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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】作業者見守りシステム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20230808BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20230808BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G08B21/02
B66F9/24 L
G08B25/04 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019063843
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020166349
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】古谷 将吾
(72)【発明者】
【氏名】澤田 拓哉
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209718(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026411(WO,A1)
【文献】特開2014-118275(JP,A)
【文献】実開平01-156256(JP,U)
【文献】特開2005-071378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F9/00-11/04
E02F9/00-9/18
9/24-9/28
G08B19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の作業用移動機器に装着されてビーコンIDを含む第1のビーコン信号を発生する第1のビーコン信号発生器を備えた1以上の移動機器用通信端末器と、
1以上の作業者に装着されて1以上の第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部と、該第1のビーコン信号受信部が受信した前記1以上の第1のビーコン信号の電波強度から、前記作業者が前記ビーコンIDによって特定される前記1以上の作業用移動機器の周囲に設定した危険範囲内にいるか否かを判定して第1の危険判定信号を発生する第1の危険判定部と、前記第1の危険判定信号を受信するとビーコンIDを含む第2のビーコン信号を発生する第2のビーコン信号発生器を備えた1以上の作業者用通信端末器と、
1以上の運転者に装着されて前記第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部と、前記第2のビーコン信号受信部が前記第2のビーコン信号を受信すると第2の危険判定信号を発生する第2の危険判定部を少なくとも備えた1以上の運転者用通信端末器を備え、
前記移動機器用通信端末器には、装着された前記作業用移動機器が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出して移動可能信号を出力する移動可能状態検出部が設けられ、
前記移動可能状態検出部は、前記作業用移動機器の運転開始スイッチがオン状態にあるときに、前記移動可能信号を出力するものであり、
前記第1のビーコン信号発生器は、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力しているときの前記第1のビーコン信号の電波強度を、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力していないときの前記第1のビーコン信号の電波強度よりも強くするように構成されていることを特徴とする作業者見守りシステム。
【請求項2】
前記1以上の運転者用通信端末器は、前記第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部と、該第1のビーコン信号受信部が受信した1以上の前記第1のビーコン信号の電波強度から、前記運転者が前記1以上の作業用移動機器に乗っているか否かを判定して搭乗判定信号を発生する搭乗判定部をさらに備えており、
前記第2のビーコン信号受信部は、前記搭乗判定信号を受信すると受信可能になることを特徴とする請求項1に記載の作業者見守りシステム。
【請求項3】
1以上の作業用移動機器に装着されてビーコンIDを含む第1のビーコン信号を発生する第1のビーコン信号発生器を備えた1以上の移動機器用通信端末器と、
1以上の作業者に装着されて1以上の第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部と、該第1のビーコン信号受信部が受信した前記1以上の第1のビーコン信号の電波強度から、前記作業者が前記ビーコンIDによって特定される前記1以上の作業用移動機器の周囲に設定した危険範囲内にいるか否かを判定して第1の危険判定信号を発生する第1の危険判定部と、前記第1の危険判定信号を受信するとビーコンIDを含む第2のビーコン信号を発生する第2のビーコン信号発生器を備えた1以上の作業者用通信端末器と、
1以上の運転者に装着されて前記第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部と、前記第2のビーコン信号受信部が前記第2のビーコン信号を受信すると第2の危険判定信号を発生する第2の危険判定部を少なくとも備えた1以上の運転者用通信端末器を備え、
前記移動機器用通信端末器には、装着された前記作業用移動機器が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出して移動可能信号を出力する移動可能状態検出部が設けられ、
前記第1のビーコン信号発生器は、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力しているときの前記第1のビーコン信号の電波強度を、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力していないときの前記第1のビーコン信号の電波強度よりも強くするように構成されており、
前記作業用移動機器が原動機として電動機を用いており、
前記電動機の駆動電流を検出する電流検出器をさらに備えており、
前記移動可能状態検出部は、前記電流検出器が前記駆動電流が流れていることを検出しているときに、前記移動可能信号を出力することを特徴とする作業者見守りシステム。
【請求項4】
1以上の作業用移動機器に装着されてビーコンIDを含む第1のビーコン信号を発生する第1のビーコン信号発生器を備えた1以上の移動機器用通信端末器と、
1以上の作業者に装着されて1以上の第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部と、該第1のビーコン信号受信部が受信した前記1以上の第1のビーコン信号の電波強度から、前記作業者が前記ビーコンIDによって特定される前記1以上の作業用移動機器の周囲に設定した危険範囲内にいるか否かを判定して第1の危険判定信号を発生する第1の危険判定部と、前記第1の危険判定信号を受信するとビーコンIDを含む第2のビーコン信号を発生する第2のビーコン信号発生器を備えた1以上の作業者用通信端末器と、
1以上の運転者に装着されて前記第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部と、前記第2のビーコン信号受信部が前記第2のビーコン信号を受信すると第2の危険判定信号を発生する第2の危険判定部を少なくとも備えた1以上の運転者用通信端末器を備え、
前記移動機器用通信端末器には、装着された前記作業用移動機器が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出して移動可能信号を出力する移動可能状態検出部が設けられ、
前記第1のビーコン信号発生器は、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力しているときの前記第1のビーコン信号の電波強度を、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力していないときの前記第1のビーコン信号の電波強度よりも強くするように構成されており、
前記作業用移動機器が発生する振動を検知する振動検知器をさらに備えており、
前記移動可能状態検出部は、前記振動検知器が前記振動が発生している状態において、前記移動可能信号を出力することを特徴とする作業者見守りシステム。
【請求項5】
前記第1のビーコン信号発生器は、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力しているときの前記第1のビーコン信号の電波強度を前記振動検知器が検出する振動の大きさに応じて段階的に又は連続的に増減することを特徴とする請求項に記載の作業者見守りシステム。
【請求項6】
前記移動可能状態検出部は、前記作業用移動機器の移動速度又は加速度を検出する速度又は加速度検出器を備えており、
前記第1のビーコン信号発生器は、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力しているときの前記第1のビーコン信号の電波強度を前記速度又は加速度検出器が検出する前記速度又は加速度に応じて段階的に又は連続的に増減することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の作業者見守りシステム。
【請求項7】
前記第1の危険判定部は、前記第1の危険判定信号が出力されると前記作業者に前記危険範囲内にいることを知らせる警報を発生する第1の警報発生器を含んでおり、
前記第2の危険判定部は、前記第2の危険判定信号が出力されると前記運転者に前記危険範囲内に1以上の前記作業者がいることを知らせる警報を発生する第2の警報発生器を含んでいる請求項1に記載の作業者見守りシステム。
【請求項8】
前記作業者用通信端末器及び前記運転者用通信端末器は、前記作業者用通信端末器及び前記運転者用通信端末器のいずれにも兼用可能な兼用通信端末器によって構成されており、
前記兼用通信端末器は、
前記作業者用通信端末器または前記運転者用通信端末器のいずれの機能に切り替わるのかを決定して機能切替をする機能切替部と、
前記第1のビーコン信号を受信する前記第1のビーコン信号受信部と、
前記第2のビーコン信号を受信する前記第2のビーコン信号受信部と、
前記第2のビーコン信号を発生する前記第2のビーコン信号発生器と、
前記第1の危険判定部及び前記第2の危険判定部を備え、
前記機能切替部は、前記第1のビーコン信号受信部が受信する前記第1のビーコン信号の電波強度を検出し、検出した前記第1のビーコン信号の前記電波強度が予め定めた切替強度以上あるときには、前記機能を前記運転者用通信端末器の機能に切り替え、検出した前記第1のビーコン信号の前記電波強度が前記切替強度より弱いときには、前記機能を前記作業者用通信端末器の機能に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の作業者見守りシステム。
【請求項9】
1以上の作業用移動機器に装着されてビーコンIDを含む第1のビーコン信号を発生する第1のビーコン信号発生器を備えた1以上の移動機器用通信端末器と、
1以上の作業者に装着されて1以上の第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部と、該第1のビーコン信号受信部が受信した前記1以上の第1のビーコン信号の電波強度から、前記作業者が前記ビーコンIDによって特定される前記1以上の作業用移動機器の周囲に設定した危険範囲内にいるか否かを判定して第1の危険判定信号を発生する第1の危険判定部と、前記第1の危険判定信号を受信するとビーコンIDを含む第2のビーコン信号を発生する第2のビーコン信号発生器を備えた1以上の作業者用通信端末器と、
1以上の運転者に装着されて前記第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部と、前記第2のビーコン信号受信部が前記第2のビーコン信号を受信すると第2の危険判定信号を発生する第2の危険判定部を少なくとも備えた1以上の運転者用通信端末器を備え、
前記移動機器用通信端末器には、装着された前記作業用移動機器が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出して移動可能信号を出力する移動可能状態検出部が設けられ、
前記第1のビーコン信号発生器は、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力しているときの前記第1のビーコン信号の電波強度を、前記移動可能状態検出部が前記移動可能信号を出力していないときの前記第1のビーコン信号の電波強度よりも強くするように構成されており、
前記作業者用通信端末器及び前記運転者用通信端末器は、前記作業者用通信端末器及び前記運転者用通信端末器のいずれにも兼用可能な兼用通信端末器によって構成されており、
前記兼用通信端末器は、常時は前記作業者用通信端末器として動作するように構成されており、
前記作業者用通信端末器の動作から前記運転者用通信端末器の動作に切り替える機能切替をする機能切替部と、
前記第1のビーコン信号を受信する前記第1のビーコン信号受信部と、
前記第2のビーコン信号を受信する前記第2のビーコン信号受信部と、
前記第2のビーコン信号を発生する前記第2のビーコン信号発生器と、
前記第1の危険判定部及び前記第2の危険判定部とを備え、
前記機能切替部は、前記第1のビーコン信号受信部で検出した前記第1のビーコン信号の前記電波強度が予め定めた切替強度以上でないときには、前記兼用通信端末器を前記運転者用通信端末器の動作をする切り替えは行わず、前記第1のビーコン信号受信部で検出した前記第1のビーコン信号の前記電波強度が前記予め定めた切替強度以上になっているときには、前記兼用通信端末器が前記運転者用通信端末器の動作をするように機能を切替え、前記第1のビーコン信号受信部で検出した前記第1のビーコン信号の前記電波強度が前記予め定めた切替強度以上で受信できずに一定時間経過すると前記兼用通信端末器が前記作業者用通信端末器の動作をするように機能を切換えるように構成されている作業者見守りシステム。
【請求項10】
前記作業用移動機器には、前記移動機器用通信端末器に含まれる複数の前記ビーコン信号発生器と前記第2の危険判定信号を受信すると警報を発生する複数の警報発生器が間隔を開けて装着されている請求項1乃至9のいずれか1項に記載の作業者見守りシステム。
【請求項11】
一人の前記作業者に、位置を変えて2以上の前記作業者用通信端末器が装着されている請求項1に記載の作業者見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用移動機器の周囲にいる作業者が危険領域にいると危険信号を発生する作業者見守りシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3964405号(特許文献1)公報には、加速度センサを警報装置に備え、作業者又は作業用移動機器などの動作・移動を検出し、あらかじめ設定された距離より接近かつ移動している場合に、警告灯や警告音などにより通知し、無線を用いて相手警報装置に対して警報信号を送信する技術が開示されている。この技術では、警報装置が移動を検出することができる加速度センサを備えていて、予め設定された電波の強さの範囲内で移動している場合に警報を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3964405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、作業用移動機器が動作・移動しなければ警告が発せられないので、作業者の周囲に作業用移動機器があることを作業者に予め知らせることができない上、動作開始前又は移動開始前に運転者に周囲に作業者がいることを知らせることができない。そこで作業用移動機器が非動作又は停止状態にあるときでも、作業者又は運転者に作業用移動機器の存在を認識させようとすると、必要以上の警告によって作業者又は運転者のストレスが増大する問題がある。
【0005】
本発明の他の目的は、作業者又は運転者に過度のストレスを与えることなく、周囲に作業用移動機器があること又は作業者がいることを知らせることができる作業者見守りシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業者見守りシステムは、1以上の移動機器用通信端末器と、1以上の作業者用通信端末器と、1以上の運転者用通信端末器を備えている。1以上の移動機器用通信端末器は、1以上の作業用移動機器に装着されて、ビーコンID含む第1のビーコン信号を発生する第1のビーコン信号発生器を備えている。また1以上の作業者用通信端末器は、1以上の作業者に装着されて1以上の第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部と、該第1のビーコン信号受信部が受信した1以上の第1のビーコン信号の電波強度から、作業者がビーコンIDによって特定される1以上の作業用移動機器の周囲に設定した危険範囲内にいるか否かを判定して第1の危険判定信号を発生する第1の危険判定部と、第1の危険判定信号を受信するとビーコンIDを含む第2のビーコン信号を発生する第2のビーコン信号発生器を備えている。1以上の運転者用通信端末器は、1以上の運転者に装着されて第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部と、第2のビーコン信号受信部が第2のビーコン信号を受信すると第2の危険判定信号を発生する第2の危険判定部を少なくとも備えている。そして移動機器用通信端末器には、装着された作業用移動機器が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出して移動可能信号を出力する移動可能状態検出部が設けられている。第1のビーコン信号発生器は、移動可能状態検出部が移動可能信号を出力しているときの第1のビーコン信号の電波強度を、移動可能状態検出部が移動可能信号を出力していないときの第1のビーコン信号の電波強度よりも強くするように構成されている。
【0007】
フォークリフト、高所作業車等の作業用移動機器が非動作状態・非移動状態にあるときには、危険性が低下しているが、第1のビーコン信号は発生し続けている。そのため作業用移動機器が非動作状態・非移動状態にあるときに、作業用移動機器の周囲の広い範囲にいる作業者に警告をすると、作業者へのストレスを増やすことになる。またこの場合に、作業用移動機器を運転する運転者にも警告をすれば、運転者へのストレスを増やすことになる。そこで本発明においては、移動可能状態検出部が、作業用移動機器が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出しているときに移動可能信号を出力して、1以上の第1のビーコン信号発生器は、移動可能状態検出部が移動可能信号を出力しているときの第1のビーコン信号の電波強度を、移動可能状態検出部が移動可能信号を出力していないときの第1のビーコン信号の電波強度よりも強くするので(作業者の検知エリアを広くすることになるので)、作業用移動機器が非動作状態・非移動状態にあるときに、必要以上の人にストレスを与えることがない。そして本発明では、危険な状態が作られる可能性が高い、すなわち作業用移動機器が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出しているときに移動可能状態検出部が移動可能信号を出力する。そして、1以上の第1のビーコン信号発生器は、移動可能信号が出力されているときのビーコン信号の電波強度を、移動可能状態検出部が移動可能信号を出力していないときの第1のビーコン信号の電波強度よりも強くするので、危険な状態が作られる可能性が高いときにだけ、作業者の検知エリアを広くして、警告が必要な人に警告を発することが可能になる。したがって本発明によれば、作業者又は運転者に必要以上のストレスを与えることがない。
【0008】
また本発明では、作業者が作業用移動機器の周囲に設定した危険範囲内にいると、第2のビーコン信号が作業者用通信端末器から運転者用通信端末器に発信され、運転者用通信端末器では第2の危険判定信号が出力される。その結果、運転者にも直接作業者が危険範囲内にいることを知らせることが可能になる。
【0009】
1以上の運転者用通信端末器には、第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部と、該第1のビーコン信号受信部が受信した1以上の第1のビーコン信号の電波強度から、運転者が1以上の作業用移動機器に乗っているか否かを判定して搭乗判定信号を発生する搭乗判定部をさらに設け、第2のビーコン信号受信部を、搭乗判定信号を受信すると受信可能になるようにしてもよい。このようにすると運転者が運転席に座るまでは、第2のビーコン信号受信部が受信可能にならないので、第2の危険判定部が動作することがなく、警報等を発生する場合に用いられる第2の危険判定信号が不必要に出力されて、運転者となる者に不要なストレスをかけることがない。
【0010】
移動可能状態検出部は、作業用移動機器の運転開始スイッチがオン状態にあるときに、移動可能信号を出力してもよい。また作業用移動機器が原動機として電動機を用いている場合には、電動機の駆動電流を検出する電流検出器をさらに設ける。そして移動可能状態検出部は、電流検出器が駆動電流が流れていることを検出しているときに、移動可能信号を出力するようにしてもよい。このようにすると突然、作業用移動機器が動き出す可能性がある状態では、第1のビーコン信号の電波強度を強くして、警告が必要な人にだけ必要な警告を発することができる。
【0011】
なお作業用移動機器が発生する振動を検知する振動検知器をさらに備えていれば、移動可能状態検出部は、振動検知器が振動が発生している状態において、移動可能信号を出力するようにしてもよい。内燃機関を原動機とする作業用移動機器では、内燃機関が停止していない限り、必ず振動が発生しているので、必ず移動可能な状態にあるか否かを検出することができる。この場合、1以上の第1のビーコン信号発生器は、移動可能状態検出部が移動可能信号を出力しているときのビーコン信号の電波強度を振動検知器が検出する振動の大きさに応じて段階的に又は連続的に増減するようにしてもよい。このようにすると、作業用移動機器が移動しているときには振動が大きくなって、ビーコン信号が到達する範囲が広くなる。その結果、運転者は移動方向にいる作業者を早く認識することができる。また移動方向にいる作業者も、早期に作業用移動機器が来ていることを認識することが可能になる。
【0012】
移動可能状態検出部は、作業用移動機器の移動速度又は加速度を検出する速度又は加速度検出器を備えていてもよい。この場合、1以上の第1のビーコン信号発生器は、移動可能状態検出部が移動可能信号を出力しているときの第1のビーコン信号の電波強度を速度又は加速度検出器が検出する速度又は加速度に応じて段階的に又は連続的に増減してもよい。このようにすると、作業用移動機器が移動しているときには速度又は加速度が大きくなって、ビーコン信号が到達する範囲が広くなる。その結果、運転者は移動方向にいる作業者を早く認識することができる。また移動方向にいる作業者も、早期に作業用移動機器が来ていることを認識することが可能になる。
【0013】
第1の危険判定部は、第1の危険判定信号が出力されると作業者に危険範囲内にいることを知らせる警報を発生する第1の警報発生器を含んでおり、第2の危険判定部は、第2の危険判定信号が出力されると運転者に危険範囲内に1以上の作業者がいることを知らせる警報を発生する第2の警報発生器を含んでいればよい。
【0014】
作業者用通信端末器及び前記運転者用通信端末器は、作業者用通信端末器及び運転者用通信端末器のいずれにも兼用可能な兼用可能通信端末器として構成されていてもよい。この場合、兼用通信端末器は、作業者用通信端末器または運転者用通信端末器のいずれの機能に切り替わるのかを決定して機能切替をする機能切替部と、第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部と、第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部と、第2のビーコン信号を発生する前記第2のビーコン信号発生器と、第1の危険判定部及び第2の危険判定部を備えていればよい。そして機能切替部は、第1のビーコン信号受信部が受信する第1のビーコン信号の電波強度を検出し、検出した第1のビーコン信号の電波強度が予め定めた切替強度以上あるときには、機能を運転者用通信端末器の機能に切り替え、検出した第1のビーコン信号の電波強度が切替強度より弱いときには、機能を作業者用通信端末器の機能に切り替えればよい。このような兼用通信端末器を用いると、運転者が作業者になった場合及び作業者が運転者になった場合でも、通信端末器を交換する必要がなくなる。
【0015】
多くの作業現場では、作業者用通信端末器の数が、運転者用通信端末器の数よりも多い。そこで兼用通信端末器を用いる場合でも、原則的に兼用通信端末器を作業者用通信端末器として動作するように構成されているものを、必要に応じて運転者用通信端末器の動作に切り替える機能切換を行う機能切替部を備えた兼用通信端末器を用いる。この兼用通信端末器は、第1のビーコン信号を受信する前記第1のビーコン信号受信部と、第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部と、第2のビーコン信号を発生する第2のビーコン信号発生器と、第1の危険判定部及び第2の危険判定部とを備えている。またこの機能切替部は、第1のビーコン信号受信部で検出した第1のビーコン信号の電波強度が予め定めた切替強度以上でないときには、兼用通信端末器を運転者用通信端末器の動作をする切り替えは行わず、第1のビーコン信号受信部で検出した第1のビーコン信号の電波強度が予め定めた切替強度以上になっているときには、兼用通信端末器が運転者用通信端末器の動作をするように機能を切替え、第1のビーコン信号受信部で検出した第1のビーコン信号の電波強度が予め定めた切替強度以上で受信できずに一定時間経過すると兼用通信端末器が作業者用通信端末器の動作をするように機能を切換えるように構成されている。このようにすると原則的に兼用通信端末器を作業者用通信端末器として機能させることができて、全体として切替負荷を軽減することができる。
【0016】
また作業用移動機器には、移動機器用通信端末器に含まれる複数のビーコン信号発生器と第2の危険判定信号を受信すると警報を発生する複数の警報発生器を間隔を開けて装着するようにしてもよい。このようにすると作業用移動機器の周囲にビーコン信号が届かない死角領域ができることを極力防ぐことができる。また作業者用通信端末器に警報発生器が装着されていない又は警報発生器が壊れている作業者がいる場合でも、作業用移動機器の周囲にいる作業者に警報を聞かせることができる。
【0017】
さらに一人の作業者に、位置を変えて2以上の作業者用通信端末器を装着するようにしてもよい。2以上の作業者用通信端末器の装着位置は、例えば、作業者の前面又は背面のようにビーコン信号を受信できる方向が大きく異なるようになるのが好ましい。このようにすると作業者の作業位置又は作業姿勢でビーコン信号を受信できない状態になることを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の作業者見守りシステムの第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
図2】本実施の形態を実施する状況の一例を示す図である。
図3】移動機器用通信端末器に実装されているコンピュータにインストールされているプログラムのフローチャートである。
図4】運転者用通信端末器に実装されているコンピュータにインストールされているプログラムのフローチャートである
図5】運転者用通信端末器に実装されているコンピュータにインストールされているプログラムのサブルーチンのフローチャートである。
図6】作業者用通信端末器に実装されているコンピュータにインストールされているプログラムのフローチャートである。
図7】本発明に係る作業者見守りシステムの第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。
図8】兼用通信端末器が作業者用通信端末器機能と運転者用通信端末器の機能を果たす状態になっていることをデータの経路を矢印で示すことにより明示した第3の実施の形態の構成を示すブロック図である。
図9】兼用通信端末器をコンピュータを用いて実現する場合のプログラムのフローチャートである。
図10】機能切替部の切替動作の他の例を示すフローチャートである。
図11】作業員に複数の作業者用通信端末を装着した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の作業者見守りシステムの実施の形態について、添付の図を参照しつつ、詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の作業者見守りシステムの第1の実施の形態の構成を示すブロック図であり、図2は本実施の形態を実施する状況の一例を示す図である。
【0021】
図1及び図2において、第1の実施の形態の作業者見守りシステムは、移動機器用通信端末器10と、作業者用通信端末器20a、20b…20nと、運転者用通信端末器30を備える。移動機器用通信端末器10は、作業用移動機器40に装着されている。図示は省略するが、一つの作業場に作業用移動機器40が複数稼働している場合には、各作業用移動機器40に移動機器用通信端末器10が1つ以上装着される。移動機器用通信端末器10は、ビーコンIDを含むビーコン信号を発生する1以上の第1のビーコン信号発生器11と、後述する移動可能状態検出部12と振動検出部13を備えている。図2に示すように、本実施の形態では、作業用移動機器40の四隅に第1のビーコン信号発生器11が設置されている。なお図2には、作業者A及びBが装着する作業者用通信端末器20a、20bだけを示しているが、複数の作業者用通信端末器20a、20b…20nは、作業場において作業を行う作業者A…Nにそれぞれ装着される。
【0022】
作業者用通信端末器20a、20b…20nは、移動機器用通信端末器10のビーコン信号発生器11の発生する1以上のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部21と、該第1のビーコン信号受信部21が受信した1以上の第1のビーコン信号の電波強度から、作業者がビーコンIDによって特定される1以上の作業用移動機器40の周囲に設定した危険範囲DA内にいるか否かを判定して第1の危険判定信号を発生する第1の危険判定部22を有する。作業者用通信端末器20aに含まれる第1の危険判定部22は第1の危険判定信号を警報発生器23及び第2のビーコン信号発生器24に与える。
【0023】
警報発生器23は、第1の危険判定部22から第1の危険判定信号を受信すると、作業者用通信端末器20a、20b…20nを装着した作業者に警報を発して、作業者が危険範囲DA内にいることを知らせる。図2では危険範囲にいる作業者Bに警報を発しているが、作業者Aには警報は出ていない。この警報は代表的には警告灯の点灯または警告音の発生であり、両方でもよいが、第1の実施の形態においては警告音のみである。第2のビーコン信号発生器24は、第1の危険判定信号を受信すると、第2のビーコン信号を運転者用通信端末器30に対して発生する。
【0024】
運転者用通信端末器30は、1以上の運転者に装着されて1以上の第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部31と、該第1のビーコン信号受信部31が受信した1以上の第1のビーコン信号の電波強度から、運転者がビーコンIDによって特定される1以上の作業用移動機器に乗っているか否かを判定して搭乗判定信号を発生する搭乗判定部32と、搭乗判定信号を受信すると受信可能になって第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部33と、第2のビーコン信号受信部33が第2のビーコン信号を受信すると第2の危険判定信号を発生する第2の危険判定部34を備えている。本実施の形態では、第2の危険判定部34が警報発生部35を内蔵している。第2の危険判定部34が第2の危険判定信号を発生すると、警報発生部35は警報を発生する。第2の危険判定信号が無くなれば警報は停止する。警報は通常、警告灯及び/又は警告音による。警報により、運転者は危険範囲内に作業者がいることを認識することになるので、運転者は周囲に注意を払って運転することになる。なお警報発生器35は、運転者搭乗する移動機器用通信端末器10に実装してもよいのは勿論である。この場合には、無線で第2の危険判定信号を警報発生器35に送信すればよい。
【0025】
移動機器用通信端末器10には、移動機器用通信端末器10が装着された作業用移動機器40が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出して移動可能信号を出力する移動可能状態検出部12が設けられている。そして1以上のビーコン信号発生器11は、移動可能状態検出部12が移動可能信号を出力しているときのビーコン信号の電波強度を、移動可能状態検出部12が移動可能信号を出力していないときのビーコン信号の電波強度よりも強くするように構成されている。
【0026】
第1の実施の形態においては、移動可能状態検出部12は、作業用移動機器40の内燃機関が動いているときに発生する振動を検出する振動検出器13が振動を検出しているときに、移動可能信号を出力する。すなわち移動機器用通信端末器10は、作業用移動機器40が発生する振動の大きさを検知して移動可能信号を出力し、ビーコン信号発生器11の発生するビーコン信号の電波強度の切り換えを行う。
【0027】
なお第1の実施の形態において、作業用移動機器40が、原動機として電動機を用いる場合には、電動機の駆動電流を検出する電流検出器を設け、移動可能状態検出部12は、電流検出器が駆動電流の流れていることを検出したときに移動可能信号を出力するようにしてもよい。またキースイッチがオン状態になっているか否かにより移動可能信号を出力するようにしてもよい。駆動電流の検知またはキースイッチのオン状態の検知をする場合でも、突然作業用移動機器40が動き出す可能性のある状態では、ビーコン信号の電波強度を強くして、警告が必要な人に必要な警告を発することができる。またこの場合、移動可能状態検出部12は、運転開始スイッチがオン状態にあるとき、又は電流検出器が駆動電流を検出しているときのいずれか一方に該当するとき、あるいは両方ともに該当するときのみに、移動可能信号を発するように選択して設定することができる。また、例えば作業用移動機器40が荷の積み卸し作業や充電などの間、長時間移動しない場合には、運転開始スイッチがオンになっていても一定時間以上電動機の駆動電流が流れない場合には、移動可能信号の出力を停止して、ビーコン信号の電波強度を自動的に弱くするような制御とすることも可能である。
【0028】
図3乃至図6は、第1の実施の形態の各要素をコンピュータを利用して実現する場合のプログラムのフローチャートを示している。図3は、移動機器用通信端末器10に実装されているコンピュータにインストールされているプログラムのフローチャートである。このフローチャートでは、ステップST1において「駆動電流あり」、「振動あり」または「キースイッチのオン」の検出により移動機器用通信端末器10が装着された作業用移動機器40が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出して移動可能信号を出力する(ステップST2)。そして1以上のビーコン信号発生器11は、移動可能状態検出部12が移動可能信号を出力しているときのビーコン信号の電波強度を、移動可能状態検出部12が移動可能信号を出力していないときのビーコン信号の電波強度よりも強くする(ステップST3)。ステップST1でNoの場合には、ステップST4へと進み、第1の電波強度で第1のビーコン信号を発生する。
【0029】
図4は運転者用通信端末器30に実装されているコンピュータにインストールされているプログラムのフローチャートである。このフローチャートでは、運転者に装着されて1以上の第1のビーコン信号を受信したか否かの判定がなされる(ステップST11)。第1のビーコン信号を受信するとステップST12へと進む。そしてステップST12では、第1のビーコン信号が閾値(この例では(-65dBm以上)であるか否かの判定がなされ、YesであればステップST13へ進む。ステップST13では、運転者が搭乗したと判定し、次にステップST14で第2のビーコン信号を受信可能として、受信動作状態になる。このようにすると運転者が運転席に座るまでは、第2のビーコン信号受信部が受信可能にならないので、第2の危険判定部が動作することがなく、警報等を発生する場合に用いられる第2の危険判定信号が不必要に出力されて、運転者となる者に不要なストレスをかけることがない。
【0030】
第2のビーコン信号を受信可能な受信動作状態になった後は、図5に示すサブルーチンが実行される。また受信動作状態になった後は、ステップST15で第1のビーコン信号を閾値以上で受信できずに、一定時間が経過したかが判定され、YesであればステップST16へと進み、運転者が下車したものと判断し、ステップST11に戻る。
【0031】
図5のサブルーチンでは、ステップST21で第2のビーコン信号を受信したか否かの判定が行われる。第2のビーコン信号を受信すると、ステップST22で第2のビーコン信号が閾値以上であるか否かの判定がなされる。Yesであれば、第2の危険判定信号が第2の危険判定部34から出力されて、警報発生器35は警報を発生する(ステップST23)。ステップST24で警報の発生の有無が確認される。警報が出ていない場合があれば、ステップST21へと戻り再度の確認が行われる。警報が発生している場合には、ステップST25へと進み、第2のビーコン信号を閾値以上で一定時間受信していないかが判定される。受信していない場合にはステップST26で警報を止める。
【0032】
図6は、作業者用通信端末器20a、20b…20nに実装されているコンピュータにインストールされているプログラムのフローチャートである。このフローチャートでは、ステップST31で第1のビーコン信号の受信を判定し、ステップST32で第1のビーコン信号が閾値以上であるかが判定される。すなわち第1のビーコン信号の電波強度から、作業者がビーコンIDによって特定される1以上の作業用移動機器40の周囲に設定した危険範囲DA内にいるか否かを判定して第1の危険判定信号を発生して、第1の危険判定信号は警報発生器23を動作させると同時に、第2のビーコン信号発生器24に第2のビーコン信号を発生させる(ステップST33)。ステップST34で警報の発生の有無が確認される。警報が出ていない場合があれば、ステップST31へと戻り再度の確認が行われる。警報が発生している場合には、ステップST35へと進み第1のビーコン信号を閾値以上で一定時間受信していないかが判定される。受信していない場合にはステップST36で警報を止めるとともに、第2のビーコン信号の発生を停止する。
【0033】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明に係る作業者見守りシステムの第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。第2の実施の形態においては、運転者用通信端末器30が、第1のビーコン信号を受信しないため図1の第1の実施の形態の第1のビーコン信号受信部と搭乗判定部がない点で、第1の実施の形態と相違する。その他の点は、図1の第1の実施の形態と同じである。第2の実施の形態では、運転者が運転席に座る前でも第2のビーコン信号を受信すると警報が発生するが、この点は、そのことを知っている運転者であれば、特に大きな問題は生じない。
【0034】
(第3の実施の形態)
図8は、本発明に係る作業者見守りシステムの第3の実施の形態の構成を示すブロック図である。第3の実施の形態においては、作業者用通信端末器50a、50b…50n及び運転者用通信端末器50が、すべて内部構成が同じ兼用通信端末器によって構成されている。兼用通信端末器は、第1のビーコン信号を受信する第1のビーコン信号受信部51と、作業者用通信端末器または運転者用通信端末器のいずれの機能に切り替わるのかを決定して機能切替をする機能切替部52と、第2のビーコン信号を受信する第2のビーコン信号受信部53と、第1の危険判定部55と、第2の危険判定部54と、第2のビーコン信号を発生する第2のビーコン信号発生器56を備えている。そして兼用通信端末器は、常時は作業者用通信端末器50a、50b…50nとして動作するように構成されており、作業者用通信端末器50a、50b…50nの動作から運転者用通信端末器50の動作に切り替える機能切替をする機能切替部52を備えている。機能切替部52は、第1のビーコン信号受信部51で検出した第1のビーコン信号の電波強度が予め定めた切替強度以上でないときには、兼用通信端末器を運転者用通信端末器50の動作をする切り替えは行わず、第1のビーコン信号受信部51で検出した第1のビーコン信号の電波強度が予め定めた切替強度以上になっているときには、兼用通信端末器が運転者用通信端末器50の動作をするように機能を切替え、第1のビーコン信号受信部51で検出した第1のビーコン信号の電波強度が予め定めた切替強度以上で受信できずに一定時間経過すると兼用通信端末器が作業者用通信端末器50a、50b…50nの動作をするように機能を切り替える。
【0035】
図8は、兼用通信端末器が作業者用通信端末器50a、50b…50nの機能と運転者用通信端末器50の機能を果たす状態になっていることをデータの経路を矢印で示すことにより明示している。このようにすると原則的に兼用通信端末器を作業者用通信端末器50a、50b…50nとして機能させることができて、システム全体として切替負荷を軽減することができる。
【0036】
当初より作業者用通信端末器50a、50b…50nになっている兼用通信端末器の第1のビーコン信号受信部51が切替強度(第1の強度)よりも低い第2の電波強度以上の第1のビーコン信号を受信すると、第1の危険判定部55が動作状態となって、第1の危険判定部55から警報が発せられるとともに、第2のビーコン信号発生器56から第2のビーコン信号が出力される。第1のビーコン信号受信部51が第2の電波強度以上の第1のビーコン信号を受信できなくて一定時間経過すると、第1の危険判定部55が非動作状態となって、警報が停止し、第2のビーコン信号発生器56からの第2のビーコン信号の出力が停止される。
【0037】
なお図8に示した第1の危険判定部55は図1の第1の危険判定部22に相当し、第2の危険判定部54は図1の第2の危険判定部34に相当し、第2のビーコン信号受信部53は図1の第2のビーコン信号受信部33に相当し、第2のビーコン信号発生器56は図1の第2のビーコン信号発生器24に相当する。
【0038】
図9は、兼用通信端末器の制御を、コンピュータを用いて実現する場合のプログラムのアルゴリズムのフローチャートを示している。なおこのフローチャートは、前述の通り、通常は兼用通信端末器が作業者用通信端末器50a、50b…50nの機能に切り替わった状態になっていることを前提とする。兼用通信端末器が作業者用通信端末器50a、50b…50nとして動作する機能に切り替わっている状態では、第1のビーコン信号の電波強度が後述する閾値2以上なければ、作業者用通信端末器となっている兼用通信端末器は警報停止状態になっている。したがってこのフローチャートでは、スタート時点で、作業者が携帯する兼用通信端末器は作業者用通信端末器としての機能に切り替わっている。
【0039】
ステップST41では第1のビーコン信号の受信の有無が判定され、第1のビーコン信号を受信しているときにはステップST42へと進む。ステップST42では、第1のビーコン信号の電波強度が切替強度の閾値1(-65dBm)以上であれば(ステップST42)、兼用通信端末器を運転者用通信端末器として動作するようにする(ステップST43)。ステップST44において、兼用通信端末器が運転者用動作をしている(すなわち兼用通信端末器は運転者用通信端末器50に切り替わっている)ことが確認されると、ステップST45で第1のビーコン信号を閾値1以上で受信できずに一定時間経過したかが判断され、Yesの場合には兼用通信端末器を作業者用通信端末器に戻して作業者用動作をするように切り替える。
【0040】
ステップST42において、第1のビーコン信号の電波強度が閾値1(-65dBm)より小さいときにはステップST47に進む。ステップ47では、兼用通信端末器が運転者動作中でないか否か、すなわち運転者通信端末器に切り替わっていないことが確認される。そして第1のビーコン信号の電波強度が閾値2(-80dBm)以上であれば危険領域内にいることになり(ステップST48)、第1の危険判定部55が第1の危険判定信号を出して作業者用通信端末器は警報動作状態になる(ステップST49)。そしてステップST44へと進み、兼用通信端末器が運転者動作をしていないことが確認されると、ステップST50へと進む。ステップST50では、兼用通信端末器が作業者用端末動作のうち、警報動作状態にあるかが判定され、警報動作状態にあるときにはステップST51へと進む。ステップST51では、第1のビーコン信号が閾値2(-80dBm)以上で受信できずに一定時間が経過したか否かが判断され、Yesの場合には、ステップST52へと進んで兼用通信端末器を作業者用動作において警報停止状態に戻す。ステップST51において、第1のビーコン信号が閾値2(-80dBm)以上で受信されているときには(Noの場合には)、警報動作状態が維持される。
【0041】
図10は、機能切替部52の切替動作の他の例を示すフローチャートである。この例では、機能切替部52は、第1のビーコン信号受信部が受信する第1のビーコン信号の電波強度を検出し、検出した第1のビーコン信号の電波強度が予め定めた切替強度以上(閾値1以上)あるときには、機能を運転者用通信端末器の機能に切り替え(ステップST61及びST62)、検出した第1のビーコン信号の電波強度が切替強度(閾値1)より弱いときには、機能を作業者用通信端末器の機能に切り替える動作をする(ステップST61及びST63)。なお兼用通信端末器が作業者用通信端末器に切り替わっているときには、第1のビーコン信号の電波強度が閾値2以上あるか否かにより、警報動作状態になるか、または警報停止状態になる。
【0042】
なお図11に示すように、一人の作業者に、位置を変えて2以上の作業者用通信端末器20を装着するようにしてもよい。2以上の作業者用通信端末器20の装着位置は、図に示すように、作業者の前面又は背面のようにビーコン信号を受信できる方向が大きく異なるようにしている。このようにすると作業者の作業位置又は作業姿勢でビーコン信号を受信できない状態になることを減らすことができる。
【0043】
以上のように、各実施の形態の作業者見守りシステムについて説明したが、フォークリフト、高所作業車等の作業用移動機器が非動作状態・非移動状態にあるときには、危険性が低下しているが、ビーコン信号は発生し続けている。そのため作業用移動機器の周囲の広い範囲にいる作業者に警告をすることは作業者へのストレスを増やすことになる。またこの場合には、作業用移動機器を運転する運転者にも警告をすれば、運転者へのストレスを増やすことになる。
【0044】
そこで本実施の形態においては、移動可能状態検出部12が、作業用移動機器40が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出しているときに移動可能信号を出力して、1以上の第1のビーコン信号発生器11は、移動可能状態検出部12が移動可能信号を出力しているときの第1ビーコン信号の電波強度を、移動可能状態検出部が移動可能信号を出力していないときの第1ビーコン信号の電波強度よりも強くするので、作業用移動機器が非動作状態・非移動状態にあるときに、必要以上の人にストレスを与えることがない。そして本発明では、危険な状態が作られる可能性が高い、すなわち作業用移動機器が移動しているとき又は移動可能な状態にあるか否かを検出しているときに移動可能状態検出部12が移動可能信号を出力する。そして、1以上の第1のビーコン信号発生器11は、移動可能信号が出力されているときの第1のビーコン信号の電波強度を、移動可能状態検出部12が移動可能信号を出力していないときの第1のビーコン信号の電波強度よりも強くするので、危険な状態が作られる可能性が高いときにだけ、警告が必要な人に警告を発することが可能になる。したがって本実施の形態によれば、作業者又は運転者に必要以上のストレスを与えることがない
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の作業者見守りシステムによれば、危険な状態が作られる可能性が高いときにだけ第1のビーコン信号の電波強度を強くすることにより必要以上の警告が発生しないようにすることで、作業者又は運転者に過度のストレスを与えることなく、周囲に作業用移動機器があること又は作業者がいることを知らせることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 移動機器用通信端末器
11 第1のビーコン信号発生器
12 移動可能状態検出部
13 振動検出器
20a、20b…20n 作業者用通信端末器
21 第1のビーコン信号受信部
22 第1の危険判定部
23 警報発生器
24 第2のビーコン信号発生器
30 運転者用通信端末器
31 第1のビーコン信号受信部
32 搭乗判定部
33 第2のビーコン信号受信部
34 第2の危険判定部
35 警報発生器
40 作業用移動機器
50 兼用通信端末器
51 第1のビーコン信号受信部
52 機能切換部
53 第2のビーコン信号受信部
54 第2の危険判定部
55 第1の危険判定部
56 第2のビーコン信号発生器
DA 危険範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11