(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】振込管理システム、振込管理方法および振込管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20230808BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2018167509
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 博司
(72)【発明者】
【氏名】奥本 耕造
(72)【発明者】
【氏名】古林 昌樹
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-246613(JP,A)
【文献】特開2014-106746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信する受信部と、
前記顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、前記顧客の組戻資金を集計する集計部とを備え
、
前記集計部は、口座入金不能を示す同一の顧客による複数の電文を受信した場合、最初に受信した電文が示す振込依頼の組戻資金のみを、当該顧客の前記別段口座に入金する
ことを特徴とする振込管理システム。
【請求項2】
顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信する受信部と、
前記顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、前記顧客の組戻資金を集計する集計部とを備え、
前記集計部は、受信した電文により特定される前記振込エラーの原因が、取りまとめ対象として予め定められた振込エラーの原因に合致する場合、当該振込エラーが示す振込依頼の組戻資金を前記別段口座に入金する
ことを特徴とする振込管理システム。
【請求項3】
集計部は、顧客が一括組戻の対象である場合に、当該顧客の別段口座に組戻資金を入金する
請求項1
または請求項2記載の振込管理システム。
【請求項4】
別段口座に入金した電文ごとの明細を顧客ごとに出力する出力部を備えた
請求項1から請求項
3のうちのいずれか1項に記載の振込管理システム。
【請求項5】
コンピュータが、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信し、
前記コンピュータが、前記顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、前記顧客の組戻資金を集計し、
前記集計の際、
前記コンピュータが、口座入金不能を示す同一の顧客による複数の電文を受信した場合、最初に受信した電文が示す振込依頼の組戻資金のみを、当該顧客の前記別段口座に入金する
ことを特徴とする振込管理方法。
【請求項6】
コンピュータが、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信し、
前記コンピュータが、前記顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、前記顧客の組戻資金を集計し、
前記集計の際、
前記コンピュータが、受信した電文により特定される前記振込エラーの原因が、取りまとめ対象として予め定められた振込エラーの原因に合致する場合、当該振込エラーが示す振込依頼の組戻資金を前記別段口座に入金する
ことを特徴とする振込管理方法。
【請求項7】
コンピュータが、顧客が一括組戻の対象である場合に、当該顧客の別段口座に組戻資金を入金する
請求項5または請求項6記載の振込管理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信する受信処理、および、
前記顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、前記顧客の組戻資金を集計する集計処理を実行させ
、
前記集計処理で、口座入金不能を示す同一の顧客による複数の電文を受信した場合、最初に受信した電文が示す振込依頼の組戻資金のみを、当該顧客の前記別段口座に入金させる
ための振込管理プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
集計処理で、顧客が一括組戻の対象である場合に、当該顧客の別段口座に組戻資金を入金させる
請求項8記載の振込管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振込エラーに対する管理を行う振込管理システム、振込管理方法および振込管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの金融機関の間で、為替振込の処理が行われている。一般に、為替振込の処理は、振込元金融機関(仕向、または、仕向金融機関と記すこともある。)のホストコンピュータから、振込先金融機関(被仕向、または、被仕向金融機関と記すこともある。)のホストコンピュータに振込電文が送信されることで行われる。
【0003】
一方、国内為替振込の数%に為替振込エラー(入金エラー)が発生していると言われており、振込対応を行う営業店を圧迫する要因の一つになっている。為替振込エラーの例として、例えば、軽微な名義相違や、口座番号誤りなどが挙げられる。
【0004】
一般に、振込先金融機関より為替振込エラーとされた振込については、振込先金融機関からの資金返却処理(組戻)が行われる。例えば、特許文献1には、組戻の後処理を効率的に処理する組戻処理システムが記載されている。特許文献1に記載された組戻処理システムは、振込先金融機関に組戻を依頼した回答電文より、振込先金融機関からの資金返却に伴い受信した付替電文に対応する回答電文を検索し、付替電文と回答電文とで紐付けする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、地方公共団体などの顧客から、一括で振込依頼が行われる場合がある。仕向金融機関は、一括での振込依頼に基づいて個別に振込依頼を行うが、振込エラーが一度に複数発生する可能性がある。
【0007】
このような場合、特許文献1に記載された方法のように、全ての振込エラーに対して振込依頼顧客に個別に後処理内容を確認して組戻を行う方法では、金融機関および顧客の双方に、振込対応に対する多大な負荷がかかってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、振込依頼に対して複数の振込エラーが発生した場合でも、顧客に対する組戻の負荷を低減できる振込管理システム、振込管理方法および振込管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による脅振込管理システムは、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信する受信部と、顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、顧客の組戻資金を集計する集計部とを備え、集計部が、口座入金不能を示す同一の顧客による複数の電文を受信した場合、最初に受信した電文が示す振込依頼の組戻資金のみを、その顧客の別段口座に入金することを特徴とする。また、本発明による他の脅振込管理システムは、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信する受信部と、顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、顧客の組戻資金を集計する集計部とを備え、集計部が、受信した電文により特定される振込エラーの原因が、取りまとめ対象として予め定められた振込エラーの原因に合致する場合、その振込エラーが示す振込依頼の組戻資金を別段口座に入金することを特徴とする。
【0010】
本発明による振込管理方法は、コンピュータが、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信し、コンピュータが、顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、顧客の組戻資金を集計し、集計の際、コンピュータが、口座入金不能を示す同一の顧客による複数の電文を受信した場合、最初に受信した電文が示す振込依頼の組戻資金のみを、その顧客の前記別段口座に入金することを特徴とする。また、本発明による他の振込管理方法は、コンピュータが、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信し、コンピュータが、顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、顧客の組戻資金を集計し、集計の際、コンピュータが、受信した電文により特定される振込エラーの原因が、取りまとめ対象として予め定められた振込エラーの原因に合致する場合、その振込エラーが示す振込依頼の組戻資金を別段口座に入金することを特徴とする。
【0011】
本発明による振込管理プログラムは、コンピュータに、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信する受信処理、および、顧客ごとに設けられた別段口座に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、顧客の組戻資金を集計する集計処理を実行させ、集計処理で、口座入金不能を示す同一の顧客による複数の電文を受信した場合、最初に受信した電文が示す振込依頼の組戻資金のみを、その顧客の別段口座に入金させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、振込依頼に対して複数の振込エラーが発生した場合でも、顧客に対する組戻の負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による振込管理システムの第一の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【
図2】電文ごとの明細の出力例を示す説明図である。
【
図4】別段口座を経由した組戻の例を示す説明図である。
【
図5】第一の実施形態の振込管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図6】第一の実施形態の振込管理サーバの動作例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明による振込管理システムの第二の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【
図8】別段口座を経由した組戻の他の例を示す説明図である。
【
図9】第二の実施形態の振込管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明による振込管理システムの概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本発明の振込管理システムは、仕向金融機関のシステムとしても、被仕向金融機関のシステムとしても利用可能である。以下、各金融機関の役割ごとに実施形態を分けて、本発明の振込管理システムを説明する。
【0015】
実施形態1.
図1は、本発明による振込管理システムの第一の実施形態の構成例を示すブロック図である。本実施形態の振込管理システム100は、記憶部10と、振込管理サーバ20と、端末30とを備えている。第一の実施形態の振込管理システム100は、仕向金融機関のシステムとして利用されることを想定したシステムである。振込管理サーバ20は、例えば、金融機関ごとに設けられる。
【0016】
記憶部10は、各種情報を記憶する記憶装置である。記憶部10は、例えば、勘定系ホストコンピュータ(図示せず)に設けられ、勘定系ホストコンピュータが、振込管理サーバ20および端末30と、通信可能に接続される。
【0017】
記憶部10は、各種情報を記憶する記憶装置である。本実施形態の記憶部10は、別段口座11を記憶する。別段口座11は、一時的な資金や預り金を保管するための口座であり、各金融機関が顧客ごとに予め開設する口座である。
【0018】
振込管理サーバ20は、記憶部22と、エラー受信部23と、エラー仕分部24と、出力部25とを含む。
【0019】
記憶部22も、各種情報を記憶する記憶装置である。本実施形態の記憶部22も、顧客マスタ12を記憶する。本実施形態の顧客マスタ12は、振込依頼を行う顧客の情報と、その顧客に対して開設された別段口座11を識別する情報とを対応付けた情報を記憶する。さらに、顧客マスタ12は、複数の組戻を一括で行う顧客(以下、一括組戻顧客と記す。)か否かを識別する情報を含む。なお、顧客の情報には、電文に含まれる顧客の情報(依頼人情報)を特定できる名称(例えば、カナ名称)が含まれる。また、顧客マスタ12は、各顧客を一意に特定できる情報を含むように設定される。顧客マスタ12は、例えば、各金融機関の担当者により、予め記憶部22に登録される。
【0020】
なお、通常、地方公共団体などでは、処理単位(部署単位)に依頼人が割り当てられる。例えば、同じ「オオサカフ ザイムキョク」が顧客でも、処理単位が複数の事務所(「AAAAジムショ」、「BBBジムショ」、「CCCCCジムショ」)の場合、顧客マスタ12は、それぞれ異なる振込依頼人として登録される。
【0021】
本実施形態では、仕向金融機関が複数の振込依頼を一つにまとめた一括振込指示を顧客から受信すると、仕向金融機関の勘定系ホストコンピュータが、被仕向金融機関に対し、一括振込指示に基づいて案件ごとに振込依頼を行う。以下の説明では、地方公共団体などの公共機関を顧客として例示し、また、一括振込指示として、公共機関より送信される公金為替の一括振込指示を例示する。ただし、顧客は、公共機関に限られず、一括振込指示も、公金為替の一括振込指示に限定されない。
【0022】
ここで、振込処理が正常に行われず、被仕向金融機関で振込エラーが発生したとする。この場合、被仕向金融機関からの資金返却処理(すなわち、資金組戻)が行われる。一般に、資金組戻は、振込依頼ごとに行われるため、複数の振込依頼に対して振込エラーが発生した場合、被仕向金融機関から、資金組戻を示す複数の電文が仕向金融機関に送信される。
【0023】
エラー受信部23は、振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文(より具体的には、資金組戻を示す電文(付替データ))を、被仕向金融機関から受信する。
【0024】
エラー仕分部24は、エラー受信部23が同一の振込依頼人(顧客)について複数の電文を受信した場合、顧客マスタ12を参照し、その振込依頼人(顧客)が一括組戻の対象とする顧客か否か判断する。その振込依頼人が一括組戻顧客の場合、エラー仕分部24は、その顧客について設けられた別段口座11に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金する。なお、受信した振込エラーが1件の場合、エラー仕分部24は、振込依頼人(顧客)の口座に、直接組戻資金を入金してもよい。
【0025】
エラー仕分部24は、別段口座11に対して、案件ごとに電文が示す組戻資金を入金することで、一括振込指示ごとに顧客の組戻資金を集計する。
【0026】
なお、一般に、受信した複数の電文に含まれる組戻資金を単純に取りまとめることはできない。例えば、受信した電文が示す組戻資金の情報を一時的にデータベースに保存したとしても、その保存した情報に基づいて組戻資金を単純に取りまとめることはできない。このような取りまとめができないのは、以下の理由による。
【0027】
例えば、1万円と5万円の2件の振込依頼が、それぞれ振込エラーとされたとする。この場合、振込エラーは、それぞれ、1万円の振込エラーと5万円の振込エラーの2件の案件として扱われる。この案件は、それぞれ別の案件として処理することが求められており、別の金額として扱えないようにガードがかけられている。言い換えると、1万円の振込エラーは、1万円として入金するか返金するかのいずれかで対応しなければならない。そのため、1万円の振込エラーと5万円の振込エラーが存在するからと言って、直ちに、6万円の用途に使うことはできない。1万円の振込エラーと5万円の振込エラーを6万円の用途に使ってしまった場合、各振込エラーがどのように処理されたのか不明になってしまうからである。
【0028】
そこで、本実施形態では、組戻資金を返金するための口座として、金融機関で別段口座11を予め開設し、エラー仕分部24は、その別段口座11に案件ごとの電文が示す組戻資金を入金する。別段口座11に各案件の組戻資金を入金することで、各案件を処理が完了した案件として扱えるため、各案件を取りまとめることが可能になる。
【0029】
また、このような取りまとめ処理を勘定系ホストコンピュータで実現することも考えられる。しかし、勘定系ホストコンピュータにこのような処理を組み込むのは困難な場合も多い。一方、本実施形態では、勘定系ホストコンピュータとは別に設けられる振込管理サーバ20で組戻資金を取りまとめることができるため、既存のシステムへの影響を抑えつつ、組戻の後処理を簡易にすることが可能になる。
【0030】
なお、振込依頼人が一括組戻顧客でない場合、エラー仕分部24は、振込エラーに対して個別に対応すべく、振込エラーの内容を端末30に通知する。その際、エラー仕分部24は、入金不能になった案件を確認するための明細を、後述する出力部25に出力させてもよい。
【0031】
出力部25は、振込エラーになった振込依頼に関する各種情報を出力する。出力部25は、例えば、振込エラーの取りまとめ結果として、別段口座11に入金した電文ごとの明細を出力してもよい。顧客の元に返却される組戻資金は集計された金額になっているため、出力部25が、別段口座11に入金した電文ごとの明細を出力することで、顧客が組戻の内訳を確認できる。また、出力部25は、振込エラーに対して個別に対応するため、受信票や入金不能の理由などを記載した作業用明細を出力してもよい。
【0032】
図2は、別段口座に入金した電文ごとの明細の出力例を示す説明図である。
図2に例示する明細は、振込時刻、振込先、振込エラーの原因、および、組戻金を含む明細を、振込依頼人単位で出力した例である。
【0033】
また、
図3は、受信票の出力例を示す説明図である。
図3に例示する受信票は、振込エラーになった場合に出力される帳票の一例であり、振込電文の内容(例えば、振込金額や出金口座など)や、振込エラーになった原因(「受取人名不一致」)などが含まれる。出力部25は、
図2および
図3に例示する明細を画面に表示してもよく、帳票として出力してもよい。
【0034】
なお、上記説明では、組戻を取りまとめる対象や明細の出力対象が、一括振込指示の案件である場合を例示した。ただし、組戻を取りまとめる対象および明細の出力対象は、一回の一括振込指示の案件に限定されない。組戻や明細の出力は、一括振込指示の単位だけでなく、一定期間に他行へ送付した単位(例えば、同日)であってもよく、一定期間に他行から返却された単位であってもよい。
【0035】
また、同日に送金を依頼した複数の案件が存在する場合、出力部25は、一括振込指示の案件と、同日に送金を依頼した複数の案件とを取りまとめればよい。例えば、顧客が8月20日の午前中に一括振込依頼を行い、午後にも別の一括振込依頼を行ったとする。この場合、出力部25は、午前と午後の一括振込の依頼の案件について、一つに取りまとめればよい。
【0036】
なお、不能になった案件が複数の日にまたがっていても、出力部25は、返却を行う日までの案件を一つにまとめて処理を行う。例えば、他行に対して1日に100件送付し、2日に50件送付したとする。ただし、他行が1日に処理した案件の不能も2日に返却した場合、出力部25は、1日の不能の案件と、2日の不能の案件とを取りまとめる。この場合、明細も一種類になる。
【0037】
端末30は、表示部31と、制御部32とを含む。端末30は、各金融機関の担当者による操作に従って、振込エラーに対する処理を行う端末である。
【0038】
表示部31は、制御部32の制御に応じて、各種情報を表示する。表示部31は、例えば、ディスプレイ装置などにより実現される。
【0039】
制御部32は、エラー仕分部24から通知された振込エラーの内容を表示部31に表示する。そして、制御部32は、表示された振込エラーに対する担当者の各種操作を受け付ける。制御部32は、例えば、顧客の口座に対して、直接組戻資金を入金してもよい。また、顧客の別段口座11が存在する場合、制御部32は、その顧客の別段口座11に対して組戻資金を入金してもよい。
【0040】
また、制御部32は、操作者の指示に応じて、別段口座11に入金されている組戻資金をまとめて、顧客の口座に入金してもよい。このとき、制御部32は、別段口座11に入金されている全ての組戻資金をまとめて顧客の口座に入金してもよいし、一括振込指示ごとに組戻資金をまとめて顧客の口座に入金してもよい。ただし、一括入金の対象も、一括振込指示によるものに限定されない。
【0041】
図4は、別段口座を経由した組戻の例を示す説明図である。
図4に示す例では、自行の仕向金融機関F1に、振込管理サーバ20と、端末30(エントリ端末)と、勘定系ホストコンピュータ40とが設けられている。顧客である公共機関F3から一括振込指示を受信すると、勘定系ホストコンピュータ40が、他行の被仕向金融機関F2に対して公金為替の振込電文41を送信する。そして、被仕向金融機関F2で振込エラーが発生したとする。
【0042】
被仕向金融機関F2において、振込エラーが、例えば、照会不要または依頼人の要望により組戻になったとする。他行の被仕向金融機関F2より組戻があった公金為替の付替データ42を振込管理サーバ20(より具体的には、エラー受信部23)が受信すると、エラー仕分部24は、対象依頼人(公共機関)の顧客別の別段口座11に自動入金43を行い、返却資金を取りまとめる。
【0043】
また、エラー仕分部24は、取りまとめ対象にならなかった付替データを、エントリ端末に通知する。また、出力部25は、入金不能になった案件の明細44を出力する。仕向金融機関の担当者は、エントリ端末を介して、別段口座11への組戻資金の入金45が可能である。その後、担当者の指示に応じて、取りまとめられた資金46が公共機関F3に返却される。
【0044】
なお、
図4では、被仕向金融機関F2が他行である場合を例示したが、被仕向金融機関F2は自行であってもよい。
【0045】
エラー受信部23と、エラー仕分部24と、出力部25とは、プログラム(振込管理プログラム)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、プログラムは、振込管理サーバ20の記憶部22に記憶され、CPUは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、エラー受信部23、エラー仕分部24および出力部25として動作してもよい。また、エラー受信部23と、エラー仕分部24と、出力部25とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。
【0046】
次に、本実施形態の振込管理システムの動作を説明する。
図5は、本実施形態の振込管理システム100の動作例を示すフローチャートである。
【0047】
仕向金融機関の勘定系ホストコンピュータが、顧客である公共機関から一括振込指示を受信する(ステップS11)。勘定系ホストコンピュータは、顧客による一括振込指示に基づいて振込依頼を案件ごとに行う(ステップS12)。振込管理サーバ20(より具体的には、エラー受信部23)は、被仕向金融機関から振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく複数の電文を受信する(ステップS13)。
【0048】
振込管理サーバ20(より具体的には、エラー仕分部24)は、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を、顧客ごとに設けられた別段口座11に入金する(ステップS14)。端末30(より具体的には、制御部32)は、別段口座11に入金された組戻資金をまとめて顧客である公共機関の口座に一括で入金する(ステップS15)。
【0049】
図6は、本実施形態の振込管理サーバ20の動作例を示すフローチャートである。エラー受信部23は、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信する(ステップS21)。エラー仕分部24は、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を、顧客ごとに設けられた別段口座11に入金して、顧客の組戻資金を集計する(ステップS22)。
【0050】
以上のように、本実施形態では、エラー受信部23が、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文を受信する。そして、エラー仕分部24が、顧客ごとに設けられた別段口座11に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、顧客の組戻資金を集計する。よって、振込依頼に対して複数の振込エラーが発生した場合でも、顧客に対する組戻の負荷を低減できる。
【0051】
実施形態2.
次に、本発明による振込管理システムの第二の実施形態を説明する。
図7は、本発明による振込管理システムの第二の実施形態の構成例を示すブロック図である。本実施形態の振込管理システム200は、記憶部10と、振込管理サーバ50と、端末30とを備えている。第二の実施形態の振込管理システム200は、被仕向金融機関のシステムとして利用されることを想定したシステムである。なお、端末30の内容は、第一の実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態では、振込管理システム200は、顧客からの一括振込指示を受信した仕向金融機関から、複数の振込依頼を受信する。以下の説明でも、地方公共団体などの公共機関を顧客として例示し、また、一括振込指示として、公共機関より送信される公金為替の一括振込指示を例示する。例えば、公共機関から自行の仕向店に一括振込指示が行われ、自行内の他店を被仕向店として複数の振込依頼が行われる状況が想定される。
【0053】
ここでは、振込依頼を受信した勘定系ホストコンピュータで複数の振込エラーが発生したとする。本実施形態では、複数発生した振込エラーに対する資金返却処理(すなわち、資金組戻)を取りまとめる方法を説明する。
【0054】
振込管理サーバ50は、記憶部52と、エラー受信部53と、エラー仕分部54と、出力部55とを含む。
【0055】
第一の実施形態と同様に、振込管理サーバ50は、例えば、金融機関ごとに設けられる。また、記憶部10も、第一の実施形態と同様に、別段口座11を記憶する。別段口座11の内容は、第一の実施形態と同様である。また、記憶部52は、第一の実施形態と同様に、顧客マスタ12を記憶する。
【0056】
エラー受信部53は、自行に対して行われた振込依頼に対する振込エラーを、例えば、自行の勘定系ホストコンピュータより受信する。ここで受信する振込エラーを示す電文のことを、被仕向エラー電文と記すこともある。
【0057】
また、被仕向エラー電文が、振込エラーが発生した場合に、顧客に対して振込エラーに対する照会が不要か否か識別する情報(以下、照会要否フラグと記す。)を含んでいてもよい。照会要否フラグは、後述するエラー仕分部54が、その顧客に対する振込エラーを取りまとめるか否か判断する際に用いられる。
【0058】
エラー仕分部54は、第一の実施形態と同様、同一の振込依頼人(顧客)について複数の被仕向エラー電文を受信した場合、顧客マスタ12を参照し、その振込依頼人(顧客)が一括組戻顧客か否か判断する。その振込依頼人が一括組戻顧客の場合、エラー仕分部54は、その顧客について設けられた別段口座11に、受信した各被仕向エラー電文が示す振込依頼の組戻資金を入金する。エラー仕分部54は、別段口座11に対して、案件ごとに被仕向エラー電文に対する組戻資金を入金することで、一括振込指示ごとに顧客の組戻資金を集計する。
【0059】
なお、被仕向エラー電文が示す振込依頼の組戻資金を別段口座11に入金する前提として、エラー仕分部54は、被仕向エラー電文に含まれる照会要否フラグに「照会不要」が設定されている顧客のみを対象としてもよい。すなわち、エラー仕分部54は、照会不要の顧客である場合に、振込エラーが示す振込依頼の組戻資金を別段口座11に入金してもよい。
【0060】
また、被仕向エラー電文には、振込エラーになった原因が含まれる。そこで、取りまとめ対象とする振込エラーの原因を予め定めておき、エラー仕分部54は、その原因に合致する振込エラーを取りまとめ対象としてもよい。例えば、取りまとめ対象とする振込エラーの原因を「受取人名不一致」と定めておいた場合、エラー仕分部54は、振込エラーの原因が「受取人名不一致」である振込エラーを取りまとめ対象としてもよい。
【0061】
なお、予め定められる振込エラーの原因は1つに限定されず、また、振込エラーの原因も「受取人名不一致」に限定されない。振込エラーの原因として、他にも、「科目相違」、「口座番号相違」、「該当口座無し」などが挙げられる。なお、エラー仕分部54は、取りまとめ対象として登録された依頼人名(すなわち、一括組戻顧客)であれば、振込エラーの原因に関わらず、振込エラーを取りまとめてもよい。
【0062】
出力部55は、第一の実施形態と同様、入金した案件ごとの明細や、作業用明細を出力してもよい。また、出力部55は、取りまとめた組戻資金の情報を自動で営業店に転送してもよい。
【0063】
図8は、別段口座を経由した組戻の他の例を示す説明図である。
図8に示す例では、自行の金融機関F4に、振込管理サーバ50と、端末30(エントリ端末)と、勘定系ホストコンピュータ60とが設けられている。ここで、顧客である公共機関F3から、例えば、本支店間の取引として、公金に関する振込電文47を勘定系ホストコンピュータ60が受信したときに、振込エラーが発生したとする。
【0064】
このとき、勘定系ホストコンピュータ60が振込管理サーバ50に対して、複数の被仕向エラー電文48を送信すると、エラー仕分部54は、対象依頼人(公共機関)の顧客別の別段口座11に自動入金43を行い、返却資金を取りまとめる。また、出力部55は、取りまとめた組戻資金の情報49を自動で営業店に転送してもよい。
【0065】
エラー仕分部54は、取りまとめ対象にならなかった付替データを、エントリ端末に通知する。また、出力部55は、入金不能になった案件の明細44を出力する。仕向金融機関の担当者は、エントリ端末を介して、別段口座11への組戻資金の入金45が可能である。その後、担当者の指示に応じて、取りまとめられた資金46が公共機関F3に返却される。
【0066】
エラー受信部53と、エラー仕分部54と、出力部55とは、プログラム(振込管理プログラム)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。また、エラー受信部53と、エラー仕分部54と、出力部55とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。
【0067】
次に、本実施形態の振込管理システムの動作を説明する。
図9は、本実施形態の振込管理システム200の動作例を示すフローチャートである。
【0068】
被仕向金融機関の勘定系ホストコンピュータが、仕向金融機関から案件ごとの振込依頼を受信する(ステップS31)。振込管理サーバ50(より具体的には、エラー受信部53)は、勘定系ホストコンピュータから複数の振込エラーに基づく被仕向エラー電文を受信する(ステップS32)。
【0069】
振込管理サーバ50(より具体的には、エラー仕分部54)は、受信した各被仕向エラー電文が示す振込依頼の組戻資金を、顧客ごとに設けられた別段口座11に入金する(ステップS33)。端末30(より具体的には、制御部32)は、別段口座11に入金された組戻資金をまとめて顧客である公共機関の口座に一括で入金する(ステップS34)。
【0070】
なお、本実施形態の振込管理サーバ50の動作は、
図6に例示する第一の実施形態の振込管理サーバ20の動作と同様である。本実施形態の構成であっても、第一の実施形態と同様、振込依頼に対して複数の振込エラーが発生した場合でも、顧客に対する組戻の負荷を低減できる。
【0071】
次に、第二の実施形態の振込管理システムの変形例を説明する。第二の実施形態では、複数の振込エラーが発生した場合に、全ての振込エラーに対する組戻資金を別段口座11に入金する方法を説明した。
【0072】
ところで、金融機関の業務において、先日付振込が行われる場合がある。そして、この先日付振込に対する取消処理(先日付取消処理)が、後日行われることがある。具体的には、3日後の日付を指定して先日付振込が行われた後、振込内容を訂正(例えば、振込金額の変更)した振込処理(以下、訂正振込と記す。)が行われることがある。
【0073】
この場合、すでに行われた先日付振込は有効であるため、振込先金融機関で、先日付振込をエラーにすべく、振込先の口座の入金停止処理が行われる。このとき、先日付振込と訂正振込の2件の振込依頼が行われているが、入金停止処理が行われているため、2件の振込依頼は、いずれも振込エラーになる。
【0074】
この場合、1件目の振込依頼については、振込エラーとして組戻を行い、2件目の振込依頼については、組戻を行わずに、金融機関で処理を継続することが好ましい。入金停止処理が行われた口座に対して振込依頼を行った場合、通常「口座入金不能」を示すエラーが返却される。
【0075】
そこで、エラー仕分部54は、口座入金不能を示す同一の顧客による複数の振込エラーを受信した場合、最初に受信した被仕向エラー電文が示す振込依頼の組戻資金のみを、その顧客の別段口座11に入金する。そして、エラー仕分部54は、残りの被仕向エラー電文の内容を端末30に通知する。端末30に通知された被仕向エラー電文が示す振込依頼は、各金融機関の担当者によって、個別に対応が行われる。
【0076】
このように、エラー仕分部54が、最初に受信した振込エラーに対してのみ組戻を行うことで、顧客に対して不要な手続を強いることを抑制できる。
【0077】
次に、本発明の概要を説明する。
図10は、本発明による振込管理システムの概要を示すブロック図である。本発明による振込管理システム80(例えば、振込管理システム100、振込管理システム200)は、顧客による一括振込指示に基づいて案件ごとに行われた振込依頼に対して発生した振込エラーに基づく電文(例えば、付替データ42、被仕向エラー電文48)を受信する受信部81(例えば、エラー受信部23、エラー受信部53)と、顧客ごとに設けられた別段口座(例えば、別段口座11)に、受信した各電文が示す振込依頼の組戻資金を入金して、顧客の組戻資金を集計する集計部82(例えば、エラー仕分部24、エラー仕分部54)とを備えている。
【0078】
そのような構成により、振込依頼に対して複数の振込エラーが発生した場合でも、顧客に対する組戻の負荷を低減できる。
【0079】
また、集計部82は、顧客が一括組戻の対象である場合に、その顧客の別段口座に組戻資金を入金してもよい。
【0080】
また、集計部82は、口座入金不能を示す同一の顧客による複数の電文を受信した場合、最初に受信した電文が示す振込依頼の組戻資金のみを、その顧客の別段口座に入金してもよい。そのような構成によれば、顧客に対して不要な手続を強いることを抑制できる。
【0081】
また、集計部82は、受信した電文により特定される振込エラーの原因が、取りまとめ対象として予め定められた振込エラーの原因(例えば、受取人名不一致、など)に合致する場合、その振込エラーが示す振込依頼の組戻資金を別段口座に入金してもよい。
【0082】
また、振込管理システム80は、別段口座に入金した電文ごとの明細を顧客ごとに出力する出力部(例えば、出力部25、出力部55)を備えていてもよい。顧客の元に返却される組戻資金は集計された金額になっているため、出力部が、明細を出力することで、顧客が組戻の内訳を確認できる。
【符号の説明】
【0083】
10 記憶部
11 別段口座
12 顧客マスタ
20,50 振込管理サーバ
22,52 記憶部
23,53 エラー受信部
24,54 エラー仕分部
25,55 出力部
30 端末
31 表示部
32 制御部
100,200 振込管理システム