(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】偏光板用粘着剤組成物及び粘着剤層付偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230808BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20230808BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20230808BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230808BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230808BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230808BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230808BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J133/14
C09J175/04
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B7/023
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2018108862
(22)【出願日】2018-06-06
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2017154715
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】亀山 義弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 慎也
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-224873(JP,A)
【文献】特開2012-208247(JP,A)
【文献】特開2007-197659(JP,A)
【文献】特開2012-153772(JP,A)
【文献】特開2011-038055(JP,A)
【文献】特開2011-074300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 133/14
C09J 175/04
C09J 11/06
C09J 7/38
B32B 27/00
B32B 7/023
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含み、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の合計含有率が、全構成単位に対して0.2質量%~0.8質量%の範囲であり、かつ、重量平均分子量が160万~200万の範囲である(メタ)アクリル系共重合体と、
重量平均分子量が0.5万~20万の範囲であり、かつ、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基のいずれの官能基も有しない(メタ)アクリル系重合体と、
イソシアネート化合物と、を含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、前記イソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比が、0.15~2.5の範囲であり、
架橋後のゲル分率が40質量%~75質量%の範囲である偏光板用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む請求項1に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体における前記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.1質量%~0.8質量%の範囲である請求項1又は請求項2に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体における前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して60質量%~99.8質量%の範囲である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体の含有率が、粘着剤組成物の全固形分に対して50質量%~99質量%の範囲である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系重合体の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部~30質量部の範囲である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項7】
更に、シランカップリング剤を含有する請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項8】
更に、エポキシ化合物を含有する請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項9】
偏光板と、
前記偏光板の表面に配置され、かつ、水との接触角が90°以上である層と、
前記水との接触角が90°以上である層の表面に配置された、請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の偏光板用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着剤層付偏光板。
【請求項10】
前記水との接触角が90°以上である層が、ディスコティック液晶化合物を含む層である請求項
9に記載の粘着剤層付偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用粘着剤組成物及び粘着剤層付偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯端末等の携帯電子機器は、液晶表示装置が組み込まれているものが多い。一般に、液晶表示装置は、2枚のガラス基板に液晶層が挟まれた液晶セルと、液晶セルの両面に配置される偏光板とを備えている。液晶セルと偏光板とは、液晶表示装置の視認性を確保する観点から、一般的には、アクリル系粘着剤により形成される粘着剤層を介して貼合される。
【0003】
偏光板は、通常、収縮率の異なる部材を積層して構成される。そのため、温度及び湿度の変化により偏光板に反りが発生し、偏光板と粘着剤層との界面で、気泡、浮き、及び剥がれが生じることがある。また、偏光板では、温度及び湿度が変化すると、収縮又は膨張しようとして応力が発生する場合がある。この発生した応力が緩和されない場合には、粘着剤層に応力が残留する。そして、粘着剤層に残留した応力が不均一になると、例えば、液晶表示装置において光漏れが生じ、所謂、白抜けが発生することがある。そのため、液晶セルと偏光板との貼合に用いられる粘着剤には、高温環境下又は高温高湿環境下に曝された場合に生じ得る、発泡、浮き、及び剥がれを抑制できる性質(所謂、耐久性)と、白抜けを抑制できる性質とが求められる。
さらに、液晶セルと偏光板との貼合では、貼合ミスが生じることがある。貼合ミスが生じた場合には、貼り直す必要があるため、液晶セルと偏光板との貼合に用いられる粘着剤には、容易に貼り直しができる性質、所謂、リワーク性が求められる。
【0004】
これらの要求に対し、例えば、特許文献1には、剥がれ、気泡、及び白抜け現象の発生を十分に防止することができ、かつ、リワーク性及びリサイクル性に優れた偏光フィルム用感圧接着剤組成物として、分子内にカルボキシ基を有する繰り返し単位及びヒドロキシ基を有する繰り返し単位を特定量含むアクリル系共重合体と、特定量のポリイソシアネート化合物と、特定の構造を有する特定量のシランカップリング剤とを含有する偏光フィルム用感圧接着剤組成物が開示されている。
【0005】
ところで、近年、偏光板の表面に設けられたトリアセチルセルロース(TAC)層上に、更にEWV(Excellent wide view)層を設けることで、液晶表示装置の視野角を高めようとする傾向がある。EWV層は、通常、ディスコティック液晶化合物を含む。
例えば、特許文献2には、(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤層と、ディスコティック液晶化合物を含有する光学補償フィルムと、偏光子とを有する光学補償フィルム付き偏光板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-224873号公報
【文献】特開2009-258660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、EWV層は、粘着剤層との密着性が極めて劣る。そのため、EWV層が設けられた偏光板(以下、適宜「EWV偏光板」と称する。)には、剥離する際に、EWV層の表面に形成された粘着剤層が、被着体(例えば、液晶セルのガラス基板)に転着しやすいという問題がある。
EWV偏光板のリワーク性を改善するためには、例えば、粘着剤層を形成する粘着剤に配合する架橋剤の量を増やすことが考えられる。粘着剤に配合される架橋剤の量が増えると、架橋に寄与しない架橋剤がEWV層と相互作用することにより、EWV層との密着性が向上するため、リワーク性を改善し得る。
その一方で、粘着剤への架橋剤の配合量が多すぎると、形成される粘着剤層の架橋密度の向上により、粘着剤層の柔軟性が低くなる。粘着剤層の柔軟性が低いと、温度及び湿度の変化に伴う基材の伸縮に対し、十分追随できず、耐久性の低下を招来し得る。
以上のとおり、EWV偏光板に用いられる粘着剤において、リワーク性と耐久性とを共に向上させることは困難であった。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、リワーク性及び耐久性に優れる粘着剤層を形成できる偏光板用粘着剤組成物、並びに上記偏光板用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着剤層付偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含み、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.2質量%~0.8質量%の範囲であり、かつ、重量平均分子量が125万~200万の範囲である(メタ)アクリル系共重合体と、イソシアネート化合物と、を含有し、上記(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、上記イソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比が、0.15~2.5の範囲であり、架橋後のゲル分率が40質量%~75質量%の範囲である偏光板用粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む<1>に記載の偏光板用粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体における上記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.1質量%~0.8質量%の範囲である<1>又は<2>に記載の偏光板用粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系共重合体における上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して60質量%~99.8質量%の範囲である<1>~<3>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<5> 上記(メタ)アクリル系共重合体の含有率が、粘着剤組成物の全固形分に対して50質量%~99質量%の範囲である<1>~<4>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<6> 更に、重量平均分子量が0.5万~20万の範囲であり、かつ、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基のいずれの官能基も有しない(メタ)アクリル系重合体を含有する<1>~<5>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<7> 更に、シランカップリング剤を含有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<8> 更に、エポキシ化合物を含有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<9> 偏光板と、上記偏光板の表面に配置され、かつ、水との接触角が90°以上である層と、上記水との接触角が90°以上である層の表面に配置された、<1>~<8>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える粘着剤層付偏光板。
<10> 上記水との接触角が90°以上である層が、ディスコティック液晶化合物を含む層である<9>に記載の粘着剤層付偏光板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リワーク性及び耐久性に優れる粘着剤層を形成できる偏光板用粘着剤組成物、並びに上記偏光板用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着剤層付偏光板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
本明細書において「粘着剤組成物」とは、(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤(例えば、イソシアネート化合物)とを混合した後から、架橋反応が終了する前の、液状又はペースト状の物質を意味する。
本明細書において「粘着剤層」とは、粘着剤組成物における架橋反応が終了した後の物質を意味する。
本明細書において「被着体」とは、使用時に偏光板とは逆側の粘着剤層と接する対象物を意味し、例えば、本発明の粘着剤組成物をEWV層が設けられた偏光板(即ち、EWV偏光板)に用いる場合には、液晶セルのガラス基板が被着体となり得る。
本明細書において「基材」とは、例えば、偏光板を指し、「基材」との用語は、「被着体」との用語とは、区別して用いられる。
【0014】
本明細書において「リワーク性」とは、貼り直し作業時の剥離しやすさ、例えば、被着体から剥がす際に、被着体に粘着剤層が転着(所謂、糊残り)することなく、貼り直しができることを意味し、リワーク性が優れるほど、貼り直し作業を容易に行うことができる。
本明細書において「耐久性」とは、高温(例えば、95℃)環境下又は高温高湿(例えば、65℃、95%RH)環境下に曝された場合に生じ得る、発泡、浮き、及び剥がれを抑制し得る性質をいう。
【0015】
本明細書において「(メタ)アクリル系共重合体」及び「(メタ)アクリル系重合体」とは、共重合体及び重合体を構成する単量体のうち、少なくとも主成分である単量体が(メタ)アクリロイル基を有する単量体である共重合体及び重合体をそれぞれ意味する。ここでいう主成分である単量体とは、共重合体及び重合体を構成する単量体の中で最も含有率(単位:質量%)が大きい単量体を意味する。本発明における(メタ)アクリル系共重合体のある実施態様では、主成分である(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上である。
【0016】
本明細書において「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0017】
[偏光板用粘着剤組成物]
本発明の偏光板用粘着剤組成物(以下、適宜「粘着剤組成物」と称する。)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含み、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、適宜「特定官能基」と称する。)を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.2質量%~0.8質量%の範囲であり、かつ、重量平均分子量が125万~200万の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(以下、適宜「特定(メタ)アクリル系共重合体」と称する。)と、イソシアネート化合物と、を含有し、上記(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、上記イソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比が、0.15~2.5の範囲であり、架橋後のゲル分率が40質量%~75質量%の範囲である。
【0018】
リワーク性の改善には、例えば、粘着剤層を形成する粘着剤に配合する架橋剤の量を増やすことが考えられる。粘着剤に配合される架橋剤の量が増えると、架橋に寄与しない架橋剤が基材と相互作用することにより、基材との密着性が向上するため、リワーク性を改善し得る。
その一方で、粘着剤への架橋剤の配合量が多すぎると、形成される粘着剤層の架橋密度の向上により、粘着剤層が硬くなる、即ち、粘着剤層の柔軟性が低くなる。粘着剤層の柔軟性が低いと、温度及び湿度の変化に伴う基材の伸縮に対し、十分追随できず、耐久性の低下を招来し得る。
【0019】
これに対し、本発明の粘着剤組成物では、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含み、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.2質量%~0.8質量%の範囲であり、かつ、重量平均分子量が125万~200万の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体)を含有することにより、形成される粘着剤層の耐久性が向上し得る。
【0020】
さらに、本発明の粘着剤組成物では、特定(メタ)アクリル系共重合体とイソアネート化合物とを含有し、かつ、特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比が0.15~2.5の範囲であること、また、架橋後のゲル分率が40質量%~75質量%の範囲であることにより、形成される粘着剤層の耐久性及びリワーク性が向上し得る。
以上のことから、本発明の粘着剤組成物によれば、リワーク性及び耐久性の両方に優れる粘着剤層を形成できる。
【0021】
本発明の粘着剤組成物に対し、特許文献2(特開2009-258660号公報)に記載された粘着剤は、(メタ)アクリル系共重合体中におけるカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が高いものの、(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比が低いため、十分な架橋密度が得られず、形成される粘着剤層のリワーク性が顕著に劣ることが判明している(例えば、後述の参考例1参照)。すなわち、特開2009-258660号公報に記載された粘着剤では、優れたリワーク性と耐久性とを両立した粘着剤層を形成できない。
【0022】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について説明する。
【0023】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体〕
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体(即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含み、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.2質量%~0.8質量%の範囲であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が125万~200万の範囲である。
【0024】
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基は、後述のイソシアネート化合物のイソシアネート基と架橋し得る。このため、本発明の粘着剤組成物では、特定(メタ)アクリル系共重合体に含まれるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基と、後述のイソシアネート化合物のイソシアネート基との架橋反応が進行し、粘着剤層を形成できる。
【0025】
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0026】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、粘着剤層の粘着力、及び、粘着剤層と基材との密着性の観点から、アクリル酸及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0027】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0028】
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合(即ち、含有率)は、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して、0.1質量%以上0.8質量%以下の範囲が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下の範囲がより好ましく、0.2質量%以上0.4質量%以下の範囲が更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して0.1質量%以上であると、カルボキシ基と後述のイソシアネート化合物のイソシアネート基との架橋反応が効果的に進行し、耐久性により優れた粘着剤層を形成できる。
ところで、カルボキシ基は、金属を腐食する要因となり得るため、例えば、ITOガラスのように、金属を含む光学部材を備えた表示装置に対し、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が多い(メタ)アクリル系共重合体を含有する粘着剤組成物を用いると、形成される粘着剤層により金属の腐食が生じ得る。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して0.8質量%以下であると、カルボキシ基に起因する粘着剤層による金属の腐食を抑制できる。
【0029】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0030】
本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、その種類は特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、アルキル基の炭素数は、例えば、粘着剤層の粘着力、及び、粘着剤層と基材との密着性の観点から、1~18の範囲が好ましく、1~12の範囲がより好ましい。
【0032】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、粘着剤層の凝集力と粘着力とを調整しやすいとの観点から、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、n-ブチルアクリレートがより好ましい。
【0033】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系共重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合(即ち、含有率)は、例えば、粘着剤層の粘着力を調整しやすいとの観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合の上限は、特に制限されず、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して、99.8質量%以下が好ましい。
【0035】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して0.2質量%~0.8質量%の範囲において、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位に加えて、更に水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
水酸基を有する単量体に由来する構成単位の水酸基は、後述のイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応し得る。
本発明の粘着剤組成物では、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、含まない場合と比べて、架橋後のゲル分率が高まり、より耐久性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0036】
水酸基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
水酸基を有する単量体は、形成される粘着剤層の、基材に対する適度な粘着力、耐久性、及び白抜けの発生抑制の観点から、置換基として水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、及び12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0038】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0039】
特定(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合(即ち、含有率)は、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して0.2質量%~0.8質量%の範囲である限りにおいて、特に制限されない。
例えば、より耐久性に優れる粘着剤層を形成するとの観点からは、特定(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合は、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して、0.01質量%~0.8質量%の範囲が好ましく、0.1質量%~0.6質量%の範囲がより好ましい。
【0040】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して、0.2質量%~0.8質量%の範囲であり、0.3質量%~0.5質量%の範囲がより好ましい。
なお、ここでいうアミノ基は、一級アミノ基又は二級アミノ基を指す。
カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基は、いずれも後述のイソシアネート化合物のイソシアネート基と架橋し得る。
カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が0.2質量%以上であると、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基と、イソシアネート化合物のイソシアネート基との架橋反応が適度に進行し、形成される粘着剤層の架橋密度が適切なものとなり、粘着剤層と基材との密着性が良好となる。よって、本発明の粘着剤組成物は、耐久性に優れる粘着剤層を形成できると考えられる。
また、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が0.8質量%以下であると、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基と、イソシアネート化合物のイソシアネート基とが過剰に架橋しないため、適度な柔軟性を示す粘着剤層が形成される。適度な柔軟性を示す粘着剤層は、温度及び湿度の変化に伴う基材の伸縮に対し、十分に追随できる。よって、本発明の粘着剤組成物は、耐久性に優れる粘着剤層を形成できると考えられる。
【0041】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、本発明の効果が発揮される範囲内において、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び任意の構成単位である水酸基を有する単量体に由来する構成単位以外の構成単位(以下、適宜「その他の構成単位」と称する。)を含んでいてもよい。
【0042】
その他の構成単位を構成する単量体の種類は、特に制限されない。
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される環状基を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、その他の構成単位を構成する単量体としては、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。また、その他の構成単位を構成する単量体としては、グリシジル基、アミド基又はN-置換アミド基、三級アミノ基等の官能基を有する単量体が挙げられる。
【0043】
グリシジル基を有する単量体としては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、及び3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテルが挙げられる。
【0044】
アミド基又はN-置換アミド基を有する単量体としては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、及びジアセトンアクリルアミドが挙げられる。
【0045】
三級アミノ基を有する単量体としては、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0046】
例えば、本発明の粘着剤組成物をIPS(In Plane Switching)方式の偏光板(即ち、IPS偏光板)に用いる場合には、白ヌケ抑制効果をより高める観点から、その他の構成単位を構成する単量体としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0047】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、125万~200万の範囲であり、130万~180万の範囲が好ましく、140万~170万の範囲がより好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)が125万以上であると、耐久性に優れる粘着剤層を形成できる。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)が200万以下であると、粘着剤組成物の粘度が高くなりすぎないため、粘着剤組成物を良好に塗工できる。
【0048】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0049】
~条件~
測定装置:高速GPC(型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株))
検出器:示差屈折率計(RI)(HLC-8220に組込、東ソー(株))
カラム:TSK-GEL GMHXL(東ソー(株))を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
注入量:100μL
流量:0.6mL/分
【0050】
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、粘着剤層の凝集力と粘着力とを調整しやすいとの観点から、粘着剤組成物の全固形分に対して、50質量%~99質量%の範囲が好ましい。
【0051】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に制限されない。例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合に代表される公知の重合方法で、単量体を重合して製造できる。これらの中でも、重合方法としては、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合が好ましい。
【0052】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び必要に応じて連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0053】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素類、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪系又は脂環族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル類、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール類が挙げられる。
重合反応時には、これらの有機溶媒を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、エステル類、ケトン類等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチル、トルエン等の使用が好ましい。
【0055】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等を使用できる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナト、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナト、t-ブチルペルオキシビバラト、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)が挙げられる。
【0056】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特にアゾビス系の重合開始剤の使用が好ましい。
【0057】
重合開始剤の使用量は、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の合計量100質量部に対して、0.001質量部~0.1質量部の範囲が好ましく、0.005質量部~0.05質量部の範囲がより好ましい。
【0058】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて連鎖移動剤を使用できる。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル類、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル類、α‐メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物類、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物類、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体類、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素類、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド類、炭素数1~18のアルキルメルカプタン類、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン類、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル類、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン類、並びに、ビネン及びターピノレンに代表されるテルペン類が挙げられる。
【0059】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を使用する場合、連鎖移動剤の使用量は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の合計量100質量部に対して、0.005質量部~1.0質量部の範囲とすることができる。
【0060】
重合温度は、30℃~120℃の範囲が好ましく、50℃~100℃の範囲がより好ましく、60℃~80℃の範囲が更に好ましい。
【0061】
〔その他の(メタ)アクリル系重合体〕
本発明の粘着剤組成物は、更に、重量平均分子量が0.5万~20万の範囲であり、かつ、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基のいずれの官能基も有しない(メタ)アクリル系重合体(以下、適宜「その他の(メタ)アクリル系重合体」と称する。)を含むことが好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、更にその他の(メタ)アクリル系重合体を含むことで、形成される粘着剤層における白抜けの発生がより抑制される傾向がある。
【0062】
その他の(メタ)アクリル系重合体は、特定の単量体からなる単独重合体であってもよく、2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。
【0063】
その他の(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基のいずれの官能基も有しない単量体であること以外は、特に制限されない。なお、ここでいうアミノ基は、一級アミノ基又は二級アミノ基を指す。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体における無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と同様のものが挙げられる。
その他の(メタ)アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、及びn-ブチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0064】
その他の(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、0.5万~20万の範囲であり、1万~15万の範囲が好ましく、5万~15万の範囲がより好ましい。
その他の(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が0.5万以上であると、形成される粘着剤層の耐久性がより向上する。
その他の(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が20万以下であると、形成される粘着剤層における白抜けの発生がより抑制される。
【0065】
その他の(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定される。
【0066】
本発明の粘着剤組成物は、その他の(メタ)アクリル系重合体を含む場合、その他の(メタ)アクリル系重合体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0067】
本発明の粘着剤組成物がその他の(メタ)アクリル系重合体を含む場合、粘着剤組成物におけるその他の(メタ)アクリル系重合体の含有量は、形成される粘着剤層における白抜けの発生抑制の観点から、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~40質量部の範囲が好ましく、10質量部~30質量部の範囲がより好ましく、15質量部~25質量部の範囲が更に好ましい。
【0068】
その他の(メタ)アクリル系重合体は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体と同様の方法により製造することができる。
【0069】
〔イソシアネート化合物〕
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート化合物を含む。
本発明の粘着剤組成物において、イソシアネート化合物は、架橋剤として機能する。
【0070】
イソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリレンジイソシアネート(TDI)に代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート、既述の芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のビウレット体、2量体、3量体又は5量体、これらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体などが挙げられる。
【0071】
イソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、東ソー(株)の「コロネート(登録商標)HX」、「コロネート(登録商標)HL-S」、「コロネート(登録商標)L」、「コロネート(登録商標)2031」、「コロネート(登録商標)2030」、「コロネート(登録商標)2234」、「コロネート(登録商標)2785」、「アクアネート(登録商標)200」、及び「アクアネート(登録商標)210」、住化コベストロウレタン(株)の「スミジュール(登録商標)N3300」、「デスモジュール(登録商標)N3400」、及び「スミジュール(登録商標)N-75」、旭化成(株)の「デュラネート(登録商標)E-405-80T」、「デュラネート(登録商標)24A-100」、及び「デュラネート(登録商標)TSE-100」、並びに、三井武田ケミカル(株)の「タケネート(登録商標)D-110N」、「タケネート(登録商標)D-120N」、「タケネート(登録商標)M-631N」及び「MT-オレスター(登録商標)NP1200」を好適に使用できる。
【0072】
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0073】
本発明の粘着剤組成物は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比(イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル量/特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総モル量)が0.15~2.5の範囲であり、0.4~2.0の範囲が好ましく、0.6~1.5の範囲がより好ましい。
本発明の粘着剤組成物では、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル量/特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総モル量が0.15以上であることで、特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基(所謂、イソシアネート基と架橋し得る基)の量が少ないにもかかわらず、十分な架橋がなされる。その結果、形成される粘着剤層の架橋密度が適度に高くなり、優れたリワーク性を保持しつつ、耐久性にも優れる粘着剤層を形成できると考えられる。
一方、本発明の粘着剤組成物では、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル量/特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総モル量が2.5以下であることで、架橋に寄与しないイソシアネート化合物が過剰に生じない。その結果、形成される粘着剤層が硬くならず、適度な柔軟性を示すため、温度及び湿度の変化に伴う基材の伸縮に対し、十分追随できる。よって、本発明の粘着剤組成物は、リワーク性及び耐久性の両方に優れ、かつ、白抜けの発生が抑制された粘着剤層を形成できると考えられる。
【0074】
特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比(イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル量/特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総モル量)は、以下の計算式(1)~(3)により求められる。なお、以下の計算式では、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル量を「NCO量」と表記し、特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総モル量を「総官能基量」と表記する。
【0075】
NCO量(単位:mmol/固形分100g)
=[イソシアネート化合物中のイソシアネート基の含有率(単位:質量%)/イソシアネート化合物の固形分(単位:質量%)×イソシアネート化合物の配合量(単位:g)]/イソシアネート基の分子量(単位:g/mol)×1000・・・(1)
【0076】
総官能基量(単位:mmol/固形分100g)
=[特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)×1000]+[特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/水酸基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)×1000]+[特定(メタ)アクリル系共重合体中のアミノ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/アミノ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×アミノ基を有する単量体に由来する構成単位中のアミノ基の個数(価数)×1000]・・・(2)
【0077】
特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、イソシアネート基の量のモル当量比
=NCO量/総官能基量・・・(3)
【0078】
〔エポキシ化合物〕
本発明の粘着剤組成物は、既述のイソシアネート化合物に加えて、架橋剤としてエポキシ化合物を更に含むことが好ましい。
本発明の粘着剤組成物が、架橋剤として、イソシアネート化合物に加えて、エポキシ化合物を更に含むと、形成される粘着剤層の架橋密度がより高まるため、粘着剤層の耐久性がより向上し得る。
【0079】
本明細書において「エポキシ化合物」とは、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ化合物)を意味する。
【0080】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)等が挙げられる。
【0081】
エポキシ化合物としては、市販品を使用できる。
エポキシ化合物の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)の「TETRAD(登録商標)-X」及び「TETRAD(登録商標)-C」、並びに、ナガセケムテックス社の「デナコール(登録商標)EX-201」を好適に使用できる。
【0082】
本発明の粘着剤組成物は、エポキシ化合物を含む場合、エポキシ化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0083】
本発明の粘着剤組成物がエポキシ化合物を含む場合、粘着剤組成物におけるエポキシ化合物の含有量は、特に制限されず、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.005質量部~1質量部の範囲が好ましく、0.01質量部~0.5質量部の範囲がより好ましく、0.02質量部~0.1質量部の範囲が更に好ましい。
粘着剤組成物におけるエポキシ化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.005質量部以上であると、イソシアネート化合物によって架橋されなかった特定官能基に対し、エポキシ化合物が反応することで、形成される粘着剤層の架橋密度がより高まるため、粘着剤層の耐久性がより向上し得る。
粘着剤組成物におけるエポキシ化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して1質量部以下である場合、エポキシ化合物はイソシアネート化合物に比べて特定官能基に対する反応が遅いため、粘着剤組成物の保存安定性がより損なわれ難い。
【0084】
〔シランカップリング剤〕
本発明の粘着剤組成物は、更にシランカップリング剤を含んでいてもよい。
本発明の粘着剤組成物が更にシランカップリング剤を含むと、形成される粘着剤層の耐久性がより向上し得る。
【0085】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン系化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
なお、エポキシ基含有シラン化合物は、既述のエポキシ化合物と異なり、架橋剤としては機能しない。
【0086】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)の商品名「KBM-803」、「KBM-802」、「X-41-1810」、「X-41-1805」、及び「X-41-1818」に代表されるチオール基含有シラン化合物、並びに、信越化学工業(株)の商品名「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-402」、「KBE-403」、「X-41-1053」、及び「X-41-1056」に代表されるエポキシ基含有シラン化合物が挙げられる。
【0087】
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0088】
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、特に制限されず、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~5質量部の範囲が好ましく、0.05質量部~1質量部の範囲がより好ましく、0.05質量部~0.5質量部の範囲が更に好ましい。
粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量が、上記の範囲内であると、形成される粘着剤層の耐久性がより向上し得る。
【0089】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、塗布性向上のため、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒が挙げられる。
【0090】
〔他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含有していてもよい。
他の成分としては、特定(メタ)アクリル系共重合体及びその他の(メタ)アクリル系重合体以外の重合体、イソシアネート化合物及びエポキシ化合物以外の架橋剤、架橋触媒、溶剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
なお、本発明の粘着剤組成物では、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体が、架橋点となる官能基としてカルボキシ基を有するため、架橋触媒を含まなくても架橋反応を終了させられる。
【0091】
<架橋後のゲル分率>
本発明の粘着剤組成物は、架橋後のゲル分率が40質量%~75質量%の範囲であり、40質量%~70質量%の範囲であることが好ましく、50質量%~70質量%の範囲であることがより好ましい。
架橋後のゲル分率が40質量%以上であると、粘着剤層の凝集力が適切な範囲となり、リワークする際には、粘着剤層の凝集破壊が起きず、基材及び/又は被着体への糊残りを抑制でき、また、高温環境下又は高温高湿環境下に曝された場合には、気泡の発生(即ち、発泡)を抑制し得る。
架橋後のゲル分率が75質量%以下であると、温度及び湿度の変化に伴う基材の伸縮に対して十分追随でき、耐久性に優れる傾向がある。
【0092】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むため、架橋後のゲル分率が40質量%以上となる。
なお、架橋後のゲル分率は、粘着剤組成物に含まれる特定(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を適量含むか、又は、粘着剤組成物が架橋剤を適量含むか、のいずれかの条件を満たせば、40質量%~75質量%の範囲となりやすい傾向にある。
【0093】
本明細書において、「粘着剤組成物の架橋後のゲル分率」は、酢酸エチルを抽出溶媒に用いて測定される溶媒不溶分の割合である。粘着剤組成物の架橋後のゲル分率は、具体的には、下記(1)~(4)に従って測定する。
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、架橋後の粘着剤組成物(即ち、粘着剤層)を約0.15g貼付し、ゲル分が漏れないように、貼付した粘着剤層を内側にして、金網を5回折り畳み、試料とする。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mLに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(単位:質量%)=(Z-X)/(Y-X)×100
但し、Xは金網の質量(単位:g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(単位:g)、Zは浸漬後乾燥させた、粘着剤層を貼付した金網の質量(単位:g)である。
【0094】
[粘着剤組成物の用途]
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を介して偏光板を被着体に貼着させる用途に好適に用いられる。具体的には、偏光板を液晶セルに貼着させる用途、偏光板を位相差フィルム等の光学フィルムに貼着させる用途などが挙げられる。
これらの中でも、耐久性及び白抜けの発生抑制が特に求められる、偏光板を液晶セルに貼着させる用途に用いることが、本発明の粘着剤組成物の効果がより発揮されるため、好ましい。
【0095】
既述のとおり、一般に、EWV層は、粘着剤層との密着性が極めて劣るため、EWV層の表面に形成された粘着剤層は、被着体(例えば、液晶セルのガラス基板)に転着しやすい。これに対し、本発明の粘着剤組成物は、EWV層に対しても良好な密着性を示す粘着剤層を形成でき、リワーク性に優れるため、EWV層が設けられた偏光板(即ち、EWV偏光板)を被着体(例えば、液晶セルのガラス基板)に貼着させる用途に、特に好適に用いられる。
なお、EWV偏光板をリワークする際に、EWV層と粘着剤層との界面での剥がれが発生すると、リワーク性は極めて低下する。
【0096】
[粘着剤層付偏光板]
本発明における粘着剤層付偏光板は、偏光板と、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。
本発明における粘着剤層付偏光板は、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、リワーク性及び耐久性に優れる。また、本発明における粘着剤層付偏光板では、白抜けが発生し難い。
【0097】
偏光板は、少なくとも偏光子を含んで構成されるものであり、偏光子単体であってもよく、偏光子と保護フィルムとを積層したものであってもよい。
すなわち、偏光板は、偏光子単独の1層構造であってもよく、偏光子の片面に保護フィルムを有する2層構造であってもよく、偏光子の両面に保護フィルムを有する3層構造であってもよい。
【0098】
本発明の粘着剤層付偏光板の層構成としては、例えば、粘着剤層/偏光子、粘着剤層/偏光子/保護フィルム、粘着剤層/保護フィルム/偏光子/保護フィルム、及び粘着剤層/保護フィルム/偏光子が挙げられる。
なお、偏光子と保護フィルムとの間、保護フィルムと粘着剤層との間、及び偏光子と粘着剤層との間に、位相差フィルム(例えば、光学機能性層、接着剤層、及び易接着層)などの層を有していてもよい。
また、粘着剤層付偏光板の最も外側の面は、剥離フィルムで保護されていてもよい。
【0099】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが挙げられる。
【0100】
保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリシクロオレフィン(COP)フィルム、及びアクリルフィルムが挙げられる。
【0101】
粘着剤層に接する剥離フィルムとしては、剥離フィルムを粘着剤層から剥離しやすくするため、例えば、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で表面に離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂フィルムが好ましく挙げられる。
粘着剤層側の面と反対側の面を剥離フィルムで保護する場合、剥離フィルムとしては、ハードコートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の表面保護フィルムが挙げられる。
【0102】
本発明の粘着剤層付偏光板の好ましい態様としては、偏光板と、上記偏光板の表面に配置され、かつ、水との接触角が90°以上である層と、上記水との接触角が90°以上である層の表面に配置された、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える態様が挙げられる。
一般に、水との接触角が90°以上である層は、粘着剤層との密着性が極めて劣るため、かかる層の表面に形成された粘着剤層は、被着体に転着しやすい。これに対し、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、水との接触角が90°以上である層に対しても優れた密着性を示し、リワーク性に優れるため、上記のような態様の粘着剤層付偏光板の設計が可能となる。
【0103】
本明細書における「水との接触角」とは、雰囲気温度25℃の条件下において、測定対象である層の表面上に2μmの純水を滴下し、30秒間放置後の水滴の接触角を、接触角計を用いて測定した値である。測定装置としては、例えば、協和界面科学(株)のDrop Master DM-701(製品名)を用いることができる。但し、測定装置は、これに限定されない。
【0104】
水との接触角が90°以上である層としては、例えば、ディスコティック液晶化合物を含む層(即ち、EWV層)が挙げられる。
【0105】
本発明における粘着剤層の厚さは、基材及び被着体の種類、基材及び被着体の表面粗さ等に応じて、適宜設定できる。一般には、粘着剤層の厚さは、1μm~100μmの範囲であり、好ましくは5μm~50μmの範囲であり、更に好ましくは10μm~30μmの範囲である。
【0106】
本発明の粘着剤層付偏光板は、公知の方法により作製できる。
公知の方法として、例えば、本発明の粘着剤組成物を剥離フィルム上に塗布し、乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の塗布層を形成した後、この塗布層を偏光板上に転写、養生させることで粘着剤層付偏光板を作製する方法が挙げられる。
また、本発明の粘着剤組成物を剥離フィルム上に塗布し、乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の塗布層を形成した後、塗布層の露出面を更に剥離フィルムを密着して設けて支持体のない両面粘着テープを作製し、この塗布層を養生させた後、一方の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層を偏光板上に転写させることで粘着剤層付偏光板を作製する方法が挙げられる。
また、本発明の粘着剤組成物を偏光板上に塗布し、乾燥、養生させることで粘着剤層付偏光板を作製する方法が挙げられる。
なお、乾燥の条件としては、例えば、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で1分間~3分間乾燥する条件が挙げられる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0108】
なお、本実施例において製造した(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
【0109】
[実施例1]
<(メタ)アクリル系共重合体Aの製造>
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート(n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体)81.2質量部、フェノキシエチルアクリレート(PHEA)18.0質量部、2-ヒドロキシルエチルアクリレート(2HEA;水酸基を有するアクリル系単量体)0.6質量部、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有するアクリル系単量体)0.2質量部、及び酢酸エチル110質量部を入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN;重合開始剤)0.02質量部と酢酸エチル40質量部とを逐次添加し、6時間保持して重合反応させた。重合反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分を17.3質量%にし、重量平均分子量(Mw)が160万である(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液を得た。なお、「固形分」とは、(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する。
【0110】
<(メタ)アクリル系共重合体Bの製造>
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート(n-BA)36.0質量部、メチルアクリレート(MA)20.0質量部、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)44.0質量部、酢酸エチル45.6質量部、トルエン136.0質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;重合開始剤)0.20質量部を入れて混合した後、反応器内の混合物を撹拌しながら95℃に昇温した後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.29質量部と酢酸エチル110質量部とを逐次添加し、6時間保持して重合反応させた。重合反応終了後、トルエン176.8質量部で希釈し、固形分を47.3質量部にし、重量平均分子量(Mw)が10万である(メタ)アクリル系共重合体Bの溶液を得た。なお、「固形分」とは、(メタ)アクリル系共重合体Bの溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する。
【0111】
<粘着剤組成物の調製>
(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液100質量部(固形分換算値)と、(メタ)アクリル系共重合体Bの溶液20質量部(固形分換算値)と、イソシアネート化合物(商品名:スミジュール(登録商標)N-75、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のビウレット型、住化コベストロウレタン(株))0.65質量部(固形分換算値)と、シランカップリング剤(商品名:X-41-1810、固形分:100質量%、信越化学工業(株))0.1質量部と、を十分に撹拌し、混合して粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物における、(メタ)アクリル系共重合体が有する特定官能基の総量に対するイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の量のモル当量比[イソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル量/(メタ)アクリル系共重合体が有する特定官能基の総モル量]は、0.43であった。
【0112】
(メタ)アクリル系共重合体が有する特定官能基の総量に対するイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の量のモル当量比は、既述の計算式(1)~(3)を用いて計算したものである。具体的には、次のようにして計算した。なお、イソシアネート化合物であるスミジュール(登録商標)N-75は、固形分が75質量%であり、イソシアネート基の含有率が16.5質量%である。また、イソシアネート基の分子量は、42である。また、カルボキシ基を有する単量体であるアクリル酸に由来する構成単位の分子量は、72であり、水酸基を有する単量体である2-ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構成単位の分子量は、116である。
【0113】
計算式(1)
NCO量(単位:mmol/固形分100g)
=イソシアネート化合物中のイソシアネート基の含有率(単位:質量%)/イソシアネート化合物の固形分(単位:質量%)×イソシアネート化合物の配合量(単位:g)/イソシアネート基の分子量(単位:g/mol)×1000
=16.5(質量%)/75(質量%)×0.65(g)/42(g/mol)×1000=3.4
【0114】
計算式(2)
総官能基量(単位:mmol/固形分100g)
=[(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)×1000]+[(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/水酸基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)×1000]+[(メタ)アクリル系共重合体中のアミノ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/アミノ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×アミノ基を有する単量体に由来する構成単位中のアミノ基の個数(価数)×1000]
=[0.2(質量部)/100(質量部)×100(%)/72(g/mol)×1×1000]+[0.6(質量部)/100(質量部)×100(%)/116(g/mol)×1×1000]=7.95
【0115】
計算式(3)
(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、イソシアネート基の量のモル当量比
=NCO量/総官能基量
=3.4/7.95=0.43
【0116】
<粘着剤層付偏光板の作製>
上記にて得られた粘着剤組成物を用い、以下のようにして、粘着剤層付偏光板を作製した。シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム(商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、藤森工業(株))の表面処理面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、塗布層を形成した。次いで、塗布層を有する剥離フィルムを、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃、1分間の乾燥条件にて乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の層を形成した。次いで、EWV層/トリアセチルセルロース(TAC)層/ポリビニルアルコール(PVA)層/TAC層の構造を有する偏光板のEWV層側の面と、上記剥離フィルムに形成された粘着剤組成物の層とを重ねて貼り合わせ、25℃、50%RHの条件下で168時間養生させることで、架橋反応を進行させ、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板の積層構造を有する粘着剤層付偏光板を作製した。
なお、偏光板が有するEWV層の表面の水に対する接触角は、97.6°であった。
【0117】
[ゲル分率の測定]
上記にて得られた粘着剤組成物を、シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム(商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、藤森工業(株))の表面処理面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、塗布層を形成した。次いで、塗布層を有する剥離フィルムを、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃、1分間の乾燥条件にて乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の層を形成した。
次いで、粘着剤組成物の層が露出した面を、別途準備した剥離フィルム(商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、藤森工業(株))の表面処理面に重ねて貼り合わせ、無基材タイプの粘着シートを作製した。
次いで、25℃、50%RHの条件下で168時間養生させることで、架橋反応を進行させ、粘着剤層を有するゲル分率測定用サンプルを得た。
得られたゲル分率測定用サンプルを用い、既述の方法により、粘着剤層のゲル分率(即ち、架橋後の粘着剤組成物のゲル分率)を測定したところ、65.5質量%であった。
【0118】
[評価]
1.リワーク性
上記にて作製した粘着剤層付偏光板を切断し、25mm×75mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。
試験片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の表面を、青板ソーダガラス(松浪硝子工業(株);以下、単に「ガラス」と称する。)の片面に重ねて貼り合わせ、ラミネーターを用いて圧着し、積層体を作製した。作製した積層体に対し、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:5kg/cm2、処理時間:20分間)を施した後、50℃の条件下で96時間放置した。
放置時間が経過した後、23℃の条件下にて、180°剥離を剥離速度300mm/minにて行った。そして、ガラスの表面と剥離した粘着剤層の表面とを目視にて観察し、下記の評価基準に従って、リワーク性を評価した。結果を表3に示す。
なお、評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題ない。
【0119】
-評価基準-
A:ガラスの表面に粘着剤層が全く転着しなかった。
B:ガラスの表面に粘着剤層が全く転着しなかったが、剥離後の粘着剤層の表面が荒れていた。
C:ガラスの表面に粘着剤層が一部転着した。
D:ガラスの表面に粘着剤層が全面転着した。
【0120】
2.耐久性
(耐久性評価用サンプルの作製)
上記にて作製した粘着剤層付偏光板を、吸収軸に対して長辺が45°になるように切断し、50mm×89mm(長辺)の大きさの試験片を2枚準備した。
試験片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の表面を、ガラスの片面に重ねて貼り合わせ、ラミネーターを用いて圧着し、積層体を作製した。作製した積層体に対し、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:5kg/cm2、処理時間:20分間)を施した後、23℃、50%RHの条件下で1時間放置し、耐久性評価用サンプルを作製した。
【0121】
(評価試験)
2-1.高温高湿条件(65℃、95%RH)
上記にて作製した耐久性評価用サンプルを、65℃、95%RHの高温高湿条件下に、500時間放置した。放置後の耐久性評価用サンプルの外観を目視により観察し、下記の評価基準に従って、粘着剤組成物の高温高湿条件(65℃、95%RH)での耐久性を評価した。結果を表3に示す。
なお、評価結果が「A」「B」、又は「C」であれば、実用上問題ない。
【0122】
-評価基準-
A:発泡、浮き、及び剥れが全く認められなかった。
B:発泡、浮き、及び剥れがほとんど認められなかった。
C:発泡、浮き、及び剥れが少し認められたが、許容範囲内であった。
D:発泡、浮き、及び剥れが認められ、許容範囲外であった。
E:発泡、浮き、及び剥れが顕著に認められた。
【0123】
2-2.高温条件(95℃)
上記にて作製した耐久性評価用サンプルを、95℃の高温条件下に、500時間放置した。放置後の耐久性評価用サンプルの外観を目視により観察し、上記の高温高湿条件(65℃、95%RH)での耐久性の評価基準と同様の評価基準に従って、粘着剤組成物の高温条件(95℃)での耐久性を評価した。結果を表3に示す。
なお、評価結果が「A」「B」、又は「C」であれば、実用上問題ない。
【0124】
3.白抜け
(白抜け評価用サンプルの作製)
上記にて作製した粘着剤層付偏光板を切断し、62mm×110mm(長辺)の大きさの試験片を2枚準備した。
2枚の試験片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の表面を、それぞれの試験片の吸収軸が直交するように、Twisted Nematic(TN)方式の液晶パネルの両面に重ねて貼り合わせ、ラミネーターを用いて圧着し、積層体を作製した。作製した積層体に対し、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:5kg/cm2、処理時間:20分間)を施した後、23℃、50%RHの条件下で1時間放置し、白抜け評価用サンプルを作製した。
【0125】
(評価試験)
上記にて作製した白抜け評価用サンプルを、95℃の高温条件下に、500時間放置した。放置後の白抜け評価用サンプルを、23℃、50%RHの条件下で、液晶モニターのバックライト上に置き、白抜けの状態を目視にて観察し、下記の評価基準に従って、白抜けを評価した。結果を表3に示す。
なお、評価結果が「A」、又は「B」であることが好ましい。
【0126】
-評価基準-
A:白抜けが全く認められなかった。
B:白抜けが認められたが、許容範囲内であった。
C:白抜けが顕著に認められた。
【0127】
[実施例2~実施例20]
実施例2~実施例20では、実施例1における(メタ)アクリル系共重合体、架橋剤、及びシランカップリング剤の組成を、表1に示す組成にしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粘着剤組成物を調製し、得られた粘着剤組成物を用いて、粘着剤層付偏光板を作製した。
得られた粘着剤組成物について、実施例1と同様の方法により、架橋後のゲル分率を測定した。また、作製した粘着剤層付偏光板について、実施例1と同様の方法により、リワーク性、耐久性、及び白抜けの評価を行った。結果を表3に示す。
【0128】
[比較例1~比較例11]
比較例1~比較例11では、実施例1における(メタ)アクリル系共重合体、架橋剤、及びシランカップリング剤の組成を、表2に示す組成にしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粘着剤組成物を調製した。
得られた粘着剤組成物のうち、比較例1~比較例7及び比較例9~比較例11については、実施例1と同様の方法により、架橋後のゲル分率を測定した。なお、比較例8は、粘性が非常に高く、塗工ができなかったため、架橋後のゲル分率を測定できなかった。結果を表3に示す。
また、得られた粘着剤組成物のうち、比較例1~比較例4、比較例6、比較例7、比較例9、及び比較例11については、実施例1と同様の操作を行い、粘着剤層付偏光板を作製し、実施例1と同様の方法により、リワーク性、耐久性、及び白抜けの評価を行った。なお、比較例5及び比較例10は、架橋後のゲル分率が非常に低く、リワーク性、耐久性、及び白抜けの評価ができなかった。結果を表3に示す。
【0129】
[参考例1]
参考例1では、実施例1における(メタ)アクリル系共重合体、架橋剤、及びシランカップリング剤の組成を、表2に示す組成にしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粘着剤組成物を調製し、得られた粘着剤組成物を用いて、粘着剤層付偏光板を作製した。
得られた粘着剤組成物について、実施例1と同様の方法により、架橋後のゲル分率を測定した。また、作製した粘着剤層付偏光板について、実施例1と同様の方法により、リワーク性、耐久性、及び白抜けの評価を行った。結果を表3に示す。
【0130】
【0131】
【0132】
表1及び表2中、組成の欄に記載の「-」は、該当する成分を含まないことを意味する。
表1及び表2中、「n-BA」は「n-ブチルアクリレート」、「PHEA」は「フェノキシエチルアクリレート」、「2HEA」は「2-ヒドロキシエチルアクリレート」、「4HBA」は「4-ヒドロキシブチルアクリレート」、及び「AA」は「アクリル酸」を表す。
表1及び表2における「M-5300」は、東亜合成(株)のアロニックス(登録商標)M-5300(ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート;カルボキシ基を有する単量体)を表す。
【0133】
表1及び表2に記載の各架橋剤の詳細は、以下の通りである。
<イソシアネート化合物>
・スミジュール(登録商標)N-75:ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のビウレット型、固形分:75質量%、イソシアネート基の含有率:16.5質量%、住化コベストロウレタン(株)
・コロネート(登録商標)L45E:トリレンジイソシアネート(TDI)、固形分:45質量%、イソシアネート基の含有率:7.9質量%、東ソー(株)
・タケネート(登録商標)D-110N:キシリレンジイソシアネート(XDI)、固形分:75質量%、イソシアネート基の含有率:11.5質量%、三井武田ケミカル(株)
・デュラネート(登録商標)E405-80T:ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のアダクト型、固形分:80質量%、イソシアネート基の含有率:7.1質量%、旭化成(株)
<エポキシ化合物>
・TETRAD-X:三菱ガス化学(株)
・デナコール(登録商標)EX-201:レゾルシノールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社
【0134】
また、表1及び表2に記載の各シランカップリング剤の詳細は、以下の通りである。
<シランカップリング剤>
・X-41-1810:チオール基含有シラン化合物、信越化学工業(株)
・X-41-1053:エポキシ基含有シラン化合物、信越化学工業(株)
・X-41-1056:エポキシ基含有シラン化合物、信越化学工業(株)
・KBM403:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシ基含有シラン化合物、信越化学工業(株)
・KBM9659:トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、信越化学工業(株)
いずれのシランカップリング剤も、固形分は100質量%である。
【0135】
【0136】
表3に示すように、実施例1~実施例20の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、いずれもリワーク性及び耐久性の両方に優れていた。
また、実施例1~実施例20の粘着剤組成物により形成された粘着剤層では、白抜けの発生が抑制されていた。
【0137】
実施例3と実施例4との対比によれば、粘着剤組成物が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体を含有することで、形成される粘着剤層の高温高湿環境下に曝された場合の耐久性が向上することがわかる。
実施例3と実施例13との対比によれば、粘着剤組成物が、更に重量平均分子量が0.5万~20万の範囲であり、かつ、カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基のいずれの官能基も有しない(メタ)アクリル系重合体を含むことで、形成される粘着剤層の耐久性が向上することがわかる。
【0138】
実施例3と実施例15~実施例17との対比によれば、粘着剤組成物が、架橋剤であるイソシアネート化合物に加えて、同じく架橋剤であるエポキシ化合物を更に含むことで、形成される粘着剤層の耐久性が向上することがわかる。
【0139】
一方、(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対するイソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比が0.11である比較例11の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、上記モル当量比が0.15~2.5の範囲である実施例(例えば、実施例3)の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、リワーク性及び耐久性のいずれも顕著に劣っていた。また、白抜けが顕著に認められた。
また、(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対するイソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比が4.32である比較例2及び2.66である比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、上記モル当量比が0.15~2.5の範囲である実施例(例えば、実施例3及び実施例11)の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、耐久性が顕著に劣っていた。また、白抜けが顕著に認められた。
【0140】
イソシアネート化合物の代わりに、架橋剤としてエポキシ化合物を含む比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、イソシアネート化合物を含む実施例(例えば、実施例3)の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、リワーク性及び耐久性のいずれも顕著に劣っていた。また、白抜けが顕著に認められた。
カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.1質量%である比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、上記構成単位の含有率が0.2質量%~0.8質量%の範囲である実施例(例えば、実施例3)の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、耐久性が顕著に劣っていた。白抜けが顕著に認められた。
【0141】
(メタ)アクリル系共重合体が、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まず、かつ、(メタ)アクリル系共重合体中におけるカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.1質量%である比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ゲル分率が上がらず、評価することができなかった。
(メタ)アクリル系共重合体中におけるカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.6質量%であっても、(メタ)アクリル系共重合体が、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層についても、ゲル分率が上がらず、評価することができなかった。
【0142】
カルボキシ基、水酸基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して1.0質量%である比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、上記構成単位の含有率が0.2質量%~0.8質量%の範囲である実施例(例えば、実施例3)の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、耐久性が顕著に劣っていた。また、白抜けが顕著に認められた。
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が120万である比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が125万~200万の範囲である実施例(例えば、実施例3)の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、耐久性が顕著に劣っていた。
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が210万である比較例8の粘着剤組成物は、粘度が高すぎて塗工することができなかった。
(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基、水酸基、及びアミノ基の総量に対する、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の量のモル当量比が低い参考例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、モル当量比が0.15~2.5の範囲である実施例(例えば、実施例3)の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、リワーク性が顕著に劣っていた。
ゲル分率が15.6質量%である比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ゲル分率が40質量%~75質量%の範囲である実施例(例えば、実施例3)の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、リワーク性及び耐久性のいずれも顕著に劣っていた。また、白抜けが顕著に認められた。