(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸の精製プロセス
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20230808BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20230808BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230808BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230808BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230808BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230808BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20230808BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230808BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230808BHJP
C12P 19/26 20060101ALI20230808BHJP
B01D 61/24 20060101ALI20230808BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20230808BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230808BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230808BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
A61K31/728
A61P19/02
A61P17/02
A61P27/02
A61P17/06
A61P17/00
A61P13/10
A61K8/73
A61Q19/00
C12P19/26
B01D61/24
B01D71/68
B01D69/00
B01D61/58
B01D61/14 500
C12N1/20 A
(21)【出願番号】P 2019563880
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 IB2018055291
(87)【国際公開番号】W WO2019016699
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】102017000081449
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519027682
【氏名又は名称】フィディア ファーマチェウティチ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】コルサ、ビンチェンツァ
(72)【発明者】
【氏名】カルパネーゼ、ジャンカルロ
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-023992(JP,A)
【文献】特表2016-530087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
B01D
A61K
A61P
A61Q
C12N
C12P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工
程:
a.初発発酵ブロスの体積に対して1.1倍~1.5倍の体積になるまで、初発発酵ブロスからろ過によってバイオマスが取り除かれた後に得られるろ過済み発酵ブロスを精製水によって希釈すること;
b.50,000ダルトン~200,000ダルトンの範囲の多孔度を有する、アリールスルホン系ポリマー材料製の限外ろ過膜を含む、タンジェンシャルフローフィルター(TFF)カセットの内部において、保持液及び透過液を合体させることにより、工程a.からの前記ブロスを強制再循環させること、ここで、前記強制再循環は、1時間~6時間の範囲の期間にわたって繰り返され、前記強制再循環は、外部から液体を導入することなく、一定の体積で、閉鎖系の中で、一方向流を用いて実施される
を含むか又は前記工程からなる抽出工程を含む、発酵ブロスから、ヒアルロン酸を抽出及び精製するプロセスであって、
前記強制再循環工程b.の後に以下の工程
c.精製水及び食塩水から選択される透析ろ過溶液を用いて、工程b.のTFFカセットに含まれる前記保持液の透析ろ過Iを行うこと、
d.前記初発発酵ブロスの体積に等しい体積になるまで、工程c.から生じた透析ろ過物を濃縮すること、
e.精製水及び食塩水から選択される透析ろ過溶液を用いて、工程d.から生じた濃縮物の透析ろ過IIを、5回~15回繰り返すこと、
f.前記初発発酵ブロスの3分の1に等しい最終体積が得られるまで、工程e.から生じた透析ろ過物を最終濃縮すること、
g.前記初発発酵ブロスの半分に等しい総体積が得られるまでの精製水の循環によって、前記TFFカセットの内部に保持された生成物を回収すること、
を行う、前記プロセス。
【請求項2】
前記工程c.で用いられる透析ろ過溶液が精製水である、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記工程e.で用いられる透析ろ過溶液が精製水である、請求項
1又は請求項
2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工程e.で前記透析ろ過IIが6回~12回繰り返される、請求項
1~請求項
3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
プロセス収率が、95%~100%の範囲にある、請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
精製された前記ヒアルロン酸は、総タンパク質含有量が0.1%未満であり、細菌性エンドトキシン含有量が0.05%未満である、請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記発酵ブロスが、ストレプトコッカス属(Streptococcus)又はバチルス属(Bacillus)の微生物の発酵ブロスである、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記発酵ブロスが、Streptococcus equi、Bacillus subtilis又はBacillus megateriumの発酵ブロスである、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記発酵ブロスが、Streptococcus equiの発酵ブロスである、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
精製された前記ヒアルロン酸は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態である、請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
精製された前記ヒアルロン酸は、アルカリ金属塩の形態である、請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
精製された前記ヒアルロン酸は、ナトリウム塩の形態である、請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記工程a.で、前記初発発酵ブロスの体積に対して1.5倍に等しい体積になるまで、前記ろ過済み発酵ブロスが精製水によって希釈される、請求項1~請求項
12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記アリールスルホン系ポリマー材料がポリエーテルスルホンである、請求項1~請求項
13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記多孔度が100,000ダルトンに等しい、請求項1~請求項
14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記強制再循環が3時間にわたって繰り返される、請求項1~請求項
15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
以下の工程を含むか又は以下の工程からなる抽出工程を含む、発酵ブロスから、ヒアルロン酸を抽出するプロセス:
a.初発発酵ブロスの体積に対して1.1倍~1.5倍の体積になるまで、初発発酵ブロスからろ過によってバイオマスが取り除かれた後に得られるろ過済み発酵ブロスを精製水によって希釈すること;
b.50,000ダルトン~200,000ダルトンの範囲の多孔度を有する、アリールスルホン系ポリマー材料製の限外ろ過膜を含む、タンジェンシャルフローフィルター(TFF)カセットの内部において、保持液及び透過液を合体させることにより、工程a.からの前記ブロスを強制再循環させること、
ここで、前記強制再循環は、1時間~6時間の範囲の期間にわたって繰り返され、前記強制再循環は、外部から液体を導入することなく、一定の体積で、閉鎖系の中で、一方向流を用いて実施される。
【請求項18】
前記発酵ブロスが、ストレプトコッカス属(Streptococcus)又はバチルス属(Bacillus)の微生物の発酵ブロスである、請求項
17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記発酵ブロスが、Streptococcus equi、Bacillus subtilis又はBacillus megateriumの発酵ブロスである、請求項
17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記発酵ブロスが、Streptococcus equiの発酵ブロスである、請求項
17に記載のプロセス。
【請求項21】
前記工程a.で、前記初発発酵ブロスの体積に対して1.5倍に等しい体積になるまで、前記ろ過済み発酵ブロスが精製水によって希釈される、請求項
17~請求項
20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記アリールスルホン系ポリマー材料がポリエーテルスルホンである、請求項
17~請求項
21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記多孔度が100,000ダルトンに等しい、請求項
17~請求項
22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記強制再循環が3時間にわたって繰り返される、請求項
17~請求項
23のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸の精製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸(HA)は、D‐グルクロン酸及びN‐アセチル‐D‐グルコサミンの残基を交互に含んでなる、硫酸基を含まない高分子量の線状アニオン性多糖である。
自然界では、HAは細胞周囲のゲル、脊椎動物の結合組織の基本物質(の主要成分の1つである)、関節の滑液、硝子体液、及び臍帯に存在する。
HAは、生物学的生物において、とりわけ、皮膚、腱、筋肉及び軟骨などの多数の組織の細胞の機械的支持として重要な役割を果たしている。
【0003】
HAはその膜受容体、特にCD44、CD54及びCD168を介して、例えば、増殖、移動、細胞分化及び血管新生など、細胞の生理学及び生物学に関連する多くの異なるプロセスを調節し、また、組織の水和及び関節の潤滑など、その他の機能をも発揮することも知られている。HAは絶対的に生体適合性であり、その多数の特殊な特徴により、組織修復から粘性付加療法(viscosupplementation therapy)、皮膚美容医学から眼内手術、組織工学から細胞療法、及びそれ以上の、様々な分野で広く使用されている。
【0004】
HAの物理化学的特徴及び生物学的特徴はその分子量(MWは「固有粘度」法に基づき算出される重量平均MWを称する)と強く相関しており、これは極めて可変的である。 一般にHAの質量平均分子量は約20,000~13×106Daである。この「約」は、該分子量がHAの単離に用いる発生源及び製造及び浄化法との関係で根本的に変動することから、必須である。
【0005】
HAを得るには基本的に2つの主な方法がある。
【0006】
動物由来の産生:歴史的には、HAは、臍帯、硝子体液、又はウシ滑液などの動物組織、とりわけ、雄鶏のとさか(rooster comb)から抽出されている。動物源からのHAの製造には多くの制約がある。例えば、(出発組織の消化後の有機残渣の塊から出発して)様々な種類の不純物を除去するには、多くの段階が必要であるため、費用がかかる。出発材料中に存在する可能性のある任意の汚染物質(ウイルスなど)の不活化及び除去を確実にする段階が必要であることから、かなりの量の原料を入手可能である必要があり、大きな収率をもたらさない。
【0007】
微生物の培養:ある種の微生物、特にStreptococcus又はPasteurella属の微生物は、適切に刺激及び/又は改変されると、HAを産生することができ、このHAは、発酵ブロス中に分泌されて、当業者に公知の種々の方法によって単離される。また、この場合、例えば、使用された微生物の細胞壁の残渣、金属イオン、核酸、及び任意の他の望ましくないタンパク質様物質などの、存在する「不純物」を除去するために、多数の段階が必要である。これらの制限にもかかわらず、この方法は、今日まで、最も開発され、広く使用されているHAの製造方法である。
【0008】
バイオテクノロジーを介したHAの産生のための新しい方法が研究されており、これはある種のBacillus(Megaterium及びSibtilis)やEscherichia coliなどの適切な宿主細胞において、酵素であるHAシンターゼを発現する遺伝子をトランスフェクションすることによるものである。しかし、これらの製造方法のいずれにおいても、潜在的に有害な残留物を除去するのに要する手順が必要である。
【0009】
いずれにせよ、使用される方法にかかわらず、HAの製造における重要な段階は、明らかに多糖類の抽出及び精製の段階である。既知の方法は多数あり、極めて明瞭であり、HAを得るための出発源に応じて明らかに調節されている。
【0010】
第一に、供給源の残渣を除去しなければならず、その結果として、動物組織からの抽出では、タンパク質を消化する段階、その後の濾過、遠心分離及び洗浄が行われ、培養では、遠心分離及び漸進的洗浄が通常使用される。いずれの場合も、液体画分が得られ、そこから多糖類が単離される。この点に関して、最もよく知られ、そして確実に最も広範に適用される工程は、とりわけ、動物源からのHAについては、溶媒による沈殿である。要するに、上記の液状画分に対しての有機溶媒(エタノール、アセトン)を、濃度を漸増しながら適用して、ヒアルロン酸を沈殿させ、その後の可溶化及び沈殿の手段により精製する。
【0011】
別のシステムでは、多糖類を錯化して沈殿させる機能を有する、第四級塩、例えばセチルピリジニウム又はセチルトリメチルアンモニウムの使用を含む。その後、最終生成物を得るには、可溶化及び沈殿が再び必要となる。
【0012】
技術の開発がなされてさらに、収率の点からプロセスを効率化し、純度の点から有効となるよう、上述の主要なステップが組み合わされた。しかしながら、今日まで、特にHAに基づく注射用医薬組成物の投与後に生じた有害事象が、依然として毎年多数、数百件のオーダーで、所管官庁(FDAなど)に報告されている。
【0013】
ヒアルロン酸は、保湿作用を有する化粧品用途(局所又は経口投与による)から、鎮静効果を有する局所皮膚化粧品用途まで、しわ又は瘢痕のいずれの皮膚欠損(皮内)を矯正するための注射デバイスから、骨関節疾患における関節内使用、又は硝子体液の代替物としての眼内使用、間質性膀胱炎における膀胱内使用などの、より厳密な薬理学的用途まで、多種多様な分野及び病理において使用される。
【0014】
損傷した組織を伴わない美容用途では、化粧品グレードのHA(低純度)で十分であるが、医薬用途、特に注射可能医薬品の用途(特に、関節及び眼などの閉鎖腔内)の場合には、ある程度の絶対純度が必要であることは明らかである。ヒアルロン酸の抽出源材料の性質のため、最終製品には残留物の形で、核酸、タンパク質、及び/又は、リポテイコ酸LTAなどグラム陽性菌(例えば、Bacillus、Streptococcus、Enterococcus及びStaphylococcus属)の細胞壁の残留細菌毒素、又はリポ多糖LPSなどグラム陰性菌(例えば、Escherichia Coli、Pasteurella及びSalmonella)の細胞壁の残留細菌毒素等が存在しうる。かかる様々なタイプの汚染物質の存在は、局所レベル及び全身レベルの両方でサイトカイン(特に、TNF及びIL-1)の放出を伴う顕著な炎症反応を引き起こし得、これは生物体全体の反響を伴う全身性炎症反応を引き起こし得、最も深刻な場合においては敗血症性ショックの形態に到達し得る。
【0015】
実際のところ、LTA及びLPSは、脂質部分及び糖類部分からなるポリマーであって、強い免疫反応を引き出す可能性があり、最も深刻な状況下においては、関節炎、腎炎、髄膜炎を引き起こし、又は、発熱及びショックを引き起こす可能性があり、結果として、致命的なものになる可能性もある。これにより、上記で指摘したように、既報の有害事象の数が多いことが説明される。
【0016】
上述の事項に加え、前述したように、HAのMWが供給源及び製造方法によって変動することも考慮に入れて用途を決定する必要がある。より具体的には、本明細書において示されるMWは、「固有粘度」法で測定される重量平均分子量を指す。MWの変動性(variability)は、異なる分野におけるHAの使用を規定する。例えば、低MWのものは皮膚科又は皮膚美容製剤(約200kDA;Connectivine(登録商標))に適用され、関節内適用では、1500kDAを超えるMWまでのより高い分子量(通常、700~1800kDA;Hyalgan(登録商標)、Hyalbrix(登録商標)、Orthovisc(登録商標)のものが形成外科又は眼内適用で使用される。強い炎症作用を有することが十分に実証されており(EP0138572)用途にかかわらず絶対的に望ましくない30,000Da未満のMWを有するHAの画分を除去することは、精製過程の文脈において必須である。
【0017】
これは、HAの工業的な精製プロセスにおいては、様々な因子を評価及び制御しなければならないことを意味する。
【0018】
プロセス収率:選択された生成源から可能な最大の量のHAを抽出することが必須である。
【0019】
工業的な観点における利便性:最も良好な生成物は、使用される材料(試薬、溶媒など)の浪費が最小限であり、可能な最低の量の処分すべき残留物が可能な最も短い時間で生成するように得られなければならない。
【0020】
純度:得られた生成物は、あらゆる汚染物質と、炎症カスケードを誘起し得るものとして公知である30,000Da未満のMWを有するHA画分とを不含であるべきである。
【0021】
自明のこととして、純度は、精製工程の精密度に関連付けられている。
【0022】
現況技術においては、これらの要件を集約しようとする数多くの試みが公知である。数多くある中でも、大まかに言えば、下記のものを念頭に置くことができる。
EP0138572:特に限外ろ過工程、第四級塩(セチルピリジニウム)及び化石樹脂の添加、エタノールによる沈殿を用いて、炎症性画分を不含で2種のMWを有する画分(50~100kDa及び500~730kDa)を得ることによる、雄鶏のとさかからのHAの精製。この点に関して、30,000未満のMWを有するすべての炎症性分子をするため、及び所望する2種のHA画分を分離するために、限外ろ過が使用されている。
【0023】
EP535200は、第四級アミンによる塩化とそれに続く溶媒沈殿(エタノール又はアセトン)による、雄鶏のとさかからのHAの精製を記載する。750~1230kDaの範囲のMWを有し、炎症性画分を含まず、特に眼科用途を目的とするHAが得られる。
米国特許第6489467号は、HClを用いた強制酸性化によるStreptococcusからのHAの精製、及びそれに続くpHの変動及び透析濾過により、約1700kDaのMWを有するHAが得られることを記載する。
Choi et al. Biomaterials Research、2014、18、1-10は、Streptococcus zooepidemicusから透析濾過及びアセトン沈殿によりHAを精製することを記載する。900~1100kDaの範囲のMWを有するHAが得られる。
EP2870255は、濾過及び限外濾過、60~2400kDaの範囲のMWに達するpH変動、及びエタノールでの最終沈殿による、Streptococcus zooepidemicusからのHAの精製を記載する。
EP1543103は、あらかじめろ過された培養ブロスに芳香族樹脂を加え、これにより、不純物の大部分を吸収し、続いて、限外ろ過を行って、HA溶液を濃縮し、最後に、エタノールによる沈殿を行うことによる、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus)培養物からのHAの精製を記載する。
WO2018/020458は、熱処理によって厳密な分子量を有する複数の画分(92~230kDaと、450~780kDaと、920~1450kDa)に分離された、ストレプトコッカス属又はバチルス属の微生物の培養物からのHAの精製を記載する。精製は、他の段階の中でも特に挙げると、芳香族樹脂中における工程を行った後、ろ過を繰り返し、最後に、有機溶媒による沈殿及び対応する洗浄を行うことを含む。
【0024】
本明細書に引用された方法及び通常使用される方法は一般に、許容される収率で高品質のヒアルロン酸を生成することが可能であるが、これらの方法は極めて複雑であり、したがって、試薬、溶媒、フィルターなどが使用されるという観点においても、時間という観点においても、最後の観点として、処理残留物を除去するためにまかなわれるコストという観点においても、高価である。
【0025】
本発明は、極めて単純化されたヒアルロン酸のナトリウム塩の精製プロセスに伴う公知技術の欠点を克服し、これにより、材料及び時間を驚異的に節減し、これまでに知られていた工業的な収率を顕著に上昇させて、100%にかなり近い値に到達させながら、非常に高い純度の生成物を得ることができるようにする。
【発明の詳細な説明】
【0026】
本発明の一目的は、
非常に高い収率と、
数多くの中間工程の省略による、工業的な観点における利便性と、
いかなる種類の汚染物質も完全に不含である、非常に高い純度の最終生成物と
を特徴とする、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の形態、好ましくはナトリウム塩の形態のヒアルロン酸を抽出し、続いて、精製するための新たな方法に関する。
【0027】
本出願人によって開発されたヒアルロン酸の抽出プロセスは、最終生成物を得るための操作工程の数を厳しく制限しているため、極めて簡素なものであり、これは、使用される材料(溶媒、試薬、塩、化石樹脂、合成樹脂、フィルターなど)が節減されるだけでなく、処理残留物の処分も節減されることを意味する。化学産業において使用される材料は、例えば有機溶媒の場合を考慮に入れると、安全な手順に従って処分されなければならないことが知られている。最後に、工程の数を減らすことは、この場合においては、処理時間の短縮に相当し、これらの因子の組合せにより、工業的な観点における利便性が向上する。本方法は、当業者に公知である数多くの技法のいずれかによって調製されたHAの精製に適用することが可能であり、実際のところ、HAは、生物学的供給源に由来することが可能であり、特に、ガガルス属(Gallus)の鳥のとさか(EP0138572)と、ストレプトコッカス属菌の発酵物と、Bacillus Subtilis及びBacillus Megateriumの分子工学的処理(EP2614088、EP2614087)とに由来することが可能である。本方法は好ましくは、Streptococcus equi sub species equi 68222変異株H-1(EP0716688)の発酵から得られたHAにも適用可能である。
【0028】
本出願人が後で実証しているように、本明細書において主張された方法は、European Pharmacopoeia(Ph.Eur.5.0 1472)によって要求されるすべての化学的又は物理的仕様に適合するだけでなく、特に細菌性エンドトキシン、タンパク質、発熱物質の含量もさらに高められた、極めて高い純度のHAの調製を可能にする。
【0029】
実際のところ、生成源にかかわらず、最終生成物が完全に精製されていない場合、最終生成物は、様々な種類の汚染物質、例として、発熱物質、タンパク質(出発用生体物質に由来したもの)、核酸、グラム陽性細菌(ストレプトコッカス属菌もしくはバチルス又はエンテロコッカス属菌(Enterococcus)及びスタフィロコッカス属菌(Staphylococcus)に由来した細菌由来型毒素、又は、例えばEscherichia Coliもしくはパスツレラ属菌(Pasteurella)及びサルモネラ属菌(Salmonella)などのグラム陰性細菌に由来した細菌由来型毒素を含有する可能性があることに留意すべきである。ヒアルロン酸最終生成物中にこれらの毒素、例えばリポタイコ酸(LTA)又はリポ多糖(LPS)が存在することにより、処置された関節又は組織の炎症及び/又は感染症の原因であり、最も深刻な場合においては、処置された関節又は組織の完全な破壊又は壊死を引き起こすものである、炎症促進性が高い因子を生成する危険性が高いため、使用ができないようになる。
【0030】
最後に、本発明による精製プロセスの収率は極めて高く、85~100%の範囲の値に収まる。
【0031】
本発明によって得られたヒアルロン酸は、いかなる炎症促進性成分及び発熱性成分も含まないため、十全な安全性を伴って使用することができ、特に、すべての注射用医薬組成物(関節内注射用、皮内注射用及び眼内注射用)の中に十全な安全性を伴って使用することができる。本発明の目的である新たな方法によって精製されており、好ましくはアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態、さらにより好ましくはナトリウム塩の形態で得られたHAは、例えばHAと重金属との塩(EP0827514)、HAのエステル(EP0216453)、HAのアミド(EP1095064)、HAのサルフェート化生成物(sulfated products)(EP0940410)及びHAの自己架橋生成物を含むHAの架橋生成物(EP0341745)などの当業者に公知のすべての誘導体の調製においても使用することができる。
【0032】
本発明のさらなる目的は、本発明に従って精製されたHAを含有する医薬組成物、化粧組成物及び栄養組成物に関し、より具体的には以下の通りである。
-関節炎を有する関節の粘性補充、外傷性関節損傷、軟骨下損傷において使用される、関節内使用のための医薬組成物。
-眼内使用のための、又は眼疾患治療のために眼内に投与するための、医薬組成物;
-手術後の癒着の予防において使用される、医薬組成物。
-皮膚潰瘍、床ずれ、全段階の火傷、傷あと、皮膚病変、ケロイド又は凹型(hypotrophic)/肥厚性(hypertrophic)瘢痕の治療、したがって無傷(intact)皮膚又は損傷した皮膚を有するすべての種類の皮膚障害の治療、ならびに湿疹若しくは様々な皮膚炎などの皮膚疾患、特にアトピー性皮膚炎、おむつかぶれ、乾癬などの治療において使用される、(皮内及び/又は筋肉内における)局所又は注射用途のための医薬組成物。
-特に間質性膀胱炎の治療のための、膀胱内使用のための医薬組成物。
-皮膚美容的処置における充填剤、又は形成・美容外科における注入材(body shaping)としての、注射用医薬組成物。
-局所使用及び経口使用のための化粧組成物。
-関節炎を有する関節の経口治療、腱への栄養補給、皮膚への栄養補給又は胃腸粘膜への栄養補給のための、医薬組成物又は栄養組成物。
【0033】
本発明のさらなる目的は、パッド、織布、不織布、顆粒、フィルム、及びゲルの形態にあり、また様々な起源の細胞及び/又は血液派生物(blood derivatives)、例えば血小板派生物(platelet derivatives)、などを伴っていてもよい、本発明により精製されたHAを用いて調製された派生物を含む二次元/三次元生体材料にも関する。
【0034】
すでに適示したように、本発明による方法は、一般にはすべての方法がいくつかの共通の工程を提供するため、様々な公知の技法によって得られたHAの精製に適用することが可能であり、これらの共通の工程は、下記のようにまとめることができる。
【0035】
製造
選択される供給源に応じて、生体物質の消化が実施され、もしくは適切に同定された微生物の発酵が実施され、又は、新たな先端分野によっては、バイオテクノロジー的な手順によって実施される。基本的に、得られるものは、溶液中に取り込まれた状態のヒアルロン酸と、まったく望ましくないものである種類が様々な多数の他の物質とを含有し、固体状生体物質(いわゆるバイオマス)によって重度に汚染された、ブロスである。それぞれの方法は、様々な方法を使用してバイオマスを分離することによって、生成における残留物(固体状のものと、可能な限りで溶存するものとの両方)を除去して、後続する抽出工程に供することになるHAを含有するろ過済みのブロスに到達するようにするための工程も提供する。
【0036】
この抽出工程においては、HAが発酵ブロスから単離及び回収される。この抽出工程は、大抵の場合において、様々な公知のプロセスとは操作方法(試薬、溶媒、フィルター、界面活性剤など)と、工程の数が異なり、したがってタイミングにおいても異なっている工程である。確実なこととして、この抽出工程は、抽出工程には特に、最終生成物の純度及び工業的なプロセスの収率のための基礎が置かれているため、本方法において最も複雑でデリケートな部分である。一般には、抽出工程の結果が、いわゆる精製工程を施されたHAの濃縮溶液である。
【0037】
精製法は、ヒアルロン酸の発生源に応じて較正されるが、一般には、当業者に公知の一般的な方針に従う。
【0038】
溶液中に取り込まれた状態のヒアルロン酸を含有する液相が、存在する可能性がある望ましくない要素(タンパク質、毒素など)を除去するように処理される。
次いで、HAが溶けない有機溶媒(エタノール、アセトン又はこれらの混合物など)によって沈殿を実施する。
この後、最終生成物が得られるまで、性溶剤への沈殿物の溶解と、後続する沈殿、可溶化、ろ過及び洗浄とを繰り返し、次いで、得られた最終生成物を乾燥させる。
【0039】
本発明による広義の意味における精製プロセス(発酵ブロスから出発して最終生成物に至るまでの工程の組合せとして理解される)は、抽出工程に着目している。これまでに知られた様々なプロセスでは、抽出工程は、HAの供給源にかかわらず、数多くの経路に関連付けられている。
【0040】
この工程中においては、実に、可能な最大の量のすべての種類の不純物を除去しながら、可能な最大の量の所望する生成物(HA)がブロスから単離されなければならず、これが必要な操作工程の数が多いことの理由である。
【0041】
したがって、この工程においては特に、それらについて精製プロセスを評価することになる基礎的パラメータ、すなわち、
収率、すなわち、得られた生成物の量、
得られた生成物の純度、
工業的な観点における利便性、すなわち、材料の浪費及び所望の特性を有する所望の生成物を得るのにかかる時間
が規定されている。
【0042】
本出願人は、驚くべきことに、本発明による抽出プロセスが、生成工程(この生成工程は、いかなるものであってもよい)に由来するブロスから出発して、数が削減された一連の工程により、ブロス中に存在する事実上すべてのヒアルロン酸をブロスから抽出できるようにするものであることを見い出しており、前記HAは、公知技術による適切な精製工程の後では、発熱物質、タンパク質、細菌性エンドトキシンの観点において極めて純粋であることが判明している。
【0043】
本発明の目的は、発酵ブロス、好ましくは、ストレプトコッカス属(Streptococcus)又はバチルス属(Bacillus)の微生物の発酵ブロス、特にS.equi、B.subtilis又はB.megateriumの発酵ブロス、より好ましくはS.equiの発酵ブロスから、HAを抽出し精製するプロセスであって、当該プロセスは以下の工程を含むか又は以下の工程からなる抽出工程を含むことにより特徴付けられる:
a.当初体積に対して1.1倍~3倍の体積、好ましくは、当初体積に対して1.5倍に等しい体積になるまで、ろ過済みの発酵ブロスを精製水によって希釈すること;
b.5,000ダルトン~300,000ダルトンの範囲の多孔度、好ましくは50,000ダルトン~200,000ダルトンの範囲の多孔度、さらにより好ましくは100,000ダルトンに等しい多孔度を有する、アリールスルホン系ポリマー材料製、好ましくはポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を含む、タンジェンシャルフローフィルター(TFF)カセットの内部において、保持液及び透過液を合体させることにより、工程a.からの前記ブロスを強制再循環させること、
ここで、前記強制再循環は、1時間~6時間の範囲、好ましくは3時間にわたって繰り返され、前記再循環は、外部から液体を導入することなく、一定の体積で、閉鎖系の中で、一方向流を用いて実施される。
【0044】
本発明のさらなる目的は、発酵ブロス、好ましくは、ストレプトコッカス属(Streptococcus)又はバチルス属(Bacillus)の微生物の発酵ブロス、特にS.equi、B.subtilis又はB.megateriumの発酵ブロス、より好ましくはS.equiの発酵ブロスから、HAを抽出するプロセスであって、当該プロセスは以下の工程を含むか又は以下の工程からなる:
a.当初体積に対して1.1倍~3倍の体積、好ましくは、当初体積に対して1.5倍に等しい体積になるまで、ろ過済みの発酵ブロスを精製水によって希釈すること;
b.5,000ダルトン~300,000ダルトンの範囲の多孔度、好ましくは50,000ダルトン~200,000ダルトンの範囲の多孔度、さらにより好ましくは100,000ダルトンに等しい多孔度を有する、アリールスルホン系ポリマー材料製、好ましくはポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を含む、タンジェンシャルフローフィルター(TFF)カセットの内部において、保持液及び透過液を合体させることにより、工程a.からの前記ブロスを強制再循環させること、
ここで、前記強制再循環は、1時間~6時間の範囲、好ましくは3時間にわたって繰り返され、前記再循環は、外部から液体を導入することなく、一定の体積で、閉鎖系の中で、一方向流を用いて実施される。
【0045】
本出願人によって開発された抽出プロセスは、ろ過された初期のブロス中に存在するほとんど全てのヒアルロン酸を抽出し、このようなヒアルロン酸を回収して、95~100%の範囲の収率を達成することを可能にする。
【0046】
これらの方法において一般的である、後続する沈殿工程及び洗浄工程の最中では、定量的な観点におけるHAの損失は、操作に関連するもののみである(例えば、HAは、最低限の量が、使用された設備に付着残留する)ため、上記のような高い抽出収率は、これまでに知られていた収率より格段に高い最終処理生成物の収率をもたらす。したがって、抽出工程の収率は、精製プロセス全体の収率を強く予期させるものであると予測される。
【0047】
本発明のHA抽出・精製プロセスでは前記強制再循環工程b.の後に以下の工程を行ってもよい。
c.精製水及び食塩水から選択される透析ろ過溶液、好ましくは精製水を用いて、工程b.のTFFカセットに含まれる前記保持液の透析ろ過Iを行うこと、
d.初発ブロスの体積に等しい体積になるまで、工程c.から生じた体積を濃縮すること、
e.精製水及び食塩水から選択される透析ろ過溶液、好ましくは精製水を用いて、工程d.から生じた体積の透析ろ過IIを、5回~15回、好ましくは6回~12回、繰り返すこと、
f.前記初発ブロスの3分の1に等しい最終体積が得られるまで、工程e.から生じた体積を最終濃縮すること、
g.前記初発ブロスの半分に等しい総体積が得られるまでの精製水の循環によって、前記TFFカセットの内部に保持された生成物を回収すること。
【0048】
本発明による抽出プロセスには、限外ろ過法(UF)の革新的な使用という長所がある。一般に、UF法は、ろ過膜の細孔によって規定される分子量(カットオフ)より高い分子量を有する、ある成分を含有する液相からの前記成分の分離を可能にする、公知のプロセスである。非常に大まかに言えば、ポンプにより、特定のタンク内に収容されている液相(フィード)が、厳密な寸法(カットオフ)を有する細孔を備え付けられたろ過膜にぶつけられる。ろ過膜を通過した流体は、下流側で収集され、ろ液又は透過液を形成し、処分されるが、回収すべき成分は、膜の表面上に保持され、目的とする生成物を含有する保持液を形成する。可能な最大の量の生成物を回収するために、保持液を複数回のUFサイクルに供し、タンク内に再導入し、得られる透過液を毎回抜き出しながら、フィードとしてUFカセットに転送する。明らかなことながら、透過液の漸進的な抜き出しにより、体積の低下による濃縮が起きるが、これは後で、タンクへの適切な液体の投入によって補償される。明らかなことながら、透過液の漸進的な抜き出しにより、UFフィルターが完全に保持できないヒアルロン酸の損失が生じる。
【0049】
可能な限り純粋な最終生成物を得るという目的で、当業者に公知のように、サイクルには、保持液を経て流れる際にまだ存在する不純物の除去を促進する洗浄流を発生させるために、外部から適切な液体(透析ろ過溶液)を導入する、1回又は複数の透析ろ過工程が後続する。本発明の場合と同様に、一般に分子量の観点において著しい寸法を有する生物由来の分子を離されなければならない場合、実行されるUFは、いわゆるタンジェンシャルフローろ過(TFF)である。
【0050】
本出願人はこうして、発酵ブロス、好ましくはストレプトコッカス属又はバチルス属の微生物、特にStreptococcus equi(S.equi)、Bacillus Subtilis(B.subtilis)又はBacillus Megaterium(B.megaterium)、より好ましくはS.equiの発酵ブロスからHAを抽出するための革新的な方法であって、TFF法の革新的な使用により、ヒアルロン酸を含有するブロスからヒアルロン酸をほとんどすべて回収することを可能にする方法を開発した。
【0051】
本出願人は、実に驚くべきことに、処理される培養ブロスの希釈工程及び後続する強制再循環を、TFFに先立って行うことによって、同ブロス中に存在するヒアルロン酸が事実上すべて回収されることを見い出した。下記において詳細に説明されているように、この強制再循環は、培養ブロスを適切なTFFカセットに送達し、得られた透過液を収集し(現況技術によって要求されるような、得られた透過液の除去は行わない)、元々のブロスが出てきたタンクの内部に透過液を搬送した後で、透過液がフィードとして振る舞うことになる同じTFFカセットに透過液を再度転送することによって、実施される。このようにすれば、再循環しているフィード中に依然として存在するHAは、さらなる保持液を構成し、徐々に生成されていく透過液は、上記サイクルを繰り返す(強制再循環)。したがって、この工程において、保持液及び透過液は、初期のフィードを収容していたタンクの中で合体し、一方向流を用いて再循環される。この工程のすべては、外部からの液体の導入がない状態で実施され、したがって、システムの内部において一定の体積を保持しながら実施され、したがって、閉鎖系の中で実施される。当然のこととして、システム全体には、流れ及び流出を調整するための一連のバルブ、液体を搬送するための可変圧力ポンプ、圧力値の制御のための圧力計が備え付けられている。
【0052】
上記においてすでに言及したように、記述された操作の組により、95~100%の範囲の収率を伴う、初発ブロス(starting broth)からのほとんどすべてのHAの回収が決定付けられる。
したがって、着目する本発明が、現況技術を実質的に変更して、プロセスの収率を著しく改善し(より多くのヒアルロン酸が回収される)、ひいては、工業的な観点における利便性も著しく改善することは、明らかである(工程を減らすことは、使用される材料、フィルターなどの量が少なくなること、及び、処分すべき廃棄物の量が少なくなることを意味する)。
【0053】
より具体的には、それを用いて本発明による方法を実施することになる操作フローは、すでに適示したように、任意の最初の生成工程、好ましくはストレプトコッカス属菌からの発酵物、特にStreptococcus equi sub species equi 68222変異株H-1(EP0716688)の発酵物由来のHA含有ブロスから出発する。この具体的事例において、ブロスは、強酸、好ましくはHClの酸性溶液によって、4.0~5.0の範囲のpH、好ましくは4.5のpHに調節され、続いて、当業者に公知の分離法のうちの1つ(遠心分離及び/又は精密ろ過及び/又は化石フラウアパッドによるろ過)によって、バイオマスから分離される。
【0054】
明白なことながら、ろ過済みのブロスの体積は、工業的なプラントの容量に応じて変化し、この具体的事例においては、ろ過済みのブロスの体積は、2,000リットルから4,000リットルまで変動し得、この方法は好ましくは、3,000リットルのバッチサイズに適用される。この後、抽出工程が行われる。
【0055】
このようにして得られたブロスは、続いて以下の工程に供される。
【0056】
a.希釈:上記のように処理された生成工程から生じたブロスが、適切なタンク内に導入され、当初体積に比較して1.1~3倍の範囲の総体積、好ましくは、当初体積に比較して1.5倍に等しい総体積になるまで、精製水によって希釈される。現況技術によれば初発ブロスは要処理体積を少なくするため濃縮されるので、これは、完全に革新的な手法である。
【0057】
b.強制再循環:このようにして希釈されたブロス(フィード)は、5,000~300,000ダルトンの範囲で可変の多孔度(カットオフ)、好ましくは50,000~200,000の範囲で可変の多孔度(カットオフ)、さらにより好ましくは100,000ダルトンの多孔度(カットオフ)を有するアリールスルホン系ポリマー材料、好ましくはポリエーテルスルホン製のUF膜を内包するTFFカセットの内部において、限外ろ過溶液の導入も透過液の排出もない状態で、したがって、閉鎖系の中で、ポンプを備えるシステムによって強制循環される。したがって、ブロスの強制循環が発生するが、このとき、透過液は、通常の場合のように除去されるのではなく、タンク内に再導入され、徐々に生成されていく保持液と合体し、ろ過膜に向かってさらに送達される。実際のところ、透過液は、少なくとも第1のサイクルの場合においては、ミネラル塩及び様々な種類の不純物だけでなく、溶液中に取り込まれた状態のHAも含有する。ブロスの強制再循環により、UFカセットの内部には、透過液中に依然として存在するHAを対象にしたさらなるフィルターとして作用し、同時に、システムの閉塞も防止する、HAのゼラチン層も発生する。強制再循環及び抽出システム全体が、液相(フィード及び他の液体)の一方向流によって特徴付けられることは、指摘しておくべきである。強制再循環は、1~6時間の範囲の時間、好ましくは3時間の時間にわたって維持されるが、粉末形態のNaClを用いてNaClの最終的なモル濃度を0.3Mとし2倍体積のエタノールを添加した透過液の試料が、いかなる沈殿物も生じさせなくなるまで、30分の定期的な間隔で試験される(すでに言及したように、エタノールによる沈殿は、液相からHAを単離するための最も簡単で最も速やかな技法のうちの1つである)。これは、初期のブロス中に存在する実質的にすべてのHAが、TFFカセットの内部で保持液中に保持されていることを意味しており、イノベーションにより、生成物の損失が事実上なくなり、工業的な観点における莫大な優位性がもたらされることが明らかである。
【0058】
抽出工程の収率は、カルバゾール法(Ph.Eur.5.0;1472、01/2011)によって計算した。つまり、発酵の終了時点においてブロス中に存在するHAの濃度、及び抽出工程の終了時点において得られたHAの濃度は、カルバゾール法によって判定される。より具体的には、発酵の終了時点におけるブロスの初期時点におけるリットルに対しての、記述されたものに従って抽出されたHAのグラムにおける量の比が計算される。単純な比率により、ブロスに含まれる初期時点におけるHAに対する抽出されたHAの百分率として表される収率の値の計算が可能になる。
【0059】
このようにして計算される、本発明において開発された抽出工程の収率は、95~100%の範囲である。この後には、当業者に公知のものが後続する。特に、本出願人は透析ろ過工程を開始し、好ましくは、次のとおりの透析ろ過工程を開始する。
【0060】
c.透析ろ過I:HA含量が完全に0になった先行した工程b.から生じた透過液が、排出バルブの開口部から抜き出される。タンクの内部を循環する体積が、徐々に形成されていく透過液の抜き出しによって一定に保たれるようにしながら、保持液を経て通る一定した透析ろ過溶液の流れを発生させるように、透析ろ過溶液の供給は遮られず(opened)、連続的に維持される(kept constant)。使用される透析ろ過溶液は、精製水又は食塩水であってよく、好ましくは精製水である。この手順は、強制再循環工程の終了時点においてタンク内に存在する透過液の体積の2倍に等しい透過液の体積を除去するのに必要な時間にわたって、維持される。
【0061】
d.濃縮:排出バルブを開いたままにしておき、透析ろ過溶液の供給を遮断した状態で、タンクの内容物が、最初の希釈の前の初発ブロス(したがって、工程a.の前の初発ブロス)の体積に戻るまで濃縮される。
【0062】
e.透析ろ過II:工程c.に記載される透析ろ過工程が、工程d.から生じた体積を対象にして、5~15回、好ましくは6~12回繰り返される。
【0063】
最後に、HAの回収は、公知技術によって実施され、好ましくは、最終濃縮によって実施される。
当初体積(工程a.の前の体積)の3分の1に等しい最終体積が得られるまで、項目d.に記載のものと同じ手順が実行される。
【0064】
後続する回収
最初の希釈の前のブロス(したがって、工程a.の前のブロス)の半分に等しい体積が得られるまで精製水を循環させることによって、カセットの内部に保持された生成物が回収される。
この時点において、上記プロセスから得られた溶液中に存在するHAは、公知の技法であるため当業者により適切に選択される特定の精製工程に移動し、続いて、乾燥工程に移動する。
【0065】
要するに、本発明の目的は、ストレプトコッカス属又はバチルス属の微生物、特にS.equiの発酵によって生成されたHAの抽出及び精製プロセスの全体に適用された場合、収率、生成物の純度及び工業的な観点における利便性という観点において非常に効率的である、HAの抽出のための手順に関する。
【0066】
本発明の全面的に革新的な特徴は、TFFに先立って、処理中の培養ブロスの希釈工程及び強制再循環が行われることにある。この手順は、HAの供給源や、このHAの供給源が処理される方式や、このHAの供給源が、所期の使用の準備ができた乾燥形態の最終生成物になる方式にかかわらず、HAの生成及び精製のための任意の公知の包括的な方法の中にうまく適用することができる。
【0067】
より具体的には、本出願人は、次の工程を含む又は次の工程を基礎とする、公知の技法によって得られたブロス、特に、ストレプトコッカスの発酵、より好ましくはStreptococcus equi sub species equi 68222変異株H-1(EP0716688)の発酵によって得られたブロスから出発して、高い収率でHAを抽出するための方法を主張している。
【0068】
抽出
a.希釈:ろ過済みの製造用ブロスが、当初体積に対して1.1~3倍の範囲の体積、好ましくは、当初体積に対して1.5倍に等しい体積になるまで、精製水によって希釈される。
【0069】
b.強制再循環:保持液及び透過液の合体によって形成されている工程a.からのブロスは、5,000~300,000ダルトンの範囲の多孔度、好ましくは50,000~200,000の範囲の多孔度、さらにより好ましくは100,000ダルトンの多孔度を有するアリールスルホンポリマー材料、好ましくはポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を内包するタンジェンシャルフローフィルター(TFF)カセットの内部において、強制再循環に供される。強制再循環は、保持液中にHAが完全に保持されるまで(until the complete retention of HA inside the retentate)、1~6時間の範囲の時間、好ましくは3時間の時間にわたって繰り返されるが、前記再循環は、外部からの液体の導入がない状態で、一定の体積で、閉鎖系の中で、一方向流を用いて実施される。
【0070】
次いで、当業者に公知の手順に従った手順、特に、透析ろ過工程が実行され、好ましくは、次のとおりの透析ろ過工程が実行される。
【0071】
c.透析ろ過I:この透析ろ過Iは、精製水及び食塩水から選択される透析ろ過溶液、好ましくは精製水によって実施され、先行した工程b.の後にタンク内に存在する透過液の体積の2倍に等しい透過液の体積を除去するのに必要な時間にわたって、維持される。
【0072】
d.濃縮:タンクの内容物が、初発ブロス(工程a.の前のブロス)の体積になるまで濃縮される。
【0073】
e.透析ろ過II:工程c.の記載に従う透析ろ過が、工程d.から生じた体積を対象にして、5~15回、好ましくは6~12回繰り返される。
【0074】
f.最終濃縮:工程e.から生じた体積が、当初体積(工程a.の前の体積)の3分の1に等しい体積が得られるまで濃縮される。
【0075】
g.回収:カセットの内部に保持された生成物が、工程a.の前のブロスの半分に等しい総体積が得られるまでの精製水の循環によって回収される。
【0076】
本明細書において記述されたすべての工程が完了したらすぐに、例示にすぎないがアルカリ金属又はアルカリ土類金属の強塩基、好ましくはアルカリ金属の強塩基、特にNaOHによる処置を挙げることができる、何らかのさらなる可能な汚染物質を除去するための、いわゆる精製工程が当業者に公知の技法を使用して実施され、続いて、ろ過(例えば、石炭及び/又はろ布及び/又はポリプロピレンによるろ過)が行われ、例えばエタノールなどの有機溶媒中で希釈率を変えつつ(with varying dilutions)沈殿が行われ、最後に、有機溶媒(好ましくは、エタノール)中での洗浄が行われる。様々な精製プロセスの中でも、本明細書の不可分の部分とするWO2018/020458の実施例3に記載の精製プロセスが、特に好ましい。
【0077】
選択された精製プロセスにかかわらず、塩状態のHAが得られ、好ましくは、ナトリウム塩の形態のHAが得られる。
このようにして精製された塩状態のHAは次いで、乾燥に供され、これにより、所期の使用が実行されるまで最適なHAの保存を行うことが可能になる。
このようにして得られた生成物は、European Pharmacopoeia(Ph.Eur.5.0;1472)のパラメータに適合するだけでなく、細菌性エンドトキシン及びタンパク質の含量もさらに高いことが判明している。
【0078】
先述のカルバゾール法(Ph.Eur.5.0;1472)を使用して計算された最終的なプロセス収率により、この段階においては、生成物の損失が最小限であることが確認されており、操作上の限界のため、収率は実際のところ、85~100%、好ましくは95~100%の範囲内に収まる。
【実施例】
【0079】
実施例1:Streptococcus equiの発酵ブロスからのHAの抽出
撹拌しながら1N HCl溶液を添加することにより、Streptococcus equi sub species equi 68222変異株H-1の発酵ブロス3,000リットルをpH=4.5の状態にした後、Celiteパッド(珪藻土)を用いたろ過によってバイオマスを取り除く。
このようにして処理されたブロスは次いで、4,500リットルの最終体積になるまで1,500リットルの精製水によって希釈され、適切な容量(6,000リットル)を有する反応器の中に配置される。
【0080】
得られたブロスの体積(volume)は、100,000ダルトンに等しい多孔度(カットオフ)を有するポリエーテルスルホン膜を備え付けたTFFカセット(Pall、Omegaモデル)を使用する強制再循環工程に供される。ポンプによって2.5bar以下の入口圧力を加えながら、フィードをカセット内に導入する。強制再循環は3時間維持されるが、30分の間隔でアッセイを実施して、透過液中のHAの存在を評価する。32mlのNaCl及び2倍の体積のエタノールが、2mlの透過液に加えられる。3時間の強制再循環の終了時点において、試験結果は陰性になり、すなわち、沈殿物が形成されておらず、これは、HAが保持液中に完全に保持されていることを意味する。
【0081】
強制再循環を遮断し、上記カルバゾール法によって収率を計算すると、収率は、98%である。次いで、第1の透析ろ過工程が、9,000リットルに等しい量の水、したがって、タンク内に存在する体積の2倍に等しい量の水をUFカセットに通すのに必要な時間にわたって、収集タンク内への精製水の導入によって、一定の体積で、開始される。この工程において、排出バルブは開いており、特定の処分容器に向かって導かれた9,000リットルの透過液が除去される。
【0082】
ここで、保持液の体積は、排出バルブを開いた状態のままにして精製水の供給を停止することによって、出発時点における体積(3,000リットル)になるまで濃縮される。
【0083】
合計で24,000リットルの透過液が除去されるまで、精製水を用いて透析ろ過を繰り返し、この結果、8回の透析ろ過サイクルが完了する。
【0084】
次いで、溶液の最終濃縮が、精製水の供給を停止することによって、1,000リットルの体積になるまで実施される。次いで、精製水によって生成物を回収する、すなわち、排出バルブを閉じた状態に保ちながら、500リットルの水を、連続する小分け分としてタンクに加えることによって生成物を回収する。TFFカセットに含まれてシステムの壁に付着しているHAのすべて引き剥がすために、水をシステムの内部で循環させ、保持液を継続的に回収し、フィード中に再導入する。この結果、後続する精製工程に最適な1,500リットルの最終体積が得られるが、前記精製は、WO2018/020458の例3に記載のものに従って、最終生成物であるナトリウム塩の形態のヒアルロン酸が乾燥粉末として得られるまで実施される。
【0085】
より具体的には、水中の0.2M NaOHを、回収した生成物に添加した後、pHが8.5になるまで12N HClによって混合物全体を中和し、最後に、ポリプロピレンフィルターによってろ過する。このときナトリウム塩の形態であるHAの溶液を、無水エタノールによって沈殿させ、撹拌しながら30分保持する。生成物を10分間沈降させ、サイフォン作用によって上澄みを取り除く。30分間撹拌し続けながら、エタノール:水(80:20)の混合物によって生成物を洗浄し、次いで、サイフォン作用によって上澄みを取り除く。無水エタノールによって最後の洗浄を実施し、最後に、ろ過によって無水エタノールを除去する。得られた生成物を、特殊ステンレス鋼製のトレーの中に配置し、真空中において25℃の温度で少なくとも22時間乾燥させる。
【0086】
最終生成物の分析
タンパク質の含量は0.1%未満であり、Ph.Eur.5.0、1472に適合する。
細菌性エンドトキシンの含量は0.05%未満であり、Ph.Eur.5.0、1472に適合する
収率は96.2%である。
【0087】
本明細書において提供されたデータは、抽出プロセスの組入れを明確に示している。
本発明の目的は、現況技術において公知である微生物の発酵によるヒアルロン酸の生成、抽出及び精製のための方法において、プロセス全体の収率を驚異的に高め、現況技術においてこれまでに知られていた効率に比べてはるかに大きな効率の改善を可能にすることである。この点に関して、一般には、特に効率的であると考えられている公知のプロセスの収率は、60~80%であると定められていることに留意すべきである。
【0088】
本出願人によって開発された抽出工程又は抽出プロセスの組入れは、プロセス全体を、工業的な観点においてより好都合なものに変えるものでもある。実際に、錯体形成作用のある塩又は吸着剤樹脂を添加する工程、布又はフィルターによるろ過の工程、有機溶媒を用いる可溶化段階と沈殿段階とを繰り返す工程が省略され、この結果、処理時間と材料の使用との両方の正味の節減がもたらされ、最終的には、処分すべき廃棄物の正味の節減ももたらされる。
本発明の例示的な態様を以下に記載する。
<1>
以下の工程を含むか又は以下の工程からなる抽出工程を含む、発酵ブロス、好ましくは、ストレプトコッカス属(Streptococcus)又はバチルス属(Bacillus)の微生物の発酵ブロス、特にS.equi、B.subtilis又はB.megateriumの発酵ブロス、より好ましくはS.equiの発酵ブロスから、ヒアルロン酸を抽出及び精製するプロセス:
a.当初体積に対して1.1倍~3倍の体積、好ましくは、当初体積に対して1.5倍に等しい体積になるまで、ろ過済みの発酵ブロスを精製水によって希釈すること;
b.5,000ダルトン~300,000ダルトンの範囲の多孔度、好ましくは50,000ダルトン~200,000ダルトンの範囲の多孔度、さらにより好ましくは100,000ダルトンに等しい多孔度を有する、アリールスルホン系ポリマー材料製、好ましくはポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を含む、タンジェンシャルフローフィルター(TFF)カセットの内部において、保持液及び透過液を合体させることにより、工程a.からの前記ブロスを強制再循環させること、
ここで、前記強制再循環は、1時間~6時間の範囲、好ましくは3時間にわたって繰り返され、前記再循環は、外部から液体を導入することなく、一定の体積で、閉鎖系の中で、一方向流を用いて実施される。
<2>
前記強制再循環工程b.の後に以下の工程を行う、<1に記載の方法:
c.精製水及び食塩水から選択される透析ろ過溶液、好ましくは精製水を用いて、工程b.のTFFカセットに含まれる前記保持液の透析ろ過Iを行うこと、
d.初発ブロスの体積に等しい体積になるまで、工程c.から生じた体積を濃縮すること、
e.精製水及び食塩水から選択される透析ろ過溶液、好ましくは精製水を用いて、工程d.から生じた体積の透析ろ過IIを、5回~15回、好ましくは6回~12回、繰り返すこと、
f.前記初発ブロスの3分の1に等しい最終体積が得られるまで、工程e.から生じた体積を最終濃縮すること、
g.前記初発ブロスの半分に等しい総体積が得られるまでの精製水の循環によって、前記TFFカセットの内部に保持された生成物を回収すること。
<3>
プロセス収率が、85~100%の範囲、好ましくは95~100%の範囲にある、<1>~<2>のいずれか一項以上に記載のプロセス。
<4>
精製された前記ヒアルロン酸は、総タンパク質含有量が0.1%未満であり、細菌性エンドトキシン含有量が0.05%未満である、<1>~<3>のいずれか一項以上に記載のプロセス。
<5>
前記発酵ブロスが、Streptococcus equi sub-sp.equi 68222変異株H-1の発酵ブロスである、<1>~<4>のいずれか一項以上に記載のプロセス。
<6>
精製された前記ヒアルロン酸は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態であり、好ましくはアルカリ金属塩の形態であり、さらにより好ましくはナトリウム塩の形態である、<1>~<5>のいずれか一項以上に記載のプロセス。
<7>
以下の工程を含むか又は以下の工程からなる抽出工程を含む、発酵ブロス、好ましくは、ストレプトコッカス属(Streptococcus)又はバチルス属(Bacillus)の微生物の発酵ブロス、特にS.equi、B.subtilis又はB.megateriumの発酵ブロス、より好ましくはS.equiの発酵ブロスから、ヒアルロン酸を抽出するプロセス:
a.当初体積に対して1.1倍~3倍の体積、好ましくは、当初体積に対して1.5倍に等しい体積になるまで、ろ過済みの発酵ブロスを精製水によって希釈すること;
b.5,000ダルトン~300,000ダルトンの範囲の多孔度、好ましくは50,000ダルトン~200,000ダルトンの範囲の多孔度、さらにより好ましくは100,000ダルトンに等しい多孔度を有する、アリールスルホン系ポリマー材料製、好ましくはポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を含む、タンジェンシャルフローフィルター(TFF)カセットの内部において、保持液及び透過液を合体させることにより、工程a.からの前記ブロスを強制再循環させること、
ここで、前記強制再循環は、1時間~6時間の範囲、好ましくは3時間にわたって繰り返され、前記再循環は、外部から液体を導入することなく、一定の体積で、閉鎖系の中で、一方向流を用いて実施される。
<8>
前記発酵ブロスが、Streptococcus equi sub-sp.equi 68222変異株H-1の発酵ブロスである、<7>に記載のプロセス。
<9>
関節炎を有する関節、外傷性関節損傷、又は軟骨下損傷の治療において;
眼疾患の治療において;
手術後の癒着の予防において;
皮膚潰瘍、床ずれ、火傷、傷あと、皮膚傷害、ケロイド、凹型(hypotrophic)/肥厚性瘢痕、無傷又は損傷した皮膚を有するすべての種類の皮膚障害の治療において;
湿疹若しくは様々な種類の皮膚炎などの皮膚疾患、特にアトピー性皮膚炎及び乾癬の皮膚疾患の治療において;又は
間質性膀胱炎の治療において
使用するための、<1>~<6>のいずれか一項以上に従って精製されたヒアルロン酸を含有する医薬組成物、化粧用組成物又は栄養組成物。
<10>
皮膚美容的処置における使用、又は形成・美容外科における注入材(body shaping)としての使用のための、<1>~<6>のいずれか一項以上に従って精製されたヒアルロン酸を含有する医薬組成物又は化粧組成物。
<11>
局所使用及び経口使用のための、<1>~<6>のいずれか一項以上に記載のプロセスに従って精製されたヒアルロン酸を含有する化粧組成物又は栄養組成物。
<12>
関節炎を有する関節の経口治療、腱への栄養補給、皮膚への栄養補給又は胃腸粘膜への栄養補給における使用のための、<1>~<6>のいずれか一項以上に記載のプロセスに従って精製されたヒアルロン酸を含有する医薬組成物又は栄養組成物。
<13>
総タンパク質含有量が0.1%未満であり、細菌性エンドトキシン含有量が0.05%未満である、<1>~<6>のいずれか一項以上に従って精製されたヒアルロン酸。
<14>
アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態であり、好ましくはアルカリ金属塩の形態であり、さらにより好ましくはナトリウム塩の形態である、<1>~<6>のいずれか一項以上に従って精製されたヒアルロン酸。
<15>
好ましくは重金属塩、エステル、アミド、サルフェート又は架橋生成物であり、中でも自己架橋体であることが好ましいヒアルロン酸誘導体を調製するための、<1>~<6>のいずれか一項以上に従って精製されたヒアルロン酸。
<16>
様々な起源の細胞及び/又は血液派生物、例えば血小板派生物、を伴っていてもよい、パッド、織布、不織布、顆粒、フィルム又はゲルの形態にある二次元又は三次元の生体材料を調製するための、<1>~<6>のいずれか一項以上に従って精製されたヒアルロン酸。