(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】呼び管理装置、エレベーターシステム、呼び管理方法、および呼び管理プログラム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B66B1/18 P
(21)【出願番号】P 2022200906
(22)【出願日】2022-12-16
【審査請求日】2022-12-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 雅司
(72)【発明者】
【氏名】大橋 岳洋
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-128045(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170644(WO,A1)
【文献】特開2022-143912(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230305(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する移動体通信部と、
前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターから収集する呼び情報収集部と、
前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集部が収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について算出する接近機会計算部と、
前記接近機会計算部が算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定部と、
を備え
、
前記接近機会計算部は、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出を、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行う、
呼び管理装置。
【請求項2】
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、前記接近機会指標値として前記移動体移動区間における停止階の数を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
請求項1に記載の呼び管理装置。
【請求項3】
前記複数のかごの各々について、乗場から乗り込む乗車人数を算出する乗車人数計算部
を備え、
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、前記移動体移動区間における停止階ごとに前記乗車人数計算部が算出した乗車人数に関して単調増加な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
請求項1に記載の呼び管理装置。
【請求項4】
前記複数のかごの各々について、乗場に降りる降車人数を算出する降車人数計算部
を備え、
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、前記移動体移動区間における停止階ごとに前記降車人数計算部が算出した降車人数に関して単調増加な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
請求項1に記載の呼び管理装置。
【請求項5】
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、利用者と前記移動体との同乗距離に関して単調増加するように前記利用者の前記移動体移動区間内の出発階ごとに前記移動体出発階との距離に関して単調減少な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
請求項1に記載の呼び管理装置。
【請求項6】
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、利用者と前記移動体との同乗距離に関して単調増加するように前記利用者の前記移動体移動区間内の目的階ごとに前記移動体目的階との距離に関して単調減少な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
請求項1に記載の呼び管理装置。
【請求項7】
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、出発階および目的階の間の利用者移動区間が前記移動体移動区間と重複する利用者の呼びごとに前記利用者移動区間および前記移動体移動区間の重複する区間の長さに関して単調
増加な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
請求項1に記載の呼び管理装置。
【請求項8】
前記接近機会計算部は、予め設定された時間ごとに、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値を更新し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値が更新されるときに前記移動体の呼びの割当てを更新する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の呼び管理装置。
【請求項9】
前記接近機会計算部は、前記呼び情報収集部が新たな呼びの情報を収集するときに、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値を更新し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値が更新されるときに前記移動体の呼びの割当てを更新する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の呼び管理装置。
【請求項10】
施設に設けられ前記施設の複数の階床の間を走行する複数のかごと、
前記施設を移動し前記複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する移動体通信部と、
前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を収集する呼び情報収集部と、
前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集部が収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について算出する接近機会計算部と、
前記接近機会計算部が算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定部と、
を備え
、
前記接近機会計算部は、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出を、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行う、
エレベーターシステム。
【請求項11】
施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置からコンピュータが受信する受信ステップと、
前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターからコンピュータが収集する呼び情報収集ステップと、
前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集ステップにおいて収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々についてコンピュータが算出する接近機会計算ステップと、
前記接近機会計算ステップにおいて算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかをコンピュータが決定する割当決定ステップと、
を備え
、
前記接近機会計算ステップにおいて、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出は、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行われる、
呼び管理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する受信ステップと、
前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターから収集する呼び情報収集ステップと、
前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集ステップにおいて収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について算出する接近機会計算ステップと、
前記接近機会計算ステップにおいて算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定ステップと、
を実行させ
、
前記接近機会計算ステップにおいて、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出を、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行わせる、
呼び管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、呼び管理装置、エレベーターシステム、呼び管理方法、および呼び管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターシステムの例を開示する。エレベーターシステムにおいて、移動体と利用者との同乗が許容される。移動体がかごに乗車したときに、当該移動体の目的階と同じ方向の利用者によるかご呼びまたは乗場呼びが有る場合には、これらの利用者によるかご呼びまたは乗場呼びが、移動体による呼びより優先される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエレベーターシステムにおいて、移動体がかごに乗り込んだ後に、呼びのキャンセルなどの処理が行われる。ここで、移動体の呼びがキャンセルされた場合に、移動体は、かごから降車せずそのまま乗車している。このため、かごに乗車している移動体と当該かごに乗車する利用者との接近機会が増える可能性がある。また、かご到着時のかご内スペースの有無によって、移動体の乗車可否が判定される。このとき、乗車スペースはあるので移動体は乗車するが、当該かごが最も人の利用機会が多いかごである、といった状況が発生しうる。かごにおいて移動体と利用者との接近機会が増えると、利用者の快適性などに影響が生じることがある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、移動体がエレベーターを利用することによる利用者への影響を緩和できる呼び管理装置、エレベーターシステム、呼び管理方法、および呼び管理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る呼び管理装置は、施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する移動体通信部と、前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターから収集する呼び情報収集部と、前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集部が収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について算出する接近機会計算部と、前記接近機会計算部が算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定部と、を備え、前記接近機会計算部は、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出を、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行う。
【0007】
本開示に係るエレベーターシステムは、施設に設けられ前記施設の複数の階床の間を走行する複数のかごと、前記施設を移動し前記複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する移動体通信部と、前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を収集する呼び情報収集部と、前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集部が収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について算出する接近機会計算部と、前記接近機会計算部が算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定部と、を備え、前記接近機会計算部は、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出を、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行う。
【0008】
本開示に係る呼び管理方法は、施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置からコンピュータが受信する受信ステップと、前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターからコンピュータが収集する呼び情報収集ステップと、前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集ステップにおいて収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々についてコンピュータが算出する接近機会計算ステップと、前記接近機会計算ステップにおいて算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかをコンピュータが決定する割当決定ステップと、を備え、前記接近機会計算ステップにおいて、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出は、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行われる。
【0009】
本開示に係る呼び管理プログラムは、コンピュータに、施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する受信ステップと、前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターから収集する呼び情報収集ステップと、前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集ステップにおいて収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について算出する接近機会計算ステップと、前記接近機会計算ステップにおいて算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定ステップと、を実行させ、前記接近機会計算ステップにおいて、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出を、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行わせる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る呼び管理装置、エレベーターシステム、呼び管理方法、または呼び管理プログラムであれば、移動体がエレベーターを利用することによる利用者への影響を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るエレベーターシステムの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る呼び管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る呼び管理装置の動作の例を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係るエレベーターシステムの主要部のハードウェア構成図である。
【
図5】実施の形態2に係る呼び管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態2に係る呼び管理装置の動作の例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態3に係るエレベーターシステムにおける利用者の出発階と移動体出発階との距離を説明する図である。
【
図8】実施の形態3に係るエレベーターシステムにおける利用者の目的階と移動体目的階との距離を説明する図である。
【
図9】実施の形態3に係る呼び管理装置の動作の例を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態4に係るエレベーターシステムにおける利用者移動区間と移動体移動区間との重複を説明する図である。
【
図11】実施の形態4に係る呼び管理装置の動作の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0014】
エレベーターシステム1は、エレベーター2を備える。エレベーター2は、施設に設けられる。施設は、例えば、屋内施設もしくは屋外施設、またはこれらを複合した施設などである。施設は、例えば、1つまたは複数の建物などからなる。施設は、例えば、建物などの一部であってもよい。施設において、複数の階床が設けられる。施設において、図示されない昇降路が設けられる。昇降路は、上下方向を長手方向として複数の階床にわたる空間である。エレベーター2は、人である利用者などによって、施設における複数の階床の間の移動に利用される。施設において、各々の階床にエレベーター2の図示されない乗場が設けられる。乗場は、昇降路に通じる場所である。各々の階床の乗場において、乗場操作盤3が設けられる。乗場操作盤3は、乗場にいる利用者の操作を受け付ける装置である。
【0015】
エレベーター2は、複数のかご4を備える。各々のかご4は、昇降路を上下方向に走行することで、かご4の内部に乗車している利用者などを施設の複数の階床の間で輸送する装置である。各々のかご4は、例えば、かご4の荷重を支持する図示されないロープを、図示されない巻上機のモータが巻き上げることなどによって、昇降路を上下方向に走行する。各々のかご4は、かご操作盤5と、秤装置6と、を備える。かご操作盤5は、かご4の内部に設けられる。かご操作盤5は、かご4の内部にいる利用者の操作を受け付ける装置である。秤装置6は、かご4の内部にいる利用者などの積載荷重を計測する装置である。
【0016】
エレベーター2は、制御装置7を備える。制御装置7は、例えば、群管理盤および各々のかご4に対応する複数の制御盤などの複数の機器からなる装置であってもよいし、単一の装置であってもよい。制御装置7は、エレベーター2の動作を制御する装置である。制御装置7によるエレベーター2の動作の制御は、例えば、各々のかご4に応答させる呼びの管理を含む。エレベーター2における呼びは、利用者の出発階への呼び、および利用者の目的階への呼びを含む。利用者の出発階への呼びは、例えば、乗場呼びなどである。乗場呼びの操作は、例えば、利用者の出発階の乗場において、乗場操作盤3を通じて行われる。制御装置7は、利用者の出発階への呼びである乗場呼びを、いずれかのかご4に割り当てる。利用者の目的階への呼びは、例えば、かご呼びなどである。かご呼びの操作は、例えば、利用者が乗車するかご4において、かご操作盤5を通じて行われる。制御装置7は、利用者の目的への呼びであるかご呼びを、当該かご4に登録する。制御装置7によるエレベーター2の動作の制御は、例えば、各々のかご4について、当該かご4に割り当てられる乗場呼びおよび当該かご4に登録されるかご呼びに応答させるように、当該かご4を利用者の出発階および目的階に走行させることを含む。
【0017】
エレベーターシステム1は、遠隔監視装置8を備える。遠隔監視装置8は、例えば、エレベーター2が適用される施設に設けられる。遠隔監視装置8は、エレベーター2から収集するエレベーター2の状態などの情報を外部の情報センターなどに通知する機能を搭載する。遠隔監視装置8は、外部から受け付けた指令などの制御情報をエレベーター2に出力する機能を搭載する。遠隔監視装置8は、エレベーター2の情報を収集しうるように、また、エレベーター2に制御情報を出力しうるように、制御装置7に接続される。遠隔監視装置8は、エレベーター2の情報を外部に通知しうるように、また、エレベーター2への指令などを外部から受け付けうるように、インターネットなどの通信網に接続される。
【0018】
エレベーター2は、施設において稼働している移動体9によっても利用される。移動体9は、施設を自律的に移動するロボットまたはモビリティなどの装置である。なお、移動体9は、図示されない移動体制御装置などによって遠隔制御されていてもよい。移動体制御装置は、例えば、移動体9の移動および移動体9が提供するサービスなどの管理を行うサーバ装置などである。移動体9は、エレベーターシステム1の一部をなす装置であってもよいし、エレベーターシステム1の外部装置であってもよい。移動体9は、施設において階床間の移動にエレベーター2を利用する。
【0019】
エレベーターシステム1は、呼び管理装置10を備える。呼び管理装置10は、移動体9がエレベーター2を利用するときの移動体9の呼びを管理する機能を搭載する。呼び管理装置10は、例えば、エレベーター2の制御盤または遠隔監視装置8などと通信しうるように、また、移動体9との間で呼びの情報などを通信しうるように、インターネットなどの通信網に接続される。なお、移動体9が移動体制御装置によって遠隔制御される場合に、呼び管理装置10は、移動体制御装置との間で呼びの情報などを通信してもよい。
【0020】
呼び管理装置10は、例えば、1つまたは複数のサーバコンピュータなどである。呼び管理装置10の機能の一部または全部は、エレベーター2が適用される施設またはその遠隔地に配置された1つまたは複数の装置に搭載されるものであってもよい。呼び管理装置10の機能の一部または全部は、他の装置と共有されるハードウェア上に搭載されるものであってもよい。呼び管理装置10の機能の一部または全部は、クラウドサービス上の仮想マシン上に実装されるものであってもよいし、クラウドサービス上の記憶または処理のリソースなどによって実装されるものであってもよい。呼び管理装置10は、例えば、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、当該プログラムに従って動作することで各機能を実行する。当該プログラムを記録する記録媒体は、例えば呼び管理装置10を構成する内部装置に内蔵されるもの、もしくは当該内部装置に接続されるものであってもよいし、または呼び管理装置10と通信する外部装置によって情報が読み出されるものなどであってもよい。当該プログラムは、呼び管理装置10を構成する複数の内部装置の各々の上で動作する複数のソフトウェアを含むソフトウェアパッケージなどであってもよい。
【0021】
図2は、実施の形態1に係る呼び管理装置10の構成を示すブロック図である。
【0022】
呼び管理装置10は、通信部11と、管理処理部12と、を備える。通信部11は、呼び管理装置10の外部の装置などとの間の通信を行う機能を搭載する部分である。通信部11は、第1通信部13と、第2通信部14と、を備える。管理処理部12は、呼びの管理などについての情報処理を行う機能を搭載する部分である。管理処理部12は、移動区間判定部15と、接近機会計算部16と、割当決定部17と、を備える。
【0023】
第1通信部13は、移動体9との間の通信を行う機能を搭載する。第1通信部13は、例えば、移動体9または移動体9を遠隔制御する移動体制御装置から、当該移動体9の呼び要求の情報を受信する。移動体9の呼び要求は、当該移動体9が乗場からかご4に乗り込む階床である移動体出発階と、当該移動体9がかご4から乗場に降車する階床である移動体目的階と、の情報を含む。第1通信部13は、移動体通信部の例である。
【0024】
第2通信部14は、エレベーター2側の装置、例えば制御装置7または遠隔監視装置8などとの間の通信を行う機能を搭載する。第2通信部14は、例えば、各々のかご4が応答する呼びの情報をエレベーター2から収集する。第2通信部14が収集する呼びの情報は、利用者の乗場呼びの情報、および利用者のかご呼びの情報を含む。第2通信部14は、呼び情報収集部の例である。
【0025】
移動区間判定部15は、移動体9の呼び要求によって走行するかご4の移動区間、すなわち、移動体出発階から移動体目的階までの移動体移動区間を判定する機能を搭載する。移動区間判定部15は、例えば、第1通信部13が受信する移動体9の呼び要求に基づいて、移動体移動区間を判定する。
【0026】
接近機会計算部16は、移動体移動区間における接近機会指標値を算出する機能を搭載する。接近機会指標値は、人である利用者が移動体9とかご4に同乗することで当該移動体9に接近する機会の多さなどを表す情報である。接近機会計算部16は、例えば、第2通信部14が収集する呼びの情報、および、移動区間判定部15が判定する移動体移動区間に基づいて、接近機会指標値を算出する。接近機会計算部16は、例えば、移動体移動区間における停止階の数を接近機会指標値として算出する。停止階の数は、例えば、利用者の出発階および目的階への呼び、すなわち、利用者の乗場呼びおよびかご呼びの数によって算出される。
【0027】
割当決定部17は、移動体9の呼びをいずれのかご4に割り当てるかを決定する機能を搭載する。割当決定部17は、例えば、接近機会計算部16が算出した接近機会指標値に基づいて移動体9の呼びの割当てを決定する。この例において、割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4、すなわち、移動体移動区間における停止階の数より少ないかご4により優先して、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、例えば、移動体移動区間における停止階の数が最も少ないかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを行わせる制御信号を、例えば第2通信部14などを通じて制御装置7に出力する。割当決定部17は、遠隔監視装置8を介して制御信号を制御装置7に出力してもよい。
【0028】
割当決定部17から制御信号を受け付けた制御装置7は、制御信号が表す割当てに基づいて、移動体9のかご4の呼びをいずれかのかご4に割り当てる。
【0029】
続いて、
図3を用いて、呼び管理装置10の動作の例を説明する。
図3は、実施の形態1に係る呼び管理装置10の動作の例を示すフローチャートである。
【0030】
ステップS101において、第1通信部13は、移動体9から呼び要求を受信する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS102に進む。
【0031】
ステップS102において、第2通信部14は、各々のかご4が応答する呼びの情報を、エレベーター2から例えば遠隔監視装置8などを通じて収集する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS103に進む。
【0032】
ステップS103において、移動区間判定部15は、移動体9の移動体移動区間を判定する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS104に進む。
【0033】
ステップS104において、接近機会計算部16は、エレベーター2の複数のかご4から、接近機会指標値の算出を行っていないかご4を選択する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS105に進む。
【0034】
ステップS105において、接近機会計算部16は、選択したかご4について、移動体移動区間における乗場呼びおよびかご呼びの数を、停止階の数として集計する。接近機会計算部16は、集計した停止階の数を、当該かご4についての接近機会指標値として算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS106に進む。
【0035】
ステップS106において、接近機会計算部16は、接近機会指標値の算出をまだ行っていないかご4があるかを判定する。未算出のかご4がある場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS104に進む。一方、全てのかご4について接近機会指標値の算出を行った場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS107に進む。
【0036】
ステップS107において、割当決定部17は、移動体移動区間における停止階の数が最も少ないかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを表す制御情報を、エレベーター2の例えば制御装置7に出力する。割当決定部17は、移動体9または当該移動体9を遠隔制御する移動体制御装置に、決定した割当てを表す情報を通知する。その後、呼び管理装置10の処理は、終了する。
【0037】
以上に説明したように、実施の形態1に係るエレベーターシステム1は、複数のかご4を含むエレベーター2と、呼び管理装置10と、を備える。呼び管理装置10は、第1通信部13と、第2通信部14と、接近機会計算部16と、割当決定部17と、を備える。第1通信部13は、移動体9または移動体9を制御する移動体制御装置から、当該移動体9の移動体出発階および移動体目的階の情報を含む呼び要求を受信する。第2通信部14は、各々のかご4が応答する呼びの情報をエレベーター2から収集する。接近機会計算部16は、移動体出発階および移動体目的階の間の移動体移動区間における接近機会指標値を、第2通信部14が収集した呼びの情報に基づいて、各々のかご4について算出する。割当決定部17は、接近機会計算部16が算出した各々のかご4についての接近機会指標値に基づいて、移動体9の呼びをいずれのかご4に割り当てるかを決定する。
【0038】
このような構成により、移動体9とのかご4への同乗による接近機会に応じて移動体9の呼びを割り当てるかご4が決定されるので、人である利用者と装置である移動体9とのエレベーター2の利用による接近機会が抑えられる。これにより、利用者はより安全かつ快適にエレベーター2を利用することができるようになり、移動体9がエレベーター2を利用することによる利用者への影響が緩和される。
【0039】
また、接近機会計算部16は、各々のかご4について、移動体移動区間における停止階の数を用いて接近機会指標値を算出する。割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4により優先して、移動体9の呼びを割り当てる。これにより、移動体移動区間内の停止階の数の少ないかご4に移動体9の呼びが割り当てられるので、移動体9の運行が妨げられることなく、利用者との接近機会が低減される。接近機会計算部16は、エレベーター2の基本的な構成で取得可能な情報に基づいて接近機会指標値を算出するので、本機能のための追加機器などを必要としない。
【0040】
なお、第2通信部14は、利用者の呼びであるか、移動体9の呼びであるかを判別しうる情報を含めて、各々のかご4が応答する呼びについての情報を収集してもよい。このとき、接近機会計算部16は、移動体9の移動体移動区間における接近機会指標値の算出を、当該移動体9の他の移動体9の呼びの情報を除外して行ってもよい。接近機会計算部16は、例えば、各々のかご4について、移動体移動区間における利用者の呼びによる停止階の数を、接近機会指標値として算出してもよい。このとき、接近機会計算部16は、移動体9の呼びによる停止階の数を集計しない。これにより、複数の移動体9の同乗などの利用者との接近機会に影響しない状況において、移動体9の呼びの割当てが影響を受けないので、移動体9の運行がより妨げられにくくなる。
【0041】
また、接近機会計算部16は、既に算出した接近機会指標値を更新してもよい。接近機会計算部16は、例えば、予め設定された時間ごとに、接近機会指標値を更新する。また、接近機会計算部16は、第2通信部14が新たな呼びの情報を収集するとき、例えば利用者が新たな乗場呼びまたはかご呼びの操作を行ったときに、接近機会指標値を更新してもよい。割当決定部17は、接近機会指標値が更新されるときに、移動体9の呼びの割当てを更新する。割当決定部17は、呼びの割当てを更新するたびに制御情報を制御装置7に出力してもよいし、移動体9が乗車する直前まで制御装置7への制御情報の出力を行わずに留保してもよい。割当決定部17は、例えば移動体9がエレベーター2の乗場に到着するときに、留保していた制御装置7への制御情報の出力を行ってもよい。これにより、より新しい情報に基づいて移動体9の呼びが割り当てられるので、移動体9がエレベーター2を利用することによる利用者への影響がより効果的に緩和される。
【0042】
また、乗場操作盤3は、利用者の目的階を指定した乗場呼びを受け付けてもよい。また、利用者による呼びの操作は、例えば利用者が所持するスマートフォンその他の携帯情報端末を通じて行われてもよい。このとき、利用者の呼びの情報は、例えばインターネットなどの通信網を通じて、エレベーター2の制御装置7または遠隔監視装置8に入力される。
【0043】
また、呼び管理装置10の機能の一部または全部は、エレベーター2の制御装置7または遠隔監視装置8などに搭載されていてもよい。このとき、呼び管理装置10は、エレベーター2の制御装置7または遠隔監視装置8などを含む複数の装置から構成されるシステムであってもよい。
【0044】
続いて、
図4を用いて、エレベーターシステム1のハードウェア構成の例について説明する。
図4は、実施の形態1に係るエレベーターシステム1の主要部のハードウェア構成図である。
【0045】
エレベーターシステム1の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
【0046】
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、エレベーターシステム1の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、エレベーターシステム1の各機能を実現する。
【0047】
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0048】
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0049】
エレベーターシステム1の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、エレベーターシステム1の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。エレベーターシステム1の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせでエレベーターシステム1の各機能を実現する。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態2において、実施の形態1で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態2で説明しない特徴については、実施の形態1で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0051】
図5は、実施の形態2に係る呼び管理装置10の構成を示すブロック図である。
【0052】
この例において、制御装置7は、利用者ごとにエレベーター2の呼びを受け付ける。例えば、利用者の目的階を指定した乗場呼びの操作を乗場操作盤3が受け付けるときに、当該操作は利用者ごとに行われる。この場合に、制御装置7は、利用者ごとに呼びの情報を受け付ける。また、利用者による呼びの操作が当該利用者の所持する携帯情報端末などを通じて行われるときに、制御装置7は、利用者ごとに呼びの情報を受け付ける。
【0053】
呼び管理装置10の管理処理部12は、乗降人数計算部18を備える。乗降人数計算部18は、乗場からかご4に乗り込む利用者の人数である乗車人数を算出する機能を搭載する。乗降人数計算部18は、乗車人数計算部の例である。乗降人数計算部18は、かご4から乗場に降りる利用者の人数である降車人数を計算する機能を搭載する。乗降人数計算部18は、降車人数計算部の例である。ここで、乗車人数および降車人数を総称して乗降人数と表記することがある。この例において、乗降人数計算部18は、利用者ごとに受け付けた呼びの情報に基づいて、乗降人数を計算する。乗降人数計算部18は、例えば、ある階床における乗車人数を、当該階床を出発階とする乗場呼びなどの呼びの数によって算出する。乗降人数計算部18は、例えば、ある階床における降車人数を、当該階床を目的階とするかご呼びなどの数によって算出する。
【0054】
接近機会計算部16は、各々のかご4について、移動体移動区間における停止階ごとに、乗降人数計算部18が算出した乗降人数に関して単調増加な重みを算出する。接近機会計算部16は、当該かご4について算出した重みの総和を接近機会指標値として算出する。ここで、乗降人数に関して単調増加な重みは、例えば乗降人数自体であってもよいし、乗降人数に正比例する値であってもよいし、乗降人数が増えるにつれて増加するその他の単調増加関数によって与えられる値であってもよい。接近機会計算部16は、例えば、移動体移動区間における利用者の出発階ごとに、当該階床について乗降人数計算部18が算出した乗車人数に関して単調増加な重みを算出する。また、接近機会計算部16は、例えば、移動体移動区間における利用者の目的階ごとに、当該階床について乗降人数計算部18が算出した降車人数に関して単調増加な重みを算出する。接近機会計算部16は、このように算出した重みの総和を、接近機会指標値として算出する。
【0055】
割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4に、より優先して移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、例えば、移動体移動区間における接近機会指標値が最も小さいかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを行わせる制御信号を、例えば第2通信部14などを通じて制御装置7に出力する。割当決定部17は、遠隔監視装置8を介して制御信号を制御装置7に出力してもよい。
【0056】
続いて、
図6を用いて、呼び管理装置10の動作の例を説明する。
図6は、実施の形態2に係る呼び管理装置10の動作の例を示すフローチャートである。
【0057】
ステップS201において、第1通信部13は、移動体9から呼び要求を受信する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS202に進む。
【0058】
ステップS202において、第2通信部14は、各々のかご4が応答する呼びの情報を、エレベーター2から例えば遠隔監視装置8などを通じて収集する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS203に進む。
【0059】
ステップS203において、移動区間判定部15は、移動体9の移動体移動区間を判定する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS204に進む。
【0060】
ステップS204において、接近機会計算部16は、エレベーター2の複数のかご4から、接近機会指標値の算出を行っていないかご4を選択する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS205に進む。
【0061】
ステップS205において、接近機会計算部16は、選択したかご4について、移動体移動区間において重みの算出を行っていない停止階を選択する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS206に進む。
【0062】
ステップS206において、接近機会計算部16は、選択した停止階について、利用者の出発階であるか目的階であるかを判定する。例えば、接近機会計算部16は、当該停止階が乗場呼びによる停止階である場合に、当該停止階が利用者の出発階であると判定する。接近機会計算部16は、当該停止階がかご呼びによる停止階である場合に、当該停止階が利用者の目的階であると判定する。接近機会計算部16は、当該停止階が乗場操作盤3などにおいて指定された目的階である場合に、当該停止階が利用者の目的階であると判定してもよい。当該停止階が利用者の出発階であると判定する場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS207に進む。当該停止階が利用者の目的階であると判定する場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS209に進む。
【0063】
ステップS207において、乗降人数計算部18は、接近機会計算部16が選択した停止階について、乗車人数を算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS208に進む。
【0064】
ステップS208において、接近機会計算部16は、乗車人数に基づいて重みの値を算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS211に進む。
【0065】
ステップS209において、乗降人数計算部18は、接近機会計算部16が選択した停止階について、降車人数を算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS210に進む。
【0066】
ステップS210において、接近機会計算部16は、降車人数に基づいて重みの値を算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS211に進む。
【0067】
ステップS211において、接近機会計算部16は、選択したかご4について、移動体移動区間において重みの算出をまだ行っていない停止階があるかを判定する。未算出の停止階がある場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS205に進む。一方、移動体移動区間における全ての停止階について重みの算出を行った場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS212に進む。
【0068】
ステップS212において、接近機会計算部16は、選択したかご4について、算出した重みの値の総和を集計する。接近機会計算部16は、集計した重みの総和を、当該かご4についての接近機会指標として算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS213に進む。
【0069】
ステップS213において、接近機会計算部16は、接近機会指標値の算出をまだ行っていないかご4があるかを判定する。未算出のかご4がある場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS204に進む。一方、全てのかご4について接近機会指標値の算出を行った場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS214に進む。
【0070】
ステップS214において、割当決定部17は、移動体移動区間において算出した重みの総和値が最も少ないかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを表す制御情報を、エレベーター2の例えば制御装置7に出力する。割当決定部17は、移動体9または当該移動体9を遠隔制御する移動体制御装置に、決定した割当てを表す情報を通知する。その後、呼び管理装置10の処理は、終了する。
【0071】
以上に説明したように、実施の形態2に係る呼び管理装置10は、乗降人数計算部18を備える。乗降人数計算部18は、各々のかご4について、当該かご4と乗場との間の乗降人数を算出する。接近機会計算部16は、各々のかご4について、移動体移動区間における停止階ごとに乗降人数計算部18が算出した乗降人数に関して単調増加な重みを算出する。接近機会計算部16は、当該かご4について算出した重みの総和を用いて、接近機会指標値を算出する。割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4により優先して移動体9の呼びを割り当てる。このように、乗降人数を考慮した上で移動体9の呼びのかご4への割当てが決定されるので、移動体9と利用者との接近機会がより効果的に低減される。なお、接近機会計算部16は、乗車人数または降車人数のいずれか一方のみに基づいて接近機会指標値を算出してもよい。
【0072】
また、エレベーター2が適用される施設において、利用者の映像を撮影するカメラが設けられていてもよい。カメラは、エレベーターシステム1の一部をなす装置であってもよいし、エレベーターシステム1の外部装置であってもよい。カメラは、例えば、施設の各々の階床の乗場に設けられる。カメラは、例えば、各々のかご4の内部に設けられる。カメラが撮影する映像は、例えば第2通信部14によって収集される。カメラが撮影する映像は、例えば遠隔監視装置8を通じて第2通信部14に収集されてもよい。このとき、乗降人数計算部18は、例えば、乗場またはかご4に設けられたカメラの映像に基づいて、乗降人数を推定してもよい。この場合に、制御装置7は、エレベーター2の呼びの受付を利用者ごとに行わなくてもよい。また、乗降人数計算部18は、例えば、かご4に設けられた秤装置6が計測する積載荷重に基づいて、乗降人数を推定してもよい。
【0073】
実施の形態3.
実施の形態3において、実施の形態1または実施の形態2で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態3で説明しない特徴については、実施の形態1または実施の形態2で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0074】
この例において、接近機会計算部16は、利用者の出発階と移動体出発階との距離、または利用者の目的階と移動体目的階との距離の一方または両方に基づいて接近機会指標値を算出する。
【0075】
図7は、実施の形態3に係るエレベーターシステム1における利用者の出発階と移動体出発階との距離を説明する図である。
【0076】
エレベーター2は、A号機のかご4およびB号機のかご4を含む。この例において、移動体9は、移動体出発階Xからその上方の移動体目的階Yまで移動する。A号機のかご4に、停止階Aを出発階とする乗場呼びが割り当てられている。B号機のかご4に、停止階Aより上方の停止階Bを出発階とする乗場呼びが割り当てられている。また、A号機のかご4およびB号機のかご4に、かご呼びがそれぞれ登録されている。これらのかご呼びは、互いに同一の階床Tを目的階とするかご呼びである。
【0077】
このとき、A号機のかご4における利用者の出発階Aと移動体出発階Xとの距離dAは、例えばこれらの階床差などによって表される。また、B号機のかご4における利用者の出発階Bと移動体出発階Xとの距離dBは、例えばこれらの階床差などによって表される。この例において、距離dAは距離dBより短い。すなわち、A号機のかご4についての利用者の出発階Aと移動体出発階Xとの近さは、B号機のかご4についての利用者の出発階Bと移動体出発階Xとの近さよりも近い。このとき、A号機およびB号機においてかご4への乗車人数などの条件が同一であったとしても、移動体9および利用者が同乗する区間の長さにより、A号機のかご4における接近機会はB号機のかご4における接近機会より増加しうる。このため、接近機会計算部16は、A号機のかご4についての重みがB号機のかご4についての重みより大きくなるように、例えば次のように重みの算出を行う。
【0078】
接近機会計算部16は、各々のかご4について、移動体移動区間における利用者の出発階ごとに移動体出発階との距離に関して単調減少な正の重みを算出する。接近機会計算部16は、当該かご4について算出した重みの総和を接近機会指標値として算出する。ここで、移動体出発階との距離に関して単調減少な重みは、例えば移動体出発階との距離に一定のバイアスを加えたものに反比例する値、または当該距離自体に反比例する値であってもよいし、当該距離が増えるにつれて減少するその他の単調減少関数によって与えられる値であってもよい。接近機会計算部16は、例えば、移動体移動区間において乗場呼びによって停止する停止階ごとに、当該階床と移動体出発階との距離に関して単調減少な重みを算出する。接近機会計算部16は、このように算出した重みの総和を、接近機会指標値として算出する。
【0079】
割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4に、より優先して移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、例えば、移動体移動区間における接近機会指標値が最も小さいかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを行わせる制御信号を、例えば第2通信部14などを通じて制御装置7に出力する。割当決定部17は、遠隔監視装置8を介して制御信号を制御装置7に出力してもよい。
【0080】
図8は、実施の形態3に係るエレベーターシステム1における利用者の目的階と移動体目的階との距離を説明する図である。
【0081】
この例において、移動体9は、移動体出発階Xからその上方の移動体目的階Yまで移動する。A号機のかご4に、停止階Aを目的階とするかご呼びが登録されている。B号機のかご4に、停止階Aより下方の停止階Bを目的階とするかご呼びが登録されている。また、A号機のかご4およびB号機のかご4に、乗場呼びがそれぞれ割り当てられている。これらの乗場呼びは、互いに同一の階床Sを出発階とする乗場呼びである。
【0082】
このとき、A号機のかご4における利用者の目的階Aと移動体目的階Yとの距離dAは、例えばこれらの階床差などによって表される。また、B号機のかご4における利用者の目的階Bと移動体目的階Yとの距離dBは、例えばこれらの階床差などによって表される。この例において、距離dAは距離dBより短い。すなわち、A号機のかご4についての利用者の目的階Aと移動体目的階Yとの近さは、B号機のかご4についての利用者の目的階Bと移動体目的階Yとの近さよりも近い。このとき、A号機およびB号機においてかご4からの降車人数などの条件が同一であったとしても、移動体9および利用者が同乗する区間の長さにより、A号機のかご4における接近機会はB号機のかご4における接近機会より増加しうる。このため、接近機会計算部16は、A号機のかご4についての重みがB号機のかご4についての重みより大きくなるように、例えば次のように重みの算出を行う。
【0083】
接近機会計算部16は、各々のかご4について、移動体移動区間における利用者の目的階ごとに移動体目的階との距離に関して単調減少な正の重みを算出する。接近機会計算部16は、当該かご4について算出した重みの総和を接近機会指標値として算出する。ここで、移動体目的階との距離に関して単調減少な重みは、例えば移動体目的階との距離に一定のバイアスを加えたものに反比例する値、または当該距離自体に反比例する値であってもよいし、当該距離が増えるにつれて減少するその他の単調減少関数によって与えられる値であってもよい。接近機会計算部16は、例えば、移動体移動区間においてかご呼びによって停止する停止階ごとに、当該階床と移動体目的階との距離に関して単調減少な重みを算出する。接近機会計算部16は、このように算出した重みの総和を、接近機会指標値として算出する。
【0084】
割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4に、より優先して移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、例えば、移動体移動区間における接近機会指標値が最も小さいかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを行わせる制御信号を、例えば第2通信部14などを通じて制御装置7に出力する。割当決定部17は、遠隔監視装置8を介して制御信号を制御装置7に出力してもよい。
【0085】
続いて、
図9を用いて、呼び管理装置10の動作の例を説明する。
図9は、実施の形態3に係る呼び管理装置10の動作の例を示すフローチャートである。
【0086】
ステップS301において、第1通信部13は、移動体9から呼び要求を受信する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS302に進む。
【0087】
ステップS302において、第2通信部14は、各々のかご4が応答する呼びの情報を、エレベーター2から例えば遠隔監視装置8などを通じて収集する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS303に進む。
【0088】
ステップS303において、移動区間判定部15は、移動体9の移動体移動区間を判定する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS304に進む。
【0089】
ステップS304において、接近機会計算部16は、エレベーター2の複数のかご4から、接近機会指標値の算出を行っていないかご4を選択する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS305に進む。
【0090】
ステップS305において、接近機会計算部16は、選択したかご4について、移動体移動区間において重みの算出を行っていない停止階を選択する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS306に進む。
【0091】
ステップS306において、接近機会計算部16は、選択した停止階について、利用者の出発階であるか目的階であるかを判定する。例えば、接近機会計算部16は、当該停止階が乗場呼びによる停止階である場合に、当該停止階が利用者の出発階であると判定する。接近機会計算部16は、当該停止階がかご呼びによる停止階である場合に、当該停止階が利用者の目的階であると判定する。接近機会計算部16は、当該停止階が乗場操作盤3などにおいて指定された目的階である場合に、当該停止階が利用者の目的階であると判定してもよい。当該停止階が利用者の出発階であると判定する場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS307に進む。当該停止階が利用者の目的階であると判定する場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS308に進む。
【0092】
ステップS307において、接近機会計算部16は、選択した停止階である利用者の出発階について、移動体出発階との距離を算出する。接近機会計算部16は、算出した距離に基づいて重みの値を算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS309に進む。
【0093】
ステップS308において、接近機会計算部16は、選択した停止階である利用者の目的階について、移動体目的階との距離を算出する。接近機会計算部16は、算出した距離に基づいて重みの値を算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS309に進む。
【0094】
ステップS309において、接近機会計算部16は、選択したかご4について、移動体移動区間において重みの算出をまだ行っていない停止階があるかを判定する。未算出の停止階がある場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS305に進む。一方、移動体移動区間における全ての停止階について重みの算出を行った場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS310に進む。
【0095】
ステップS310において、接近機会計算部16は、選択したかご4について、算出した重みの値の総和を集計する。接近機会計算部16は、集計した重みの総和を、当該かご4についての接近機会指標として算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS311に進む。
【0096】
ステップS311において、接近機会計算部16は、接近機会指標値の算出をまだ行っていないかご4があるかを判定する。未算出のかご4がある場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS304に進む。一方、全てのかご4について接近機会指標値の算出を行った場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS312に進む。
【0097】
ステップS312において、割当決定部17は、移動体移動区間において算出した重みの総和値が最も少ないかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを表す制御情報を、エレベーター2の例えば制御装置7に出力する。割当決定部17は、移動体9または当該移動体9を遠隔制御する移動体制御装置に、決定した割当てを表す情報を通知する。その後、呼び管理装置10の処理は、終了する。
【0098】
以上に説明したように、実施の形態3に係る呼び管理装置10の接近機会計算部16は、各々のかご4について、移動体移動区間における利用者の出発階ごとに移動体出発階との距離に関して単調減少な重みを算出する。また、接近機会計算部16は、各々のかご4について、移動体移動区間における利用者の目的階ごとに移動体目的階との距離に関して単調減少な重みを算出する。接近機会計算部16は、当該かご4について算出した重みの総和を用いて接近機会指標値を算出する。割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4により優先して移動体9の呼びを割り当てる。このように、利用者の乗車後または降車前における移動体9および利用者が同乗する区間の長さを考慮した上で移動体9の呼びのかご4への割当てが決定されるので、移動体9と利用者との接近機会がより効果的に低減される。
【0099】
なお、接近機会計算部16は、利用者の乗降人数に基づく重みを組み合わせて接近機会指標値を算出してもよい。例えば、接近機会計算部16は、乗降人数に関して単調増加であり、かつ、利用者の出発階および移動体出発階の距離に関して単調減少な重みを算出してもよい。同様に、接近機会計算部16は、乗降人数に関して単調増加であり、かつ、利用者の目的階および移動体目的階の距離に関して単調減少な重みを算出してもよい。このような重みは、例えば、乗降人数に基づく重みと階床間の距離に基づく重みとの積または和などによって表されるものであってもよい。接近機会計算部16は、これらの重みの総和を用いて接近機会指標値を算出する。
【0100】
実施の形態4.
実施の形態4において、実施の形態1から実施の形態3で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態4で説明しない特徴については、実施の形態1から実施の形態3で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0101】
この例において、接近機会計算部16は、利用者ごとの利用者移動区間および移動体移動区間が重複する区間に基づいて接近機会指標値を算出する。利用者の利用者移動区間は、当該利用者の出発階から当該利用者の目的階までの区間である。利用者の利用者移動区間は、例えば移動区間判定部15によって判定される。
【0102】
この例において、制御装置7は、利用者ごとにエレベーター2の呼びを、出発階および目的階の組を含む情報として受け付ける。例えば、利用者の目的階を指定した乗場呼びの操作を乗場操作盤3が受け付けるときに、当該操作は利用者ごとに行われる。この場合に、制御装置7は、利用者ごとに呼びの情報を受け付ける。また、利用者による呼びの操作が当該利用者の所持する携帯情報端末などを通じて行われるときに、制御装置7は、利用者ごとに呼びの情報を受け付ける。
【0103】
図10は、実施の形態4に係るエレベーターシステム1における利用者移動区間と移動体移動区間との重複を説明する図である。
【0104】
エレベーター2は、A号機のかご4およびB号機のかご4を含む。この例において、移動体9は、移動体出発階Xからその上方の移動体目的階Yまで移動する。A号機のかご4に、移動体出発階Xより下方の停止階A1を出発階とし、移動体目的階Yより上方の停止階A2を目的階とする利用者の呼びが割り当てられている。B号機のかご4に、移動体出発階Xより上方の停止階B1を出発階とし、移動体目的階Yより下方で停止階B1より上方の停止階B2を目的階とする利用者の呼びが割り当てられている。
【0105】
このとき、A号機を利用する利用者の利用者移動区間および移動体移動区間が重複する区間は、移動体出発階Xから移動体目的階Yまでの区間となる。当該区間の長さLAは、例えばこれらの階床差などによって表される。また、B号機を利用する利用者の利用者移動区間および移動体移動区間が重複する区間は、停止階B1から停止階B2までの区間となる。当該区間の長さLBは、例えばこれらの階床差などによって表される。この例において、長さLAは長さLBより長い。すなわち、A号機を利用する利用者の利用者移動区間および移動体移動区間が重複する区間は、B号機を利用する利用者の利用者移動区間および移動体移動区間が重複する区間より長い。このとき、A号機およびB号機においてかご4への乗車人数などの条件が同一であったとしても、移動体9および利用者が同乗する区間の長さにより、A号機のかご4における接近機会はB号機のかご4における接近機会より増加しうる。このため、接近機会計算部16は、A号機のかご4についての重みがB号機のかご4についての重みより大きくなるように、例えば次のように重みの算出を行う。
【0106】
接近機会計算部16は、各々のかご4について、利用者移動区間が移動体移動区間と重複する利用者ごとに、当該重複する区間の長さに関して単調増加な正の重みを算出する。接近機会計算部16は、当該かご4について算出した重みの総和を接近機会指標値として算出する。ここで、重複する区間の長さに関して単調増加な重みは、例えば当該区間の長さに正比例する値、または当該区間の長さ自体であってもよいし、当該区間の長さが増えるにつれて増加するその他の単調増加関数によって与えられる値であってもよい。接近機会計算部16は、このように算出した重みの総和を、接近機会指標値として算出する。
【0107】
割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4に、より優先して移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、例えば、移動体移動区間における接近機会指標値が最も小さいかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを行わせる制御信号を、例えば第2通信部14などを通じて制御装置7に出力する。割当決定部17は、遠隔監視装置8を介して制御信号を制御装置7に出力してもよい。
【0108】
続いて、
図11を用いて、呼び管理装置10の動作の例を説明する。
図11は、実施の形態4に係る呼び管理装置10の動作の例を示すフローチャートである。
【0109】
ステップS401において、第1通信部13は、移動体9から呼び要求を受信する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS402に進む。
【0110】
ステップS402において、第2通信部14は、各々のかご4が応答する呼びの情報を、エレベーター2から例えば遠隔監視装置8などを通じて収集する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS403に進む。
【0111】
ステップS403において、移動区間判定部15は、移動体9の移動体移動区間を判定する。移動区間判定部15は、各々の利用者の呼びについて利用者移動区間を判定する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS404に進む。
【0112】
ステップS404において、接近機会計算部16は、エレベーター2の複数のかご4から、接近機会指標値の算出を行っていないかご4を選択する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS405に進む。
【0113】
ステップS405において、接近機会計算部16は、選択したかご4に呼びが割り当てられた利用者の呼びで利用者移動区間が移動体移動区間と重複する利用者の呼びのうち、重みの算出を行っていない呼びを選択する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS406に進む。
【0114】
ステップS406において、接近機会計算部16は、選択した呼びについて、利用者移動区間および移動体移動区間の重複する区間の長さを算出する。接近機会計算部16は、算出した区間の長さに基づいて重みの値を算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS407に進む。
【0115】
ステップS407において、接近機会計算部16は、選択したかご4に呼びが割り当てられた利用者の呼びで利用者移動区間が移動体移動区間と重複する利用者の呼びのうち、重みの算出をまだ行っていない呼びがあるかを判定する。未算出の呼びがある場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS405に進む。一方、選択したかご4に呼びが割り当てられた利用者の呼びで利用者移動区間が移動体移動区間と重複する利用者の呼びの全てについて重みの算出を行った場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS408に進む。
【0116】
ステップS408において、接近機会計算部16は、選択したかご4について、算出した重みの値の総和を集計する。接近機会計算部16は、集計した重みの総和を、当該かご4についての接近機会指標値として算出する。その後、呼び管理装置10の処理は、ステップS409に進む。
【0117】
ステップS409において、接近機会計算部16は、接近機会指標値の算出をまだ行っていないかご4があるかを判定する。未算出のかご4がある場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS404に進む。一方、全てのかご4について接近機会指標値の算出を行った場合に、呼び管理装置10の処理は、ステップS410に進む。
【0118】
ステップS410において、割当決定部17は、移動体移動区間において算出した重みの総和値が最も少ないかご4に、移動体9の呼びを割り当てる。割当決定部17は、決定した割当てを表す制御情報を、エレベーター2の例えば制御装置7に出力する。割当決定部17は、移動体9または当該移動体9を遠隔制御する移動体制御装置に、決定した割当てを表す情報を通知する。その後、呼び管理装置10の処理は、終了する。
【0119】
以上に説明したように、実施の形態4に係る呼び管理装置10の接近機会計算部16は、各々のかご4について、利用者移動区間が移動体移動区間と重複する利用者の呼びごとに、これらの区間の重複する区間の長さに関して単調減少な重みを算出する。接近機会計算部16は、当該かご4について算出した重みの総和を用いて接近機会指標値を算出する。割当決定部17は、接近機会指標値がより小さいかご4により優先して移動体9の呼びを割り当てる。このように、利用者の乗車後または降車前における移動体9および利用者が同乗する区間の長さを考慮した上で移動体9の呼びのかご4への割当てが決定されるので、移動体9と利用者との接近機会がより効果的に低減される。
【0120】
以上の説明をまとめると、本開示に係る技術の取りうる構成は、以下に付記として示す各構成などを含む。
(付記1)
施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する移動体通信部と、
前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターから収集する呼び情報収集部と、
前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における接近機会指標値を、前記呼び情報収集部が収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について算出する接近機会計算部と、
前記接近機会計算部が算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定部と、
を備える、呼び管理装置。
(付記2)
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、前記接近機会指標値として前記移動体移動区間における停止階の数を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
付記1に記載の呼び管理装置。
(付記3)
前記複数のかごの各々について、乗場から乗り込む乗車人数を算出する乗車人数計算部
を備え、
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、前記移動体移動区間における停止階ごとに前記乗車人数計算部が算出した乗車人数に関して単調増加な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
付記1に記載の呼び管理装置。
(付記4)
前記複数のかごの各々について、乗場に降りる降車人数を算出する降車人数計算部
を備え、
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、前記移動体移動区間における停止階ごとに前記降車人数計算部が算出した降車人数に関して単調増加な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
付記1に記載の呼び管理装置。
(付記5)
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、利用者と前記移動体との同乗距離に関して単調増加するように前記利用者の前記移動体移動区間内の出発階ごとに前記移動体出発階との距離に関して単調減少な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
付記1に記載の呼び管理装置。
(付記6)
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、利用者と前記移動体との同乗距離に関して単調増加するように前記利用者の前記移動体移動区間内の目的階ごとに前記移動体目的階との距離に関して単調減少な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
付記1に記載の呼び管理装置。
(付記7)
前記接近機会計算部は、前記複数のかごの各々について、出発階および目的階の間の利用者移動区間が前記移動体移動区間と重複する利用者の呼びごとに前記利用者移動区間および前記移動体移動区間の重複する区間の長さに関して単調減少な重みを算出し、当該かごについて算出した重みの総和を用いて前記接近機会指標値を算出し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値がより小さいかごにより優先して前記移動体の呼びを割り当てる、
付記1に記載の呼び管理装置。
(付記8)
前記接近機会計算部は、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値の算出を、前記移動体の他の移動体の呼びの情報を除外して行う、
付記1から付記7のいずれか一項に記載の呼び管理装置。
(付記9)
前記接近機会計算部は、予め設定された時間ごとに、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値を更新し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値が更新されるときに前記移動体の呼びの割当てを更新する、
付記1から付記8のいずれか一項に記載の呼び管理装置。
(付記10)
前記接近機会計算部は、前記呼び情報収集部が新たな呼びの情報を収集するときに、前記移動体の前記移動体移動区間における前記接近機会指標値を更新し、
前記割当決定部は、前記接近機会指標値が更新されるときに前記移動体の呼びの割当てを更新する、
付記1から付記8のいずれか一項に記載の呼び管理装置。
(付記11)
施設に設けられ前記施設の複数の階床の間を走行する複数のかごと、
前記施設を移動し前記複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する移動体通信部と、
前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を収集する呼び情報収集部と、
前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集部が収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について判定する接近機会計算部と、
前記接近機会計算部が算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定部と、
を備える、エレベーターシステム。
(付記12)
施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置からコンピュータが受信する受信ステップと、
前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターからコンピュータが収集する呼び情報収集ステップと、
前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集ステップにおいて収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々についてコンピュータが算出する接近機会計算ステップと、
前記接近機会計算ステップにおいて算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかをコンピュータが決定する割当決定ステップと、
を備える、呼び管理方法。
(付記13)
コンピュータに、
施設を移動し前記施設に設けられたエレベーターの複数のかごの各々に乗車可能な移動体についての移動体出発階および移動体目的階の情報を含む前記移動体の呼び要求を、前記移動体または前記移動体を制御する移動体制御装置から受信する受信ステップと、
前記複数のかごの各々が応答する呼びの情報を前記エレベーターから収集する呼び情報収集ステップと、
前記移動体出発階および前記移動体目的階の間の前記移動体の移動体移動区間における利用者と前記移動体との接近の機会の程度を示す指標値である接近機会指標値を、前記呼び情報収集ステップにおいて収集した呼びの情報に基づいて、前記複数のかごの各々について算出する接近機会計算ステップと、
前記接近機会計算ステップにおいて算出した前記複数のかごの各々についての前記接近機会指標値に基づいて、前記移動体の呼びを前記複数のかごのうちのいずれのかごに割り当てるかを決定する割当決定ステップと、
を実行させる、呼び管理プログラム。
【符号の説明】
【0121】
1 エレベーターシステム、 2 エレベーター、 3 乗場操作盤、 4 かご、 5 かご操作盤、 6 秤装置、 7 制御装置、 8 遠隔監視装置、 9 移動体、 10 呼び管理装置、 11 通信部、 12 管理処理部、 13 第1通信部、 14 第2通信部、 15 移動区間判定部、 16 接近機会計算部、 17 割当決定部、 18 乗降人数計算部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 専用ハードウェア
【要約】 (修正有)
【課題】移動体がエレベーターを利用することによる利用者への影響を緩和できる呼び管理装置、エレベーターシステム、呼び管理方法、および呼び管理プログラムを提供する。
【解決手段】エレベーターシステムの呼び管理装置10において、第1通信部13は、移動体9からその出発階および目的階の情報を含む呼び要求を受信する。第2通信部14は、各々のかごが応答する呼びの情報をエレベーターから収集する。接近機会計算部16は、移動体9の出発階および目的階の間の移動区間における利用者と移動体9との接近の機会の程度を示す接近機会指標値を、第2通信部14が収集した呼びの情報に基づいて、各々のかごについて算出する。割当決定部17は、接近機会計算部16が算出した各々のかごについての接近機会指標値に基づいて、移動体9の呼びをいずれのかごに割り当てるかを決定する。
【選択図】
図2