(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】移動体システム
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B61B13/00 G
B61B13/00 L
(21)【出願番号】P 2019153908
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】李 周浩
(72)【発明者】
【氏名】里岡 樹
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-092953(JP,A)
【文献】特開2012-040961(JP,A)
【文献】特開2011-251632(JP,A)
【文献】特開2009-257068(JP,A)
【文献】特開2014-015060(JP,A)
【文献】特開2019-016432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0256302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 3/02
B61B 13/00-13/04
B62D 57/00-57/04
B65G 35/00-35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面の軌道上に設けられた複数の突起と、
前記軌道に沿って移動する移動体と、を備え、
前記移動体は、
レールと、
前記移動体を進行方向に移動させる移動部と、を有し、
前記レールは、
前記突起に係合可能であって、前記突起からの脱落を防止する係合部と、
前記軌道に沿った移動に伴う前記突起と前記レールとの相対移動をガイドするガイド部と、を含
み、
前記移動部は、前記進行方向への推進力を発生するよう回転するローラを備え、
前記ローラは、前記推進力を得るため、前記レール外において前記対象面に接触しながら回転するように前記移動体に設けられている
移動体システム。
【請求項2】
前記レールは、前記係合部によって同時に複数の前記突起と係合可能である
請求項1に記載の移動体システム。
【請求項3】
前記複数の突起は、第1の方向と、前記第1の方向に直交する第2の方向それぞれにおいて等間隔となるように、前記対象面に二次元に配置されている
請求項1又は2に記載の移動体システム。
【請求項4】
前記複数の突起は、前記第1の方向及び前記第2の方向のいずれの方向にも等間隔に配置されている
請求項3に記載の移動体システム。
【請求項5】
前記レールの長さは、前記進行方向に連続する前記突起の間隔の2倍より長い
請求項3又は4に記載の移動体システム。
【請求項6】
対象面の軌道上に設けられた複数の突起と、
前記軌道に沿って移動する移動体と、を備え、
前記移動体は、
レールと、
前記移動体を進行方向に移動させる移動部と、を有し、
前記レールは、
前記突起に係合可能であって、前記突起からの脱落を防止する係合部と、
前記軌道に沿った移動に伴う前記突起と前記レールとの相対移動をガイドするガイド部と、を含み、
前記移動体は前記レールを複数本有し、
前記複数本のレールは、直交する第1の延伸方向に延伸するレール、及び第2の延伸方向に延伸するレールを含み、
一方の延伸方向に延伸するレールは、他方の延伸方向に延伸する複数本のレールと交差するように設けられている
移動体システム。
【請求項7】
前記複数本のレールは、前記第1の延伸方向に延伸する複数本のレールと、前記第2の延伸方向に延伸する複数本のレールと、を含む
請求項6に記載の移動体システム。
【請求項8】
前記移動体は、前記レールの交差部に配置された、前記移動体の前記進行方向を前記第1の延伸方向と前記第2の延伸方向とで切り替える切替部材をさらに有する
請求項6又は7に記載の移動体システム。
【請求項9】
前記切替部材は、前記第1の延伸方向と前記第2の延伸方向との一方に前記ガイド部への前記突起の進入を許容して他方に非許容とする状態を、前記第1の延伸方向と前記第2の延伸方向とで切り替え可能である
請求項8に記載の移動体システム。
【請求項10】
複数の前記交差部それぞれに前記切替部材が設けられており、
前記移動体は、複数の前記切替部材を単一の駆動源で駆動させる駆動部をさらに備える
請求項8又は9に記載の移動体システム。
【請求項11】
前記移動部は、前記対象面との間の摩擦力を推進力とし、前記第1の延伸方向と前記第2の延伸方向とに切り替えて回転可能なローラを含む
請求項6~請求項10のいずれか一項に記載の移動体システム。
【請求項12】
前記移動体は、
前記対象面との間の摩擦力によって一方向に推進するローラと、
推進する方向を前記第1の延伸方向又は前記第2の延伸方向となるように前記ローラを回転させる回転部と、を含む
請求項6~請求項10のいずれか一項に記載の移動体システム。
【請求項13】
前記移動体は、前記ガイド
部によってガイドされる前記突起の前記交差部への近接を検出するセンサをさらに有する
請求項
8~請求項10のいずれか一項に記載の移動体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空間内の壁面を利用して、任意の位置に物体を移動させたいという要望がある。そこで、一つの実現方法として、壁面にレールを設け、レール上を移動する移動体によって物体を移動させる方法が挙げられる。例えば、以下の特許文献1(特開2019-16432号公報)は、天井や壁面に、照明器具を接続するためのダクトレールを配設する例が示されている。これにより、照明器具を任意の位置に設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
任意の位置に移動させようとすると、壁面に多くのレールを配設する必要があるとともに、それらレールを複雑に配置するほど任意の位置に移動させやすくなる。しかしながら、そのようなレールの配設は非常に手間であるとともに、複雑にレールが配設されると移動体の移動が難しくなる。そのため、より簡易な方法で指定される位置に移動体を移動させることができるシステムが望まれる。
【0005】
ある実施の形態に従うと、移動体システムは、対象面の軌道上に設けられた複数の突起と、軌道に沿って移動する移動体と、を備え、移動体は、レールと、移動体を進行方向に移動させる移動部と、を有し、レールは、突起に係合可能であって、突起からの脱落を防止する係合部と、軌道に沿った移動に伴う突起とレールとの相対移動をガイドするガイド部と、を含む。
【0006】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、移動体システムの構成と、対象面における突起の配置の具体例とを示した概略図である。
【
図2】
図2は、移動体システムの構成と、突起の係合部の具体例とを示した概略図である。
【
図3】
図3は、移動体システムに含まれる移動体の斜視図である。
【
図7】
図7は、移動体と突起との係合を表す断面概略図である。
【
図8】
図8は、移動体のレールの長さを説明するための概略図である。
【
図9】
図9は、移動体の切替部材を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<1.移動体システムの概要>
【0009】
(1)本実施の形態に含まれる移動体システムは、対象面の軌道上に設けられた複数の突起と、軌道に沿って移動する移動体と、を備え、移動体は、レールと、移動体を進行方向に移動させる移動部と、を有し、レールは、突起に係合可能であって、突起からの脱落を防止する係合部と、軌道に沿った移動に伴う突起とレールとの相対移動をガイドするガイド部と、を含む。対象面に突起を設け、移動体側にレールを設けることによって、対象面への施工を容易にすることができるとともに、移動体の移動を容易にできる。
【0010】
(2)好ましくは、レールは、係合部によって同時に複数の突起と係合可能である。これにより、レールは軌道との平行が保たれやすくなる。その結果、移動体を対象面に対して安定した状態で移動させることができる。
【0011】
(3)好ましくは、複数の突起は、第1の方向と、第1の方向に直交する第2の方向それぞれにおいて等間隔となるように、対象面に二次元に配置されている。これにより、移動体を対称面上にて二次元に移動させることができる。
【0012】
(4)好ましくは、複数の突起は、第1の方向及び第2の方向のいずれの方向にも等間隔に配置されている。これにより、移動体を第1の方向に移動させる際にも第2の方向に移動させる際にも、移動が容易になる。
【0013】
(5)好ましくは、レールの長さは、進行方向に連続する突起の間隔の2倍より長い。これにより、移動体が軌道に沿って移動する際に、レールは、同時に複数の突起と係合可能になる。その結果、レールは軌道との平行が保たれやすくなり、移動体を対象面に対して安定した状態で移動させることができる。
【0014】
(6)好ましくは、移動体はレールを複数本有し、複数本のレールは、直交する第1の延伸方向に延伸するレール、及び、第2の延伸方向に延伸するレールを含み、一方の延伸方向に延伸するレールは、他方の延伸方向に延伸する複数本のレールと交差するように設けられている。これにより、移動体のゆがみを抑え、安定した移動動作が可能になる。
【0015】
(7)好ましくは、複数本のレールは、第1の延伸方向に延伸する複数本のレールと、第2の延伸方向に延伸する複数本のレールと、を含む。これにより、移動体のゆがみを抑え、安定した移動動作が可能になる。
【0016】
(8)好ましくは、移動体は、レールの交差部に配置された、移動体の進行方向を第1の延伸方向と第2の延伸方向とで切り替える切替部材をさらに有する。これにより、移動体の進行方向を容易に切り替えることができる。その結果、目的とする位置に移動体を容易に移動させることができる。
【0017】
(9)好ましくは、切替部材は、第1の延伸方向と第2の延伸方向との一方にガイド部への突起の進入を許容して他方に非許容とする状態を、第1の延伸方向と第2の延伸方向とで切り替え可能である。これにより、移動体の進行方向を容易に切り替えることができるとともに、対象面が水平面と角度を有する面である場合に、移動体の軌道からの落下を防止できる。
【0018】
(10)好ましくは、複数の交差部それぞれに切替部材が設けられており、移動体は、複数の切替部材を単一の駆動源で駆動させる駆動部をさらに備える。これにより、移動体の部品点数を抑えることができ、小型化、軽量化が実現できる。
【0019】
(11)好ましくは、移動部は、対象面との間の摩擦力を推進力とし、第1の延伸方向と第2の延伸方向とに切り替えて回転可能なローラを含む。これにより、移動部を軌道に沿った進行方向に移動させることができるとともに、容易に方向転換ができる。
【0020】
(12)好ましくは、移動体は、対象面との間の摩擦力によって一方向に推進するローラと、推進する方向を第1の延伸方向又は第2の延伸方向となるようにローラを回転させる回転部と、を含む。これにより、ローラの構造を容易にできるとともに移動体の部品点数を抑えることができ、小型化、軽量化が実現できる。
【0021】
(13)好ましくは、移動体は、ガイドによってガイドされる突起の交差部への近接を検出するセンサをさらに有する。これにより、対象面上での移動体の位置を特定することができる。
【0022】
<2.移動体システムの例>
【0023】
図1及び
図2を参照して、移動体システム100は、対象面S上の軌道Ox,Oy上に設けられた複数の突起5と、軌道Ox,Oyに沿って移動する移動体1と、を含む。対象面Sは、平面でも曲面でもよい。一例として、対象面Sは居室の天井面、壁面、床面、などである。
【0024】
軌道Ox,Oyは、直線であっても曲線であってもよい。ここでは軌道Ox,Oyは、直線であるものとする。また、軌道Ox,Oyは、角度を有する軌道Ox及び軌道Oyである。すなわち、軌道Ox,Oyは、それぞれ、第1の方向及び第2の方向の軌道である。一例として、第1の方向と第2の方向とは直交し、
図1では第1の方向をX方向、第2の方向をY方向で表している。また、
図1の例では、対象面S上に、X方向に伸びる複数の軌道Ox1,Ox2,Ox3,Ox4、及び、Y方向に伸びる複数の軌道OyA,OyB,OyC,OyD,OyEが併設されている。軌道Ox1,Ox2,Ox3,Ox4を代表させて軌道Ox、軌道OyA,OyB,OyC,OyD,OyEを代表させて軌道Oyとする。
【0025】
軌道Ox上には複数の突起5が間隔d1の等間隔に配置されている。また、軌道Oy上には複数の突起5が間隔d2の等間隔に配置されている。すなわち、複数の突起5は、第1の方向と第2の方向とに、対象面Sに二次元に配置されている。これにより、後述の仕組みで移動体1を移動させる際に、二次元に移動させることができる。なお、突起5の間隔d1,d2を代表して間隔dとも称する。
【0026】
詳しくは、
図1に示されたように、軌道Ox1上に間隔d1で突起5-1A,5-1B,5-1C,5-1D,5-1Eが配置され、軌道Ox2上に間隔d1で突起5-2A,5-2B,5-2C,5-2D,5-2Eが配置され、…軌道Ox4上に間隔d1で突起5-4A,…,5-4Eが配置されている。また、
図1に示されたように、軌道OyA上に間隔d2で突起5-1A,5-2A,5-3A,5-4Aが配置され、軌道OyB上に間隔d2で突起5-1B,5-2B,5-3B,5-4Bが配置され、…軌道OyE上に間隔d2で突起5-1E,…,5-4Eが配置されている。これら突起5-1A~5-4Eを代表させて突起5とする。
【0027】
軌道Ox上の突起5の間隔d1と軌道Oy上の突起5の間隔d2とは等しくてもよい(d1=d2)。つまり、複数の突起5は、直交するX方向及びY方向の両方向に等間隔で配置される。これにより、後述の仕組みで移動体1を移動させる際に、二次元の移動が容易になる。
【0028】
移動体1は、
図2に示されるような突起5からの脱落せずに係合した状態で、
図1に示されるように軌道Ox,Oyに沿って、つまり、X方向又はY方向を進行方向として移動する。そのため、移動体1及び突起5の少なくとも一方は、移動体1が突起5から脱落せずに係合するための係合構造を有する。突起5の係合構造の一例は、
図2に示された係合部5aである。係合部5aは、突起5の対象面Sから遠い側の端部、つまり、突起5の先端に設けられた、突起5の凸方向とは異なる方向に突出した形状を有する。これにより、移動体1側に凹形状の部分を形成することで、移動体1を突起5から脱落せずに係合することが可能になる。
【0029】
図3~
図6を参照して、移動体1は、レール11を有する。レール11は、例えば、アルミフレームである。詳しくは、移動体1は、第1の方向であるD1方向に延伸し、長さL1の2本のレール11-1A,11-1Bと、第2に方向であるD2方向に延伸し、長さL2の2本のレール11-2A,11-2Bと、の複数のレールを有する。これらレール11-1A,11-1B,11-2A,11-2Bを代表してレール11と称する。また、D1方向に延伸するレールをレール11-1、D2方向に延伸するレールをレール11-2とも称する。また、レール11の長さL1,L2を代表させて長さLとも称する。なお、ここでのレール11は、連続した一体のレールのみならず、延伸方向を同一として接手などによって接合された複数のレールを含んでもよい。
【0030】
D1方向に延伸するレール11-1は、D2方向に延伸する2本のレール11-2A,11-2Bと交差し、D2方向に延伸するレール11-2は、D1方向に延伸する2本のレール11-1A,11-1Bと交差する。これにより、移動体1のゆがみを抑え、安定した移動動作が可能になる。
【0031】
D1方向とD2方向とのなす角度は、軌道Ox,Oyのなす角度に対応している。一方のレールが軌道Oxの移動に用いられ、他方のレールが軌道Oyの移動に用いられるためである。この例では、D1方向とD2方向とは直交する。これにより、移動時の方向転換が容易になる。
【0032】
移動体1は、さらに、移動体1を進行方向に移動させる移動部として、ローラ12と、ローラ12を回転させる駆動部13と、を有する。
図3~
図6の例では、ローラ12として、移動体1のD2方向の中心位置であって、D1方向の両端に設けられたローラ12A,12C、及び、移動体1のD1方向の中心位置であって、D2方向の両端に設けられたローラ12B,12Dが含まれる。なお、ローラ12A,12B,12C,12Dを代表させてローラ12と称する。
【0033】
ローラ12は、D1方向に対応したR1回転方向と、D2方向に対応したD2回転方向との両方向に回転可能なローラであって、例えば、両方向に回転可能にオムニホイールに複数の小ローラが取り付けられたローラである。
【0034】
詳しくは、D1方向の両端に設けられたローラ12A,12Cは、それぞれ、駆動部13A,13Cによる駆動によってR2回転方向に回転する。なお、駆動部13A,13Cは、単一の駆動源をローラ12A,12C双方に接続するものであってもよい。これにより、部品点数を抑えることができ、小型化、軽量化が実現できる。
【0035】
R2回転方向は、D1方向の軸を回転中心とした回転方向である。ローラ12A,12Cが対象面Sと接触しながらR2回転方向に回転することによって、対象面Sとの間で生じる摩擦力に従って移動体1はD2方向の推進力を得る。これにより、移動体1の進行方向をD2方向とすることができる。また、ローラ12A,12Cは、移動体1の進行方向がD1方向であるときに、対象面Sとの間で生じる摩擦力によってR1回転方向に回転可能である。これにより、移動体1の進行方向がD1方向であるときにその移動の妨げとならない。
【0036】
また、D2方向の両端に設けられたローラ12B,12Dは、それぞれ、駆動部13B,13Dによる駆動によって、R1回転方向に回転する。なお、駆動部13B,13Dは、単一の駆動源をローラ12B,12D双方に接続するものであってもよい。これにより、部品点数を抑えることができ、小型化、軽量化が実現できる。
【0037】
R1回転方向は、D2方向の軸を回転中心とした回転方向である。ローラ12B,12Dが対象面Sと接触しながらR1回転方向に回転することによって、対象面Sとの間で生じる摩擦力に従って移動体1はD1方向の推進力を得る。これにより、移動体1の進行方向をD1方向とすることができる。また、ローラ12B,12Dは、移動体1の進行方向がD2方向であるときに、対象面Sとの間で生じる摩擦力によってR2回転方向に回転可能である。これにより、移動体1の進行方向がD2方向であるときにその移動の妨げとならない。
【0038】
好ましくは、移動部は、さらに、ローラ12を対象面Sに押し付ける機構を有する。押し付ける機構は、一例として、ばねの付勢力を利用してローラ12に対象面Sに向かう力を与える機構であって、ローラ12A,12B,12C,12Dそれぞれに接続されるサスペンション17A,17B,17C,17Dである。ローラ12A,12B,12C,12Dは、それぞれ、サスペンション17A,17B,17C,17Dの付勢力によって対象面Sに向かう力が与えられる。その結果、対象面Sに押し付けられている。これにより、回転時の対象面Sとの間の摩擦力が大きくなり、効率的に推進力が得られる。
【0039】
なお、移動体1に備えられる移動部は、
図3~
図6に実線で示されたローラ12、及び、ローラ12を回転させる駆動部13に限定されない。他の例として、
図5に点線で示されたように、移動体1の中央に設けられた単一の動力源によって駆動する構成であってもよい。
【0040】
詳しくは、
図5を参照して、移動部の他の例は、一方向に回転軸Ax周りのR4回転方向に回転可能なローラ12aと、ローラ121aをR4回転方向に回転させる第1の駆動部13aと、ローラ12aを方向転換させる第2の駆動部3bと、を含む。第2の駆動部13bは、レール11を含む平面内にてローラ12aを90度、R5回転方向に回転させることによって、ローラ12aのレール11の延伸方向に対する回転方向を変化させる。そのため、ローラ12aのR4回転方向の回転を維持して、D1方向への移動とD2方向への移動とを切り替えることができる。この構成によって、上記の構成よりも駆動部の数を抑えることができ、小型化、軽量化が実現できる。
【0041】
レール11は、ガイド部112を有する。ガイド部112は、
図6に示された断面に表されたように、突起5の進入を許容するよう形成されたレール11の内空である。その内空は、突起5とレール11との相対移動をガイドするように、延伸方向に連続して溝を形成している。これにより、レール11内部に進入した突起5の、内部での延伸方向への移動がガイドされる。その結果、突起5とレール11との相対移動が実現される。
【0042】
また、レール11は、係合部111を有する。係合部111は、レール11側の係合構造である。係合部111は、
図6に示された断面に表されたように、ガイド部112の内壁よりレール11の内側に突出した凸形状の鍔部である。
図6及び
図7の例の場合、突起5の係合部5aは突起5の凸方向を対称軸として少なくとも両側、好ましくは、放射状に突出している。これに対して、係合部111は、突起5を挟むように、突起5の凸方向を対称軸として両側から突出している。これにより、
図7に示されたように、突起5の係合部5aは凸方向を対称軸とした両側が、係合部111と係合する。
【0043】
図6に示されたように、レール11の端部において、ガイド部112は開口している。これにより、突起5は、移動体1の移動に伴ってガイド部112に進入する。鍔部は、延伸方向に連続して形成されている。そのため、突起5がガイド部112内で延伸方向に移動すると、係合部5aの係合部111への係合が突起5の移動の間も維持される。これにより、移動体1は突起5から脱落せずに係合状態を維持して軌道Ox,Oyに沿って移動することができる。
【0044】
好ましくは、レール11の端部において、開口しているガイド部112の付近に、突起5の進入をガイドするガイド機構が設けられる。ガイド機構は、例えばテーパーである。これにより、開口しているガイド部112への突起5の進入が容易になる。
【0045】
好ましくは、ガイド部112及び係合部111の突起5と接触する箇所には、摩擦低減機構が設けられている。摩擦低減機構は、一例として、ベアリングである。これにより、係合部5aと係合部111との係合状態を維持して移動体1が移動する際の、突起5とガイド部112及び係合部111との間に生じる摩擦を低減できる。これにより、推進力のロスを抑えることができるとともに、部材の摩耗も防ぐことができる。
【0046】
なお、突起5の係合構造及びレール11の係合構造は、例示された係合部5a及び係合部111に限定されない。他の例として、突起5及びレール11の係合構造は、いずれも、1方向のみに突出したかぎ型形状であって、それらが係合するものであってもよい。
【0047】
好ましくは、
図8に示されるように、レール11の長さLは、進行方向に並ぶ突起5の3つ分の間隔、つまり、進行方向に連続する突起5の間隔dの2倍(間隔d×2)より長い(L>2×d)。これにより、移動体が軌道Ox,Oyに沿って移動する際に、レール11は、同時に複数の突起5と係合可能になる。その結果、レール11は軌道Ox、Oyとの平行が保たれやすくなり、開口しているガイド部112への突起5の進入が容易になる。そのため、移動体1を対象面Sに対して安定した状態で移動させることができる。
【0048】
D1方向に延伸するレール11-1とD2方向に延伸するレール11-2との交差部には、切替部材14が配置されている。詳しくは、レール11-1Aとレール11-2Aとの交差部に切替部材14A、レール11-1Aとレール11-2Bとの交差部に切替部材14B、レール11-1Bとレール11-2Bとの交差部に切替部材14C、及び、レール11-1Bとレール11-2Aとの交差部に切替部材14Dが配置されている。これら切替部材14A~14Dを代表させて切替部材14と称する。
【0049】
切替部材14は、2本のレール11の交差部であって、レール11のガイド部112に内に設けられている。
図9に示されるように、切替部材14は、交差する2本のレールの一方の延伸方向のガイド部112への突起5の進入を許容し、他方の延伸方向のガイド部112への突起5の進入を非許容とする。
図9の上の図は、D1方向への突起5の進入を許容し、D2方向への進入を非許容とした状態であって、第1の進行状態とする。また、
図9の下の図は、D2方向への突起5の進入を許容し、D1方向への進入を非許容とした状態であって、第2の進行状態とする。
【0050】
切替部材14A~14Dには、それぞれ、駆動部15A~15Dが接続されている。駆動部15A~15Dを代表させて駆動部15とも称する。なお、駆動部15A~15Dは、単一の駆動源を切替部材14A~14Dそれぞれに接続するものであってもよい。
【0051】
駆動部15は、接続されている切替部材14を駆動し、突起5の進入を許容するレール11を切り替えさせる。一例として、
図9に示されたように、切替部材14をR3回転方向に回転させ、第1の進行状態と第2の進行状態とを切り替える。これにより、移動体1の進行方向を容易に切り替えることができる。その結果、目的とする位置に移動体1を容易に移動させることができる。
【0052】
一例として、切替部材14には、ガイド部112と同形状の溝が形成されている。そして、駆動部15は、溝の向く方向を切り替えるように切替部材14を回転させることによって各方向のレール11への突起5の進入を許容/非許容とする。この場合、交差部から所定範囲であって、多少、交差部からずれた位置に突起5があった場合であっても、切替部材14が駆動部15によってR3回転方向に回転することで、突起5が切替部材14の溝内にあった場合には交差部に位置合わせすることができる。従って、この場合、切替部材14は、交差部付近にある突起5を交差部に位置合わせする部材でもある。
【0053】
駆動部13によって各ローラ12の回転方向がR1回転方向とR2回転方向とで切り替わる。また、切替部材14によってレール11内で許容される突起5の進行状態が第1の状態と第2の状態とで切り替わる。この切替の組み合わせによって、移動体1は、対象面Sに二次元上に設置された突起5の上を移動することができる。すなわち、駆動部13B,13Dによってローラ12B,12DがR1回転方向に回転させ、切替部材14によって第1の進行状態としたとき、移動体1の進行方向はD1方向となる。
【0054】
移動体1は、方向転換を行うポイントに設置された突起5(対象突起)がレール11の交差部まで移動したタイミングで、進行方向をD1方向とD2方向とに転換する切替動作を行う。すなわち、対象突起がレール11内部のガイド部112をD1方向に進行して交差部まで達すると、駆動部13B,13Dによるローラ12B,12DのR1回転方向の回転が終了する。その位置にて、切替部材14によって進行状態が第1の進行状態から第2の進行状態に切り替えられる。その後に、駆動部13A,13Cによってローラ12A,12CのR2回転方向の回転が開始される。これにより、移動体1は、対象突起まで進行方向をD1方向として移動し、対象突起で進行方向をD2方向に切り替えることができる。この制御を繰り返すことによって、移動体1を対象面S上の任意の位置に移動させることができる。
【0055】
移動体1が進行方向を変えずに移動するとき、突起5は一延伸方向のレール11内を移動する。突起5が交差部を通過する場合、切替部材14は、そのレール11の延伸方向の突起5の進入を許可し、そのレール11に直交するレール11への突起5の進入を非許可とする進行状態としている。これにより、突起5はその交差部を通過可能であるとともに、直交するレール11への進入が防がれる。対象面Sが垂直面などの水平面から角度を有する面である場合、直交するレール11への進入が非許可とされていないと、通過時に直交するレール11へ突起5が進入してしまい、移動体1の落下につながる。従って、この場合、切替部材14は、突起5が交差部付近となった位置での軌道からの落下を防止する部材でもある。
【0056】
好ましくは、
図5に示されたように、レール11の交差部にセンサ16A~16Dが設置される。これらセンサ16A~16Dを代表させてセンサ16と称する。センサ16は近接センサであって、赤外線や超音波などを利用するものであってよい。これにより、移動体1の対象面S上での位置をセンシングすることができる。なお、突起5の間隔dが予め記憶されている場合、センサ16はレール11のすべての交差部に配置されていなくてもよく、少なくとも1つの交差部に配置されていればよい。センシングと間隔dとを用いて移動体1の対象面S上での位置を算出することが可能なためである。これにより、センサ16の数を抑え、移動体1の小型化、軽量化が実現される。
【0057】
移動体システム100の他の例として、
図1に示されたように、制御装置200をさらに含んでもよい。制御装置200は、無線又は有線によって移動体1と通信可能である。この場合、制御装置200は、図示しない入力装置を含み、オペレータから受け付けた移動体1の移動経路や、目的位置の指定に基づいて、移動体1が対象面S上を移動するように制御する。
【0058】
一例として、制御装置200は、対象面S上の突起5を位置情報として予め記憶しておく。これにより、制御装置200は、突起5によって、経路や目的位置を特定するとともに、移動体1を、現在位置から目的位置まで移動させる経路を突起5によって特定することができる。
【0059】
制御装置200は、特定された移動経路に基づいて、各ローラ12の回転/停止の制御させる制御信号を駆動部13に出力する。これにより、移動体1が進行方向に移動する。また、制御装置200は、特定された移動経路に基づいて、切替部材14をR3回転方向に回転させる制御信号を駆動部15に出力する。これにより、移動体1が方向転換したり直進したりして移動する。
【0060】
好ましくは、制御装置200は、センサ16からセンサ信号を取得する。これにより、移動体1の位置を検出することができる。検出された位置に従って、上記の制御信号を出力する。これにより、高精度で移動体1を移動させることができる。
【0061】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 :移動体
5 :突起
5-1A :突起
5-1B :突起
5-1E :突起
5-2A :突起
5-4A :突起
5a :係合部
11 :レール
11-1 :レール
11-1A :レール
11-1B :レール
11-2 :レール
11-2A :レール
11-2B :レール
12 :ローラ
12A :ローラ
12B :ローラ
12C :ローラ
12D :ローラ
12a :ローラ
13 :駆動部
13A :駆動部
13B :駆動部
13C :駆動部
13D :駆動部
13a :第1の駆動部
13b :第2の駆動部
14 :切替部材
14A :切替部材
14B :切替部材
14C :切替部材
14D :切替部材
15 :駆動部
15A :駆動部
15B :駆動部
15C :駆動部
15D :駆動部
16 :センサ
16A :センサ
16B :センサ
16C :センサ
16D :センサ
17A :サスペンション
17B :サスペンション
17D :サスペンション
17C :サスペンション
100 :移動体システム
111 :係合部
112 :ガイド部
200 :制御装置
Ax :回転軸
Ox :軌道
Ox1 :軌道
Ox2 :軌道
Ox3 :軌道
Ox4 :軌道
Oy :軌道
OyA :軌道
OyB :軌道
OyC :軌道
OyD :軌道
OyE :軌道
S :対象面