗り口の利用者を検知して、踏み段とハンドレールを自動的に起動又は加速して定格速度で運転する定格運転モードと、最後の利用者が検知されてから所定条件を満たすと停止或いは低速運転させる省エネ運転モードを実行する。自動運転機能を具えることで、利用者がいない間の消費電力を抑え、乗客コンベアの省エネを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、上り方向に運転する乗客コンベアを並設又は直線上に並んで配置した乗客コンベア群がある。このような乗客コンベア群の場合、乗継前の下側の乗客コンベアを降車した利用者が、続く乗継先の上側の乗客コンベアを乗り継いで連続利用する可能性が高い。しかしながら、これら乗客コンベアの自動発停止運転は、個々の乗客コンベアで独立して行なっている。すなわち、乗継前の乗客コンベアを降車した利用者が、乗継先の乗客コンベアの乗り口に到達してから、上側の乗客コンベアを定格運転モードに移行させている。従って、歩行速度が速い利用者では、十分に加速しないまま踏み段に乗車することがあり、また、省エネ運転モードと定格運転モードの切り替え間隔が短くなり、省エネ効果も低下する。
【0005】
本発明の目的は、乗継前の乗客コンベアの利用者に基づいて、乗継先の乗客コンベアの自動発停止運転を制御する乗客コンベア群の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乗客コンベア群の自動発停止運転方法は、
踏み段とハンドレールを循環駆動させるモーターを具えた第1乗客コンベアと第2乗客コンベアであって、前記第2乗客コンベアは、前記第1乗客コンベアから乗継可能に配置されており、
前記第1乗客コンベアは、降り口を第1検知エリアとして、前記第1検知エリアに存在する人の位置を検知する第1センサーを具え、
各前記モーターを定格速度で運転する定格運転モードと、前記モーターを停止又は低速運転する省エネ運転モードとを切り替えて運転する乗客コンベア群の自動発停止運転方法であって、
前記第1センサーにより、前記第1検知エリアの所定高さを平面スキャンし、前記第1検知エリアに存在する人の有無を検知する検知ステップと、
前記第1検知エリアに人が検知された人の内、前記第2乗客コンベアに向かう人が検知されると、前記第2乗客コンベアを前記定格運転モードへ移行又は継続する運転モード制御ステップ、
を含む。
【0007】
前記検知ステップは、
前記第1検知エリアに存在する個々の人の距離データを連続的に逐次取得するデータ取得ステップ、
逐次取得された前記第1検知エリアの前記個々の人の前記距離データの重心位置を時系列順に算出する重心算出ステップ、
前記第1検知エリアの前記個々の人の前記重心位置の移動方向を算出する重心移動算出ステップを含み、
前記運転モード制御ステップは、前記第1検知エリアの前記個々の人の移動方向のうち、前記移動方向が前記第2乗客コンベアに向かう方向の乗継利用者がある場合、前記第2乗客コンベアを前記定格運転モードへ移行又は継続する。
【0008】
前記重心移動算出ステップは、前記乗継利用者の移動速度を算出し、
前記運転モード制御ステップは、前記乗継利用者の移動速度が、所定値以上の場合、前記モーターの加速度を大きくすることができる。
【0009】
前記第1乗客コンベアは、前記踏み段の移行路上方又は前記第2乗客コンベアに乗り継ぐ乗り口又は降り口のハンドレール間の利用者を検知可能な光電センサーを具え、
前記光電センサーが利用者を検知した後、前記第2乗客コンベアを前記定格運転モードで継続することができる。
【0010】
前記第2乗客コンベアは、光によって前記定格運転モードが継続していることを示すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乗客コンベア群の自動発停止運転方法によれば、乗継前の第1乗客コンベアの第1検知エリアに利用者が存在すれば、当該利用者は乗継先の第2乗客コンベアに乗り継ぎするものとみなして、第2乗客コンベアを定格運転モードに移行する。これにより、定格運転モードへの移行を早めることができ、省エネ運転モードと定格運転モードの切り替え回数を減らして、省エネを達成できる。また、歩行速度が速い利用者であっても、早期に定格運転モードに移行することで、十分に加速した状態の踏み段に乗車させることができる。
【0012】
とくに、第1検知エリアに乗継先の第2乗客コンベアへ移動する乗継利用者がある場合に、第2乗客コンベアを定格運転モードに移行又は継続することで、乗継意思のない利用者によって、第2乗客コンベアが定格運転モードに移行又は継続することを防止でき、省エネを達成できる。
【0013】
歩行速度が速い利用者であっても、乗継先の第2乗客コンベアが、早期に定格運転モードに移行することで、十分に加速した状態の踏み段に乗車させることができる。また、乗継利用者の移動速度が、所定値以上の場合、第2乗客コンベアのモーターの加速度を大きくすることで、十分加速した状態の踏み段に乗車させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明を適用できるエスカレーターの概略構成図である。
【
図2】
図2は、乗継前の第1エスカレーターの降り口と、乗継先の第2エスカレーターの乗り口の近傍の斜視図である。
【
図4】
図4は、第1エスカレーターの乗り口の平面模式図である。
【
図5】
図5は、本発明のエスカレーターの群管理制御システムの一実施形態を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1エスカレーターの自動発停止運転の一実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2エスカレーターの自動発停止運転の一実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1エスカレーターの降り口の検知エリアにおける乗継意思有利用者検知のフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1エスカレーターの降り口近傍の光電センサーによる降車予定利用者検知のフローチャートである。
【
図11】
図11は、第2エスカレーターの自動発停止運転の異なる実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、乗客コンベアとしてエスカレーター10を例に挙げるが、乗客コンベアは、所謂動く歩道などであっても構わない。
【0016】
本発明の一実施形態に係るエスカレーター10(10A,10B)は、
図1に示すように、昇降口となる下階側階床20と上階側階床21の間で踏み段11をハンドレール12と共に循環させて構成される。
【0017】
エスカレーター10の骨組みを形成するトラス13には、上下にスプロケット14,15を具え、これらスプロケット14,15間に踏み段11を多数連結して循環させるステップチェーン16が掛けられている。一方のスプロケット14は、モーター17に減速機18を介して動力伝達可能に連繋されている。また、トラス13には、図示しないレールが上下の階床間に配設されており、踏み段11は、ステップチェーン16に牽引されて図示しないレール上を走行する。
【0018】
たとえば、上り運転のエスカレーター10の場合、乗り口20A,20Bが下階側階床20、降り口21A,21Bが上階側階床21にある。下り運転の場合には、下階側階床20が降り口、上階側階床21が乗り口になる。
【0019】
エスカレーター10は、
図2、
図3に示すように、複数が乗継可能に配置されて、エスカレーター群を構成する。たとえば、上り運転のエスカレーター群の場合、乗継前の第1エスカレーター10Aと乗継先の第2エスカレーター10Bを図に示すように直線上に並べて配置、或いは、第1エスカレーター10Aと第2エスカレーター10Bを隣同士に並べてUターンして乗継可能に配置することができる。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るエスカレーター10は、乗り口20A,20Bの近傍と降り口21A,21Bの近傍に夫々センサー40(41A,41B,42A,42B)を配備している。センサー40として、ToF(Time of Flight)センサーの如きエリア型センサーを例示できる。ToFセンサーは、レーザー光の投光部と受光部を回転させながら、投光部から発せられたレーザー光が物体(人50)に反射して受光部に戻ってくるまでの時間を計測し、回転角度毎に人50までの距離データを出力するセンサーである。なお、センサー40は、ToFセンサーに限定されるものではない。
【0021】
たとえば、センサー40は、
図2及び
図3に示すように、乗り口20B、降り口21Aの左右に配置することができる。第1エスカレーター10Aの乗り口20Aの左右に設置されるセンサー40を41A、降り口21Aの左右に配置されるセンサー40を42Aとする。また、第2エスカレーター10Bの乗り口20Bの左右に設置されるセンサー40を41B、降り口21Bの左右に配置されるセンサー40を42Bとする。
【0022】
また、各エスカレーター10は、センサー40の他に、踏み段11の移行路の上側の内デッキボード19やスカートガードに光電センサー43A,43B,44A,44Bを具えることができる。光電センサーは、可視光線や赤外線等の光を発する投光部と光を受ける受光部を対向して配置したものである。投光部と受光部との間を人50が通過することで光が遮られて、受光部で受ける光が途切れるから、人50の通過が検知できる。本発明では、乗継前の第1エスカレーター10Aから降車する利用者(降車予定利用者50F)の有無を検知するために光電センサー44Aを用いている。従って、光電センサーは、少なくとも乗継前の第1エスカレーター10Aの降り口21A側に設置しておけばよい。
【0023】
図2、
図3は、乗継前の第1エスカレーター10Aの一部とその降り口21A、乗継先の第2エスカレーター10Bの一部とその乗り口20Bを示している。
【0024】
図に示すように、第1エスカレーター10Aの降り口21Aには、センサー42Aにより検知される検知エリアβ(第1検知エリア)が形成されている。また、第2エスカレーター10Bの乗り口20Bには、センサー41Bにより検知される検知エリアαが形成される。検知エリアα、βは、
図2、
図3に示す矩形領域である。各検知エリアα、βは、矢印で示す
図2の紙面右下から左上方向、
図3の紙面
下方向から
上方向が利用者の降車方向、乗車方向である。検知エリアα、βは、
図3に示すように、第1エスカレーター10Aの夫々降車方向、第2エスカレーター10Bの乗車方向をY軸とし、Y軸と平面内で直交する水平方向をX軸としている。各検知エリアα、βは、たとえば、センサー42A,42Aの中間、センサー41B,41Bの中間を夫々ゼロ点(0,0)としている。検知エリアα、βは、左右に配置されたセンサーによって平面スキャンされ、夫々が取得した距離データを夫々の制御装置31A,31Bに出力する。たとえば、センサー40は、所定時間毎(たとえば25msec毎)に検知エリアα,βを平面スキャンし、検知エリアα、β内の人50の距離データを連続的に逐次検知し続ける構成とすることができる。
【0025】
検知エリアα、βの幅は、
図3に示すように、エスカレーター10の幅、具体的には、ハンドレール12,12の外法よりも広く採ることができる。たとえば、検知エリアα、βの幅は、ハンドレール12,12の外法の3倍、たとえば、一人乗り用の場合、約2400mm、二人乗り用の場合、約3000mmとすることができる。また、検知エリアα,βの長さは、ハンドレール12,12の周回先端(反転位置)から1400mm以上に設定できる。検知エリアα,βを広くすることで、早期に利用者を検知することができる。
【0026】
第1エスカレーター10Aと第2エスカレーター10Bは、
図5にブロック図を示す群管理制御システム30により制御される。群管理制御システム30は、個々のエスカレーター10A,10Bを制御する個々の制御装置31A,31Bと、制御装置31A,31Bどうしを統括管理する群管理制御装置31を具える。制御装置31A,31Bは、エスカレーターの運転モードを定格運転モードと省エネ運転モードで切り替えて、各モーター17A,17Bを駆動する。
【0027】
ここで、省エネ運転モードとは、乗り口20A,20B側のセンサー41A,41Bが最後の利用者を検知してから所定条件を満たしたときに、モーター17A,17Bを停止又は低速運転することで、消費電力を低減する運転モードである。所定条件として、最後の利用者を検知してから踏み段11が1周半循環に要する時間(たとえば90秒)が経過することを例示できる。
【0028】
定格運転モードは、第1エスカレーター10Aについては、センサー41A、第2エスカレーター10Bについては、センサー41Bと第1エスカレーター10Aの42Aが利用者(本発明では乗車意思のある利用者50A、又は、乗継意思のある利用者50C)を検知したときに、定格速度で対応するモーター17A,17Bを駆動する運転モードである。
【0029】
本発明では、第1エスカレーター10Aは、乗り口20Aの検知エリアαに基づいて運転モードを切り替える。また、第2エスカレーター10Bは、乗り口20Bの検知エリアαと共に、乗継前の第1エスカレーター10Aの降り口21Aの検知エリアβに基づいて運転モードを切り替える。
【0030】
この運転モードの切替えは、以下で説明する乗車意思有利用者50A、乗車意思無通行者50B、乗継意思有利用者50C、乗継意思無利用者50D,乗車意思無通行者50E、降車予定利用者50Fの有無により実行される。
【0031】
<乗車意思有利用者50A>
具体的には、本発明では、制御装置31A,31Bは、各乗り口20A,20Bの検知エリアαに侵入する人50をセンサー41A,41Bで検知し、これら人50のうち、対応するエスカレーターに乗車する乗車する意思のある利用者(乗車意思有利用者)50Aを識別する。乗車意思有利用者50Aとは、
図2乃至
図4に示すように、検知エリアα内で、対応するエスカレーターに向かう利用者である。そして、乗車意思有利用者50Aが存在する場合に、制御装置31A,31Bは、対応するエスカレーターの運転モードを定格運転モードに移行、或いは、定格運転モードに滞在している場合では定格運転モードを継続する。
【0032】
<乗車意思無通行者50B>
一方、検知エリアαに人50が存在していることがセンサー41A,41Bによって検知されても、乗車意思有利用者50Aでない、すなわち、検知エリアαを通過するに過ぎない利用者は、制御装置31A,31Bは、乗車意思のない通行者(乗車意思無通行者)50Bとして識別する。そして、乗車意思無通行者50Bを運転モードの制御から排除することで、無駄に運転モードが変更されることを防止する。
【0033】
<乗継意思有利用者50C、乗継意思無利用者50D,乗車意思無通行者50E>
また、制御装置31Aは、第1エスカレーター10Aの降り口21Aの検知エリアβに侵入する人50をセンサー42Aで検知する。これら人50のうち、第1エスカレーター10Aから降車して第2エスカレーター10Bに乗り継ぐ意思のある利用者を乗継意思有利用者50Cとして識別する。検知エリアβにいる乗継意思利用者50C以外の利用者は、乗継意思無利用者50D,乗車意思無通行者50Eとして識別する。乗継意思有利用者50Cが存在する場合に、制御装置31Aは、群管理制御装置31を介して、の第2制御装置31Bに乗継意思有利用者50Cがあることを通知する。乗継先の第2エスカレーター10Bは、制御装置31Bにより運転モードを定格運転モードに移行、或いは、定格運転モードに滞在している場合では定格運転モードを継続する。
【0034】
<降車予定利用者50F>
制御装置31Aは、第1エスカレーター10Aの降り口21Aに近い側に光電センサー44Aにより、第1エスカレーター10Aの踏み段11に乗車し、降り口21Aに近づく利用者を検知する。この利用者は、第1エスカレーター10Aの降り口21Aにしばらくすると降車する利用者(降車予定利用者)50Fである。この降車予定利用者50Fの第1エスカレーター10Aを降車後の動向は不明であるが、第2エスカレーター10Bに乗り継ぐか、或いは、第2エスカレーター10Bに乗り継がずに降り口21A(乗り口20B)の階床に滞在するかの何れかであり、第2エスカレーター10Bの運転モードに応じて、後述するとおり、その制御を変更する。
【0035】
以下、制御装置31A,31Bの詳細と、群管理制御装置31について説明する。
【0036】
第1エスカレーター10Aの制御装置31Aは、乗り口20Aに設置されたセンサー41Aと、降り口21Aに設置されたセンサー42A、踏み段11の移行路に設置された光電センサー43A,44Aに接続されており、第1エスカレーター10Aのモーター17Aを制御する。
【0037】
同じく、第2エスカレーター10Bの制御装置31Bは、乗り口20Bに設置されたセンサー41Bと、降り口21Bに設置されたセンサー42B、踏み段11の移行路に設置された光電センサー43A,44Aに接続されており、第2エスカレーター10Bのモーター17Bを制御する。
【0038】
各制御装置31A,31Bは、
図3、
図4に示すように、乗り口側のセンサー41A(
図4),41B(
図3)から検知結果を受信し、検知エリアαに存在する人50が、乗車意思有利用者50Aであるか、乗車意思無通行者50Bであるかを判定する判定手段32A,32Bを具える。同じく、
図3に第2エスカレーター10Bについて示すように、降り口側のセンサー42A,42Bから検知結果を受信し、検知エリアβに存在する人50が、乗継意思有利用者50Cであるか、乗継意思無利用者50D(乗車意思無通行者50Eを含む)であるかを判定する判定手段33A,33Bを具える。なお、エスカレーターが下り運転の場合、判定手段33A,33Bが乗車意思有利用者50Aを判定し、判定手段32A,32Bが乗継意思有利用者50Cを判定する。
【0039】
また、降り口側の判定手段33A,33Bには、光電センサー44A,44Bとその処理部33eを具える。光電センサーは、踏み段11に乗る利用者によって受光部の受光が遮られることで、処理部33eが利用者の通過を検知する。処理部33eの利用者検知信号は、判定部33dに送信される。なお、エスカレーターの構成の共通化を図り、下り運転に対応できるように、
図5に示すように、乗り口の判定手段32A,32Bにも光電センサー43A,43Bと処理部32eを設けてもよい。
【0040】
図5に示すように、制御装置31A,31Bには、判定手段32A,33A,32B,33Bで判定された利用者情報に基づいて、エスカレーターの運転モードを切り替えて、モーター17A,17Bの速度指令を発する運転モード切替手段34A,34Bと、当該速度指令に基づいてモーターをインバーター制御するインバーター制御手段35A.35Bを具える構成とすることができる。なお、モーターの速度制御は、インバーター制御に限るものではない。
【0041】
判定手段32A,32Bは夫々、
図5に示すように、データ取得部32a、特定部32b、重心移動算出部32c、判定部32dを具える。また、判定手段33A,33Bは夫々、データ取得部33a、特定部33b、重心移動算出部33c、判定部33dを具える。
【0042】
データ取得部32aは、センサー41A,41Bから距離データを取得する。同様に、データ取得部33aは、センサー42A,42Bから距離データを取得する(データ取得ステップ)。
【0043】
特定部32b,33bは、夫々データ取得部32a,33aから距離データを得て、検知エリアα、β内で塊となって検出される距離データを一人の人50とみなし、個々の人50の重心位置(座標)を算出する(重心算出ステップ)。
図3、
図4は、検知エリアα、βで検知された人50とその重心位置51を示す。図を参照すると、検知エリアα、βには、夫々3人の人50が検知されていることがわかる。
【0044】
重心移動算出部32c,33cは、個々の人50の重心位置の移動方向を算出する。具体的には、算出された人50の重心位置と、所定時間t後の重心位置の差分から、移動方向を算出できる(重心移動算出ステップ)。なお、重心移動算出部32c、33cは、重心位置の移動速度を算出し、移動速度から移動方向を抽出してもよい。
図3、
図4は、検知エリアα、βで検知された人50の重心位置の移動方向と移動速度をベクトル(矢印v1~v9)で示している。なお、測定誤差等の影響を抑えるために、重心位置の移動方向や移動速度は、たとえば、移動平均とすることで算出データの微小変化を平滑化することができる。
【0045】
判定部32d,33dは、以下に示すように、乗り口側と降り口側で制御が異なる。
【0046】
<第1,第2エスカレーターの乗り口の判定部32dの制御>
乗り口側の判定部32dでは、算出された個々の人50の重心位置51の移動方向のうち、エスカレーター10に向かう方向の人の有無を判定し、エスカレーター10に向かう人を乗車意思有利用者50A、それ以外を乗車意思無通行者50Bと判定する(検知ステップ)。たとえば、エスカレーター10に向かうとは、
図3、
図4の検知エリアαの座標系におけるゼロ点に向かうと見なすことができる。
図3を参照すると、検知エリアαで観測された3人利用者50のうち、符号50Aで示す人は移動方向がエスカレーター10に向かう乗車意思有利用者である。
図3の乗車意思有利用者50Aのうち、右側の利用者は、その移動方向より、第1エスカレーター10Aからの乗継者、左側の利用者は、第2エスカレーター10Bの乗り口と同じ階床から第2エスカレーター10Bに向かう利用者である。一方、符号50Bは、エスカレーター10A,10B以外の方向に移動する乗車意思無通行者(単なる通過者)である。判定部32dは、乗車意思有利用者50Aの有無を夫々の運転モード切替手段34A,34Bに送信する。
【0047】
運転モード切替手段34A,34Bは、判定部32dから乗車意思有利用者50Aがありとの情報を受信すると、モーター17A,17Bを定格速度で駆動させるべく、モーターへの回転速度の指令値を生成する。そして、運転モード切替手段34A,34Bにより生成された速度指令に基づいて、省エネ運転モードから、インバーター制御手段35A,35Bがモーター17A,17Bを夫々加速し、定格運転の回転速度となるように制御する(運転モード制御ステップ)。すでに定格運転モードに滞在している場合には、定格速度を維持する。これにより、乗車意思有利用者50Aが乗り口20A,20Bに到着したときに、定格速度で走行している踏み段11に乗車できる。なお、運転モード切替手段34A,34Bは、判定部32dから乗車意思有利用者ありの情報を受信してから所定条件(たとえば、最後の利用者を検知してから踏み段11が1周半循環に要する時間(たとえば90秒)が経過)を満たしたときに、省エネ運転モードに移行するよう制御すればよい。
【0048】
上記によれば、各エスカレーター10A,10Bの乗り口にある検知エリアαに侵入した人50のうち、エスカレーターへの乗車意思有利用者50Aのみに基づいて、各エスカレーター10A,10Bの自動発停止を行なうことができる。すなわち、検知エリアαを単に通過するに過ぎない乗車意思無通行者50Bは排除でき、乗車意思無通行者50Bによりエスカレーターが定格運転モードに切り替わることはないから、省エネを達成できる。
【0049】
また、乗車意思無通行者50Bを排除できるから、検知エリアαを広く採ることができ、早期に乗車意思有利用者50Aを検知して、各エスカレーターを定格運転モードに切り替えることができる。さらに、乗車意思有利用者50Aを早期に検知できるから、定格運転モードへの移行も早めることができ、省エネ運転モードと定格運転モードの切り替え回数を減らして、省エネを達成できる。
【0050】
加えて、歩行速度が速い乗車意思有利用者50Aであっても、早期に定格運転モードに移行することで、十分に加速した状態の踏み段11に乗車させることができる。
【0051】
なお、上記説明では、人の移動方向のみに基づいて、運転モードの切替えを行なっているが、さらに、省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際の各エスカレーター10A,10Bのモーター17A,17Bの加速度を、乗車意思有利用者50Aの移動速度(歩行速度)に応じて変更するようにしてもい。乗車意思有利用者50Aの歩行速度が所定値以上の場合、モーター17A,17Bの加速度を大きくして、歩行速度が速い乗車意思有利用者50Aが十分加速した状態の踏み段11に乗車できるようにすればよい。
【0052】
また、変形例として、歩行速度が遅い乗車意思有利用者50Aの場合、各モーター17A,17Bの回転速度を遅くして、歩行速度が遅い乗車意思有利用者50Aが無理なく踏み段11に乗車できるようにしてもよい。
【0053】
<第1エスカレーターの降り口の判定部33dの制御>
第1エスカレーター10Aの降り口側の判定部33dでは、降り口21Aの検知エリアβで算出された個々の人50の重心位置51の移動方向のうち、第2エスカレーター10Bに向かう方向の人の有無を判定し、第2エスカレーター10Bに向かう人を乗継意思有利用者50C、それ以外を乗継意思無利用者50D,乗車意思無通行者50Eと判定する。たとえば、第2エスカレーター10Bに向かうとは、
図3の検知エリアαの座標系におけるゼロ点に向かうと見なすことができる。
図3を参照すると、検知エリアβで観測された3人利用者50のうち、符号50Cで示す人は移動方向が第2エスカレーター10Bに向かう乗継意思有利用者、符号50Dで示す人は、第1エスカレーター10Aから降車したが、第2エスカレーター10B以外の方向に向かう利用者(乗継意思無利用者)、符号50Eで示す人は、第1エスカレーター10Aの利用者ではなく、また、第2エスカレーター10B以外の方向に移動する乗車意思無通行者(単なる通過者)である。判定部33dは、乗継意思有利用者50Cの有無を群管理制御装置31に送信する。
【0054】
そして、群管理制御装置31は、乗継前の第1エスカレーター10Aの降り口側の判定部33dから受信した乗継意思有利用者50Cがあると、第2エスカレーター10Bの運転モード切替手段34Bにその旨を出力する。運転モード切替手段34Bは、乗継意思有利用者50Cがありとの情報を受信すると、モーター17Bを定格速度で駆動させるべく、モーター17Bへの回転速度の指令値を生成する(運転モード制御ステップ)。そして、運転モード切替手段34Bにより生成された速度指令に基づいて、省エネ運転モードから、インバーター制御手段35Bがモーター17Bを加速し、定格運転の回転速度となるように制御する。すでに定格運転モードに滞在している場合には、定格速度を維持する。これにより、乗継意思有利用者50Cが第2エスカレーター10Bの乗り口20Bに到着したときに、定格速度で走行している踏み段11に乗車できる。
【0055】
上記によれば、第1エスカレーター10Aの降り口21Aにある検知エリアβにいる利用者のうち、第1エスカレーター10Aを降車して、乗継先の第2エスカレーター10Bに向かう乗継意思有利用者50Cに基づいて、乗継先の第2エスカレーター10Bの運転モードを制御できる。すなわち、乗継意思有利用者50Cは、乗継先の第2エスカレーター10Bの乗り口20Bではなく、乗継前の第1エスカレーター10Aの降り口21Aで検知されるから、早期に第2エスカレーター10Bを定格運転モードへ移行することができ、省エネ運転モードと定格運転モードの切り替え回数を減らして、省エネを達成できる。
【0056】
また、歩行速度が速い乗継意思有利用者50Cであっても、第1エスカレーター10Aの降り口21Aで検知され、乗継先の第2エスカレーター10Bを早期に定格運転モードに移行できるから、十分に加速した状態の踏み段11に乗車させることができる。
【0057】
上記説明では、人の移動方向のみに基づいて、運転モードの切替えを行なっているが、さらに、省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際の乗継先の第2エスカレーター10Bのモーター17Bの加速度を、乗継意思有利用者50Cの移動速度(歩行速度)に応じて変更するようにしてもい。乗継意思有利用者50Cの歩行速度が所定値以上の場合、モーター17Bの加速度を大きくするこで、歩行速度が速い乗継意思有利用者50Cが十分加速した状態の踏み段11に乗車できる。
【0058】
また、変形例として、歩行速度が遅い乗継意思有利用者50Cの場合、モーター17Bの回転速度を遅くして、歩行速度が遅い乗継意思有利用者50Cが無理なく踏み段11に乗車できるようにしてもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、乗継前の第1エスカレーター10Aの降り口21Aに近い側に光電センサー44Aを配置している。この光電センサー44Aが利用者を検知した場合、処理部33eを通じて判定部33dに利用者検知が送信される。この利用者は、第1エスカレーター10Aの降り口21Aにしばらくすると降車する利用者(降車予定利用者)50Fである。この降車予定利用者50Fの第1エスカレーター10Aを降車後の動向は不明であるが、第2エスカレーター10Bに乗り継ぐか、或いは、第2エスカレーター10Bに乗り継がずに降り口20Aの階床に滞在するかの何れかである。このため、第1エスカレーター10Aに降車予定利用者50Fに基づいて、乗継先の第2エスカレーター10Bを省エネ運転モードから定格運転モードに移行させると、降車予定利用者50Fが乗り継がなかった場合に無駄になる。しかしながら、乗継先の第2エスカレーター10Bが定格運転モードであれば、降車予定利用者50Fがある場合に省エネ運転モードへの移行を遅らせることで、省エネ運転モードと定格運転モードの切り替え回数を減らして、省エネを達成できる。
【0060】
そこで、本実施形態では、第1エスカレーター10Aの降車予定利用者50Fありの情報を、判定部33dから群管理制御装置31を介して第2エスカレーター10Bの運転モード切替手段34Bに送信する。そして、第2エスカレーター10Bの運転モード切替手段34Bは、定格運転モードにある場合には、省エネ運転モードへの移行条件を満たしても、定格運転モードを続ければよい。
【0061】
なお、第1エスカレーター10Aの降車予定利用者50Fが、第1エスカレーター10Aの降り口21Aで降車して、検知エリアβに到着した後は、第1エスカレーター10Aのセンサー41Aに基づき、乗継意思有利用者50Cであるか、乗継意思無利用者50Dであるかを判断すればよい。
【0062】
上記によれば、乗継前の第1エスカレーター10Aの降車予定利用者50Fの有無により、第2エスカレーター10Bが定格運転モードを継続するか否かを判断でき、省エネ運転モードと定格運転モードの頻繁な切替えを抑えて省エネを達成できる。
【0063】
何れの場合も、
図2に示すように、乗継先となる第2エスカレーター10Bの乗り口20B側のハンドレール12の周回部分の近傍にLED等の発光手段12aを配置し、第2エスカレーター10Bが定格運転モードにあるときには緑色発光、省エネ運転モードにあるときには赤色発光又は消灯させることが望ましい。これにより、利用者は第2エスカレーター10Bの運転モードを視覚により認識でき、スムーズな乗車、乗継を行なうことができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の自動発停運転を行なうエスカレーター群の具体的な動作フローについて説明する。
【0065】
<第1エスカレーターの運転モード制御>
まず、乗継前の第1エスカレーター10Aの運転モード制御についてフローチャート
図6及びサブルーチン
図7を用いて説明する。
【0066】
乗継前の第1エスカレーター10Aの制御装置31Aは、センサー41Aの検知エリアαを初期設定する(ステップS1)。たとえば、
図4に符号αで示す乗り口20Aを含む領域が検知エリアとなる。続いて、センサー41Aを作動させる(ステップS2)。なお、この状態では、省エネ運転モードにあり、モーター17Aは停止(或いは定速運転)している。同様に、降り口21Aの検知エリアβの初期設定と、センサー42Bの作動も行なう。
【0067】
ステップS3にて、サブルーチン
図7に移行する。サブルーチン
図7では、センサー41Aで検知された検知エリアαの距離データをデータ取得部32aが逐次取得する(ステップSR1)。特定部32bは、距離データに基づいて、検知エリアα内で塊となって検出される距離データを1人の人50とみなし、個々の人50の重心位置51(座標)を時系列順に算出する(ステップSR2)。そして、重心移動算出部32cは、
図4に示すように、個々の人50の重心位置51の移動方向を算出する(ステップSR3)。次に、判定部32dは、算出された個々の人50の重心位置51の移動方向のうち、第1エスカレーター10A(たとえば、
図4のゼロ点)に向かう方向の人の有無を判定し、第1エスカレーター10Aに向かう人50を乗車意思有利用者50A、それ以外を乗車意思無通行者50Bと判定し(ステップSR4)、フローチャート
図6に戻る。
【0068】
ステップS4では、サブルーチンのステップSR4で、乗車意思有利用者50Aがあった場合には(ステップS4のYES)、続くステップS5に移動する。これは、判定部32dで乗車意思有利用者50Aありと判断された場合であるから、運転モード切替手段34Aは、モーター17Aを定格速度で駆動させるべく、モーター17Aへの回転速度の指令値を生成する。そして、運転モード切替手段34Aにより生成された速度指令に基づいて、省エネ運転モードから定格運転モードに移行する(ステップS5)。具体的には、インバーター制御手段35Aがモーター17Aを加速し、定格運転の回転速度となるように制御する。なお、すでにモーター17Aが定格速度で駆動している場合にはスキップしてもよい。そして、ステップS6に示すように、自動停止までのタイマー時間Tをセットし、カウントダウンを開始させる(ステップS6)。なお、タイマー時間Tは、最後の利用者を検知してから踏み段11が1周半循環に要する時間(たとえば90秒)とすることができる。
【0069】
ステップS4で、乗車意思有利用者50Aがない場合、つまり、検知エリアαに人50がいない場合や乗車意思無通行者Bのみの場合には(ステップS4のNO)、タイマーが作動しており、タイマー時間T=0でない場合にはステップS3のサブルーチン
図7に戻る(ステップS7のNO)。T=0の場合(ステップS7のYES)、運転モード切替手段34Aは、モーター17が定格速度で駆動している場合には省エネ運転モードに移行し、モーター17Aを停止又は低速運転させる(ステップS8)。すでにモーター17Aが停止又は低速運転している場合にはスキップする。
【0070】
<第2エスカレーターの運転モード制御>
次に、乗継先の第2エスカレーター10Bの運転モード制御についてフローチャート
図8乃至
図10及び先に用いた
図7を援用して説明する。なお、
図8において、
図6と重複するステップについては適宜説明を省略する。第2エスカレーター10Bの制御装置31Bによる制御(フローチャート
図8とサブルーチン
図7)には、第1エスカレーター10Aの制御装置31Aによる利用者検知(フローチャート
図9と
図10)の制御が含まれる。
【0071】
乗継先の第2エスカレーター10Bの制御装置31Bも、センサー41Bの検知エリアαを初期設定する(ステップS1)。たとえば、
図3に符号αで示す乗り口20Bを含む領域が検知エリアとなる。続いて、センサー41Bを作動させる(ステップS2)。なお、この状態では、省エネ運転モードにあり、モーター17Bは停止(或いは定速運転)している。
【0072】
ステップS3にて、サブルーチン
図7に移行する。サブルーチン
図7では、第2エスカレーター10Bの乗り口20Bの検知エリアαにおいて、第2エスカレーター10Bに向かう人50を乗車意思有利用者50A、それ以外を乗車意思無通行者50Bと判定し(ステップSR4)、フローチャート
図8のステップS4に戻る。
【0073】
乗車意思有利用者50Aがあった場合には(ステップS4のYES)、続くステップS5に移動する。運転モード切替手段34Bは、モーター17Bを定格速度で駆動させるべく、モーター17Bへの回転速度の指令値を生成し、省エネ運転モードから定格運転モードに移行する(ステップS5)。すでにモーター17Bが定格速度で駆動している場合にはスキップしてもよい。そして、省エネ運転モード移行までのタイマー時間Tをセットし、カウントダウンを開始させる(ステップS6)。
【0074】
ステップS4で、乗車意思有利用者50Aがない場合、つまり、検知エリアαに人50がいない場合や乗車意思無通行者50Bのみの場合には(ステップS4のNO)、判定部32dは、乗継意思有利用者50Cがいるかどうかを判定する(ステップS9)。第1エスカレーター10Aの乗継意思有利用者50Cの有無は、フローチャート
図9により実行できる。
【0075】
フローチャート
図9では、第1エスカレーター10Aの降り口の検知エリアβについて、センサー42Aの距離データをデータ取得部32aが逐次取得する(ステップS21)。特定部32bは、距離データに基づいて、検知エリアβ内で塊となって検出される距離データを1人の人50とみなし、個々の人50の重心位置51(座標)を時系列順に算出する(ステップS22)。そして、重心移動算出部32cは、
図3に示すように、個々の人50の重心位置51の移動方向を算出する(ステップS23)。次に、判定部32dは、算出された個々の人50の重心位置51の移動方向のうち、第2エスカレーター10B(たとえば、
図3の第2エスカレーター10Bのゼロ点)に向かう方向の人の有無を判定し、第2エスカレーター10Bに向かう人50を乗継意思有利用者50C、それ以外を乗継意思無利用者50D,乗車意思無通行者50Eと判定し(ステップS24)、乗継意思有利用者50Cがある場合には(ステップS25のYES)、第1エスカレーター10Aの判定部32dは、群管理制御装置31に乗継意思有利用者50Cがあることを出力する。群管理制御装置31は、当該乗継意思有利用者50Cがあることを第2エスカレーター10Bの運転モード切替手段34Bに送信する(ステップS26)。乗継意思有利用者50Cがいないときは、ステップS21に戻る(ステップ25のNO)。
【0076】
再びフローチャート
図8のステップS9に戻り、第2エスカレーター10Bの運転モード切替手段34Bが、第1エスカレーター10Aの乗継意思有利用者50Cありの情報を受けた場合には(ステップS9のYES)、ステップS5に移行し、運転モード切替手段34Bは、第2エスカレーター10Bを定格定格運転モードに移行させる。すでに定格運転モードに滞在している場合にはスキップしてもよい。そして、省エネ運転モード移行までのタイマー時間Tをセットし、カウントダウンを開始させる(ステップS6)。
【0077】
一方、ステップS9において、第2エスカレーター10Bの運転モード切替手段34Bが乗継意思有利用者50Cありの情報を受けなかった場合には、ステップS10に進む(ステップS9のNO)。
【0078】
ステップS10は、第1エスカレーター10Aに降車予定利用者50Fがいるかどうかを確認するステップである。第1エスカレーター10Aの降車予定利用者50Fの有無は、フローチャート
図10により実行できる。具体的には、第1エスカレーター10Aの判定部33dは、第1エスカレーター10Aの降り口21Aの近傍にある光電センサー44Aの降車予定利用者50Fの検知の有無を確認する。たとえば、光電センサー44Aの受光部は、発光部からの光を受信している間はオン信号を発し、降車予定利用者44Aの通過によって受光が遮られた場合にはオフ信号を発する構成とし、当該信号を処理部32eに送信する。そして、処理部32eは、降車予定利用者50Fの有無を判定部33dに送信し、降車予定利用者50Fがある場合には(ステップS31のYES)、判定部32dは、群管理制御装置31に降車予定利用者50Fがあることを出力する。群管理制御装置31は、当該降車予定利用者50Fがあることを第2エスカレーター10Bの運転モード切替手段34Bに送信する(ステップS32)。乗継意思有利用者50Fがいないときは、ステップS31に戻る(ステップS31のNO)。
【0079】
フローチャート
図8のステップS10に戻り、第2エスカレーター10Bの運転モード切替手段34Bが、第1エスカレーター10Aの降車予定利用者50Fありの情報を受けた場合には(ステップS10のYES)、ステップS11に移行する。降車予定利用者50Fがない場合はステップS7に移行する(ステップS10のNO)。ステップS11では、第2エスカレーター10Bの運転モードが定格運転モードであれば(ステップS11のYES)、定格運転モードにそのまま滞在させ、省エネ運転モード移行までのタイマー時間Tを改めてセットし、カウントダウンを開始させる(ステップS6)。これにより、降車予定利用者50Fが第2エスカレーター10Bに乗り継ぐまでの僅かな間に省エネ運転モードに移行することを防止できる。一方、省エネ運転モードの場合には、第1エスカレーター10Aの降車予定利用者50Fがあっても、第2エスカレーター10Bに乗り継がない可能性があるから、ステップS7に移行する(ステップS11のNO)。
【0080】
そして、ステップS7では、タイマーが作動しており、タイマー時間T=0でない場合にはステップS3に戻る(ステップS7のNO)。T=0の場合(ステップS7のYES)、第2エスカレーター10Bを省エネ運転モードに移行させる。すでに省エネ運転モードの場合はスキップして、ステップS3に戻る。
【0081】
図11は、本発明の第2エスカレーター10Bの自動発停止運転の異なる実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。フローチャート
図8のステップS7の判定では、YES(T=0)となるまで、省エネ運転モード(ステップS8)へ移行していない。本実施形態では、ステップS7でNO(T=0でない)の判定があった場合でも、第2エスカレーター10Bに乗車している利用者(乗客)がない場合には(
図11のステップS12のYES)、省エネ運転モード(ステップS8)に移行できるようにしている。
【0082】
たとえば、第2エスカレーター10Bの乗客の有無は、第2エスカレーター10Bの光電センサー43B,44B(
図1)を利用して検知できる。具体的には、光電センサー43B,44Bを踏み段11の移行路全長に亘って所定ピッチで配置し、踏み段11が所定ピッチ移動したときに、何れの光電センサー43B,44Bからも乗客の検知がなければ、第2エスカレーター10Bに乗客なしと判定できる(ステップS12のYES)。
【0083】
また、第2エスカレーター10Bの乗り口20B側のセンサー41Bで乗車数をカウントし、降り口21B側のセンサー42Bで降車数をカウントして、これらの差分から乗車中の乗客数を判定してもよい。これら差分がゼロになると、第2エスカレーター10Bに乗客なしと判定できる(ステップS12のYES)。
【0084】
そして、第2エスカレーター10Bに乗客なしと判定できる(ステップS12のYES)と判定された場合には、自動発停止の所定条件(T=0)を満たす前に、省エネモードに移行すればよい。これにより、早期に第2エスカレーター10Bを省エネモードに移行できるから、さらなる省エネを図ることができる。
【0085】
図11に示す第2エスカレーター10Bの自動発停止運転方法によれば、踏み段11の幅が1000mm、定格速度30m/分、階高5m、15回起動/時、稼働時間16時間/日のエスカレーターで、約20%の省エネを達成できる。
【0086】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0087】
10A 第1エスカレーター(第1乗客コンベア)
10B 第2エスカレーター(第2乗客コンベア)
20A,20B 乗り口
21A,21B 降り口
41A,42A,41B,42B センサー
43A,44B,43B,44B 光電センサー
31 群管理制御装置
31A,31B 制御装置
32A,33A,32B,33B 判定手段
34A,43B 運転モード切替手段
50 人
50A 乗車意思有利用者
50B 乗車意思無通行者
50C 乗継意思有利用者
50D 乗継意思無利用者
50E 乗車意思無通行者
50F 降車予定利用者
【要約】
【課題】本発明は、乗継前の乗客コンベアの利用者に基づいて、乗継先の乗客コンベア群の自動発停止運転を制御する方法を提供する。
【解決手段】本発明の乗客コンベア群の自動発停止運転方法は、第1乗客コンベア10Aから乗継可能に配置された第2コンベア10Bを具え、第1乗客コンベアは、第2乗客コンベアに乗り継ぐ降り口21Aを第1検知エリアβとして、第1検知エリアβに存在する人の位置を検知する第1センサー42Aを具え、定格運転モードと、省エネ運転モードとを切り替えて運転する乗客コンベア群の自動発停止運転方法であって、第1センサー42Aにより、第1検知エリアβの所定高さを平面スキャンし、第1検知エリアβに存在する人の有無を検知する検知ステップと、第1検知エリアβに人が検知された人の内、第2乗客コンベアに向かう人が検知されると、第2乗客コンベアを定格運転モードへ移行又は継続する運転モード制御ステップ、を含む。
【選択図】
図2