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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】酸化チタン被膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/00 20060101AFI20230808BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20230808BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20230808BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C23C24/00
B05D3/10 G
B05D3/04 Z
B05D3/10 A
B05D7/24 303B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019021116
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128570
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519046041
【氏名又は名称】鈴木 茂資
(73)【特許権者】
【識別番号】513090471
【氏名又は名称】守谷 修
(73)【特許権者】
【識別番号】519046052
【氏名又は名称】大工 裕貴
(73)【特許権者】
【識別番号】519046096
【氏名又は名称】鈴木 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂資
(72)【発明者】
【氏名】守谷 修
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-052057(JP,A)
【文献】特開2004-238733(JP,A)
【文献】特開2006-289294(JP,A)
【文献】特開2000-212467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/00
C23C 26/00
B05D 3/04
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン被膜形成方法であって、
表面に付着した油汚れを脱脂剤を用いて脱脂する脱脂ステップと、
前記脱脂された表面上に鉱物油、石油留分、及びプロパンの混合物である防錆材の膜を形成する防錆材膜形成ステップと、
前記防錆材の膜の表面を均一にするため、当該防錆材の膜をエアブローするエアブローステップと、
前記エアブローステップの後に、酸化チタンを含有する酸化チタン分散液を用いて酸化チタン膜を表面上に形成する酸化チタン膜形成ステップと、を含むことを特徴とする酸化チタン被膜形成方法。
【請求項2】
前記酸化チタン膜形成ステップでは、酸化チタン分散液を用いて前記防錆材の膜の上に、酸化チタンの膜を形成する、ことを特徴とする請求項1記載の酸化チタン被膜形成方法。
【請求項3】
前記酸化チタン分散液は、水とイソプロピルアルコールと酸化チタンとから構成され、
当該酸化チタンは、径が3nm以下の超微粒子である、ことを特徴とする請求項1又は2記載の酸化チタン被膜形成方法。
【請求項4】
前記防錆材膜形成ステップにおいて、前記防錆材は表面上に塗布又は噴霧され、
前記酸化チタン膜形成ステップにおいて、前記酸化チタン分散液は前記防錆材の膜の表面上に塗布又は噴霧される、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の酸化チタン被膜形成方法。
【請求項5】
前記表面は金属表面である、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の酸化チタン被膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄などの金属表面、自動車塗面やガラス表面に酸化チタンの被膜を形成する酸化チタン被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、チェーン、ベアリング、ギア、自転車のスプロケットなどの金属パーツの金属表面が経時と共に錆びて汚れることが問題となっている。金属パーツの防錆のために油を加えると金属パーツの表面の油に汚物が付着し、埃や泥を巻き込んで細部に堆積して金属パーツの性能(変速性能など)に支障をきたす場合もある。
【0003】
近年、酸化チタンは、固体材料の表面に高い光触媒効果を付与させることが知られ、酸化チタン光触媒の強い酸化力を応用した製品を多く見かけるようになっている。金属表面に光触媒効果を有する酸化チタン被膜を形成させることにより、油などの付着汚れの分解、防錆、並びに細菌及び藻類の繁殖防止などに有用な金属表面を形成できる。
【0004】
酸化チタンの膜を、金属などの表面に形成する方法としては、単純に表面に酸化チタンや酸化銀を含む被膜液を噴霧して、酸化チタン被膜層を形成する方法が知られている。また、装置を用いる方法として、気相法では化学気相蒸着法(CVD法:chemical vapor deposition)や物理蒸着法(PVD法:physical vapor deposition)、液相法ではゾル―ゲル法によるデイップコーティング法やスピンコーティング法が広く知られている。
【0005】
そして、例えば、液相析出法により容易に表面積が増加した酸化チタン被膜を形成できる酸化チタン被膜の形成方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、光触媒性が良好で、十分な厚さを有する酸化チタン被膜を金属材料上に形成するための酸化チタン被膜方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-8494号公報
【文献】特許第3542234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、概していうと、自転車のスプロケットやチェーン、ベアリングなどの金属パーツの金属表面が経時と共に錆びること、及び汚れていくことに対しては、未だ有効で且つ簡易な手法は確立されていない。特に、簡易で安価な手法で、専門家でなくても金属表面の防錆、防汚対策ができる手法は未だにない。
【0008】
また、上述した酸化チタンの被膜法としての気相法や液相法は、非常に高価で大掛かり内装置が必要となり、プロセスも多数あるために酸化チタン被膜のための時間が長く、またコストを要するという問題がある。
【0009】
さらに、単純に車体などの金属面や塗装面に、酸化チタンや酸化銀を含む被膜液を噴霧して、酸化チタン被膜層を形成する方法では、酸化チタンの被膜のむらが生じ易く、長期間の防錆・防汚対策としては未だ不十分である。
【0010】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、大掛かりな装置を必要とせず、専門家でなくても簡易且つ安全に、金属などの表面に防錆・防汚処理を施すことができる酸化チタン被膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、酸化チタン被膜形成方法であって、表面に付着した油汚れを脱脂剤を用いて脱脂する脱脂ステップと、前記脱脂された表面上に鉱物油、石油留分、及びプロパンの混合物である防錆材の膜を形成する防錆材膜形成ステップと、前記防錆材の膜の表面を均一にするため、当該防錆材の膜をエアブローするエアブローステップと、前記エアブローステップの後に、酸化チタンを含有する酸化チタン分散液を用いて酸化チタン膜を表面上に形成する酸化チタン膜形成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る酸化チタン被膜形成方法の前記酸化チタン膜形成ステップでは、酸化チタン分散液を用いて前記防錆材の膜の上に、酸化チタンの膜を形成することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る酸化チタン被膜形成方法において、前記酸化チタン溶液は、水とイソプロピルアルコールと酸化チタンとから構成され、当該酸化チタンは、径が3nm以下の超微粒子であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る酸化チタン被膜形成方法の前記防錆材膜形成ステップにおいて、前記防錆材は表面上に塗布又は噴霧され、前記酸化チタン膜形成ステップにおいて、前記酸化チタン分散液は前記防錆材の膜の表面上に塗布又は噴霧されることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る酸化チタン被膜形成方法において、前記表面は金属表面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る酸化チタン被膜形成方法は、表面に付着した油汚れを脱脂剤を用いて脱脂する脱脂ステップと、前記脱脂された表面上に防錆材の膜を形成する防錆材膜形成ステップと、前記防錆材の膜の表面を均一にするため、当該防錆材の膜をエアブローするエアブローステップと、前記エアブローステップの後に、酸化チタンを含有する酸化チタン分散液を用いて酸化チタン膜を表面上に形成する酸化チタン膜形成ステップとを含む。この構成により、本願発明では、大掛かりな装置を必要とせず、専門家でなくても簡易且つ安全に、金属などの表面に防錆・防汚処理を施すことができる酸化チタン被膜形成方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法の動作手順を示すフローチャートである。
図2】(a)乃至(d)同上酸化チタン被膜形成方法の被膜過程の膜構成図である。
図3】(a)同上酸化チタン被膜形成方法を用いた実施例1と従来手法を用いた従来例1との金属表面の比較写真図、(b)同上酸化チタン被膜形成方法を用いた実施例2と従来手法を用いた従来例2との金属表面の比較写真図である。
図4】酸化チタン被膜形成に関する参考写真図である。
図5】(a)及び(b)同上酸化チタン被膜形成方法を用いた実施例3に係る金属表面の写真図である。
図6】(a)及び(b)同上酸化チタン被膜形成方法を用いた実施例3に係る金属表面の写真図である。
図7】(a)及び(b)従来の酸化チタン被膜形成方法を用いた従来例3に係る金属表面の写真図である。
図8】(a)同上酸化チタン被膜形成方法を用いた実施例4の金属表面の写真図、(b)従来の酸化チタン被膜形成方法を用いた従来例4の金属表面の写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法について図面を参照して説明する。なお、本発明は、金属材料やガラス材料など表面の錆や汚れを浄化する必要がある材料に適用でき、金属材料であれば例えば亜鉛、鉄、銅、アルミニウムなどであり、錆びやすく腐食性の高い金属材料に対して用いる。また、例えば自転車のスプロケット、チェーン、ベアリング、ギアなど、主に屋外で使用されるために錆が発生し易く、油汚れが生じやすい金属パーツの金属表面に適用することでより高い効果を発揮できる。さらに、本発明には、当然にこの酸化チタン被膜形成方法を用いて表面上に酸化チタン被膜が形成された金属部品が含まれる。
【0020】
本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法の手順に関して図1に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは金属表面の酸化チタン被膜形成方法として説明する。
【0021】
最初に、金属パーツなどの金属表面(例えば、鉄表面)を脱脂剤を用いて脱脂する脱脂ステップ(S11)を行う。この際、脱脂材を塗布した金属表面を洗浄して、金属表面に付着した油汚れや塵埃を落とし、鉄などの金属表面を剥き出しの状態にする。
【0022】
次に、脱脂された金属表面上に防錆材の膜を形成する防錆材膜形成ステップ(S12)となる。ここでは、防錆剤を、脱脂された金属表面上に適量を刷毛などで塗布又はエアコンプレッサーを用いて噴霧する。この際、金属表面への浸透効果の高い浸透防錆材を用いることが好ましい。
【0023】
そして、防錆材の膜をエアブローするエアブローステップ(S13)となる。防錆材の塗膜された面をエアコンプレッサーでエアブローすることにより、金属表面上の防錆材の膜表面を均一にして、金属表面の凹部にも浸透防錆剤を残すことができる。なお、エアコンプレッサーからの圧力を適度に保つ必要があり、業務用のコンプレッサーなど出力の強いものを使用すると、金属表面の凹部にある防錆剤まで除去していまう可能性がある。すると、錆防止の再現性が低くなり、錆びが生じる原因となることに留意する必要がある。好ましくは、例えば、エアコンプレッサーを20~25cmの距離から3~4BAR(気圧)の噴射圧力で金属表面全体に適度に吹付けると良い。
【0024】
最後に、エアブローステップの後に、酸化チタン(TiO2)を含有する酸化チタン分散液を用いて酸化チタン膜を表面上に形成する酸化チタン膜形成ステップ(S14)を行う。すなわち、防錆材の膜の上に、酸化チタンの膜が形成するために、酸化チタン光触媒溶剤(以下酸化チタン分散液と記す)をエアコンプレッサーを用いたエアガンで塗布したり噴霧する。すると、溶液に使用しているイソプロピルアルコール(isopropanol :以下IPAと記す)の作用もあり、空気に触れるとすぐに乾燥して、酸化チタンの施工面が完成する。
【0025】
次に、本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法における金属表面の被膜過程を図2を参照しながら説明する。
【0026】
通常、図2(a)に示すように、金属表面21には、ミクロン単位では実際には凹凸が形成されている。この凹凸部に防錆材を塗布してエアブローをかけることにより、図2(b)に示すように、表面の凹凸部の凹部に対しても、強力な浸透防錆剤が浸透して比較的平坦な防錆材膜22が金属表面21上に形成される。
【0027】
次に、図2(c)に示すように、表面に酸化チタン分散液を薄く噴霧すると、防錆材膜22の上に酸化チタン粒子23の被膜が形成される。その後、成分中のIPAが防錆剤を分解しするが全ての分解に至らず、表面上の防錆材膜22及び凹部に残った防錆剤膜22と、表面に薄く付いた酸化チタン溶液とが、分子間力(ファンデルワールス力)で引き合う。すると、図2(d)に示すように、防錆剤膜22には水置換性があり水を押しのける特性と水の物理的な特性として、水:油の比重比でチタン水が防錆材膜22の下側に入り込み、酸化チタン粒子23が金属表面21に整然と配列されて金属表面21の凹凸を修復する。その後、乾燥することにより、金属表面21に極めて均一で平坦な酸化チタン粒子23の被覆が残る。その結果、溶液中ではバラバラになっていた酸化チタン粒子23が金属表面21に均一に整列して酸化チタン施工面となる。
【0028】
金属表面上に親和している防錆材膜22にも凹凸で薄くなっている領域があり、そこに酸化チタン分散液のIPAが作用すると防錆材膜22の一部が破綻しやすく、その隙間から酸化チタン分散液が付着し、金属表面21に規則正しく付着することもある。特に、酸化チタン分散液の酸化チタンの粒子径は2nmなので、溶液間の分子間力が作用することで、酸化チタン粒子23が金属表面21に均一に付着できる。
【0029】
<比較試験>
次に、本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法を用いた実施例と、従来例との比較試験を行った。なお、以下の比較試験は、本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法を鉄表面に使用した場合、従来に比較していかに防錆・防汚効果があるかを判断するための試験である。
【0030】
以下の実施例において、脱脂には、ミネラルスピリットと呼ばれる石油留分又は残油の水素化精製,改質又は分解により得られる灯油などの成分を90-100wt%含むヴィプロス社製「グゥーキンα」という溶剤を使用した。「グゥーキンα」は、遅乾油性洗剤に特殊乳化剤を配合しているため、金属表面に刷毛などでこの脱脂材を塗布したあとに、流水で流すだけで油脂汚れがキレイに洗浄される。
【0031】
防錆材としては、光洋商事のWYNNS「No.5」という浸透防錆剤を使用する。このWYNNS「No.5」では、金属表面を錆や腐敗から保護することができる。防錆材の組成は例えば鉱物油(CAS (Chemical Abstracts Service)番号:64742-52-5)、石油留分(軽油)(CAS番号:64742-47-8)、プロパン(CAS番号:74-98-6)の混合物である。
【0032】
酸化チタン光触媒溶剤には、浜松ナノテクノロジー社の「TiO2-A-1」を用いた。この酸化チタン分散液は、イソプロピルアルコール(IPA)と酸化チタンと水により構成され、例えば配合割合はIPA 4wt%、酸化チタン0.04wt%、水 95.96wt%であり、人体に害はない。酸化チタンは、2~3nm(すなわち3nm以下)の超微粒子であり、極めて高い光触媒活性力を発揮する。また、この酸化チタン分散液は、太陽光のみではなく蛍光灯やLEDなどの光を吸収し、強い光触媒作用を発揮できる。かび、細菌などの微生物やウィルスは、酸化チタンの粒子表面で酸化され、死滅もしくは失活する。なお、酸化チタン分散液にはnanoYoJapan社のnanoYo(登録商標)など本願の条件を満たす限り他の酸化チタン分散液を用いても良い。
【0033】
図3(a)に示す比較試験では、鉄パーツの上側表面31が本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法を用いた実施例1であり、下側表面32は脱脂処理の後に酸化チタン被膜処理を行った従来例1である。図3(a)に示すように、所定期間経過後において下側表面32は錆の発生が進行するが、上側表面31は錆が発生せずにきれいな状態を維持していることが分かる。
【0034】
図3(b)に示す比較試験では、円形状の上側領域33は本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法を用いた実施例2であり、円形状の下側領域34は、酸化チタン被膜をしていない従来例2である。そして、メチレンブルー溶液を塗布して所定期間置いていると、上側領域33は酸化チタンの光触媒効果によりメチレンブルーの色素が抜けており、このことより実施例2では酸化チタンの粒子が適切に金属表面に担持していることが確認できる。一方、下側領域34は、メチレンブルーの色素が抜けておらず、従来例2では酸化チタンが担持できていないことが確認できる。
【0035】
図4は、鉄地金の表面部41と、脱脂及び酸化チタンの被膜のみをした表面部42を示している。このように、脱脂した鉄地金に酸化チタンを塗布すると錆の発生を促すこともあることが分かる。
【0036】
図5及び図6は、本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法を用いて実際に使用した自転車のスプロケットの実施例3である。表面が酸化チタン粒子によりより平坦となるため非常に見た目も美しく、錆の発生はなく、油汚れや塵埃の付着が極めて少ないことが分かる。一般的に、金属パーツには、砂やホコリなどの無機汚れが同時に存在しており、砂、ほこりの噛み込みによって、スプロケットの刃先部位や、チェーンのローラ部分の摩耗などが従来手法の使用では避けることができない。しかしながら、本願発明においては、図6に示すように油脂汚れや塵埃汚れが軽減され、金属部品の摩耗の軽減して、金属部品などの交換サイクル・耐久性を伸ばすことができる。図7は、洗車後にスプロケット及びチェーンに注油をした従来例3であり、油汚れや塵埃の付着が目視できる程である。
【0037】
図8(a)は、本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法を用いて実際に使用した剃刀81の実施例4であり、2週間の使用経過後も、錆の発生はなく、油汚れや塵埃の付着が極めて少なく、切れ味がほとんど変わらなかった。一方、図8(b)は、剃刀82の従来例4であり、錆の付着が目視でき、切れ味が非常に悪くなった。
【0038】
このように、本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法を用いることで、金属表面に油や埃などの汚れが付着しにくくなり、また、帯電したゴミなどがチタン表面に引き寄せられることもなくなる。この結果、金属表面の状態を、長期間に亘って錆の発生を防ぎ、綺麗に保つことができることが分かる。
【0039】
すなわち、酸化チタン光触媒の効果によって、光エネルギーで金属表面の水などを分解することで錆の発生を防止する。また、酸化チタンをコーティング(被膜)した金属表面は、通常の金属表面に比較して凹凸がなく平坦に近くなり、極めて水になじみやすくなり、水をかけても薄い膜となって流れてゆくため極めて防錆効果が高くなる。また、酸化チタンの光触媒の効果によって油汚れが分解される。これは、酸化チタンの酸素が光照射によって抜け落ち、これが水分子を反応して水酸基を作ることにより表面と水分のなじみが良くなり、これによって油汚れなどの汚れは洗い流され、その結果、長期間に亘って自己浄化効果が持続する。特に、酸化チタン光触媒の効果は、太陽光の紫外線のエネルギーを利用するものが多く、自転車や自動車パーツなど屋外など紫外線の強く当たる場所で利用される金属パーツに対して、その性能をより発揮できる。
【0040】
以上の説明のように、本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法は、表面に付着した油汚れを脱脂剤を用いて脱脂する脱脂ステップ(S11)と、前記脱脂された表面上に防錆材の膜を形成する防錆材膜形成ステップ(S12)と、前記防錆材の膜の表面を均一にするため、当該防錆材の膜をエアブローするエアブローステップ(S13)と、前記エアブローステップの後に、酸化チタンを含有する酸化チタン分散液を用いて酸化チタン膜を表面上に形成する酸化チタン膜形成ステップ(S14)とを含む。この構成により、大掛かりな装置を必要とせず、専門家ではなくても簡易且つ安全に、金属などの表面に防錆・防汚処理を施すことができる。
【0041】
また、本実施の形態に係る酸化チタン被膜形成方法では防汚性が高く、光触媒効果によって、表面に付着した汚れをセルフクリーニングできる。一般的に、光触媒は有機物(油脂汚れ)への酸化分解能力に優れており、常に油脂まみれになる自転車のスプロケットやチェーンなどの粘度の高い油脂汚れも分解できる。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施の形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、金属やガラスの他の表面加工に使用することもできる。また、同様の作用効果を奏する場合には、その他の工程を加え得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
21 金属表面
22 防錆材膜
23 酸化チタン粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8