(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】内燃機関の冷却構造
(51)【国際特許分類】
F02F 1/14 20060101AFI20230808BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
F02F1/14 A
F01P3/02 A
F01P3/02 M
F01P3/02 P
F02F1/14 Z
(21)【出願番号】P 2022546160
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027988
(87)【国際公開番号】W WO2022049936
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020146595
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】高谷 航
(72)【発明者】
【氏名】松井 知史
(72)【発明者】
【氏名】中野 隼
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243414(JP,A)
【文献】特開2009-264286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00~ 1/42
F01P 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダボアの周囲を囲んでシリンダブロック及びシリンダヘッドの内部に形成されたウォータジャケットと、
前記シリンダブロック側の前記ウォータジャケットの内部に配置されるスペーサと、
前記シリンダブロック側の前記ウォータジャケットにおいて、前記シリンダボアの拡径方向に前記ウォータジャケットを拡大した入口部と、
前記シリンダブロック側
に設けられ前記入口部に冷媒を導入する第一導入口と、
を備え、
前記スペーサは、
前記スペーサの前記シリンダブロック側の前記ウォータジャケット内に位置する箇所から前記入口部の内部に進入するとともに前記第一導入口
よりも前記シリンダヘッド側に位置する堰部と、前記堰部に立設される
とともに冷媒の流通方向に沿って延びる複数のリブと、を有
し、
前記複数のリブは、平行に配置されている
ことを特徴とする、内燃機関の冷却構造。
【請求項2】
前記シリンダブロック側の前記ウォータジャケットと前記シリンダヘッド側の前記ウォータジャケットとを連通させる第二導入口を備え、
前記堰部は、前記第一導入口と前記第二導入口との間に配置されて、前記第一導入口から流入した冷媒が前記第二導入口から直接流出することを抑制し、
前記リブは、前記堰部における前記第二導入口側の面に立設されて、前記第二導入口側の冷媒を整流する
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項3】
前記第二導入口は、前記堰部の前記シリンダヘッド側に位置し、
前記堰部は、前記第一導入口から流入した冷媒を前記シリンダボアの周面に沿う方向へ誘導し、
前記誘導された冷媒は、前記シリンダボアの周面を循環し前記堰部の前記シリンダヘッド側へ流入する
ことを特徴とする、請求項2記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項4】
前記堰部の前記シリンダヘッド側の面は、冷媒の流れ方向下流側に向かうにつれて前記シリンダヘッド側に傾斜するように形成される
ことを特徴とする、請求項3記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項5】
前記スペーサは、前記堰部における前記第二導入口側の面に立設されて前記第二導入口側の冷媒が前記第一導入口側へと逆流することを防ぐ壁部を有
し、
前記壁部は、冷媒の流れ方向において前記リブの上流側に位置する
ことを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項6】
前記リブは、前記シリンダヘッド側から見て前記堰部の前記シリンダヘッド側を流れる冷媒の流れ方向に沿って直線状に延出する形状に形成される
ことを特徴とする、請求項2~5のいずれか1項に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項7】
前記第二導入口は、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとに挟装されるガスケットに形成されるとともに上面視で複数の前記リブの間に配置される
ことを特徴とする、請求項2~6のいずれか1項に記載の内燃機関の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロック及びシリンダヘッドの内部にウォータジャケットが形成された内燃機関の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のシリンダボアの周囲に形成されたウォータジャケットの内部にスペーサを挿入することで、冷媒(例えばエンジン冷却水)の流れを制御する技術が知られている。例えば、ウォータジャケット内における冷媒の流通方向や流速をスペーサで調節し、複数のシリンダボアを均等に冷却できるようにした冷却構造が提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第6315022号公報
【文献】日本国特許第6052134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ウォータジャケット内に冷媒を導入するための導入口の位置やウォータジャケットの形状によっては冷媒の流れに偏りが生じうる。例えば、シリンダブロック側のウォータジャケットに導入された冷媒の多くがそのままシリンダヘッド側へと流出してしまい、シリンダボアの冷却効率が低下することがある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で冷媒による冷却効率を改善できるようにした内燃機関の冷却構造を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の内燃機関の冷却構造は、内燃機関のシリンダボアの周囲を囲んでシリンダブロック及びシリンダヘッドの内部に形成されたウォータジャケットと、ウォータジャケットの内部に配置されるスペーサと、シリンダブロック側のウォータジャケットに冷媒を導入する第一導入口と、を備える。スペーサには、第一導入口のシリンダヘッド側に位置する堰部と、堰部に立設されるリブと、が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
開示の内燃機関の冷却構造によれば、簡素な構成で冷媒による冷却効率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例としての冷却構造が適用された内燃機関の分解斜視図である。
【
図3】
図2に示すスペーサの要部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.構成]
図1は、実施例としての冷却構造が適用された内燃機関1の構成を説明するための模式的な分解斜視図である。この内燃機関1は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのエンジン(本例では四気筒エンジン)であり、車両のエンジンルーム内に搭載される。
【0010】
内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2に固定されるシリンダヘッド3と、を備える。シリンダブロック2には、その内部が燃焼室となる筒状のシリンダボア4が複数(本例では四つ)並んで形成される。シリンダヘッド3には燃焼室の上面をなす天井面部5が形成される。シリンダボア4の形状は例えば円筒状であり、天井面部5の形状は例えば円錐状である。天井面部5には図示しない吸気ポートや排気ポートが接続される。シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間にはガスケット8が挟装される。
【0011】
ガスケット8は、各気筒の気密と、冷却水及び潤滑油の液密を確保する機能を有している。ガスケット8には、各シリンダボア4に対応する位置に穿孔された複数の貫通孔31と、各貫通孔31の周囲に穿孔された、貫通孔31よりも小さな複数の連通孔32と、が設けられる。複数の貫通孔31は、シリンダボア4と天井面部5とを連通する。複数の連通孔32は、後述するように、シリンダブロック2に設けられるウォータジャケット6と、シリンダヘッド3に設けられるウォータジャケット7と、を連通する。
【0012】
シリンダブロック2には、シリンダボア4の周囲を囲むウォータジャケット6が形成される。このウォータジャケット6は、シリンダブロック2の上面側(シリンダヘッド3が配置される側)に開放された形状である。
【0013】
また、シリンダヘッド3には、天井面部5や図示しない吸気ポート,排気ポートなどの周囲を囲むウォータジャケット7が形成される。このウォータジャケット7は、シリンダヘッド3の下面側(シリンダブロック2が配置される側)に開放された形状である。
【0014】
ウォータジャケット6,7の内部には冷媒(例えばエンジン冷却水)が流通し、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3が冷媒によって冷却される。また、シリンダブロック2側のウォータジャケット6は、ガスケット8に穿孔された複数の連通孔32を介してシリンダヘッド3側のウォータジャケット7と連通している。
【0015】
図2に示すように、シリンダブロック2の吸気側には、ウォータジャケット6への冷媒の流入口となる入口部9が設けられる。なお、吸気側とは、上面視で吸気ポートや吸気マニホールドが配置される側であり、
図1及び
図2において符号Aで示される側である。また、排気側とは、上面視で排気ポートや排気マニホールドが配置される側であり、
図1及び
図2において符号Bで示される側である。
【0016】
入口部9は、シリンダボア4の拡径方向にウォータジャケット6を拡大した形状に形成される部分である。入口部9の位置は、
図2に示すように、列設された複数のシリンダボア4のうち端部に位置するシリンダボア4の吸気側Aに配置される。
【0017】
シリンダブロック2には、その外周面と入口部9とを繋ぐ第一導入口21が設けられる。第一導入口21は、シリンダブロック2側のウォータジャケット6に冷媒を導入するための通路となる部位である。第一導入口21の位置は、
図1に示すように、シリンダブロック2の最上面2aよりも下方へ離隔した位置に設定される。また、ガスケット8に穿孔される連通孔32のうち、入口部9の直上方に配置されるものを第二導入口22と呼ぶ。第二導入口22は、シリンダブロック2側のウォータジャケット6とシリンダヘッド3側のウォータジャケット7とを連通させる連通孔32であって、上面視で入口部9に重なる位置に設けられる。
【0018】
なお、シリンダブロック2側のウォータジャケット6とシリンダヘッド3側のウォータジャケット7とを連通させる第二導入口22には、ガスケット8に穿孔される連通孔32以外の孔や開口部が含まれる。例えば、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3にこれらを連通させる通路を形成し、その通路の接合箇所を第二導入口22と呼称してもよい。したがって、第二導入口22は必ずしもガスケット8には形成されず、言い換えればガスケット8のない内燃機関1においても第二導入口22が存在しうる。
【0019】
ウォータジャケット6の内部には、冷媒の流れを制御するための部材であるスペーサ10が配置される。
図1に示す内燃機関1には、排気側スペーサ11と吸気側スペーサ12とを有するスペーサ10が設けられる。排気側スペーサ11は、シリンダボア4よりも排気側Bのウォータジャケット6内に挿入されるスペーサである。吸気側スペーサ12は、シリンダボア4よりも吸気側Aのウォータジャケット6内に挿入されるスペーサである。排気側スペーサ11及び吸気側スペーサ12の概形は、ウォータジャケット6の内部形状に対応する曲面形状であって、上面視で複数の筒面を波形に連結した形状に準えられる。
図2中の黒矢印は、ウォータジャケット6の内部における冷媒の流通方向である。
【0020】
排気側スペーサ11は、ウォータジャケット6の内部における冷媒の流通方向上流側、すなわち入口部9に向かうにつれて(
図1中、右上から左下に向かうにつれて)高さが低くなるように形成されている。これにより、冷媒が排気側スペーサ11のシリンダヘッド3側(上方)へ流れやすくなっている。なお、排気側スペーサ11のウォータジャケット6の内部における冷媒の流通方向下流側(
図1中、右上側)は、吸気側スペーサ12の高さと同程度となっており、ウォータジャケット6の深さよりも低く設定されている。
【0021】
吸気側スペーサ12は、ウォータジャケット6から入口部9の内部へと進入した形状に形成される。
図3~
図5に示すように、吸気側スペーサ12には、堰部13,リブ14,壁部15,及び段丘部16が設けられる。
【0022】
堰部13は、第一導入口21よりもシリンダヘッド3側に位置する面状の部位である。本実施例では、入口部9の内部における第一導入口21と第二導入口22との間に堰部13が設けられる。堰部13は、第一導入口21から第二導入口22への最短経路を遮る位置に配置される。堰部13を設けることで、第一導入口21から流入した冷媒が直接的にシリンダヘッド3側(上方)へと流出することが抑制され、第二導入口22から流出することが抑制される。
【0023】
本実施例の堰部13は吸気側スペーサ12の高さよりも低い位置に設けられ、その形状は、上面視で入口部9の形状に沿った形状に形成される。堰部13は、好ましくは冷媒の流通方向下流側に向かうにつれてシリンダヘッド3側(上方)に傾斜した形状とされ、より好ましくはその勾配が徐々に急になるような滑らかな曲面形状とされる。堰部13により、
図3に示す状態において、第一導入口21から流入した冷媒は堰部13の下面側に沿って流通し、黒矢印で示す左回転方向、すなわちシリンダブロック2の排気側Bへと徐々に旋回しながら左上方向へと誘導される。
【0024】
このように、堰部13は、第一導入口21からシリンダボア4の径方向内側に向かい入口部9に流入した冷媒の流れをシリンダボア4の周方向へと屈曲させ、また、入口部9において第二導入口22側(上面側)へと向かう冷媒の流れをシリンダボア4の周方向へと屈曲させて、シリンダブロック2側のウォータジャケット6内で循環させるように機能する。左回転方向に誘導された冷媒の一部は、スペーサ10よりもシリンダヘッド3側(上方)を流れてシリンダボア4の周囲を循環し、堰部13の第二導入口22側(上面側)へと至る。
【0025】
リブ14は、堰部13における第二導入口22側の面(上面側)に立設される板状の部位であり、堰部13よりも第二導入口22側の冷媒を整流するものである。ここで、シリンダボア4の周囲を循環してきた冷媒の流れを
図3中に白抜き矢印で示す。リブ14は、この冷媒の流れを第二導入口22に向かって誘導する形状である。本実施例のリブ14は、二枚の平板を平行に並べたものであり、冷媒が二枚の平板の間を通って第二導入口22へと流入するようになっている。リブ14は、上面視で第二導入口22から冷媒の流通方向上流側に向かって直線状に延出する形状である。
【0026】
本実施形態のリブ14は、上面視でウォータジャケット6と入口部9との境界と、第二導入口22と、を結ぶ線に平行に延びている。また、第二導入口22は、上面視で二枚のリブ14の間に配置される。なお、リブ14は、堰部13とウォータジャケット6及び入口部9との間の隙間から堰部13における第二導入口22側の面へとシリンダボア4の周囲を循環せずに流入した冷媒の流れを整流することで、第二導入口22付近の冷媒の流れを乱さないようにする作用も有する。
【0027】
壁部15は、堰部13における第二導入口22側の面(上面側)に立設される板状の部位であり、堰部13よりも第二導入口22側の冷媒が第一導入口21側へと逆流することを防止する。この壁部15は、リブ14よりも入口部9の上流側(本実施形態では堰部13の冷媒の流通方向上流側端縁)に配置され、堰部13よりも第二導入口22側から堰部13と入口部9との間の隙間を通り第一導入口21側へと逆流しようとした冷媒を、
図3中に白抜き矢印で示すようにリブ14に沿った方向へと案内するように機能する。
【0028】
段丘部16は、堰部13における第二導入口22側の面(上面側)において、堰部13よりも上方へ膨出した形状に形成される段丘状の部位である。段丘部16は、上面視で入口部9から張り出して、入口部9より冷媒の流通方向下流側のシリンダブロック2側のウォータジャケット6まで至る。
図4に示すように、段丘部16の上面は平面状に形成されて、ガスケット8の下面と面接触する。また、段丘部16は、堰部13よりも第二導入口22側の冷媒が再びシリンダボア4の周面に沿う方向へと流出することを阻止するとともに、入口部9より冷媒の流通方向下流側のウォータジャケット6を流通する冷媒が堰部13よりも第二導入口22側へ流れ込まないように機能する。段丘部16を設けることで、シリンダボア4の周囲を循環してきた冷媒が第二導入口22へと流入しやすくなる。第二導入口22を介してシリンダヘッド3側のウォータジャケット7の内部へ流入した冷媒は、図示しない流出口を通って内燃機関1の外部へと排出される。
【0029】
[2.作用,効果]
(1)上記の内燃機関1の冷却構造では、第一導入口21の上方にスペーサ10の堰部13が配置される。第一導入口21の上方に堰部13を設けることで、第一導入口21から流入した冷媒がそのままシリンダヘッド3側へと流れることを抑制でき、冷媒をシリンダブロック2側のウォータジャケット6内で循環させることが容易となる。また、堰部13に立設されるリブ14を有することで、堰部13付近の冷媒の流れを整流することができる。したがって、簡素な構成で冷媒による冷却効率を改善できる。
【0030】
(2)上記の冷却構造には、シリンダブロック2側のウォータジャケット6とシリンダヘッド3側のウォータジャケット7とを連通させる第二導入口22が設けられ、第一導入口21と第二導入口22との間に堰部13が配置される。堰部13を設けることで、第一導入口21から流入した冷媒を第二導入口22から直接流出しにくくすることができ、冷媒をシリンダブロック2側のウォータジャケット6内で循環させることが容易となる。したがって、簡素な構成で冷媒による冷却効率を改善できる。これに加えて、堰部13の第二導入口22側にはリブ14が立設されるため、堰部13の上面(第二導入口22側の面)における冷媒を整流することができ、冷媒が効率よく第二導入口22を通ってシリンダヘッド3側のウォータジャケット7へと流れるようにすることができる。したがって、簡素な構成で冷媒による冷却効率を改善できる。
【0031】
(3)上記の第二導入口22は、堰部13のシリンダヘッド3側(上方)に位置し、堰部13は、第一導入口21から流入した冷媒をシリンダボア4の周面に沿う方向へ誘導する形状に形成される。また、堰部13によって誘導された冷媒は、シリンダボア4の周面を循環し堰部13のシリンダヘッド3側へ流入する。これにより、シリンダボア4の周面に沿って冷媒を循環させることが容易となり、冷媒による冷却効率をさらに改善できる。
【0032】
(4)また、堰部13のシリンダヘッド3側の面(上面)は、冷媒の流れ方向下流側に向かうにつれてシリンダヘッド側に傾斜するように形成される。これにより、シリンダボア4の周囲を循環してきた冷媒を効率よくスムーズに第二導入口22へと流すことができ、冷却効率を改善できる。なお、堰部13の表面のうち、シリンダヘッド3側の面(上面)だけでなくシリンダブロック2側の面(下面)も併せて傾斜した形状にしてもよい。言い換えれば、上記の堰部13を第一導入口21から流入した冷媒の流れに対して傾斜した曲面形状に形成してもよい。これにより、例えば
図3に示す状態において、第一導入口21から流入した冷媒を黒矢印で示す左回転方向へと徐々に旋回させつつ左上方向へと誘導することができ、冷媒による冷却効率をさらに改善できる。
【0033】
(5)上記の吸気側スペーサ12には壁部15が設けられる。壁部15は、堰部13における第二導入口22側の面に立設されて、第二導入口22側の冷媒が第一導入口21側へと逆流することを防止している。このような壁部を設けることで、シリンダボア4の周囲を循環してきた冷媒をリブ14に沿った方向へと流れやすくすることができ、その冷媒を第二導入口22の近傍へと誘導することができる。したがって、簡素な構成で冷媒による冷却効率を改善できる。
【0034】
(6)上記のリブ14は、
図3に示すように、上面視で堰部13のシリンダヘッド3側の面(上面)を流れる冷媒の流れ方向に沿って直線状に延出する形状である。例えば
図3に示すように、リブ14は、第二導入口22から第二導入口22の径方向外側に向かって直線状に延出する形状である。これにより、第二導入口22の近傍における冷媒の流れを安定させることができ、簡素な構成で冷媒による冷却効率を改善できる。
【0035】
(7)上記の実施例では、リブ14が上面視で間隔をあけて複数並設される。また、第二導入口22がシリンダブロック2とシリンダヘッド3とに挟装されるガスケット8に形成されるとともに、上面視で複数のリブ14の間に配置される。このように、複数のリブ14を並設することで、冷媒の流れが乱れることを防止することができ、冷媒の流れやすさを高めることができる。また、複数のリブ14の間に第二導入口22を配置することで、冷媒をシリンダヘッド3側へ流れやすくすることができ、冷却効率をさらに改善できる。
【0036】
[3.変形例]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせることができる。例えば、上記の実施例では入口部9がシリンダブロック2の吸気側Aに設けられた内燃機関1を例示したが、入口部9の位置はこれに限定されない。入口部9が排気側Bに設けられた内燃機関1においては、排気側スペーサ11に堰部13やリブ14を設けることで、上記の実施例と同様の作用,効果を実現することができる。
【0037】
本出願は、2020年9月1日出願の日本特許出願2020-146595に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0038】
1 内燃機関
2 シリンダブロック
2a 最上面
3 シリンダヘッド
4 シリンダボア
5 天井面部
6 ウォータジャケット
7 ウォータジャケット
8 ガスケット
9 入口部
10 スペーサ
11 排気側スペーサ
12 吸気側スペーサ
13 堰部
14 リブ
15 壁部
16 段丘部
21 第一導入口
22 第二導入口
31 貫通孔
32 連通孔