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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20230808BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230808BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230808BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230808BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B32B33/00
B32B27/00 E
B32B27/18 Z
B32B27/30 A
B32B27/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022168049
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2019529729の分割
【原出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2022183320
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2017135734
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】東川 栄一
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-090319(JP,A)
【文献】特開2016-165870(JP,A)
【文献】特開2001-341273(JP,A)
【文献】特開2016-093968(JP,A)
【文献】特開2014-188842(JP,A)
【文献】特開2014-198440(JP,A)
【文献】特開2007-283665(JP,A)
【文献】特開2014-024318(JP,A)
【文献】特開2011-224962(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 33/00
B32B 27/00
B32B 27/18
B32B 27/30
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層側に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層の上に部分的に設けられた第2の艶調整層とを備え、
前記第1の艶調整層が、親水性無機材料から成る艶調整剤と、反応性末端を有するシリコーン系離型剤とを含み、
前記第2の艶調整層は、反応性末端を有するシリコーン系離型剤を含み、その反応性末端がアクリル基を少なくとも有し、
前記艶調整剤は、1次粒子が2次凝集してなる粒子であることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
前記第1の艶調整層に含まれる前記反応性末端を有するシリコーン系離型剤の反応性末端が、水酸基及びアミノ基の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項3】
前記第1の艶調整層に含まれる前記反応性末端を有するシリコーン系離型剤の反応性末端が、水酸基を少なくとも有することを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項4】
前記第1の艶調整層への前記シリコーン系離型剤の添加量は、前記第1の艶調整層を構成する固形分100質量部に対し、前記シリコーン系離型剤の有効成分が1質量部以上6質量部以下の範囲内となる量であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項5】
前記第1の艶調整層を構成する樹脂成分の主材料は、ポリオールとイソシアネートとを有するウレタン系熱硬化樹脂と、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂との混合物であり、前記電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、前記ウレタン系熱硬化樹脂を3質量部以上100質量部以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項6】
前記第2の艶調整層に含まれる前記反応性末端を有するシリコーン系離型剤の反応性末端が、メタクリル基をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項7】
前記第2の艶調整層への前記シリコーン系離型剤の添加量は、前記第2の艶調整層を構成する固形分100質量部に対し、前記シリコーン系離型剤の有効成分が0.5質量部以上5質量部以下の範囲内となる量であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項8】
前記第2の艶調整層を構成する樹脂成分の主材料は、ポリオールとイソシアネートとを有するウレタン系熱硬化樹脂と、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂との混合物であり、前記電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、前記ウレタン系熱硬化樹脂を25質量部以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項9】
前記第2の艶調整層を構成する樹脂成分の主材料が、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項10】
前記アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂は、数平均分子量が300以上5000以下の範囲内であることを特徴とする請求項5,請求項8または請求項9に記載の化粧材。
【請求項11】
前記アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂は、数平均分子量が300以上1500以下であることを特徴とする請求項10に記載の化粧材。
【請求項12】
前記第1の艶調整層の下層側に柄インキ層を有し、
前記第2の艶調整層は、表面側からみて前記柄インキ層の柄模様と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第2の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項13】
前記第1の艶調整層の下層側に柄インキ層を有し、
前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の柄模様の直上以外の部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項14】
前記第1の艶調整層への前記シリコーン系離型剤の添加量は、前記第1の艶調整層を構成する固形分100質量部に対し、前記シリコーン系離型剤の有効成分が5.0質量部以上6.5質量部以下の範囲内となる量であり、
前記第2の艶調整層への前記シリコーン系離型剤の添加量は、前記第2の艶調整層を構成する固形分100質量部に対し、前記シリコーン系離型剤の有効成分が4.5質量部以上5.5質量部以下の範囲内となる量であり、
前記第1の艶調整層への前記シリコーン系離型剤の添加量は、前記第2の艶調整層への前記シリコーン系離型剤の添加量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧材に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3629964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係る化粧材には、深さが連続的に変化した斜面部を形成して凹凸形状を表現する合成塗料層である艶調整層を積層したものがあるが、下層の艶調整層に部分的に上層の艶調整層を積層して意匠性を付与しつつ、優れた耐傷性を有し、かつ長期に亘って安定した離型性を有するものが少なかった。
本発明は、上記課題を解決するために、下層の艶調整層に部分的に上層の艶調整層を積層して意匠性を付与しつつ、優れた耐傷性を有し、かつ長期に亘って安定した離型性が発現可能な化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、艶調整層の樹脂組成物を、電離放射線硬化樹脂とウレタン系樹脂を組み合わせたデュアル硬化方式とし、又、それぞれの艶調整層に添加する艶調整剤とシリコーン系離型剤の反応性末端を最適化、すなわち好適な組み合わせについて種々検討及び実験を重ねることで、優れた耐傷性と長期的に安定した離型性が発現される化粧材を提供できることを見出した。
【0006】
課題を達成するべく、本発明の一態様に係る化粧材は、表層側に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層の上に部分的に設けられた第2の艶調整層とを備え、前記第1の艶調整層が、親水性無機材料から成る艶調整剤と、反応性末端を有するシリコーン系離型剤とを含む。
ここで、親水性無機材料とは、親水性表面を有する無機材料を指す。親水性無機材料の代表的なものとして、表面処理や表面修飾がなされていない、つまり表面に対し疎水化処理をしていないシリカ等が例示できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、下地となる下層の艶調整層である第1の艶調整層に添加される艶調整剤の種類の選択およびシリコーン系離型剤を反応性末端を有するものとすることで、長期に亘って安定した離型性を有する化粧材を提供できる。即ち、本発明の一態様によれば、下層の艶調整層に部分的に上層の艶調整層を積層して意匠性を付与しつつ、優れた耐傷性を有し、かつ長期に亘って安定した離型性が発現可能な化粧材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る化粧材の構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態の変形例に係る化粧材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状および構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(構成)
本実施形態の化粧材1は、表層側に艶調整層を備え、図1に示すように、その艶調整層として、下地となる下層側の第1の艶調整層5と、第1の艶調整層5上に部分的に設けられて意匠性を向上させるための第2の艶調整層6とを備えている。
基材2と第1の艶調整層5との間には、下地ベタインキ層3、柄インキ層4および透明樹脂層(不図示)等、公知の他の層を配置する構成としてもよい。
【0011】
<艶調整層>
第1の艶調整層5は、下地ベタインキ層3および柄インキ層4の上に設けられ、化粧材1表面の艶状態を調整するための層である。第1の艶調整層5の形成箇所は、下地ベタインキ層3および柄インキ層4の表面側の面(図1における上面)の全面となっており、基材2の表面側の面の全面を被覆している。また、第2の艶調整層6は、第1の艶調整層5の上に設けられて、第1の艶調整層5の艶と異なる艶を有し、化粧材1表面の艶状態を調整するための層である。第2の艶調整層6の形成箇所は、第1の艶調整層5の面の一部となっている。そして、これら第1、第2の艶調整層5、6の艶の差により凹凸形状が表現されて意匠性が向上する。
【0012】
第1、第2の艶調整層5、6の層厚は、1μm以上15μm以下とすることが好ましい。また、第1、第2の艶調整層5、6は、化粧材1の最表面となる層のため、化粧材1として必要な耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性が求められる。なかでも、耐摩耗性や耐擦傷性は層厚による影響があり、層厚が厚い方が有利となる。したがって、第1、第2の艶調整層5、6のさらに好ましい層厚は2μm以上12μm以下となる。1μm未満の場合、耐摩耗性および耐擦傷性が大幅に悪くなるため、化粧材1としての用途が限られる。また、15μmより大きい場合、第1、第2の艶調整層5、6自体の可撓性が悪くなるため、化粧材1としての加工性が悪化する。
第1及び第2の艶調整層5、6は、少なくとも樹脂材料と、その樹脂材料に添加された艶調整剤及び離型剤とを有する。なお、艶調整剤は、相対的に艶の低い第1の艶調整層5にだけ添加してもよい。
【0013】
[樹脂成分]
第1及び第2の艶調整層5、6を構成する樹脂材料は、下層が視認可能なだけの透明性を有することが好ましい。
第1の艶調整層5に用いる透明樹脂の主材料は、各種ポリオールとイソシアネートとを有する2液のウレタン系熱硬化樹脂と、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂との混合物が好ましい。この場合、電離放射線硬化樹脂100質量部に対し、ウレタン系熱硬化樹脂を3質量部以上100質量部以下含むことが好ましく、より好ましくは10質量部以上50質量部以下である。このような構成の場合、化粧材1の作製後に電離放射線を照射することにより、樹脂成分を構成する電離放射線硬化樹脂を硬化させることができ、第1の艶調整層5の耐傷性を向上することができる。さらに、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、ウレタン系熱硬化樹脂を10質量部以上50質量部以下とすることで、第2の艶調整層6の積層時における不具合の解消と、第1の艶調整層5の耐傷性とを高度に両立することができる。
【0014】
ここで、ウレタン系熱硬化樹脂の割合が3質量部未満の場合、第2の艶調整層6が積層される際に第1の艶調整層5が溶解、もしくは削られてしまう不具合が発生する。一方、ウレタン系熱硬化樹脂の割合が100質量部を超える場合は樹脂組成物の架橋度が低下してしまうため、第1の艶調整層5の耐傷性が著しく低下してしまう。
このように、本実施形態の化粧材1によれば、積層時の不具合を抑制しつつ、高度な耐傷性を発現することができる。
【0015】
ここで、本明細書で主材料とは、対象とする層を構成する全樹脂成分100質量部に対し90質量部以上、好ましくは97質量部以上含まれる樹脂材料のことを指す。
また、第2の艶調整層6を構成する樹脂成分の主材料は、ポリオールとイソシアネートとを有するウレタン系熱硬化樹脂と、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂との混合物が好ましい。この場合、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、ウレタン系熱硬化樹脂を25質量部以下含むことが好ましい。
【0016】
ウレタン系熱硬化樹脂の添加比が25質量部を超える場合には、ウレタン系熱硬化樹脂の割合が多すぎるため、樹脂組成物の架橋度が低下し、第2の艶調整層6の耐傷性が著しく低下する。ウレタン系熱硬化樹脂の添加比が3質量部未満の場合、加工性(割れ防止)が要求される化粧材1に対し、その要求特性を満足することができないこともある。また、第2の艶調整層6のウレタン系熱硬化樹脂を25質量部以下とすることで、化粧材1の作製後に電離放射線を照射することにより、樹脂成分を構成する電離放射線硬化樹脂を十分に硬化させることができ、第2の艶調整層6の耐傷性を向上させることができる。
【0017】
また、第2の艶調整層6を構成する樹脂成分の主材料を、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂としてもよい。この場合、第2の艶調整層6を構成する樹脂成分を、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂のみとすることが好ましい。
ここで、上記のアクリル基もしくはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂としては、例えば各種モノマーや市販されているオリゴマー等、公知のものを用いることができる。本実施形態に係るアクリル基もしくはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂には、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET4A)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)等の多官能モノマーや、日本合成化学製、紫光UV-1700Bのような多官能オリゴマー、もしくはこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0018】
また、上記のポリオールとイソシアネートとを有するウレタン系熱硬化樹脂におけるイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の誘導体であるアダクト体、ビュレット体およびイソシアヌレート体等の硬化剤を用いることができる。また、ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等を用いることができる。
【0019】
また、第1及び第2の艶調整層5、6を構成する、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂としては、数平均分子量が300以上5000以下、官能基数もしくは平均官能基数が4以上15以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーを用いることが好ましい。この範囲とすることで、艶調整層中の樹脂成分の架橋度を十分に高めることができるため、高い耐傷性を発揮することができる。また、数平均分子量が300以上1500以下、官能基数もしくは平均官能基数が4以上8以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることがさらに好ましい。この範囲とすることで、電離放射線硬化樹脂自体の粘度を低くすることができるため、艶調整層形成用インキを調製する際も、同粘度での固形分濃度を上げることができ、インキ自体の安定性向上や、塗布状態を向上させることができる。また、多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(PET4A)、およびその変性体、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートおよびその変性体、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(DPPA)およびその変性体、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)およびその変性体が挙げられる。
【0020】
上記の電離放射線硬化樹脂の数平均分子量を測定する方法は特に限定されないが、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いることが好ましい。そのGPCの測定装置については特に限定されるものではないが、例えば、GPCカラムの充填材はポリスチレンゲルが好ましく、溶離液としてはテトラヒドロフラン(THF)を用いることが好ましい。また、GPCの標準物質には、例えば、ポリスチレンポリマーを用いればよい。なお、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーについては、単体で構成されているため、その構造が既知であれば、数平均分子量は、構造式から算出される値を用いてもよい。
【0021】
[艶調整剤]
本実施形態では、少なくとも第1の艶調整層5に添加する艶調整剤として、親水性表面を有する無機材料の微粒子(親水性無機材料)を用いる。
親水性無機材料としては、例えば、表面処理や表面修飾がなされていない、つまり表面に対し疎水化処理をしていない公知の無機材料を用いることができる。そのような親水性無機材料を構成可能な艶調整剤としては、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子が例示できる。表面処理もしくは表面修飾がなされていない無機材料の表面は、水酸基が多く残存している親水性となっている。一方、添加されるシリコーン系離型剤は疎水性である。このため、シリコーン系離型剤が無機材料表面に吸着されることなく、むしろ反発されることから、シリコーン系離型剤が、艶調整層表面に偏在する傾向が強くなる。この結果、少量のシリコーン系離型剤で十分な離型性を発揮することができる。
【0022】
親水性無機材料は、多少の表面処理もしくは表面修飾がなされていても、親水性表面を有するシリカであればよい。例えば、本実施形態の親水性無機材料としては、下記2つの評価方法A及びBにおいて、「(評価方法Bの値/評価方法Aの値) <1.2」を満たす無機材料が好ましい。
【0023】
・評価方法A(加熱減量評価)
艶調整剤を110℃に加熱し、質量減少を測定する。主に、艶調整剤表面に吸着した水分が脱離するため、その分の質量減少が発生する。一方、表面処理がされている場合でも、その成分は110℃では脱離、揮発しないため、表面処理の有無による数値差は、艶調整剤原料が同じであれば、同等の数値となる。ただし、水分吸着量は艶調整剤の製法に依存するため、艶調整剤により、この値は異なったものとなる。
具体的な測定方法は、 JIS K5101,23に準拠して、110℃の環境下に十分な時間(例えば2時間)放置し、質量減少を測定する。
【0024】
・評価方法B(強熱減量評価)
950℃に加熱し、質量減少を測定する。艶調整剤表面に処理(付着)した有機物は、950℃まで加熱することで艶調整剤から脱離する。したがって、950℃に保持すれば、表面処理されていない艶調整剤の質量減少よりも、表面処理されている方の質量減少が大きくなる。その差が表面処理量を現すことになる。
【0025】
具体的な測定方法は、上記に準拠して、950℃の環境下に十分な時間(例えば2時間)放置し、質量減少を測定する。
そして、「(評価方法Bの値/評価方法Aの値) <1.2」 を満足する無機材料であれば、多少の表面処理もしくは表面修飾がなされていたとしても、表面処理や表面修飾がなされていない無機材料と同等の親水性を有し、そのような無機材料の表面は、水酸基が多く残存している親水性となっていると推定される。
【0026】
ここで、第2の艶調整層6にも艶調整剤を添加する場合、その艶調整剤も親水性無機材料であることが好ましいが、市販されている公知の艶調整剤等を用いてもよい。例えば、第1の艶調整層5に添加される艶調整剤と同様の、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子を用いてもよい。または、アクリル等の有機材料からなる微粒子を用いることもできる。但し、高い透明性が要求される場合には、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカやガラス等の微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶調整剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶調整剤を用いることで、より艶の低い艶調整層を形成できる。これにより、第1の艶調整層5と第2の艶調整層6との艶の差を大きくすることができ、得られる凹凸感を大きくすることができる。これにより、より深みのある優れた意匠表現が可能となる。
【0027】
艶調整剤の粒径は任意の数値を選択できるが、2μm以上15μm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、4μm以上12μm以下である。粒径が2μm未満の艶調整剤は、艶消し効果が低いため艶の差による凹凸感が十分に得られないことがある。また、粒径が15μmより大きい艶調整剤は、光の散乱が大きくなってしまうため、第1、第2の艶調整層5、6のうち、艶調整剤を添加した層で白濁を招いたり、目視での粒子感が大きくなったりして、艶の差による凹凸感が逆に損なわれてしまうことがある。
【0028】
[離型剤]
本実施形態の化粧材1は長期的に安定した離型性が要求されることから、第1の艶調整層5には、反応性末端を有するシリコーン系離型剤を添加することが重要である。尚、シリコーン系離型剤は滑り剤としても使用される。
特に、反応性末端として水酸基またはアミノ基、もしくはその両方を有するシリコーン系離型剤が好ましい。その際、シリコーン骨格の構造は、樹脂および溶剤と混合してコート剤とする際の相溶性等を鑑みて、反応性末端を適切に選択すればよく、特に種類が限定されるものではない。第1の艶調整層5を構成する樹脂にはウレタン系熱硬化樹脂が用いられているため、水酸基またはアミノ基が、ウレタン硬化反応の際に樹脂骨格中に取り込まれることで、長期的に安定した離型性を発現することができる。
【0029】
前述の水酸基またはアミノ基を有するシリコーン系離型剤の添加量は、第1の艶調整層5を構成する全固形分100質量部に対し、シリコーン系離型剤の有効成分として1質量部以上6質量部以下となる量が好ましい。1質量部未満の場合、要求される離型性を発現することが困難であり、6質量部を超える場合は、シリコーン系離型剤の一部が樹脂骨格中に取り込まれなくなってしまい、離型性を長期的に安定して発現することができないおそれがある。
【0030】
第2の艶調整層6に添加される離型剤も反応性末端を有するシリコーン系離型剤とすることが好ましい。そのシリコーン系離型剤は、反応性末端としてアクリル基またはメタクリル基、もしくはその両方を有していることが重要である。シリコーン骨格は前述の第1の艶調整層5と同様に特に種類が限定されるものではない。また、アクリル基またはメタクリル基、もしくはその両方を有するシリコーン系離型剤の添加量は、第2の艶調整層6を構成する全固形分100質量部に対し、シリコーン系離型剤の有効成分として、0.5質量部以上5質量部以下となる値であることが好ましい。0.5質量部未満の場合、要求される離型性を発現することが困難であり、5質量部を超える場合は、シリコーン系離型剤の一部が樹脂骨格中に取り込まれなくなってしまい、離型性を長期的に安定して発現することができないことがある。
【0031】
艶調整剤の添加量は、樹脂組成物100質量部に対して5質量部以上40質量部以下が好ましい。さらに好ましくは、10質量部以上30質量部以下とする。5質量部未満である場合には、艶消し効果が不足するため、相対的に艶の高い艶調整層との艶の差が小さくなり、凹凸感が不足してしまうことがある。また、40質量部より大きい場合には、艶調整剤に対して樹脂組成物が相対的に不足するため、艶調整剤の脱落や、脱落による耐傷性の低下を招いてしまい、化粧材1に求められる耐久性が大きく損なわれてしまうことがある。
【0032】
なお、相対的に艶の高い艶調整層においても、任意の艶調整剤を添加することが可能である。これらは最終的な凹凸感や意匠性に応じて適宜調整されるべきものである。また、第1、第2の艶調整層5、6に用いられる艶調整剤および樹脂組成物は、同じでも異なっていてもよい。これらは凹凸感および各種要求特性から自由に選択することができる。
【0033】
[その他の添加剤]
また、第1、第2の艶調整層5、6には、各種機能を付与するために、例えば、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系を用いることができる。また、光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系を用いることができる。
【0034】
<基材>
基材2は、化粧材1の原紙として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、薄葉紙、樹脂混抄紙、チタン紙、樹脂含浸紙、難燃紙、無機質紙等の紙類、天然繊維または合成繊維からなる織布もしくは不織布、ホモまたはランダムポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、共重合ポリエステル樹脂、アモルファス状態の結晶性ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂系基材、木材単板、突板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板等の木質系基材、石膏板、セメント板、珪酸カルシウム板、陶磁器板等の無機系基材、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属系基材、またはこれらの複合材、積層体等、従来公知の材料を用いることができる。また、基材2の形状としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、異型成型体等を用いることができる。
【0035】
<柄インキ層>
なお、基材2と第1の艶調整層5の間には、化粧材1に柄模様を付加するための柄インキ層4を設けることができる。柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。図1の例では、柄インキ層4は、第2の艶調整層6の直下の部分に形成されている。言い換えると、第2の艶調整層6が、柄インキ層4と重なる部分にのみ形成された構成となっている。また、柄インキ層4の柄模様は、第2の艶調整層6の艶と同調している。これにより、柄インキ層4による意匠性に、第2の艶調整層6による意匠性を付加できる。それゆえ、天然木や天然石に近い高級感のある意匠表現を有した化粧材1を形成することができる。ここで、上述の「同調」とは、第2の艶調整層6の少なくとも一部が、平面視で、柄インキ層4と重なっていることを意味する。なお、平面視で、第2の艶調整層6の形成面積の50%以上が柄インキ層4と重なっていれば、高い同調性を視認することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、第2の艶調整層6が柄インキ層4と重なる部分にのみ形成されている、つまり、柄インキ層4の直上の部分にのみ形成されている例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、平面視で(表面側からみて)、柄インキ層4と重なる部分であればよく、柄インキ層4の直上の部分に加え、直上以外の部分の一部にも形成する構成としてもよい。
【0037】
<下地ベタインキ層>
さらに、基材2と柄インキ層4との間には、目的とする意匠の程度に応じて下地ベタインキ層3を設けるようにしてもよい。下地ベタインキ層3は、基材2の第1の艶調整層5側の面の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地ベタインキ層3は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。さらに、柄インキ層4は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、柄インキ層4と下地ベタインキ層3とは、求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な組み合わせとなるが、特に限定されるものではない。
【0038】
下地ベタインキ層3および柄インキ層4の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、またはこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、またはこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、もしくはこれらの混合物等を用いることができる。
【0039】
また、下地ベタインキ層3および柄インキ層4には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤および硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
ここで、下地ベタインキ層3、柄インキ層4および第1、第2の艶調整層5、6の各層は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層3および第1の艶調整層5は、基材2の表面側の面の全面を被覆しているため、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成することができる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって別々に選択してもよいし、同じ方法を選択して一括加工してもよい。
【0040】
第1、第2の艶調整層5、6の層厚を調整するには、前述の印刷方法およびコーティング方法において塗布量を調整すればよい。塗布量は、各種印刷方法およびコーティング方法において、基材2に艶調整層を形成したものと、しないものとを作製し、質量差から算出することができる。
【0041】
<透明樹脂層>
特に耐摩耗性が要求される場合には、柄インキ層4と第1の艶調整層5の間に透明樹脂層(不図示)を設けることができる。透明樹脂層としては、例えば、オレフィン系樹脂を主材料とした樹脂組成物を用いることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものを用いることができる。特に、表面強度の更なる向上を図る場合には、例えば、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0042】
また、透明樹脂層には、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤および着色剤等の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、公知のものから適宜選択して使用することができる。透明樹脂層は、例えば、熱圧を応用した方法、押出ラミネート方法、ドライラミネート方法等の各種積層方法によって形成することができる。
【0043】
(作用その他)
(1)本実施形態の化粧材1では、第1の艶調整層5と、その第1の艶調整層5の上に部分的に設けられた第2の艶調整層6とを備える。この結果、優れた意匠性を有する。
そして、本実施形態の化粧材1では、柄インキ層4の柄模様と第2の艶調整層6の艶とが同調しているため、柄インキ層4による意匠性に、第2の艶調整層6による意匠性を付加でき、天然木や天然石に近い高級感のある意匠表現を有した化粧材1を形成できる。
【0044】
(2)本実施形態の化粧材1では、下地側の第1の艶調整層5が、親水性無機材料から成る艶調整剤と、反応性末端を有するシリコーン系離型剤とを含む。
このとき、反応性末端を有するシリコーン系離型剤の反応性末端が、水酸基及びアミノ基の少なくとも一方を有することが好ましい。
この構成によれば、親水性の艶調整剤と疎水性のシリコーン系離型剤を採用することで、シリコーン系離型剤が、艶調整層表面に偏在する傾向が強くなる。この結果、少量のシリコーン系離型剤で十分な離型性を発揮することができる。また艶調整剤としてシリカ等の無機材料を採用することで優れた透明性を発揮し、下層の視認性を高めることができる。
これによって、下層に対する優れた視認性を有し、かつ長期的に安定した離型性を有する化粧材1を提供できる。
【0045】
(3)さらに、本実施形態の化粧材1では、艶消し効果の高い無機材料からなる艶調整剤を用いる。そのため、添加される艶調整層の艶を大きく下げられる。それゆえ、第1の艶調整層5の艶と第2の艶調整層6の艶との差を大きくすることができ、得られる凹凸感を大きくすることができる。これにより、より深みのある優れた意匠表現が可能となる。
【0046】
(4)本実施形態の化粧材1では、第1の艶調整層5を構成する樹脂成分が各種ポリオールとイソシアネートとを有する2液のウレタン系熱硬化樹脂と、アクリル基もしくはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂との混合物であり、上記熱硬化樹脂の混合割合が電離放射線硬化樹脂100質量部に対して3質量部以上100質量部以下であることとした。
この構成によれば、第1の艶調整層5が熱硬化と電離放射線硬化のデュアル硬化方式と成ることで、第2の艶調整層6を積層する際の不具合を発生させず、優れた耐傷性を有する化粧材1を提供できる。
【0047】
(変形例)
(1)本実施形態では、図1のように、第2の艶調整層6が柄インキ層4と重なる部分に形成されて、柄インキ層4の柄模様と第2の艶調整層6の艶とが同調している例を示したが、他の構成を採用することもできる。
例えば、図2に示すように、第2の艶調整層6が柄インキ層4の直上以外の部分に形成され、柄インキ層4の柄模様と第1の艶調整層5の艶とが同調していてもよい。これにより、柄インキ層4の柄模様に、露出している第1の艶調整層5の艶が付与され、柄インキ層4による意匠性に第1の艶調整層5による意匠性を付加できる。それゆえ、天然木や天然石に近い高級感のある意匠表現を有した化粧材1を形成できる。ここで、本変形例の「同調」とは、第1の艶調整層5の少なくとも一部が、平面視で、柄インキ層4と重なっていることを意味する。なお、平面視で、第1の艶調整層5の形成面積の50%以上が柄インキ層4と重なっていれば、高い同調性を視認することができる。
【0048】
(2)第2の艶調整層6を構成する樹脂成分を、ポリオールとイソシアネートとを有するウレタン系熱硬化樹脂と、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂との混合物とする例を示したが、他の構成を採用してもよい。
例えば、第2の艶調整層6を構成する樹脂成分は、アクリル基またはメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂のみとしてもよい。これにより、第2の艶調整層6の耐傷性を向上させることができる。
【0049】
[実施例]
以下に、本実施形態の化粧材1の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、坪量50g/mの含浸紙(GFR-506:興人(株)製)を基材2として用いた。そして、基材2の一方の面に、油性硝化綿樹脂系グラビア印刷インキ(PCNT(PCRNT)各色:東洋インキ(株)製)を使用して、下地ベタインキ層3と柄インキ層4とをこの順に形成した。柄インキ層4の柄模様は、木目柄とした。
【0050】
続いて、柄インキ層4を形成した基材2上に、第1の艶調整層5用のインキを、基材2の一方の面の全面を被覆するように塗布(塗工)して、第1の艶調整層5を形成した。インキは、電離放射線硬化樹脂(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(固形分100%)100質量部(固形分100質量部)に対して、アクリルポリオール(6KW-700(固形分36.5%):大成ファインケミカル(株)製)54.8質量部(固形分20質量部)と、ポリイソシアネート(UR190B硬化剤(固形分72.5%):東洋インキ(株)製)6.9質量部(固形分5質量部)とを有する2液のウレタン系熱硬化樹脂(合計固形分25質量部)、表面処理のされていないシリカ系艶調整剤(ミズカシルP-803:水澤化学工業(株)製)10質量部(以上、全固形分135部)、紫外線ラジカル開始剤(IRGACURE 184:BASF製)5質量部、水酸基を有するシリコーン系離型剤(BYK-SILCLEAN3700(有効成分25%):BYK製)4.3質量部(全固形分に対する有効成分0.8部)から構成した。インキの塗布量は5g/mとした。
【0051】
続いて、第1の艶調整層5を構成する樹脂成分(電離放射線硬化樹脂)に電離放射線を照射することなく、第1の艶調整層5上の柄インキ層4の直上の部分に、第2の艶調整層6用のインキを塗布(塗工)することで、第2の艶調整層6を形成した。インキは、電離放射線硬化樹脂(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(固形分100%))100質量部(固形分100質量部)に対して、表面処理のされていないシリカ系艶調整剤(ミズカシルP-803:水澤化学工業(株)製)5質量部(以上、全固形分105部)、紫外線ラジカル開始剤(IRGACURE 184:BASF製)5質量部、アクリル基を有するシリコーン系離型剤(BYK-UV3505(有効成分40%):BYK製)0.8質量部(全固形分に対する有効成分0.3部)から構成した。
そして、このような手順で得られた化粧材1に対し、電離放射線を照射して、第1、第2の艶調整層5、6の電離放射線硬化樹脂の架橋硬化を行い、さらに、加熱養生を行って、実施例1の化粧材とした。
【0052】
(実施例2)
実施例2では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、水酸基を有するシリコーン系離型剤(BYK-SILCLEAN3700(有効成分25%):BYK製)5.4質量部(全固形分に対する有効成分1.0部)とし、第2の艶調整層6用のインキにおいて、アクリル基を有するシリコーン系離型剤(BYK-UV3505(有効成分40%):BYK製)1.3質量部(全固形分に対する有効成分0.5部)とした。それ以外は実施例1と同様の構成として、実施例2の化粧材とした。
【0053】
(実施例3)
実施例3では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、水酸基を有するシリコーン系離型剤(BYK-SILCLEAN3700(有効成分25%):BYK製)10.8質量部(全固形分に対する有効成分2.0部)とし、第2の艶調整層6用のインキにおいて、アクリル基を有するシリコーン系離型剤(BYK-UV3505(有効成分40%):BYK製)5.3質量部(全固形分に対する有効成分2.0部)とした。それ以外は実施例1と同様の構成として、実施例3の化粧材とした。
【0054】
(実施例4)
実施例4では、第2の艶調整層6用のインキにおいて、電離放射線硬化樹脂(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(固形分100%))100質量部(固形分100質量部)に対して、アクリルポリオール(6KW-700(固形分36.5%):大成ファインケミカル(株)製)54.8質量部とポリイソシアネート(UR190B硬化剤(固形分72.5%):東洋インキ(株)製)6.9質量部とを有する2液のウレタン系熱硬化樹脂(合計固形分25質量部)、表面処理のされていないシリカ系艶調整剤(ミズカシルP-803:水澤化学工業(株)製)5質量部(以上、全固形分130部)、紫外線ラジカル開始剤(IRGACURE 184:BASF製)5質量部、アクリル基を有するシリコーン系離型剤(BYK-UV3505(有効成分40%):BYK製)6.5質量部(全固形分に対する有効成分2.0部)とした。それ以外は実施例3と同様の構成として、実施例4の化粧材とした。
【0055】
(実施例5)
実施例5では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、水酸基を有するシリコーン系離型剤(BYK-SILCLEAN3700(有効成分25%):BYK製)27.0質量部(全固形分に対する有効成分5.0部)とし、第2の艶調整層6用のインキにおいて、アクリル基を有するシリコーン系離型剤(BYK-UV3505(有効成分40%):BYK製)11.8質量部(全固形分に対する有効成分4.5部)とした。それ以外は実施例1と同様の構成として、実施例5の化粧材とした。
【0056】
(実施例6)
実施例6では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、水酸基を有するシリコーン系離型剤(BYK-SILCLEAN3700(有効成分25%):BYK製)35.1質量部(全固形分に対する有効成分6.5部)とし、第2の艶調整層6用のインキにおいて、アクリル基を有するシリコーン系離型剤(BYK-UV3505(有効成分40%):BYK製)14.5質量部(全固形分に対する有効成分5.5部)とした。それ以外は実施例1と同様の構成として、実施例6の化粧材とした。
【0057】
(比較例1)
比較例1では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、反応性の無いシリコーン系離型剤(BYK-330(有効成分51%):BYK製)2.6質量部(全固形分に対する有効成分1.0部)とし、第2の艶調整層6用のインキにおいて、反応性の無いシリコーン系離型剤(BYK-330(有効成分51%):BYK製)1.0質量部(全固形分に対する有効成分0.5部)とした。それ以外は実施例1と同様の構成として、比較例1の化粧材とした。
【0058】
(比較例2)
比較例2では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、反応性の無いシリコーン系離型剤(BYK-330(有効成分51%):BYK製)5.3質量部(全固形分に対する有効成分2.0部)とし、第2の艶調整層6用のインキにおいて、反応性の無いシリコーン系離型剤(BYK-330(有効成分51%):BYK製)4.1質量部(全固形分に対する有効成分2.0部)とした。それ以外は実施例1と同様の構成として、比較例2の化粧材とした。
【0059】
(比較例3)
比較例3では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、反応性の無いシリコーン系離型剤(BYK-330(有効成分51%):BYK製)13.2質量部(全固形分に対する有効成分5.0部)とし、第2の艶調整層6用のインキにおいて、反応性の無いシリコーン系離型剤(BYK-330(有効成分51%):BYK製)9.3質量部(全固形分に対する有効成分4.5部)とした。それ以外は実施例1と同様の構成として、比較例3の化粧材とした。
【0060】
(比較例4)
比較例4では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、表面処理のされているシリカ系艶調整剤(ミズカシルP-802Y:水澤化学工業(株)製)10質量部とした。それ以外は実施例2と同様の構成として、比較例4の化粧材とした。
(比較例5)
比較例5では、第1の艶調整層5用のインキにおいて、表面処理のされているシリカ系艶調整剤(ミズカシルP-802Y:水澤化学工業(株)製)10質量部とした。それ以外は実施例5と同様の構成として、比較例5の化粧材とした。
(評価)
以上の実施例1~6、比較例1~5について、離型性、耐傷性の評価を行った。
【0061】
<離型性(繰り返し)>
試験片にセロテープ(登録商標;ニチバン製24mm)を貼り、十分均等に圧着させた後、90°にて急激に引き剥がした。これを同一箇所で5回繰り返した。終了後、紙間剥離や層間剥離等の剥がれが生じなければ「○」、一部に剥がれが生じたものは「△」、剥がれが生じたものは「×」とした。なお、評価結果が「○」及び「△」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
<離型性(長期)>
試験片にセロテープ(登録商標;ニチバン製24mm)を貼り、十分均等に圧着させた後、60℃の環境に4日間保存し、取り出し後、常温まで冷却した後、90°にて急激に引き剥がした。紙間剥離や層間剥離等の剥がれが生じなければ「○」、一部に剥がれが生じたものは「△」、全面に剥がれが生じたものを「×」とした。なお、評価結果が「○」及び「△」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0062】
<耐傷性>
得られた化粧材をスチールウール(#0000)にて荷重500g/cm、10回往復の耐傷性試験を実施し、目視にてキズや光沢度変化の有無を観察した。
そして、光沢度変化が見られない場合を「◎」、光沢度変化が僅かに見える場合を「○」、キズは見えないが、光沢度変化がはっきり見える場合を「△」、キズや大きな光沢度変化が見える場合を「×」とした。なお、評価結果が「○」及び「△」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
これらの評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から分かるように、実施例1~6の化粧材1では、離型性及び耐傷性が全て両立できていることが分かる。一方、比較例1~3では、第1の艶調整層5に含める離型剤として、反応性の無い離型剤を用いたところ、長期の離型性のみ悪い評価結果となった。これは、離型剤に樹脂との反応性が全く無いため、艶調整層内に定着できず、60℃保管中に離型剤がブリードアウトし、離型性の悪化を招いてしまったものと考えられる。比較例4~5では、表面処理のされている艶調整剤、即ち疎水性無機材料から成る艶調整剤を用いたため、艶調整剤と離型剤との親和性が高まったことにより、表面に存在する離型剤が相対的に減少してしまったことにより離型性が低下してしまったと考えられる。
【0065】
以上の結果から、実施例1~6の化粧材は離型性、耐傷性を両立した化粧材1であることが明らかとなった。
なお、本発明の化粧材1は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【0066】
以下、本実施形態に係る化粧材以外の化粧材を、参考例として簡単に説明する。
従来、例えば、建築物の内外装、建具、家具等の表面化粧等に用いられる化粧材には、木目柄や石目柄等の所望の柄模様が施されるのが通例である。また、単に木目柄や石目柄等の柄模様を平面的に表現するだけでなく、天然の木材や石材が持つ表面の凹凸感を併せて立体的に表現した化粧材も、高級感が所望される用途を中心に広く用いられている。
化粧材の表面に平面的な柄模様と併せて立体的な凹凸感を表現する手法としては、従来、様々な方法が考案され、目的に応じて使い分けられている。なかでも、化粧材の表面に実際に凹凸を形成するのではなく、凹部または凸部として表現したい部分の表面の艶状態(具体的には光沢度)を異ならせることにより、人間の目の錯覚を利用して視覚的に凹凸の立体感を表現する手法がある。この手法によれば、実際には凹凸形状が存在しなくても、人間の目には、相対的に艶の高い部分は凸部、艶の低い部分は凹部として認識される。
【0067】
具体的には、例えば、凹み模様を含む適宜模様が印刷された基材の印刷面の全面に、艶の低い透明または半透明の合成塗料層を形成した後、形成した合成塗料層の表面の凹み模様に対応する部分を除く部分に艶の高い透明または半透明の合成塗料層を形成する。勿論、艶の高低の関係を逆転させれば、凹凸の関係を逆転させた化粧材を得ることができる。
このような手法によれば、特殊な薬剤等を必要とすることなく、艶の異なる2種類の塗料を用意するだけで、いかなる基材に対しても、容易に立体的な凹凸感を付与することができる。しかも、艶の異なる合成塗料層の形成は、柄模様(柄インキ層)の形成に引き続きグラビア印刷法等の慣用の印刷法で行うことができるので、特殊設備は一切不要で生産能率も高く、柄模様との同調も容易である。また、合成塗料層の厚さは表現しようとする凹凸の高低差と比較すれば遥かに薄く済むので、樹脂の使用量を削減できるほか、可撓性の面でも有利であり、折り曲げ加工適性に優れた化粧材を容易に実現できる。また、化粧材の表面に大きな凹凸が無いので、凹部に汚染物が留まることも無いという利点もある。
【0068】
かかる多くの利点に鑑み、この手法を採用した化粧材は、既に大量に使用されているが、高級感の点ではまだ実際に凹凸を形成する手法を凌ぐには至っていないのが実情である。その理由を考察するに、例えば、機械式エンボス法によれば、天然木の導管等の凹凸形状を、導管等の断面形状まで含めて忠実に再現することが可能である。これに対し、艶の異なる2種類の塗料を使用したこの手法では、表面の艶の段階は2種類であるから、表現できる凹凸の段階も2種類となる。したがって、天然木の導管等の様に、深さ(高さ)が連続的に変化した斜面部を有する凹凸形状を表現することが難しいという問題点がある。
【0069】
そこで、近年、艶調整層を設けることによって、天然木の導管等のように凹凸形状を表現可能な化粧材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、艶調整層の艶の調整方法としては、バインダーとしての透明樹脂中に艶調整剤(艶消し剤)を添加する方法が一般的である。艶調整剤としては、無機材料または有機材料の微粒子が主に用いられており、特に、シリカ微粒子等の無機材料の微粒子は艶消し能が高く、広く用いられている。艶調整剤を添加することで、艶調整剤が艶調整層の表面に凹凸を付与し、この凹凸が光を散乱することで艶消し効果が得られる。これら艶調整剤の種類や添加量を調整することで、求められる艶を自在に作り出すことができる。
【0070】
バインダーとしての透明樹脂は作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点から、各種ポリオールとイソシアネートを用いたウレタン系樹脂がよく用いられている。ウレタン系樹脂はポリオールとイソシアネートの組み合わせによって様々に特性をコントロールできることが特徴であるが、ポリオールとイソシアネートの分子量はそれぞれ比較的大きく、1分子当たりの官能基数も小さいことから、総じて架橋密度を上げにくいという問題がある。架橋密度は特に耐傷性に対して影響が大きいパラメータであり、従って、ウレタン系樹脂は高度な耐傷性の要求、例えば家具の天板や棚板等の水平面に求められる耐傷性を満足することが原理的に困難である。
【0071】
さらに、前述の艶調整剤を用いた艶調整層の場合、耐傷性試験において表面の凸部が選択的に削られてしまったり、艶調整剤が脱落してしまったりすることにより、耐傷性がより悪い結果となってしまう。この耐傷性の悪化傾向は、艶調整剤添加量に凡そ比例するため、艶の低い高意匠な化粧材ほど、前述の水平面に求められる耐傷性を満足することが非常に困難であると言える。
【0072】
一方、透明樹脂としてのアクリル基やメタクリル基を有する電離放射線硬化樹脂は、比較的分子量が低いことと1分子当たりの官能基数が大きいことから架橋密度が高く、耐傷性を向上させやすい樹脂と言える。このような電離放射線硬化樹脂を透明樹脂として用いることにより、高度な耐傷性を有する化粧材を提供することが可能である。なお、耐傷性は主に化粧材最表面の強度に依存するため、最表面層の構成材料のみ、電離放射線硬化樹脂を積極的に用いればよい。
【0073】
しかしながら、艶調整層が2層に分かれており、かつ、最表面の艶調整層が化粧材全面を覆うのではなく、一部しか被覆していない場合は、直下の化粧材全面を覆っている艶調整層も一部が表面露出した状態となっている。このため、高度な耐傷性を有する化粧材とするためには、両方の艶調整層の透明樹脂を電離放射線硬化樹脂にすることが好ましい。またこの場合、化粧材全面を覆う下層の艶調整層の一部を覆うように上層の艶調整層が積層することになる。しかし、電離放射線硬化樹脂は電離放射線が照射されなければ硬化しないため、一般的に化粧材の製造に用いられる各種印刷機における加工では、未硬化の化粧材全面を覆う下層の艶調整層上に、一部を覆う上層の艶調整層を積層することになる。このため、全面を覆う艶調整層が溶解したり削られたりする等の不具合が発生してしまうおそれがある。
【0074】
他方、化粧材としての要求特性は、前述のような耐傷性を含め、日常使用を想定した総合的な耐久性が求められる。また、組み立て家具の場合、梱包される際に組み立て順序等を示すシールが貼られることがあり、それらは組み立て中もしくは組み立て後に剥がされることになるが、その際、化粧材に剥がれが生じないよう、離型性を付与することも重要である。
【0075】
このような離型性を付与するためには、化粧材表面を形成する艶調整層に離型剤を添加する方法が有効である。しかし、一般的な離型剤は分子量制御されたシリコーン材料が用いられ、これらは艶調整層内に定着されないため、長期的にはブリードアウトを経て化粧材表面から脱落してしまい、離型性の経時劣化が発生する問題がある。
【符号の説明】
【0076】
1 化粧材
2 基材
3 下地ベタインキ層
4 柄インキ層
5 第1の艶調整層
6 第2の艶調整層
図1
図2