IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロイヤル・メルボルン・インスティテュート・オブ・テクノロジーの特許一覧

<>
  • 特許-ガスセンサカプセル 図1A
  • 特許-ガスセンサカプセル 図1B
  • 特許-ガスセンサカプセル 図2A
  • 特許-ガスセンサカプセル 図2B
  • 特許-ガスセンサカプセル 図3
  • 特許-ガスセンサカプセル 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ガスセンサカプセル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/07 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A61B5/07 100
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019508245
(86)(22)【出願日】2017-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 AU2017000167
(87)【国際公開番号】W WO2018032032
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】2016903219
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】506018639
【氏名又は名称】ロイヤル・メルボルン・インスティテュート・オブ・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】ROYAL MELBOURNE INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カランター‐ザデー,コウロッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ビリアン,カイル
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ナム
(72)【発明者】
【氏名】オウ,チエン チェン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】三崎 仁
【審判官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0289368(US,A1)
【文献】特開平7-120423(JP,A)
【文献】国際公開第2015/121312(WO,A1)
【文献】特開昭62-223662(JP,A)
【文献】国際公開第2016/033638(WO,A1)
【文献】特開2003-232760(JP,A)
【文献】特開平11-142356(JP,A)
【文献】特開2010-220891(JP,A)
【文献】特開2016-85131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-90/98, G01N1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の消化器系および胃腸(GI)管の中に導入され、通過するように構成されたカプセルであり、前記GI管内のガスを検出するためのカプセルであって、
消化器系と生体適合性があり、カプセルに内蔵されている電子装置およびガスセンサを保護するように構成されている壁材料から形成されたカプセル壁を含むカプセル形状の容器と、
マイクロプロセッサと、
無線送信機と、
マイクロヒータと、
送信アンテナと、
半導体式ガスセンサと、
熱伝導式ガスセンサと、
を備え、
前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサは、前記マイクロプロセッサの制御下で前記マイクロヒータの温度設定値が変更されて、前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサの各々が前記マイクロヒータによって、2種以上の異なる動作温度まで各動作温度につき1秒未満の期間で加熱されることにより、水素およびメタンが前記半導体式ガスセンサの読み取り値で選択的に検出することができるように、並びに水素、二酸化炭素、およびメタンのうち1つまたは複数を前記熱伝導式ガスセンサの読み取り値で選択的に検出できるように構成され、
前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサは、前記マイクロプロセッサの制御下で動作するように構成され、
前記無線送信機は、カプセルが哺乳動物の消化器系およびGI管を通過する間に、カプセルから哺乳類の外部にあるデータ受信機にデータ信号を伝送するように構成されている、
カプセル。
【請求項2】
前記カプセルは、前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサの動作温度を変えることによって、前記GI内の前記ガスに対する感度を変更するように構成され、前記マイクロプロセッサは前記ガスの種類を識別するようにプログラムされたパターン認識ソフトウェアに基づき動作するように構成される、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサのそれぞれは、前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサを加熱するマイクロヒータの上に位置するセンサ表面を備える、請求項1に記載のカプセル。
【請求項4】
前記半導体式ガスセンサは、150℃、200℃、または300℃の温度に加熱される、請求項3に記載のカプセル。
【請求項5】
前記熱伝導式ガスセンサは、100℃または250℃の温度に加熱される、請求項3に記載のカプセル。
【請求項6】
前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサは、事前に較正されている、請求項1に記載のカプセル。
【請求項7】
前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサは、電子部品から密封されたセンサ区画に収容される、請求項1に記載のカプセル。
【請求項8】
前記電子部品は、
前記半導体式ガスセンサおよび前記熱伝導式ガスセンサ間で切り替わるように構成されたデータ取得システムと、
デジタルデータ信号を生成するように構成された符号器および変調器と、
前記送信アンテナ、
を備える、請求項7に記載のカプセル。
【請求項9】
前記センサ区画の外面は選択的透過性膜から成る、請求項7に記載のカプセル。
【請求項10】
温度センサを更に備える、請求項1に記載のカプセル。
【請求項11】
pHセンサを更に備える、請求項1に記載のカプセル。
【請求項12】
NO、HSおよび揮発性の有機化合物のうち1つまたは複数を選択的に検出するための1つまたは複数のセンサを更に備える、請求項1に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトなどの哺乳類の胃腸(GI)管において生成されるガスを監視するための経口摂取可能なセンサカプセルにおいて有用なガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、カプセル内視鏡検査および呼気分析計などの利用可能な診断手段は存在するが、胃腸管内のガス成分の分析のための機器は存在しない。これらのガス成分は様々な病気に関連している可能性が高いという多くの報告がある。しかし、どんな好適な手段も存在せず、かつこれらの測定が患者のために行われるという不都合により、この領域の可能性はまだ完全に理解されていない。
【0003】
結腸を可視化し、かつポリープを評価するためのカプセルカメラ(Pillcam(商標))が市販されている。胃腸(GI)管を通過する間にpH、圧力および温度を測定する経口摂取可能なカプセルである入手可能なSmartPillも存在する。
【0004】
米国特許第8469857号は、呼気分析においてガスを分析することによってGIの状態を診断する方法を開示している。
【0005】
国際公開第2013/003892号特許出願は、反芻動物で使用するためのガスセンサおよびガス透過膜を備えたカプセルを開示している。
【0006】
光学式ガスセンサ(一般に赤外線-IR)は、これまでに開発され、かつ反芻動物のために国際公開第2013/003892号においても使用されている最も多いガス選択的装置である。しかし、そのようなカプセルのサイズは大きく、ヒトのために使用することはできない。ヒトのために小型のIRベースのガスセンサを作製するための技術はまだ存在しない。ヒトのための最も小型の丸薬寸法基準はOOOであり、現在の光技術の中にはそのような光学ベースのガスカプセルの開発を可能にするものはない。米国特許出願第2009/0318783号は、センサを内蔵する経口摂取可能なカプセルを用いてGI管からのデータを分析し、かつ時間に対してプロットされる測定に関するデータを提供するコンピューター化された方法を開示している。
【0007】
米国特許出願第2013/0289368号は、GI管の疾患を診断するのを支援するためのガス検出器を備えた経口摂取可能なカプセルを開示している。
【0008】
先行技術の装置に関する難点はガスセンサの選択性の欠如である。例えば、純粋なPDMS膜により全てのガス種が透過することが可能になる。これは非常に選択的なガスセンサを使用した場合に許容可能になり得る。しかし、大部分の利用可能なガスセンサは非選択的である。例えば、現在の水素(H)ガスセンサは、メタン(CH)などの他のガス種に対しもて感度を有する。そのような特異性の欠如により測定の正確性がひどく損なわれる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、複数のガスを検出することができるGI管カプセルのためのガスセンサを提供することにある。
【0010】
この目的を達成するために、本発明は、酸素、水素、二酸化炭素およびメタンを選択的に検出することができるようにそれぞれのガスセンサが所定の期間にわたって異なる温度で動作し、かつどちらのガスセンサもそれらのガスを識別するようにソフトウェアによりプログラムされたマイクロプロセッサの制御下で動作する半導体式ガスセンサおよび熱伝導式ガスセンサを備えた、GI管ガスを検出するためのガス分光計を提供する。
【0011】
ガスセンサの動作温度を変えることによって腸内の特定のガスに対して多少の感度を有するようになる。ヒータの温度を変える(加熱期間を変える)ことによって、ガスセンサは加熱期間に応じて各種ガスに対して異なる値を生成する単一の装置として機能することができる。1回でサンプリングされた各値は疑似分光計のための画素とみなすことができる。これは、当該センサを2回サンプリングした場合に2画素のスペクトルが生成されることを意味する。当該センサ装置を100回サンプリングした場合、100画素のスペクトルが生成される。各スペクトルはセンサ装置に対してより特異的である。本発明では、1つのセンサにつき2画素からなる最も単純な疑似装置が提供される。半導体式および熱伝導式センサは、どちらのセンサもそれらの動作温度の強力かつ反復可能な関数であるガス応答を示すので本発明のベースとなる。
【0012】
半導体および熱伝導ベースのセンサの別の利点はそれらの非常に小型のサイズ(mmオーダーの範囲)である。従って、それらはOOOカプセル寸法よりも小さいヒトのガスセンサカプセルにおけるガスセンサ装置として最良の候補である。
【0013】
半導体式および熱伝導式ガスセンサはどちらも、好ましくはガスを識別するようにニューラルネットワークソフトウェアなどのパターン認識ソフトウェアによりプログラムされたマイクロプロセッサの制御下で動作する。
【0014】
これらの2つのガスセンサは好ましくは電池および電子部品から密閉された経口摂取可能なカプセルの1つの部分に内蔵されている。カプセルのこの部分の外面は選択的透過性膜からなる。当該センサの表面は、当該センサが各スペクトルのために取得される画素の数に応じて2種以上の異なる温度まで1秒未満の短い期間で加熱されるように、マイクロヒータの上に位置している。異なるガスへの感度は温度に従って変化し、これはニューラルネットワークソフトウェアと協働して、ガスの識別のために異なるデータ点からの読み取り値をクラスタリングすることを可能にする。
【0015】
本カプセルは、当該センサの選択性を支援するためにガス透過膜を備える。これらは好ましくは国際公開第2016033638号に開示されている膜である。
【0016】
別の態様では、本発明は、消化器系と生体適合性であるようにすることができ、かつカプセルに内蔵されている電子およびセンサ装置を保護するように構成されている壁材料からなるカプセル形状の容器からなる、哺乳類の消化器系およびGI管の中に導入されるように構成されたカプセルであって、前記カプセルは上記ガス分光計、任意に温度センサ、マイクロコントローラ、電源および無線送信機を内蔵し、マイクロプロセッサは、データ信号を当該センサから受信し、かつその信号を外部計算装置への伝送に適したガス組成および濃度データおよび温度データに変換するようにプログラムされていることを特徴とするカプセルを提供する。データ取得時間の間に、マイクロコントローラはヒータをセンサに切り換えて、電力を節約するためにスリープモードに入る。
【0017】
本カプセルが体内にある場合、データ受信機は極めて近接して、通常は5メートル未満の距離に維持され、本カプセルが胃、小腸および結腸を通過する時間の間にデータ信号を本カプセルから連続的に収集する。
【0018】
本ガスセンサカプセルは、標的ガスが生成される原位置での正確な識別を可能にし、かつそれらのガスをより確実に健康状態、食事の影響、環境の影響および病気の存在と結びつけるのを支援する。これらのカプセルは、アクセス可能な部分だけでなく胃腸管全体を調べるのを可能にする。また、その手順は非侵襲的であり、カプセルはそのプロセスの終了時に対象の体から排出される。
【0019】
特にヒトへの用途では、「ガスセンサカプセル」は、飲み込まれた後に、胃腸科専門医が食道、胃、十二指腸、空腸および回腸(小腸)ならびに盲腸、結腸および直腸(大腸)におけるヒト対象のガス種およびそれらの濃度を調べるのを助ける。本カプセルは、他の哺乳類において生成されるガス種を理解するのも助け、それらのガス種をその哺乳類の食事、健康状態およびガス生成体積と関連づけることができる(ガスの緩和または生成効率の増加のため)。本装置により、既存のガス種と胃腸の医学的疾患との相関を正確に調べて完全に理解することができる。そのような相関の確立および個々の対象の消化管のガス含有量の正確な評価は、消化管内の既存の微生物の影響を明らかにするのを助け、かつ胃腸病のより正確な標的が得られる正確な薬を処方するのを助ける。従って、本ガスセンサカプセルは、非侵襲的診断法を用いて健康状態を評価するための非常に貴重な手段である。
【0020】
本発明のガスセンサカプセルは飲み込むことができ、かつ胃腸管全体を通してガス成分を正確にサンプリングする能力を有する診断および監視手段である。その利点は胃腸管に沿ったガス成分の高い選択性および感度測定である。
【0021】
図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明の好ましいカプセルの概略図である。
図1B】好ましいカプセルの断面図である。
図2A】較正のために腸のいくつかの典型的なガスに対する2つのセンサの応答を示す。
図2B】較正のために腸のいくつかの典型的なガスに対する2つのセンサの応答を示す。
図3】高繊維食への体の応答に関する経時的な2つのガスセンサからのデータ点のグラフィカル出力である。
図4】低繊維食への体の応答に関する2つのセンサからのグラフィカル出力である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好ましいカプセルの主な構成要素が図1に示されている。
【0024】
図1Aおよび図1Bに示すように、典型的なカプセルは、ガス透過膜12によって覆われた開口部を有するガス不透過性シェル11からなる。
【0025】
本カプセルは内部に、ガスセンサ13、温度センサ14、マイクロコントローラ15を備える。本電子装置は、酸化銀電池16、アンテナ17、無線送信機18およびリードスイッチ19も備える。
【0026】
本カプセルの主な構成要素は、以下のとおりである。
【0027】
センサ13:2種類のガスセンサはそれぞれが数mm未満の寸法であり、酸素、水素、二酸化炭素およびメタンを検出するために使用される。嫌気性センサは熱伝導式センサであり、好気性センサは半導体式センサである。2つのガスセンサは、電池および電子部品から密閉された本カプセルの1つの部分に内蔵されている。本カプセルのこの1つの部分の外面は選択的透過性膜からなる。当該センサ表面は、当該センサが2種または3種の異なる温度まで1秒未満の短い期間で加熱されるようにマイクロヒータの上に位置している(グラフの例では加熱期間が図2Aおよび図2Bに示されている)。当該センサは、センサ読み取り値を使用して特定のガスの組成および濃度を同定することができるように事前に較正されている。異なるガスに対する感度は動作温度に従って変化し、これはニューラルネットワークまたは別のパターン認識ソフトウェアと協働して、ガスの識別のために異なるデータ点からの読み取り値をクラスタリングするのを可能にする。図2から明らかなように、当該センサはガスの検知において小さいクロストークを示すことがある。センサの数の増加は、数学的アルゴリズムを用いて各標的ガスに対する正確な応答を抽出するのを助ける。例えば、半導体式センサは150℃、200℃または300℃まで加熱することができ、より低い温度で水素に対してより感度を有し、かつより高い温度でメタンに対してより感度を有する(図2A)。半導体式センサは二酸化炭素に対しては感度を有しない。熱センサは、100℃および250℃の2種類の温度で二酸化炭素ならびに水素およびメタンを検知するために使用される。ミリ秒(ms)の期間で2つのセンサからの4つのデータ点を読み取ることができ、従って濃度の連続的な線グラフを作成することができる。
【0028】
NOおよびHSなどの他のガスセンサならびに揮発性有機化合物センサを使用してもよい。
【0029】
また温度センサ14が含められている。pHセンサなどの他のセンサを含めてガス分析のために環境情報を提供してもよい。
【0030】
当該ガスセンサは、電子部品から密閉された本カプセルの区画に取り囲まれている。この区画は、好ましくその表面を細菌増殖から保護するための銀ナノ粒子を含むグラフェンポリマーからなるガス透過膜12によって取り囲まれている。
【0031】
電子回路15、18(既に利用可能な技術を適応してもよい):当該センサ間で切り替わるデータ取得システム、ならびにデジタルデータを生成し、かつそれを関連づけられたデータ受信機に伝送するためにアンテナ17に送信する符号器および変調器からなる。この用途のために市販の帯域(433MHzなど)が使用されるが、それは、この周波数範囲内の電磁波がヒトの組織を安全に透過することができるからである。他の市販の帯域を各種用途で使用してもよい。確実に固有のデータが各個々のカプセルから送信されるようにするために符号化が必要となる。送信アンテナ17は、データを体外のデータ取得システムに伝送するために疑似パッチ型である。電源16は、当該センサおよび電子回路のために電力を供給することができる電池または超コンデンサである。消化管カプセルのために少なくとも48時間の寿命が必要となる。本カプセルのために必要な寿命および他の仕様に応じてより少ない酸化銀電池が存在してもよい。
【0032】
本カプセルの寸法は好ましくは、ヒトのカプセルのためのOOO標準寸法を満たすために直径が1.1mm未満であって長さが2.6mm未満である。本カプセルの本体は好ましくは消化不可能な生体適合性ポリマーで作られている。本体は好ましくは最も短い可能な時間でのその通過を可能にするために滑らかで非粘着性であり、かつあらゆるカプセル保持の機会を減らす。
【0033】
当該ガスセンサを較正するために行われる測定の例が図2Aおよび図2Bに示されている。異なるガス濃度における半導体式および熱伝導式センサ測定:(A)半導体(中間測定は1ms後であり、最終測定は7ms後である)および(B)熱伝導率(中間測定は400ms後であり、最終測定は1000ms後である)。
【実施例
【0034】
本カプセルからの信号は図3および図4に示されている。
【0035】
高繊維
高繊維食下でのヒト志願者のガスプロファイルが図3に示されている。食物繊維摂取量は1日当たり55g超であった。カプセルは午前9時に摂取され、翌日の午前6時に体から排出された。斜線の領域は小腸の異なる部分(十二指腸、空腸および回腸)の通過を表す。
【0036】
低繊維
低繊維食下でのヒト志願者のガスプロファイルが図4に示されている。食物繊維摂取量は1日当たり15g以下であった。カプセルは午前9時に摂取され、その日から3日後に体から排出された。最初の2日のみが示されている。斜線の領域は小腸の異なる部分(十二指腸、空腸および回腸)の通過を表す。
【0037】
タンパク質摂取量は82kgの体重の志願者では2,200cal以下に維持された。志願者には1日3回の食事とその間に間食を与えた。志願者は通常の日々の日課を続けることが許された。
【0038】
低繊維および高繊維
志願者を低繊維食および高繊維食下に維持し、ヒト用ガスカプセルを用いてガスプロファイルを測定した。
【0039】
本カプセルを摂取する前の2日間にわたって志願者を厳格な高繊維食または低繊維食下に維持した。その3日目の午前9時に本カプセルを摂取させ、本カプセルが体から排出されるまでその食事を継続させた。
【0040】
高繊維食:志願者にはオート麦、ナッツ、レンズマメ、インゲンマメおよび西洋梨などの高繊維食を与えた。総繊維摂取量は1日当たり55g超であった。
【0041】
低繊維食:志願者には、白パン、白米、キュウリ、トマト、魚および鶏肉などの低繊維食を与えた。総繊維摂取量を1日当たり15g以下に維持した。
【0042】
各センサからの出力読み取り値は図3および図4に示されており、これは図上に記載されているイベントに関するガス濃度および体温におけるばらつきを示す。
【0043】
グラフのガス濃度の変化は、以下のような同じ期間にわたる酸素、水素、二酸化炭素およびメタンガスの濃度を示すために、ニューラルネットワークソフトウェアおよび当該センサ較正データを用いて調べた。
【0044】
低繊維の例:図4
・胃の中のCOは約35%であった
・胃の中の酸素含有量はカプセルが胃の中にあった17時間で5%増加した
・小腸通過時に最大0.5%までΗが生成された
・小腸通過後にCOが7%増加し、次いで昼間の間に6%減少した
・高繊維食の摂取後に結腸中のH濃度は1.5%超増加した
・COおよびCHに対してのみ感度を有するサイクル(午後12時に最大、午後10時に最小)が認められる(最も低い繊維線:右辺軸の780)
【0045】
高繊維の例:図3
・胃の中のCOは約50%である
・胃の中のOは本カプセルが摂取された後に大気濃度(21%)を基準にして5%超増加した
・昼食にレンズマメサラダを摂取した後に胃の中のHにおける0.25%の増加
・Hは小腸通過時に0.1%未満である
・約0.25%のHが結腸中に存在する
・志願者の結腸への通過時のCOは12.5%増加した
・結腸環境は非常に好気性のままである。酸素含有量は結腸領域において10%を超えているように見える。
【0046】
(i)本カプセルおよび(ii)呼気検査を用いることにより得られたガス濃度の結果を比較するベンチマーキング研究を行った。呼気検査はガス相バイオマーカーを健康の指標として使用する利用可能な唯一の他の手段である。これらの研究は、本発明のカプセルが著しく優れており、他の呼気検査と比較した場合に5,000~10,000回の間でいくつかのガスのためにガス濃度をより正確に同定することを証明した。
【0047】
当業者であれば、本発明がヒトの消化器系における疾患の診断への貴重な貢献を行うことを理解するであろう。本発明はヒトの健康状態およびそれらのヒトの消化器系におけるガス生成に関する情報も生成する。当業者であれば、本発明の核となる教示から逸脱することなくここに記載されている実施形態以外の実施形態において本発明を実施することができることも理解するであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4