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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】水道設備錆除去装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/043 20060101AFI20230808BHJP
   E03B 7/09 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B08B9/043 436
E03B7/09
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019181745
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021053605
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】397007066
【氏名又は名称】協和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】清水 勝也
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-010092(JP,U)
【文献】実開昭61-115184(JP,U)
【文献】特開2004-020713(JP,A)
【文献】特開平10-123285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/043
E03B 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴出口部から流体を噴出する流体噴出機と、
後端部が前記噴出口部に取り付けられ前記流体を誘導する可撓な管体と、
先頭に錆こぶを切削する部分を有している切削部と該切削部が回転自在に結合するジョイント部を有し、前記切削部の回転軸方向が前記管体の先端部の軸方向に一致するように前記ジョイント部が前記管体の先端部に装着され、前記管体から前記流体を流入させ該流体の進路を曲げて噴出する流体路が内部に形成され該流体を噴出することにより前記切削部が前記ジョイント部に対して回転する切削工具と、
を備えることを特徴とする水道設備錆除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水道設備錆除去装置において、
前記流体路は、前記流体を流入させる部分が前記回転軸方向に形成されていることを特徴とする水道設備錆除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水道設備錆除去装置において、
前記管体は、外部管と内部管を有しており、前記流体は該内部管を流れ、該外部管は該内部管よりも硬質であって前記ジョイント部が装着されていることを特徴とする水道設備錆除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道設備の管内、特に配水管から給水管を分岐させる分水栓を設けるために配水管に形成された穿孔部分又はその近傍にできた錆こぶを除去するのに好適な水道設備錆除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道設備には、水道管(配水管や給水管など)又はそれに接続される水道機材(分水栓、止水弁、水道メータなど)があり、その管内を清掃する水道設備清掃装置は従来より種々のものが知られている。このうち、先端に清掃具が取り付けられている可撓性長尺物を水道管に挿入して水道管又はその他の水道設備の管内を清掃することが可能な水道設備清掃装置も知られている。水道設備の管内の清掃により、それに付着した汚れや錆が除去される。
【0003】
例えば、特許文献1には、給水管に挿入された可撓性長尺物の可撓性チューブの先端に取り付けられた清掃具のジェットノズルからオゾン水をジェット圧力を持たせて給水管の管内に対してジェット噴射する水道設備清掃装置が開示されている。また。特許文献2には、水道管などの管内に挿入された可撓性長尺物のリード線の先端に取り付けられた清掃具の球状体にエアを当てて乱動させる水道設備清掃装置(配管除錆機)が開示されている。また、特許文献3には、水道管などの管状部材に挿入された可撓性長尺物のフレキシブルシャフトの先端に取り付けられた清掃具の円盤状ブラシを管外の回転動力源によりフレキシブルシャフトを介して回転させる水道設備清掃装置(管内清掃具)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-207266号公報
【文献】特開平1-299683号公報
【文献】特開2000-312868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、長期間にわたり使用されていない水道設備の管内、例えば配水管から給水管を分岐させる分水栓を設けるために配水管に形成された穿孔部分又はその近傍では、特に配水管が鋳鉄製である場合、錆が成長して配水管の水道水の流れが影響されるほど、更には管内を塞ぐほどの大きな錆こぶができることもある。その錆こぶは、宅地内において止水栓や水道メーターなどと給水管の接続部分である継手部分から可撓性長尺物を挿入し、その先端に取り付けられている清掃具で錆こぶを除去することになる。しかし、特許文献1、2では、錆こぶを除去できるほどの水圧又はエア圧とすることは難しい。また、特許文献3では、たとえ円盤状ブラシの形状を工夫したとしても、狭小(例えば、内径13mmφ~25mmφ程度)の給水管における何か所かの屈曲部分でフレキシブルシャフトを曲げてしかも回転できるようにすることは難しい。従って、上記の特許文献1~3のような従来の水道設備清掃装置は、分水栓を設けるために配水管に形成された穿孔部分又はその近傍にできたような錆こぶに対応するものではない。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、分水栓を設けるために配水管に形成された穿孔部分又はその近傍にできた錆こぶを除去するのに好適な水道設備錆除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の水道設備錆除去装置は、噴出口部から流体を噴出する流体噴出機と、後端部が前記噴出口部に取り付けられ前記流体を誘導する可撓な管体と、先頭に錆こぶを切削する部分を有している切削部と該切削部が回転自在に結合するジョイント部を有し、前記切削部の回転軸方向が前記管体の先端部の軸方向に一致するように前記ジョイント部が前記管体の先端部に装着され、前記管体から前記流体を流入させ該流体の進路を曲げて噴出する流体路が内部に形成され該流体を噴出することにより前記切削部が前記ジョイント部に対して回転する切削工具と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の水道設備錆除去装置は、請求項1に記載の水道設備錆除去装置において、前記流体路は、前記流体を流入させる部分が前記回転軸方向に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の水道設備錆除去装置は、請求項1又は2に記載の水道設備錆除去装置において、前記管体は、外部管と内部管を有しており、前記流体は該内部管を流れ、該外部管は該内部管よりも硬質であって前記ジョイント部が装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る水道設備錆除去装置によれば、分水栓を設けるために配水管に形成された穿孔部分又はその近傍にできた錆こぶを除去することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る水道設備錆除去装置を示す概略図である。
図2】同上の水道設備錆除去装置の管体と切削工具を示すものであって、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)は底面図、(d)は左側面図である。
図3】同上の水道設備錆除去装置の管体と切削工具を示す正面視断面図(図2(a)のA-Aで示す面で切断したもの)である。
図4】同上の水道設備錆除去装置の切削工具を示す断面図であって、(a)が図3のB-Bで示す面で切断したもの、(b)が図3のC-Cで示す面で切断したものである。
図5】同上の水道設備錆除去装置の使用例を縮小して示す概略断面図である。
図6】同上の水道設備錆除去装置の使用例を示す断面図である。
図7】同上の水道設備錆除去装置の変形例を示す正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る水道設備錆除去装置1は、図1に示すように、流体噴出機2と管体3と切削工具4を備えている。
【0013】
流体噴出機2は、流体をポンプにより加圧するなどして、噴出口部2aから噴出するものである。流体は、通常は、タンクに貯留などした水を用いることができる。流体は、水以外の液体又は気体(例えば、圧縮空気など)を用いることも可能である。流体噴出機2は、その流体の噴出量をポンプの制御などにより簡単に制御できる。
【0014】
管体3は、可撓性を有し所望の長さを有するものである(図2参照)。管体3は、流体噴出機2の噴出口部2aに後端部が取り付けられて(図1参照)、噴出口部2aから噴射された流体を誘導する。管体3は、細いものでは、その直径を、例えば8mm程度とすることができる。
【0015】
管体3は、図3に示すように、外部管3aと内部管3bを有するようにすることができる。内部管3bには、噴出口部2aから噴射された流体が流れる。内部管3bは、可撓性を有するチューブ、例えば、ナイロンチューブやポリプロピレンチューブなど樹脂製のチューブを用いることができる。外部管3aは、内部管3bよりも硬質である。外部管3aは、後述するように給水管Pに挿入して進行させる際に、撓んだり屈曲したりして進行を妨げない可撓性を有し、かつ、挿入する際の力が伝達できる硬さを有するものである。外部管3aは、その先端部に、切削工具4の後述するジョイント部4bが装着されている。硬質な外部管3aのような管体3を構成する硬質な部材は、切削工具4の後述する切削部4aにより錆こぶを切削するときに、その反動に対抗した押し圧力で切削部4aを錆こぶに押し付け続けることができる。
【0016】
外部管3aは、内部管3bより硬質の金属製又は樹脂製のチューブや蛇腹ホースなどを有して構成でき、好ましくは、金属製の密着スプリングを有して構成される。密着スプリングは、素線がコイル状になっており、隣り合うコイル同士が、外力がかかっていないときは、密着しているものである。密着スプリングは、可撓であり、かつ、切削部4aを錆こぶに押し付け続ける力を容易に得ることができる。
【0017】
切削工具4は、切削部4aとジョイント部4bを有する。切削工具4の材質としては、一般的に切削工具の刃として用いられているものでよい。また、金属などの表面にダイヤモンド、セラミックス等のコーティング処理したものでもよい。
【0018】
切削部4aは、その形状が特に限定されるものではないが、錆こぶを切削するように、通常、角部4aaを1箇所又は複数箇所有している(図2(b)、(d)参照)。また、切削部4aは、角部4aaの他に曲面部4ab(図2(d)参照)を有するようにすると、後述するように給水管Pに挿入して進行させる際に、給水管Pの屈曲部分においても容易に通過させ易くなる。切削部4aは、ジョイント部4bに回転自在に結合する。そのため、切削部4aとジョイント部4bの間にベアリング4cを設けることができる(図3及び図4(a)参照)。
【0019】
ジョイント部4bは、切削部4aの回転軸方向が管体3の先端部の軸方向に一致するように、管体3の先端部に装着されている。切削部4aの回転軸方向が管体3の先端部の軸方向に一致するようにすると、錆こぶを切削するときに、管体3によって回転する切削部4aを錆こぶに押し付け続けることができる。
【0020】
ジョイント部4bは、好ましくは、差し込み部4ba(例えば、差し込み式、ねじ込み式などの接続構造のもの)を有し、取り外し可能に管体3(詳細には、外部管3a)の先端部に装着される。そうすると、切削により摩耗した切削部4aの切削工具4を新しいものに容易に取り換えることができ、また、切削工具4を一旦他の部材(例えば、カメラなど)に付け替えることも可能になる。
【0021】
切削工具4は、管体3から流体を流入させ、その流体の進路を曲げて噴出開口部40aから噴出させる流体路40が内部に形成されている。このようにして流体を噴出することにより、切削部4aにジョイント部4bに対する回転力が発生する。噴出開口部40aは、切削部4aの周面に設け(図2(c)参照)、図4(b)に示すように、切削部4aの回転軸GAから所定の偏心距離GBだけずらすことができる。その場合、流体路40は、流体流入部分40b、中間部分40c、流体噴出部分40dを有するようにすることができる。流体流入部分40bは、流体が流入する部分であって、通常、切削部4aの回転軸GAに沿って形成されている(図3参照)。流体噴出部分40dは、噴出開口部40aに連通する部分であり、通常、流体流入部分40bに対して略垂直な方向に延びている。中間部分40cは、流体流部分40bと流体噴出部分40dに連通し、通常、それら両方とに略垂直に連通している。
【0022】
切削部4aの回転力は、流体噴出機2の流体の噴出量を制御することにより、制御できる。切削部4aの回転力は、水道設備(例えば、後述する給水管P、分水栓S、配水管Qなど)の内壁に過度の接触をした場合にそれを傷つけないよう切削部4aが停止するなどトルクリミットがかかるようにして、錆こぶの状態に応じて制御できる。
【0023】
以上説明した構成の水道設備錆除去装置1は、切削工具4を先頭にして管体3が、宅地E内において止水栓S1、S2や水道メーターMなどと給水管Pの接続部分である継手部分から挿入されて、道路Rの地下に敷設された配水管Q側に送られ、図5に示すように、配水管Qに給水管Pを接続する分水栓Sを経由して配水管Qに形成された穿孔部分又はその近傍にできた錆こぶまで到達するようにできる。
【0024】
切削工具4は、配水管Qに形成された穿孔部分又はその近傍にできた錆こぶを除去することが可能である。錆こぶは、給水管Pを配水管Qに接続するための配水管Qの穿孔が原因で、でき易く、また、特に配水管Qが鋳鉄製である場合に殊にでき易い。例えば、錆こぶが分水栓Sの管内を塞ぐほどの大きさであっても、図6に示すように、錆こぶ(図6においては符号Cで示す)を切削部4aが回転することにより切削することができる。
【0025】
次に、配水管Qに形成された穿孔部分又はその近傍にできた錆こぶの除去作業について説明する。錆こぶに切削部4aを当接させ一定の押し圧力を加えた状態で、管体3から流体を流入させ、噴出開口部40aから流体を噴出させて切削部4aを回転させることにより、徐々に錆こぶは削られる。削られた錆屑は、噴出開口部40aから噴出された流体とともに管体3と給水管Pの内壁の間を通って管体3が挿入された入り口側の継手部分から排出される。更に切削が続き、閉塞されていた分水栓Sを介して配水管Qと給水管Pとの間が連通すると、上記の削られた錆屑は、噴出開口部40aから噴出された流体とともに配水管Qからの水道水に押されて、管体3と給水管Pの内壁の間を通って管体3が挿入された入り口側の継手部分から排出される。この排出された流体(噴出開口部40aから噴出された流体と水道水)の流量の増加により、配水管Qと給水管Pとが連通したことが確認できる。その後、排出された流体に錆屑が混入されなくなれば、錆こぶが除去できたことが確認できる。
【0026】
事前に、管体4の先端部にカメラを取り付けて給水管Pに挿入し錆こぶまでの距離及びその状態を把握するようにもできる。把握後、カメラを給水管Pから引き出し、カメラを切削工具4に付け替える。そうして構成された水道設備錆除去装置1の切削工具4を給水管Pに挿入して事前に把握した錆こぶまでの距離に位置させ、切削部4aの回転により錆こぶを除去する。
【0027】
また、水道設備錆除去装置1を用いて錆こぶを切削する際中に切削部4aが順調に回転しているかどうかを知るために、管体3に聴診器又は振動計などを接触させ、その切削部4aの正常回転、停止、異常回転を音又は振動により知ることができる。これにより、錆こぶの切削中の状況確認が行なえることで、管体3の出し入れや切削部4aの回転力などを調整できる。更には、錆こぶの状況に応じた音又は振動の波形を予め記録しておき、これを参考にして作業を進めることにより作業性を向上することも可能である。
【0028】
また、上記のカメラ、聴診器又は振動計に代えて、ジョイント部4bに、図7に示すように、センサー部4d(超小型カメラ、音センサー又は振動センサーなど)を組み込むことが可能である。そうすれば、切削部4aが順調に回転しているかどうかを容易に知ることができる。センサー部4dを組み込む位置は、特に限定されるものではない。また、センサー部4dを超小型カメラにした場合、錆こぶの状態を知ることもでき、また、切削部4aを透明部材(例えば、ポリカーボネート製やアクリル製の部材など)にしたり超小型カメラを周囲が見えるような視野にしたりなどして、切削する際中に錆こぶの状態を知るようにすることも可能である。なお、図7中の符号4eは、センサー部4dの配線を示す。
【0029】
以上、本発明の実施形態に係る水道設備錆除去装置について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。また、本発明は、給水管Pに限らず、どのような種類の水道管にも適用可能であり、また、配水管Qに形成された穿孔部分又はその近傍にできたような錆こぶに限らず、どのような種類の水道設備の管内にできた錆こぶにも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 水道設備錆除去装置
2 流体噴出機
2a 流体噴出機の噴出口部
3 管体
3a 管体の外部管
3b 管体の内部管
4 切削工具
4a 切削部
4aa 切削部の角部
4ab 切削部の曲面部
4b ジョイント部
4ba ジョイント部の差し込み部
4c ベアリング
4d センサー部
4e センサー部の配線
40 流体路
40a 流体路の噴出開口部
40b 流体路の流体流入部分
40c 流体路の中間部分
40d 流体路の流体噴出部分
C 錆こぶ
E 宅地
GA 切削工具の切削部の回転軸
GB 切削工具の流体路における噴出開口部の偏心距離
M 水道メーター
P 給水管
Q 配水管
R 道路
S 分水栓
S1、S2 止水栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7