(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20230808BHJP
A61B 1/05 20060101ALI20230808BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230808BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61B1/00 523
A61B1/00 715
A61B1/05
G02B23/24 B
G02B23/26 C
(21)【出願番号】P 2019121766
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 里紗
(72)【発明者】
【氏名】河野 治彦
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/013349(WO,A2)
【文献】特開2013-215506(JP,A)
【文献】国際公開第00/57770(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
G02B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部の軸線に沿う方向に移動自在に支持される押圧部材と、
前記押圧部材を前記先端部の先端に向かって付勢する付勢部材と、
基端が前記押圧部材に可動自在に連結される連接部材と、
レンズユニットを有し、前記連接部材の先端に可動自在に連結され、
前記付勢部材に付勢された前記押圧部材の移動に応じて前記レンズユニットの光軸が前記軸線と同方向となる向きに
付勢されて回転配置される撮像ユニットと、を備える、
内視鏡。
【請求項2】
前記押圧部材のストロークを所定の範囲で規制する進退規制部、を更に備える、
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記撮像ユニットは、前記軸線に直角に交差する回転中心で回転自在となって前記先端部の内方で支持される、
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記押圧部材に連結されて前記押圧部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記軸線に沿う方向に牽引する引っ張り部材、を更に備える、
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記撮像ユニットが直視の時、前記押圧部材の少なくとも一部が、前記軸線に沿う方向で投影された前記撮像ユニットの投影面積に重なる、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記押圧部材が前記付勢部材の付勢力に抗して前記引っ張り部材により引っ張られた時に、前記撮像ユニットが前記押圧部材のストロークに応じた任意の回転角度で回転する、
請求項4に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記押圧部材が前記引っ張り部材により引っ張られない時に、前記連接部材は、前記付勢部材の付勢力に基づき、前記撮像ユニットを直視方向に支持する、
請求項4に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記引っ張り部材が破断した時に、前記連接部材は、前記付勢部材の付勢力に基づき、前記撮像ユニットを直視方向に回転移動させて支持する、
請求項4に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
挿入部先端に収容された固体撮像素子を回動自在に保持し、挿入部を湾曲させることなく視野方向の変更を可能とした内視鏡が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この内視鏡は、被写体像を撮像する撮像ユニットと、撮像ユニットを保持する撮像用ホルダと、撮像用ホルダに対して先端側が互いに対角位置に連結された一対の駆動用ロッドをそれぞれ含む2系統の駆動力伝達機構と、駆動用ロッドの基端部に配置され、各駆動力伝達機構における少なくとも一方の駆動用ロッドを進退駆動する駆動装置と、駆動装置のベース部材側から撮像ユニットに向けて延設された支持シャフトと、支持シャフトに取り付けられ、駆動用ロッドの中間部を支持する中継用ホルダと、撮像ユニット、撮像用ホルダ、駆動力伝達機構、支持シャフトおよび中継用ホルダの少なくとも一部を覆うカバー部材と、を備える。各駆動力伝達機構における他方の駆動用ロッドは、駆動装置によって駆動されることなく、その基端部が弾性部材を介してベース部材側に連結され、撮像ユニットは、一方の駆動用ロッドの進退駆動により互いに異なる2軸周りを回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような内視鏡において、回転機構は、複雑であるとその機構を収容するためのスペースが必要となり、その結果、最外径の小型化が困難となる。また、複雑な回転機構は、部品の破損等による作動不良が生じやすい。この場合、内視鏡は、撮像ユニットが直視姿勢以外の途中を向いて回転停止(例えば側視姿勢で停止)する可能性がある。内視鏡は、このような直視以外の向きで停止する作動不良が発生すると、周辺の画像が確認できなくなり、挿入箇所(例えば被検体の体腔)からの取り出し時の安全性に欠けるという課題が生じる。
【0006】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、容易に小型化でき、体腔等からの取り出し時における安全性を高める内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、先端部の軸線に沿う方向に移動自在に支持される押圧部材と、前記押圧部材を前記先端部の先端に向かって付勢する付勢部材と、基端が前記押圧部材に可動自在に連結される連接部材と、レンズユニットを有し、前記連接部材の先端に可動自在に連結され、前記付勢部材に付勢された前記押圧部材の移動に応じて前記レンズユニットの光軸が前記軸線と同方向となる向きに付勢されて回転配置される撮像ユニットと、を備える、内視鏡を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、容易に小型化でき、体腔等からの取り出し時における安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る内視鏡の先端部を透視した要部斜視図
【
図4】
図3に示したリンク機構の押圧ロッドが引かれた時の側面図
【
図5】押圧ロッドが引かれた時の先端部を透視した要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る内視鏡の構成および作用を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る内視鏡11の先端部13を透視した要部斜視図である。実施の形態1に係る内視鏡11は、押圧ロッド15と、進退規制部17(
図2参照)と、連接ロッド19と、撮像ユニット21とを主要な構成として有している。
【0012】
実施の形態1において、内視鏡11は、医療用あるいは工業用として用いられる硬性鏡であり、本体部(図示略)と、この本体部から前方に延設された挿入部23とを主として備える。挿入部23は、小径(例えば、外径8mm)でかつ容易に撓むことのない高い剛性を有し、図示しない被写体(例えば、患者の体腔等)内に挿入される。
【0013】
挿入部23の先端は、挿入部23と同一外径で形成される筒状の先端部13となる。先端部13は、筒状の外殻部25(
図2参照)を有し、この外殻部25が挿入部23と同一外径となって、挿入部23と連続する。先端部13の先端には、撮像窓27が設けられる。撮像窓27は、円筒面の一部分である凸曲面で形成される。この撮像窓27の円筒面を形成する円筒は、中心が撮像ユニット21の後述する回転中心と一致する。先端部13には、この撮像窓27の背部に、撮像ユニット21が配置される。
【0014】
撮像窓27の脇には、照明窓が撮像窓27の湾曲面に沿う方向に複数配置される。実施の形態1では、照明窓が、直視用の第1照明窓29、斜視用の第2照明窓31、側視用の第3照明窓33からなる。第1照明窓29、第2照明窓31および第3照明窓33のそれぞれの背部には、照明光を出射するLED(Light Emission Diode)35が配置されている。
【0015】
挿入部23の先端には、挿入部23の内周面に沿う円弧状の輪郭を有する隔壁部37が設けられる。隔壁部37は、挿入部23と先端部13とに渡って配置されている。この隔壁部37の直径方向両端からは、先端部13の軸線39に沿う方向で先端に向かって一対の平行な支持アーム41が突出している。なお、本明細書中、軸線39とは、柱状部材あるいは筒状部材の中心を軸方向に沿って通る線をいう。
【0016】
押圧ロッド15は、筒状の先端部13の内方でこの先端部13の軸線39に沿う方向に移動自在に支持される。押圧ロッド15は、隔壁部37に穿設された貫通孔を貫通することにより軸線39に沿う方向に移動自在に支持される。押圧ロッド15の先端には、部分的に環状(例えばDカット形状)のフランジ部43が一体に形成される。隔壁部37の前面には、凹部45が形成される。上記の貫通孔は、この凹部45の底(前面)に開口する。凹部45の貫通孔から突出した押圧ロッド15は、外周に付勢部材が装着される。実施の形態1において、付勢部材は、例えば圧縮コイルばね47である。圧縮コイルばね47は、圧縮された状態で凹部45の底とフランジ部43との間に配置される。これにより、押圧ロッド15は、圧縮コイルばね47により先端部13の先端に向かって付勢されている。
【0017】
図2は、
図1の側面図である。進退規制部17は、押圧ロッド15のストロークを所定の範囲で規制する。実施の形態1において、進退規制部17は、切欠部49と、ストッパ板51とからなる。切欠部49は、押圧ロッド15の外周の一部分を切り欠くことにより、押圧ロッド15の半径方向内側に凹んで形成される。切欠部49は、側面視で軸線39に沿う方向に長い矩形状に形成される。切欠部49は、前側が後退規制面53となり、後側が前進規制面55となる。
【0018】
ストッパ板51は、基端が挿入部23または先端部13の内方における構造部材(例えば隔壁部37)に固定され、先端が切欠部49に配置される。
【0019】
進退規制部17は、圧縮コイルばね47の付勢力により前側へ移動する押圧ロッド15を、前進規制面55にストッパ板51を当接することにより、それ以上の前進(つまり、前進規制面55のストッパ板51より前側への進行)を規制する。また、進退規制部17は、圧縮コイルばね47の付勢力に抗して後側へ移動する押圧ロッド15を、後退規制面53にストッパ板51を当接することにより、それ以上の後退(つまり、後退規制面53のストッパ板51より後側への後退)を規制する。
【0020】
なお、進退規制部17は、上記した切欠部49およびストッパ板51に限定されない。進退規制部17は、押圧ロッド15のストロークを所定の範囲で規制する機構であれば、その他の部位、部材により構成されても良い。
【0021】
連接ロッド19は、基端が押圧ロッド15に可動自在に連結される。連接ロッド19は、一対がフランジ部43の両側に連結される。押圧ロッド15と連接ロッド19とを一定の相対運動で可動自在に連結する構造としては、撮像ユニット21の回転中心57と同方向の例えば連接ピン59を中心としたまわり対偶とすることができる。なお、押圧ロッド15と連接ロッド19とを可動自在に連結する構造は、これに限定されない。即ち、まわり対偶に代えて、球面対偶等が用いられても良い。
【0022】
撮像ユニット21は、レンズユニット61を有して軸線39に直角に交差する回転軸63の回転中心57で回転自在となって先端部13の内方で支持される。なお、本明細書中、直交とは、2つの直線が直角に交わることをいう。また、直角に交差とは、離間した2つの直線が離間方向の投影面で直角に交わる位置関係をいう。実施の形態1において、撮像ユニット21は、一対の支持アーム41の先端に回転自在に支持される。
【0023】
撮像ユニット21は、カメラ本体65と、レンズユニット61とを有する。レンズユニット61を通過した光(言い換えると、レンズユニット61によって結像された光)は、カメラ本体65の後端面に設けられたイメージセンサ67の撮像面において受光されて撮像される。
【0024】
イメージセンサ67は、撮像素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device)もしくはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)と、その撮像素子の光入射面側に撮像素子の保護用のセンサカバーガラスとが一体に成形されたものとして構成される。イメージセンサ67は、カメラ本体65に取り付けられることで、レンズユニット61の中心に撮像面が位置決めされる。
【0025】
撮像ユニット21は、通常時、連接ロッド19の先端に可動自在に連結されてレンズユニット61の光軸69が軸線39と同方向となる向きに回転配置されている。連接ロッド19と撮像ユニット21とを可動自在に連結する構造としては、撮像ユニット21の回転中心57と異なる位置で同方向となる例えば連接ピン71を中心としたまわり対偶とすることができる。なお、連接ロッド19と撮像ユニット21とを可動自在に連結する構造は、これに限定されない。即ち、まわり対偶に代えて、球面対偶等が用いられても良い。
【0026】
内視鏡11は、押圧ロッド15に連結されて押圧ロッド15を圧縮コイルばね47の付勢力に抗して軸線39に沿う方向に牽引する引っ張り部材73を有する。本実施の形態1において、引っ張り部材73は、ロッドである。
【0027】
なお、内視鏡11は、引っ張り部材73が、ワイヤであっても良い。
【0028】
内視鏡11は、撮像ユニット21が直視の時、押圧ロッド15の少なくとも一部が、軸線39に沿う方向で投影された撮像ユニット21の投影面積に重なる。なお、ここで投影面積の「投影」とは、図学上での投影であり、実際の照射光による投影画像ではない。即ち、投影面積は、直視時における撮像ユニット21の正(前)面を画面と平行におき、画面に垂直な投影線によって画面に写し出される投影面(直投影)の面積をいう。内視鏡11では、押圧ロッド15の少なくとも一部が撮像ユニット21の投影面積に重なる。つまり、押圧ロッド15の輪郭の一部が常に投影面積に重なる。また、「少なくとも一部」とは、押圧ロッド15の輪郭の全てが投影面積に重なってもよい意である。
【0029】
本実施の形態1において、内視鏡11は、押圧ロッド15が、引っ張り部材73により圧縮コイルばね47の付勢力に抗して所定の範囲のストロークで引っ張られた時に、撮像ユニット21が90°の回転角度で回転する。
【0030】
次に、実施の形態1に係る内視鏡11の作用を説明する。
【0031】
実施の形態1に係る内視鏡11は、先端部13の軸線39に沿う方向に移動自在に支持される押圧部材(例えば押圧ロッド15)を有する。内視鏡11は、押圧部材を先端部13の先端に向かって付勢する付勢部材(例えば圧縮コイルばね47)を有する。内視鏡11は、基端が押圧部材に可動自在に連結される連接部材(例えば連接ロッド19)を有する。内視鏡11は、レンズユニット61を有し、連接部材の先端に可動自在に連結され、押圧部材の移動に応じてレンズユニット61の光軸が軸線39と同方向となる向きに回転配置される撮像ユニット21を有する。
【0032】
より具体的には、実施の形態1に係る内視鏡11は、筒状の先端部13の内方でこの先端部13の軸線39に沿う方向に移動自在に支持され、付勢部材により先端部13の先端に向かって付勢される押圧ロッド15を有する。内視鏡11は、押圧ロッド15のストロークを所定の範囲で規制する進退規制部17を有する。内視鏡11は、基端が押圧ロッド15に可動自在に連結される連接ロッド19を有する。内視鏡11は、レンズユニット61を有して軸線39に直角に交差する回転中心57で回転自在となって先端部13の内方で支持され、連接ロッド19の先端に可動自在に連結されてレンズユニット61の光軸69が軸線39と同方向となる向きに回転配置される撮像ユニット21を有する。
【0033】
図3は、
図2に示したリンク機構75の側面図である。実施の形態1に係る内視鏡11では、筒状の先端部13の内方に、この先端部13の軸線39に沿う方向に移動自在となった押圧ロッド15が支持される。押圧ロッド15は、軸線39に沿う方向に長いロッドで形成される。押圧ロッド15は、付勢部材により先端部13の先端に向かって付勢される。付勢部材は、例えば圧縮することによりエネルギーを蓄積する圧縮コイルばね47を用いることができる。なお、付勢部材は、押圧ロッド15を先端に向かって付勢するものであれば、引っ張りコイルばねであっても良い。
【0034】
この押圧ロッド15は、軸線39に沿う方向の進退移動(即ち、ストローク)が、進退規制部17により所定の範囲に規制される。つまり、圧縮コイルばね47により先端に付勢された押圧ロッド15は、進退規制部17によりそれ以上先端への移動が不能となって、予圧がかけられた状態で停止する。
【0035】
図4は、
図3に示したリンク機構75の押圧ロッド15が引かれた時の側面図である。進退規制部17により移動が規制されて停止した押圧ロッド15は、圧縮コイルばね47の付勢力よりも大きい力で、先端と逆方向に引っ張られると、圧縮コイルばね47の付勢力に抗して後方への移動が可能となる。この際、付勢部材は、圧縮コイルばね47の場合、更に圧縮され、押圧ロッド15を先端へ移動させるエネルギー(付勢力)を更に蓄積する。
【0036】
押圧ロッド15には、連接ロッド19の基端が可動自在に連結される。連接ロッド19は、リンク機構75の節となる。
【0037】
先端部13の内方には、連接ロッド19の前方に、レンズユニット61を有した撮像ユニット21が配置される。撮像ユニット21は、先端部13の軸線39に直角に交差する回転中心57で回転自在となって支持される。この撮像ユニット21には、上記した連接ロッド19の先端が上記した回転中心以外の位置で可動自在に連結される。
【0038】
上記のように、押圧ロッド15は、通常時、先端に向かって付勢された状態で停止している。撮像ユニット21は、この押圧ロッド15に、連接ロッド19を介して連結される。撮像ユニット21は、先端に向かって付勢された押圧ロッド15に、連接ロッド19を介して連結されることにより、
図3に示すように、レンズユニット61の光軸69が軸線39と同方向となる向きに回転配置される。従って、撮像ユニット21は、慣性力等により、付勢部材の付勢力よりも大きいモーメントが作用しない限り、レンズユニット61の光軸69が軸線39と同方向となる回転向きに保持された状態を維持する。
【0039】
一方、押圧ロッド15は、圧縮コイルばね47の付勢力よりも大きい力で、先端と逆方向に引っ張られると、後方へ移動する。すると、撮像ユニット21は、連接ロッド19を介して連接ピン71が後方へ移動される。撮像ユニット21は、連接ピン71が引っ張られることにより、回転中心57を中心に回転される。つまり、押圧ロッド15、連接ロッド19、撮像ユニット21は、直線運動を回転運動に変換するリンク機構75を構成している。この場合、押圧ロッド15が直線で往復運動する原動節、撮像ユニット21が従動節、連接ロッド19が媒介節となる。
【0040】
図5は、押圧ロッド15が引かれた時の先端部13を透視した要部斜視図である。撮像ユニット21は、ストロークが進退規制部17により規制されることにより、回転角度を例えば90°程度に設定することができる。なお、撮像ユニット21の回転角度は、進退規制部17によるストロークを変更すれば180°未満の回転角度で任意に設定が可能となる。内視鏡11は、レンズユニット61の光軸69が軸線39と同方向となる向きの時に直視鏡となる。一方、内視鏡11は、押圧ロッド15が引っ張られることにより、撮像ユニット21が90°程度回転された時に側視鏡となる。
【0041】
この内視鏡11では、撮像ユニット21を回転させる原動節(押圧ロッド15)と、媒介節(連接ロッド19)とがほぼ直線状に配置できるので、先端部13を容易に小型化(小径化)ができる。また、押圧ロッド15、圧縮コイルばね47および連接ロッド19の少ない部品点数で簡素なリンク機構75を構成できるので、これによっても容易に小型化が可能となる。
【0042】
内視鏡11は、小型化(特に小径化)の要請により、軸線39に直交する断面内に配置される各部材の断面積が、可能な限り小さく設計される。このため、押圧ロッド15を牽引する引っ張り部材73等も細径であることが望ましい。細径の引っ張り部材73は、破断等の生じるリスクを包含する。
【0043】
内視鏡11では、仮に引っ張り部材73が破断した場合、押圧ロッド15に加えられていた引っ張り力が消失する。すると、押圧ロッド15は、圧縮コイルばね47に蓄積されていたエネルギーにより、先端へ直線移動される。この押圧ロッド15の先端に向かう直線移動は、連接ロッド19を介して撮像ユニット21の回転運動に変換され、レンズユニット61の光軸69が軸線39と同方向となる向き(いわゆる直視方向)に撮像ユニット21を回転させる。これにより、内視鏡11は、引っ張り部材73の破断時、側視鏡から直視鏡へと自動に切り替えられる。
【0044】
その結果、内視鏡11は、直視の向きで停止し、周辺の画像が確認できるようになり、取り出し時の安全性が確保される。つまり、内視鏡11は、引っ張り部材73の破断等により装置が正しく作動しない状況となっても、所謂フェイルセーフ機構により安全が保障されるよう構成されている。従って、実施の形態1に係る内視鏡11によれば、容易に小型化でき、しかも、体腔等からの取り出し時における安全性を高めることができる。
【0045】
また、内視鏡11は、押圧ロッド15に連結されて押圧ロッド15を付勢部材の付勢力に抗して軸線39に沿う方向に牽引する引っ張り部材73を有し、引っ張り部材73が、ロッドである。
【0046】
この内視鏡11では、引っ張り部材73が、ロッドである。ロッドは、押圧ロッド15を軸線39に沿う方向で牽引可能とする。ロッドは、先端部13に連接されて後方に延在する筒状の挿入部23の内方に挿通される。ロッドは、例えば挿入部23の手元側に接続された操作部(図示略)のノブを回転することにより進退が可能となる。この場合、内視鏡11は、医療用や工業用として用いられる硬性鏡となる。硬性鏡は、挿入部23が小径でかつ容易に撓むことのない高い剛性を有し、被写体(例えば、患者の体腔等)内に挿入される。従って、内視鏡11は、押圧ロッド15がロッドにより牽引操作可能となることで視野方向可変硬性鏡を構成することができる。
【0047】
また、内視鏡11は、押圧ロッド15に連結されて押圧ロッド15を付勢部材の付勢力に抗して軸線39に沿う方向に牽引する引っ張り部材73を有し、引っ張り部材73が、ワイヤである。
【0048】
この内視鏡11では、押圧ロッド15が、引っ張り部材73に連結される。引っ張り部材73は、ワイヤからなる。ワイヤは、押圧ロッド15を軸線39に沿う方向で牽引可能とする。ワイヤは、先端部13に連接されて後方に延在する筒状の挿入部23の内方に挿通される。ワイヤは、例えば挿入部23の手元側に接続された操作部のノブを回転することにより進退が可能となる。なお、ワイヤは、外被(シース)により外周が被覆されても良い。この場合、内視鏡11は、医療用や工業用として用いられる軟性鏡となる。軟性鏡は、挿入部23が小径でかつ容易に撓む。また、軟性鏡は、先端部13と操作部の境部に、操作部の湾曲操作用ノブにより屈曲が可能となる湾曲部が設けられても良い。軟性鏡は、被写体(例えば、患者の体腔等)に挿入される。従って、内視鏡11は、押圧ロッド15がワイヤにより牽引操作可能となることで視野方向可変軟性鏡を構成することができる。
【0049】
また、内視鏡11では、撮像ユニット21が直視の時、押圧ロッド15の少なくとも一部が、軸線39に沿う方向で投影された撮像ユニット21の投影面積に重なる。
【0050】
また、この内視鏡11では、撮像ユニット21が直視の時、押圧ロッド15の少なくとも一部が撮像ユニット21の投影面積に重なる。撮像ユニット21の投影面積は、軸線39に沿う方向で撮像ユニット21が投影されて得られる。従って、押圧ロッド15は、投影面積から輪郭が大きく外れる距離で投影面積から離間しなくなる。これにより、内視鏡11は、撮像ユニット21と押圧ロッド15との軸線39に垂直な方向のオフセット量が所定の小さな範囲に抑制され、小径化が容易な構造となる。
【0051】
また、内視鏡11では、押圧ロッド15が、付勢部材(例えば圧縮コイルばね47)の付勢力に抗して引っ張り部材73により引っ張られた時に、撮像ユニット21が押圧ロッド15のストロークに応じた任意(例えば90°)の回転角度で回転する。
【0052】
この内視鏡11では、押圧ロッド15のストロークが進退規制部17により規制されることで、撮像ユニット21の回転角度がストロークに応じた任意の回転角度(例えば90°)に設定される。内視鏡11は、押圧ロッド15が引っ張られることにより、撮像ユニット21が90°回転する。これにより、内視鏡11は、レンズユニット61の光軸69が軸線39と同方向の向きとなる直視鏡と、光軸69が0°~90°の範囲の任意の角度で向けられた側視鏡とに使い分けが可能となる。
【0053】
また、内視鏡11では、押圧ロッド15が引っ張り部材73により引っ張られない時に、連接ロッド19は、付勢部材(例えば圧縮コイルばね47)の付勢力に基づき、撮像ユニット21を直視方向に支持する。
【0054】
この内視鏡11では、内視鏡11を操作する医師等の使用者が引っ張らない時(言い換えると、引っ張り部材73が押圧ロッド15に対して何も力をかけない時)に、連接ロッド19に連結された撮像ユニット21は、付勢部材(例えば圧縮コイルばね47)の付勢力に従って、直視方向を向くように支持される。これにより、内視鏡11は医師等の使用者により引っ張られずに患者の体内に挿入するように押し込まれる間には直視方向を向くので、安全に体内に挿入し易くなる。また、体内に挿入された後でも、医師等の使用者が内視鏡11を引っ張らなければ、撮像ユニット21は直視方向の撮像映像を得ることができる。
【0055】
また、内視鏡11では、引っ張り部材73が破断した時に、連接ロッド19は、付勢部材(例えば圧縮コイルばね47)の付勢力に基づき、撮像ユニット21を直視方向に回転移動させて支持する。
【0056】
この内視鏡11では、仮に引っ張り部材73が破断した場合、押圧ロッド15に加えられていた引っ張り力が消失すると、押圧ロッド15は、圧縮コイルばね47に蓄積されていたエネルギーにより、先端に向かうように直線移動される。この押圧ロッド15の先端に向かう直線移動は、連接ロッド19を介して撮像ユニット21の回転運動に変換される。つまり、レンズユニット61の光軸69が軸線39と同方向となる向き(いわゆる直視方向)に撮像ユニット21を回転させることができる。従って、医師等の使用者は、例えば内視鏡11が体内に挿入された状態であっても、撮像ユニット21を直視方向に維持したまま安全に体内から引き抜くことが可能となる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0058】
例えば、内視鏡は、それぞれが上記したリンク機構により回転する撮像ユニットを2つ備える2眼内視鏡であってもよい。2眼内視鏡によれば、それぞれの撮像ユニットからの画像信号に対し、種々の画像処理を施すことにより、距離測定処理、立体画像処理、被写界深度強調処理、ハイブリットズーム処理、波長特性強調処理等を可能とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示は、容易に小型化でき、体腔等からの取り出し時における安全性を高める内視鏡として有用である。
【符号の説明】
【0060】
11 内視鏡
13 先端部
15 押圧ロッド
17 進退規制部
19 連接ロッド
21 撮像ユニット
39 軸線
47 圧縮コイルばね
57 回転中心
61 レンズユニット
69 光軸
73 引っ張り部材(ロッド、ワイヤ)