(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】血管障害の治療のためのフィラメントデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A61B17/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019042955
(22)【出願日】2019-03-08
(62)【分割の表示】P 2016234685の分割
【原出願日】2009-05-01
【審査請求日】2019-03-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-15
(32)【優先日】2008-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ マーチャンド
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジェイ. コックス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エフ. ローセンブルース
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】栗山 卓也
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-519632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0033478(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0028209(US,A1)
【文献】米国特許第6168622(US,B1)
【文献】国際公開第2006/055683(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管動脈瘤の治療のためのデバイスであって、該デバイスは、
自己拡張型弾力性透過シェルであって、該デバイスの近位端における該シェルの近位端と、該デバイスの遠位端における該シェルの遠位端と、縦軸とを有し、さらに
その近位端および遠位端において相互に対して固定される、小型フィラメントおよび大型フィラメントを含む織物構造を伴う複数の細長い弾力性フィラメントと、
マイクロカテーテル内での送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、それに伴って織物構造を伴う該複数の細長い弾力性フィラメントが、該フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在する、細長い状態と、
主要横径を伴う、該半径方向に拘束された状態に対する、球状の縦方向に短縮された構成を伴う
半径方向に拡張
された状態であって、織物構造を伴う該複数の細長い弾力性フィラメントが、該デバイスの該近位端と該デバイスの該遠位端との間の該デバイスの該縦軸から半径方向に拡張され
た平
坦な弧
状に該自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、織物構造を伴う該複数の細長い弾力性フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を含む、
半径方向に拡張
された状態と
をさらに備える、透過シェルを備えており、
該透過シェルの
前記拡張
された状態において、該複数の細長い弾力性フィラメントは、該シェルの該近位端と該シェルの該遠位端の間に
該弧を形成し、
該シェルの該近位端および該シェルの該遠位端のそれぞれが陥凹構成の逆屈曲を含み、
該弧は、該シェルの該近位端の該逆屈曲と該シェルの該遠位端の該逆屈曲との間に延びる、デバイス。
【請求項2】
患者の血管動脈瘤の治療のためのデバイスであって、該デバイスは、
自己拡張型弾力性透過シェルであって、該デバイスの近位端における該シェルの近位端と、該デバイスの遠位端における該シェルの遠位端と、縦軸とを有し、さらに
その近位端および遠位端において相互に対して固定される、小型フィラメントおよび大型フィラメントを含む織物構造を伴う複数の細長い弾力性フィラメントと、
マイクロカテーテル内での送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、それに伴って織物構造を伴う該複数の細長い弾力性フィラメントが、該フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在する、細長い状態と、
主要横径を伴う、該半径方向に拘束された状態に対する、球状の縦方向に短縮された構成を伴う
半径方向に拡張
された状態であって、織物構造を伴う該複数の細長い弾力性フィラメントが、該
シェルの該近位端と該
シェルの該遠位端との間
に該デバイスの該縦軸
に沿って平
坦な弧
状断面を有する該自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、
該シェルの該近位端および該シェルの該遠位端のそれぞれが陥凹構成の逆屈曲を含み、該弧状断面は該シェルの該近位端の該逆屈曲と該シェルの該遠位端の該逆屈曲との間に延び、該半径方向に拡張された状態は織物構造を伴う該複数の細長い弾力性フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を含む、
半径方向に拡張
された状態と
をさらに備える、透過シェルを備えて
いる、デバイス。
【請求項3】
前記透過シェルは、該透過シェルの前記近位端から前記遠位端まで延在する、約70個から約300個までのフィラメントを備える、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記拡張
された状態にある前記透過シェルの主要横径は、約4mmから約30mmまでである、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記透過シェルの前記大型フィラメントは、約0.001インチから約0.004インチまでである、横寸法または横径を備える、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記透過シェルの前記小型フィラメントは、約0.0004インチから約0.001インチまでである、横寸法または横径を備える、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記透過シェルの前記大型フィラメントの数に対する、該透過シェルの前記小型フィラメントの数の比は、約2対1から約15対1までである、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記小型フィラメントと前記大型フィラメントとの間の横寸法または横径の差は、約0.0035インチ未満である、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【請求項9】
前記血管動脈瘤の開口部に及ぶように構成されている前記透過シェル
の部分の中の隣接するフィラメント間に形成される、最大の前記開口部は、約0.005インチから約0.04インチまでで
ある、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【請求項10】
前記血管動脈瘤の開口部に及ぶように構成されている前記透過シェル
の部分の中の隣接するフィラメント間に形成される、最大の前記開口部は、最大で約0.016インチで
ある、請求項1
又は2に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第61/050,124号(名称「Filamentary Devices for Treatment of Vascular Defects」、2008年5月2日出願)の米国特許法第119条第(e)項の優先権の利益を主張し、この出願は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
本願は、また、Brian J.Coxらによる米国仮特許出願第61/044,822号(名称「Methods and Devices for Treatment of Vascular Defects」、発明者「Coxら」、2008年4月14日出願、代理人整理番号SMI-0103-PV2)、米国仮特許出願第60/941 ,928号(名称「Method and Apparatus for Treatment of a Vascular Defect」、発明者「Brian J.Coxら」、2007年6月4日出願、代理人整理番号SMI-0101-PV)、米国仮特許出願第60/094,683号(名称「Vascular Occlusion Devices」、発明者「Brian J.Coxら」、2007年7月9日出願、代理人整理番号SMI-0102-PV)、米国仮特許出願第60/097,366号(名称「Method and Apparatus for Treatment of a Vascular Defect」、2007年9月11日出願、代理人整理番号SM1-0103-PV号)および、国際出願第US2008/065694号(名称「Methods and Devices for Treatment of Vascular Defects」、発明者「Brian J.Coxら」、2008年6月3日出願、WO2008/151204(2008年12月11日公開)、代理人整理番号SMI-0103-PC)に関連し、これらの出願は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0003】
(発明の分野)
本願のデバイスおよび方法の実施形態は、哺乳類の体内で、管状容器を通る、あるいは嚢状空洞または血管障害の小型内部チャンバの中への液体の流れの遮断を対象とする。より具体的には、本願の実施形態は、具体的には患者の脳動脈瘤の治療を対象とする、一部の実施形態を含む、患者の血管障害の治療のためのデバイスおよび方法を対象とする。
【背景技術】
【0004】
哺乳類の循環系は、ポンプとして働く心臓、および体内の様々なポイントに血液を輸送する血管のシステムから成る。血管上を流れる血液によって行使される力のために、血管は様々な血管障害を発症する場合がある。動脈瘤として知られる1つの一般的な血管障害は、血管の異常な拡大に起因する。通常、血管動脈瘤は、血管の壁が弱まり、続いて血管壁が膨張および拡張した結果として、形成される。例えば、動脈瘤が脳の動脈内に存在し、動脈瘤は結果として脳出血を引き起こして破裂することとなった場合、死亡も起こり得る。
【0005】
通常、脳動脈瘤の治療のための外科技術は、外科医がそこを通り患者の脳で直接操作する器具を挿入できる、患者の頭蓋の開口部を作り出すことが必要とされる、開頭術に関する。一部の外科的方法に対して、脳は、動脈瘤が生じる親血管を露出するように、後退してはならない。動脈瘤へのアクセスが手に入ると、外科医は動脈瘤の頚部を横断してクリップを配置し、それによって動脈血が動脈瘤に進入するのを防止する。クリップを正しく配置すると、動脈瘤はほんの数分で抹消されるであろう。外科技術は、多くの動脈瘤にとって効果的な治療である場合が多い。残念ながら、これらのタイプの状況を治療するための外科技術は、患者に対して高い危険性を伴う麻酔の下での長い時間がしばしば必要とされる、主要な侵襲的手術手技を含む。したがって、かかる手技は、患者がかかる手技の候補者であるために、概して良い健康状態であることが必要となる。
【0006】
様々な代替的およびより低侵襲的手技が、主要手術を用いることなく、脳動脈瘤を治療するために使用されている。一部のかかる手技は、動脈瘤の中への塞栓または充填材料の送達に関与する。かかる血管閉塞デバイスまたは材料の送達は、止血を促進するか、または完全に動脈瘤の空洞を充填するために使用され得る。血管閉塞デバイスは、通常カテーテル経由で、人体の血管系内に配置され、塞栓の形成により動脈瘤で血管を通る血液の流れを遮断するか、または血管に由来する動脈瘤内にかかる塞栓を形成するか、いずれかでもよい。様々な埋め込み可能なコイル型血管閉塞デバイスが知られている。かかるデバイスのコイルはそれ自体で、2次的コイル形状か、または様々なより複雑な2次的形状のうちのいずれかへと形成され得る。一般的に、血管閉塞コイルは脳動脈瘤を治療するために使用されるが、充填密度の不足と、血流からの動圧による圧縮と、幅広の頚部を持つ動脈瘤における安定性の不足、ならびにこの方法による大部分の動脈瘤治療が複数のコイルの配備を必要とするため、その配備の複雑さおよび困難とを含む、一部の制限に悩まされている。
【0007】
侵襲的手術を必要とせずに動脈瘤を治療する別の方法は、動脈瘤が発生した血管の中および動脈瘤が発生した領域に渡る、スリーブまたはステントの配置に関与する。かかるデバイスは、動脈瘤の内部に加えられる血圧を減少させながら、血管を通る血流を維持する。あるタイプのステントは、バルーン拡張式ステントと呼ばれるバルーンカテーテルを膨張させることによって、適切なサイズまで拡張させる一方で、他のステントは、自己拡張様式で弾力性的に拡張するように設計されている。一部のステントは、ステントグラフトを形成するグラフトと呼ばれるポリマー材料のスリーブで通常被覆される。ステントおよびステントグラフトは概して、送達カテーテルを通って、血管障害に隣接する事前に選択された位置まで送達される。脳動脈瘤の治療において、被覆されたステントまたはステントグラフトは、治療されている血管障害の近くにある場合がある、小さい穿通枝血管を不注意に閉塞する可能性から、非常に限定的に使用されているようである。
【0008】
加えて、現行の非被覆ステントは、概して、単独の治療としては十分ではない。ステントが小さい脳血管で使用されるマイクロカテーテルを通って嵌合するためには、拡張する時に、動脈瘤頚部を架橋する少量のステント構造のみがあるように、それらの密度は普通減少する。したがって、それらは動脈瘤の中の血液を凝固するのに十分な流れを遮断せず、それゆえ概して、動脈瘤閉塞を達成するために、上で述べたコイルな等の血管閉塞デバイスと併せて使用される。
【0009】
障害範囲部分または領域を伴う、動脈瘤頚部を架橋する多くのデバイスが、試みられてきたが、しかしながら、これらのデバイスのうち1つも、著しい程度の臨床上の成功または使用法を有するに至っていない。これらの採用および臨床上の有用性における主要な限界は、頚部の範囲を確実に被覆するように、障害範囲部分を位置付けることができない点である。神経血管には適合する(すなわち、マイクロカテーテルを通って送達可能で、可撓性が高い)既存のステント送達システムは、必要な回転位置決め能力を有していない。従来の技術に記載される多くの動脈瘤を架橋するデバイスの別の限界は、可撓性の不足である。脳血管は蛇行しており、脳の中の大部分の動脈瘤の場所へ効果的に送達するには、高い可撓性が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
必要とされてきていることは、不注意な動脈瘤破裂または血管壁損傷の危険性を減少しながら、脳動脈瘤等の動脈瘤の中への血液の流れを実質的に遮断できる、小さく蛇行する血管における送達および使用のためのデバイスならびに方法である。さらに、必要とされてきていることは、変形、圧縮、または転位の著しい危険性を伴わずに、長期間に渡って脳動脈瘤の中で血流を遮断することに適する方法およびデバイスである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、近位端、遠位端、および縦軸を有する、自己拡張型弾力性透過シェルを含む。透過シェルはまた、その近位端および遠位端において相互に対して固定される織物構造を伴う、複数の細長い弾力性フィラメントを含む。透過シェルは、フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して近位端から遠位端まで縦方向に延在する、薄い織物フィラメントとともに、マイクロカテーテル内での送達のために構成される、半径方向に拘束された細長い状態を有する。透過シェルはまた、織物フィラメント間に形成されたシェルの中に複数の開口部を含む、近位端と遠位端との間の縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中で、自己拡張型弾力性透過シェルを形成する織物フィラメントを伴う、半径方向に拘束された状態に対して、球状の縦方向に短縮された構成を伴う、拡張した弛緩状態を有し、開口部のうちの最大のものは、血栓臨界速度を下回る速度で、開口部を通る血流を可能にするように構成される。透過シェルはまた、フィラメントの固定された遠位端が、拡張状態にある透過シェル構造の名目輪郭内で軸方向に引き抜かれるように、少なくとも遠位端が、裏返された陥凹構成で逆屈曲を有する構成を含み得る。
【0012】
患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、近位端、遠位端、および縦軸を有する、自己拡張型弾力性透過シェルを含む。透過シェルはまた、その近位端および遠位端で相互に対して固定される織物構造を伴う、少なくとも2つの異なる横寸法の大型フィラメントおよび小型フィラメントを含む、複数の細長い弾力性フィラメントを含み得る。透過シェルはまた、フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して近位端から遠位端まで縦方向に延在する、薄い織物フィラメントとともに、マイクロカテーテル内での送達のために構成される、半径方向に拘束された細長い状態を含み得る。透過シェルはまた、織物フィラメント間に形成されたシェルの中に複数の開口部を含む、近位端と遠位端との間の縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中で、自己拡張型弾力性透過シェルを形成する織物フィラメントを伴う、半径方向に拘束された状態に対して、球状の縦方向に短縮された構成を伴う、拡張した弛緩状態を有する。透過シェルは、フィラメントの固定された遠位端が、拡張状態にある名目透過シェル構造内で軸方向に引き抜かれるように、少なくとも遠位端が、裏返された陥凹構成で逆屈曲を有するように構成され得る。
【0013】
患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、近位端、遠位端、および縦軸を有する、自己拡張型弾力性透過シェルを含む。透過シェルはまた、その近位端および遠位端で相互に対して固定される織物構造を伴う、異なる横径の大型フィラメントおよび小型フィラメントを含む、複数の細長い弾力性フィラメントを含む。透過シェルはまた、フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して近位端から遠位端まで縦方向に延在する織物フィラメントとともに、マイクロカテーテル内での送達のために構成される、半径方向に拘束された細長い状態を含み得る。透過シェルはまた、主要横径を伴う半径方向に拘束された状態に対して、球状の縦方向に短縮された構成を伴う、拡張した弛緩状態を有し、織物フィラメントは、近位端と遠位端との間の縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、織物フィラメント間に形成されたシェルの中に複数の開口部を含む。透過シェルはまた、フィラメントの固定された遠位端が、拡張状態にある名目透過シェル構造内で軸方向に引き抜かれるように、少なくとも遠位端が、裏返された陥凹構成で逆屈曲を有するように構成され得る。加えて、透過シェルは、拡張状態にある前記透過シェルが、式(1.2×106lbf/D4)(Nldl
4+Nsds
4)によって定義される、約0.014重量ポンド(lbf)から約0.284lbfの半径方向剛性を有するように、拡張状態にある透過シェルの直径と、大型フィラメントの数および直径と、小型フィラメントの数および直径とが構成されるように、特性を有し得、式中、Dは、インチ単位の拡張状態にある透過シェルの直径であり、Nlは、透過シェルの中の大型フィラメントの数であり、Nsは、透過シェルの中の小型フィラメントの数であり、dlは、インチ単位の大型フィラメントの直径であり、dsは、インチ単位の小型フィラメントの直径である。上記式は、2つのワイヤサイズを考慮しているが、しかしながら、式はまた、dlがdsと等しいような場合において、1つのワイヤサイズを有する実施形態にも適用可能である。
【0014】
患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、近位端、遠位端、および縦軸を有する、自己拡張型弾力性透過シェルを含む。透過シェルはまた、その近位端および遠位端で相互に対して固定される織物構造を伴う、異なる横径の大型フィラメントおよび小型フィラメントを含む、複数の細長い弾力性フィラメントを含む。透過シェルはまた、フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して近位端から遠位端まで縦方向に延在する、薄い織物フィラメントとともに、マイクロカテーテル内での送達のために構成される、半径方向に拘束された細長い状態を含み得る。透過シェルは、主要横径を伴う半径方向に拘束された状態に対して、球状の縦方向に短縮された構成を伴う、拡張した弛緩状態を有し、織物フィラメントは、近位端と遠位端との間の縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中で自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、織物フィラメント間に形成されたシェルの中に複数の開口部を含む。透過シェルはまた、フィラメントの固定された遠位端が、拡張状態にある名目透過シェル構造内で軸方向に引き抜かれるように、少なくとも遠位端が、裏返された陥凹構成で逆屈曲を有するように構成され得る。透過シェルはさらに、血管障害の開口部または血管障害の頚部に及ぶ、拡張状態にある透過シェルの一部分の最大開口部サイズが、式(1.7/NT)(πD-NT/2dW)によって定義される、最大孔または開口部サイズを伴って約0.016インチ未満となるように、拡張状態にある透過シェルの直径と、全てのフィラメントの数と、小型フィラメントの直径とが構成されるように、特性を有し得、式中、Dは、インチ単位の拡張状態にある透過シェルの直径であり、NTは、透過シェルの中のフィラメントの総数であり、dWは、インチ単位の小型フィラメントの直径である。開口部に対する孔径は、編組フィラメント構造の開口部内に配置され得る最大円形状によって、本願で定義される。
【0015】
患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、近位端、遠位端、および縦軸を有する、自己拡張型弾力性透過シェルを含む。透過シェルはさらに、その近位端および遠位端で相互に対して固定される織物構造を伴う、異なる横径の大型フィラメントおよび小型フィラメントを含む、複数の細長い弾力性フィラメントを含む。透過シェルはまた、フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して近位端から遠位端まで縦方向に延在する織物フィラメントとともに、マイクロカテーテル内での送達のために構成される、半径方向に拘束された細長い状態を有し得る。透過シェルはまた、主要横径を伴う半径方向に拘束された状態に対して、球状の縦方向に短縮された構成を伴う、拡張した弛緩状態を含んでもよく、織物フィラメントは、近位端と遠位端との間の縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中で自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、織物フィラメント間に形成されたシェルの中に複数の開口部を含む。透過シェルはまた、フィラメントの固定された遠位端が、拡張状態にある名目透過シェル構造内で軸方向に引き抜かれるように、少なくとも遠位端が、裏返された陥凹構成の逆屈曲を有するように構成され得る。透過シェルはまた、拘束状態にある透過シェルが、式1.48((Nldl
2+Nsds
2))1/2によって定義される、約0.04インチ未満の外側横径を有するように、拡張状態にある透過シェルの直径と、大型フィラメントの数および直径と、小型フィラメントの数および直径とが構成されるように、特性を有し得、式中、Nlは、透過シェルの大型フィラメントの数であり、Nsは、透過シェルの小型フィラメントの数であり、dlは、インチ単位の大型フィラメントの直径であり、dsは、インチ単位の小型フィラメントの直径である。
【0016】
患者の血管障害を治療する方法の一部の実施形態は、織物フィラメントの自己拡張型弾力性透過シェルを備える、患者の血管系の治療のためのデバイスを提供するステップを含み、透過シェルは、近位端と、遠位端と、縦軸と、相互に半径方向に隣接して近位端から遠位端まで縦方向に延在する織物フィラメントとともに、マイクロカテーテル内での送達のために構成される、半径方向に拘束された細長い状態とを有する。透過シェルはまた、遠位端にあるハブが、透過シェル構造内で軸方向に引き抜かれるように、裏返された陥凹構成で各端部に逆屈曲を有するシェルを伴う、近位端と遠位端との間にある縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に自己拡張型弾力性透過シェルを形成する織物フィラメントを伴う拘束状態に対して、球状の軸方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態を有し得る。透過シェルはまた、織物フィラメント間に形成されるシェルの中に、複数の開口部を有する。提供されると、送達システムは、送達システムの遠位端が、治療される血管障害に隣接して、またはその内側に配置されるように、患者の体内に前進する。デバイスは、次いで、デバイスの近位端で解放可能に固定される遠位端を有する細長い送達装置を伴って、半径方向に拘束状態にある間に、送達システム内で前進する。デバイスはさらに、デバイスが送達システムの遠位端から出現するまで、遠位に前進する。デバイスはさらに、デバイスの織物フィラメントが、半径方向に拘束された状態から半径方向に拡張し、透過シェルの球状構成へと拡張するように配備されるまで、送達システムの遠位端から前進する。配備されたデバイスはその後、そこを通る血液の流れを血栓臨界速度を下回る速度まで減速する透過シェルの孔径により、血管障害の開口部または頚部の少なくとも一部分を被覆し、急性的に閉塞する。
【0017】
患者の血管系の血管障害を閉塞する一部の方法は、血管障害のサイズおよび形状に近似するか、またはわずかに大型の形状を伴う、実質的に閉鎖された球状構造を形成する部材の少なくとも近位端上で相互に接続される、複数のフィラメント部材の織物シェルから形成される拡張可能な多孔性血管閉塞デバイスを提供するステップを含み、フィラメント部材の遠位端は、デバイスの球状構造の名目表面輪郭の中に陥凹する。デバイスが提供されると、デバイスは、患者の血管系の中への送達のために折り畳まれ得る。折り畳まれたデバイスは、次いで、患者の体内の切開を通して挿入され得、デバイスは、デバイスの外面輪郭が血管障害を実質的に充填するように、血管障害において解放され拡張される。デバイスは、その後、急性的に血管障害を実質的に閉塞し、凝固血液で実質的に被覆される。
【0018】
患者の血管系の治療用のデバイスの配備のための送達システムの一部の実施形態は、その長さに延在する内側管腔を有するマイクロカテーテルと、マイクロカテーテルの内側管腔内に配置される、患者の血管系の治療のためのデバイスとを含む。デバイスはまた、薄い連結フィラメントの自己拡張型弾力性透過シェルを含み、透過シェルは、近位端と、遠位端と、縦軸と、相互に半径方向に隣接して近位端から遠位端まで縦方向に延在する、薄い織物フィラメントとともに、マイクロカテーテル内での送達のために構成される、半径方向に拘束された細長い状態とを有する。透過シェルはまた、近位端と遠位端との間の縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中で、自己拡張型弾力性透過シェルを形成する織物フィラメントを伴う拘束状態に対して、球状の軸方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態を有する。透過シェルはさらに、遠位端にあるハブが、透過シェル構造内で軸方向に配置されるように、裏返された陥凹構成で各端部に逆屈曲を有し得る。透過シェルはまた、織物フィラメント間に形成された複数の開口部を有し、透過シェルはさらに、拡張した弛緩状態にある時に、患者の血管障害の開口部に及ぶように構成される一部分を有する。送達システムはさらに、デバイスの近位ハブで解放可能に固定される、近位端および遠位端を有する、細長い送達装置を含む。
【0019】
患者の血管系の治療のためのデバイスを製造する方法の一部の実施形態は、編組管状部材を形成する円筒形マンドレルを覆って、複数の細長い弾力性フィラメントを編むステップを含む。編組管状部材の細長いフィラメントは、次いで、遠位端にあるハブが、透過シェル構造内で軸方向に引き抜かれ配置され、シェルの中の複数の開口部が、織物フィラメント間に形成されるように、裏返された陥凹構成で遠位端に逆屈曲を有するシェルを伴うデバイスの近位端と遠位端との間にある、デバイスの縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中で、自己拡張型弾力性透過シェルを形成する織物フィラメントを伴う拘束状態に対して、球状の軸方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態で、熱硬化され得る。その後、フィラメントの近位端は一緒に固定され、フィラメントの遠位端も一緒に固定される。
【0020】
患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、支持構造および複合欠陥範囲構造として役立つ、薄い相互接続フィラメントの自己拡張型弾力性透過シェルを含み、透過シェルは、第1の端部と、第2の端部と、縦軸と、第1の端部から第2の端部まで延在する薄い相互接続フィラメントを伴う、マイクロカテーテル内への送達のために構成される、拘束された円筒状態とを有する。透過シェルはまた、裏返された陥凹構成で各端部に逆屈曲を伴う、第1の端部と第2の端部との間にある平滑な弧を形成するフィラメントを伴う拘束状態に対して、球状の軸方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態を有する。透過シェルはさらに、拡張した弛緩状態にある時に、患者の血管障害の開口部に及ぶように構成される障害範囲部分を有する。
【0021】
血管障害を治療する方法の一部の実施形態は、支持構造および複合欠陥範囲構造として役立つ、薄い相互接続フィラメントの自己拡張型弾力性透過シェルを有する、患者の血管系の治療のためのデバイスを提供するステップを含む。透過シェルはまた、第1の端部と、第2の端部と、縦軸と、第1の端部から第2の端部まで延在する薄い相互接続フィラメントを伴う、マイクロカテーテル内への送達のために構成される、拘束された円筒状態とを有する。透過シェルはまた、裏返された陥凹構成で各端部に逆屈曲を伴う、第1の端部と第2の端部との間にある平滑な弧を形成するフィラメントを伴う拘束状態に対して、球状の軸方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態を有する。透過シェルはさらに、拡張した弛緩状態にある時に、患者の血管障害の開口部に及ぶように構成される障害範囲部分を有する。提供されると、送達システムは、血管障害の内側に配置される遠位端を伴い、治療され位置付けられる血管障害に隣接する位置まで前進し得る。デバイスは、次いで、透過シェルが自己拡張し、透過シェルの障害範囲部分が、障害の開口部または頚部の少なくとも一部分を被覆するように配備され得る。
【0022】
患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、支持構造および複合欠陥範囲構造として役立つ、薄い相互接続フィラメントの自己拡張型弾力性透過シェルを含む。透過シェルはまた、第1の端部と、第2の端部と、縦軸と、第1の端部から第2の端部まで延在する薄い相互接続フィラメントを伴う、マイクロカテーテル内への送達のために構成される、拘束された円筒状態とを有する。透過シェルはまた、裏返された陥凹構成で各端部に逆屈曲を伴う、第1の端部と第2の端部との間にある平滑な弧を形成するフィラメントを伴う拘束状態に対して、球状の軸方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態を有する。透過シェルはさらに、拡張した弛緩状態にある時に、患者の血管障害の開口部に及ぶように構成される障害範囲部分を含む。
【0023】
血管障害を治療する方法の一部の実施形態は、支持構造および複合欠陥範囲構造として役立つ、薄い相互接続フィラメントの自己拡張型弾力性透過シェルを有する、患者の血管系の治療のためのデバイスを提供するステップを含む。透過シェルはまた、第1の端部と、第2の端部と、縦軸と、第1の端部から第2の端部まで延在する薄い相互接続フィラメントを伴う、マイクロカテーテル内への送達のために構成される、拘束された円筒状態とを有する。透過シェルはさらに、裏返された陥凹構成で各端部に逆屈曲を伴う、第1の端部と第2の端部との間にある平滑な弧を形成するフィラメントを伴う拘束状態に対して、球状の軸方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態を含む。透過シェルはまた、拡張した弛緩状態にある時に、患者の血管障害の開口部に及ぶように構成される障害範囲部分を有する。デバイスが提供されると、送達システムは、治療される血管障害に隣接する位置まで前進し得る。デバイスは、次いで、透過シェルが自己拡張し、透過シェルの障害範囲部分が、障害の開口部または頚部の少なくとも一部分を被覆するように、血管障害の内側に位置付けられ、配備される。
一つの実施形態において、例えば、下記の項目が、提供される。
(項目1)患者の血管系の治療のためのデバイスであって、該デバイスは、
近位端と、遠位端と、縦軸とを有する自己拡張型弾力性透過シェルであって、
複数の細長い弾力性フィラメントであって、該フィラメントの近位端および遠位端において相互に対して固定される織物構造を伴う、フィラメントと、
マイクロカテーテル内での送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、それに伴って該薄い織物フィラメントが、該フィラメントの長さに沿って相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在している、細長い状態と、
該半径方向に拘束された状態に対する、球状の縦方向に短縮された構成を有する拡張した弛緩状態であって、それに伴って該織物フィラメントは、該織物フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を含む、該近位端と遠位端との間の該縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に該自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、該開口部のうちの最大のものは、血栓臨界速度を下回る速度での該開口部を通る血流を可能にするように構成される、弛緩状態と
をさらに備える、自己拡張型弾力性透過シェルを備える、デバイス。
(項目2)少なくとも前記遠位端が、陥凹構成の逆屈曲を含むことにより、前記フィラメントの前記固定された遠位端は、前記拡張状態にある前記透過シェル構造の名目輪郭内において軸方向に配置される、項目1に記載のデバイス。
(項目3)前記シェルの近位端が、陥凹構成の逆屈曲をさらに備えることにより、前記フィラメントの前記固定された近位端は、前記拡張状態にある前記名目透過シェル構造内において軸方向に引き抜かれる、項目2に記載のデバイス。
(項目4)前記透過シェルの前記フィラメントは、溶接、半田付け、接着、およびエポキシ接着から成る群より選択される1つ以上の方法によって、該透過シェルの近位端および遠位端において相互に対して固定される、項目1に記載のデバイス。
(項目5)前記透過シェルの前記フィラメントの遠位端に固定される、遠位ハブをさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目6)前記透過シェルの前記フィラメントの近位端に固定される、近位ハブをさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目7)前記近位ハブは、前記フィラメントの近位端を越えて近位に延在する円筒形部材をさらに備え、該円筒形部材は、分離テザーを固定するための空洞を形成する、項目6に記載のデバイス。
(項目8)前記近位ハブの前記空洞内に固定される遠位端を有する分離テザーをさらに備える、項目7に記載のデバイス。
(項目9)前記透過シェルの前記フィラメントは、約0.0005インチから約0.005インチまでの横寸法を有する、項目1に記載のデバイス。
(項目10)前記透過シェルは、第1の端部から第2の端部まで延在する、約70個から約300個までのフィラメントを備える、項目1に記載のデバイス。
(項目11)前記透過シェルの障害範囲部分の隣接するフィラメント間に形成される、前記最大開口部は、約0.005インチから約0.04インチまでである、項目1に記載のデバイス。
(項目12)前記透過シェルの障害範囲部分の中の隣接するフィラメント間に形成される、前記最大開口部は、最大で約0.016インチである、項目1に記載のデバイス。
(項目13)前記透過シェルは、血栓形成剤、抗血小板剤、抗血栓形成剤、および治癒促進剤から成る群より選択される生物活性剤をさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目14)前記弛緩した拡張状態にある前記透過シェルの前記近位端と遠位端との間の間隔は、前記拘束された円筒形状態にある該近位端と遠位端との間の間隔の約25%から約75%までである、項目1に記載のデバイス。
(項目15)前記透過シェルの前記フィラメントは、超弾性材料を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目16)前記超弾性材料は、形状記憶金属を備える、項目15に記載のデバイス。
(項目17)前記透過シェルの前記フィラメントは、前記弛緩した拡張状態の構成で熱硬化される形状記憶材料を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目18)前記形状記憶金属は、NiTi合金を備える、項目17に記載のデバイス。
(項目19)患者の血管系の治療のためのデバイスであって、
近位端と、遠位端と、縦軸とを有する自己拡張型弾力性透過シェルであって、
少なくとも2つの異なる横寸法の大型フィラメントおよび小型フィラメントを含む複数の細長い弾力性フィラメントであって、織物構造が、該フィラメントの近位端および遠位端において相互に対して固定される、フィラメントと、
マイクロカテーテル内での送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、該薄い織物フィラメントは、該フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在する、細長い状態と、
該半径方向に拘束された状態に対する、球状の縦方向に短縮された構成を有する拡張した弛緩状態であって、該織物フィラメントは、該織物フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を含む、該近位端と遠位端との間の該縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に、該自己拡張型弾力性透過シェルを形成する、弛緩状態と
をさらに備える、透過シェルを備える、デバイス。
(項目20)少なくとも前記遠位端が、陥凹構成の逆屈曲を有することにより、前記フィラメントの前記固定された遠位端は、前記拡張状態にある前記名目透過シェル構造内において軸方向に配置される、項目19に記載のデバイス。
(項目21)前記透過シェルの前記大型フィラメントは、約0.001インチから約0.004インチまでである横寸法または横径を備える、項目19に記載のデバイス。
(項目22)前記透過シェルの前記小型フィラメントは、約0.0004インチから約0.001インチまでである、横寸法または横径を備える、項目19に記載のデバイス。
(項目23)前記透過シェルの前記大型フィラメントの数に対する該透過シェルの前記小型フィラメントの数の比は、約2対1から約15対1までであり得る、項目19に記載のデバイス。
(項目24)前記小型フィラメントと前記大型フィラメントとの間の前記横寸法または横径の差は、約0.0035インチ未満である、項目19に記載のデバイス。
(項目25)前記透過シェルは、前記第1の端部から前記第2の端部まで延在する、約70個から約300個までのフィラメントを備える、項目19に記載のデバイス。
(項目26)前記透過シェルの障害範囲部分の中の隣接するフィラメント間に形成される、前記最大開口部は、約0.005インチから約0.04インチまでである、項目19に記載のデバイス。
(項目27)前記透過シェルの障害範囲部分の隣接するフィラメント間に形成される、前記最大開口部は、最大で約0.016インチである、項目19に記載のデバイス。
(項目28)前記デバイスの前記障害範囲部分の隣接するフィラメント間に形成される、前記開口部のうちの少なくとも一部は、血栓臨界速度を下回る速度で該開口部を通る血流を可能にするように構成される、項目19に記載のデバイス。
(項目29)弛緩した拡張状態にある前記透過シェルの主要横寸法は、約4mmから約30mmまでである、項目19に記載のデバイス。
(項目30)患者の血管系の治療のためのデバイスであって、該デバイスは、
近位端と、遠位端と、縦軸とを有する自己拡張型弾力性透過シェルであって、
複数の細長い弾力性フィラメントであって、織物構造が、該フィラメントの近位端および遠位端において相互に対して固定される、フィラメントと、
マイクロカテーテル内での送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、それに伴って該織物フィラメントは、該フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在する、細長い状態と、
主要横径を伴う該半径方向に拘束された状態に対する、球状の縦方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態であって、それに伴って該織物フィラメントは、該近位端と該遠位端との間の該縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に該自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、該織物フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を含む、弛緩状態と
をさらに備える、透過シェルを備えており、
拡張状態にある該透過シェルの該直径と、大型フィラメントの数および直径と、小型フィラメントの数および直径とは、拡張状態にある該透過シェルが、式(1.2×106lbf/D4)(Nldl
4+Nsds
4)によって定義される、約0.014lbfから約0.284lbfまでの半径方向剛性を有するように構成され、式中、Dは、インチ単位の該拡張状態にある該透過シェルの直径であり、Nlは、該透過シェルの中の該大型フィラメントの数であり、Nsは、該透過シェルの中の該小型フィラメントの数であり、dlは、インチ単位の最大フィラメントの直径であり、dsは、インチ単位の最小フィラメントの直径である、デバイス。
(項目31)少なくとも前記遠位端が、陥凹構成の逆屈曲を有することにより、前記フィラメントの前記固定された遠位端は、前記拡張状態にある前記名目透過シェル構造内に軸方向に配置される、項目30に記載のデバイス。
(項目32)前記透過シェルは、該透過シェルの前記近位端から前記遠位端まで延在する、約70個から約300個までのフィラメントを備える、項目30に記載のデバイス。
(項目33)弛緩した拡張状態にある前記透過シェルの主要横径は、約4mmから約30mmまでである、項目30に記載のデバイス。
(項目34)前記透過シェルの前記大型フィラメントは、約0.001インチから約0.004インチまでである、横寸法または横径を備える、項目30に記載のデバイス。
(項目35)前記透過シェルの前記小型フィラメントは、約0.0004インチから約0.001インチまでである、横寸法または横径を備える、項目30に記載のデバイス。
(項目36)前記透過シェルの前記大型フィラメントの数に対する、該透過シェルの前記小型フィラメントの数の比は、約2対1から約15対1までであり得る、項目30に記載のデバイス。
(項目37)前記小型フィラメントと前記大型フィラメントとの間の横寸法または横径の差は、約0.0035インチ未満である、項目30に記載のデバイス。
(項目38)前記透過シェルの障害範囲部分の隣接するフィラメント間に形成される、前記最大開口部は、約0.005インチから約0.04インチまでである、項目30に記載のデバイス。
(項目39)前記透過シェルの障害範囲部分の隣接するフィラメント間に形成される、前記最大開口部は、最大で約0.016インチである、項目30に記載のデバイス。
(項目40)前記透過シェルの前記フィラメントは、異なる横径の大型フィラメントおよび小型フィラメントをさらに備える、項目30に記載のデバイス。
(項目41)患者の血管系の治療のためのデバイスであって、該デバイスは、
近位端と、遠位端と、縦軸とを有する自己拡張型弾力性透過シェルであって、
その近位端および遠位端において相互に対して固定される織物構造を伴う複数の細長い弾力性フィラメントと、
マイクロカテーテル内での送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、それに伴って該薄い織物フィラメントは、該フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在する、細長い状態と、
主要横径を伴う該半径方向に拘束された状態に対する、球状の縦方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態であって、それに伴って該織物フィラメントは、該近位端と該遠位端との間の該縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に該自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、該織物フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を含む、弛緩状態と
をさらに備える、透過シェルを備えており、
拡張状態にある該透過シェルの直径と、全てのフィラメントの数と、小型フィラメントの直径とは、拡張状態にある該透過シェルの平均開口部サイズが、式(1.7/NT)(π-NT/2×dW)によって定義される該平均開口部サイズによって約0.016インチ未満となるように構成され、式中、Dは、インチ単位の該拡張状態にある該透過シェルの直径であり、NTは、該透過シェルの中の該フィラメントの総数であり、dWは、インチ単位の最小フィラメントの直径である、デバイス。
(項目42)少なくとも前記遠位端は、陥凹構成の逆屈曲を有することにより、前記フィラメントの前記固定された遠位端が、前記拡張状態にある前記名目透過シェル構造内に軸方向に配置される、項目41に記載のデバイス。
(項目43)前記透過シェルは、該透過シェルの前記近位端から前記遠位端まで延在する、約70個から約300個までのフィラメントを備える、項目41に記載のデバイス。
(項目44)弛緩した拡張状態にある前記透過シェルの主要横径は、約4mmから約30mmまでである、項目41に記載のデバイス。
(項目45)前記透過シェルの前記大型フィラメントは、約0.001インチから約0.004インチまでである、横寸法または横径を備える、項目41に記載のデバイス。
(項目46)前記透過シェルの前記小型フィラメントは、約0.0004インチから約0.001インチまでである、横寸法または横径を備える、項目41に記載のデバイス。
(項目47)前記透過シェルの前記大型フィラメントの数に対する、該透過シェルの前記小型フィラメントの数の比は、約2対1から約15対1までであり得る、項目41に記載のデバイス。
(項目48)前記小型フィラメントと前記大型フィラメントとの間の横寸法または横径の差は、約0.0035インチ未満である、項目41に記載のデバイス。
(項目49)前記透過シェルの障害範囲部分の中の隣接するフィラメント間に形成される、前記最大開口部は、約0.005インチから約0.04インチまでである、項目41に記載のデバイス。
(項目50)前記透過シェルの障害範囲部分の中の隣接するフィラメント間に形成される、前記最大開口部は、最大で約0.016インチである、項目41に記載のデバイス。
(項目51)前記透過シェルの前記フィラメントは、異なる横径の大型フィラメントおよび小型フィラメントをさらに備える、項目41に記載のデバイス。
(項目52)患者の血管系の治療のためのデバイスであって、該デバイスは、
近位端と、遠位端と、縦軸とを有する自己拡張型弾力性透過シェルであって、
複数の細長い弾力性フィラメントであって、織物構造が、該フィラメントの近位端および遠位端において相互に対して固定される、フィラメントと、
マイクロカテーテル内における送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、該織物フィラメントが、該フィラメントの長さに沿って、相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在する、細長い状態と、
主要横径を伴う該半径方向に拘束された状態に対する、球状の縦方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態であって、それに伴って該織物フィラメントは、該近位端と該遠位端との間の該縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に該自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、該織物フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を含む、弛緩状態と
をさらに備える、透過シェルを備えており、
拡張状態にある該透過シェルの直径と、大型フィラメントの数および直径と、小型フィラメントの数および直径とは、拘束状態にある該透過シェルが、式1.48((Nldl
2+Nsds
2))1/2によって定義される、約0.04インチ未満の外側横径を有するように構成され、Nlは、該透過シェルの中の最大フィラメントの数であり、式中、Nsは、該透過シェルの中の最小フィラメントの数であり、dlは、インチ単位の最大フィラメントの直径であり、dsは、インチ単位の該最小フィラメントの直径である、デバイス。
(項目53)少なくとも前記遠位端が、陥凹構成の逆屈曲を有することにより、前記フィラメントの前記固定された遠位端が、前記拡張状態にある前記名目透過シェル構造内において軸方向に配置される、項目52に記載のデバイス。
(項目54)前記透過シェルは、該透過シェルの前記近位端から前記遠位端まで延在する、約70個から約300個までのフィラメントを備える、項目52に記載のデバイス。
(項目55)弛緩した拡張状態にある前記透過シェルの主要横径は、約4mmから約30mmまでである、項目52に記載のデバイス。
(項目56)前記透過シェルの前記大型フィラメントは、約0.001インチから約0.004インチまでである、横寸法または横径を備える、項目52に記載のデバイス。
(項目57)前記透過シェルの前記小型フィラメントは、約0.0004インチから約0.001インチまでである、横寸法または横径を備える、項目52に記載のデバイス。
(項目58)前記透過シェルの前記大型フィラメントの数に対する、該透過シェルの前記小型フィラメントの数の比は、約2対1から約15対1までであり得る、項目52に記載のデバイス。
(項目59)前記小型フィラメントと前記大型フィラメントとの間の横寸法または横径の差は、約0.0035インチ未満である、項目52に記載のデバイス。
(項目60)前記透過シェルの障害範囲部分の隣接するフィラメント間に形成される前記開口部は、約0.005インチから約0.04インチまでである、項目52に記載のデバイス。
(項目61)前記透過シェルの障害範囲部分の隣接するフィラメント間に形成される前記開口部は、最大約0.016インチである、項目52に記載のデバイス。
(項目62)前記透過シェルの前記フィラメントは、異なる横径の大型フィラメントおよび小型フィラメントをさらに備える、項目52に記載のデバイス。
(項目63)患者の血管障害を治療する方法であって、
a)織物フィラメントの自己拡張型弾力性透過シェルを備える、患者の血管系の治療のためのデバイスを提供することであって、該透過シェルは、近位端と、遠位端と、縦軸と、マイクロカテーテル内での送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、該織物フィラメントが相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在する、細長い状態と、該半径方向に拘束された状態に対する球状の縦方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態であって、該織物フィラメントは、該近位端と該遠位端との間の該縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に該自己拡張型弾力性透過シェルを、該織物フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を形成する、弛緩状態とを有する、ことと、
b)送達システムの遠位端が、治療される血管障害に隣接して、またはその内側に配置されるように、患者の体内に該送達システムを前進させることと、
c)半径方向に拘束された状態にある間に、該送達システム内において該患者の血管系の治療のための該デバイスを軸方向に前進させることであって、細長い送達装置は、患者の血管系の治療のための該デバイスの近位端に解放可能に固定される遠位端を有する、ことと、
d)該デバイスが該送達システムの遠位端から遠位に出現するまで、該デバイスを軸方向に前進させ、該デバイスを配備することであって、それにより、該デバイスの該織物フィラメントが、半径方向に拘束された状態から半径方向に拡張し、そこを通る血液の流れを血栓臨界速度を下回る速度まで減速する該透過シェルの孔径に起因して、該血管障害の開口部または頚部の少なくとも一部分を被覆し、急性的に閉塞する該透過シェルの球状構成へと拡張する、ことと
を含む、方法。
(項目64)前記細長い送達装置の前記遠位端から、前記デバイスを解放することをさらに含む、項目63に記載の方法。
(項目65)前記患者の血管系の治療のための前記デバイスは、該デバイスの解放前に、前記細長い送達装置の近位端の操作によって、前記血管障害内に位置付けられる、項目63に記載の方法。
(項目66)前記デバイスの解放前に、前記細長い送達装置の軸方向後退によって、該デバイスを部分的または完全に前記送達システム内に戻るように引くことをさらに含む、項目65に記載の方法。
(項目67)前記デバイスの前記透過シェルの内部空間内に血塊の形成を促進しながら、該透過シェルへの血小板の付着を阻害することをさらに含む、項目63に記載の方法。
(項目68)前記デバイスの配備前または後に、親血管の中にステント支持デバイスを埋め込むことをさらに含み、それにより、該ステント支持デバイスは、前記血管障害の範囲に及ぶ、項目63に記載の方法。
(項目69)前記デバイスの配備後に、前記透過シェルの後方または内側の前記血管障害の中へ、塞栓デバイスまたは材料を送達することをさらに含む、項目63に記載の方法。
(項目70)前記血管障害の狭窄による半径方向の拘束に応じて、前記透過シェルの伸長を付与することをさらに含む、項目63に記載の方法。
(項目71)前記患者の血管系の治療のためのデバイスを選択することをさらに含み、該デバイスは、患者の血管障害の横寸法に対して過大である外側横寸法を伴う拡張状態にある透過シェルを有する、項目63に記載の方法。
(項目72)前記横寸法の過大化の量は、前記血管障害の最大横寸法より少なくとも約10%大きい、項目71に記載の方法。
(項目73)患者の血管系の血管障害を閉塞する方法であって、
複数のフィラメント部材の織物シェルから形成される拡張可能な多孔性血管閉塞デバイスを提供することであって、該複数のフィラメント部材は、該血管障害のサイズおよび形状に近似する形状を伴う実質的に閉鎖された球状の構造を形成する該部材の少なくとも近位端上で相互に接続される、ことと、
該患者の該血管系の中への送達のために、該デバイスを折り畳むことと、
該患者の体内の切開を通して、該折り畳まれたデバイスを挿入することと、
該デバイスの外面輪郭が該血管障害を実質的に充填するように、該血管障害において該デバイスを解放し、拡張することと、
凝固血液で実質的に被覆される該デバイスによって、急性的に該血管障害を実質的に閉塞することと
を含む、方法。
(項目74)前記フィラメント部材は、少なくとも2つの異なる横寸法または横径を有する、項目73に記載の方法。
(項目75)前記閉塞デバイスの前記織物シェルは、フィラメント部材の少なくとも2つの異なるサイズを含み、該フィラメント部材の前記横寸法または横径の差は、約0.004インチ未満である、項目74に記載の方法。
(項目76)前記血管障害における血液の速度は、前記デバイスの配備後に血栓臨界速度を下回るまで減速され、血栓が、該デバイスの前記シェルの内部容積内に形成する、項目73に記載の方法。
(項目77)前記血管障害の容積を測定し、該血管障害の少なくとも一部分を充填するような容積を伴うデバイスを選択することをさらに含む、項目73に記載の方法。
(項目78)前記選択されたデバイスは、前記血管障害の前記測定された容積とほぼ同じ容積を有する、項目77に記載の方法。
(項目79)前記測定された容積は、切頂容積を生じるように前記血管障害の全体積より小さく、前記選択されたデバイスは、該切頂容積を実質的に充填する、項目77に記載の方法。
(項目80)前記デバイスが弛緩した拡張状態にあるときに、前記血管障害の最大横寸法を測定し、該血管障害の該最大横寸法より少なくとも約10%大きい寸法を有するデバイスを選択することをさらに含む、項目73に記載の方法。
(項目81)患者の血管系の治療用のデバイスの配備のための送達システムであって、
内側管腔を有するマイクロカテーテルであって、該内側管腔は該マイクロカテーテルの長さに延在する、マイクロカテーテルと、
該マイクロカテーテルの該内側管腔内に配置され、かつ薄いフィラメントの自己拡張型弾力性透過シェルを備える、患者の血管系の治療用のデバイスであって、該透過シェルは、近位端と、遠位端と、縦軸と、マイクロカテーテル内での送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態であって、それに伴って該薄い織物フィラメントは、相互に半径方向に隣接して該近位端から該遠位端まで縦方向に延在する、細長い状態と、該拘束状態に対する球状の縦方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態であって、それに伴って該織物フィラメントは、該近位端と該遠位端との間の該縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に該自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、該織物フィラメント間に形成された該シェルの中に複数の開口部を形成する、弛緩状態とを有し、該透過シェルは、該拡張した弛緩状態にあるときに、患者の血管障害の開口部に範囲が及ぶように構成される部分をさらに有する、デバイスと、
該デバイスの近位ハブに解放可能に固定される近位端および遠位端を有する細長い送達装置と
を備える、システム。
(項目82)患者の血管系の治療のためのデバイスを製造する方法であって、
編組管状部材を形成する円筒形マンドレルを覆って、複数の細長い弾力性フィラメントを編むことと、
拘束状態に対する、球状の縦方向に短縮された構成を伴う拡張した弛緩状態において、該編組管状部材の該細長いフィラメントを熱硬化させることであって、該織物フィラメントは、裏返された構成で遠位端に逆屈曲を有するシェルを伴う該デバイスの近位端と遠位端との間にある該デバイスの縦軸から半径方向に拡張される平滑経路の中に、自己拡張型弾力性透過シェルを形成し、それにより、該遠位端にあるハブが、該透過シェル構造内に軸方向に引かれ、該シェルの中の複数の開口部が、該織物フィラメント間に形成される、ことと、
該フィラメントの該近位端を一緒に固定することと、
該フィラメントの該遠位端を一緒に固定することと
を含む、方法。
(項目83)前記デバイスの前記近位端が前記フィラメントの前記近位端に固定される近位ハブをさらに備え、該近位ハブは、空洞を形成する該フィラメントの該近位端を越えて延在する円筒形部材を含む、項目82に記載の方法。
(項目84)前記近位ハブの前記円筒形部材の前記空洞内に分離テザーを固定することをさらに含む、項目83に記載の方法。
(項目85)前記フィラメントの前記近位端に近位ハブを固定することと、該フィラメントの前記遠位端に遠位ハブを固定することと、該近位および遠位ハブ内に放射線不透過性材料を挿入することとをさらに含む、項目82に記載の方法。
(項目86)円筒形マンドレルを覆って複数の細長いフィラメントを編むことは、少なくとも2つの異なる横寸法を有する大型フィラメントおよび小型フィラメントを編むことを含む、項目82に記載の方法。
(項目87)円筒形マンドレルを覆って複数の大型および小型フィラメントを編むことは、フィラメントを編むことを含み、該大型フィラメントに対する小型フィラメントの数の比は、約2対1から約15対1までである、項目86に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、患者の血管系の治療のためのデバイスの実施形態の立面図であり、複数の矢印は内側半径方向力を示す。
【
図2】
図2は、2つの単純な支持部によって支持されるビームの立面図であり、複数の矢印はビームに対する力を示す。
【
図3】
図3は、患者の血管系の治療のためのデバイスの実施形態の底面斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の患者の血管系の治療のためのデバイスの立面図である。
【
図5】
図5は、
図4の線5-5に沿って取られた、
図4のデバイスの横断面図である。
【
図6】
図6は、
図4の線6-6に沿って取られた縦断面における、
図4のデバイスを示す。
【
図7】
図7は、
図5に示す囲まれた部分7から取られた、織物フィラメント構造の拡大図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す囲まれた部分8から取られた、織物フィラメント構造の拡大図である。
【
図10】
図10は、
図6の線10-10によって示される、
図6のデバイスの近位ハブ部分の横断面図である。
【
図11】
図11は、折り畳まれた拘束状態でその中に配置される、
図3の患者の血管系の治療のためのデバイスを伴う、送達カテーテルの遠位端の部分的な立面図である。
【
図12】
図12は、デバイスのある内部構造を示す、送達デバイスまたはアクチュエータの遠位部分の立面図である。
【
図13】
図13は、内部構造の上に一部の管状要素が追加された、
図12の送達デバイスの立面図である。
【
図14】
図14は、外側コイルおよびマーカーが定位置にある、
図13の送達デバイスの遠位部分の立面図である。
【
図16】
図16は、患者の血管系の治療のためのデバイス用のフィラメント構成の実施形態を図示する。
【
図17】
図17は、送達デバイスまたはアクチュエータの遠位端で解放可能に固定される、導入シース、マイクロカテーテル、および患者の血管系の治療のためのデバイスによってアクセスされている患者の概略図である。
【
図20】
図20は、動脈瘤の内部名目縦および横寸法を示す、垂直矢印を示している動脈瘤の部分的な概略図である。
【
図21】
図21は、動脈瘤の壁の外側を横方向に延在する、弛緩した非拘束状態にある患者の血管系の治療のためのデバイスの破線の外形を伴う、
図20の動脈瘤の部分的な概略図である。
【
図22】
図22は、動脈瘤内に配備され部分的な拘束状態にある、
図21に破線で表されたデバイスの外形の部分的な概略図である。
【
図23】
図23-26は、患者の血管系の治療のためのデバイスの配備順序を示す。
【
図24】
図23-26は、患者の血管系の治療のためのデバイスの配備順序を示す。
【
図25】
図23-26は、患者の血管系の治療のためのデバイスの配備順序を示す。
【
図26】
図23-26は、患者の血管系の治療のためのデバイスの配備順序を示す。
【
図27】
図27は、傾斜した角度で動脈瘤内に配備される、患者の血管系の治療のためのデバイスの実施形態の部分的な立面図である。
【
図28】
図28は、不整形な動脈瘤内に配備された、患者の血管系の治療のためのデバイスの実施形態の部分的な立面図である。
【
図29】
図29は、血管障害の動脈瘤内に配備された、患者の血管系の治療のためのデバイスの部分的な立面図を示す。
【
図30】
図30は、1セットの破線によって示される密封ゾーンの実施形態を伴う、患者の血管系の治療のためのデバイスの実施形態の近位斜視図を示す。
【
図31】
図31-35は、患者の血管系の治療のためのデバイスの透過シェルに使用され得る、編組パターンの様々な異なる実施形態を図示する。
【
図32】
図31-35は、患者の血管系の治療のためのデバイスの透過シェルに使用され得る、編組パターンの様々な異なる実施形態を図示する。
【
図33】
図31-35は、患者の血管系の治療のためのデバイスの透過シェルに使用され得る、編組パターンの様々な異なる実施形態を図示する。
【
図34】
図31-35は、患者の血管系の治療のためのデバイスの透過シェルに使用され得る、編組パターンの様々な異なる実施形態を図示する。
【
図35】
図31-35は、患者の血管系の治療のためのデバイスの透過シェルに使用され得る、編組パターンの様々な異なる実施形態を図示する。
【
図36】
図36は、デバイスの透過シェル構造に非構造性繊維を含む、患者の血管系の治療のためのデバイスを図示する。
【
図37】
図37は、透過シェル構造のフィラメントに織り込まれる非構造性繊維の拡大図である。
【
図38】
図38は、示された編組過程の開始に伴い、患者の血管系の治療のためのデバイスの実施形態の構築のために、編組管状部材の製造に使用されるマンドレルの立面図である。
【
図39】
図39は、デバイスの製造に使用される、編組管状部材用の編組過程の立面図である。
【
図40】
図40は、患者の血管系の治療のためのデバイスの製造用の編組管状部材を熱硬化するための、固定具の実施形態の部分的な立面図である。
【
図41】
図41は、患者の血管系の治療のためのデバイスの製造用の編組管状部材を熱硬化するための、固定具の実施形態の部分的な立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願では、患者の血管系内、特に患者の脳血管系内での最小侵襲性配備に適する、血管障害の治療のためのデバイスおよび方法が述べられる。望ましい治療部位へ安全で効率的に送達し、かつ効果的に配備するためのかかる実施形態に対して、一部のデバイスの実施形態は、マイクロカテーテルの内側管腔を通る送達、およびその遠位端からの配備に適する横寸法を伴う、薄型の拘束状態への折り畳みのために構成され得る。これらのデバイスの実施形態はまた、患者の血管系内で時間をかけて動的な力に抵抗するように配備されると、十分な機械的完全性を伴って臨床上効率的な構成を維持し得、そうでなければ配備されたデバイスの圧縮という結果になる。治療する医師に、治療の成功に関するより即時的なフィードバックを提供するために、一部のデバイスの実施形態が、手技の間に患者の血管障害を急性的に塞ぐことが望ましい場合もある。
【0026】
一部の実施形態は、特に、患者の血流から血管障害を完全にまたは部分的に隔離するような、血管壁の再構築による脳動脈瘤の治療に有用である。一部の実施形態は、血管障害を治療するために、血管障害内に配備され、血管壁の再構築、架橋、または両方を亢進するように構成され得る。これらの実施形態のうちのいくつかに対しては、デバイスの透過シェルは、臨床上有益な位置で、透過シェルを固着させるかまたは留めるように構成され得る。一部の実施形態に対して、デバイスは、血管構造または障害に対して、デバイスを固着するかあるいは留めるように、血管障害内に完全にまたは部分的に配置され得る。透過シェルは、障害が治癒するか、そうでなければ患者の健康への障害の危険性を最小化することを可能にするために、血管障害またはその一部分を患者の名目血管系から隔離するように、血管障害の開口部、頚部、または他の部分に及ぶように構成され得る。
【0027】
本願で述べる患者の血管系の治療のためのデバイスの実施形態のうちのいくつかまたは全てに対して、透過シェルは、透過シェルを通る血液のある最初の灌流を可能にするように構成され得る。透過シェルの空隙率は、障害の治癒および隔離を促進するために血管障害を十分に隔離するが、デバイスに対して血管系内の血液または他の液体の動的な流れよって、膜上に行使される機械力を減少させるか、そうでなければ最小化するように、透過シェルを通る十分な最初の流れを可能とするように構成され得る。患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態に対して、時には障害範囲部分と呼ばれる、血管障害の開口部または頚部に及ぶ透過シェルの一部分のみが、患者の血流における血栓形成に対して透過性でありおよび/または貢献する必要がある。かかる実施形態に対しては、血管障害の開口部または頚部に及ばないデバイスのその部分は、血栓形成を効果的に促進するには大きすぎる孔または開口部構成を伴い、実質的に非透過性であるかまたは完全に透過性であり得る。
【0028】
概して、ある場合には、患者内への送達のために薄型に拘束され得る弾力性材料の透過シェルを伴う、中空の薄い壁付きデバイスを使用することが望ましい場合がある。かかるデバイスは、また、拘束を除去すると半径方向外向きに拡張するように構成されることにより、デバイスのシェルは、大きい容積を呈し、内部にシェルが配備される血管障害を充填するか、そうでなければ閉塞し得る。シェルの外向きの半径方向への拡張は、血管障害の内面のいくつかまたは全てに係合するように機能し得、その結果、デバイスの透過シェルの外面と、血管障害の内側表面との間の機械的摩擦によって、デバイスを血管障害内に効率的に固着する。かかるデバイスの一部の実施形態はまた、より大きい内部容積によって、特に障害が狭い頚部部分を有する血管障害の空洞内に部分的または完全に機械的に捕捉され得る。送達用の薄型および低容積を達成し、容積による高い拡張の比率を可能にするために、一部のデバイスの実施形態は、適合および容積測定の制約を可能としつつ、実質的には規則的に離間し安定しているフィラメントの連結または交差の間に孔あるいは開口部パターンを有する自己拡張型透過シェルを形成するように織り合わされた構造と一緒に連結される、織物または編組フィラメントのマトリクスを含む。
【0029】
本願で使用される通り、用語の織物および編組は、メッシュ構造を形成するフィラメントの織り合わせの任意の形態を意味するように、互換的に使用される。繊維産業または他の産業では、これらの用語は、物品が紙または円筒形態で作られる等、製品または用途によって異なる意味あるいはより具体的な意味を有し得る。本開示の目的のためには、これらの用語は互換的に使用される。
【0030】
一部の実施形態に対して、脳動脈瘤の血管内治療において、望ましい臨床転帰を達成することができる、患者の血管系の治療のための織物または編組ワイヤ閉塞デバイスにとって、3つの要因が非常に重要である場合がある。一部の用途における効果的使用に対して、埋め込みデバイスが、安定性のための十分な半径方向剛性と、ほぼ完全な急速な(内部処置)閉塞のための制限された孔径と、マイクロカテーテルの内側管腔を通る挿入を可能にすることに十分に小型である折り畳み外形とを有することが、望ましい場合があることが分かっている。ある閾値を下回る半径方向剛性を伴うデバイスは、不安定である場合があり、ある場合には塞栓形成の危険性がより高くなる場合がある。編組または織物構造におけるフィラメント交差間のより大きい孔は、急速な設置においても、血栓を発生させず、血管障害を閉塞せず、したがって、流れの途絶が治療されている血管障害の完全で持続的な閉塞に至るという臨床上のフィードバックを、治療する医師または医療従事者に与えない場合がある。治療する医師が慣れている態様で蛇行する脳血管系を通るアクセスを可能にするためには、標準的なマイクロカテーテルによって患者の血管系の治療用デバイスを送達することが、非常に望ましいことがある。
【0031】
一部の実施形態に対して、以下でより詳細に述べる通り、望ましい構成を生成するために、透過シェルを形成する2つ以上の異なる直径または横寸法を有するフィラメントを使用することが、望ましい場合がある。2つのフィラメント(2つの異なる直径)の織物デバイスの半径方向剛性は、以下のように、フィラメントの数およびそれらの直径の関数として表され得る。
【0032】
Sradial=(1.2×106lbf/D4)(Nldl
4+Nsds
4)
式中、Sradialは、重量ポンド(lbf)単位の半径方向剛性であり、
Dはデバイスの直径(横寸法)であり、
Nlは大型フィラメントの数であり、
Nsは小型フィラメントの数であり、
dlはインチ単位の大型フィラメントの直径であり、
dsはインチ単位の小型フィラメントの直径である。
【0033】
本式を使用する場合に、特定の臨床値の一部の実施形態に対して、半径方向剛性Sradialは、約0.014lbfと0.284lbfとの間の力であり得る。
【0034】
患者の血管系の治療のための織物ワイヤデバイスの一部の有用な実施形態に対して望ましい、血管障害の頚部または開口部に及ぶデバイスの一部分における最大孔径は、全フィラメントの総数、フィラメントの直径、およびデバイスの直径の関数として表され得る。2つ以上のフィラメントの直径または横寸法が使用される場合における、フィラメントのサイズ間の差は、フィラメントのサイズがデバイスの寸法と比較して非常に小さいデバイスに対する場合には、無視され得る。2つのフィラメント付きデバイスに対しては、最小フィラメントの直径が計算に使用され得る。したがって、かかる実施形態に対する最大孔径は、以下のように表され得る。
【0035】
Pmax=(1.7/NT)(πD-(NTdW/2))
式中、Pmaxは平均の孔径であり、
Dはデバイスの直径(横寸法)であり、
NTは全フィラメントの総数であり、
dWはインチ単位のフィラメント(最小)の直径である。
【0036】
本式を使用する時に、一部の実施形態に対して、血管障害の開口部または頚部の範囲に及ぶデバイスの部分、あるいはデバイスの任意の他の適する部分の最大孔径Pmaxは、約0.016インチまたは約400ミクロン未満であり得る。一部の実施形態では、障害範囲部分、またはデバイスの任意の他の適する部分に対する最大孔径は、約0.012インチまたは約300ミクロン未満であり得る。
【0037】
2つのフィラメント(2つの異なるフィラメントの直径を有する外形)の織物フィラメントデバイスの折り畳み外形は、関数として表され得る。
【0038】
Pc=1.48((Nldl
2+Nsds
2))1/2
式中、Pcはデバイスの折り畳み外形であり、
Nlは大型フィラメントの数であり、
Nsは小型フィラメントの数であり、
dlはインチ単位の大型フィラメントの直径であり、
dsはインチ単位の小型フィラメントの直径である。
【0039】
本式を使用する時に、特定の臨床値の一部の実施形態に対して、折り畳み外形Pcは約1.0mm未満であり得る。特定の臨床値のある実施形態では、デバイスは、上で述べた範囲内の上記3つの要因(Sradial、Pmax、およびPc)全て、すなわち、約0.014lbfと0.284lbfとの間のSradial、約300ミクロン未満のPmax、および約1.0mm未満のPcを同時に有するように構成され得る。一部のかかる実施形態では、デバイスは、約70個のフィラメントから約300個のフィラメントまでを含むように作製され得る。ある場合には、フィラメントは、約0.0004インチから約0.002インチまでの外側横寸法または外側直径を有し得る。
【0040】
述べてきたように、患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、血管部位を充填するために、血管部位の寸法に近似する(またはある過大化を伴って)ようにデバイスのサイズを設定することを要求する。より大きい寸法へのデバイスの拡大、およびより大きいフィラメントの使用は、かかるデバイスのより大きい実施形態に対して十分であろうと推定されるかもしれない。しかしながら、脳動脈瘤の治療に対して、半径方向に折り畳まれたデバイスの直径または外形は、脳の小さく蛇行する血管内を効率的に進むことができるカテーテルのサイズによって制限される。さらに、所与のサイズまたは厚さを有する弾力性フィラメントの所与の数または一定の数によって、デバイスがより大型に作製されるためには、フィラメントの接合部間にある孔または開口部は、対応してより大きくなる。加えて、所与のフィラメントのサイズに対して、フィラメントの曲げ弾性率または曲げ剛性、従って構造は、デバイスの寸法が増加するにつれて減少する。曲げ弾性率は、歪みに対する応力の比として定義され得る。したがって、歪み(たわみ)が所与の力において低い場合、デバイスは、高い曲げ弾性率を有するか、または曲げ剛性があると考えられ得る。剛性のあるデバイスはまた、低い弾性コンプライアンスを有すると言われ得る。
【0041】
患者の血管系の治療のためのより大きいサイズのデバイスを適切に構成するためには、弛緩した非拘束状態にあるデバイスの名目直径または横寸法より小さい直径または横寸法を有する、血管または動脈瘤等の血管部位または障害の中へデバイスが配備される時の、デバイス上の力をモデル化することが有用であり得る。述べたように、ある場合には、デバイスの外側表面と血管壁の内側表面との間に残留力があるように、デバイスを“過大にする”ことが賢明である場合がある。過大化に起因するデバイス10上の内側半径方向力は、
図1に図式的に示され、図中の矢印12は内側半径方向力を表す。
図2に示すように、
図1におけるデバイスのフィラメント14上のこれらの圧縮力は、図の中の矢印18によって示すように、分布荷重または分布力を伴う単純に支持されるビーム16として、モデル化されることができる。そのことは、2つの単純支持部20と分布荷重とを有するビームのたわみに対する以下の式から分かり、たわみは、長さLの4乗の関数である。
【0042】
ビームのたわみ=5FL4/384EI
式中、F=力、
L=ビームの長さ、
E=ヤング率、
I=慣性モーメント。
【0043】
したがって、デバイスのサイズが増加して、Lが増加すると、弾性コンプライアンスは実質的に増加する。それゆえ、血管または動脈瘤等の血管部位の中へ挿入される時に、拘束力に逆らってデバイス10のフィラメント14の外側表面によって行使される外側半径方向力は、デバイスの圧縮または過大化の所与の量に対してより低くなる。一部の用途においては、この力は、デバイスの安定性を保証し、デバイスの移動および潜在的な遠位塞栓形成の危険性を減少することに重要である場合がある。
【0044】
一部の実施形態では、望ましい半径方向弾性コンプライアンスを有するデバイスを作製し、かつ一般に使用されるマイクロカテーテルの内側管腔を通って嵌合するように構成される、折り畳み外形を有するように、小型のフィラメントサイズと大型のフィラメントサイズとの組合せが利用され得る。少数であっても比較的大型のフィラメント14を伴って製作されるデバイスは、全て小型フィラメントで作製されたデバイスと比較して、減少した半径方向の弾性コンプライアンス(または増加した剛性)を提供することができる。比較的少数のより大型のフィラメントであっても、フィラメント総断面積を増加することなく、直径の増加に起因する慣性モーメントの変化によって、曲げ剛性の実質的な増加を提供し得る。円形ワイヤまたはフィラメントの慣性モーメント(I)は、次式によって定義され得る。
【0045】
I=πd4/64
式中、dはワイヤまたはフィラメントの直径である。
【0046】
慣性モーメントはフィラメント直径の4乗の関数であるので、直径の小さな変化は、慣性モーメントを大きく増加させる。したがって、フィラメントサイズの小さな変化は、所与の荷重におけるたわみに、したがってデバイスの弾性コンプライアンスに、実質的な影響を与えることができる。
【0047】
したがって、剛性は、デバイス10の折り畳み外形の断面積の大きな増加を伴わずに、有意な量だけ増加し得る。これは、デバイスの実施形態が大型動脈瘤を治療するためにより大型にされるときに、特に重要である場合がある。大型脳動脈瘤は比較的珍しいかもしれないが、医師が現在使用可能である一部の閉塞デバイスは、より小型の動脈瘤の場合と比べて比較的残念な結果を有するので、それらは重要な療法の挑戦を示す。
【0048】
したがって、患者の血管系の治療のためのデバイスの一部の実施形態は、2つ、3つ、4つ、5つ以上の異なる直径または横寸法等、多くの異なる直径を有するフィラメント14の組合せを使用して形成され得る。2つの異なる直径を有するフィラメントが使用されるデバイスの実施形態では、一部のより大型のフィラメントの実施形態は、約0.001インチから約0.004インチまでの横寸法を有し得、一部の小型フィラメントの実施形態は、約0.0004インチおよび約0.0015インチ、より具体的には、約0.0004インチから約0.001インチまでの横寸法または直径を有し得る。小型フィラメントの数に対する大型フィラメントの数の比は、約2と約12との間であり得、また約4と約8との間であり得る。一部の実施形態では、より大型およびより小型のフィラメント間の直径または横寸法の差は、約0.004インチ未満、より具体的には、約0.0035インチ未満、さらにより具体的には、約0.002インチ未満であり得る。
【0049】
上記の通り、患者の血管系の治療用のデバイス10の実施形態は、透過シェルとして役立つ構造を形成する、複数のワイヤ、繊維、糸、管、または他のフィラメント要素を含み得る。一部の実施形態に対して、球形状は、環状編組構造の端部を接続または固定することによって、かかるフィラメントから形成され得る。かかる実施形態に対して、編組または織物構造の密度は、本来的には、ワイヤまたはフィラメント14が共に引き寄せられる端部またはその近傍において増加し得、透過シェル40の近位端32と遠位端34との間に配置される中間部分30またはその近傍において減少する。一部の実施形態に対して、透過シェル40の端部または任意の他の適した部分は、治療のための動脈瘤等、血管障害の開口部または頚部の中に位置付けられ得る。したがって、透過シェルを伴う編組または織物フィラメントデバイスは、血管障害の止血および閉塞を達成するために、透過シェルの名目部分とは異なる特性を有する別個の障害範囲構造の追加を必要としなくてもよい。かかるフィラメントデバイスは、編組、製織、または他の適したフィラメント製作技術によって製作され得る。かかるデバイスの実施形態は、本願に述べるような、様々な3次元形状に形状設定され得る。
【0050】
図3-10を参照すると、患者の血管系の治療のためのデバイス10の実施形態が示されている。デバイス10は、近位端32、遠位端34、縦軸46を有し、
図5、7、および18により詳細に示すように、少なくとも2つの異なる横寸法の大型フィラメント48および小型フィラメント50を含む、複数の細長い弾力性フィラメント14をさらに備える、自己拡張型弾力性透過シェル40を含む。フィラメント14は織物構造を有し、その近位端60および遠位端62において相互に対して固定される。デバイスの透過シェル40は、フィラメントの長さに沿って相互に半径方向に隣接して、近位端42から遠位端44まで縦方向に延在する薄い織物フィラメント14を伴い、
図11に示すように、マイクロカテーテル61内への送達のために構成される半径方向に拘束された細長い状態を有する。
【0051】
図3-6に示すように、透過シェル40はまた、半径方向に拘束された状態に対して、球状の縦方向に短縮された構成を伴う、拡張した弛緩状態を有する。拡張状態では、織物フィラメント14は、近位端32と遠位端34との間のデバイスの縦軸46から半径方向に拡張される平滑経路の中に、自己拡張型弾力性透過シェル40を形成する。フィラメント14の織物構造は、織物フィラメント間に形成された透過シェル40の中に複数の開口部64を含む。一部の実施形態に対して、この開口部64のうちの最大のものは、血栓臨界速度を下回る速度で、開口部のみを通る血流を可能にするように構成され得る。血栓臨界速度は、患者の血管系内に配備される時に、血管グラフト表面の50%より多くが血栓によって被覆される時間平均速度として、少なくとも数人によって、定義されている。動脈瘤閉塞との関連で、わずかに異なる閾値が適切であり得る。それゆえ、本願で使用する通りの血栓臨界速度は、デバイスによって治療される血管障害の中への血流が、実質的には約1時間未満後に、そうでなければ治療手技中に実質的に遮断されるように、患者血管系内に配備されるデバイス10等のデバイス内またはデバイス上に凝血が生じる速度を含むものとする。ある場合には、血管障害の中への血流の遮断は、十分な量の造影剤が患者の埋め込み部位の血管系上流の中に注入され、その部位から消散するにつれて可視化された後に、血管障害に進入する最低限の造影剤によって示され得る。埋め込み手技の約1時間未満内または埋め込み手技中の、流れのかかる持続的遮断はまた、血管障害の急性閉塞と呼ばれ得る。
【0052】
したがって、デバイス10が配備されると、透過シェルを通るいずれの血流も、血栓臨界速度を下回る速度まで減速され得、血栓が透過シェル40の中の開口部上およびその周囲に形を成し始めるであろう。最終的に、この過程は、その内部にデバイス10が配備される血管障害の急性閉塞を生成するように構成され得る。一部の実施形態に対して、透過シェル40の少なくとも遠位端は、フィラメント14の固定された遠位端62が、拡張状態にある名目透過シェル構造または輪郭内で軸方向に引き抜かれるように、裏返された構成で逆屈曲を有し得る。一部の実施形態に対して、透過シェルの近位端はさらに、フィラメント14の固定された近位端60が、拡張状態にある名目透過シェル構造40内で軸方向に引き抜かれるように、裏返された構成で逆屈曲を含む。本願で使用される通り、用語裏返されたは、
図3-6のデバイスの実施形態に示すように、裏返される、一部裏返される、および/または逆屈曲を伴い陥凹する構造を含み得る。かかる実施形態に対して、端部の周囲に配置される透過シェルまたはハブ構造のフィラメント14の端部60および62は、デバイスの透過シェルの球形状の末梢内またはその下方に引き抜かれ得る。
【0053】
透過シェル40の細長い弾力性フィラメント14は、溶接、半田付け、接着、エポキシ接着等を含む1つ以上の方法によって、その近位端60および遠位端62で相互に対して固定され得る。一緒に固定されているフィラメントの端部に加えて、遠位ハブ66はまた、透過シェル40の薄いフィラメント14の遠位端62に固定され得、近位ハブ68は、透過シェル40の薄いフィラメント14の近位端60に固定され得る。近位ハブ68は、空洞70を近位ハブ68の近位部分内に形成するように、薄いフィラメントの近位端60を越えて近位に延在する円筒形部材を含み得る。近位空洞70は、
図11-15に示すような、順番に送達装置に分離可能に固定され得る、細長い分離テザー72を固定するための、エポキシ、半田、または任意の他の適する結合剤等の接着剤を担持するのに使用され得る。
【0054】
一部の実施形態に対して、透過シェル40の細長い弾力性フィラメント14は、実質的に円形状である横断面を有し得、形状記憶金属であり得る超弾性材料から作製され得る。透過シェル40のフィラメントの形状記憶金属は、
図3-6に示すように、弛緩した拡張状態の球状構成に熱硬化され得る。適する超弾性形状記憶金属は、NiTi合金等の合金を含み得る。かかる合金の超弾性特性は、合金が示される球形態に熱硬化され、マイクロカテーテルの内側管腔内への送達のために完全に拘束され、次いで患者の体内に配備されると、球状構成の元来の熱硬化形状へ実質的に戻って自己拡張するように解放されることが可能なように、細長いフィラメント14に対して弾力性特性を提供するのに有用であり得る。
【0055】
デバイス10は、拡張した弛緩状態で近位端32および遠位端34を有する透過シェル40を伴う、裏返されたフィラメント構造を有し得る。透過シェル40は、示された実施形態に対して、実質的に閉鎖された構成を有する。デバイス10の透過シェル40のいくつかまたは全ては、デバイスが拡張状態に配備された後、血管障害の中への液体の流れまたは圧力を、実質的に遮断するか、または邪魔するか、そうでなければある時間に渡って血管障害を隔離するように構成され得る。概して、透過シェル40およびデバイス10はまた、近位端32、遠位端34、および縦軸46を含む細長い管状または円筒状の構成を伴う、
図11に示すように薄型で半径方向に拘束された状態を有する。半径方向に拘束された状態である間に、透過シェル40の細長い可撓性フィラメント14は、実質的に管状または圧縮された円筒構成を形成する、近位端と遠位端との間で相互に対して実質的に平行で、横に近接して配置され得る。
【0056】
透過シェル40のフィラメント14の少なくとも一部の近位端60は、近位ハブ68に固定され得、透過シェル40のフィラメント14の少なくとも一部の遠位端62は、遠位ハブ66に固定され、近位ハブ68および遠位ハブ66は、
図4に示すように縦軸46に対して実質的に同心円状に配置されている。フィラメント14の端部は、接着剤、半田、溶接等の使用を含む、相互へのフィラメント端部の固定に関する上記方法のいずれかによって、それぞれのハブ66および68に固定され得る。透過シェル40の中間部分30は、
図11に示すように、マイクロカテーテルからの送達に適する薄型を伴う、第1の横寸法を有し得る。デバイス10上の半径方向の拘束は、示されるマイクロカテーテル61の遠位端部分等、マイクロカテーテルの内側管腔の内側表面によって加えられ得るか、またはカテーテルの遠位端からデバイス10が駆出されると、制御可能な様式で解放され得る、任意の他の適するメカニズムによって加えられ得る。
図11では、デバイス10の近位端またはハブ68は、デバイス10の近位ハブ68に配置される、送達システム112の細長い送達装置110の遠位端に固定される。
【0057】
編組または織物フィラメント構造を有する、一部のデバイス10の実施形態は、約10個のフィラメントから約300個までのフィラメント14、より具体的には、約10個のフィラメントから約100個までのフィラメント14、さらにより具体的には、約60個のフィラメントから約80個までのフィラメント14を使用して形成され得る。透過シェル40の一部の実施形態は、近位端32から遠位端34まで延在する約70個のフィラメントから約300個までのフィラメント、より具体的には、近位端32から遠位端34まで延在する約100個のフィラメントから約200個までのフィラメントを含み得る。一部の実施形態に対して、フィラメント14は、約0.0008インチから約0.004インチまでの横寸法または直径を有し得る。一部の場合では、細長い弾力性フィラメント14は、約0.0005インチから約0.005インチまで、より具体的には、約0.001インチから約0.003インチまで、およびある場合には、約0.0004インチから約0.002インチまでの外側横寸法または直径を有し得る。異なるサイズのフィラメント14を含む、一部のデバイスの実施形態10に対して、透過シェル40の大型フィラメント48は、約0.001インチから約0.004インチまでである横寸法または直径を有し得、小型フィラメント50は、約0.0004インチから約0.0015インチまで、より具体的には、約0.0004インチから約0.001インチまでの横寸法または直径を有し得る。加えて、小型フィラメント50と大型フィラメント48との間の横寸法または直径の差は、約0.004インチ未満、より具体的には、約0.0035インチ未満、さらにより具体的には、約0.002インチ未満であり得る。異なるサイズのフィラメント14を含む透過シェル40の実施形態に対して、透過シェル40の大型フィラメント48の数に対する透過シェル40の小型フィラメント50の数は、約2対1から約15対1まで、より具体的には、約2対1から約12対1まで、さらにより具体的には、約4対1から約8対1であり得る。
【0058】
図4に示すように、透過シェル40の拡張した弛緩状態は、近位ハブ68が拘束状態にあるよりも遠位ハブ66の近くに配置されるように、拘束状態に対して軸方向に短縮される構成を有する。ハブ66および68の両方は、デバイスの縦軸46に対して実質的に同心円状に配置され、各フィラメント要素14は、各端部に逆屈曲を伴う、近位および遠位ハブ66と68との間に平滑な弧を形成する。一部の実施形態に対して、配備された弛緩状態にある透過シェル40の近位および遠位ハブ66と68との間の縦間隔は、拘束された円筒状態である近位および遠位ハブ66と68との間の縦間隔の、約25%から約75%であり得る。近位および遠位端32と34との間にあるフィラメント14の弧は、各フィラメント14の中間部分が、第1の横寸法より実質的に大きい第2の横寸法を有するように、構成され得る。
【0059】
一部の実施形態に対して、透過シェル40は、約0.2mmから約2mmまでの折り畳まれた半径方向に拘束された状態にある第1の横寸法と、約4mmから約30mmまでの弛緩した拡張状態にある第2の横寸法とを有し得る。一部の実施形態に対して、拡張状態にある透過シェル40の第2の横寸法は、第1の横寸法の約2倍から約150倍まで、より具体的には、第1のまたは拘束された横寸法の約10倍から約25倍までであり得る。弛緩した拡張状態にある透過シェル40の近位端32と遠位端34との間の縦間隔は、拘束された円筒状態である近位端32と遠位端34との間の間隔の約25%から約75%までであり得る。一部の実施形態に対して、弛緩した拡張状態にある透過シェル40の主要横寸法は、約4mmから約30mmまで、より具体的には、約9mmから約15mmまで、さらにより具体的には、約4mmから約8mmまでであり得る。
【0060】
透過シェル40のフィラメント14の弧形部分は、
図6に示すように、透過シェル40の端部の近くに、第1のまたは外側半径88、および第2のまたは内側半径90を伴う、正弦様形状を有し得る。この正弦様または複数の曲線形状は、血管障害に隣接する親血管の中の流れの閉鎖を減少させ得る、近位端32の中に陥凹部を提供し得る。一部の実施形態に対して、透過シェル40の第1の半径88および第2の半径90は、約0.12mmと約3mmとの間であり得る。一部の実施形態に対して、近位端32と遠位端34との間の距離は、一部の実施形態のための透過シェル40の全長の約60%未満であり得る。かかる構成により、デバイス10が遠位端34で抵抗を受ける時に、遠位端34が近位端32の方へ下方に曲がることが可能になってもよく、したがって、縦の一致が提供され得る。一部の実施形態では、フィラメント14は、全ての部分に約2mmより大きい距離を覆う湾曲があるように形を成し得る。したがって、一部の実施形態に対して、各フィラメント14は、実質的に継続する湾曲を有し得る。この実質的に継続する湾曲は、平滑配備を提供してもよく、血管穿孔の危険性を減少し得る。一部の実施形態に対して、端部32または34のうちの1つは、他の端部より縦にまたは軸方向に等角であるように、他より大きい程度まで後退するかまたは裏返され得る。
【0061】
一部の実施形態に対して、透過シェル40の第1の半径88および第2の半径90は、約0.12mmから約3mmの間であり得る。一部の実施形態に対して、近位端32と遠位端34との間の距離は、拡張された透過シェル40の全長の約60%より大きくてもよい。したがって、内面間の最長である縦の距離は、外面の縦の長さまたはデバイス10の全長の約60%から約90%までであり得る。近位端32および遠位端34にあるハブ66と68との間のギャップにより、デバイス10が遠位端で抵抗を受ける時に、遠位ハブ66が近位ハブ68の方へ下方に曲がることが可能になり得、したがって、縦の一致が提供され得る。フィラメント14は、全ての部分に約2mmより大きい距離を覆う湾曲があるように形を成し得る。したがって、一部の実施形態に対して、各フィラメント14は、実質的に継続する湾曲を有し得る。この実質的に継続する湾曲は、平滑配備を提供してもよく、血管穿孔の危険性を減少し得る。遠位端34は、透過シェル40の遠位端部分が、近位端部分より半径方向に等角であり得るように、近位端32より大きい程度まで後退するかまたは裏返され得る。遠位端部分の一致は、より優れたデバイスに、不整形な形状の動脈瘤または他の血管障害への一致を提供し得る。デバイスの凸面は、血管部位の湾曲に一致するように、陥凹面を形成して、内側に曲がり得る。
【0062】
図10は、近位ハブ68の外輪によって拘束されて密集する、2つの異なるサイズのフィラメント14を有するデバイス10の近位ハブ68内に配置されるフィラメント14の拡大図を示している。テザー部材72は、
図6に示すように、フィラメント14の中間部分内、またはフィラメント14の近位端60の近位である近位ハブ68の空洞70内に任意に配置され得る。テザー72の遠位端は、近位ハブ68の近位段部分94によって形成される近位ハブ68の空洞70の中に機械的に捕捉される、その遠位端の中に形成される結び目92で固定され得る。テザー72の結び目付き遠位端92はまた、機械での圧縮、接着、溶接、半田付け、ろう付け等で、空洞70内または任意でフィラメント14の近位端60の間のテザー72の遠位端の結合あるいはポッティングによって、固定され得る。
図6に示すテザー72の実施形態は、接着剤によって近位ハブ68の空洞にポッティングされた、結び目付きの遠位端92を有する。かかるテザー72は、
図11および
図23-26に示すように、デバイス10を配備するために使用される送達装置110の一部であり得る、溶解可能、分解可能、または解放可能なテザーであり得る。
図10はまた、近位ハブ68の外輪内で、相互に対して定位置にある大型および小型フィラメント48および50を固定するように構成し得る、近位ハブ68内に配置され、近位ハブ68によって拘束される、大型フィラメント48および小型フィラメント50を示している。
【0063】
図7および8は、患者の血管系の治療用のデバイス10の透過シェル40の編組フィラメント14の一部の構成実施形態を図示している。各実施形態の編組構造は、各隣接するフィラメントセグメントに接触する円形状100を伴い、織物または編組構造の孔64内に配置される円形状100と共に示されている。孔開口部サイズは、編組のフィラメント要素14のサイズによって、少なくとも部分的に決定され得、角の重なるフィラメントは相互に対して相対し、編組構造の打ち込み本数となる。一部の実施形態に対して、セルまたは開口部64は、
図7に示すように、細長い実質的にはひし形形状を有し得、透過シェル40の孔または開口部64は、
図8に示すように、デバイス10の中間部分30に向って実質的により正方形の形状を有し得る。ひし形の孔または開口部64は、ハブ66および68の特に近くにある幅より実質的に大きい長さを有し得る。一部の実施形態では、ひし形の孔または開口部の幅に対する長さの比は、一部のセルに対して3対1の比を超え得る。ひし形開口部64は、幅よりも大きい長さを有し得、それゆえ1より大きい長さ/幅として定義されるアスペクト比を有する。ハブ66および68の近くの開口部64は、
図7に示すように、ハブからさらに遠い開口部より、実質的により大きなアスペクト比を有し得る。ハブに隣接する開口部64のアスペクト比は、約4対1より大きくてもよい。最大直径近くの開口部64のアスペクト比は、一部の実施形態に対して、約0.75対1と約2対1との間であり得る。一部の実施形態に対しては、透過シェル40の中の開口部64のアスペクト比は、約0.5対1から約2対1までであり得る。
【0064】
開口部64を囲むフィラメント14を移動させるかまたは歪めることなく、透過シェル40の編組構造の開口部64内に配置され得る、最大の円形状100によって画定される孔径は、実施形態に対して、約0.005インチから約0.01インチまで、より具体的には、約0.006インチから約0.009インチまで、さらにより具体的には、約0.007インチから約0.008インチまでのサイズに及び得る。加えて、デバイス10の透過シェル40の隣接するフィラメント14の間に形成される、少なくとも一部の開口部64は、血栓臨界速度を下回る速度で、開口部64のみを通る血流を可能にするように構成され得る。一部の実施形態に対して、透過シェル構造40の中の最大開口部64は、血栓臨界速度を下回る速度での、開口部64のみを通る血流を可能にするように構成され得る。上記の通り、孔径は、一部の実施形態に対して、約0.016インチ未満、より具体的には、約0.012インチ未満であり得る。一部の実施形態に対して、隣接するフィラメント14の間に形成される開口部64は、約0.005インチから約0.04インチまでであり得る。
【0065】
図12-15を参照すると、
図11の送達システム112の送達装置110の実施形態が、より詳細に示されている。装置110は、
図12に示すように、装置110の近位端116から装置110の遠位部118まで延在する、細長いコアワイヤ114を含む。コアワイヤ114は、
図11に示すように、送達システム112のマイクロカテーテル61の内側管腔120を通って、患者の血管系の治療用の拘束されたデバイス10を押すのに、十分な支柱強度を提供するように構成される。コアワイヤ114はまた、マイクロカテーテル61の外側の位置から、マイクロカテーテル61の内側管腔120内を軸方向に、デバイス10を引くか近位に後退させるのに、十分な引張強度を有する。近位ハブ68から近位に延在するテザー72は、
図13に示すように、テザー72の一部分およびコアワイヤ114の遠位部を覆って配置され、両方を覆って収縮される、収縮チューブ122の長さを伴うコアワイヤ114の遠位端に固定されるが、固定の任意の他の適した手段が使用され得る。
【0066】
第1の導体126および第2の導体128に電気的に連結される加熱コイル124は、テザー72の遠位の大部分を覆って配置される。加熱コイル124はまた、熱シールドとして機能するのに役立ち、送達装置110の周囲に、患者の血流等の環境の中へ加熱コイル124からの熱の漏出を最小にする、熱収縮チューブ122の遠位にある加熱コイル124を覆って配置される、ポリマーチューブ130の長さで被覆され得る。熱収縮チューブ122および絶縁ポリマーチューブ130が、装置110の遠位部118に固定されると、熱収縮チューブ122の近位に配置されるテザー72の近位部分は、
図13に示すように切り取られ得る。送達装置110の遠位端134から装置110の近位部136まで延在するオーバーコイル132は、次いで、加熱コイル124、コアワイヤ114、テザー72、第1の導体126、および第2の導体128を覆って配置され得、これらの要素を一緒に担持し、低摩擦外面を生成し、送達装置110の望ましい可撓性を維持する。装置110の近位部136は、それぞれ
図15に示すように、コアワイヤ114の近位部136の近傍に円周方向に配置され、そこから絶縁され、第1の導体126および第2の導体128に電気的に連結される、第1の接点138および第2の接点140の遠位に配置される、オーバーコイル132の近位末端を含む。
【0067】
加熱コイル124は、装置110の近位部136において第1の接点138および第2の接点140に連結される電力源142から、第1の導体126および第2の導体128を通って供給される電流を受容するように構成され得る。加熱コイル124を通過した電流は、デバイス10を配備すると、テザー72を溶解し切断するように、テザー材料72の融点を上回る温度まで、加熱コイルを加熱する。
【0068】
送達装置110の実施形態は、概して、送達システム112に使用されるために、マイクロカテーテル61の全長より大きい長さを有し得る。この関係により、医師によってその操作が可能となるように、上に延べられた
図17に示すように、マイクロカテーテル61の近位端150から延在する十分な長さを有する一方で、送達装置110がその遠位端に固定されるデバイス10に沿って、マイクロカテーテル61の内側管腔120の遠位ポートから延在することが可能となる。一部の実施形態に対して、送達装置110の長さは、約170cmから約200cmまでであり得る。コアワイヤ114は、ステンレス鋼、NiTi合金等の任意の安定した高力材料から作られ得る。コアワイヤ114の実施形態は、約0.010インチから約0.015インチまでの外側直径または横寸法を有し得る。オーバーコイル132は、約0.018インチから約0.03インチまでの外側直径または横寸法を有し得る。
図12-15に示す装置110の実施形態は、導体対を通過した電力によって起動するが、光ファイバーを通過した光エネルギーを利用する類似の構成、または任意の他の適した配置は、テザー72の遠位部分を切断する、加熱コイル124等の遠位加熱部材または要素を遠隔で加熱するために使用され得る。加えて、他の送達装置の実施形態は、本願に述べられ含まれており、本願で述べる患者の血管系の治療のためのデバイス10の実施形態うちのいずれかに使用され得る。
【0069】
他の送達および位置決めシステムの実施形態は、送達装置の全長に沿ってトルクを並進させることなく、患者の血管系の体内での治療のためのデバイスを回転させる能力を提供し得る。デバイス10の送達および位置決めのための一部の実施形態は、上に含まれる共同所有の国際特許出願第US2008/065694号に記載されている。送達および位置決め装置は、デバイスの回転位置決めを可能にする、遠位回転部材を含み得る。送達および位置決め装置は、装置の全長に沿うトルクの伝達を伴わずに、体内において埋め込み部を回転させる遠位回転部材を含み得る。任意で、送達システムはまた、近位端と遠位回転可能端部との間の中間部分の中でのトルクの伝達を伴わずに、埋め込み部を回転させ得る。送達および位置決め装置は、患者の血管系の治療のためのデバイスの任意の適した部分に、解放可能なように固定され得る。
【0070】
本願に述べられるデバイスの実施形態は、ガイドワイヤまたはガイドワイヤ様構造等の、任意の適した可撓性のある細長い送達装置またはアクチュエータから解放可能であってよい。かかる送達装置からデバイスの実施形態を解放することにより、上記のような熱メカニズム、電解メカニズム、水圧メカニズム、形状記憶材料メカニズム、または血管内埋め込み部配備の技術において知られる任意の他のメカニズムによって起動し得る。
【0071】
患者の血管系内塞栓デバイスまたはステントの配備等、療法デバイスの配備および解放のための実施形態は、押込器または他の送達装置部材の遠位部分への解放可能な接続を介して、かかるデバイスを接続するステップを含み得る。療法デバイス10は、テザーと上で呼ばれている場合がある、フィラメントテザー72、紐、糸、ワイヤ、縫合糸、繊維等によって、装置の遠位部分に分離可能なように載置され得る。テザー72は、モノフィラメント、桿、リボン、中空管等の形態であり得る。テザーの一部の実施形態は、約0.05mmと0.2mmとの間の直径または最大厚を有し得る。テザー72は、約0.5kgと約5kgとの間の最大引張荷重に抵抗することができるように構成され得る。一部の実施形態に対して、一部の塞栓デバイスより実質的に大きくともよい、配置されているデバイス10の質量のため、一部の既知の分離デバイスは、本願で述べる一部の実施形態で使用するのに、十分な引張強度を欠いていてもよい。したがって、約15ニュートンより大きい“破断時の荷重”を有する、一部のテザーの実施形態のための小型の超高力繊維を使用することが望ましい場合がある。一部の実施形態に対して、オランダ、ヘールレンのRoyal DSMから市販されているDyneema Purityとして知られる材料から作られるテザーが、使用され得る。
【0072】
テザー72は、療法デバイスの解放を引き起こす加熱要素への電流等、エネルギーの入力によって切断され得る。一部の実施形態に対して、加熱要素は、白金-タングステン合金等、高い電気抵抗率を伴う1束のワイヤであり得る。テザー部材は、加熱要素を通過するか、または加熱要素に隣接して位置付けられ得る。加熱器は、分離の間、周囲組織への熱損傷の可能性を減少するために断熱を提供するように、送達装置の遠位部分の中に実質的に拘束され得る。別の実施形態では、電流は加熱要素として機能もするテザーを通過し得る。
【0073】
多くの材料が、ポリマー、金属、およびそれらの複合材料を含む、テザー72の実施形態を作製するために使用され得る。テザーに有用である場合がある材料の1つの階級は、ポリオレフィン、ポリエチレン等のポリオレフィンエラストマー、ポリエステル(PET)、ポリアミド(ナイロン)、ポリウレタン、ポリプロピレン、PEBAXまたはHytrel等のブロック共重合体、およびエチレンビニルアルコール(EVA)等のポリマー、あるいは、シリコン、ラテックス、およびKraton等のゴム状物質を含む。ある場合には、ポリマーはまた、その引張強度および溶融温度を操作するように、放射線と架橋結合され得る。テザーの実施形態に使用され得る材料の別の階級は、ニッケルチタン合金(ニチノール)、金、白金、タンタル、および鋼等の金属を含み得る。テザー構築に有用である場合がある他の材料は、高い性能特性を提供してもよく、高度に不活性である液晶高分子(LCP)の全芳香族ポリエステルポリマーを含む。市販されているLCPポリマーは、株式会社クラレ(日本、東京)により生成されているVectranである。材料の選択は、溶融温度または軟化温度、分離に使用される電力、および体の治療部位に依ってもよい。テザーは、圧着、溶接、糸結び、半田付け、接着、または当該分野において既知の他の手段によって、埋め込み部および/または押込器に接合され得る。
【0074】
また、
図10に関する上の詳細等、フィラメントおよび近位ハブの構築の多くの変形例が、患者の血管系の治療のためのデバイス10の有用な実施形態に使用され得ることにも留意されたい。
図16は、近位ハブ構成の横断面の拡大図を示している。示される実施形態に対して、フィラメント14は、近位ハブ68の外輪によって拘束され、密集するフィラメント14を伴う、デバイス10の近位ハブ68または端部部分内に配置される。テザー部材72は、フィラメント14の中間部分内、またはフィラメント14の近位端60の近位にある近位ハブ68の空洞の中に配置され得る。かかるテザー72は、デバイスを配備するのに使用される、上記の解放装置の一部であり得る、溶解可能か、切断可能か、または解放可能なテザーであり得る。
【0075】
図16は、近位ハブ68の内側表面によって密集し、半径方向に拘束される場合があるフィラメントの構成を示す、近位ハブ68の実施形態を横断面で図示している。一部の実施形態では、かかるフィラメント14から形成される透過シェル40の編組または織物構造は、多くの小型フィラメントを使用して構築され得る。フィラメント14の数は125個より大きくてもよく、また約80個のフィラメントと約180個のフィラメントとの間であり得る。上記の通り、一部の実施形態に対するフィラメント14の総数は、約70個のフィラメントから約300個のフィラメント、より具体的には、約100個のフィラメントから約200個のフィラメントであり得る。一部の実施形態では、透過シェル40の編組構造は、2つ以上のサイズのフィラメント14で構築され得る。例えば、構造は、構造的な支持を提供する一部のより大型のフィラメントと、望ましい孔径および密度を提供する一部のより小型のフィラメントとを有し、したがって、ある場合には、血栓臨界速度を達成する流れ抵抗を有し得る。一部の実施形態に対して、透過シェル40の小型フィラメント50は、一部の実施形態のために約0.0006インチから約0.002インチまで、他の実施形態では約0.0004インチから約0.001インチまでの横寸法または直径を有し得る。大型フィラメント48は、一部の実施形態では約0.0015インチから約0.004インチまで、他の実施形態では約0.001インチから約0.004インチまでの横寸法または直径を有し得る。フィラメント14は、1本ずつ上下交互の構造(
図7および8に図示)または補助的な織り方、すなわち1本より多い縦糸が1本以上の横糸と織り合わさる、平織りで編まれ得る。本数は、1インチ当たり約25本と200本(PPI)との間で変化し得る。
【0076】
一部の実施形態に対して、透過シェル40または部分は、多孔性であってもよく、液体に対して高度に透過性であり得る。120mmHgの圧力で測定される時に、2,000ml/min/cm2を下回る水浸透率を有する、大部分の血管補綴ファブリックまたはグラフトとは対照的に、本願で述べる一部の実施形態の透過シェル40は、約2,000ml/min/cm2よりも大きい、ある場合には約2,500ml/min/cm2よりも大きい水浸透率を有し得る。一部の実施形態に対して、透過シェル40またはその部分の水浸透率は、120mmHgの圧力で測定される時に、約2,000ml/min/cm2と10,000ml/min/cm2との間、より具体的には、約2,000ml/min/cm2から約15,000ml/min/cm2までであり得る。
【0077】
デバイスの実施形態およびその構成要素は、金属、ポリマー、生物材料、およびその複合材料を含み得る。適した金属は、ジルコニウムベースの合金、コバルト-クロム合金、ニッケル-チタン合金、白金、タンタル、ステンレス鋼、チタン、金、およびタングステンを含む。潜在的に適したポリマーは、限定するものではないが、アクリル、絹、シリコン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル(例えば、テレフタル酸ポリエチレンまたはPET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネートポリウレタン(PCU)、およびポリウレタン(PU)を含む。デバイスの実施形態は、体によって分解するか、あるいは吸収または侵食される材料を含み得る。生体再吸収性(例えば、分解、細胞、組織、または体内の他のメカニズムによって吸収される)、または生体吸収性(生体再吸収性に類似)材料が使用され得る。代替的に、生体侵食性(例えば、細胞活動または他の生理的分解メカニズムによって、周囲組織の液体との接触で時間をかけて侵食されるか、または分解する)、生体分解性(例えば、体の中の酵素または加水分解作用、あるいは他のメカニズムによって、時間をかけて分解する)、または溶解性材料が採用され得る。これらの用語の各々は、可換の生体吸収性ポリマーであると解釈される。潜在的に適した生体吸収性材料は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)等のポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ-D-ラクチド(PDLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコネート、ポリ乳酸-ポリエチレンオキシド共重合体、変性セルロース、コラーゲン、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ酸無水物、ポリリン酸エステル、ポリ(アミノ酸)、または関連共重合体材料を含む。吸収性複合材料繊維は、約20%のポリカプロラクトン(PCL)を伴う上記共重合体の混合物から成るマトリクス材料を伴う、約18%のグリコール酸および約82%の乳酸の共重合体から作られる強化繊維を組み合わせることで、作製され得る。
【0078】
本願で述べる好適なデバイス10の実施形態のうちのいずれかにおいて、透過シェル構造40は、血管または他の血管部位内でデバイスの固定化を亢進するように、1つ以上の固定化要素または表面を含み得る。固定化要素は、留め金、鉤部、突起、孔、微細特徴、模様付け、生体接着材、またはそれらの組み合わせを備え得る。支持構造の実施形態は、複数部分が除去される金属の管から製作され得る。材料の除去は、レーザー、放電加工機(EDM)、光化学エッチング、および従来の機械技術によってなされ得る。記載の実施形態のうちのいずれかにおいて、支持構造は、血管ステント製作の技術にある通り、複数のワイヤで構築されるか、1枚の材料から切られるまたはエッチングされるか、管から切られるまたはエッチングされるか、あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0079】
透過シェル40の実施形態は、ワイヤ、リボン、または他のフィラメント要素14の少なくとも一部において形成され得る。これらのフィラメント要素14は、円形、楕円形、卵形、正方形、長方形、または三角形の断面を有し得る。透過シェル40の実施形態はまた、従来の機械加工、レーザー切断、放電加工機(EDM)、または光化学加工(PCM)を使用して形成され得る。金属から成る場合、透過シェル40は金属管またはシート材料のいずれかから形成され得る。
【0080】
本願で述べるデバイス10の実施形態は、神経血管の進行決定および療法の技術において既知である、マイクロカテーテル61のタイプ等のマイクロカテーテル61を含む、送達および位置決めシステム112から送達され配備され得る。患者の血管系の治療用のデバイス10の実施形態は、送達および配備のために、マイクロカテーテル61の内側管腔120等、管または他の半径方向の拘止によって、弾性的に折り畳まれ拘止され得る。マイクロカテーテル61は、概して、大腿動脈または上腕動脈等、末梢血管にアクセスする小さい切開152を通って挿入され得る。マイクロカテーテル61は、蛍光透視法の下または他の適した先導方法によって、ガイドワイヤ159を覆って、患者の体156の外側の位置から望ましい治療部位154へ送達されるか、またはそうでなければ進められ得る。ガイドワイヤ159は、一部の場合では、マイクロカテーテル61の内側管腔120を通って送達システム112の送達装置110に固定される、デバイス10の挿入を可能にするようなかかる手技の間に、除去され得る。
図17は、
図18に示すような、血管障害160の治療を受ける患者158の概略図を図示している。アクセスシース162は、アクセスシース162内に配備されるマイクロカテーテル61および送達装置110を含む送達システム112で、患者158の橈骨動脈164または大腿動脈166のいずれか内に配置されて示されている。送達システム112は、患者の脳の中の血管障害160に隣接する、患者の脳の血管系の中へ遠位に延在して示されている。
【0081】
患者の様々な血管へのアクセスは、血管障害160への経皮的アクセスを達成するために、大腿動脈166、橈骨動脈164等の動脈を含んで確立され得る。概して、患者158は手術に対して準備していてもよく、アクセス動脈は小さい外科的切開152を経由して露出され、管腔へのアクセスは、拡張薬または一連の拡張薬が、それを覆って血管を拡張し導入シース162を血管の中に挿入するのを可能にするワイヤを配置するために、導入針が使用されるSeldinger技術を使用して得られる。これにより、デバイスを経皮的に使用することが可能となるであろう。定位置にある導入シース162と共に、ガイドカテーテル168は、次いで、進入部位から治療される標的部位154近くの領域までの、安全な通路を提供するのに使用される。例えば、人間の脳の中の部位を治療する際には、大腿動脈の進入部位152から大動脈弓を通って心臓の周りに延在する大きい動脈を通って上へ、および頸動脈170等の大動脈の上側から延在する動脈のうちの1つを通って下流へ延在するであろう、ガイドカテーテル168が選択されるであろう。通常、ガイドワイヤ159および神経血管マイクロカテーテル61は、次いで、マイクロカテーテル61の遠位端151が、動脈瘤等の標的である血管障害160に隣接するか、またはその内側に配置されるまで、ガイドカテーテル168を通って配置され、患者の血管系を通って前進する。神経血管使用様の例示的ガイドワイヤ159は、Boston Scientificによって製作されるSynchro2(登録商標)、およびMicroVention Terumo社によって製作されるGlidewire Gold Neuro(登録商標)を含む。通常のガイドワイヤサイズは、0.014インチおよび0.018インチを含み得る。カテーテル61の遠位端151が、大抵、放射線マーカー材料および蛍光透視法の使用により、その遠位端を設置することによって、部位に位置付けられると、カテーテルが一掃される。例えば、ガイドワイヤ159がマイクロカテーテル61を位置付けるのに使用されている場合、ガイドワイヤ159はカテーテル61から引き抜かれ、次いで埋め込み送達装置110がマイクロカテーテル61を通って前進する。
【0082】
本願で述べるデバイス10の実施形態の送達および配備は、
図11に示すように、半径方向に拘束され縦に可撓性状態に、デバイス10を最初に圧縮することによって実行され得る。デバイス10は、次いで、マイクロカテーテル61内に配置される間に、望ましい治療部位154へ送達され、その後、マイクロカテーテル61の遠位端151から駆出されるか、そうでなければ配備され得る。他の方法の実施形態では、マイクロカテーテル61は、最初、ガイドワイヤ159の上を、または他の適した進路決定技術によって、望ましい治療部位154まで進められ得る。マイクロカテーテル61の遠位端は、マイクロカテーテル61の遠位ポートが、治療される血管障害160の方へ向くか、またはその内に配置され、ガイドワイヤ159を引くように位置付けられ得る。適した送達装置110に固定されるデバイス10は、次いで、半径方向に拘束され、マイクロカテーテル61の内側管腔120の近位部分の中へ挿入され、内側管腔120を通って血管障害160へ遠位に前進し得る。
【0083】
血管障害160内に配置されると、デバイス10は、次いで、血管障害160の一部分または血管障害160全体に及ぶか、あるいは一部に及ぶデバイスの透過シェル40を伴う、拡張した弛緩状態または部分的弛緩状態を想定することが可能となってもよい。デバイス10はまた、一部の実施形態に対して、マイクロカテーテル61の遠位部から駆出されると、拡張された配備構成を想定するように、エネルギー源の適用によって起動され得る。デバイス10が望ましい治療部位154に配備されると、次いでマイクロカテーテル61が引き抜かれ得る。
【0084】
本願で述べる患者の血管系の治療用のデバイス10の一部の実施形態は、患者の血管系の障害の特定のタイプの治療に関してでもよい。例えば、
図18を参照すると、通常末端動脈瘤と呼ばれる動脈瘤160が、断面で示されている。末端動脈瘤は通常、矢印172によって示される供給血管からの血流が、相互から離れる方向を向く2つ以上の分枝血管に分かれる、患者の血管系の中の分岐に発生する。脳底動脈等の供給血管174からの血液の主流は、時々、血管が分岐し、動脈瘤の袋が形を成す血管に衝突する。末端動脈瘤は、動脈瘤160の外形によって名目血管外形に隣接して狭くなる、明確に画定された頚部構造を有し得るが、他の末端動脈瘤の実施形態は、あまり画定されていない頚部構造を有するか、または頚部構造を有していなくともよい。
図19は、名目血管の壁の一部が弱まり、名目血管の表面および外形から離れて膨張する構造のような袋の中に延在する、断面で通常桑実状動脈瘤160を図示している。一部の桑実状動脈瘤は、
図19に示すように、明確に画定された頚部構造を有し得るが、その他はあまり画定されていない頚部構造を有するか、または全く有さなくてもよい。
図19はまた、一部の任意の手技を示し、ステント173または支持の他のタイプが、動脈瘤に隣接する親血管174の中に配置されている。また、マイクロカテーテル61を通って動脈瘤160の中に沈着されている閉塞材料176が示されている。ステント173および閉塞材料176のうちのいずれかまたは両方は、患者の血管系の治療のためのデバイス10の配備の前または後のいずれかに配備され得る。
【0085】
患者の血管系の治療のためのデバイス10の送達および配備の前に、治療する医師が、治療結果を最適化するように、適切なサイズのデバイス10を選択することが望ましい場合がある。治療の一部の実施形態は、治療される血管部位または障害160の容積を推定し、血管部位または障害160の容積に対して、実質的に同一かまたはわずかに過大である容積を伴う、デバイス10を選択するステップを含み得る。閉塞される血管障害160の容積は、選択された領域の容積を計算するソフトウェアに沿って、三次元血管造影または他の類似する画像処理技術を使用して決定され得る。過大化の量は、測定された容積の約2%と15%との間であり得る。非常に不整形な動脈瘤等、一部の実施形態では、デバイス10の容積を小型化することが望ましい場合もある。小葉または“娘動脈瘤”は、転帰に影響を与えることなく、デバイスによって部分的にのみ充填され得る切頂容積を画定し、容積から除外され得る。かかる不規則な動脈瘤160内に配備されるデバイス10が、以下に述べる
図28に示されている。かかる方法の実施形態はまた、血管障害160が、デバイスおよびその中に含有される血液の組み合わせによって、容量分析で実質的に充填され得るように、デバイス10を埋め込み配備するステップを含み得る。デバイス10は、血管障害容積の少なくとも約75%、ある場合には約80%が、デバイス10およびその中に包含される血液の組み合わせによって閉塞されるために、不整形の血管障害160に適応するように十分等角であるように構成され得る。
【0086】
特に、一部の治療の実施形態に対して、デバイス10の配備後に、望ましい一致、半径方向力、および嵌合を達成するように、横寸法が適切に過大であるデバイス10を選択することが望ましい場合もある。
図20-22は、デバイス10が、血管障害160の最大横寸法の少なくとも約10%、時には最大横寸法の最大約100%まで、最初横寸法が過大である配備の後に、適切な嵌合のためにどのように選択される場合があるかの略図を図示している。一部の実施形態に対して、デバイス10は、血管障害160の幅、高さ、または頚部直径に対して測定された寸法との関連で、少量(例えば、約1.5mm未満)過大化し得る。
【0087】
図20では、脳動脈瘤の形態である血管障害160が、障害160の略最大内部寸法を示す、水平矢印180および垂直矢印182で示されている。水平に延在する矢印180は、障害160の最大横寸法を示す。
図21では、血管障害の治療のためのデバイス10の破線の外形184は、横寸法が略20%過大化するように選択されているデバイス10が、どのようにその拘束された弛緩状態にあるように見えるであろうかを図示する、
図20の血管障害160を覆って重畳されて示されている。
図22は、
図21の破線184によって示されるデバイス10が、配備後に血管障害160の内部表面に一致するかもしれない方法を図示し、それによって弛緩した非拘束状態にあるデバイス10の名目横寸法は、ここで、デバイス10上の血管障害160により行使される内側半径方向力185によって、わずかに拘束されている。それに応じて、デバイス10のフィラメント14、およびしたがってそこから作られる透過シェル40が一定の長さを有するため、デバイス10は、
図22の下向き矢印186によって示される通り、障害160の内部容積を長くし、よりよく充填するように、デバイス10の軸方向の軸または縦軸にわずかに細長い形状を想定している。
【0088】
適切なサイズのデバイス10が選択されると、次いで、送達および配備過程が進行し得る。本願で述べるデバイス10の実施形態および送達システム112の実施形態の特性により、概して、障害160の中への最初の配備後であって、デバイス10の分離前に、デバイス10の後退が可能となることにもまた留意されたい。それゆえ、また、障害160内への嵌合が異なるサイズのデバイス10の方に有利に評価された後に、最初に配備されたデバイス10を引くかまたは回収することが、可能で望ましい場合がある。末端動脈瘤160の例が、断面で
図23に示されている。マイクロカテーテル61等のカテーテルの先端151は、
図24に示すように、血管部位または障害160(例えば、動脈瘤)の中へかまたは隣接するように前進し得る。一部の実施形態に対して、塞栓コイルあるいは他の血管閉塞デバイスまたは材料176(
図19に例として示される通り)は、デバイス10を受容するための枠組みを提供するように、動脈瘤160内に任意に配置され得る。加えて、ステント173は、本願に述べられる(また、
図19に例として示すように)患者の血管系の治療のためのデバイスの送達の前または間に、動脈瘤頚部を実質的に横断する一部の脈瘤の親血管174内に配置され得る。約0.020インチから約0.022インチまでの内側管腔直径を有する、適したマイクロカテーテル61の例は、Cordis Corporationによって製造されるRapid Transit(登録商標)である。一部の適したマイクロカテーテル61の例は、Ev3 CompanyのReber(登録商標)、Boston Scientific CorporationのRenegade Hi-Flow(、およびCordis CorporationのMass Transit(等、約0.026インチから約0.028インチまでの内側管腔直径を有するマイクロカテーテルを含み得る。約0.031インチから約0.033インチまでの内側管腔直径を有する好適なマイクロカテーテルは、Chestnut Medical Technologies,Inc.のMarksmen(登録商標)、およびBalt ExtrusionのVasco28(登録商標)を含み得る。約0.039インチから約0.041インチの内側管腔直径を有する、適したマイクロカテーテル61は、Balt Extrusion社のVasco35を含む。これらのマイクロカテーテル61は、例示的実施形態としてのみ挙げられており、他の適したマイクロカテーテルもまた、本願で述べる実施形態のいずれかにおいて使用され得る。
【0089】
送達装置110からのデバイス10の分離は、送達システム112の近位端に配置される制御スイッチ188によって制御され得、制御スイッチ188はエネルギー源142にも連結され得、それによって、送達装置110にデバイス10の近位ハブ68を固定するテザー72を切断する。
図11に示すように、マイクロカテーテル61または他の適した送達システム112内に配置される間に、透過シェル40のフィラメント14は、相互およびカテーテル61の縦軸に対して実質的に平行である、細長い、裏返されていない構成を呈し得る。デバイス10がマイクロカテーテル61の遠位ポートから押し出されるか、そうでなければ半径方向の拘束が除去されると、次いでフィラメント14の遠位端62は、
図25に示すように、血管障害160内に球状の裏返された構成を想定するように、相互に向かって軸方向に収縮し得る。
【0090】
デバイス10は、カテーテル管腔120が、送達の間にデバイス10の半径方向の拡張を拘止するように、マイクロカテーテル61を通って挿入され得る。送達システム112の遠位先端または配備ポートが、血管障害160に隣接するかまたはその内部の望ましい場所に位置付けられると、デバイス10は、カテーテル61の遠位端の外へ配備され得、したがってデバイスが、
図25に示すように半径方向に拡張し始めることが可能となる。デバイス10が送達システム112の遠位端から出現するため、デバイス10は、血管障害160内で拡張状態まで拡張するが、血管障害160の内部表面によって少なくとも部分的に拘束され得る。
【0091】
完全な配備の時に、デバイス10の半径方向の拡張は、
図26に示すように、血管障害160に隣接する患者の血管系の流れ、圧力、または両方から血管障害160を少なくとも部分的に隔離するように、デバイス10を血管障害160内に固定し、また開口部190(例えば、動脈瘤頚部)の少なくとも一部分に渡って透過シェル40を配備するのに役立ってもよい。デバイス10、特に頚部領域190の中での一致により、改良された密封が提供され得る。一部の実施形態に対して、透過シェル40が配備されると、液体の流れを実質的に減速し、血管部位への流れを邪魔し、それによって血管障害160内の圧力を減少させ得る。一部の実施形態に対して、デバイス10は、血管障害160内に実質的に埋め込まれ得るが、しかしながら、一部の実施形態では、デバイス10の一部分は、障害開口部または頚部190の中へ、あるいは分枝血管の中へ延在し得る。
【0092】
行われた1つの例示的ケーススタディは、動脈瘤を対象のイヌに外科的に作り出した、雌イヌに遂行された手技を含む。治療前の標的の動脈瘤は、最大横寸法約8mm、長さ約10mm、および頚部測定値約5.6mmを有していた。配備されたデバイス10は、弛緩した拡張状態で、約10mmの横寸法と、約7mmの縦の長さとを有する球状構造に編まれた、約0.0015インチの横径を有する144個の弾力性フィラメントから形成される、透過シェル40を含んでいた。拡張し配備された透過シェル40の孔64の最大サイズ100は、約0.013インチであった。デバイスは、Boston Scientific社によって作製された5Fr.のGuider Softip XFガイドカテーテルを使用して、標的の動脈瘤へ送達された。再度動脈瘤の頚部に及んだ、拡張し配備された透過シェル40のその部分の孔64の最大サイズ100は、約0.013インチであった。送達システムから分離して5分後には、デバイス10は、動脈瘤の急性閉塞を生成していた。
【0093】
行われた別の例示的ケーススタディは、ニュージーランド白ウサギでの外科的に作り出した動脈瘤の治療に関するものであった。治療前に標的の動脈瘤は、最大横寸法約3.6mm、長さ約5.8mm、および頚部測定値約3.4mmを有していた。配備されたデバイス10は、弛緩した拡張状態で、約4mmの横寸法と、約5mmの長さとを有する球状構造に編まれた、約0.001インチの横径を有する144個の弾力性フィラメントから形成される透過シェルを含んでいた。血管障害の頚部に及ぶように構成された、拡張し配備された透過シェル40の編組メッシュの部分の孔径100は、約0.005インチであった。デバイスは、Cordis Neurovascularによって製造された5Fr.のEnvoy STRガイドカテーテルで、外科的に作り出された動脈瘤へ送達された。約0.027インチの内側管腔直径を有する、Boston Scientific社によって製造されたRenegade Hi-Floマイクロカテーテルは、次いで、ガイドカテーテルを通って挿入され、送達装置の遠位端に固定されるデバイス10の送達のための導管として役立った。デバイス10が血管障害160内に配備されると、血管障害160は、埋め込みから5分で少なくとも部分的な閉塞を達成した。しかしながら、血管造影注入および測定に対する対象動物の感度のため、手技中にさらなるデータは取られなかった。完全な閉塞は、手技から3週間後に調べた時に、デバイスに対して観察された。
【0094】
一部の実施形態に対して、上記の通り、デバイス10は、配備の間または後であるが分離の前に、デバイス10を血管部位または障害160内に配備するために、ユーザによって操作され得る。一部の実施形態に対して、デバイス10は、デバイス10の配備の前または後に、デバイス10の望ましい位置、より具体的には、透過シェル40の望ましい位置を達成するために回転し得る。一部の実施形態に対して、デバイス10は、送達に使用されている送達カテーテルの中間部分に沿って示されている、トルクの伝達または顕性化を伴い、あるいはトルクの伝達または顕性化を伴わないで、送達システム112の縦軸の周りを回転し得る。ある状況においては、血管障害160の急性閉塞が、送達システム112の送達装置110からのデバイス10の分離の前に発生しているのが望ましい場合もある。これらの送達および配備方法は、桑実状動脈瘤、末端動脈瘤、または任意の他の適した血管障害の実施形態160内への配備に使用され得る。一部の方法の実施形態は、デバイス10の透過シェル40が、末端動脈瘤の頚部を実質的に被覆するように分岐を形成する、患者の血管系の3本の血管の集密部に、デバイス10を配備するステップを含む。医師がデバイス10の配備、サイズおよび位置に満足すると、次いで、デバイス10は、上記および
図26に示す方法による制御スイッチ188の作動によって、分離され得る。その後、デバイス10は、その治療をもたらした血管障害160内に埋め込まれた状態となる。
【0095】
図27は、患者の血管障害160の中に配備され埋め込まれたデバイスの別の構成を図示している。
図26に示す埋め込みの構成が、これによってデバイス10の縦軸46が、障害160の縦軸と実質的に並ぶ構成を示す一方で、他の適した臨床上効果的な埋め込みの実施形態が使用され得る。例えば、
図27は、それによって、埋め込みデバイス10の縦軸46が、標的の血管障害160の縦軸に対して、約10度から約90度までの角度で傾けられる埋め込みの実施形態を示している。かかる代替的な埋め込み構成はまた、ある場合には、血管障害160の急性閉塞によって望ましい臨床転帰を達成し、治療された血管障害に隣接する通常の血流を修復することに有用である場合がある。
図28は、不規則な形状の血管障害160の中に埋め込まれたデバイス10を図示している。示される動脈瘤160は、主要動脈瘤の空洞から延在する、少なくとも1つの明確な葉部192を有する。示される2つの葉部192は、配備された血管デバイス10によっては未充填であるが、葉部192はさらにまた、動脈瘤頚部部分190の閉塞のため、患者の体の親血管から隔離される。
【0096】
デバイス10または送達システム112上の、放射線マーカー等のマーカーは、配備の間にデバイスまたは送達システムの位置決めを容易にするために、外部画像機器(例えば、X線)と連動して使用され得る。デバイスが適切に位置付けられると、デバイス10はユーザによって分離され得る。一部の実施形態に対して、送達システム112の送達装置110からのデバイス10の分離は、デバイス10と送達装置110との間にある接合部または解放メカニズムに対するエネルギーの送達(例えば、熱、高周波、長音波、振動、またはレーザー)によって影響を受け得る。デバイス10が分離されると、送達システム112は、患者の血管系または患者の体158から引き抜かれ得る。一部の実施形態に対して、ステント173は、図解のために
図19に示すように、デバイス10の送達後に、動脈瘤頚部190を実質的に横断する、親血管内に配置され得る。
【0097】
一部の実施形態に対して、生理活性剤または受動的治療薬は、デバイス10の応答性材料構成要素から解放され得る。薬剤の解放は、1つ以上の体の環境パラメータによって影響を受け得るか、またはエネルギーが(内部または外部の源から)デバイス10へ送達され得る。止血は、血管障害160の隔離の結果として、血管障害160内に発生し得、最終的には血栓材料およびデバイス10の組み合わせによって、血管障害160の凝血および実質的な閉塞へと至る。一部の実施形態に対して、血管障害160内の血栓症は、デバイス10および/あるいは患者へ送達される薬または他の治療薬から解放される薬剤によって促進され得る。
【0098】
一部の実施形態に対して、デバイス10が配備されると、透過シェル40への血小板の付着は阻害され得、血管障害160、デバイス、または両方の内部空間内での血塊の形成は促進されるか、そうでなければ、フィラメント14またはハブ66および68の外面を含み、一部の実施形態に対するデバイス10の任意の部分に配置され得る、血栓性コーティング、抗血栓性コーティング、または任意の他の適したコーティング(図示せず)の適した選択によって促進され得る。かかる1つのコーティングまたは複数のコーティングは、透過シェル40のいずれか適した部分に加えられ得る。エネルギー形態もまた、一部の実施形態に対して、血管障害160に隣接するデバイス10の固定化および/または治癒を促進するように、送達装置110および/または別個のカテーテルを通って適用され得る。1つ以上の塞栓デバイスまたは塞栓材料176もまた、デバイス10が配備された後に、血管障害160の頚部または開口部190に及ぶ、透過シェル部分に隣接する血管障害160の中へ任意で送達され得る。一部の実施形態に対して、ステントまたはステント様支持デバイス173は、血管障害治療デバイス10の配備の前または後に、血管障害160に渡って及ぶように、障害160に隣接する親血管の中に埋め込まれるかまたは配備され得る。
【0099】
上の実施形態のうちのいずれかでは、デバイス10は、通常のマイクロカテーテル61の中へ半径方向に回収可能または後退可能であるように、十分な半径方向の弾性コンプライアンスを有し得る。デバイス10の近位部分、または一部の実施形態に対して全体としてのデバイス10は、約2.7ニュートン(0.6lbf)未満の力の後退力を使用して約0.7mm未満の内部直径を有する管の中へ後退可能であるように、減少した直径フィラメント、先細りのフィラメント、または半径方向の湾曲部に配向されるフィラメントの使用によって、操作または変形され得る。マイクロカテーテル61の中へデバイス10を回収する力は、約0.8ニュートン(0.18lbf)と約2.25ニュートン(0.5lbf)との間であり得る。
【0100】
血管障害160の内面の組織と透過シェル40との係合は、拡張した弛緩状態にある時に、
図29に示すように、患者の血管障害160の空洞の内側表面の組織に対する外側半径方向力の行使によって、達成され得る。また、類似の外側半径方向力が、透過シェル40を血管障害160の内側表面または隣接する組織と係合するように、デバイス10の近位端部分および透過シェル40によって加えられ得る。かかる力は、弛緩した非拘束状態である透過シェル40の名目外側横寸法または直径が、その中にデバイス10が配備されている血管障害160の名目内側横寸法より大きい、すなわち上記のように過大である、一部の実施形態において行使され得る。透過シェル40およびそのフィラメント14の弾性復元力は、ニッケルチタン合金、または一部の実施形態に対しては任意の他の適した材料を含む、超弾性合金等の材料の適切な選択によって、達成され得る。デバイス10の透過シェル40の近位部分の一致は、
図20-22に示すように、近位部分が、動脈瘤頚部190の形状およびサイズに適応するように、急速に楕円形になるようであって、したがってデバイスの周囲に流れるように、優れた密封および障壁を提供する。このように、デバイス10は、親血管の中へ突出する固定化部材を必要とすることなく、デバイスの周囲の流れを実質的に妨害して、優れた密封を達成し得る。
【0101】
一部の埋め込みデバイス10の実施形態は、端部に隣接して配置されるフィラメントの尖部によって形成される平面を伴って、またはまさにその平面内に配置される、透過シェル40のフィラメント14の端部を有する。デバイス10の一部の実施形態はまた、透過シェル40の周辺ゾーン198または他の適した部分内、あるいはその周辺に配置される密封部材を含んでもよく、流れ、すなわち線維性組織反応の途絶を亢進するか、または透過シェル40と患者の血管系の表面との間に物理的な密封を形成するように構成され得る。密封部材は、本願に記載される通り、コーティング処理、繊維処理、または表面処理を備え得る。密封部材は、デバイスが
図29および30に示すように、動脈瘤頚部(密封ゾーン198)の近くの動脈瘤の壁に接触する場所に隣接する、デバイスの末梢の領域の一部または全てであり得る。ゾーンは、拡張デバイス10の高さの最大約20%までの距離に対して、外側近位端半径88の尖部周辺から延在し得る。密封ゾーン198は、デバイス10の表面領域の約5%と約30%との間を含み得る。動脈瘤160の中への流れは、概して、開口部の片側を支持するため、密封部材は、
図30に示すように、周辺領域(密封ゾーン198)の至る所の透過シェル40の中に組み込まれるか、または付着され得る。密封部材の一部の実施形態は、膨潤性ポリマーを含み得る。一部の実施形態では、密封部材は、生物材料、ないしは生分解性、生体再吸収性、または他の生物活性ポリマーあるいはその共重合体等の、生物活性材料または生物活性剤を含み得る。
【0102】
本願で述べる患者の血管系の治療のためのデバイス10、かかるデバイス10のための送達システム112、または両方のいずれの実施形態は、デバイス10の固定化、デバイスに隣接する組織の治癒、または両方を亢進するために、埋め込み部位で患者の血管系の治療のためのデバイスまたはデバイス10を囲む組織にエネルギーを送達するように適応し得る。一部の実施形態では、エネルギーは、デバイス10を加熱するように、送達システム112を通って、患者の血管系の治療用のデバイス10へ送達され得る。一部の実施形態では、エネルギーは、別個の細長い器具(例えば、カテーテル、図示せず)を経由して、患者の血管系の治療用のデバイス10および/または埋め込み部154の部位にある周囲組織へ送達され得る。送達される場合があるエネルギーの実施形態の例は、限定するものではないが、光エネルギー、熱または振動エネルギー、電磁エネルギー、高周波エネルギー、および超音波エネルギーを含む。一部の実施形態に対して、デバイス10へ送達されるエネルギーは、患者の組織への患者の血管系の治療のためのデバイス10の固定化、かかるデバイス10に隣接して配置される組織の治癒、または両方を推進するように、化学剤または生物剤の放出を誘発し得る。
【0103】
一部のデバイス10の実施形態の透過シェル40は、機械または構造上の特徴の変化をもたらすか、薬剤または他の生物活性剤を送達するか、あるいは周囲組織へ熱を伝達するように、エネルギーの送達に反応させるように構成され得る。例えば、一部のデバイス10の実施形態は、電磁エネルギー(例えば、熱、光、または高周波エネルギー)にさられた時に、特性を変化させる材料の使用から、より柔らかくまたはより強固になってもよい。ある場合には、透過シェル40は、拡張によって生理液に応じて反応するポリマーを含み得る。例示的材料は、2004年1月22日に出願された、Coxの名称“Aneurysm Treatment Device and Method of Use”の米国特許出願第2004/0186562号に記載され、当該出願は全て本願に引用することにより組み込まれている。
【0104】
本願で述べるデバイス10の実施形態およびその構成要素は、特異的または一般的に望ましい臨床上の結果を達成するように、多種多様の構成を呈し得る。一部のデバイス10の実施形態では、透過シェル40の編組構造の開始は、フィラメント1が、
図31のデバイスの近位端面図に示すように、スポーク様の半径方向の様式で近位ハブ68から出るように、近位ハブ68から遅れ得る。
図31の編組パターンの扁平な類似版もまた、
図33に示されている。この構成は、完全編組構成に対して近位ハブ68から所与の半径方向距離にある、フィラメント14間のより小さい幅のギャップという結果になってもよく、扁平な類似版は
図34に示されている。これは、より良い流れの途絶を提供し、最高速の流れに供し得るデバイス10の領域における止血を促進し得る。
図32は、参考のために、非編組フィラメント構造の扁平な類似版を図示している。
【0105】
織物構造は、織物または編組フィラメント14が
図35の扁平パターンの類似版に示すように、中断される部分を含み得る。中断領域では、フィラメント14は、実質的に相互に平行であり得る。中断領域は、半径方向剛性および/または弾性コンプライアンス等、異なる機械的特徴を伴う領域を提供し得る。さらに、中断領域により、本願で述べる非構造性繊維または密封部材200、あるいは固定化、治癒、線維症、または血栓を亢進する他の要素を追加することが可能となってもよい。中断領域は、
図29および30に示すように、密封部材ゾーン198内にあるか、その一部であるか、またはそこに隣接してい得る。中断領域は、表面領域の約50%未満であってもよく、表面領域の約5%と25%との間であり得る。
【0106】
一部の実施形態では、実質的に非構造物であるフィラメント状または線維状部材は、透過シェル構造40を通る血液の流れに対する抵抗を増加するように、透過シェルの一部分の構造フィラメントに付着するか、または織り合わされ得る。一部の実施形態では、複数の繊維200は、
図36に示すように、近位ハブ68の近くの透過シェル40の内面上に付着し得る。線維状部材200は、一部の実施形態に対しては、分離システムテザーを形成する繊維であり得る。一部の実施形態では、1つ以上の繊維200は、
図37に示すように、透過シェルフィラメント14へと織り合わされ得る。超極細繊維または任意の他の適した繊維であり得る、非構造性繊維200は、重合体であり得る。非構造性繊維200は、限定するものではないが、本願に述べられるか、または含まれる繊維、あるいは超極細繊維のうちのいずれかを含み得る。
【0107】
ある場合には、患者の血管系の治療用のデバイス10の実施形態は、概して、フィラメント要素14を伴う実質的な管状編組構造を編み、編組管状構造を望ましい形状に形成し、編組形成フィラメントを望ましい形状に熱硬化することによって、製作され得る。一旦、そのように形成されると、次いで、細長い弾力性フィラメント14の端部は、上記の方法のいずれかとによって、相互に対して一緒に固定され得、近位ハブ66および遠位はブルスアイスタンプ68は付加され得る。
【0108】
かかる編組過程は、オートメーション化した機械による製作によって実行され得るか、または手動で遂行され得る。手動過程による管状編組構造のための過程の実施形態は、
図38に示されている。複数の細長い弾力性フィラメント14は、拘束バンド204によって、細長い円筒形編組マンドレル202の1つの端部で固定される。バンド204は、接着テープ、ゴムバンド、環状クランプ等のバンド等、マンドレル202に対してフィラメント14の端部を固定した、任意の適した構造を含み得る。固定された端部の反対側にあるフィラメント14の緩い端部は、編組管状部材208の創出のための1本ずつ上下交互の編組パターンを達成するように、矢印206により示される通りの編組または織物パターンで操作されている。上記の通り、1本ずつ上下交互の単純な編組パターンが示され述べられるものの、他の編組または織物パターンがまた使用され得る。別の編組構成の1つのかかる例は、2本上1本下パターンを含み得る。
図39は、
図39の矢印206によって示される通り、編組過程が継続するように、形状を成し伸びていく編組管状部材208を図示している。編組管状部材208が十分な長さを達成すると、
図40および41に示す成形固定具の実施形態の通り、編組マンドレル202から除去され、成形固定具内に位置付けられ得る。
【0109】
図40は、内部ボールマンドレル212および1組の正対する陥凹端部形成マンドレル214の中央管腔を通って延在する、内部桿マンドレル210の上に配置される環状編組部材208を示している。環状編組部材208はまた、内部ボールマンドレル212の外面の上、および各々の端部形成マンドレル214の内側管腔の中に配置される。その陥凹端部216を含む、内部ボールマンドレル212の外面輪郭上に編組管状部材208を担持するために、端部形成マンドレル214は、編組管状部材208の内側表面が、内部ボールマンドレル212の外側輪郭に対して担持され、適所に固定されるように、内部ボールマンドレル212の陥凹端部216に対してその中へ押されるように構成される。内部ボールマンドレル212の外側表面に対して担持される編組管状構造208の内側表面を伴うこの固定具220全体は、次いで、編組管状部材208の弾力性フィラメント14が、中央ボールマンドレル212の外側輪郭と推定されるか、またはそうでなければ外側輪郭へと形状設定されるように、適切な熱治療に供され得る。一部の実施形態では、透過シェル40のフィラメント要素14は、望ましい形状にあり、構造を形状設定するために約5分間-約10分間、約475℃-約525℃まで過熱された透過シェル40を保持するように構成される固定具によって、担持され得る。
【0110】
中央ボールマンドレル212は、上記
図3-6のデバイス10の球状構成、また任意の他の適した構成等、望ましい形状およびサイズを有する透過シェル40を形成する、形状設定環状編組部材208を生成するように、任意の望ましい形状を有するように構成され得る。したがって、中央ボールマンドレル212はまた、管状編組208の内側に配置されるハブ66および68の反対側に陥凹を伴う、球形状のボールであり得る。望ましいデバイス形状を伴う空洞を形成するように組み立てられる、1つ以上の部分を有する1つまたは複数の金型は、端部形成マンドレル214と併用するか、またはその代わりに使用され得る。熱硬化過程が完了すると、繊維、コーティング、表面処理は、結果として生じる透過シェル40の構造の特定のフィラメント、フィラメントの部分、または全てに追加され得る。さらに、デバイス過程の一部の実施形態に対して、透過シェル40は、細長いフィラメント要素14の近位端60および遠位端62、またはそれぞれの近位および遠位ハブ66および68を固定することによって、上記の通り形成され得る。
【0111】
図41は、患者の血管系の治療のためのデバイスの透過シェル40を形状設定するための、固定具の別の実施形態を示している。
図41の固定具実施形態230は、中央ボールマンドレル212の代わりに、内部管マンドレル232が、熱硬化過程の間、編組管状部材208の形状に保つように、外部管拘止具234と連動して使用される以外は、
図40の固定具実施形態220と本質的に同じ様式で使用され得る。より具体的には、環状編組部材208は、内部管マンドレル232および1組の正対する陥凹端部形成マンドレル214の中央管腔を通って延在する内部桿マンドレル210の上に配置される。環状編組部材208はまた、内部管マンドレル232の外面の上、および端部形成マンドレル214の各々の内側管腔の中に配置される。
【0112】
その陥凹端部を含む、編組管状部材208を望ましい形状のままに保つために、端部形成マンドレル214は、編組管状部材208の内側表面が、内部管マンドレル232の外側輪郭に対して担持され、管マンドレル232の端部で定位置に固定されるように、内部管マンドレル232の陥凹端部238に対してその中へ押されるように構成され得る。管マンドレル232の端部間で、編組管状部材208は、外部管マンドレル234の内側表面に接触して、内側表面によって半径方向に拘束されるまで、外側へ半径方向に延在する。その近位および遠位端の間に配置される編組管状部材208の外側表面上の、内側への半径方向の拘止と連動して、内部管マンドレル232の端部にある編組管状部材208の軸方向の拘止および固定の組み合わせは、デバイス10の透過シェル40に適する、望ましい球状の構成を生成するように構成され得る。
【0113】
再び、内部管マンドレル232の端部の外側表面に対して担持される編組管状構造208の端部の内側表面、および外部管部材234の内側表面233によって半径方向に拘束される編組管状部材208の外側表面を伴うこの固定具230全体は、次いで、適切な熱治療に供され得る。熱治療は、編組管状部材208の弾力性フィラメント14が、固定具230によって生成されたフィラメント14の球状輪郭と推定されるか、またはそうでなければ球状輪郭へ形状設定されるように、構成され得る。一部の実施形態では、透過シェル40のフィラメント要素14は、望ましい形状にあり、構造を形状設定するように、約5-10分間、約475-525℃まで加熱された編組管状部材208を担持するように構成される、固定具によって担持され得る。内部管マンドレル232および外部管部材234の内側表面233は、上記
図3-6のデバイスの球状構成、または任意の他の適する構成等、望ましい形状およびサイズを有する透過シェル40を形成する、形状設定環状編組部材208を生成するように、任意の望ましい形状を有するように構成され得る。
【0114】
一部の実施形態に対して、材料は、フィラメント14間の開窓、セル、または孔64のサイズを実質的に減少し、したがってその領域の空隙率を減少するように、デバイス10の透過シェル40のフィラメント14に付着し得る。例えば、コーティングの実施形態は、小型の開窓、またはセル、およびしたがってより高い密度の透過シェル40を創造するように、フィラメント14の複数部分の上に配置され得る。応答性ヒドロゲル等の活性材料は、透過シェル40の空隙率を減少するために、長時間にわたって液体と接触して膨張するように、一部の実施形態の透過シェル40中に付着されるか、そうでなければ組み込まれ得る。
【0115】
本願で述べるデバイス10の実施形態は、その性能、固定化、および/または生体適合性を強化する様々なポリマーでコーティングされ得る。加えて、デバイス10の実施形態は、制限するものではないが、ポリマー、金属、生物材料、およびそれらの複合材料を含む、埋め込みデバイスの分野で知られている様々な生体材料から成ってもよい。本願で述べるデバイスの実施形態は、治癒を促進する細胞および/または他の生物材料を含み得る。本願で述べるデバイスの実施形態はまた、有益な薬剤、他の生物活性物質、またはその両方の、血液または周囲組織の中への溶離または送達を提供するように構築され得る。
【0116】
患者の血管系の治療のためのデバイス10の透過シェル40の実施形態は、複数の層を含み得る。第1のまたは外層は、血小板の凝集または付着、すなわち血塊および血栓を形成する傾向を最小限にするように、生物活性および血液適合性の低い材料から構築され得る。任意で、外層は、本願で述べるか、または当該技術分野において既知であるヘパリンあるいは他の抗血栓形成剤等の、抗血栓形成剤でコーティングされるか、または抗血栓形成剤を含み得る。第1の層に対して配備状態である血管障害に向けて配置される1つ以上の内層は、より大きな生物活性を有し、ならびに/または凝血を促進し、したがって血管障害内の血塊およびデバイスの閉塞質量の形成を強化する、材料から構築され得る。生物活性を有し、および/または凝血を促進するように示されている一部の材料は、絹、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、コラーゲン、アルギン酸、フィブリン、フィブリノゲン、フィブロネクチン、メチルセルロース、ゼラチン、小腸粘膜下組織(SLS)、ポリ-N-アセチルグルコサミン、およびそれらの共重合体または複合材料を含む。
【0117】
本願で述べる実施形態で使用するのに適する生物活性剤は、体内で特定の作用を有するものだけでなく、非特異的作用を有するものも含み得る。特定の作用薬剤は、通常、血栓形成型および/またはコラーゲン、トロンビン、およびフィブロゲン(各々が、活動および費用の最適な組み合わせを提供し得る)の形態だけでなく、von Willebrand因子(より活性の低いおよび/またはより安価な薬剤である傾向にあり得る)、ならびにこれらの薬剤の各々の活性化部分および領域を含む、タンパク質である。血管形成タンパク質は、通常、最終的に血塊形成へと至る事象のカスケードに関与する、血小板または酵素のいずれかとの相互作用の手段によって機能する。非特異的作用を有する薬剤は、概して、例えば、1級、2級、または3級アミン、あるいは第4塩の形態の正電荷を持つ群を組み込むアクリミド(acrylimide)、もしくはメタクリルアミドから重合した、キトサン、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ないしアクリル等の重合体分子である、正電荷を持つ分子か、(トリドデシルメチルアンモニウムクロライド)等の非重合体薬剤かである。正電荷を持つ止血薬は、血小板の表面上の負電荷と薬剤自身の正電荷との間のイオン相互作用による、血小板の物理吸着を含む、非特異的メカニズムによって血塊形成を促進する。
【0118】
本願のデバイス10の実施形態は、血栓、凝血、治癒、または他の塞栓形成性能の手法を促進あるいは抑制する、表面の一部分、側面、または全ての上の表面処理あるいはコーティングを含み得る。表面処理またはコーティングは、合成、生物、またはそれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態に対して、透過シェル40の内面の少なくとも一部分は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、またはそれらの共重合体等、生分解性または生体再吸収性材料から成る、表面処理あるいはコーティングを有し得る。デバイスの塞栓形成性能を強化する場合がある、別の表面処理またはコーティング材料は、アルギン酸ベースの材料等、多糖類(polysachharide)を含む。一部のコーティングの実施形態は、ECMタンパク質等、細胞外基質タンパク質を含み得る。かかるコーティングの一例は、ミネソタ州、エデンプレイリーのSurmodics Inc.から市販されているFinale Prohealingコーティングであり得る。コーティングの別の例は、ジョージア州、ニューナンのCeloNovo BioSciences,Inc.から市販されているPolyzone-Fであり得る。一部の実施形態では、コーティングは、フィラメント14の横寸法の約25%未満の厚さで適用され得る。
【0119】
抗血小板剤は、アスピリン、糖タンパク質IIb/IIIa受容体抑制剤(アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、ラミフィバン、フラダフィバン、クロマフィバン、トキシフィバン(toxifiban)、XV454、レフラダフィバン、クレルバル(klerval)、ロトラフィバン、オルボフィバン、およびゼミロフィバンを含む)、ジピリダモール、アポ-ジピリダモール、ペルサンチン、プロスタサイクリン、チクロピジン、クロピドグレル、クロマフィバン、シロスタゾール、および一酸化窒素を含み得る。一酸化窒素を送達するために、デバイスの実施形態は、一酸化窒素を放出するポリマーを含み得る。デバイス10の実施形態はまた、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヒルジン、ワルファリン、ビバリルジン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、キシメラガトラン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、合成抗トロンビン、Vasoflux、アルガトロバン、エフェガトラン、ダニ抗凝固ペプチド、Ppack、HMG-CoA還元酵素阻害薬、ならびにトロンボキサンA2受容体抑制剤等の、抗凝血剤を送達するかまたは含み得る。
【0120】
一部の実施形態では、デバイス10の透過シェル40は、ナノスケール構造の材料またはその前駆物質(例えば、自己集合性ペプチド)を含み得る化合物でコーティングされ得る。ペプチドは、ペプチドが生理条件下で自己集合することを可能にする、交互親水性および疎水性モノマーを有し得る。化合物は、アミノ酸残基の配列を備え得る。一部の実施形態では、透過シェルは薄い金属性膜材料を含み得る。薄膜金属は、スパッタ蒸着によって製作され得、複数の膜の中に形成され得る。薄膜は、ニチノールとしても知られるニッケル-チタン合金であり得る。
【0121】
上記の説明に関して、本願で使用される同様の参照符号は、同一または類似の寸法、材料、および構成を有し得る同様の要素を指す。実施形態の特定の形態は、図示され説明されてきたが、本発明の実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変形例がなされ得ることは明らかであろう。それゆえ、本発明は前述の詳細な説明によって限定されることを意図していないものとする。