(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】可変振動三次元サイプ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20230808BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 300A
(21)【出願番号】P 2021119213
(22)【出願日】2021-07-20
(62)【分割の表示】P 2020501419の分割
【原出願日】2018-03-21
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512028220
【氏名又は名称】ブリヂストン バンダグ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ディー・サーニー
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-515468(JP,A)
【文献】特開2005-126055(JP,A)
【文献】特開2005-193867(JP,A)
【文献】特開平04-306106(JP,A)
【文献】特開2006-096324(JP,A)
【文献】特開昭63-235107(JP,A)
【文献】特開平06-143941(JP,A)
【文献】実開平04-035005(JP,U)
【文献】特開2010-023586(JP,A)
【文献】特開平04-197809(JP,A)
【文献】特開2007-015510(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0055111(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッド用のトレッドパターンであって、
前記トレッドパターンを提供するタイヤトレッドの第1の表面上に配置された複数のトレッド要素であって、前記複数のトレッド要素が、前記タイヤトレッドの第1の表面上に軸方向又は周方向のうちの少なくとも1つに配置され、前記トレッド要素の上部表面と前記複数のトレッド要素が配置される前記タイヤトレッドの底面との間に高さを有する複数のトレッド要素と、
前記複数のトレッド要素の間に設けられた複数の溝と、
前記複数のトレッド要素のうちの少なくとも1つに形成され、前記上部表面に上端部を有するサイプであって、前記サイプが、タイヤ幅方向で見て前記サイプの前記上端部における第1の振動周波数から前記サイプの底端部における第2の振動周波数へ前記トレッド要素の前記高さに沿って減少する周波数で振動する三次元パターンを含み、前記三次元パターンは前記トレッド要素の前記高さに沿って前記サイプの前記上端部と前記サイプの前記底端部との間
に振動を有し、前記三次元パターンは前記トレッド要素の前記上部表面に沿って延びるジグザグパターンを含む、サイプと、を備え
、
前記三次元パターンが、前記サイプの前記上端部におけるタイヤ径方向で見て第1の振幅と、前記サイプの前記底端部における前記タイヤ径方向で見て第2の振幅と、を有し、前記第1の振幅が、前記第2の振幅とは異なる、トレッドパターン。
【請求項2】
前記三次元パターンが、鋸歯
パターン、正弦
波パターンのうちの1つを含む、請求項1に記載のトレッドパターン。
【請求項3】
前記サイプが、前記複数のトレッド要素の高さの60%~100%の範囲のサイプ深さを有する、請求項1に記載のトレッドパターン。
【請求項4】
前記第1の振動周波数が、前記第2の振動周波数よりも大きい、請求項1に記載のトレッドパターン
。
【請求項5】
前記第1の振幅が、前記第2の振幅よりも大きい、請求項
1に記載のトレッドパターン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、タイヤ内に三次元サイプを形成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイプは、しばしばトラクションを改善するために、トレッド内にカット又は成形される。サイプは、トレッドのリブ及びブロック内に形成されてもよく、溝の縁部と同様に、路面上の水膜をはねのける効果を提示し得る。サイプはまた、リブ及びブロックの変形を促進することができ、タイヤヒステリシス損失を抑制し得る。サイプパターンは、タイヤトレッドの1つ以上のブロック、リブ、又はラグ内にあることができ、各トレッド要素の境界内に含まれ得る。いくつかのサイプは、タイヤトレッドにわたって真っ直ぐにカットされてもよく、又はトレッド要素内で一定のバイアス角度でカットされてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、概して、三次元サイプ、及び三次元サイプをタイヤトレッド内に形成する方法を記載する。サイプは、しばしばトラクション及び耐摩耗性を改善するために、トレッド内にカット又は成形される。三次元サイプを実装する場合、タイヤの径方向のサイプ振動は、一定となっている。これは、トレッドゴムを成形型から抽出することを困難にする攻撃的な径方向振動と、サービス中のタイヤ設置面積内に負荷されたときにゴムの2つの隣接するブロック間の安定性の低減をもたらす攻撃性のより低い振動との間の妥協をもたらし得る。サイプブレードの径方向振動の強度を変化させることによって、改善された三次元サイプは、タイヤトレッドの外側径方向場所におけるサイプに対してより高い周波数振動を有するトレッドブロック間に提供される改善された安定性と、タイヤトレッドの内側径方向場所におけるサイプに対してより低い周波数振動を有する成形型からのタイヤトレッドの除去を促進するための改善された可撓性と、をもたらすことができる。
【0004】
いくつかの実装態様は、回転軸を有するタイヤトレッドと、トレッドパターンを含むようにタイヤトレッド表面上に配置された複数のトレッド要素と、複数のトレッド要素間に設けられた複数の溝と、複数のトレッド要素のうちの少なくとも1つ内に形成されたサイプと、を含み得る、タイヤを含む。複数のトレッド要素は、タイヤトレッド表面上に軸方向又は周方向のうちの少なくとも1つに配置されてもよい。サイプは、サイプの上端部における第1の振動周波数と、サイプの底端部における第2の振動周波数と、を有する、三次元パターンを含んでもよい。第1の振動周波数は、第2の振動周波数とは異なっていてもよい。
【0005】
いくつかの実装形態では、第1の振動周波数は、第2の振動周波数よりも大きくてもよい。いくつかの実装形態では、三次元パターンは、鋸歯、正弦波、正方形、又は三角形のパターンのうちの1つであってもよい。いくつかの実装形態では、三次元パターンは、サイプの上端部における第1の振幅と、サイプの低端部における第2の振幅と、を有してもよく、第1の振幅は、第2の振幅とは異なる。いくつかの実装形態では、第1の振幅は、第2の振幅よりも大きくてもよい。いくつかの実装形態では、サイプは、複数のトレッド要素の高さの60%~100%の範囲のサイプ深さを有してもよい。いくつかの実装形態では、サイプは、複数のトレッド要素の高さの100%超のサイプ深さを有してもよい。いくつかの実装形態では、タイヤは、空気式タイヤであってもよい。
【0006】
いくつかの実装形態は、タイヤトレッド用トレッドパターンを含む。トレッドパターンは、トレッドパターンを含むようにタイヤトレッド表面上に配置された複数のトレッド要素と、複数のトレッド要素間に設けられた複数の溝と、複数のトレッド要素のうちの少なくとも1つ内に形成されたサイプと、を含むことができる。複数のトレッド要素は、タイヤトレッド表面上に軸方向又は周方向のうちの少なくとも1つに配置されてもよい。サイプは、サイプの上端部における第1の振動周波数と、サイプの底端部における第2の振動周波数と、を有する、三次元パターンを含んでもよい。第1の振動周波数は、第2の振動周波数とは異なっていてもよい。
【0007】
いくつかの実装形態では、第1の振動周波数は、第2の振動周波数よりも大きくてもよい。いくつかの実装形態では、三次元パターンは、鋸歯、正弦波、正方形、又は三角形のパターンのうちの1つであってもよい。いくつかの実装形態では、三次元パターンは、サイプの上端部における第1の振幅と、サイプの低端部における第2の振幅と、を有してもよく、第1の振幅は、第2の振幅とは異なる。いくつかの実装形態では、第1の振幅は、第2の振幅よりも大きくてもよい。いくつかの実装形態では、サイプは、複数のトレッド要素の高さの60%~100%の範囲のサイプ深さを有してもよい。いくつかの実装形態では、サイプは、複数のトレッド要素の高さの100%超のサイプ深さを有してもよい。
【0008】
いくつかの実装形態は、三次元サイプの変化する振動周波数を有するタイヤトレッドを形成する方法を含む。この方法は、タイヤトレッド成形型を提供することと、成形型を使用してタイヤトレッドを形成することと、成形型からタイヤトレッドを抽出することと、を含み得る。タイヤトレッド成形型は、1つ以上の三次元サイプブレードを有してもよく、1つ以上の三次元サイプブレードの各々は、1つ以上の三次元サイプブレード上端部における第1の振動周波数と、1つ以上の三次元サイプブレードの底端部における第2の振動周波数と、を有する、三次元パターンを有する。第1の振動周波数は、第2の振動周波数とは異なっていてもよい。成形型を使用して形成されたタイヤトレッドは、少なくとも1つのトレッド要素内に形成されたサイプを含んでもよい。サイプは、サイプの上端部における第1の振動周波数と、サイプの底端部における第2の振動周波数と、を有する、三次元パターンを含んでもよい。
【0009】
いくつかの実装形態では、第1の振動周波数は、第2の振動周波数よりも大きくてもよい。いくつかの実装形態では、三次元パターンは、鋸歯、正弦波、正方形、又は三角形のパターンのうちの1つであってもよい。いくつかの実装形態では、三次元パターンは、サイプの上端部における第1の振幅及びサイプの低端部における第2の振幅を有してもよく、第1の振幅は第2の振幅とは異なる。いくつかの実装形態では、第1の振幅は、第2の振幅よりも大きくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
1つ以上の実装形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本開示の他の特徴、態様、及び利点は、本明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0011】
【
図2】
図1のタイヤトレッドのトレッド要素の側面断面図である。
【
図3】内部に形成された可変強度の三次元サイプを有するタイヤトレッドの一部分 の斜視図である。
【
図4】内部に形成された可変強度の三次元サイプを有する、
図3のタイヤトレッド の一部分のクローズアップ斜視図である。
【
図5】可変強度の三次元サイプを形成するためのタイヤトレッド成形型の一部分の 斜視図である。
【
図6】可変強度の三次元サイプを形成するための、
図1のタイヤトレッドの一部分 のクローズアップ斜視図である。
【
図8】成形型を使用してタイヤトレッド内に三次元サイプを形成するためのプロセ ス図である。
【0012】
図の一部又は全ては、例示の目的のための概略図であることが認識されるであろう。図面は、特許請求の範囲の範囲又は意味を制限するために使用されないことを明示的に理解しながら、1つ以上の実装形態を例示する目的で提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、図面の様々な視図に示されるものと同じ又は類似の構造及び特徴は、一貫性及び簡潔性のために、いくつかの視図を通して同じ参照番号によって示されているが、様々な構造又は特徴は、示されるものとは異なってもよいことを理解されたい。
【0014】
本開示の理解を容易にするために、以下の用語が開示される。
【0015】
タイヤの「アスペクト比」は、そのセクションの高さ(SH)とそのセクションの幅(Sw)との比に100%を乗じた比率を指し得る。
【0016】
「非対称トレッド」は、タイヤの中心面又は赤道面(EP)に関して対称ではないトレッドパターンを有するトレッドを指し得る。
【0017】
「軸方向の」及び「軸方向に」は、タイヤの回転軸と平行する線又は方向を指し得る。
【0018】
「周方向の」は、軸方向に対して垂直である環状タイヤトレッド表面の周辺に沿って延在する線又は方向を指し得る。
【0019】
「溝」は、タイヤトレッドの周りを周方向又は横方向に直線、曲線、ジグザグ、又は任意の他の好適な様態で延在し得る、タイヤトレッド内の細長い空隙区域を指し得る。周方向及び横方向に延在する溝は、共通の部分を有する場合があり得る。「溝幅」は、溝又は溝部分によって占有されるトレッド表面積と等しくてもよく、このため、溝幅はその長さにわたるその平均幅であってもよい。溝は、タイヤ内で様々な深さであってもよい。溝の深さは、トレッドの周囲の周りで変化してもよく、又は1つの溝の深さは一定であってもよいが、タイヤ内の別の溝の深さから変化してもよい。いくつかの実施形態では、溝の深さは、タイヤに沿って一定であってもよい。そのような狭い又は幅広の溝が、相互接続する幅広の周方向溝と比較して実質的に深さが低減される場合、それらは、関与するトレッド領域内でリブ様の特性を維持する傾向がある「タイバー」を形成していると見なされ得る。
【0020】
「ネット対グロス比」は、トレッドの全周にわたる横方向縁部間の接地トレッド要素の総面積を、横方向縁部間のトレッド全体の総面積で割ったものを指し得る。
【0021】
「非指向性トレッド」は、好ましい前方走行方向を有さず、トレッドパターンが好ましい走行方向と整列することを確実にするために、具体的なホイール位置(1つ又は複数)で車両に配置される必要がないトレッドを指し得る。逆に、指向性トレッドパターンは、具体的なホイール位置決めを必要とする、好ましい走行方向を有し得る。
【0022】
「径方向の」又は「径方向に」は、タイヤの回転軸に径方向に向かうか、又はタイヤの回転軸から径方向に離れる方向を指し得る。
【0023】
「リブ」は、少なくとも1つの周方向溝と、第2のそのような溝又は横方向縁部のいずれかと、を有する、トレッド上の周方向に延在するゴムのストリップを指し得、ストリップは、完全深さ溝によって横方向に分断されていない。
【0024】
「サイプ」は、トレッド表面を細分化し、トラクションを改善し得る、タイヤのトレッド要素内に成形又はカットされた小スロットを指し得る。
【0025】
「トレッド要素」又は「トラクション要素」は、リブ、ラグ、又はブロック要素を指し得る。
【0026】
「ラグ」は、表面と接触するトレッド要素のセクションを指し得る。
【0027】
「空隙」は、ラグ間に位置付けされた空間を指し得る。
【0028】
サイプは、しばしばトラクション及び耐摩耗性を改善するために、トレッド内にカット又は成形される。三次元サイプを実装する場合、タイヤの径方向のサイプ振動が一定となっている。これは、トレッドゴムを成形型から抽出するのを困難にする攻撃的な径方向振動と、サービス中のタイヤ設置面積内に負荷されたときにゴムの2つの隣接するトレッドブロック間の安定性の低減をもたらす攻撃性の低い振動との間の妥協をもたらし得る。サイプブレードの径方向振動の強度を変化させることによって、改善された三次元サイプは、タイヤトレッドの外側径方向場所におけるサイプに対してより高い周波数振動を有するトレッドブロック間に提供される改善された安定性と、タイヤトレッドの内側径方向場所におけるサイプに対してより低い周波数振動を有する成形型からのタイヤトレッドの除去を促進するための改善された可撓性と、をもたらすことができる。
【0029】
周波数振動は、成形型床付近でより高くなり得、これにより、トレッドブロックがトレッドの床から離れて最も可撓性であり、最も支持を必要とするときに、トレッドの背が高く新品に近い場合に、タイヤトレッドがより良好に性能することをもたらすことができる。振動周波数は、成形型床から成形型の上部に向かって減少する。振動のこの減少する周波数は、トレッドが摩耗するにつれて、隣接するトレッドブロック間のロックアップの量を低減し得る。しかしながら、トレッドが摩耗するにつれてトレッドブロックが短くなるため、トレッドがトレッド床に向かって摩耗するにつれて、トレッドブロックはより剛性になり、したがって、支持のために隣接するトレッドブロックに依存することが少なくなり得る。この可変周波数振動は、そうでなければ、均一な強度のサイピングによって実行不可能であり得るトレッドの製造を可能にすることができる。
【0030】
図1は、いくつかの実施形態による、タイヤのタイヤトレッド100の一部分の正面図である。タイヤは、空気式タイヤを含んでもよい。タイヤトレッド100は、回転軸AA及びトレッドパターン110を含んでもよい。具体的には、タイヤトレッド100は、トレッドパターン110を提供するタイヤトレッド100の表面上に配置された複数のトレッド要素112を含んでもよい。タイヤトレッド100は、タイヤと共に成形されてもよく、又は別個に成形され、その後、タイヤの外側表面に結合されてもよい(例えば、接着剤、硬化、融着、熱接着などを介して)。
【0031】
複数のトレッド要素112は、空隙114によって分離された複数の周方向ラグ113を含んでもよい。接続ブロック115は、ラグ113の各々の間の空隙114内に配置され、隣接するラグ113の各々に結合されてもよい。
図2は、単一のトレッド要素112を含むタイヤトレッド100の一部分の側面断面図である。
図2に見られるように、各トレッド要素は、高さ「h」を有する。接続ブロック115の各々の高さは、接続ブロック115がタイヤトレッド100が配置される表面に接触しないように、トレッド要素112の高さhよりも小さくてもよい。更に、タイヤトレッド100は、タイヤトレッド100の周方向軸ACからその軸方向端部まで測定される半幅「W」(
図1)を有してもよい。
【0032】
複数の周方向溝116が、複数のトレッド要素112の各々の間に設けられていてもよい。トレッド要素112はまた、タイヤトレッド100の軸方向端部に配置されたショルダーブロック118を含んでもよい。複数のノッチ119又はスロットが、ショルダーブロック118に設けられてもよい。
【0033】
タイヤトレッド100は、特定のトレッドパターン110を有するものとして示されているが、タイヤトレッド100は、任意の好適なトレッドパターンを有してもよいことを理解されたい。例えば、複数のトレッド要素112は、タイヤトレッド100の表面上に軸方向又は周方向に配置されてもよく、直線状、曲線状、又はジグザグの溝、ピッチパターン、非指向性トレッドパターン、対称トレッド、又は非対称トレッドを含む。更に、タイヤトレッド100は、任意の好適なアスペクト比又はネット対グロス比を有してもよい。
【0034】
タイヤトレッド100は、トレッド要素112のうちの1つ以上内に形成され得る1つ以上のサイプ122を含んでもよい。例えば、1つ以上のサイプ122は、ラグ113、接続ブロック115、及び/又は空隙114内に形成されてもよい。1つ以上のサイプ122は、例えばタイヤトレッド100の成形動作中に、タイヤトレッド100内に成形されてもよく、又はタイヤトレッド100の成形後にトレッド要素112内にカットされてもよい。更に、1つ以上のサイプ122は、タイヤトレッド100の回転方向に向かって、タイヤトレッド100の回転方向に対して垂直に、又はタイヤトレッド100の回転方向に対して0度~90度の任意の角度で傾斜してもよい。いくつかの実装形態では、1つ以上のサイプ122は、タイヤトレッド100の周方向軸ACに対してある角度に設定されてもよい。
【0035】
1つ以上のサイプ122に含まれる各サイプ122は、任意の好適なピッチ又は距離で、隣接するサイプ122に対して平行に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、距離は、その間の全ての範囲及び値を含めて5mm~40mmの範囲であってもよい。更に、距離又はピッチは、固定であっても又は可変であってもよい。
【0036】
更に、1つ以上のサイプ122の各々は、トレッド要素112が配置されたタイヤトレッド100の表面の反対側に配置されたトレッド要素112の上部表面からる、複数のトレッド要素112の各々の高さhの50%を超えるサイプ深さdを有してもよい。例えば、1つ以上のサイプ122の各々は、その間の全ての範囲及び値を含めて複数のトレッド要素112の高さhの60%~100%の範囲のサイプ深さdを有してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のサイプ122の各々は、複数のトレッド要素の高さの100%超のサイプ深さ(例えば、その間の全ての範囲及び値を含めて複数のトレッド要素112の高さhの約101%~110%)を有してもよい。
【0037】
図3~
図4は、タイヤトレッド200内に形成された複数の三次元サイプ222を有するタイヤトレッド200の実装形態を描いている。タイヤトレッド200は、
図1のタイヤトレッド100と同様の様態で形成することができ、ラグ213の各々の間の空隙214に配置された接続ブロック215を有する空隙214によって分離された複数の周方向ラグ213を含み得る複数のトレッド要素212、複数のトレッド要素212の各々の間に設けられた複数の周方向溝216、及びショルダーブロック218内に設けられた複数のノッチ219又はスロットを有するタイヤトレッド210の軸方向端部に配置されたショルダーブロック218を含む。
【0038】
示される実装形態では、タイヤトレッド200は、トレッド要素212のうちの1つ以上及び/又は複数の溝216内に形成され得る1つ以上の三次元サイプ222を含み得る。例えば、1つ以上の三次元サイプ222は、ラグ213、接続ブロック215、及び/又は空隙214内に形成されてもよい。1つ以上の三次元サイプ222は、例えばタイヤトレッド200の成形動作中に、タイヤトレッド200内に成形されてもよく、又はタイヤトレッド200の成形後にトレッド要素212内にカットされてもよい。更に、1つ以上の三次元サイプ222は、タイヤトレッド200の回転方向に向かって、タイヤトレッド200の回転の方向に垂直に、又はタイヤトレッド200の回転方向に対して0度~90度の任意の角度で傾斜していてもよい。いくつかの実装形態では、1つ以上の三次元サイプ122は、タイヤトレッド200の周方向軸ACに対してある角度で設定されてもよい。
【0039】
1つ以上の三次元サイプ222に含まれる各三次元サイプ222は、任意の好適なピッチ又は距離で、隣接する三次元サイプ222に平行に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、距離は、その間の全ての範囲及び値を含めて5mm~40mmの範囲であってもよい。更に、距離又はピッチは、固定であっても又は可変であってもよい。
【0040】
更に、1つ以上の三次元サイプ222の各々は、トレッド要素212が配置されたタイヤトレッド200の表面の反対側に配置されたトレッド要素212の上部表面から測定された複数のトレッド要素212の各々の高さhの50%を超える三次元サイプ深さdを有してもよい。例えば、1つ以上の三次元サイプ222の各々は、その間の全ての範囲及び値を含めて複数のトレッド要素212の高さhの60%~100%の範囲の三次元サイプ深さdを有してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の三次元サイプ222の各々は、複数のトレッド要素の高さの100%超の三次元サイプ深さ(例えば、その間の全ての範囲及び値を含めて複数のトレッド要素212の高さhの約101%~110%)を有し得る。
【0041】
示される実装形態では、1つ以上の三次元サイプ222は、回転軸AAに沿って複数の溝216の隣接する溝216内に延在し得る。いくつかの実装形態では、末端部224は、各三次元サイプ222の1つ以上の端部に設けられ得る。末端部224は、
図5~
図7を参照してより詳細に説明されるように、成形型のサイプブレードの除去を可能にする開口部を含んでもよい。示されている三次元サイプ222は、
図5~
図7を参照してより詳細に考察されるように、三次元サイプ222の長さLSに沿ったジグザグパターンを含み、サイプ222は、サイプ222の軸方向長さLS及びサイプ222の軸方向長さLSに対して垂直又は任意の他の角度の両方でサイプ222に三次元形状を提供するための交番の鋸歯タイプのパターンを含む。他の実装形態では、三次元サイプ222のために、正弦波パターン、正方形パターン、三角形パターン、又は任意の他のパターンが実装されてもよい。
【0042】
三次元サイプ222のパターンは、三次元サイプ222の上端部226から三次元サイプ222の底端部228まで三次元サイプ222の高さhに沿って減少する周波数で振動する。すなわち、三次元パターンの振動の高い周波数は、上端部226に存在し、三次元パターンの振動のより低い周波数は、底端部228に存在する。高い振動は、タイヤトレッド200及び三次元サイプ222が中に形成されたトレッド要素212が、背が高く、新品に近い場合に、より良好に性能し得、一方で、トレッド要素212がより可撓性であり得るため、硬化後に三次元サイプ成形型を成形三次元サイプ222内から除去することを依然として可能にする。高い振動は、トレッド要素212がより可撓性であっても、トレッド要素212へ追加の支持を提供する。振動の周波数は、三次元サイプ222の高さが底端部228へ減少するにつれて減少する。これにより、トレッドが摩耗するにつれて、隣接するトレッド要素部分間のロックアップの量が減少する。しかしながら、各トレッド要素部分は、タイヤトレッド200の高さが減少することによってより剛性になり、したがって、支持のために隣接するトレッド要素部分に依存することが少なくなる。
【0043】
いくつかの実装形態では、三次元サイプ222の振幅は、三次元サイプ222の高さhに沿って、及び/又は三次元サイプ222の軸方向長さLSに沿って変化し得る。すなわち、三次元パターンは、三次元サイプ222の上端部226における第1の振幅と、三次元サイプ222の底端部228における第2の振幅と、を有することができ、第1の振幅は、第2の振幅とは異なる。第1の振幅は、第2の振幅よりも大きくすることができる。更に他の実装形態では、三次元サイプ222の振幅は、末端部224及び/又は上端部226における振動のより高い振幅など、三次元サイプ222の異なる位置で変化してもよい。
【0044】
図5~
図7は、1つ以上の三次元サイピングブレード310を有するタイヤトレッド成形型300の実装形態を描いている。成形型300は、空隙形成突出部314によって分離された複数のラグ凹部313を含む。接続ブロック凹部315は、ラグ凹部313の各々の間の空隙形成突出部314内に形成されてもよい。各ラグ凹部313の深さは、タイヤトレッド100、200のラグ113、213の高さ「h」を画定する。接続ブロック凹部315の各々の深さは、タイヤトレッド100、200の接続ブロック115、215が、タイヤトレッド100、200が配置されている表面に接触しないように、ラグ凹部313の深さよりも小さくてもよい。
【0045】
複数の溝突出部316が、複数のトレッド形成要素313、314、315の各々の間に設けられてもよい。成形型300は、成形型300の軸方向端部にショルダーブロック118、218を形成するための、及び/又はショルダーブロック118、218内に複数のノッチ119、219若しくはスロットを形成するためのトレッド形成要素を更に含むことができる。
【0046】
成形型300は、特定のトレッドパターンを有するものとして示されているが、成形型300は、任意の他の好適なトレッドパターンを有してもよいことを理解されたい。例えば、複数のトレッド形成要素313、314、315は、直線状、曲線状、又はジグザグの溝、ピッチパターン、非指向性トレッドパターン、対称トレッド、又は非対称トレッドを含むように構成されてもよい。更に、成形型300は、トレッド形成要素313、314、315の任意の好適な組み合わせを有して、対応する所望のアスペクト比又はネット対グロス比を有するタイヤトレッドを形成してもよい。
【0047】
成形型300は、1つ以上の三次元サイプブレード310を含んでもよい。例えば、1つ以上の三次元サイプブレード310は、ラグ、接続ブロック、及び/又は空隙内に対応するサイプを形成するように配置されてもよい。1つ以上の三次元サイプブレード310は、得られるタイヤトレッドの回転方向に向かって、得られるタイヤトレッドの回転方向に垂直に、又は得られるタイヤトレッドの回転方向に対して0度~90度の任意の角度で傾斜してもよい。いくつかの実装形態では、1つ以上の三次元サイプブレード310は、得られるタイヤトレッドの周方向軸ACに対してある角度で設定されてもよい。
【0048】
各三次元サイプブレード310は、任意の好適なピッチ又は距離で、隣接する三次元サイプブレード310に対して平行に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、距離は、その間の全ての範囲及び値を含めて5mm~40mmの範囲であってもよい。更に、距離又はピッチは、固定であっても又は可変であってもよい。
【0049】
更に、1つ以上の三次元サイプブレード310の各々は、得られるトレッド要素の高さhの50%超であり得るサイプ深さdに対応するサイプブレード高さを有してもよい。例えば、1つ以上の三次元サイプブレード310の各々は、その間の全ての範囲及び値を含めて得られるトレッド要素の高さhの60%~100%の範囲のサイプ深さdに対応するサイプ高さを有してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の三次元サイプブレード310の各々は、得られるトレッド要素の高さの100%超のサイプ高さ(例えば、その間の全ての範囲及び値を含めて複数の得られるトレッド要素の高さhの約101%~110%)を有してもよい。
【0050】
いくつかの実装形態では、末端部324は、各三次元サイプブレード310のうちの1つ以上の端部に設けることができる。末端部324は、成形型300から硬化したタイヤトレッドを抽出するときに、三次元サイプブレード310の除去を容易にするために、突出要素(例えば、円筒、正方形、又は他の三次元幾何学要素)を含んでもよい。示されている三次元サイプブレード310は、三次元サイプブレード310のブレード長Lbに沿ったジグザグパターンを含み、かつ、得られるサイプのブレード長Lb、及び得られるサイプのブレード長さLbに対して垂直又は任意の他の角度の両方において得られるサイプに三次元形状を提供するための交番の鋸歯タイプのパターンを含む。他の実装形態では、三次元サイプブレード310に対して正弦波パターン、正方形パターン、三角形パターン、又は任意の他のパターンが実装されてもよい。
【0051】
図7に最もよく示されるように、三次元サイプブレード310は、成形型300の成形型基部312から上方に延在する。三次元サイプブレード310の三次元パターンは、三次元サイプブレード310の上端部326から三次元サイプブレード310の底端部328へ三次元サイプブレード310の高さに沿って減少する周波数で振動する。すなわち、三次元パターンの振動の高い周波数は、上端部326に存在し、三次元パターンの振動のより低い周波数は、底端部328に存在する。高い振動は、得られるタイヤトレッド及び三次元サイプが中に形成されたトレッド要素が、背が高く、新品に近い場合に、より良好に性能し得るが、一方依然として、成形されたトレッド要素の高さは、より可撓性があり、弾性変形して三次元サイプブレード310を抽出し得るため、硬化後に三次元サイプ成形型300及び三次元サイプブレード310が成形された三次元サイプ内から除去されることを可能にする。高い振動は、トレッド要素がより可撓性であっても、トレッド要素の隣接部分からトレッド要素に追加の支持を提供する。振動の周波数は、三次元サイプブレード310の高さが底端部328まで減少するにつれて減少する。これにより、トレッドが摩耗するにつれて、隣接するトレッド要素部分間のロックアップの量が減少する。しかしながら、各トレッド要素部分は、タイヤトレッドの高さが減少することによってより剛性になり、したがって、支持のために隣接するトレッド要素部分に依存することが少なくなる。
【0052】
いくつかの実装形態では、三次元サイプブレード310の振幅は、三次元サイプブレード310の高さに沿って、及び/又は三次元サイプブレード310のブレード長Lbに沿って変化してもよい。すなわち、三次元パターンは、三次元サイプブレード310の上端部326における第1の振幅と、三次元サイプブレード310の底端部328における第2の振幅とを有することができ、第1の振幅は第2の振幅とは異なる。第1の振幅は、第2の振幅よりも大きくすることができる。更に他の実装形態では、三次元サイプブレード310の振幅は、末端部324及び/又は上端部326において振動のより高い振幅など、三次元サイプブレード310の異なる位置で変化してもよい。
【0053】
図8は、変動振動三次元サイプを有するタイヤトレッドを形成するための例示的なプロセス800の概略フロー図である。プロセス800は、
図5~
図7の成形型300などの、三次元サイプブレードのための三次元パターンの変動振動を有する1つ以上の三次元サイプブレードを有するタイヤトレッド成形型を提供すること(ブロック802)を含む。プロセス800は、成形型を使用してタイヤトレッドを形成することを含んでもよい(ブロック804)。いくつかの実装形態では、複数の成形型を互いに隣接して配置して、細長いタイヤトレッドを形成してもよい。他の実装形態では、成形型は、その中に三次元サイプを備えて形成されるように、所定の長さのタイヤトレッド用の単一の成形型であってもよい。プロセス800はまた、成形型からタイヤトレッドを抽出することを含んでもよい(ブロック806)。成形型からタイヤトレッドを抽出することは、手動で、及び/又はタイヤトレッド抽出機械を介して行われてもよい。いくつかの実装形態では、タイヤトレッドは、タイヤケーシングに結合されるか、又は別の方法でタイヤケーシングに取り付けられて、タイヤを形成することができる。タイヤトレッド及びタイヤケーシングは、一緒に硬化されて、新しいタイヤを形成してもよい。
【0054】
本明細書は、多くの具体的な実装詳細を含むが、これらは、特許請求され得る範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、むしろ特定の実装に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実装の文脈において本明細書に記載される特定の特徴はまた、単一の実装において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装の文脈で説明される様々な特徴はまた、複数の実装において別々に、又は任意の好適な副次的組み合わせで実装されてもよい。更に、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上述されており、更に最初はそのように特許請求されてもよいが、場合によっては、特許請求される組み合わせからの1つ以上の特徴は、組み合わせから削除されてもよく、特許請求される組み合わせは、副次的組み合わせ又は副次的組み合わせの変形を対象とし得る。
【0055】
本明細書で使用するとき、「実質的に」という用語及び類似の用語は、本開示の主題が関係する当業者による一般的かつ受け入れられた使用と調和する広い意味を有することが意図されている。本開示を検討する当業者は、これらの用語が、提供される正確な数値範囲へこれらの特徴の範囲を制限することなく、記載及び特許請求される特定の特徴の説明を可能にすることを意図していることを理解するべきである。したがって、これらの用語は、記載され、特許請求される主題の実質的でない又は重要でない修正又は変更が、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内であると考えられることを示すものとして解釈されるべきである。加えて、特許請求の範囲における制限は、「手段」という用語がその中で使用されない場合、米国特許法の下での「ミーンズ・プラス・ファンクション」制限を構成するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0056】
本明細書で使用するとき、「結合された」という用語などは、2つの構成要素を互いに直接的又は間接的に接合することを意味する。このような接合は、静止的(例えば、恒久的)であってもよく、又は可動的(例えば、取り外し可能又は解放可能)であってもよい。このような接合は、2つの構成要素、又は2つの構成要素と任意の追加の中間構成要素とが単一の単体として互いに一体的に形成されている、あるいは2つの構成要素、又は2つの構成要素と任意の追加の中間構成要素とが互いに取り付けられていることで達成され得る。
【0057】
様々な例示的実装において示されるシステムの構築及び構成は、例示的なものにすぎず、特性において限定的ではないことに留意することが重要である。記載された実装の趣旨及び/又は範囲内に入る全ての変更及び修正は、保護されることが望まれる。いくつかの特徴は必須でなくてもよく、様々な特徴を欠く実装は、本出願の範囲内で企図されてもよく、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。特許請求の範囲を読む際、「ある(a)」、「ある(an)」、「少なくとも1つ」又は「少なくとも一部分」などの語が使用されるとき、特許請求の範囲において特に明記しない限り、特許請求項を1つの項目のみに限定する意図はないことが意図されている。「少なくとも一部分」及び/又は「一部分」という文言が使用されるとき、その項目は、特に明記しない限り、一部分及び/又は項目全体を含むことができる。