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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】車両用開閉体
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20230808BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B60J5/10 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022547416
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2021025965
(87)【国際公開番号】W WO2022054390
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020152647
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】高見 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雄高
(72)【発明者】
【氏名】上原 直哉
(72)【発明者】
【氏名】林 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 晋吾
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-149991(JP,A)
【文献】特開2011-057041(JP,A)
【文献】特開2011-194947(JP,A)
【文献】特開2017-210175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口部に回動可能に取り付けられ、前記開口部を開閉する車両用開閉体であって、
外板を構成するアウターパネルと、
前記アウターパネルと対向して配置されるインナーパネルと、
前記車両用開閉体の回動中心側の端部である基端部に設けられ、前記車両用開閉体を前記車体に連結するヒンジと、
前記車両用開閉体の前記基端部と反対側の端部である揺動端部に設けられ、前記車両用開閉体を前記車体側に係止するラッチと、
前記インナーパネルを補強する補強部材と、
を備え、
前記インナーパネルは、
前記アウターパネルと対向して延びる主面部と、
前記主面部の外周縁から前記アウターパネルに向けて延び、前記ラッチが取り付くラッチ取付部が形成される周面部と、
前記主面部に膨出形成され、前記車両用開閉体の前記基端部側から前記ラッチ取付部に向かって延びるビード部と、
を有し、
前記補強部材は、
前記ラッチ取付部に重ねて接合される板状の第1補強部材と、
一端が前記第1補強部材に固定され、他端が前記主面部の前記ビード部に固定されて、前記主面部と前記ラッチ取付部との間に筋交い状に配置される長尺状の第2補強部材と、
を含む、
車両用開閉体。
【請求項2】
前記第2補強部材は、前記ビード部の延設方向に沿って延びる、
請求項1に記載の車両用開閉体。
【請求項3】
前記第2補強部材は、前記車両用開閉体の厚み方向での幅が前記第1補強部材に向かうにつれて大きくなるように形成される、
請求項1または2に記載の車両用開閉体。
【請求項4】
前記車両用開閉体は、前記車両用開閉体の上端部が前記基端部とされ、前記車両用開閉体の下端部が前記揺動端部とされて、前記車体の後部の開口を上下に開閉するテールゲートであり、
前記ラッチ取付部は、前記車両用開閉体の前記揺動端部側に位置する前記周面部の車幅方向中央部に形成され、
前記ビード部は、前記ラッチ取付部を車幅方向に挟んで一対で設けられ、
前記第2補強部材は、前記ラッチ取付部を車幅方向に挟んで一対で設けられるとともに、それぞれ前記ラッチの車幅方向左右両側で前記ビード部と前記第1補強部材とを連結する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用開閉体。
【請求項5】
一対の前記ビード部は、それぞれ前記主面部の車幅方向両側の側端部近傍から前記ラッチ取付部に向かって下方かつ車幅方向中央側へ斜めに延設される、
請求項4に記載の車両用開閉体。
【請求項6】
前記主面部の上部は、リアウィンドウが取り付けられるガラス開口を形成するサッシ部とされ、
前記ガラス開口の車幅方向左右両側に位置する前記サッシ部の下部には、前記ガラス開口に沿って第3補強部材が設けられ、
前記ビード部は、前記第3補強部材と重なる位置から前記ラッチ取付部へ向かって延設される、
請求項4または5に記載の車両用開閉体。
【請求項7】
前記ビード部は、
長手方向を横切る横断面視において前記主面部から立設される一対の側面と、
一対の前記側面間を繋ぐ頂面と、
を有し、
前記第2補強部材は、
前記横断面視において前記主面部に沿って延びる第1延設面と、
前記車両用開閉体の厚み方向に延びる第2延設面と、
を有し、
前記第2補強部材の他端は、前記第1延設面が前記頂面に、前記第2延設面が前記側面に、それぞれ接合されて前記ビード部に固定される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用開閉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用開閉体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インナーパネルと、アウターパネルと、を備える車両用開閉体が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の車両用開閉体は、インナーパネルの主面部と、ラッチが取り付く側面部と、ラッチ取付部と、ラッチリンフォースと、長尺状のインナーパネルリンフォースと、を有する。ラッチリンフォースは、ラッチ取付部を補強する。インナーパネルリンフォースは、インナーパネルの主面部と側面部との間に、上下方向に沿って設けられている。このインナーパネルリンフォースで、主面部と側面部とを直線状に連結することにより、ラッチ取付部の周辺の剛性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2018-149991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車両用開閉体では、主面部と側面部の間に、長尺状のインナーパネルリンフォースを上下方向に沿って設けている。すなわち、長尺状のインナーパネルリンフォースは、主面部から上下方向に延び側面部に固定され、ラッチリンフォースの両側に配置される。これによって、ラッチ取付部の剛性を確保するために、インナーパネルリンフォースが大型化する。この結果、車両用開閉体の重量が増加する。
【0005】
本開示の課題は、補強部材の軽量化を図りながらラッチ取付部の剛性を確保できる車両用開閉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用開閉体は、車両の開口部に取り付けられ、開口部を開閉する車両用開閉体である。車両用開閉体は、アウターパネルと、インナーパネルと、ヒンジと、ラッチと、補強部材と、を備える。アウターパネルは、外板を構成する。インナーパネルは、アウターパネルと対向して配置される。ヒンジは、車両用開閉体の回動中心側の端部である基端部に設けられ、車両用開閉体を車体に連結する。補強部材は、インナーパネルを補強する。インナーパネルは、主面部と、周面部と、ビード部と、を有する。主面部は、アウターパネルと対向して延びる。周面部は、主面部の外周縁からアウターパネルに向けて延び、ラッチが取り付くラッチ取付部が形成される。ビード部は、主面部に膨出形成され、車両用開閉体の基端部側からラッチ取付部に向かって延びる。補強部材は、板状の第1補強部材と、長尺状の第2補強部材と、を含む。板状の第1補強部材は、ラッチ取付部に重ねて接合される。長尺状の第2補強部材は、主面部とラッチ取付部との間に筋交い状に配置される。
【0007】
この車両用開閉体によれば、ビード部によってインナーパネルの主面部の剛性が高くなる。長尺状の第2補強部材は、このビード部および第1補強部材に固定され、主面部とラッチ取付部との間に筋交い状に配置される。これによって、補強部材の軽量化を図りながら、ラッチ取付部の剛性を確保できる車両用開閉体を提供できる。
【0008】
第2補強部材は、ビード部の延設方向に沿って延びてもよい。
【0009】
この構成によれば、第2補強部材はビード部に沿って延びるとともにラッチ取付部まで延びるため、ラッチ取付部は、ビード部と第2補強部材によって直線状に支えられる。これによって、補強部材を軽量化しながらラッチ取付部の剛性を確保できる。
【0010】
第2補強部材は、車両用開閉体の厚み方向での幅が第1補強部材に向かうにつれて大きくなるように形成されてもよい。
【0011】
この構成によれば、第2補強部材が第1補強部材に向かうにつれて大きくなるため、第2補強部材がラッチ取付部と主面部との間の筋交いとして機能しやすい。これによって、ラッチ取付部の剛性を確保しやすい。
【0012】
車両用開閉体は、車両用開閉体の上端部が基端部とされ、車両用開閉体の下端部が揺動端部とされて車体の後部の開口を上下に開閉するテールゲートであってもよい。ラッチ取付部は、車両用開閉体の揺動端部側に位置する周面部の車幅方向中央部に形成されてもよい。ビード部は、ラッチ取付部を車幅方向に挟んで一対で設けられてもよい。第2補強部材は、ラッチ取付部を車幅方向に挟んで一対で設けられるとともに、それぞれラッチの車幅方向左右両側でビード部と第1補強部材とを連結してもよい。
【0013】
この構成によれば、ラッチ取付部にかかる負荷を車幅方向に一対配置されたビード部および補強部材に伝達できる。これによって、ラッチ取付部の剛性を確保しやすい。
【0014】
一対のビード部は、それぞれ主面部の車幅方向両側の側端部近傍からラッチ取付部に向かって下方かつ車幅方向中央側へ斜めに延設されてもよい。
【0015】
この構成によれば、一対のビード部で主面部の面剛性を効率よく向上させることができる上、ラッチを介して入力された荷重を主面部において比較的伝達効率の高い側端部側に逃がすことができる。
【0016】
主面部の上部は、リアウィンドウが取り付けられるガラス開口を形成するサッシ部とされてもよい。ガラス開口の車幅方向左右両側に位置するサッシ部の下部には、ガラス開口に沿って第3補強部材が設けられてもよい。ビード部は、第3補強部材と重なる位置からラッチ取付部へ向かって延設されてもよい。
【0017】
この構成によれば、ビード部が第3補強部材とラッチ取付部を繋ぐように延ばされているため、ラッチを介して入力された荷重を、サッシ下部を補強する第3補強部材へ逃がすことができる。これによって、ラッチを介して入力された荷重をより効率よく確実に荷重を逃がすことができる。
【0018】
ビード部は、長手方向を横切る横断面視において主面部から立設される一対の側面と、一対の側面間を繋ぐ頂面と、を有してもよい。第2補強部材は、横断面視において主面部に沿って延びる第1延設面と、車両用開閉体の厚み方向に延びる第2延設面と、を有して
もよい。第2補強部材の他端は、第1延設面が頂面に、第2延設面が側面に、それぞれ接合されてビード部に固定されてもよい。
【0019】
この構成によれば、ラッチを介して入力された荷重が確実にビードに伝達される。これによって、第2補強部材およびビード部の両方がラッチを介して入力された荷重を受ける。この結果、補強部材を軽量化しやすい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、補強部材の軽量化を図りながらラッチ取付部の剛性を確保できる車両用開閉体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示に係る実施形態によるインナーパネルを示す図。
図2】本開示に係る実施形態によるインナーパネルにアウターパネルを固定した状態における図1のV―V断面図。
図3】本開示に係る実施形態によるインナーパネルの斜視図。
図4】本開示に係る実施形態による左第2補強部材の拡大斜視図。
図5】本開示に係る実施形態による左ビード部および左第2補強部材の長手方向を横切る横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、車両の前後方向をQと図面に記し、前方をFと記す。また、車両の車幅方向をPと図面に記し、車両の後方からみて右側をRと記す。さらに、車両の上下方向をGと図面に記し、上方をUと記す。
【0023】
図1および図2に示すように、本開示の車両用開閉体1は、車両の開口部(例えば、後部開口C)に取り付けられ、開口部を開閉する。車両用開閉体1は、インナーパネル2と、アウターパネル4(図2参照)と、ラッチ8と、ラッチリンフォース(第1補強部材の一例)8bと、ヒンジ10と、第2補強部材14と、左側部リンフォース(第3補強部材の一例)16aと、右側部リンフォース(第3補強部材の一例)16bと、を備える。
【0024】
ラッチリンフォース8b、第2補強部材14、左側部リンフォース16a、および右側部リンフォース16bは、インナーパネル2を補強するための部材である。なお、図1は、車両の外板を構成するアウターパネル4を取り外した状態の図である。本実施形態では、車両用開閉体1は、車両の後部開口Cにヒンジ10を介して上下に開閉自在に取り付けられるテールゲートである。車両用開閉体1は、インナーパネル2がアウターパネル4と対向して配置されるとともに、インナーパネル2およびアウターパネル4の互いの縁部が接合されることにより中空状に形成される。このため、テールゲートの厚み方向は車両の前後方向Qと一致する。
【0025】
インナーパネル2は、主面部6と、周面部7と、ビード部12と、を有する。インナーパネル2の主面部6、ラッチ取付部8a、ヒンジ取付部10a、およびビード部12は、金属板をプレス加工することによって形成される。アウターパネル4は、インナーパネル2に対向して配置される公知のものであればよく、説明を省略する。
【0026】
主面部6は、アウターパネル4と前後方向Qで対向し、上下方向Gに延びる。主面部6は略矩形の形状であり、主面部6の周囲に外周縁9が形成される。
【0027】
周面部7は、外周縁9からアウターパネル4に向けて前後方向Qに延びる。周面部7には、ラッチ8が取り付くラッチ取付部8aが形成される。周面部7は、下端部(揺動端部の一例)7aと、上端部(基端部の一例)7bと、左端部(側端部の一例)7cと、右端部(側端部の一例)7dと、を含む。左端部7cは、車幅方向Pの左側に位置する。右端部7dは、車幅方向Pの右側に位置する。
【0028】
主面部6の上部の上端部7bよりも下方側には、リアウィンドウを取り付けるためのガラス開口を形成するサッシ部6aが設けられる。主面部6のガラス開口の車幅方向P左右両側に位置するサッシ部6aの下部には、主面部6を補強する左右一対の左側部リンフォース16aおよび右側部リンフォース16bが設けられる。左側部リンフォース16aおよび右側部リンフォース16bは、主面部6の上部から板状の金属板を接合することで形成される。左側部リンフォース16aは、左端部7cから主面部6の車幅方向Pの中央部6cに向けて延びる。右側部リンフォース16bは、右端部7dから主面部6の車幅方向Pの中央部6cに向けて延びる。
【0029】
ラッチ取付部8aは、周面部7の下端部7aに形成される。ラッチ取付部8aには、車両の後部開口Cの周縁に設けられるストライカーC1と係合するラッチ8が取り付く。図3に示すように、ラッチ取付部8aには、ラッチ8が挿通するラッチ開口8dが設けられる。ラッチ取付部8aは、車両の振動、および車両用開閉体1の開け閉めによって負荷を受ける。このため、本実施形態では、ラッチ取付部8aには、ラッチ開口8dの周囲を補強するラッチリンフォース8bが設けられる。
【0030】
図1に示すように、ラッチ取付部8aは、周面部7の車幅方向Pの中央部6cに設けられる。本実施形態では、図2に示すように、主面部6の下端縁9aからアウターパネル4に向けて延びる周面部底面7fが形成される。周面部底面7fの車幅方向Pの中央部6cには、ラッチリンフォース8bが接合されることによってラッチ取付部8aが形成される。より具体的には、ラッチリンフォース8bは、金属製の板状部材を周面部底面7fの形状に合わせることによって形成される。ラッチリンフォース8bは、周面部底面7fの車幅方向Pの中央部6cの上面に重ねて接合されることで、周面部底面7fのラッチ開口8dの周囲を補強する。この補強された部分がラッチ取付部8aとなる。
【0031】
ヒンジ10は、図1に示すように、車両用開閉体1の上端部7bに形成されるヒンジ取付部10aに取り付けられ、車両用開閉体1を車体に連結するとともに、車両用開閉体1を後部開口Cに開閉可能に支持する。ヒンジ取付部10aは、中央部6cを挟んで車幅方向Pに間隔をあけて一対設けられる。本実施形態では、ヒンジ10が取り付く上端部7bが車両用開閉体1の回動中心側の基端部となり、上端部7bと主面部6を挟んで上下方向Gの反対側に配置される下端部7aが揺動する揺動端部として機能する。これによって、車両用開閉体1が上下に揺動して車両の後部開口Cを開閉する。
【0032】
ビード部12は、主面部6に膨出形成され、車両用開閉体1の上端部6b側からラッチ取付部8aに向かって延びる。本実施形態では、ビード部12は、アウターパネル4から離間する方向に主面部6に凹んで形成される。ビード部12は、中央部6cを挟んで車幅方向Pに間隔を隔てて配置される左ビード部12aと、右ビード部12bと、を有する。ビード部12は、例えば、プレス加工によってアウターパネル4から離間する方向に主面部6に凹んで膨出形成される。図3に示すように、左ビード部12aおよび右ビード部12bは、主面部6に沿って斜めに延びる頂面12cと、頂面12cから主面部6まで延びる一対の側面12dと、をそれぞれ有する。より具体的には、一対の側面12dは、ビード部12の長手方向を横切る横断面視において主面部6から立設される(図5参照)。頂面12cは、一対の側面12d間を繋ぐ。
【0033】
図1に示すように、ビード部12は、周面部7の下端部7aと異なる位置からラッチ取付部8aに向かって延びる。本実施形態では、ビード部12は、下端部7aと上端部7bとの間に配置され、かつ、主面部6の車幅方向Pの側方に位置する側端部から、中央部6cに向けて延びる。より具体的には、一対のビード部12は、主面部6の車幅方向P両側の周面部7の左端部7cおよび右端部7d近傍からラッチ取付部8aに向かって下方かつ車幅方向P中央側へ斜めに延設される。すなわち、主面部6の左側部分に形成される左ビード部12aは、左側部リンフォース16aから中央部6cに向かって延びるとともに、ラッチ取付部8aに向けて下方に傾斜して延びる。主面部6の右側部分に形成される右ビード部12bは、右側部リンフォース16bから中央部6cに向かって延びるとともに、ラッチ取付部8aに向けて下方に傾斜して延びる。左ビード部12aと、右ビード部12bとは、中央部6cを挟んで左右対称の形状によって形成される。図1および図3に示すように、左ビード部12aは左側部リンフォース16aと前後方向Qに重なる位置まで延び、左側部リンフォース16aに接合される。同様に、右ビード部12bは右側部リンフォース16bと前後方向Qに重なる位置まで延び、右側部リンフォース16bに接合される。
【0034】
第2補強部材14は、図1に示すように、ラッチ取付部8aを車幅方向Pに挟んで一対で設けられる。一対の第2補強部材14は、それぞれラッチ8の車幅方向P左右両側でビード部12とラッチリンフォース8bとを連結する。より具体的には、第2補強部材14は、ビード部12からラッチ取付部8aまでビード部12の延設方向に沿って延びるとともに、ビード部12およびラッチ取付部8aに固定される。これによって、第2補強部材14は、ビード部12とラッチ取付部8aとの間に筋交い状に配置される。
【0035】
第2補強部材14は、長尺状であり、中央部6cを挟んで車幅方向Pに間隔を隔てて配置された左第2補強部材14aおよび右第2補強部材14bを有する。本実施形態では、図3に示すように、第2補強部材14は、ビード部12の延びる方向に沿って直線状に延びる。左第2補強部材14aおよび右第2補強部材14bのラッチリンフォース8b側の端部(本実施形態では下端、一端の一例)は、ラッチ取付部8aに接合されたラッチリンフォース8bの固定面8cに、接合または締結によって固定される。より具体的には、左第2補強部材14aおよび右第2補強部材14bは、ビード部12からラッチ取付部8aに向けて、それぞれ下方に向って延びる。また、左第2補強部材14aおよび右第2補強部材14bは、車幅方向Pの中央部6cに向けて、ビード部12の傾斜に沿って傾斜して延びる。左第2補強部材14aおよび右第2補強部材14bのビード部12側の端部(本実施形態では上端、他端の一例)は、直線状に形成された左ビード部12aおよび右ビード部12bに、接合または締結によって固定される。
【0036】
図4に示す第2補強部材14は、左第2補強部材14aである。なお、本実施形態では、右第2補強部材14bは、左第2補強部材14aと左右対称形状のため説明を省略する。図4に示すように、左第2補強部材14aは、第1延設面14cと、第2延設面14dと、取付面14eと、回り止め14fと、を有する。第1延設面14cは、主面部6に沿って延びる。第2延設面14dは、アウターパネル4に向かって車両用開閉体1の厚み方向に延びる。取付面14eは、ラッチリンフォース8bに沿って延びる。取付面14eは、ラッチリンフォース8bに凹んで形成された固定面8cに接合または締結によって固定される。回り止め14fは、第1延設面14cから車幅方向Pに延び、主面部6と接することで、左第2補強部材14aが上下方向Gに回転することを防止する。
【0037】
第1延設面14cは、ビード部12の頂面12cに沿って延びる。図5は、左第2補強部材14aのビード部12側の端部における、左ビード部12aおよび左第2補強部材14aの長手方向を横切る横断面図である。図5は、左ビード部12aと左第2補強部材14aとの固定状態を示している。図5に示すように、左第2補強部材14aの第1延設面14cは、左第2補強部材14aのビード部12側の端部において、ビード部12の頂面12cと接合または締結によって固定される。
【0038】
図4および図5に示すように、第2延設面14dは、ビード部12の側面12dに沿って延び、第1延設面14cとL字型の形状をなす。左第2補強部材14aの第2延設面14dは、左第2補強部材14aのビード部12側の端部において、ビード部12の側面12dに接合される。第2補強部材14は、車両用開閉体1の厚み方向(本実施形態では前後方向Q)での幅がラッチリンフォース8bに向かうにつれて大きくなるように形成される。本実施形態では、第2延設面14dがラッチリンフォース8bに向かうにつれて、面積が大きくなる。すなわち、第2延設面14dは、下方に向かうにつれてアウターパネル4に向けて延びる方向の長さが長くなる略三角形の形状である。第2延設面14dは、略三角形の底辺が取付面14eと繋がる。このように、第2延設面14dは、第1延設面14cおよび取付面14eと繋がることで、第1延設面14cと取付面14eとの間の筋交いとして機能する。また、左第2補強部材14aは、主面部6およびラッチ取付部8aに固定されるため、左第2補強部材14aが主面部6およびラッチ取付部8aの筋交いとして機能する。
【0039】
このように、第2補強部材14とビード部12を直線状に設けて、ラッチ取付部8aと左側部リンフォース16aおよび右側部リンフォース16bとを直線状に結ぶことで、ラッチ取付部8aがビード部12および第2補強部材14の両方によって押さえられる。これによって、一対のビード部12によって主面部6の面剛性を効率よく向上させることができる。さらに、ラッチ8を介して入力された荷重は、主面部6において他の部分よりも剛性が高く、荷重が比較的効率的に伝達する側端部側に逃げる。この結果、特許文献1のテールゲートのように第2補強部材14がラッチ取付部8aを挟んで車幅方向Pの両側に設けられるよりも、第2補強部材14を小さくできる。このため、第2補強部材14を軽量化しながらも、剛性を確保できる。また、車両用開閉体1をこのような構造とすることで、ラッチ取付部8aにかかる負荷をビード部12および第2補強部材14の両方で受け、左側部リンフォース16aおよび右側部リンフォース16bに伝達することができる。これによって、ラッチ8を介して入力された荷重をより効率よく確実に側端部に逃がすことができる。さらに、第2補強部材14は、筋交いとして機能するため、ラッチ取付部8aの剛性を確保しやすい。この結果、ラッチリンフォース8b、第2補強部材14、左側部リンフォース16a、および右側部リンフォース16bを含むインナーパネル2を補強する補強部材の全てが軽量化しやすい。
【0040】
以上説明した通り、本開示によれば、軽量化を図りながらラッチ取付部8aの剛性を確保できる車両用開閉体1を提供できる。
【0041】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0042】
(a)上記実施形態では、主面部6の左側部に形成される左ビード部12aは、左側部リンフォース16aから中央部6cに向かって延びるとともに、ラッチ取付部8aに向けて下方に傾斜して延びる例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。ビード部12は、基端部側からラッチ取付部8aに向かって形成されればよく、例えば、主面部6の剛性を高めるために上下方向に延びるビードであってもよい。右ビード部12bについても同様である。
【0043】
(b)上記実施形態では、左ビード部12aと、右ビード部12bとは、中央部6cを挟んで左右対称の形状によって形成される例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。左ビード部12aと、右ビード部12bとは、それぞれ別の形状であってもよい。
【0044】
(c)上記実施形態では、ラッチ取付部8aは、主面部6の車幅方向Pの中央部6cに設けられる例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。ラッチ取付部8aは、中央部6cから左右方向のいずれか一方にオフセットして配置されてもよい。
【0045】
本出願は、2020年9月11日出願の日本特許出願2020-152647に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0046】
1:車両用開閉体,2:インナーパネル,
4:アウターパネル,6:主面部,6c:中央部,7:周面部,
7a:下端部(揺動端部の一例),7b:上端部(基端部の一例),
8:ラッチ,8a:ラッチ取付部,
7c:左端部(側端部の一例),7d:右端部(側端部の一例),
8b:ラッチリンフォース(補強部材、第1補強部材の一例),
10:ヒンジ,10a:ヒンジ取付部,12:ビード部,
12a:左ビード部,12b:右ビード部,12c:頂面,12d:側面,
14:第2補強部材(補強部材の一例),
14a:左第2補強部材,14b:右第2補強部材,
14c:第1延設面,14d:第2延設面,
16a:左側部リンフォース(補強部材、第3補強部材の一例),
16b:右側部リンフォース(補強部材、第3補強部材の一例),
G:上下方向,P:車幅方向、Q:前後方向
図1
図2
図3
図4
図5