(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ロール状導電性接合シート、金属補強板付き配線板、および電子機器
(51)【国際特許分類】
C09J 9/02 20060101AFI20230808BHJP
C09J 7/00 20180101ALI20230808BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20230808BHJP
C09J 125/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C09J9/02
C09J7/00
C09J175/04
C09J125/00
(21)【出願番号】P 2023073962
(22)【出願日】2023-04-28
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2023061598
(32)【優先日】2023-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永井 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】西之原 聡
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/031394(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002780(WO,A1)
【文献】特開2009-013416(JP,A)
【文献】特開2007-136835(JP,A)
【文献】特開2015-010192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 9/02
C09J 7/00
C09J 175/04
C09J 125/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性接合シートをロール状に巻回してなるロール状導電性接合シートであって、
前記導電性接合シートは、保護シートと、導電性接合剤層とを有し、
前記導電性接合剤層のプローブタック粘着力が5.0N/cm
2以下であり、
前記導電性接合剤層の25~30℃における貯蔵弾性率の最高値が1.0×10
7~2.0×10
9Paであるロール状導電性接合シート。
【請求項2】
前記導電性接合剤層は、70~120℃における貯蔵弾性率の最高値が3.0×10
6~1.5×10
8Paである、請求項1に記載のロール状導電性接合シート。
【請求項3】
前記保護シートは、25~30℃における貯蔵弾性率の最高値が1.0×10
9Pa以上である、請求項2に記載のロール状導電性接合シート。
【請求項4】
前記導電性接合剤層は、エステル結合、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上化学結合を有する樹脂を含む、請求項1~3記載のロール状導電性接合シート。
【請求項5】
請求項4記載の導電性接合剤層と金属補強板を含む金属補強板付き配線板。
【請求項6】
請求項5記載の金属補強板付き配線板を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロール状導電性接合シート、金属補強板付き配線板、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部に搭載されるフレキシブルプリント配線板は、柔軟性を有しており、電磁波シールド層を配置し、コネクタ部などは部品間の接続を行う観点から、補強板を配置して変形を抑えることが知られている。従来、補強板としてはエポキシガラス等が用いられてきたが、電磁波ノイズの抑制機能を付与する点から金属板が用いられるようになってきている。フレキシブルプリント配線板へのシールド層や金属板の接続には、樹脂を主成分とする導電性接合剤が使用されている。
【0003】
例えば特許文献1では、グランド用配線パターン(配線板)に対向配置された導電性補強板(金属板)を接合する導電性接合剤として、ポリウレタンポリウレア樹脂と、エポキシ樹脂と、導電性フィラーとを有する導電性接着剤組成物が開示されている。また、特許文献2では、損失弾性率調整剤として、有機塩、タルク、カーボンブラック及びシリカ等を添加し、埋め込み性及び接着性を向上させた導電性接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2016/002780号
【文献】国際公開2019/031394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、導電性接合シートは、保護シート上に導電性接合剤層が積層された状態でロール状(巻物状)に巻き取られるが、ロールから巻き出す際に導電性接合剤層が保護シートの裏面に付着する現象、所謂ブロッキングが起こることが問題となっていた。
【0006】
また、ロール状にサンプルを巻き取る際、ロールが解けないように張力をかけて巻き取られるが、巻取り張力が強い場合、導電性接合剤層に強い圧がかかった状態で長期間保管されることにより、導電性接合剤層の厚み(膜厚)が減少するという問題が生じていた。(膜厚担保性)
【0007】
さらに、導電接合シートを金属板等の被着体に熱圧着により仮貼りした後、保護シートを剥がす際に保護シートが変形、或いは破損し、剥離できない問題が生じていた。(保護シートの剥離性)
【0008】
また、上記仮貼り時、導電性接合剤層の軟化が不十分であると、導電性接合剤層の金属板に対する密着力が不十分となり、導電性接合剤層と金属板が積層された金属補強板を所望の形に加工する工程、所謂打ち抜き加工時に導電性接合剤層が金属板から剥がれるなど問題が生じていた。(ラミネート強度)
【0009】
加えて、金属補強板/導電性接合剤層/配線板の積層体を所定の温度(例えば170℃)加熱・加圧(熱プレス)し、接着した後、基材に引っ張る力が加わった場合、常温付近での導電性接合剤層の弾性率が非常に高いと、凝集破壊が起こり簡単に剥がれてしまう問題が生じていた。(接着性)
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本開示の課題を解決し得ることを見出し、本開示を完成するに至った。
[1]:導電性接合シートをロール状に巻回してなるロール状導電性接合シートであって、前記導電性接合シートは、保護シートと、導電性接合剤層とを有し、前記導電性接合剤層のプローブタック粘着力が5.0N/cm2以下であり、前記導電性接合剤層の25~30℃における貯蔵弾性率の最高値が1.0×107~2.0×109Paであるロール状導電性接合シート
[2]:前記導電性接合剤層は、70~120℃における貯蔵弾性率の最高値が3.0×106~1.5×108Paである、[1]に記載のロール状導電性接合シート。
[3]:前記保護シートは、25~30℃における貯蔵弾性率の最高値が1.0×109Pa以上である、[2]に記載のロール状導電性接合シート。
[4]:前記導電性接合剤層は、エステル結合、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する、[1]~[3]記載のロール状導電性接合シート。
[5]:[4]記載の導電性接合剤層と金属補強板を含む金属補強板付き配線板。
[6]:[5]記載の金属補強板付き配線板を備える電子機器。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、巻き出し時にブロッキングを生じず、膜厚担保性に優れ、保護シートの剥離性が良好であり、ラミネート強度と接着性が高い、ロール状導電性接合シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示のロール状導電性接合シートを示した模式図である。
【
図2】本開示の金属補強板付き配線板の断面を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係るロール状導電性接合シート、金属補強板付き配線板、および電子機器について順に説明する。なお、数値範囲を示す「~」は特に断りのない限りその下限値及び上限値を含むものとする。
また、説明を明確にするため、図面は、適宜、簡略化されている。また、説明のため図面中の各構成は縮尺が大きく異なることがある。
【0014】
[導電性接合シート]
本開示の導電性接合シートは、保護シートと、導電性接合剤層を有し、平らなシート形状を示す。導電性接合剤層は保護シートに直接積層される形態又は、離型剤層を介して積層される形態が好ましい。
【0015】
[ロール状導電性接合シート]
本開示のロール状導電性接合シートは、上述の導電性接合シートをロール状に巻回してなるものである。
図1に、本発明のロール状導電性接合シートの模式図とその部分拡大説明図を示す。ロール状導電性接合シートは、巻取り芯を有し、巻取り芯に導電性接合シートが巻き付けられた構成を成す。導電性接合シートは、導電性接合剤層を内側に、保護シートが外側になるように巻き付ける構成である。
【0016】
[保護シート]
保護シートは、導電性接合シートにおいて導電性接合剤層の支持体となる。また、ロール状導電性接合シートにおいてはロールの最表面に位置し、導電性接合剤層が破損、汚染しないよう保護する機能を担う。
【0017】
保護シートの一例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリブテン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等のプラスチックシート等、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、コート紙等の紙類、各種の不織布、合成紙、金属箔や、これらを組み合わせた複合フィルムなどが挙げられる。これらのなかでも、材料成分の配合によって貯蔵弾性率の調整が容易である観点から、プラスチックシートが好ましく、なかでも、剛性と柔軟性を兼ね備えたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートがより好ましい。
【0018】
保護シートの表面は必要に応じてマット処理してもよい。マット処理の方法はサンドマット、エッチングマット、コーティングマット、ケミカルマット、練り込みマットなどが挙げられる。
導電性接合シートにおける、導電性接合剤層と積層する面の保護シートの表面粗さRaは保護シートの剥離性を向上する観点から0.01~1μmが好ましい。導電性接合剤層と積層する面とは反対の保護シートの表面粗さRaはブロッキング耐性を向上する観点から0.01~5μmが好ましい。
【0019】
保護シートは、保護シートの剥離性を向上させる観点から、表面に離型剤層を有する形態が好ましい。離型剤層は離型剤を塗布して形成することが好ましい。離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の炭化水素系樹脂、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸石鹸、ワックス、動植物油脂、マイカ、タルク、シリコーン系界面活性剤、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、アルキッド系樹脂、フッ素系界面活性剤、フッ素樹脂、フッ素含有シリコーン樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂が選択でき、アルキッド系樹脂が好ましい。用いられる。離型剤の塗布方法としては、従来公知の方式、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等により行うことができる。
離型剤層は保護シートの片面に形成ることが好ましく、両面に形成することがより好ましい。
【0020】
保護シートの厚みには特に制限は無いが、剥離の際、保護シートにコシと強度がある方が保護シートの破損が起こりにくい為、38μm以上が好ましく、仮貼り時に導電性接合剤層に熱が通りにくく、仮貼り性低下することを防ぐ観点から100μm以下が好ましい。
【0021】
[保護シートの貯蔵弾性率]
本開示の保護シートは、25~30℃における貯蔵弾性率の最高値が1.0×109Pa以上、1.5×1010Pa以下であることが好ましく、1.5×109Pa以上、1.0×1010以下がより好ましい。また、保護シートの25~30℃における貯蔵弾性率の最高値がこの範囲にあることで、熱ラミネート後も保護シートの剛性(コシ)を十分高めることができ、導電性接合剤層から保護シートを剥離する際の保護シートの破損を防ぎ、優れた剥離性を実現することができる。また、巻取り時の折れジワなどの巻取り不良を防ぐことができる。保護シートの弾性率は材質やポリマーの主鎖骨格、架橋密度、配向性により調節を行うことができる。
【0022】
[導電性接合剤層]
本開示の導電性接合剤層は導電性組成物を保護シートの上に塗工し、乾燥することで得られ、25℃で非流動性の固形物であり、かつ一定の厚みの層状を成している。
導電性接合シートにおける導電性接合剤層の厚みは、薄膜性と導電性を両立する観点から、5~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、30~70μmであることがさらに好ましい。
【0023】
[導電性接合剤層のプローブタック粘着力]
導電性接合剤層のプローブタック粘着力は5.0N/cm2以下である。導電性接合剤層のプローブタック粘着力が5.0N/cm2以下であることで、粘着性を低下させ、ロール状に巻いた際に保護層への張り付きを抑制でき、ブロッキング耐性を向上することができる。導電性接合剤層のプローブタック粘着力は3.5N/cm2以下がより好ましい。尚上記プローブタック粘着力の下限値は0N/cm2が好ましい。
【0024】
本発明における導電性接合剤層のプローブタック粘着力は、例えば、テルペン樹脂等の粘着付与樹脂の添加量調節や、後述するバインダー(A)に含まれる、樹脂(a-1)の主鎖骨格及び側鎖の変更や、硬化剤添加量調節による架橋密度の調節、金属粒子およびその他フィラーの種類や添加量で制御することができる。導電性接合剤層のプローブタック粘着力を制御する方法は、所望のプローブタック粘着力を実現できる方法であれば、先述した方法に限定されず用いることができる。
【0025】
[導電性接合剤層の貯蔵弾性率]
導電性接合剤層の25~30℃における貯蔵弾性率の最高値は、1.0×107~2.0×109Paである。
導電性接合剤層の25℃~30℃における弾性率を1.0×107Pa以上とすることで
導電性接合シートをロール状にサンプルを巻き取る際、巻取り張力が強く、導電性接合剤層に圧力がかかり、さらにロール状態で長期間保管されても、導電性接合剤層の厚み変化を抑制することができる。また、導電性接合剤層の25℃~30℃における弾性率を2.0×109Pa以下とすることで、導電性接合剤層の凝集破壊を防ぐことができ、高い接着力を維持できる。
導電性接合剤層の25~30℃における貯蔵弾性率の最高値は1.0×107~1.7×109Paが好ましく、1.0×108~1.3×109Paがより好ましい。
【0026】
導電性接合剤層の70~120℃における貯蔵弾性率の最高値は、3.0×106~1.5×108Paが好ましく、7.0×106~1.0×108Paがより好ましく、1.0×107~8.0×107Paがさらに好ましい。導電性接合剤層の70~120℃における貯蔵弾性率の最高値を上記範囲にすることで、例えば110℃の熱ラミネートで仮貼りする際に導電性接合剤層の流動性が生じ、基材へのラミネート強度を向上させることができる。
【0027】
本発明における導電性接合剤層の貯蔵弾性率の最高値の制御には、例えば、樹脂の主鎖骨格および側鎖の変更や硬化剤添加量調節による架橋密度の調節、粘着付与樹脂の添加及び添加量の調節、金属粒子およびその他フィラーの種類や添加量で調節する等の方法をとることができる。粘着付与樹脂として例えば、テルペン樹脂やテルペンフェノール樹脂、ロジンやロジン誘導体などが好ましい。
【0028】
[導電性組成物]
導電性組成物は、バインダー(A)と金属粒子(B)を含む。
【0029】
[バインダー(A)]
バインダー(A)は、導電性組成物の基体となり金属粒子(B)やその他添加フィラーを分散担持する機能を有する。バインダー(A)は前述した機能を有するものであれば、特に組成等は制限されないが、樹脂(a-1)を含むことが好ましい。本開示における樹脂(a-1)は、通常は固体、半固体、又は凝固体であり、軟化又は溶融範囲を有する、重量平均分子量(Mw)が5,000以上の有機材料、と定義される。
【0030】
[樹脂(a-1)]
樹脂(a-1)は、前述した重量平均分子量(Mw)以外には、特に組成、分子構造等は制限されないが、これらの中でも、エステル結合、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上の化学結合を有する樹脂が好ましい。イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合は、結合中に含まれる窒素原子の非共有電子対が、被着体と相互作用することによって強固な接着力を実現することができる。前述の化学結合群を有する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂などが例として挙げられる。
【0031】
また、樹脂(a-1)は、エステル結合、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有することがより好ましい。バインダー(A)がエステル結合、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有することで、被着体への相互作用が多重化し、より強固な密着力を発現することが可能となる。エステル結合、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有する樹脂とは、例えば、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタンウレア樹脂などである。
【0032】
樹脂(a-1)は前述の通り、組成、分子構造の観点から適宜選択することが可能であるが、樹脂の性質によって好適なものを選択することも可能である。導電性組成物に対し熱刺激を与えて接着性を発現させる観点から、樹脂(a-1)は、熱硬化性樹脂(a-2)や熱可塑性樹脂(a-3)、であることが好ましい。
【0033】
[熱硬化性樹脂(a-2)]
熱硬化性樹脂(a-2)は、樹脂(a-1)のうち、熱硬化性を有するものである。熱硬化性とは「加熱又は放射線、触媒などのようなその他の手段によって硬化される際に、実質的に不融性かつ不溶性製品に変化し得ること」と定義される。
【0034】
前述した熱硬化性は、熱硬化性樹脂(a-2)が酸性基等の反応性官能基を有する場合には、反応性官能基同士が反応することで発現してもよく、また、熱硬化性樹脂(a-2)と後述する硬化剤(D)のそれぞれに組み込まれた反応性官能基が反応することによって発現してもよい。
導電性接合剤層に熱硬化性樹脂(a-2)を使用する場合、上述した導電性接合剤層の導電性接合剤層のプローブタック粘着力、25~30℃における貯蔵弾性率及び、70~120℃における貯蔵弾性率は、熱硬化反応前の値である。
【0035】
前記熱硬化性樹脂(a-2)は、酸価が5~40mgKOH/gであることが好ましい。酸価が前述の範囲内であることで、架橋構造の密度が好適な範囲となり、柔軟性と強靭性を両立することが可能となる。酸価は10~20mgKOH/gであることがより好ましい。
【0036】
[熱可塑性樹脂(a-3)]
熱可塑性樹脂(a-3)は、樹脂(a-1)のうち、熱可塑性を有するものである。熱可塑性とは「プラスチックに特有の温度範囲を通じて加熱による軟化及び冷却による硬化を繰り返すことができ、かつ軟化状態で流動によって形を合わせて成形、押出し又は成形によって繰り返し物品の状態にし得ること」と定義される。
【0037】
バインダー(A)は、エポキシ基、オキセタン基、エピスルフィド基、およびアジリジン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含むことが好ましい。前述の官能基群は樹脂(a-1)が酸性基等の反応性官能基を有する場合には、その反応性官能基、あるいは当該官能基同士で硬化反応を起こし、高い接着性を発現できる。バインダー(A)に前述の官能基群を含有させる方法としては、例えば、前述の官能基群を有する樹脂(a-1)をバインダー(A)に添加する、あるいは後述する硬化剤(C)のうち、前述の官能基群を有するものをバインダー(A)に添加する、といった方法をとることができる。
【0038】
[硬化剤(C)]
本開示における硬化剤(C)は、硬化反応を促進し又は調節する物質であり、分子量、あるいは重量平均分子量(Mw)が5,000未満の物質と定義される。硬化反応とは「加熱又は放射線、触媒などのようなその他の手段によって、プリポリマー又は重合組成物を重合及び又は架橋させ、不可逆的に弾性率を上昇させること」と定義される。バインダー(A)中において、熱等の刺激によって重合及び又は架橋を形成し、導電性組成物に強固な接着性を発現させる観点から、本開示のバインダー(A)は硬化剤(C)を含むことが好ましい。
【0039】
前述の硬化反応は、硬化剤(C)同士が自己反応するものであってもよく、例えば樹脂(a-1)などのバインダー(A)中の他の成分と反応してもよい。樹脂(a-1)と硬化剤(C)が硬化反応する場合、反応を効率よく行う観点から、樹脂(a-1)は熱硬化性樹脂(a-2)であることが好ましい。
【0040】
保管時には硬化反応が進行せず、加熱時のみに硬化反応を生じさせる観点から、前記熱硬化性樹脂(a-2)と、硬化剤(C)の組み合わせとしては、50℃では架橋反応をせず、150℃で硬化反応が促進される組み合わせを選択することが好ましい。
又、硬化反応の開始温度が異なる2種以上の硬化剤を適宜組み合わせることで、各温度帯における導電性組成物の架橋密度をコントロールしてもよい。
硬化剤(C)は、エポキシ硬化剤、オキセタン硬化剤、エピスルフィド硬化剤、アジリジン硬化剤、アミン硬化剤、イソシアネート硬化剤、およびイミダゾール硬化剤が挙げられる。なかでも、エポキシ硬化剤、オキセタン硬化剤、エピスルフィド硬化剤、およびアジリジン硬化剤が、熱硬化性樹脂(a-2)と効率的に硬化反応が進行し、高い接着性を発現できるため、好ましい。
【0041】
エポキシ硬化剤としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ化合物、グリジシルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物等が好ましい。
【0042】
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、a-1-ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0043】
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0044】
前記グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0045】
前記環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
【0046】
オキセタン硬化剤は、例えば、1,4-ビス{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,3-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールとテレフタル酸とのエステル化物、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールとフェノールノボラック樹脂とのエーテル化物、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールと多価カルボン酸化合物とのエステル化物等が挙げられる。
【0047】
エピスルフィド硬化剤は、例えば、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)スルフィド、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)ジスルフィド、1,4-ジチアン-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)-2-(2,3-エピチオプロピルジチオエチルチオ)-4-チアヘキサン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオ)プロパン等が挙げられる。
【0048】
アジリジン硬化剤は、例えばトリメチロールプロパン-トリ-a-2-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-a-2-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0049】
アミン硬化剤は、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビス(2-クロロアニリン)、メチレンビス(2-メチル-6-メチルアニリン)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-ブチルベンジルフタル酸等が挙げられる。
【0050】
イソシアネート硬化剤は、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
イミダゾール硬化剤は、例えば2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイトなどが挙げられる。
【0052】
硬化剤(C)は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記硬化剤(C)は、分子量又は重量平均分子量が100以上のものを用いることが、導電性組成物の貯蔵弾性率やガラス転移温度を調整する点から好ましい。
【0053】
硬化剤(C)は、熱硬化性樹脂(a-2)100質量部に対し、0.1~70質量部を配合することが好ましく、0.1~50質量部がより好ましい。硬化剤(C)の添加量を0.1質量部以上とすることで、導電性組成物の架橋構造の密度を最適なものにし、接着性を向上できるとともに、膜厚担保性を向上することが可能となる。硬化剤(C)の添加量を70質量部以下とすることで、導電性組成物が過度に硬くなるのを防ぎ、接着性と打ち抜き加工性を向上することができる。
【0054】
[金属粒子(B)]
金属粒子(B)は、金、白金、銀、銅およびニッケル等の導電性金属、およびその合金、が好ましい。また単一組成の微粒子ではなく核体となる金属に対し、前記核体の表面を被覆する被覆層を核体よりも導電性が高い素材で形成した複合微粒子がコストダウンの観点から好ましい。
核体は、ニッケル、シリカ、銅およびこれらの合金から選択することが好ましい。被覆層は、例えば、金、白金、銀、錫、マンガン、およびインジウム等、ならびにその合金が挙げられる。なかでも、導電性と材料コストの観点からは銀を用いることが好ましい。
【0055】
複合微粒子は、核体100質量部に対して、1~40質量部の割合で被覆層を有することが好ましく、5~30質量部がより好ましい。1~40質量部で被覆すると、導電性を維持しながら、よりコストダウンができる。なお複合微粒子は、被覆層が核体を完全に覆うことが好ましい。しかし、実際には、核体の一部が露出する場合がある。このような場合でも核体表面面積の70%以上を導電性物質が覆っていれば、導電性を維持しやすい。
【0056】
金属粒子(B)は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
金属粒子(B)の形状は、所望の導電性が得られればよく形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、ブドウ状、不定形塊状が挙げられる。なお、導電性を向上させる観点からは、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状がより好ましい。
【0058】
金属粒子(B)の平均粒子径は、平均粒子径D50が、1~50μmであることが好ましく、3~30μmがより好ましく、5~20μmがさらに好ましい。平均粒子径D50がこの範囲にあることで、好適な導通パスが形成でき、導電性を向上することができる。なお、平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置によって求めることができる。
【0059】
金属粒子(B)の平均粒子径は、平均粒子径D90が、1~120μmであることが好ましく、5~70μmがより好ましい。平均粒子径D90がこの範囲にあることでブロッキングが起こることを抑制することができる。
【0060】
導電性接合剤層の厚みを金属粒子(B)の平均粒子径D50で除した値Xは、1~35であることが好ましい。Xが35以下であることで、導電性接合剤層内で金属粒子(B)の導電パスが効果的に形成され、導電性が向上する。導電性向上の観点では、Xは18以下であることがより好ましい。また、Xが1以上であることで、被着体と金属粒子(B)との接触点が過度に増えることなく、被着体とバインダー(A)との接触面積が増大するため、接着性が向上する。Xは5以上であることがより好ましい。
【0061】
金属粒子(B)は、導電性組成物の全固形分中、40~90質量%含むことが好ましい。上記含有量とすることでブロッキング耐性、膜厚担保性、接着性を両立することができる。金属粒子(B)の含有量は、45~80質量%がより好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。
【0062】
本実施の形態における導電性組成物は、他の任意成分として耐熱安定剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤等を配合してもよい。
【0063】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、タルク、モンモロリナイト、カオリン、ベントナイト等が挙げられる。当該導電性組成物が無機フィラーを含有することで、プローブタックの抑制をコントロールでき、さらに、貯蔵弾性率を制御し、膜厚担保性をコントロールすることができる。
【0064】
有機フィラーとしては、例えば、ウレタン樹脂粒子やアクリル樹脂粒子、フェノール樹脂粒子、ナイロン粒子等が挙げられる。当該導電性組成物が有機フィラーを含有することで、仮貼り性を担保しつつさらに、貯蔵弾性率を制御し、膜厚担保性をコントロールすることができる
【0065】
[導電性接合シートの製造方法]
本開示の導電性接合シートは、例えば、導電性組成物を保護シート上に塗工し、乾燥し、更に必要に応じてBステージ硬化することで得ることができる。上記乾燥後の導電性組成物を導電性接合剤層という。塗工方法は、公知の方法の中から、導電性接合剤層の膜厚等を考慮して適宜選択すればよい。塗工方法の具体例としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0066】
Bステージ硬化とは、導電性接合剤層を所定の温度、時間で加熱することにより、硬化反応を部分的に生じさせる方法である。Bステージ硬化を行うことにより、導電性接合剤層の接着力を維持しつつ、強度を高めることができる。
【0067】
[ロール状導電性接合シートの製造方法]
導電性接合シートは、その先端部を巻取り芯材に押し当てつつ巻き取ることで、ロール状導電性接合シートを得ることができる。
【0068】
本発明の巻取り芯材は特に限定されないが、例えば紙管、金属管、プラスチック管が例示できる。一般に印刷機、塗工機、成形機、抄しゃ機等の製造装置に付随する巻取り装置で使用される横幅方法に長い管である。前記巻取り芯材は、一般的に直径1~40cm程度が好ましい。また巻取り芯材の横幅は、巻取り装置に設置できる幅であればよく特に限定されない。一般的には2mm~6m程度である。
【0069】
導電性接合シートの別の巻取り方法として、導電性接合シートの先端部を、接着性部材を使用して巻取り芯材に固定して巻き取る方法も例示できる。接着性部材には両面粘着テープ、キャスト粘着テープ、片面粘着テープがある。第1の方法として、導電性接合シートの導電性接合剤層面の先端部を、両面粘着テープを使用して巻取り芯材に固定する方法が例示できる。また、第2の方法として、導電性接合シートの保護シートを下側にし、その先端部を、粘着テープを使用して巻取り芯材と固定する方法が例示できる。
【0070】
電性接合シートの巻取りの際の張力は保護シートの材質等によって異なるため、特に限定されないが、基材が変形しない張力かつ、基材たゆまない張力に設定する必要がある。例えば、PETを基材にした際には0.5N/cm~2.5N/cmが好ましい。
【0071】
[金属補強板]
本開示の金属補強板は、金属板に導電性接合剤層が貼り合わされている。前述の金属板は、例えば金、銀、銅、鉄およびステンレス等の導電性金属が挙げられる。これらの中で金属板としての強度、コストおよび化学的安定性の面でステンレスが好ましい。金属板の厚みは、一般的に0.04~1mm程度である。金属板は、ニッケル層が金属板の全表面に形成されていることが好ましい。ニッケル層は、電解ニッケルめっき法で形成することが好ましい。ニッケル層の厚みは、0.5~5μm程度であり、1~4μmがより好ましい。なお、金属補強板に具備される導電性接合剤層は、25℃で非流動性の固形物であり、かつ一定の厚みの層状を成している。
【0072】
[金属補強板付き配線板]
本実施の形態にかかる金属補強板付き配線板100(
図2参照)は、絶縁性フィルム21上にグランド回路22が配置されており、前述のグランド回路22をカバーレイ23が被覆し、当該グランド回路22の一部が開口部30を介して露出している配線板20と、当該配線板20上に金属補強板が配置される。金属補強板の導電性接合剤層1は層状を成し配線板20と金属板2を接合する。本実施の形態にかかる配線板は、導電性接合剤層1の一部が開口部30に充填されることで、グランド回路22と金属板2とが導電性接合剤層1を介して電気的に接続されている。配線板20には更に信号配線が設けられていてもよい。
【0073】
配線板20の開口部30の面積は、0.16mm2以上0.81mm2以下としてもよい。開口部30の面積を0.16mm2以上とすることで、開口部30への導電性接合剤層の充填性を良好にすることができる。また、開口部30の面積を0.81mm2以下とすることで、配線板20に占める開口部30の面積を小さくすることができる。開口部30の面積は、好ましくは0.25mm2以上0.64mm2以下、更に好ましくは0.36mm2以上0.49mm2以下としてもよい。開口部30の面積がこの範囲である場合、開口部30への導電性接合剤層の充填性を良好にすることができ、導電性接合剤層とグランド回路22との接触抵抗を低くすることができる。
【0074】
平面視した際の開口部30の形状は、矩形状であってもよく、円形状であってもよい。開口部30の形状が矩形状である場合は、矩形状の開口部の四隅に導電性接合剤層を充填することが特に困難になり、四隅に隙間が形成されやすい。しかしながら、レジンフローが好適な範囲に制御された本実施の形態にかかる導電性接合剤層を用いることで、矩形状の開口部であっても導電性接合剤層を開口部内に良好に充填することができる。
【0075】
[電子機器]
このような金属補強板付き配線板は、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートPC、デジタルカメラ、液晶ディスプレイ等の電子機器に搭載することができる。また、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機器にも好適に搭載できる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例、比較例を挙げて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「重量%」に基づく値である。また、樹脂(a-1)の酸価と重量平均分子量(Mw)、および金属粒子(B)のD50平均粒子径の測定は次の方法で行なった。
【0077】
[樹脂(a-1)の酸価]
JIS K 0070の中和滴定法に準拠し、測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算することで求めた。共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、テトラヒドロフラン/エタノール(容量比:テトラヒドロフラン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、指示薬が淡紅色を30秒間保持した時を終点とした。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0078】
[樹脂(a-1)の重量平均分子量(Mw)]
Mwの測定はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)「HPC-8020」(東ソー社製)により行った。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフである。本測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6mL/min、カラム温度40℃の条件で行った。Mwの決定はポリスチレン換算で行った。
【0079】
[金属粒子(B)のD50平均粒子径]
D50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用した。トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性フィラーを測定して得た数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。なお、屈折率の設定は1.6とした。
【0080】
<原料>
[バインダー(A)]
(a-1)-1:ポリエステル樹脂:酸価36mgKOH/g、Mw=27,000(トーヨーケム製)
(a-1)-2:ポリイミド樹脂:酸価18mgKOH/g、Mw=55,000(トーヨーケム製)
(a-1)-3:ポリアミド樹脂:酸価22mgKOH/g、Mw=49,000(トーヨーケム製)
(a-1)-4:ポリウレタン樹脂:酸価16mgKOH/g、Mw=98,000(トーヨーケム製)
(a-1)-5:ポリウレタンウレア樹脂:酸価15mgKOH/g、Mw=100,000(トーヨーケム製)
(a-1)-6:スチレンエラストマー:酸価55mgKOH/g、Mw=120,000(トーヨーケム製)
[金属粒子(B)]
B1:銀被覆銅粉:D50=5.7μm、樹枝状(三井金属鉱業製)
B2:銀被覆銅粉:D50=31.2μm、樹枝状(三井金属鉱業製)
B3:銀被覆銅粉:D50=10.8μm、球状(レゾナック製)
B4:銀被覆銅粉:D50=7.5μm、球状(レゾナック製)
B5:銀被覆銅粉:D50=11.3μm、フレーク状(DOWAホールディングス製)
[硬化剤(C)]
C1:Tiキレート化合物(TC100、分子量=364、マツモトファインケミカル)
C2:ビスフェノールA型エポキシ化合物(jER(登録商標)828、分子量=370、三菱ケミカル製)
C3:イソフタル型オキセタン化合物(ETERNACOLL(登録商標) OXIPA、分子量=362、宇部興産製)
C4:水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(TBIS(登録商標)-AHS、分子量=384、田岡化学工業製)
C5:多官能型アジリジン化合物(ケミタイト(登録商標)PZ-33、分子量=425、日本触媒製)
C6:ポリカルボジイミド化合物(カルボジライトV―05、分子量=1200、日清紡ケミカル製)
[粘着付与樹脂]
テルペン樹脂(YSレジンPX300N、ヤスハラケミカル製)
[保護シートD]
D1:PET製フィルム(セラピール PJ271、膜厚50μm、表面処理:片面アルキッド系離型剤処理、東レ製)
D2:紙製フィルム(G62シロ AA(N7-82)、膜厚58μm、表面処理:両面シリコン系離型剤処理、リンテック製)
D3:ポリプロピレン製フィルム(トレファン#30-2500H、膜厚50μm、表面処理:両面アルキッド系離型剤処理、東レ製)
D4:ポリエチレン製フィルム(ウベポリシート、膜厚70μm、表面処理:両面アルキッド系離型剤処理、宇部フィルム製)
D5:ポリ塩化ビニル製フィルム(一般用PVCフィルム、膜厚120μm、表面処理:両面アルキッド系離型剤処理、オカモト製)
【0081】
<導電性組成物、及び導電性接合シートの作成>
[実施例1]
樹脂(a-1)として((a-1)-1)100質量部、金属粒子(B)として(B1)167質量部、粘着付与樹脂としてテルペン樹脂(YS レジン PX300N)10質量部、不揮発分濃度が40質量%となるように溶媒としてメチルエチルケトンを加えて混合した。次いで、硬化剤(C)として(C1)1.5質量部を加え、攪拌機により10分間攪拌して導電性組成物溶液を調製した。
次に、上記調製した導電性組成物溶液を、ライン速度2m/minのコンマヘッドコーターを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように、300mm幅の保護シート(D)D1(離型剤:アルキッド系離型剤)の剥離処理された一方の面上に塗工し、100℃に設定された2mの電気オーブンAと120℃に設定された2mの電気オーブンBを通過し乾燥することで保護シート上に導電性接合剤層を形成し、上記導電性接合シートの導電性接合剤層が内側になるように、直径8.8cmのプラスチック製の巻き芯に巻取りロール状導電性接合シートを得た。
【0082】
[実施例2~36、比較例1~4]
配合する各成分の種類および配合量を表1~表6記載した通りとした以外は実施例1と同様に操作し、各実施例2~36および比較例1~4のロール状導電性接合シートを得た。
【0083】
[プローブタック粘着力の測定]
得られた各ロール状導電性接合シートから導電性接合シートを巻き出し、第十七改正日本薬局方 一般試験法 6.製剤試験法 6.12粘着力試験法 3.4プローブタック試験法に則りプローブタック測定を実施した。導電性接合シートを2cm角に切り、サンプルを得た。サンプルをウェイトリングに貼り、その上に合計200gの重りを乗せることで荷重を加え、プローブタックテスター(TE-6001プローブタックテスター、テスター産業株式会社製)を用い、プローブタック粘着力(単位N/cm2)を測定した。
【0084】
[貯蔵弾性率の測定]
各導電性接合剤層、および保護シートについて、動的粘弾性測定装置(DVA-200、アイティー計測制御株式会社製)を用いて、貯蔵弾性率測定を実施した。
導電性接合剤層および保護シートを幅5mm×長さ5cmに切り、サンプルを得た。装置を定速昇温(10℃/min)に設定し、-50℃~300℃までの温度帯で測定周波数10Hzの引っ張りモードで測定を実施することで、各温度での貯蔵弾性率(単位Pa)を測定し、25~30℃及び70~120℃における最高値を求めた。
【0085】
<評価>
得られた各ロール状導電性接合シートについて、ブロッキング耐性、膜厚担保性、保護シートの剥離性、ラミネート強度、接着性を下記方法に従って評価した。評価結果を表1~表5に示す。
【0086】
[ブロッキング耐性]
各実施例および比較例で作成したロール状導電接着シートを幅249mm・長さ10mにスリットし、巻取り張力1.6N/cmで直径8.8cmのプラスチック管に導電性接合剤層が内側になるように巻き取ったロールサンプルを50℃の雰囲気下に24時間放置した。その後、ロールから導電性接合シートを巻き出し、以下の基準でブロッキング性を評価した。
+++:保護シート面に導電性接合剤層が張り付かない(非常に優れている)
++:保護シート面に導電性接合剤層の一部が張り付くが、導電性接合剤層に浮きが生じない(優れている)
+:保護シート面に導電性接合剤層の一部が張り付き、導電性接合剤層の一部に浮きが発生する(実用可能である)
NG:保護シート面に導電性接合剤層が張り付き、導電性接合剤層が一部破断する(実用不可能である)
【0087】
[膜厚担保性]
各実施例および比較例で作成したロール状導電接着シートを幅249mm・長さ20mにスリットし、巻取り張力1.9N/cmで直径8.8cmのプラスチック管に導電性接合剤層が内側になるように巻き取ったロールサンプルを作成し、50℃の雰囲気下に240時間放置した。
【0088】
次に、ロールサンプルの巻き外から10m巻きだし、5cm角のサンプルを採取し、接触式膜厚計にて、導電性接合剤層の厚み(H1)を測定した。導電性接合シートの導電性接合剤層の初期厚み60μmをH2として、各実施例、および比較例のΔH=H1/H2を求め、下記評価基準に従い評価した。
+++:ΔHが0.6以上(非常に優れている)
++:ΔHが0.5以上0.6未満(優れている)
+:ΔHが0.4以上0.5未満(実用可能である)
NG:ΔHが0.4未満(実用不可能である)
【0089】
[保護シートの剥離性]
各実施例および比較例にて作製したロール状導電性接合シートから幅25mm、長さ100mmの導電性接合シートを切断採取し、幅30mm、長さ150mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に導電性接合剤層が接触するよう、導電性接合シートを重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm2、0.5m/minの条件下で、導電性接合シートとSUS板とをラミネートした後、導電性接合剤層から保護シートを剥がした。その後、導電性接合剤層上に残存する保護シートの残存面積を測定し、保護シートの残存率を下記式より求め、下記の評価基準に従い評価した。
保護シートの残存率=保護シートの残存面積/導電性接合剤層の面積×100
+++:保護シートの残存率が0%である。(非常に優れている)
++:保護シートの残存率が0%より大きく、1%未満である。(優れている)
+:保護シートの残存率が1%以上、2%未満である。(実用可能である)
NG:保護シートの残存率が2%以上である。(実用不可能である)
【0090】
[ラミネート強度]
各実施例および比較例にて作製したロール状導電性接合シートから幅25mm、長さ100mmの導電性接合シートを切断採取し、幅30mm、長さ150mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に導電性接合剤層が接触するよう、導電性接合シートを重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm2、0.5m/minの条件下で、上記導電性接合シートと上記SUS板とをロールラミネートした後、導電性接合剤層から保護シートを剥がし、導電性接合剤層が露出した面に銅箔(厚さ25μm)を重ね、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm2、0.5m/minの条件下で、導電性接合剤層と銅箔をロールラミネートし、評価用試料を得た。
【0091】
次いで、引張試験機(小型卓上試験機 EZ-TEST、島津製作所製)を用い、引っ張り速度50mm/minの条件下で、90°ピール剥離試験における評価用試料のSUS板に対する導電性接合剤層の接着強度を指標として、下記評価基準に従い仮貼り性を評価した。
+++:接着強度が3N/cm以上(非常に優れている)
++:接着強度が2N/cm以上、3N/cm未満(優れている)
+:接着強度が1N/cm以上、2N/cm未満(実用可能である)
NG:接着強度が1N/cm未満(実用不可能である)
【0092】
[接着性]
各実施例および比較例にて作製したロール状導電性接合シートから幅25mm、長さ100mmの導電性接合シートを切断採取し、幅30mm、長さ150mmの金属板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に導電性接合剤層が接触するよう、導電性接合シートを重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm2、0.5m/minの条件下で、上記導電性シートと上記金属板とをロールラミネートした後、上記導電性接合剤層から保護シートを剥がし、導電性接合剤層が露出した面に銅箔(厚さ25μm)を重ね、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm2、0.5m/minの条件下で、導電性接合剤層と銅箔をロールラミネートし積層体を得た。前記積層体を170℃ 、2MPa、3分の条件で圧着処理をし、160℃の電気オーブンで60分加熱処理し、評価用試料を得た。
【0093】
次いで、引張試験機(小型卓上試験機EZ-TEST、島津製作所製)を用い、引っ張り速度50mm/minの条件下で、90°ピール剥離試験における評価用試料の金属板に対する導電性組成物の接着強度を指標として、下記評価基準に従い接着性を評価した。
+++:接着強度が4N/cm以上(非常に優れている)
++:接着強度が3N/cm以上4N/cm未満(優れている)
+:接着強度が1N/cm以上3N/cm未満(実用可能である)
NG:接着強度が1N/cm未満。(実用不可能である)
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【符号の説明】
【0100】
1 導電性接合剤層
2 金属板
3 保護シート
4 ロール状導電性接合シート
20 配線板
21 絶縁性フィルム
22 グランド回路
23 カバーレイ
30 開口部
100 金属補強板付き配線板
【要約】
【課題】本開示は、巻き出し時にブロッキングを生じず、膜厚担保性に優れ、保護シートの剥離性が良好であり、ラミネート強度と接着性が高い、ロール状導電性接合シート、金属補強板付き配線板、および電子機器を提供する。
【解決手段】導電性接合シートをロール状に巻回してなるロール状導電性接合シートであって、
前記導電性接合シートは、保護シートと、導電性接合剤層とを有し、前記導電性接合剤層のプローブタック粘着力が5.0N/cm
2以下であり、前記導電性接合剤層の25~30℃における貯蔵弾性率の最高値が1.0×10
7~2.0×10
9Paであるロール状導電性接合シートによって解決される。
【選択図】
図1