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特許7327701両面粘着シートおよび画像表示装置用積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】両面粘着シートおよび画像表示装置用積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230808BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20230808BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230808BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
G09F9/00 302
G09F9/30 308Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023074280
(22)【出願日】2023-04-28
【審査請求日】2023-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤美
(72)【発明者】
【氏名】石 智文
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-116860(JP,A)
【文献】特開2018-45213(JP,A)
【文献】特開2022-181955(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-169229(KR,A)
【文献】特開2018-172611(JP,A)
【文献】特開2020-83908(JP,A)
【文献】特開2017-23941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G09F 9/00
G09F 9/30- 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一剥離シート、粘着層、第二剥離シートの順に積層された基材レスのフレキシブルディスプレイ用途用の両面粘着シートであって、
前記第一剥離シートを剥がして露出した前記粘着層の表面にガラス基板を貼付し、当該ガラス基板を白紙上に載置した後に、前記第二剥離シートを剥がして露出した前記粘着層の表面をウェーブスキャン装置にて測定したときに、
波長域0.1~0.3mmの反射強度Waが1~26であり、且つ
波長域3~10mmの反射強度Wdが0.3~8であり、
前記粘着層は、
(i)重量平均分子量が100万~180万の(メタ)アクリル共重合体(a)を含有する粘着層、および(メタ)アクリル共重合体(a)を含む粘着剤組成物を架橋してなる粘着層のいずれか一方であり、
(ii)23℃における貯蔵弾性率が1×10~8×10Paであり、
(iii)DSCによるガラス転移温度が-70℃≦Tg≦-35℃である
両面粘着シート。
【請求項2】
前記第一剥離シートを剥がして露出した前記粘着層の表面にガラス基板を貼付し、当該ガラス基板を白紙上に載置した後に、前記第二剥離シートを剥がして露出した前記粘着層の表面をウェーブスキャン装置にて測定したときに、
波長域1~3mmの反射強度Wcが1~12であり、且つ
波長域10~30mmの反射強度Weが1~12である請求項1記載の両面粘着シート。
【請求項3】
(メタ)アクリル共重合体(a)は、アルキル基の炭素数が1~6の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、およびアルキル基の炭素数が7~12の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位を有する請求項1記載の両面粘着シート。
【請求項4】
(メタ)アクリル共重合体(a)の分子量分散度Mw/Mnが5未満である請求項1記載の両面粘着シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの両面粘着シートの粘着層を介して被着体同士を接合した画像表示装置用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、両面粘着シートおよび画像表示装置用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、貼付という簡便な手段により被着体と接合できるので、各種部材同士の接合が必要なパソコン、スマートフォン等の電子機器において多用されており、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、ホモポリマーを形成した際のTgが-10℃以上であるモノマーを必須のモノマー成分として形成されたアクリル系ポリマーを含有し、23℃におけるせん断貯蔵弾性率が0.8×105~5.0×105Paであるアクリル系粘着剤層を有し、60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が0.65重量%以上である光学用粘着シートが開示されている。また、特許文献2、3には、SP値が8以上9.00未満のアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体(A1)20~90重量%と、SP値が9.00以上15以下の極性基を有するエチレン性不飽和単量体(A2)10~80重量%とをラジカル重合してなるアクリル系共重合体(A)と、ポリイソシアネート系硬化剤(B)及びシランカップリング剤(C)とを含む粘着剤が開示されている。更に、特許文献4には、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構成単位(A)を5質量%以上、炭素数1以上8以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構成単位(B)を5質量%以上、及び、水酸基を有する単量体に由来の構成単位(C)を2質量%以上30質量%以下含み、構成単位(A)、構成単位(B)及び構成単位(C)の総含有量が80質量%以上である(メタ)アクリル系ポリマーを含有する粘着剤組成物が開示されている。また、特許文献5には、酸価が2.5mgKOH/g以下であり、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.01~1質量%の範囲で有する(メタ)アクリル系共重合体と、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5~30質量部の範囲のトリレンジイソシアネート系化合物と、イミダゾール化合物とを含む粘着剤組成物が開示されている。更に、特許文献6には、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマーと、この(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して0.005~2.5質量部の脂環式エポキシ変性シリコーンを含む粘着剤組成物が開示されている。また、特許文献7には、粘着剤層形成直後のゲル分率が40%以上80%以下であり、かつ粘着剤層形成から23℃、55%RHの条件下で7日間保管した後のゲル分率が60%以上85%以下である、粘着剤組成物が開示されている。特許文献8には、剥離フィルムの露出面を、ウェーブスキャン装置を用いて波長0.3~1.0mmの波長域の反射強度(Wb)を測定した場合、反射強度(Wb)が10.0未満である積層シートが、特許文献9には、フィルム基材の厚みは38μm以下であり、剥離フィルムの露出面を、ウェーブスキャン装置を用いて波長0.3~1.0mmの波長域の反射強度(Wb)を測定した場合、反射強度(Wb)が10以上であり、前記粘着剤層は、少なくとも(メタ)アクリル共重合体及びキレート架橋剤に由来する構造を含む積層シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/111575号
【文献】特開2013-127012号公報
【文献】中国特許出願公開第104231981号明細書
【文献】特開2014-74122号公報
【文献】特開2016-188309号公報
【文献】特開2016-79266号公報
【文献】特開2018-2961号公報
【文献】特開2020-83908号公報
【文献】特開2020-83910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着層は、前述したように、簡便な方法で被着体同士を接合できることから電子機器において多用されている。しかしながら、粘着層は繰り返しの屈曲耐性が高いとはいえず、例えば、近年急速に普及している折り畳み式のフォルダブルディスプレイ用途に適用した場合、経時的に皺や気泡が発生しやすいという問題がある。このような皺や気泡が発生は、密着性が低下するのみならず、表面保護フィルムなどの視認性低下を招来するため、ディスプレイなどの光学部材用途の場合には特に深刻である。
【0005】
市場では、生産性、汎用性、並びに各種電子機器の軽薄短小化のニーズから、基材レスの両面粘着シートが求められている。また、折り畳み式のフォルダブルディスプレイなどのフレキシブル性が求められる用途に適用した場合においても、経時的に皺や気泡の発生を抑制できる視認性に優れた粘着層が求められている。特に、低温(0℃)から高温(40℃)にわたり、皺や気泡の発生を抑制できる粘着層の開発が望まれている。
【0006】
なお、上記においてはディスプレイ用途に用いる粘着層の問題点について述べたが、視認性を向上させたい用途全般に同様の課題が生じ得る。
【0007】
本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、光学用途に適用した場合においても視認性に優れ、フレキシブルディスプレイ用途に適用した場合においても皺および気泡を抑制できる基材レスの両面粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の両面粘着シートおよび画像表示装置用積層体を提供する。
[1]: 第一剥離シート、粘着層、第二剥離シートの順に積層された基材レスのフレキシブルディスプレイ用途用の両面粘着シートであって、
前記第一剥離シートを剥がして露出した前記粘着層の表面にガラス基板を貼付し、当該ガラス基板を白紙上に載置した後に、前記第二剥離シートを剥がして露出した前記粘着層の表面をウェーブスキャン装置にて測定したときに、
波長域0.1~0.3mmの反射強度Waが1~26であり、且つ
波長域3~10mmの反射強度Wdが0.3~8であり、
前記粘着層は、
(i)重量平均分子量が100万~180万の(メタ)アクリル共重合体(a)を含有する粘着層、および(メタ)アクリル共重合体(a)を含む粘着剤組成物を架橋してなる粘着層のいずれか一方であり、
(ii)23℃における貯蔵弾性率が1×10~8×10Paであり、
(iii)DSCによるガラス転移温度が-70℃≦Tg≦-35℃である
両面粘着シート。
[2]: 前記第一剥離シートを剥がして露出した前記粘着層の表面にガラス基板を貼付し、当該ガラス基板を白紙上に載置した後に、前記第二剥離シートを剥がして露出した前記粘着層の表面をウェーブスキャン装置にて測定したときに、
波長域1~3mmの反射強度Wcが1~12であり、且つ
波長域10~30mmの反射強度Weが1~12である[1]記載の両面粘着シート。
[3]: (メタ)アクリル共重合体(a)は、アルキル基の炭素数が1~6の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、およびアルキル基の炭素数が7~12の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位を有する[1]または[2]記載の両面粘着シート。
[4]: (メタ)アクリル共重合体(a)の分子量分散度Mw/Mnが5未満である[1]~[3]いずれか記載の両面粘着シート。
[5]: [1]~[4]のいずれかの両面粘着シートの粘着層を介して被着体同士を接合した画像表示装置用積層体。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、光学用途に適用した場合においても視認性に優れ、フレキシブルディスプレイ用途に適用した場合においても皺および気泡を抑制できる基材レスの両面粘着シートを提供できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る両面粘着シートの一例を示す模式的断面図。
図2】粘着層表面のウェーブスキャン装置による測定方法を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含む。また、「フィルム」、「シート」および「テープ」は同義であり、厚みや形状によって区別されない。(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの少なくとも一方を意味する。また、各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。本件明細書における数値は、後述する実施例に記載の方法により求められる値をいう。
【0012】
1.両面粘着シート
本開示の両面粘着シート(以下、本粘着シートともいう)は、第一剥離シート、粘着層および第二剥離シートがこの順に積層された基材レスのシートである。本粘着シートは種々の被着体同士の接合に適用できる。本粘着シートは視認性に優れるので、特に光学用途用に好適である。また、本粘着シートは皺および気泡を抑制できるので、フレキシブルディスプレイ用途用として好適である。特に、折り畳みの繰り返し耐久性に優れるのでフォルダブルディスプレイ用途に好適である。
【0013】
図1に、本実施形態に係る基材レスの両面粘着シートの一例を示す模式的断面図を示す。両面粘着シート10は、粘着層3が第一剥離シート1と第二剥離シート2に挟持された基材レスのシートである。剥離バランスの観点からは、図1に示すように、本粘着シート10の幅方向(図中のX方向)両端部の長手方向(図中のZ方向)において、粘着層3に対して第一剥離シート1と第二剥離シート2が庇wを有する(粘着層3の非形成領域wを有する)態様が好ましい。
【0014】
粘着層3の表面の凹凸、例えば、うねり、波打ち、ゆず肌の程度は、ウェーブスキャン装置により確認できる。ウェーブスキャン装置にて得られる波長域0.1~0.3mmの反射強度Waは、40cm程度の近距離から視認可能な微細構造の指標であり、通常0~80の値を取る。この中でも、艶感の低下およびくもりを防止するためには、反射強度Waが0~1の範囲が好ましいとされている。ウェーブスキャン装置にて得られる波長域3~10mmの反射強度Wdは、3m程度の中距離から視認可能な微細構造の指標であり、通常0~50の値を取る。この中でも、平滑性の低下による粘着力低下を防止するためには、反射強度Wdが8~30の範囲が好ましいとされている。
【0015】
なお、反射強度Wa、Wdおよび後述する反射強度Wc、Wdの測定は、第一剥離シート1を剥がして露出した粘着層3の表面31を、図2に示すようにガラス基板4に貼付し、ガラス基板4を白紙5の上に載置した後、第二剥離シート2を剥がして露出した粘着層3の表面32をウェーブスキャン装置にて測定することにより得られる。
【0016】
本発明者が基材レスの両面粘着シートにおいて鋭意検討を重ねた結果、粘着層3の表面32の反射強度Waを1~26、反射強度Wdを0.3~8とする組み合わせにより、光学用途に適用した場合においても視認性に優れ、且つフレキシブルディスプレイ用途に適用した場合においても気泡および皺の発生を抑制できる基材レスの両面粘着シートが得られることがわかった。その理由は推測の域を出ないが、小さいうねりであるWaを前記範囲とし、且つ比較的大きいうねりであるWdを前記範囲とする組み合わせにより、被着体との密着性を良化できたことによると考えられる。
【0017】
Waの値は、主に塗工プロセスにより調整できる。具体的には、粘着剤組成物をシート状に塗工する際の固形分濃度により調整できる。固形分濃度が低くなるにつれてWaは小さくなる傾向にある(固形分濃度が高くなるにつれてWaが大きくなる傾向にある)。また、Waの値は粘着剤組成物の塗工速度により調整できる。塗工速度が速くなるにつれてWaは大きくなる傾向がある。また、Waの値はシートを形成するための粘着剤組成物の塗工時の乾燥条件(温度、時間、風量等)により調整できる。乾燥温度が高くなるにつれて、Waは大きくなる傾向がある。また、乾燥時間が長くなるにつれてWaが大きくなる傾向がある。また、乾燥風量を調整することによりWaが変動する。更に、シート状に形成した後のエージング条件(時間・温度)によりWaを調整してもよい。また、Waは膜厚によっても調整可能であり、膜厚が薄くなるにつれてWaが大きくなる傾向にある。
【0018】
Wdを調整する方法として、上記Waと同様の方法が挙げられる。中でも、乾燥温度を高くすることによりWdは大きくなる傾向にある(乾燥温度を低くすることによりWdが小さくなる傾向にある)。また、乾燥時間を長くすることによりWdが大きくなる傾向にある。
【0019】
Waのより好適な範囲は3~24であり、更に好適な範囲は4~23であり、特に好適な範囲は7~19である。また、Wdのより好適な範囲は0.5~5であり、更に好適な範囲は0.8~5であり、特に好適な範囲は1~4である。
【0020】
視認性をより優れたものとする観点からは、上記特定範囲のWaおよび上記特定範囲のWdを満たすことに加え、図2に示す粘着層3の表面32をウェーブスキャン装置にて測定した波長域1~3mmの反射強度Wcが1~12であり、且つ波長域10~30mmの反射強度Weが1~12であることが好ましい。Wcは40cm~3m程度の近~中距離から視認可能な微細構造の指標である。上記特定範囲のWaおよびWdに前記Wcを組み合わせることにより、ヘイズの低減効果がより優れたものとなる。前記特定範囲のWa、Wd、Wcに、更にWeを上記範囲とする組合せにより、輝度の明暗差を低減する効果がより優れたものとなる。なお、Weは3m以上の遠距離から視認可能な微細構造の指標である。
【0021】
Wcを調整する方法として、上記Waと同様の方法が挙げられる。中でも、固形分濃度の調整、および/又は膜厚の調整を行う方法が好適である。固形分濃度が高くなるにつれてWcが大きくなる傾向にある(固形分濃度が低くなるにつれてWcが小さくなる傾向にある)。
また、Weを調整する方法として、上記Waと同様の方法が挙げられる。中でも、シート形成後のエージング条件(時間・温度)により調整を行う方法が好適である。エージング温度が高くなるにつれてWeは大きくなる傾向にある(エージング温度が低くなるにつれてWeが小さくなる傾向にある)。
【0022】
Wcのより好適な範囲は2~11であり、更に好適な範囲は2~7である。また、Weのより好適な範囲は1~9であり、更に好適な範囲は1~7である。
【0023】
タックの観点からは、波長域0.3~1.0mmの反射強度Wbは2~30の範囲とすることが好ましい。なお、ここでいうタックとは、JIS Z-0237:2022に準ずる、J.Dow法により求められるべたつきの指標である。より好ましいWbは6~30であり、更に好ましいWbは9~25である。Wbを調整するには、塗工速度の調整を行う方法が好適である。塗工速度が速くなるにつれてWbは大きくなる傾向にある(塗工速度が遅くなるにつれてWbが小さくなる傾向にある)。
【0024】
本粘着シートは、生産性を高める観点からは、巻芯に長尺状の両面粘着シートが巻回されたロールシートの状態での生産が好ましい。例えば、外径(直径)100~1000mm程度の円筒状の巻芯に長尺状の両面粘着シートを巻回することによりロールシートが得られる。両面粘着シートの幅は、例えば100~3000mm、粘着シートの巻き長は、例えば10~3000mである。ロールシートの場合、出荷時あるいは使用時などに本粘着シートを巻出し、切断および/又は打抜き加工する。そして、第一剥離シート1を剥離除去した後に、露出した粘着層3を被着体に貼付し、次いで、第二剥離シート2を剥離除去し、それにより露出した粘着層3を他の被着体に貼付する。このような工程を経て被着体同士が接合せしめられる。
【0025】
2.粘着層
本粘着層は、粘着剤組成物から形成された層である。粘着剤組成物は、架橋型粘着剤または非架橋型粘着剤であり、エマルション型、溶剤型、無溶剤型のいずれでもよい。
【0026】
本粘着層は、上記特定範囲のWaおよび上記特定の範囲のWdを有し、且つ以下の(i)~(iii)を満たす。
(i)重量平均分子量が100万~180万の(メタ)アクリル共重合体(a)を含有する粘着層(非架橋型粘着剤からなる粘着層)、又は(メタ)アクリル共重合体(a)を含む粘着剤組成物を架橋してなる粘着層(架橋型粘着剤を架橋して得られる粘着層)である。
(ii)23℃℃における貯蔵弾性率が1×10~8×10Paである。
(iii)DSCによるガラス転移温度が-70℃≦Tg≦-35℃である。
【0027】
本粘着層によれば、例えばロール状の両面粘着シート(第一剥離シート/粘着層/第二剥離シート)の段階において、粘着層の変形を効果的に抑えることができる。また、本粘着層によれば、繰り返しの屈曲に耐え、屈曲状態から元の状態に戻るときに優れた回復率を発揮できる。気泡および皺の経時的な抑制効果は、常温(23℃)において優れた効果が得られるのみならず、低温(0℃)から高温(40℃)にわたる領域において、気泡・皺を抑制できる。
【0028】
23℃における貯蔵弾性率のより好ましい範囲は3×10~7×10Paであり、更に好ましい範囲は1×10~5×10Paである。特に、貯蔵弾性率が上記(ii)を満たす粘着層を用いることにより、粘着層の凹凸部分で気泡および皺の原因となるずれを吸収し、気泡および皺の発生を抑制できると考えられる。このため、フォルダブルディスプレイなどのフレキシブルディスプレイ用途に特に好適である。
【0029】
上記(i)を満たす粘着層は、換言すると、粘着層に、粘着剤樹脂として(メタ)アクリル共重合体(a)が含有されている、或いは架橋された(メタ)アクリル共重合体(a)を含有する。架橋は、(メタ)アクリル共重合体(a)同士の架橋であっても、(メタ)アクリル共重合体(a)と硬化剤との架橋であってもよい。粘着力および凝集力の両者を兼ね備えた粘着層を得る観点からは、(メタ)アクリル共重合体(a)と硬化剤との架橋構造を有する粘着層が好適である。上記特定範囲のWaおよびWdに加え、上記(ii)、(iii)に、上記(メタ)アクリル共重合体成分を含む(i)を組み合わせた粘着層とすることにより、粘着性および屈曲性に加え、優れた透明性が得られる。
【0030】
更に、DSCによるガラス転移温度を-70℃≦Tg≦-35℃とする(iii)と、上記特定範囲のWaおよびWdと、上記(i)、(ii)とを組み合わせた粘着層により、優れた柔軟性を引き出すことができる。その結果、フレキシブルディスプレイ用途に適用した場合においても皺および気泡を抑制できる粘着層が得られる。より好ましい範囲は-65℃≦Tg(DSC)≦-50℃であり、更に好ましい範囲は-65℃≦Tg(DSC)≦-55℃である。
【0031】
粘着層は、低温(0℃)条件下の折り畳みの気泡・皺の観点からは、0℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10~1.5×10Paが好ましく、1×10~1.4×10Paがより好ましく、1.2×10~9×10Paが更に好ましい。
【0032】
また、粘着層は、高温(40℃)条件下の折り畳みの気泡・皺の観点からは、40℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が8×10~7×10Paが好ましく、1×10~5.5×10Paがより好ましく、8×10~5×10Paが更に好ましい。
【0033】
粘着層の厚みTaは任意である。粘着力を発揮しながら、光透過性、屈曲性および表面ストラクチャーを良好に保つ観点からは、粘着層の厚みTaは5~150μm程度が好適である。粘着層の厚みTaのより好適な範囲は15~120μmであり、更に好適な範囲は25~100μmである。なお、粘着層の厚みTaは後述する実施例の方法により求められる。
【0034】
粘着層の粘着力は用途に応じて任意に設計可能である。粘着層の粘着力は、後述する粘着剤組成物を構成する粘着剤樹脂の組成、粘着剤樹脂のTg、粘着剤組成物中の硬化剤の量などにより制御できる。カルボキシ基含有単量体由来の高極性な(メタ)アクリルモノマー((メタ)アクリル単量体)を単量体として用いて得た(メタ)アクリル共重合体(a)を用いることにより粘着力を高められる。粘着剤樹脂のTgが低いほど粘着力が高くなる傾向にある。更に、粘着剤組成物中の硬化剤の量が少ないほど粘着力が高くなる傾向にある。
【0035】
粘着層は、両面粘着シートにおいて凝集破壊を効果的に防止し、デントを効果的に抑制する観点から、ソフトセグメントを含む連続相と、ハードセグメントを含む分散相とから構成される海島型ミクロ相分離構造を有する層であってもよい。粘着層は、ソフトセグメントを含む連続相を形成するマトリックスに、ハードセグメントを含む分散相が分散している構造が好ましい。ミクロ相分離構造は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)、TEM、SPM等により確認できる。ミクロ相分離構造を形成することによって、優れた伸縮性を付与し、クラック発生を効果的に抑制できる粘着層を提供できる。
【0036】
粘着層のゲル分率は、折り畳みの気泡・皺の観点からは70~90%であることが好ましい。なお、ゲル分率は後述する実施例に記載の方法により得られる。ゲル分率は75~90%であることがより好ましく、75~85%であることが更に好ましい。
【0037】
2-1.粘着剤樹脂
粘着剤樹脂として、前述したように、重量平均分子量(Mw)が100万~180万の(メタ)アクリル共重合体(a)を用いる。前記範囲の(メタ)アクリル共重合体(a)を用いることにより、強度に優れるのみならず、優れた抜き加工性が得られる。(メタ)アクリル共重合体(a)のMwの下限は110万がより好ましい。また、前記Mwの上限は170万がより好ましく、150万が更に好ましく、130万が特に好ましい。また、低温(0℃)から高温(40℃)にわたる領域の折り畳み時の経時的な気泡・皺を抑制する観点から、(メタ)アクリル共重合体(a)の分子量分散度Mw/Mnは5未満であることが好ましい。より好ましくは2~4.5であり、更に好ましくは2.5~4である。
【0038】
(メタ)アクリル共重合体(a)は、単量体として(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの好適例として(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が例示できる。架橋型粘着層を形成する場合には、官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して得られる(メタ)アクリル共重合体が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖、分岐鎖のいずれであってもよい。アルキル基は炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリルが挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリル共重合体(a)は、アルキル基の炭素数が1~6の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a-1)由来の構成単位、およびアルキル基の炭素数が7~12の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a-2)由来の構成単位を有することが好ましい。アルキル基の炭素数が1~6の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位を1種類以上含むことで、短い接触時間において被着体界面との相互作用が発現しやすく、密着力を高めることができる。また、アルキル基の炭素数が7~12の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位を1種類以上含むことで、長い接触時間において被着体界面に濡れ広がりやすく、密着力を高めることができる。
【0041】
(メタ)アクリル共重合体(a)のより好ましい形態として、アルキル基の炭素数が1~4の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位を1種類以上と、アルキル基の炭素数が8~12の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位を1種類以上との組み合わせが挙げられる。好適な組合せとして、(a-1)として(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(a-2)として(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシルから選択される任意の組合せが例示できる。
【0042】
(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対して、直鎖または分岐鎖のアルキル基を含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位は10~100質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましく、30~80質量%が更に好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル共重合体(a)に用いる単量体として、アルキル基が環状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a-3)も好適に用いられる。このような単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-n-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。これらの中でも特に、屈曲性、粘着力の観点から(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。
【0044】
単量体(a-1)に対する単量体(a-2)の比率(a-2)/(a-1)は、低温・常温・高温条件下の折り畳み時の気泡・皺をより効果的に発揮させる観点から0.9~20が好ましく、1~20がより好ましく、3~20がさらに好ましく、4~20が特に好ましい。
【0045】
単量体(a-2)のうち、アルキル基の炭素数が12の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと単量体(a-1)の併用が回復率の観点から好適である。また、回復率の観点からは、更に、アルキル基の炭素数が1~6の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a-1)およびアルキル基の炭素数が8~12の鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a-2)の併用に加えて、単量体(a-3)の併用が好適である。
【0046】
官能基含有モノマーとしては、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマーが例示できる。官能基含有モノマーを含有することにより粘着剤の凝集力が向上し、強靱な粘着層が得られる。
【0047】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸p-カルボキシベンジル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸およびイソクロトン酸が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が凝集力および粘着力の観点から好ましい。
【0048】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルエステルが挙げられる。これらの中でも、凝集力および粘着力の観点から、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。
【0049】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが挙げられる。
【0050】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルが挙げられる。
【0051】
タックの観点からは、(メタ)アクリル共重合体(a)のTg(DSC)が-70℃<Tg<-35℃が好ましい。より好ましくは-65~-40℃、更に好ましくは-65~-50℃である。
【0052】
(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対し、官能基含有モノマー由来の構造単位の合計は1~20質量%が好ましい。前記範囲とすることにより、硬化剤との反応で凝集力を調整することができ、屈曲性および回復率を高めることができる。
(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対し、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は1~10質量%が好ましい。前記範囲にあることで粘着層の凝集力と緩和性を両立できる。また、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対し、水酸基含有モノマー由来の構成単位は1~10質量%が好ましい。前記範囲にあることで粘着層の密着力と耐熱性を両立できる。
【0053】
(メタ)アクリル共重合体(a)は、上述した単量体と共重合可能なその他の単量体に由来する構成単位が含まれていてもよい。その他の単量体は、例えば、アルキレンオキシ基を有する単量体、その他ビニルモノマーが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリルアミドが例示できる。前記その他の単量体に由来する構造単位は、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%中、0.1~20質量%が好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル共重合体(a)は、単量体混合物を重合することにより得られる。重合時には、必要に応じて重合開始剤を用いる。重合開始剤の含有量は、モノマー混合物100質量部に対して例えば0.01~10質量部とする。重合方法は限定されない。例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合および懸濁重合により重合できる。溶液重合で用いる溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが例示できる。重合温度は例えば60~120℃、重合時間は2~12時間程度である。
【0055】
粘着剤樹脂として、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、(メタ)アクリル共重合体(a)以外のその他の樹脂を含有していてもよい。その他の樹脂として、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂が例示できる。これらの樹脂は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0056】
2-2.硬化剤
本粘着剤組成物は、前述したように、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤として、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート等が挙げられる。硬化剤は低分子化合物でも高分子化合物でもよい。官能基がヒドロキシ基、カルボキシ基の場合には、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましく、これらの中でも、イソシアネート化合物が高い凝集力と密着性を両立できる観点から好ましい。
【0057】
イソシアネート硬化剤の中でも、芳香族含有イソシアネートがより好ましい。(メタ)アクリル共重合体(a)と芳香族含有イソシアネート硬化剤を含む粘着剤組成物を用いることにより、より優れた回復率が得られる。(メタ)アクリル共重合体(a)と硬化剤の相溶性の観点から、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートのような芳香環を有するイソシアネート硬化剤(b)が好ましい。
【0058】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
【0059】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0060】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0061】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0062】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0063】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0064】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0065】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物が挙げられる。
【0066】
イソシアネート化合物は、充分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、およびヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0067】
エポキシ化合物は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタンが挙げられる。
【0068】
アジリジン化合物は、例えばN,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンが挙げられる。
【0069】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV-03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0070】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0071】
硬化剤は、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量部に対して0.001~1質量部含むことが好ましく、0.01~0.1質量部含むことがより好ましい。含有量が0.001質量部以上になると凝集力がより向上し、1質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために好ましい。
【0072】
2-3.重合開始剤
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、過酸化物およびアゾ化合物が好適である。アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビスプロピオニトリル;1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリルが挙げられる。過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0073】
2-4.ハードセグメント
本粘着剤組成物は、必要に応じて、粘着層において海島型ミクロ相分離構造を形成するためにハードセグメントを添加してもよい。ハードセグメントは、ソフトセグメントよりTgが高く、非架橋性のビーズ状粒子からなる。ビーズ状粒子としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が例示できる。粘着剤樹脂と相溶性に優れる樹脂が好ましい。係る観点から、同種の樹脂を用いることが好適である。相溶性の観点から、ソフトセグメントである(メタ)アクリル共重合体(a)に対し、ハードセグメントも(メタ)アクリル系樹脂の組合せが好ましい。
【0074】
2-5.その他の添加剤
本粘着剤組成物は、必要に応じて溶媒、粘着付与剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。
【0075】
溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトンが挙げられる。また、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン、α-ピネン、ターピノーレン、リモネン等の脂肪族炭化水素挙げられる。溶媒は単独で若しくは組み合わせて用いられる。
【0076】
粘着付与剤としては、重量平均分子量が1万以下の粘着性化合物が挙げられる。例えば、ロジン系樹脂、重合ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、重合ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル共重合体(a)との相溶性が良く粘着性能がより向上できる点から、ロジン系樹脂、重合ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂および重合ロジンエステル系樹脂が好ましく、ロジンエステル系樹脂および重合ロジンエステル系樹脂がより好ましい。粘着付与樹脂は、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量部に対して0.01~10質量部用いることが好ましく、0.5~7質量部がより好ましい。粘着付与樹脂を0.01~10質量部用いると高い粘着力を得ることができる。
【0077】
シランカップリング剤は、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0078】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.05~5質量部がより好ましい。
【0079】
充填剤を添加することにより光学特性、および機械特性を調整できる。充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系白色顔料が例示できる。
【0080】
3.第一剥離シートおよび第二剥離シート
粘着層は第一剥離シートと第二剥離シートにより挟持されている。粘着層のWa~Weは、粘着層の剥離シート、特に第二剥離シートの離型層の種類によっても影響を受ける。
第一剥離シート1,第二剥離シート2の剥離力は、各剥離シートの粘着層との貼付面の離型処理により調整できる。例えば、離型剤の種類により剥離力を調整できる。また、離型剤の塗布量により剥離力を調整できる。更に、離型層の表面粗さにより調整できる。また、粘着層を形成する粘着剤組成物によっても調整できる。剥離力を高めたい場合には、表面粗さを平滑にする、離型剤の塗布量を多くする等の処理が有効であり、剥離力を弱めたい場合には、その逆に調整すればよい。
【0081】
第一剥離シートと第二剥離シートは任意に選定可能であり、同一の剥離シートを用いてもよい。ハンドリングの観点からは、第一剥離シートが軽剥離シートであり、第二剥離シートが重剥離シートであることが好ましい。軽剥離シートの厚みTlは25~100μm、重剥離シートの厚みは50~188μmの範囲とし、且つ、Tl<Thの関係を満たすことが好ましい。また、粘着シートロールとする場合には、軽剥離シートを巻外側に設けることが好ましい。
【0082】
粘着層から第一剥離シートを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力Plは適宜調整できるが、粘着層の浮き、部分剥離などのトンネリング現象を効果的に抑制する観点からは0.02~0.30N/25mmとすることが好ましい。また、粘着層と第二剥離シートのナキワカレの現象を効果的に抑制する観点からは、粘着層から第一剥離シートを剥離した後に、当該粘着層から更に第二剥離シートを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力Phが剥離力Plとの関係において、Ph/Plを2~6の範囲を満たす範囲においてPhを0.10~0.80N/25mmとすることが好ましい。
【0083】
第一剥離シートおよび第二剥離シートとしては、例えば、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリブテンシート、ポリブタジエンシート、ポリメチルペンテンシート、ポリ塩化ビニルシート、塩化ビニル共重合体シート、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリブチレンテレフタレートシート、ポリウレタンシート、エチレン酢酸ビニルシート、アイオノマー樹脂シート、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体シート、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体シート、ポリスチレンシート、ポリカーボネートシート、ポリイミドシート、フッ素樹脂シートが例示できる。第一剥離シートは、単層でも積層体であってもよい。
【0084】
第一剥離シート1および/又は第二剥離シート2自体に離型性を有するシートを用いる他、粘着層3との接合面に離型剤を塗工することにより離型性を付与してもよい。離型剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の離型剤を塗工する方法がある。離型剤の種類を代えることにより、剥離力を調整できる。
【0085】
離型層の形成方法は、剥離基材上に離型剤組成物を塗布することで形成する方法が好適である。離型剤は、離型層を形成させるべく塗工する際に溶剤を含むことができる。溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタンなどの炭化水素系溶剤; トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤; 酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤; アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。
【0086】
離型剤の塗工方式としては、マイクログラビアコーター、グラビアコーター等がある。離型剤は、固形分質量で0.1~2.0g/m、好ましくは0.5~1.2g/m程度になるように塗布し、硬化により離型層を設けることができる。
【0087】
硬化方法としては、簡便に硬化を促進するために熱硬化が好ましい。硬化温度としては、特に限定されるものではないが、80~130℃が好ましい。80℃以上であると充分に硬化させるのに長時間の加熱が必要となることはなく、生産性が高められる。また、130℃未満であると、基材または剥離基材において熱による皺の発生を低減できる。離型層の厚みは特に限定されない。例えば0.1~2μm程度である。
【0088】
4.両面粘着シートの製造
本開示の両面粘着シートは、公知の方法により製造できる。例えば、第二剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜し、硬化させて粘着層を形成する工程と、粘着層の一方の露出面に第一剥離シートを貼付して、両面粘着シートを製造できる。そして、得られた両面粘着シートをロール状に巻き取ることにより、ロールシートが得られる。
【0089】
塗工は、例えば、マイクログラビアコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、ダイコーター、カーテンコーターにより行うことができる。粘着剤組成物に溶剤が含まれている場合には、塗工後、乾燥工程により溶剤を除去する。硬化は、例えばエージングにより硬化せしめる。光硬化性粘着剤組成物の場合には、UV等を照射することにより硬化せしめる。
【0090】
両面粘着シートを製造後、又は両面粘着シートを製造しながら、巻芯に両面粘着シートをロール状に巻回することにより両面粘着シートロールが得られる。巻き取りの長さは用途により設計し得る。生産性を高める観点からは50m以上であることが好ましく、100m以上であることがさらに好ましい。巻き取りの長さは、製造歩留まりの観点から2500m以下とすることが好ましい。
【0091】
また、第一剥離シート、第二剥離シートの剥離面に、粘着層を乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗工して、2つの粘着層をそれぞれ形成した後、各粘着層を貼付する方法により製造してもよい。
【0092】
5.画像表示装置用積層体
本開示の画像表示装置用積層体は、本両面粘着シートの粘着層を介して被着体同士が接合されている。本画像表示装置用積層体は、フレキシブルディスプレイ用途に適用した場合においても皺および気泡を抑制できる基材レスの両面粘着シートを用いて形成されるので、視認性が求められる液晶素子、有機EL素子等の光学素子に好適である。フレキシブルディスプレイは、屈曲可能なディスプレイであり、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ、折り畳みが可能なフォルダブルディスプレイが例示できる。
【0093】
本粘着シートから形成された粘着層は、屈曲可能な部材(被着体)同士の接合に好適である。例えば、液晶ポリマーシート、発光ポリマーシート、シート状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELシート)、電子ペーパーモジュール、透明導電性シート、金属メッシュシート、シートセンサー、カバーシート、バリアフィルム、偏光フィルム、偏光子、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルムの任意の組合せの部材同士の貼付に好適である。
【実施例
【0094】
以下、実施例に基づき本開示を更に詳しく説明する。但し、本開示は、これらによって限定されるものではない。特に断りのない限り、実施例中の「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。表中の空欄は配合していないことを表す。
【0095】
(a)測定方法
本実施例で求めた数値は、以下の方法により得られた値である。
a-1.(メタ)アクリル共重合体(a)のTg
粘着剤樹脂のTgをロボットDSC(示差走査熱量計、セイコーインスツルメンツ社製「RDC220」)により測定した。試料約2mgをアルミニウムパンに入れ、秤量して示差走査熱量計にセットし、試料を入れない同タイプのアルミニウムパンをリファレンスとして、100℃で5分間保持した後、液体窒素を用いて-120℃まで急冷した。その後、昇温速度5℃/分で昇温し、得られたDSCチャートから粘着剤樹脂のTg(℃)を決定した。
【0096】
a-2.粘着層のTg
後述する方法で製造した各実施例・比較例の両面粘着シートから第一剥離シートおよび第二剥離シートを剥がし、粘着層2mgをアルミニウムパンに入れ、秤量して示差走査熱量計にセットし、試料を入れない同タイプのアルミニウムパンをリファレンスとして、100℃で5分間保持した後、液体窒素を用いて-120℃まで急冷した。その後、昇温速度5℃/分で昇温し、得られたDSCチャートから粘着剤樹脂のTg(℃)を決定した。
【0097】
a-3.粘着剤樹脂の重量平均分子量Mwと分子量分散度Mw/Mn
Mwの測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、分子量既知のポリスチレンを標準物質として換算することによりMwと分子量分散度Mw/Mnを求めた。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
【0098】
a-4.両面粘着シートの厚みTt、粘着層の厚みTa、第一剥離シートの厚みTl、第二剥離シートの厚みTh
両面粘着シート(第一剥離シート/粘着層/第二剥離シート)の幅方向の端部から他端部まで等間隔となる10箇所を決め、その10箇所の厚みを測定し、その平均値をTtとした。なお、前記端部とは、第一剥離シート/粘着層/第二剥離シートが積層されている領域の端部をいう。次いで、両面粘着シートから第一剥離シートを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した第一剥離シートの厚みを測定した。その平均値をTlとする。その後、更に、粘着層から第二剥離シートを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した第二剥離シートの厚みを測定した。その平均値をThとする。粘着層の厚みTaは、Tt-Tl-Thより求めた。
なお、後述する参考例1については、両面粘着シートと同様に片面粘着シートの厚みTtを測定し、第一剥離シートと同様に剥離シートの厚みTlを測定し、基材フィルムから粘着層を任意の溶剤を用いて除去することで第二剥離シートと同様に基材フィルムの厚みThを測定した。
【0099】
a-5.粘着層の反射強度Wa~Weの測定
幅20mm×長さ200mmに裁断した両面粘着シートの第一剥離シートを剥がして露出した粘着層の表面に、横200mm、縦120mm、厚さ1.1mmのガラス板(青板ガラス、河村久蔵商店社製)を貼付し、当該ガラス板を厚口の白画用紙(P156J、ジョインテックス社製)の上に載置し測定試料とした。測定試料の前記第二剥離シートを剥がして露出した粘着層の表面を、ウェーブスキャン装置(BYK Gardner社製社製、wave-scan 3dual)を用い、長さ方向に150mm以上スキャンすることで、Wa~Weを測定した。
なお、参考例1については、フィルム基材を厚さ1mmの前記ガラス板上に載置し、当該ガラス板を前記白画用紙(厚口)の上に載置して測定試料とした以外は、実施例1と同様の方法で測定した。
【0100】
a-6.固形分の測定
精密天秤でアルミカップの質量(W0)を計量した。次いで、アルミカップに試料溶液を1g程度入れ、精密天秤でアルミカップ入り試料質量(W1)を計量した。アルミカップ入り試料を150℃オーブンで2時間加熱した後、オーブンから取出し常温に戻した。加熱後のアルミカップ入り試料について精密天秤にて残留質量(W2)を計量した。そして、(W2-W0)/(W1-W0)×100(%)の式にて固形分を算出した。
【0101】
a-7.貯蔵弾性率
両面粘着シートの第一剥離シートを剥がしたシートを2組用意し、粘着層同士をラミネータで貼り合わせ、第二剥離シート/粘着層/第二剥離シートの積層体を作成した。この積層体から一方面の第二剥離シートを剥離して、粘着層を順次貼り合わせていくことにより、厚さ1mmの粘着層の積層物を形成した。この積層物に対し、レオメータ(TAインスツルメント社製、DHR-2)にてφ8mmの測定プローブを用いて、歪み0.1%、周波数1Hz、-70℃から200℃まで昇温速度10℃/分の条件で貯蔵弾性率G’を測定した。得られたデータから0℃、23℃、40℃のそれぞれの温度についての測定値を読み取った。
【0102】
a-8.ゲル分率の測定
両面粘着シートを30mm×100mmの大きさに裁断し、第一剥離シートを剥離し露出した粘着層を、秤量した300メッシュのステンレス製金網(質量W0)に貼り付け、第二剥離シートを剥離して試料を得た。この試料を秤量した質量をW1とした。次いで、試料を酢酸エチル中で24時間静置後、100℃で1時間乾燥させた。その後、秤量した質量をW2とした。ゲル分率は下記式から算出した。
ゲル分率(%)={(W2-W0)/(W1-W0)}×100
【0103】
(b)(メタ)アクリル共重合体(a)の製造例
b-1.(メタ)アクリル共重合体(R1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、酢酸エチル(EtAc)80部、アクリル酸ブチル(BA)30部、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)35部、アクリル酸イソボルニル(IBXA)30部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)5部、開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下、単に「AIBN」と記述する。)0.1部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、65℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を65℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチル(EtAc)で希釈して固形分50%の(メタ)アクリル共重合体(R1)溶液を得た。得られた共重合体(R1)のMwは100万、Tgは-39℃であった。
【0104】
表1記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、(メタ)アクリル共重合体(R1)の製造と同様の方法で(メタ)アクリル共重合体(R2~R7)を製造した。
【表1】
【0105】
表中の略号は以下の通りである。
(鎖状、又は分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)
MA:アクリル酸メチル(アルキル基の炭素数1)
BA:アクリル酸n-ブチル(アルキル基の炭素数4)
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル(アルキル基の炭素数8)
2EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル(アルキル基の炭素数8)
DOA:アクリル酸ドデシル(アルキル基の炭素数12)
(その他単量体)
IBXA:アクリル酸イソボルニル
CHA:アクリル酸シクロヘキシル
AA:アクリル酸
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
【0106】
(c)粘着剤組成物の調製
c-1.粘着剤組成物C1の製造
(メタ)アクリル共重合体(R1(固形分100部に対して、硬化剤としてキシリレンジイソシアネート(XDI)(タケネート D-110N、三井化学社製)を0.1部、添加剤としてシランカップリング剤(KBM-303、信越シリコーン社製)を0.1部、さらに固形分が25%となるように酢酸エチル(EtAc)を配合し、撹拌して粘着剤組成物C1を得た。
【0107】
c-2.粘着剤組成物C2~C11の製造
表2のように(メタ)アクリル共重合体、硬化剤、添加剤の種類を変更した以外は、粘着剤組成物C1と同様の方法により、粘着剤組成物C2~C11を得た。なお、C3については後述の実施例に合わせて固形分を適宜調整した。
【表2】
【0108】
表中の略号は以下の通りである。
(硬化剤)
XDI:キシリレンジイソシアネート(タケネート D-110N、三井化学社製)
TDI:トルエンジイソシアネート(コスモネート T100、三井化学ファイン社製)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(トリメチロールプロパンのアダクト体)(タケネート D-160N、三井化学社製)
EP:エポキシ系硬化剤(E-5XM、綜研化学社製)
SC:シランカップリング剤(KBM-303、信越シリコーン社製)
TF:タッキファイヤー(D-125、荒川化学工業社製)
【0109】
(d)両面粘着シートの製造例
d-1.実施例1
厚さ75μm、幅30cmの第二剥離シート(重剥離ポリエチレンテレフタレート製セパレータ)の離型層上に、粘着剤組成物C1を、乾燥後の粘着層の厚さが50μm、幅20cmになるようにダイコーターを用いて速度10m/minで塗工し、120℃の熱風オーブンで2分間乾燥することで粘着層を形成した。次いで、この粘着層に、厚さ50μm、幅30cmの第一剥離シート(軽剥離ポリエチレンテレフタレート製セパレータ)の離型層を貼り合せて両面粘着シートを作製した。得られた両面粘着シートを直径3インチのABSコアに皺ができないように気を付けながら、張力50Nで、長さ50m巻き取り、ロール状の両面粘着シートを作製した。作製したロール状の両面粘着シートは、温度40℃相対湿度50%の条件で1週間エージングさせた。その後、ロールの外巻き側から巻き出し、5m巻きだした位置を起点とし、更に長手方向50cmを巻き出して切り出し、幅30cm×長手方向50cmの外巻きの両面粘着シートを得た。
別途、ロールの内巻き側(巻き芯側)の両面粘着シート端部から5mの位置を起点とし、外巻き側に向かって長手方向50cm迄を切り出し、幅30cm×長手方向50cmの内巻きの両面粘着シートを得た。
【0110】
d-2.実施例2~35、比較例1~6
表3~5記載の粘着剤組成物、塗工条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~35,比較例1~6に係る両面粘着シートを得た。
【0111】
d-3.参考例1
厚さ75μm、幅30cmの剥離フィルム(東レフィルム加工社製、BX8A)の離型層上に、粘着剤組成物C9を、乾燥後の厚みが50μm、幅20cmになるようにダイコーターを用いて速度10m/minで塗工し、120℃の熱風オーブンで2分間乾燥することで粘着層を形成した。次いで、この粘着層に、厚さ23μm、幅30cmのフィルム基材(東レ社製、U403)を貼り合せて片面粘着シートを作製した。得られた基材付き片面粘着シートを直径3インチのABSコアに皺ができないように気を付けながら、張力50Nで、長さ50m巻き取り、ロール状の片面粘着シートを作製した。作製したロール状の片面粘着シートは、温度40℃相対湿度50%の条件で1週間エージングさせた。その後、実施例1と同様の方法にて外巻きの片面粘着シートおよび内巻きの片面粘着シートを得た。
【0112】
(e)両面粘着シート等の評価
各実施例・比較例の両面粘着シートおよび参考例の片面粘着シートについて以下の評価を行った。結果を表3~5に示す。なお、本実施例および比較例において、第一剥離シートはいわゆる軽剥離シートであり、第二剥離シートはいわゆる重剥離シートである。
e-1.視認性の評価
各実施例・比較例の外巻きの両面粘着シートを80mm×40mmにカットし、第一剥離シートを剥がし、ガラス板に貼付した。さらに、第二剥離シートを剥がし、有機ELモジュール(テイデック社製、REC001602A-W)に貼付し、ディスプレイとした。ディスプレイには、黒背景に白文字(大文字A~P、小文字a~pの計32文字)を表示し、水平なテーブルの上に設置した。観測者は水平方向から30°立ち上がった角度と、45°立ち上がった角度と、90°立ち上がった垂直方向の3つの角度より、ディスプレイ光を観察した。両面粘着シートの貼付前後でディスプレイに表示された画像の歪み、および輪郭のにじみを観測者が目視で比較評価した。
参考例1については剥離シートを剥がし、有機ELモジュール(テイデック社製REC001602A-W)に貼付し、基材フィルムの上にガラス板を載置し、ディスプレイとした以外は実施例1と同様の方法で評価した。
評価基準は以下の通りとした。3以上が良好であり、2は実用可能である。
5:いずれの角度条件においても、歪みおよび輪郭のにじみが見られない。
4:いずれか1つの角度条件において、歪みおよび/又は輪郭のにじみが若干見られる。
3:いずれか2つの角度条件において、歪みおよび/又は輪郭のにじみが若干見られる。
2:全ての角度条件において、歪みおよび/又は輪郭のにじみが若干見られるが、実用上問題ない。
1:いずれか1つ以上の角度条件において、歪みおよび/又は輪郭のにじみが「若干」の範囲を超えて見られ、多数の文字の判別が困難である。
なお、上記において「若干」とは、歪み、および輪郭のにじみにより判別困難な文字が32文字中2文字以下である。
【0113】
e-2.気泡・皺(ロール)の評価
各実施例・比較例・参考例の内巻きの両面粘着シート等の任意の部分を10cmの正方形に4枚切り出し、ロール保管由来の気泡および皺の有無を目視で観察した。
評価基準は以下の通りである。3以上が良好であり、2は実用可能である。
5:4枚全ての両面粘着シートにおいて、1mm以上の気泡および皺が見られない。
4:3枚の両面粘着シートにおいて、1mm以上の気泡および皺が見られない。
3:2枚の両面粘着シートにおいて、1mm以上の気泡および皺が見られない。
2:1枚の両面粘着シートにおいて、1mm以上の気泡および皺が見られない。
1:全ての両面粘着シートにおいて、1mm以上の気泡および皺が見られる。
【0114】
e-3.気泡・皺(折り畳み)の評価
各実施例・比較例の外巻きの両面粘着シートから第一剥離シートを剥がし、露出した粘着層をポリイミドフィルムにラミネートした。
次いで第二剥離シートを粘着層から剥がし、露出した粘着層を易接着PETフィルムにラミネートした。ラミネート物をオートクレーブに投入し50℃20分間保持した。次に、ラミネート物を取り出し25℃、50%RHで30分間静置した後、幅70mm・長さ100mmの大きさに裁断して、易接着PETフィルム/粘着層/ポリイミドからなる試験用積層体を得た。
次いで試験用積層体を、23℃、50%RH雰囲気において面状体無負荷捻回試験機(ユアサシステム機器社製)にて、折り曲げた後、折り曲げる前の状態に戻るまでを1サイクルとして20万サイクルを繰り返し行った。試験はN=5で行い、試験後の外観を目視で評価した。参考例1については、剥離シートを剥がしてフィルム基材付き粘着層を得、露出した粘着層をポリイミドフィルムにラミネートした構成に変更した以外は、実施例1と同様の方法で評価した。評価基準は以下の通りである。
5:5サンプル全てにおいて、気泡および皺が見られない。
4:1サンプルにおいて、気泡および/又は皺が見られた。
3:2サンプルにおいて、気泡および/又は皺が見られた。
2:3サンプルにおいて、気泡および/又は皺が見られた。
1:4サンプル又は全てのサンプルにおいて、気泡および/又は皺が見られた。
上記温度23℃から0℃、40℃それぞれに変更した以外は同様の方法にて、気泡・皺(折り畳み)の評価を行った。評価基準は23℃と同様である。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
反射強度Waが1~26、且つ反射強度Wdが0.3~8の両者を満たさない両面粘着シートは、比較例1~4に示すように、視認性が低下すること、気泡・皺において課題が確認された。また、反射強度Waが1~26、且つ反射強度Wdが0.3~8の両社を満たすが、粘着層が上記(i)~(iii)を満たさない両面粘着シートは、比較例5~6に示すように、気泡・皺(折り畳み)において課題が確認された。これに対し、反射強度Waが1~26、且つ反射強度Wdが0.3~8の両者を満たし、且つ粘着層が上記(i)~(iii)を満たす両面粘着シートは、本実施例1~35に示すように、視認性に優れ、皺および気泡を抑制できた。
【符号の説明】
【0119】
1:第一剥離シート
2:第二剥離シート
3:粘着層
4:ガラス基板
5:白紙
10:両面粘着シート
31、32:表面
【要約】
【課題】光学用途に適用した場合においても視認性に優れ、フレキシブルディスプレイ用途に適用した場合においても皺および気泡を抑制できる基材レスの両面粘着シートを提供する。
【解決手段】両面粘着シートは、第一剥離シート1、粘着層3、第二剥離シート2の順に積層された基材レスの両面粘着シートであって、粘着層3の表面をウェーブスキャン装置にて測定したときに、波長域0.1~0.3mmの反射強度Waが1~26であり、且つ波長域3~10mmの反射強度Wdが0.3~8である。粘着層3は(i)重量平均分子量が100万~180万の(メタ)アクリル共重合体(a)を含有する粘着層、および(メタ)アクリル共重合体(a)を含む粘着剤組成物を架橋してなる粘着層のいずれか一方であり、(ii)23℃における貯蔵弾性率が1×10~8×10Paであり、且つ(iii)DSCによるガラス転移温度が-70℃≦Tg≦-35℃である。
【選択図】図1
図1
図2